(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定接点部は2つの固定接点を有し、前記可動接点部は該2つの固定接点に対向する2つの可動接点を有し、前記可動接点部が動作し該2つの可動接点が対向する該2つの固定接点に接触することで、該2つの固定接点の間が導通することを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、電磁継電器の場合、固定接点部と可動接点部との間で生じるアーク放電を短時間で消弧可能な構成が求められる。
【0005】
本発明の1つの側面では、電磁継電器においてアーク放電の消弧性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、電磁継電器は、以下のような構成を有する。すなわち、
固定接点板と、前記固定接点板に取り付けられる固定接点とを含む固定接点部と、
可動接点板と、前記可動接点板に取り付けられる可動接点とを含む可動接点部と、
前記可動接点部を動作させることで、前記可動接点を前記固定接点に接触させる電磁石装置と、
前記固定接点部及び前記可動接点部の両側面に設けられた永久磁石と、
を有する電磁継電器であって、
前記固定接点板または前記可動接点板の少なくともいずれか一方の接点板は、
前記永久磁石のローレンツ力の発生方向の上流側に、前記接点板の他の領域よりも厚さが薄く、かつ、貫通穴が設けられた領域を有しており、
前記接点板の接点は、
前記接点板に接点が取り付けられた場合に、前記永久磁石のローレンツ力の発生方向の下流側における前記接点の外縁部分と前記他の領域の外縁部分との段差が前記接点の頭部の厚さより小さくなるように構成されており、
前記接点を形成する接点部材の胴部が前記貫通穴に挿通し、該接点部材の頭部が、前記他の領域よりも厚さが薄く、かつ、貫通穴が設けられた領域の第1の面に取り付けられた状態で、該第1の面とは反対側の第2の面から、前記胴部をかしめることにより、前記接点板に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
電磁継電器においてアーク放電の消弧性能を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0010】
[第1の実施形態]
<1.電磁継電器の全体構成>
はじめに、本実施形態に係る電磁継電器の全体構成について説明する。
図1は、外側カバーを取り外した状態の電磁継電器の全体構成及び電磁継電器の一部を拡大して示した図である。
【0011】
図1に示すように、電磁継電器100は、固定接点部110a、110bと、可動接点部120a、120bと、電磁石装置130とを有している。固定接点部110a、110bと、可動接点部120a、120bと、電磁石装置130とは、ベースモールド140と底板150とにより固定されている。また、底板150の下側には、端子160、170が突出している。
【0012】
固定接点部110a、110bは、固定接点ばね(固定接点板)111a、111bと固定接点112a、112bとをそれぞれ有し、各々の固定接点ばね111a、111bは、2つの端子160の一方とそれぞれ接続されている。同様に、可動接点部120a、120bは可動接点ばね(可動接点板)121a、121bと可動接点122a、122bとをそれぞれ有し、それぞれ固定接点ばね111a、111b及び固定接点112a、112bと対向して配されている。2つの可動接点ばね121a、121bは、保持部材136を介して接極子131に接続されている。
【0013】
電磁石装置130は、接極子131、鉄心132、巻線133、駆動用継鉄134、ヒンジばね135、保持部材136を有する。
【0014】
接極子131は、駆動用継鉄134の上端部を支点として回転運動するよう構成されている。接極子131が駆動用継鉄134の上端部を支点として回転運動すると、保持部材136を介して接極子131に接続された可動接点部120a、120bは、接触位置と非接触位置との間を往復動作する。なお、接触位置とは、可動接点122a、122bと固定接点112a、112bとが接触する位置をいい、非接触位置とは、可動接点122a、122bと固定接点112a、112bとが非接触となる位置をいう。
【0015】
また、接極子131は、鉄心132の端面(鉄心面)に対して吸着離反する。具体的には、巻線133と接続された端子170に電圧が印加されることで電磁力が生じると、接極子131は鉄心面に吸着される。この結果、可動接点部120a、120bが接触位置へと動作する。なお、可動接点部120a、120bが接触位置に動作すると、一方の端子(例えば、
図1の左側の端子)160が、他方の端子(例えば、
図1の右側の端子)160と導通することなる。このとき、電流は、一方の端子160から固定接点ばね111aへと流れ、固定接点112aと可動接点122aとの間で、矢印113方向に流れる。更に電流は、可動接点122aから可動接点ばね121a、121bへと流れ、可動接点122bと固定接点112bとの間で、矢印114方向に流れる。更に電流は、固定接点112bから固定接点ばね111bへと流れ、他方の端子160へと流れる。
【0016】
ヒンジばね135は、接極子131が鉄心面から離反する方向に接極子131を付勢する。なお、ヒンジばね135は、接極子131が鉄心面から離反する方向に接極子131を常に付勢しているため、端子170への電圧の印加が停止すると、接極子131は鉄心面から離反し、可動接点部120a、120bは非接触位置へと動作する。そして、次に端子170へ電圧が印加されるまでの間、可動接点部120a、120bの非接触位置は維持されることとなる。
【0017】
<2.アーク放電の消弧機能(その1)>
次にアーク放電の消弧機能について説明する。アーク放電は、固定接点112aと可動接点122a及び固定接点112bと可動接点122bとがそれぞれ接触する時、または、離れる時に発生する放電現象である。電磁継電器100の場合、アーク放電が消滅するまでに時間がかかると、対応する固定接点と可動接点との間の電気的な接続が遮断されるまでに時間がかかる。つまり、接極子131が鉄心132から離反し、固定接点と可動接点との間の物理的な接続が遮断されたとしても、電気的な接続が遮断されるまでに時間を要してしまうこととなる。
【0018】
このため、本実施形態による電磁継電器100では、固定接点112a、112b及び可動接点122a、122bに対して、両側面から磁界をかけ、ローレンツ力を発生させることで、アーク放電を早期に消滅させる消弧機能を付加している。
【0019】
図2は、アーク放電の消弧を説明するための図であり、固定接点部110a、110bと可動接点部120a、120bとを拡大して示す。
図2(a)において、矢印113は、固定接点112aと可動接点122aとの間に流れる電流Iaの向きを示している。また、矢印202は、固定接点112a及び可動接点122aの両側面に永久磁石221a、222aを配したことにより生じる磁界Baの向きを示している。
【0020】
磁界Baが矢印202の方向に生じている状態で電流Iaが矢印113方向に流れると、
図2(b)に示すように、矢印203方向にローレンツ力Faが発生する。このため、接点間に発生したアーク放電がFaの向きに飛ばされ、アーク放電を早期に消滅させることができる。
【0021】
同様に、
図2(a)において矢印114は、固定接点112bと可動接点122bとの間に流れる電流Ibの向きを示している。また、矢印212は、固定接点112b及び可動接点122bの両側面に永久磁石221b、222bを配したことにより生じる磁界Bbの向きを示している。
【0022】
磁界Bbが矢印212の方向に生じている状態で電流Ibが矢印114方向に流れると、
図2(c)に示すように、矢印213方向にローレンツ力Fbが発生する。このため、接点間に発生したアーク放電がFbの向きに飛ばされ、アーク放電を早期に消滅させることができる。
【0023】
なお、
図2(b)、(c)から明らかなように、ローレンツ力Faが発生する方向とローレンツ力Fbが発生する方向とは同一である。つまり、ローレンツ力Faが発生する方向とローレンツ力Fbが発生する方向とが同一になるように、電流Ia及び電流Ibが流れる方向を勘案して、永久磁石221a、222a、221b、222bの磁極の向きが定められている。
【0024】
<3.アーク放電の消弧機能(その2)>
次に、本実施形態に係る電磁継電器100の更なる消弧機能について説明する。アーク放電を早期に消滅させるために、本実施形態に係る電磁継電器100では、ローレンツ力Fa、Fbを発生させるだけでなく、ローレンツ力Fa、Fbの発生方向において、固定接点と固定接点ばねとの間の急峻な形状変化を抑えた構成としている。固定接点と固定接点ばねとの間に段差等の急峻な形状変化があった場合、アーク放電が段差等において再点弧することとなり、アーク放電を早期に消滅させる際の妨げとなるからである。
【0025】
図3は、固定接点部110bにおいて、固定接点ばね111bと固定接点112bとの間の段差を小さくすることで、急峻な形状変化を抑えた構成の一例を示している。
【0026】
図3(a)は、固定接点部110bと可動接点部120bを含む電磁継電器100の側面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の領域300(固定接点部110bと可動接点部120b)の拡大図である。
【0027】
図3(b)に示すように、固定接点部110bでは、ローレンツ力Fbの発生方向(矢印213方向)における固定接点112bと固定接点ばね111bとの間の急峻な形状変化を抑えるように構成されている。具体的には、固定接点ばね111bの先端領域301の厚さを他の領域よりも薄くし、先端領域301に固定接点112bを配することで、固定接点112bの矢印213方向の外縁と固定接点ばね111bとの間の段差を小さくしている。
【0028】
つまり、固定接点ばね111bの先端領域301の厚さを他の領域よりも薄くすることで、薄くしない場合と比べて、固定接点112bの矢印213方向の外縁303と固定接点ばね111bの表面302との段差dを抑えることができる。この結果、アーク放電が固定接点112bの外縁303と固定接点ばね112bの表面との間の段差において再点弧することがなくなり、アーク放電を早期に消滅させることができる。
【0029】
なお、
図3(b)では、固定接点部110bの構成の一例について説明したが、固定接点部110aの構成についても同様である。
【0030】
また、電磁継電器100が直流負荷に用いられる場合、プラスとマイナスの極性によって接点の外縁と接点ばねの表面との間の段差への影響度合いが異なる。このため、固定接点部と可動接点部のうち、
図3(b)に示すように、固定接点部における段差を小さくするだけでもアーク放電を早期に消滅させる改善効果を得ることができる。
【0031】
特に、固定接点112bの径が大きい場合、接触面に丸みをつけたまま厚さを薄く加工することは困難である。このため、固定接点ばね111bの先端領域301の厚さを他の領域よりも薄くすることで段差dを抑える上記構成は固定接点112bの径が大きい場合に特に有効である。なお、接点の径を大きくするのは、接点の径が小さい場合と比べて、接点に流れる電流が大きい場合でも電気的寿命を長くすることができるからである。
【0032】
<4.固定接点の取り付け方法>
次に、固定接点112bを固定接点ばね111bに取り付けるための方法について説明する。固定接点を固定接点ばねに取り付けるための一般的な方法として、ロウ付け加工が挙げられる。しかしながら、ロウ付け加工の場合、寸法精度が悪く、ロウを溶解させるための処理が必要となるためコストアップが不可避である。
【0033】
そこで、本実施形態に係る電磁継電器100では、固定接点用の接点部材を固定接点ばね111bに取り付けるにあたり、リベット接合を用いる。
図4は、リベット接合により、接点部材410bを固定接点ばね111bに取り付ける方法を示した図である。
【0034】
図4(a)に示すように、固定接点ばね111bの先端領域301には、貫通穴401が設けられている。
図4(b)に示すように、リベット構造を有する接点部材410bの胴部411を、貫通穴401に挿通させる。これにより、
図4(c)に示すように、リベット構造を有する接点部材410bの頭部412の図示下面と先端領域301の表面とが面接触するように取り付けられた状態となる。
【0035】
この状態で、固定接点ばね111bの反対側(裏面402側)から、接点部材410bの胴部411をかしめることにより、
図4(d)に示すように、接点部材410bが固定接点ばね111bに接合され、固定接点112bを形成する。
【0036】
このように、リベット接合により、固定接点を固定接点ばねに取り付けた場合、ロウ付け加工する場合と比較して、取り付けが容易で、取り付けコストを抑えることができる。
【0037】
<5.まとめ>
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る電磁継電器では、
・固定接点及び可動接点の両側面に永久磁石を配し、磁界をかけることで、ローレンツ力を発生させる構成とした。これにより、アーク放電を早期に消滅させることが可能となる。
・固定接点ばねの先端領域の厚さを、他の領域の厚さよりも薄くし、当該先端領域に固定接点を配することで、ローレンツ力の発生方向における固定接点の外縁と固定接点ばねとの段差を小さくする構成とした。これにより、アーク放電を早期に消滅させる効果を更に高めることが可能となる。
・固定接点ばねの先端領域に固定接点を取り付けるにあたり、リベット接合を用いる構成とした。これにより、大きさの小さい固定接点を、低コストで容易に取り付けることが可能となる。
【0038】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、固定接点をリベット接合により固定接点ばねに取り付けることで、固定接点部を構成することとしたが、固定接点部の構成はこれに限定されない。例えば、固定接点ばねを構成する部材に接点を構成する貴金属部を圧延することで接合した、平坦なクラッド材により固定接点部を構成するようにしてもよい。
【0039】
図5は、本実施形態におけるクラッド材により構成された固定接点部を説明するための図である。このうち、
図5(a)は、固定接点部510bと可動接点部120bの拡大図である。また、
図5(b)は、クラッド材により構成された固定接点部510bの斜視図である。
【0040】
図5(b)に示すように、固定接点部510bは、固定接点512bを構成する貴金属部が固定接点ばね511bを構成する金属に形成されている凹部に埋め込まれて一体化されている。このため、固定接点512bと固定接点ばね511bとの間に段差はなく、平坦な形状を有している。このような構造を有する固定接点部510bによれば、アーク放電を早期に消滅させる消弧性能を、更に高めることができる。
【0041】
また、クラッド材を用いた場合、リベット接合により固定接点を取り付けた場合のように、先端領域の厚さが他の領域の厚さよりも薄くなるように固定接点ばねを加工する必要がない。また、固定接点の外縁と固定接点ばねの表面との間の段差を小さくするために、固定接点の頭部の厚みを極力薄く加工する必要もない。
【0042】
つまり、クラッド材により固定接点部を構成することにより、固定接点部の生成が容易になるうえ、消弧性能が向上する。
【0043】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態では、固定接点部においてクラッド材を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、固定接点部と可動接点部の両方に、クラッド材を用いる構成としてもよい。
【0044】
図6は、クラッド材により固定接点部と可動接点部とを構成した様子を示す図である。
図6に示すように、可動接点部620bは、可動接点622bを構成する貴金属部が可動接点ばね621bを構成する金属に埋め込まれて一体化されている。このため、可動接点622bの外縁と可動接点ばね621bの表面との間に段差はない。この結果、アーク放電を早期に消滅させる消弧性能が更に向上する。
【0045】
[第4の実施形態]
上記各実施形態では、ローレンツ力が下方向に発生することを前提として説明したが、ローレンツ力の発生方向は下方向に限られない。例えば、ローレンツ力が上方向に発生するように、永久磁石221a、222a、221b、222bの磁極の向きを定めてもよい。ただし、この場合、接点の外縁のうち、上側部分と接点ばねの表面との間の段差を小さくする構成とする。上方向にアーク放電が飛ばされた場合に、接点の外縁の上側部分と接点ばねの表面との間の段差において、再点弧することがないようにするためである。
【0046】
上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。