特許第6422256号(P6422256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422256
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】熱源機システムおよび熱源機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/61 20180101AFI20181105BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20181105BHJP
【FI】
   F24F11/61
   F24F11/52
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-153010(P2014-153010)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-31175(P2016-31175A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】内村 知行
【審査官】 関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007867(JP,A)
【文献】 特開2002−295883(JP,A)
【文献】 特開2009−275942(JP,A)
【文献】 特開昭58−198633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機システムにおいて、
熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間との比として定義される運転時間比に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断し、
熱源機としてインバータ制御された圧縮機を用いている圧縮式の熱源機を使用した場合に、前記運転時間として、実際に熱源機が運転された時間に替え、その時の運転回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算した値である等価運転時間を以て運転時間とすることを特徴とする熱源機システム。
【請求項2】
熱源機ごとに予め定められた基準運転時間比に前記運用時間を乗じて求めた値と、前記運転時間との差である運転残時間に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断することを特徴とする請求項1記載の熱源機システム。
【請求項3】
前記運転時間比が規定値を回った場合あるいは前記運転残時間が規定値を回った場合に警報を発することを特徴とする請求項2記載の熱源機システム。
【請求項4】
前記運転時間比の小さい熱源機あるいは前記運転残時間の多い熱源機から運転し、前記運転残時間の少ない熱源機から停止することを特徴とする請求項2または3記載の熱源機システム。
【請求項5】
熱源機の運転中に、運転残時間の少ない熱源機を停止し、多い熱源機を運転することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱源機システム。
【請求項6】
熱源機の運転台数を増やすことで消費エネルギーが減少すると推定される場合に、予め設定された値を、運転しようとする熱源機の運転時間比が上回っている、あるいは運転残時間が下回っている場合にはこれを運転せず、運転時間比が下回っている、あるいは運転残時間が上回っている場合に熱源機を運転することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱源機システム。
【請求項7】
前記基準運転時間比が大きい熱源機を優先して運転するようにしたことを特徴とする請求項2乃至のいずれか1項に記載の熱源機システム。
【請求項8】
複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機の運転方法において、
熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間との比として定義される運転時間比に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断とし、
熱源機としてインバータ制御された圧縮機を用いている圧縮式の熱源機を使用した場合に、前記運転時間として、実際に熱源機が運転された時間に替え、その時の運転回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算した値である等価運転時間を以て運転時間とすることを特徴とする熱源機の運転方法。
【請求項9】
熱源機ごとに予め定められた基準運転時間比に前記運用時間を乗じて求めた値と、前記運転時間との差である運転残時間に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断することを特徴とする請求項記載の熱源機の運転方法。
【請求項10】
前記運転時間比が規定値を回った場合あるいは前記運転残時間が規定値を回った場合に警報を発することを特徴とする請求項記載の熱源機の運転方法。
【請求項11】
前記運転時間比の小さい熱源機あるいは前記運転残時間の多い熱源機から運転し、前記運転残時間の少ない熱源機から停止することを特徴とする請求項または10記載の熱源機の運転方法。
【請求項12】
熱源機の運転中に、運転残時間の少ない熱源機を停止し、多い熱源機を運転することを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載の熱源機の運転方法。
【請求項13】
熱源機の運転台数を増やすことで消費エネルギーが減少すると推定される場合に、予め設定された値を、運転しようとする熱源機の運転時間比が上回っている、あるいは運転残時間が下回っている場合にはこれを運転せず、運転時間比が下回っている、あるいは運転残時間が上回っている場合に熱源機を運転することを特徴とする請求項乃至12のいずれか1項に記載の熱源機の運転方法。
【請求項14】
前記基準運転時間比が大きい熱源機を優先して運転するようにしたことを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載の熱源機の運転方法。
【請求項15】
複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機システムの制御装置において、
前記制御装置は、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間との比として定義される運転時間比に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断し、
熱源機としてインバータ制御された圧縮機を用いている圧縮式の熱源機を使用した場合に、前記運転時間として、実際に熱源機が運転された時間に替え、その時の運転回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算した値である等価運転時間を以て運転時間とすることを特徴とする熱源機システムの制御装置。
【請求項16】
前記制御装置は、熱源機ごとに予め定められた基準運転時間比に前記運用時間を乗じて求めた値と、前記運転時間との差である運転残時間に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断することを特徴とする請求項15記載の熱源機システムの制御装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記運転時間比が規定値を回った場合あるいは前記運転残時間が規定値を回った場合に警報を発することを特徴とする請求項16記載の熱源機システムの制御装置。
【請求項18】
前記制御装置は、前記運転時間比の小さい熱源機あるいは前記運転残時間の多い熱源機から運転し、前記運転残時間の少ない熱源機から停止することを特徴とする請求項16または17記載の熱源機システムの制御装置。
【請求項19】
前記制御装置は、熱源機の運転中に、運転残時間の少ない熱源機を停止し、多い熱源機を運転することを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載の熱源機システムの制御装置。
【請求項20】
前記制御装置は、熱源機の運転台数を増やすことで消費エネルギーが減少すると推定される場合に、予め設定された値を、運転しようとする熱源機の運転時間比が上回っている、あるいは運転残時間が下回っている場合にはこれを運転せず、運転時間比が下回っている、あるいは運転残時間が上回っている場合に熱源機を運転することを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載の熱源機システムの制御装置。
【請求項21】
前記制御装置は、前記基準運転時間比が大きい熱源機を優先して運転するようにしたことを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の熱源機システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調や温調設備で使用される複数台の熱源機の運転および停止を制御する熱源機システムおよび熱源機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調や温度制御等で使用される熱源機の点検周期(インターバル)は、一般に、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した期間である運用期間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間の双方により規定される。たとえば、「運用期間7年または運転時間20,000時間ごと」などのように規定される。なお、年単位の運用期間を時間単位に換算した場合を運用時間と称する。以下においては、運用期間と運用時間とを適宜用いて説明する。点検周期を運用期間と運転時間の双方により規定するのは、次の理由による。
【0003】
まず、熱源機が運転されることで磨耗したり減少する、軸受等の部品は、設計された運転時間毎に点検あるいは交換(以下、「整備」と称する。)が必要となる。すなわち、実際に設置時もしくは整備時から熱源機が運転された時間である運転時間が設計された運転時間に達したときに整備が必要となる。ここで、これを「点検時間」とする。
一方、ガスケットや樹脂製の部品など経年劣化が問題となる部品は、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した期間である運用期間により整備が必要となる。ここで、これを「点検期間」とする。
【0004】
しかしながら、どちらの要因に拠る整備であっても、整備による作業内容はあまり変わらない。その一方で、熱源機の点検や部品交換には多くの費用が発生する。すなわち、一般にこれらの整備には、熱源機内の水等の熱搬送媒体や熱媒体等を抜いたり、不活性ガスを抽入したりといった作業が必要であり、相応の作業時間を要することと、場合によっては熱源機の移動や搬出と言った大掛かりな作業が必要となるからである。したがって、これらの整備は同時に行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−117698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実際の熱源機の運転時間は、設置される現場により大きく異なるため、運用期間と運転時間のどちらが律速するかは変わってしまう。すなわち、7年の点検期間が定められている熱源機であっても、6年目に運転時間が点検時間に達してしまうようなことがある。このような場合、7年目に予定されていた整備を6年目に前倒して行うことが必要となり、運用に要するコストを押し上げることとなる。このため、各熱源機は可能な限り運転時間を短くすることが好ましいとされ、運転する熱源機の台数を可能な限り少なくし、熱源機一台あたりの負荷をできるだけ高く維持することで運用コストを下げようとすることが行われてきた。
【0007】
しかしながら、熱源機によっては、運転台数を増やすことで効率を向上させることができる。すなわち、吸収式熱源機やスクリュー式熱源機、あるいはインバータ駆動のターボ熱源機等では、負荷が30〜60%程度のほうが効率がよい熱源機や運転条件(冷却水温度等)があり、熱源機の運転台数を増やし、一台あたりの負荷を下げたほうが省エネとなる場合がある(特許文献1を参照)。すなわち、ライフサイクルコストを考えた場合、熱源機の運転台数を減らすことで保守に要するコストを下げるほうがよいか、最適な負荷で運転することで消費エネルギーを削減することのどちらが全体のコストを下げられるかは、結論を出しにくい。逆に、熱源機の運転台数を増やすことで省エネルギーを図れることが分かっていても、保守コストの増加が懸念されるために実施できないといったこともあり、運転時間を適正に管理して、保守コストの増大を押さえながら省エネルギー化を図る方法が求められている。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機システムにおいて、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間による点検と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間による点検とを可能な限り一致させるように、複数台の熱源機の運転および停止を制御する熱源機システムおよび熱源機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の熱源機システムは、複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機システムにおいて、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間との比として定義される運転時間比に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断し、熱源機としてインバータ制御された圧縮機を用いている圧縮式の熱源機を使用した場合に、前記運転時間として、実際に熱源機が運転された時間に替え、その時の運転回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算した値である等価運転時間を以て運転時間とすることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、熱源機ごとに予め定められた基準運転時間比に前記運用時間を乗じて求めた値と、前記運転時間との差である運転残時間に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記運転時間比が規定値を回った場合あるいは前記運転残時間が規定値を回った場合に警報を発することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記運転時間比の小さい熱源機あるいは前記運転残時間の多い熱源機から運転し、前記運転残時間の少ない熱源機から停止することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、熱源機の運転中に、運転残時間の少ない熱源機を停止し、多い熱源機を運転することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、熱源機の運転台数を増やすことで消費エネルギーが減少すると推定される場合に、予め設定された値を、運転しようとする熱源機の運転時間比が上回っている、あるいは運転残時間が下回っている場合にはこれを運転せず、運転時間比が下回っている、あるいは運転残時間が上回っている場合に熱源機を運転することを特徴とする
発明の好ましい態様によれば、前記基準運転時間比が大きい熱源機を優先して運転するようにしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の熱源機の運転方法は、複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機の運転方法において、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間との比として定義される運転時間比に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断し、熱源機としてインバータ制御された圧縮機を用いている圧縮式の熱源機を使用した場合に、前記運転時間として、実際に熱源機が運転された時間に替え、その時の運転回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算した値である等価運転時間を以て運転時間とすることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、熱源機ごとに予め定められた基準運転時間比に前記運用時間を乗じて求めた値と、前記運転時間との差である運転残時間に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断することを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記運転時間比が規定値を回った場合あるいは前記運転残時間が規定値を回った場合に警報を発することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記運転時間比の小さい熱源機あるいは前記運転残時間の多い熱源機から運転し、前記運転残時間の少ない熱源機から停止することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、熱源機の運転中に、運転残時間の少ない熱源機を停止し、多い熱源機を運転することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、熱源機の運転台数を増やすことで消費エネルギーが減少すると推定される場合に、予め設定された値を、運転しようとする熱源機の運転時間比が上回っている、あるいは運転残時間が下回っている場合にはこれを運転せず、運転時間比が下回っている、あるいは運転残時間が上回っている場合に熱源機を運転することを特徴とする。
【0014】
発明の好ましい態様によれば、前記基準運転時間比が大きい熱源機を優先して運転するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明の熱源機システムの制御装置は、複数台の熱源機を運転及び停止する熱源機システムの制御装置において、前記制御装置は、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間との比として定義される運転時間比に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断し、熱源機としてインバータ制御された圧縮機を用いている圧縮式の熱源機を使用した場合に、前記運転時間として、実際に熱源機が運転された時間に替え、その時の運転回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算した値である等価運転時間を以て運転時間とすることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、熱源機ごとに予め定められた基準運転時間比に前記運用時間を乗じて求めた値と、前記運転時間との差である運転残時間に基づいて、運転する熱源機と停止する熱源機とを判断することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、前記運転時間比が規定値を回った場合あるいは前記運転残時間が規定値を回った場合に警報を発することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、前記運転時間比の小さい熱源機あるいは前記運転残時間の多い熱源機から運転し、前記運転残時間の少ない熱源機から停止することを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、熱源機の運転中に、運転残時間の少ない熱源機を停止し、多い熱源機を運転することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、熱源機の運転台数を増やすことで消費エネルギーが減少すると推定される場合に、予め設定された値を、運転しようとする熱源機の運転時間比が上回っている、あるいは運転残時間が下回っている場合にはこれを運転せず、運転時間比が下回っている、あるいは運転残時間が上回っている場合に熱源機を運転することを特徴とする。
【0018】
発明の好ましい態様によれば、前記制御装置は、前記基準運転時間比が大きい熱源機を優先して運転するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱源機の整備を最小の回数に抑えながら、計画的な整備の実現や、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る熱源機システムの実施形態を示す模式図である。
図2図2は、本発明の第1実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。
図3図3は、本発明の第2実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明の第3実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。
図5図5は、本発明の第4実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6図6は、本発明の第5実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る熱源機システムおよび熱源機の運転方法の実施形態を図1乃至図6を参照して説明する。図1乃至図6において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明に係る熱源機システムの実施形態を示す模式図である。図1に示すように、熱源機システムは、複数台の熱源機1と、複数台の熱源機1の運転および停止を制御する制御装置2とを備えている。図1においては、熱源機1を2台備えた熱源機システムが図示されているが、熱源機1を3台以上備えていてもよい。各熱源機1は制御装置2に接続されており、制御装置2は各熱源機1の運用時間や運転時間を含む各種データを集約するようになっている。すなわち、制御装置2は、複数台の各熱源機1の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間と、設置時もしくは整備時から実際に各熱源機1が運転された時間である運転時間とを含む各種データを集約する。制御装置2は運用時間と運転時間に基づいて複数台の熱源機1の運転および停止を制御する。
【0023】
図1に示すように構成された熱源機システムにおいて、複数台の熱源機を単独運転または並列運転して負荷に対応する場合、運転時間を適正に管理して、保守コストの増大を押さえながら省エネルギー化を図る方法が求められている。
この課題を解決するには、熱源機の設置時もしくは整備時から経過した時間である運用時間による整備と、設置時もしくは整備時から実際に熱源機が運転された時間である運転時間による整備を可能な限り一致させればよい。しかし、熱源機の運用時間は制御できないため、熱源機の運転時間を運用時間に合わせるように運転・停止を制御すればよいことになる。
そこで、本発明では、両者を可能な限り一致させるために、制御装置2によって運用時間と運転時間の比である「運転時間比」を求め、これにより複数台の熱源機のうち、運転、停止する熱源機を選択することとした。
【0024】
最も簡単な方法としては、熱源機ごとに運転時間比を求め、これが少ないものから運転することが考えられる。しかし、制御装置では演算はできるだけ整数を用いて計算するのがよいため、次のように制御するのがよい。
本発明では、熱源機ごとに基準運転時間比を定める。基準運転時間比は、整備が必要となる運用時間と運転時間の比により定める。すなわち、運用期間が7年または運転時間が20,000時間ごとに点検が必要な熱源機であれば、運用時間と運転時間の比は20,000:7×365×24≒0.326:1となるので、これを0.32(演算時の内部値としては、100倍した値である32)とおく。値を四捨五入ではなく切り捨てたのは、運用時間内に運転時間が超えることをできるだけ避けるためであるが、四捨五入でも差し支えない。なお、後述するように、基準運転時間比は本来熱源機ごとに定めるが、ここではすべて同じ値にしたと仮定する。
【0025】
制御装置2は、熱源機の運用時間と運転時間を監視する。そして、熱源機ごとに運用時間に基準運転時間比を掛け、これと実際の運転時間との差を求め、これを「運転残時間」とする。式で表すと次のとおりである。なお、定数倍した整数値等を用いている場合は、あわせて定数で除算等することは言うまでも無い。
運転残時間=運用時間×基準運転時間比−運転時間
ここで、制御装置は運転残時間の多い熱源機から運転する。これにより、適切に運転時間を均一化することができる。
【0026】
なお、次のように制御することもできる。すなわち、熱源機が運転中、基準運転時間比に単位時間を乗じた値を積算し、これを等価の運転時間とみなして等価の運転時間が短いもの、あるいは基準となる運転時間との差が長いものから運転する方法である。これらの方法は、計算の順序や基準値の単位(次元)を変えているだけで、これまで説明した本発明の方法と本質的に等価な方法であり、状況により本方式によって運転順を決定してもよい。
【0027】
以下、運転残時間を基準とした方法について詳述するが、同様の方法で運転時間比や、等価の運転時間を用いて判断しても差し支えない。
本発明の方式が従来の運転時間のみによる方法と異なるのは、設置時期等が異なる熱源機が混在しても差し支えない点である。すなわち、単純に運転時間による場合、設置時期が異なれば当然運転時間は新設した熱源機のほうが短いために、そればかりが運転されることになる。その結果、かえって運転時間が偏り、点検周期を早めることにもなりかねない。本発明によれば、新設された熱源機も前から設置されている熱源機でも、均等に運転されることとなり、この点で優れている。
もっとも、このような場合、従来の技術では次のようにしていた。すなわち、運転時間を基準とする方法を用いながら、運転時間を月ごとなど一定期間毎にリセットし、その期間内で運転時間を均一化する方法である。新設機が増えた場合にリセットする方法もよく行われている。運転時間を均一化するだけであれば、これでも十分である。
【0028】
しかし、本発明では、次のように運用することができる。すなわち、熱源機に基準運転時間を設定する際、これを熱源機ごとに異なる点検期間を仮定して基準運転時間比を決定する。具体的には、重点的に運転する熱源機(重点熱源機)は3年半、それ以外の熱源機では7年など、異なる値を用いて基準運転時間比を決定する。この場合、前者では0.65、後者では0.32となる。
このようにすると、重点熱源機はそれ以外の熱源機よりも運転残時間が長く見積もられるため、運転頻度が高くなり、当然、早く点検時間に達し、運用時間による整備の途中で整備すること(中間整備)が必要となる。しかし、ここで重点熱源機の点検期間が、本来の点検期間のちょうど半分、あるいは1/3などになるように設定することで、2回目、あるいは3回目の整備が、運用期間に基づく整備と一致することとなる。
【0029】
この場合、重点熱源機以外の熱源機の運転は抑制されるため、運転時間による整備が運用時間による整備よりも前に来ることは少なくなる。すなわち、重点熱源機は中間整備が必要となるが、それと引き換えにそれ以外の熱源機の中間整備が不要となる。これは、月ごとの運転時間を均一化する等の方法では得られない効果であり、本発明の優位性の一つである。また、点検期間や点検時間が異なる熱源機が混在していても差し支えないことも利点として挙げられる。なお、重点熱源機の台数や、点検周期の設定は、現場ごとの負荷予測や実績等に基づいて決めればよい。
【0030】
また、重点熱源機を用いる(運転時間比が異なる)設定をした場合、重点熱源機を、運転残時間が残っている限り優先的に起動することもできる。このようにすると、重点熱源機以外の熱源機の運転はさらに抑制され、重点熱源機の整備を行った後、設備の運用条件が変わるなどして急に負荷が増え、重点熱源機以外の運転時間が長くなっても、そのために点検時期を早めなければならなくなる可能性を小さくできる。
【0031】
また、運転残時間を監視すれば、容易に整備計画を変更できる。すなわち、運転残時間が恒常的に0を下回っている場合、熱源機の負荷が当初の想定を上回っており、このまま運転を続ければ予定していない中間整備が必要となったり、整備の前倒しが必要となることを示している。そこで、これが明らかになった時点で、整備計画を変更し、これに合わせて熱源機の基準運転時間比を設定しなおせば、中間整備の増加を最小限に抑えることが可能となる。この場合、監視するのは月報等によるのが最も簡単であるが、熱源機システムは運転残時間が規定値を下回っている場合、警告等を発することが望ましい。
【0032】
また、すべての設備をいっせいに停止できないなどの理由で、熱源機ごとに整備時期をずらしたい場合にも本発明は有効である。すなわち、同時期に設置した熱源機でも、基準運転時間比を少しずつ変えて設定することで、整備の時期を少しずつずらすことができる。特に、熱源機ごとに整備時期を予定し、これに基づいて点検期間を設定し、これに基づいて基準運転時間比を設定すれば、最適な時期に熱源機の整備を行うことができる。
【0033】
また、負荷が小さいほうが効率のよい熱源機等を用いた場合、運転台数を減らして点検回数を減らすか、運転台数を増やして効率を向上させるかの判断をする上でも本発明は有効である。すなわち、運転状態に基づいて判断した結果、運転台数を増やして負荷を下げたほうが効率を向上させられる場合、制御装置は運転しようとする熱源機の運転残時間を確認する。運転残時間があらかじめ定めた値を上回っていればこれを運転するが、規定時間を下回っている場合は運転しない。これにより、ぎりぎりの運転時間までは熱源機を運転して最適な負荷で運転すると同時に、運転時間の超過による整備の回数増加を防ぐこととなる。
【0034】
また、可変速の圧縮機などでは、軸受の寿命(点検時間)は回転速度に比例する。すなわち、回転速度が半分であれば点検時間は2倍としてもよい。したがって、次のようにしてもよい。
インバータ駆動等の可変速の圧縮機を用いた圧縮式の熱源機では、回転速度と定格回転速度の比を、単位時間に乗じた値を積算し、これを等価運転時間とし、前述の計算における運転時間と見なす。これを用いて運転停止することで、点検回数をさらに減らすことができる。
【0035】
図2は、本発明の第1実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。図2において、横軸は経過時間(月単位)を示し、縦軸は運転時間および運転残時間(月単位)を示す。シミュレーションは各月の負荷率を乱数で決定し、それに応じて運転機を前述の方法で決定した場合の運転時間と運転残時間を、号機ごとに示す。なお、第2実施例以降も同様である。
本実施例は、2台の熱源機で、双方とも基準運転時間比を0.32とした場合である。図2に示したとおり、2台の熱源機が平均的に運転されており、運転時間が均一化されていることが分かる。
【0036】
図3は、本発明の第2実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。図3において、横軸は経過時間(月単位)を示し、縦軸は運転時間および運転残時間(月単位)を示す。2台の熱源機で、双方とも基準運転時間比を0.32とした場合であるが、故障等の理由で、途中で熱源機が入れ替わった場合である。
この場合でも図3に示したとおり、2台の熱源機が平均的に運転されており、運転時間が均一化されていることが分かる。なお、入れ替えではなく、熱源機の追加等でも同様の効果が期待できる。
【0037】
図4は、本発明の第3実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。図4において、横軸は経過時間(月単位)を示し、縦軸は運転時間および運転残時間(月単位)を示す。2台の熱源機で、一方の熱源機(重点熱源機)の基準運転時間比を0.65とし、もう一方を0.32とした場合である。
この場合、図4に示したとおり、熱源機の運転時間はほぼ1:2となり、かつ、運転時間の余裕が確保されていることが分かる。
【0038】
図5は、本発明の第4実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。図5において、横軸は経過時間(月単位)を示し、縦軸は運転時間および運転残時間(月単位)を示す。2台の熱源機で、一方の熱源機(重点熱源機)の基準運転時間比を0.65とし、もう一方を0.32とした場合であるが、重点熱源機の運転を優先した場合である。
すなわち、第3実施例では、単純に運転残時間が多いほうを運転していたが、本実施例では、運転残時間が0以上であれば、1号機(重点熱源機)を運転する。
この場合、第3実施例と比較すると、2号機の運転時間が抑制され、運転残時間に余裕ができていることがわかる。
【0039】
図6は、本発明の第5実施例のシミュレーション結果を示すグラフである。図6において、横軸は経過時間(月単位)を示し、縦軸は運転時間および運転残時間(月単位)を示す。本実施例は2台の熱源機で、当初は双方ともに基準運転時間比を0.32としたものの、負荷が想定を上回り運転残時間が恒常的に0以下であったため、途中で1号機の基準運転時間比を0.65に変更した場合である。
この場合、変更時点で1号機の運転残時間が増えるため、優先的に運転されるようになり、2号機の運転時間が短縮される。その結果、双方ともに運転残時間が回復し、1号機は中間整備が必要になるが、2号機は点検期間まで不要とできる。
従来の場合、このまま運転を続けると1号機、2号機ともに点検期間の前に点検時間になり、2台とも中間整備もしくは整備の前倒しが必要となってしまう。このように、本発明では中間整備が発生する可能性を容易に察知できるとともに、途中で設定を変更して中間整備を回避することができる。
【0040】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 熱源機
2 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6