特許第6422263号(P6422263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422263
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】鉄道用電気・電子機器の収納装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/00 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
   B61L5/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-168385(P2014-168385)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-43759(P2016-43759A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145954
【氏名又は名称】株式会社昭電
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】太田 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】柳川 俊一
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−051943(JP,A)
【文献】 特開2011−088559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度材料と雷電流を速やかに接地側に流す高導電性材料とを組み合わせたシェルタ内に、
雷保護用の保安器を少なくとも有し、必要に応じて各種変換器を有する保護・変換装置と、鉄道設備用の複数の電気・電子機器と、が収納される内部空間と、
外部から引き込まれて前記保護・変換装置に接続される外線を収容するための外線収容部と、
前記保護・変換装置と前記電気・電子機器との間、及び、前記電気・電子機器の相互間を接続する内線を収容するための内線収容部と、
を形成し、
前記外線収容部と前記内線収容部とを、前記内部空間の上下に互いに分離して配置し、
かつ、前記シェルタの上部に受電部を形成すると共に、
前記保護・変換装置、前記電気・電子機器、前記受電部、及び、前記シェルタの筺体を構成する前記高導電性材料を、共通接地線を介して一点にて等電位接地したことを特徴とする鉄道用電気・電子機器の収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道設備用の複数の電気・電子機器を、高強度材料と高導電性材料とを組み合わせたシェルタ内に集約して収納するようにした鉄道用電気・電子機器の収納装置に関し、詳しくは、高強度材料として主に鉄を使用し、高導電性材料として主に銅を使用すると共に、シェルタに受電部を設けて落雷時の電流を速やかに大地に流すことができる収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の駅構内または信号機や踏切の近辺、線路沿線などには、信号設備、踏切設備、転轍設備、ATCシステム等を制御する各種の制御装置、通信装置、電源装置、保安器、電力変換器等の鉄道用電気・電子機器が設置されており、これらの機器は信号用器具箱や踏切用器具箱に収納されている。
信号用器具箱や踏切用器具箱は、複数まとめて一カ所に設置されることは少なく、個々の器具箱が何年か隔てて所定位置に設置されるため、新旧の器具箱が点在している場合が多い。
【0003】
例えば、図2は、駅周辺の器具箱の設置状態を概念的に示した図である。
図2において1はプラットホーム、2は線路、3はき電線、4a,4b,4cは器具箱、5は器具箱4a,4b,4c内の機器同士を接続するケーブルであり、器具箱4a,4b,4cの筺体及びその内部機器は、それぞれ個別に接地されているものとする。
【0004】
このような状態で、例えば器具箱4a近くのき電線3や線路2に落雷し、大地に雷サージ電流が流れると、落雷点の近傍にある器具箱4aの筺体電位が上昇する。
これに対し、器具箱4aから離れた場所にある器具箱4b,4c等の筺体電位は器具箱4aから遠くなるほど低下するので、図示するように器具箱4a,4b,4cの筺体間に電位差が発生する。ここで、器具箱4a,4b,4cの内部機器がそれぞれ筺体に接地されているとすれば、器具箱4a,4b,4cごとに内部機器の接地電位に差が生じることになり、これによって内部機器に過電圧が印加されて故障や破損を招くという問題がある。
【0005】
なお、本発明に関連する従来技術としては、例えば、特許文献1のように防水性を向上させた鉄道信号用器具箱や、特許文献2のように耐震性を向上させた鉄道信号用器具箱が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−53436号公報
【特許文献2】特開2004−17932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の器具箱の従来技術としては、前述したように防水性や耐震性の向上を目的としたものが数多く提案されている。しかしながら、器具箱自体に雷保護装置を内蔵したり、複数の器具箱が点在する状況における落雷対策を考慮したものは存在せず、器具箱内の各種の機器を落雷から効果的に保護する対策が切望されていた。
【0008】
そこで、本発明の解決課題は、鉄道設備用の制御装置、通信装置、保安器、各種変換器等の複数の電気・電子機器をシェルタ内に集約して収納すると共に、前記シェルタの上部に受電部を形成し、かつシェルタの外部筺体を高強度材料と高導電性材料とを組み合わせて形成し、前記電気・電子機器を受電部及び高導電性材料と共に等電位接地することにより、落雷による機器の故障、破損を防止して信号設備や踏切設備等の信頼性を高めた鉄道用電気・電子機器の収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、高強度材料と雷電流を速やかに接地側に流す高導電性材料とを組み合わせたシェルタ内に、
雷保護用の保安器を少なくとも有し、必要に応じて各種変換器を有する保護・変換装置と、鉄道設備用の複数の電気・電子機器と、が収納される内部空間と、
外部から引き込まれて前記保護・変換装置に接続される外線を収容するための外線収容部と、
前記保護・変換装置と前記電気・電子機器との間、及び、前記電気・電子機器の相互間を接続する内線を収容するための内線収容部と、を形成し、
前記外線収容部と前記内線収容部とを、前記内部空間の上下に互いに分離して配置し、
かつ、前記シェルタの上部に受電部を形成すると共に、
前記保護・変換装置、前記電気・電子機器、前記受電部、及び、前記シェルタの筺体を構成する前記高導電性材料を、共通接地線を介して一点にて等電位接地したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護・変換装置を含めて鉄道設備用の複数の電気・電子機器が、高強度材料と高導電性材料とを組み合わせて形成したシェルタ内に集約されてシェルタの受電部及び高導電性材料と共に等電位接地されるため、落雷時に機器間で電位差が生じることがなく、機器の故障や破損を確実に防止することができる。
これにより、信号設備や踏切設備等の信頼性を高め、鉄道の安全運行に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す構成図である。
図2】従来技術を示す説明図である。
図3】本発明の実施例を示す構成図である。
図4】本発明の実施例を示す構成図である。
図5】本発明の実施例を示す構成図である。
図6】本発明の実施例を示す構成図である。
図7】本発明の実施例を示す構成図である。
図8】本発明の実施例を示す構成図である。
図9】本発明の実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1において、10は、この実施形態に係る収納装置の本体を構成するシェルタであり、その外部筺体10Dの上部には高導電性材料からなる受電部15が配置され、任意箇所の外壁または内壁には、銅などからなる高導電性材料が配置されている。この高導電性材料は、板状材料、線状材料等、任意の形状を取り得るものであり、前記受電部15と電気的に接続されている。なお、シェルタ10の外部筺体10Dには、高導電性材料のほかに、所定の強度を保つために鉄板等からなる高強度材料が使用されているが、これらについては後述する図3により説明する。
【0013】
シェルタ10の内部空間10Aには、複数の内部筺体11,12,13,14,……が配置されている。シェルタ10の下部には、外線21を引き込んで収容するための外線収容部10Bが設けられ、シェルタ10の上部には、内線22を収容するための内線収容部10Cが設けられている。
【0014】
外線21側の内部筺体11には、保護・変換装置11aが収納されている。この保護・変換装置11aは、少なくともSPD等の雷保護用の保安器を備えている。また、保護・変換装置11aには、外線21及び内線22の信号形態(直流・交流)に従って電力変換を行うインバータやコンバータ、変圧器、あるいは、電気信号と光信号とを変換する電気/光変換器、光/電気変換器、無線通信装置等の各種の変換器が、必要に応じて含まれる。
【0015】
また、他の内部筺体12〜14には、信号設備や踏切設備、転轍設備、ATCシステム等を制御し、あるいはこれらとの間で信号を授受するための制御装置、通信装置等の各種の電気・電子機器12a〜14aが収納されている。保護・変換装置11aと電気・電子機器12a、及び、電気・電子機器12a〜14aの相互間は、内線22によって接続されている。なお、保護・変換装置11aも鉄道用の電気・電子機器であることに変わりはなく、「保護・変換装置」という名称は便宜的なものに過ぎない。
【0016】
保護・変換装置11a及び電気・電子機器12a〜14aは、共通接地線19によりシェルタ10の外部筺体10Dに接続され、この外部筺体10Dは一点にて接地されている。図示されていないが、電気・電子機器12a〜14a等の電源回路も内部筺体12〜14に収納されており、前記共通接地線19により一括して接地されている。
【0017】
外線収容部10Bにおける外線21及び共通接地線19の処理や、内線収容部10Cにおける内線22の処理には、配線分離専用のラックが用いられている。
なお、このシェルタ10は、駅構内または信号設備や踏切設備の近辺、線路沿線など、鉄道設備の近くに設置されるものである。
【0018】
この実施形態によれば、保護・変換装置11a及び電気・電子機器12a〜14aが集約されてシェルタ10に収納されており、これらの保護・変換装置11a及び電気・電子機器12a〜14aは共通接地線19により接地されたうえ、外部筺体10Dにて一点で接地されている。また、シェルタ10の外部筺体10Dの上部に配置された受電部15、及び、外部筺体10Dの外壁または内壁を構成する高導電性材料も、共通接地線19により一点で接地されている。
このため、仮に周辺のき電線や線路、筺体10D等に落雷し、電気・電子機器12a〜14aや筺体12〜14に過電圧が誘導されたとしても、これらは共通接地線19により等電位接地されているため、各電気・電子機器12a〜14aの間で電位差を生じるおそれがない。従って、過電圧により電気・電子機器12a〜14aが故障し、破損することもない。
【0019】
また、外線21から侵入する雷サージ電流を保護・変換装置11aが大地に逃がし、またはバイパスすることにより、電気・電子機器12a〜14a側に被害が波及するのを防止することができる。
更に、シェルタ10を、外部筺体10Dの高導電性材料を介して接地したことにより、仮に受電部15に落雷したとしても雷サージ電流が速やかに大地へ流れるので、内部の電気・電子機器12a〜14aを確実に保護することができる。
また、外線21、内線22がそれぞれ外線収容部10Bと内線収容部10Cとに分離して収容されているので、仮に外線21に雷サージ電流が流れた場合でも内線22側に電圧が誘導される心配がなく、安全性を一層向上させることができる。
【0020】
次に、本発明の実施例を、図3図9を参照しつつ説明する。
図3は、図1におけるシェルタ10に相当するシェルタ30の構成を示したものであり、31,32は外部筺体を構成する銅板などの高導電性材料、34〜36は外部筺体を構成する鉄板などの高強度材料である。また、33は図1の受電部15に相当する受電部である。
【0021】
受電部33は高導電性材料31,32に接続され、これらの高導電性材料31,32は接地システム41により接地されている。この接地システム41は、図1における共通接地線19と電気的に等価なものであり、図1に示した保護・変換装置11a,電気・電子機器12a〜14aは接地システム41にて等電位接地されている。
図4は、図3において、例えば受電部33に落雷した時の雷サージ電流の経路を示したものであり、雷サージ電流は高抵抗の高強度材料34〜36には流れにくく、主として低抵抗の高導電性材料31,32を介して大地へ流れる。
【0022】
なお、図5図9は、図1に示した保護・変換装置11aまたは電気・電子機器12a〜14aの具体例を例示したものである。
例えば、図5は、インバータまたはコンバータからなる電力変換器61,62及び機器60を備える構成であり、入出力される電圧の種類(直流電圧または交流電圧)に応じて、種々の電力変換器61,62が用いられる。
【0023】
図6は、光/電気変換器71、電気/光変換器72及び機器60を備える構成であり、各変換器71,72と外部との間では光信号を授受し、各変換器71,72と機器60との間で電気信号を授受する例である。
【0024】
図7(a)は外部入力を変圧器81により絶縁、変圧して機器60に供給し、その出力側に保安器等の雷保護装置83を接続すると共に、変圧器81、機器60及び雷保護装置83を共通接地した例である。また、図7(b)は、機器60の入出力側に雷保護装置83をそれぞれ接続した例である。
【0025】
図8(a)は、機器60の入出力側にそれぞれ設けられた絶縁用の変圧器81,82を、機器60と共に共通接地した例である。また、図8(b)は、機器60の入力側に中和線輪84を接続した例である。
【0026】
図9は、無線通信機能を有する機器60と現場機器92との間で、アンテナ91を介して無線通信を行うシステムであり、この場合には、機器60及びアンテナ91をシェルタ30内に収納すれば良い。
【0027】
なお、シェルタ30に収納される保護・変換装置11aまたは電気・電子機器12a〜14aの構成は、図5図9に記載した例に限られないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る収納装置は、信号設備、踏切設備、転轍設備、ATCシステム等に限らず、鉄道設備の運用上必要な各種の電気・電子機器を集約して収納する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10:シェルタ
10A:内部空間
10B:外線収容部
10C:内線収容部
10D:外部筺体
11〜14:内部筺体
11a:保護・変換装置
12a〜14a:通信機器
15:充電部
19:共通接地線
21:外線
22:内線
30:シェルタ
31,32,51:高導電性材料
33:受電部
34〜36,52:高強度材料
41:接地システム(共通接地線)
60:機器
61,62:電力変換器
71:光/電気変換器
72:電気/光変換器
81,82:変圧器
83:雷保護装置(保安器)
84:中和線輪
91:アンテナ
92:現場機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9