特許第6422270号(P6422270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6422270偏光板用粘着剤組成物、粘着剤付偏光板及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422270
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】偏光板用粘着剤組成物、粘着剤付偏光板及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20181105BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20181105BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   G02B5/30
   C09J133/04
   C09J11/06
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-174569(P2014-174569)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-64574(P2015-64574A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-178682(P2013-178682)
(32)【優先日】2013年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 徳久
(72)【発明者】
【氏名】萩原 充紀
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001733(JP,A)
【文献】 特開2012−242473(JP,A)
【文献】 特開2011−241377(JP,A)
【文献】 特開2013−047299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0062260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09J 1/00−5/10、7/00−7/50、
9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する単量体に由来し、含有率が質量%〜8質量%である構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、
芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、
下記一般式(1)で表されるN‐置換イミダゾール化合物と、
チオール基を有するシランカップリング剤と、を含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、前記多価イソシアネート化合物の含有量が0.01質量部〜0.3質量部、前記N‐置換イミダゾール化合物の含有量が0.01質量部〜0.2質量部であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、酸性基を有する単量体に由来する構成単位を実質的に含まない、偏光板用粘着剤組成物。
【化1】
(式中、Rは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、Rはアリール基を示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。またR及びRは互いに連結して、これらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、環状基を有する単量体に由来する構成単位を更に含む請求項1に記載の偏光板用粘着剤組成物。
【請求項3】
偏光子と、前記偏光子上に請求項1または請求項2に記載の偏光板用粘着剤組成物の付与により形成された粘着剤層とを有する粘着剤付偏光板。
【請求項4】
画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された請求項3に記載の粘着剤付偏光板とを備えた表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤組成物、粘着剤付偏光板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置など、画像を表示する表示装置としては様々な表示方式の装置が広く普及している。このうち、液晶表示装置は、一般に所定の方向に配向した液晶成分がガラス等の2枚の支持基板の間に挟持された液晶セルと、偏光板、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとを貼り合わせた構造を有している。光学フィルム同士の積層や光学フィルムを液晶セルに貼着する際には、粘着剤が用いられている。
【0003】
液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲーション等の表示装置として広範に使用されており、例えば、高温高湿の水分量の多い過酷な環境条件や低湿の乾いた環境条件など、様々な環境条件下で使用される。したがって、長期に亘り使用された場合でも、粘着剤で貼り合わせた貼合せ部、すなわち粘着剤層と偏光フィルムとの間の界面が剥がれたり、粘着剤層に破断が生じたりすることがなく、粘着剤層に気泡の発生等が生じ難いといった高い耐久性能をそなえていることが要求される。
【0004】
また携帯電話や携帯情報端末等のモバイル機器の多くには、表示装置とともにタッチパネルが搭載されている。タッチパネルが搭載された表示装置に使用される偏光板用粘着剤には、タッチパネルの部材を腐食しないように、酸成分を含まないことが要求されている。
【0005】
一方、粘着剤は架橋反応を進行させるため、室温で1週間程度の長い養生時間が必要であり、長期の養生時間により、生産性が低下したり、在庫量が増大したりするという課題が生じていた。養生時間を短縮する方法としては、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物を使用する方法が挙げられる。しかし、環境対応の観点から錫化合物の使用には法規制が検討されていたり、安全面での懸念が持たれたりするようになっている。そのため、錫化合物の使用以外の養生短縮方法が求められている。他の養生短縮方法としては、水酸基含有樹脂にカルボキシル基を有するモノマーを共重合する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。更に水酸基とカルボキシル基を有する樹脂に架橋剤としてイソシアヌレート構造を有するトリレンジイソシアネート系化合物を組み合わせる方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−91500号公報
【特許文献2】国際公開第2011/062127号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような養生時間を短縮する方法では、粘着剤を構成する樹脂が酸成分を含むため、特にタッチパネルが搭載された表示装置に適用することが困難であった。また、樹脂が酸成分を含有しない粘着剤では、充分な耐久性が得られない場合があった。さらに、養生時間が短い粘着剤組成物は、溶液状態でも架橋反応が進行して溶液粘度があがりやすく、配合混合後短時間で塗工作業を行う必要が生じたり、塗膜にスジ状の欠陥が発生したり、塗工作業工程において問題となることがあった。
本発明は、十分なポットライフを維持しつつ、養生時間を短縮可能で、耐久性に優れる偏光板用粘着剤組成物、並びにこれを用いてなる粘着剤付偏光板及び表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定の範囲である(メタ)アクリル系共重合体と、イソシアネレート構造を有する芳香族ジイソシアネート系化合物と、特定の構造を有するN−置換イミダゾール化合物とを特定の含有量で組み合わせることで、酸成分を含有することなく、十分なポットライフを維持しながら養生時間を短縮可能で、優れた耐久性を有することができるとの知見を得て、かかる知見に基づき完成されたものである。
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 水酸基を有する単量体に由来し、含有率が0.5質量%〜8質量%である構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、下記一般式(1)で表されるN‐置換イミダゾール化合物と、を含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、前記多価イソシアネート化合物の含有量が0.01質量部〜0.3質量部、前記N‐置換イミダゾール化合物の含有量が0.02質量部〜0.2質量部である偏光板用粘着剤組成物である。
【化1】
一般式(1)中、Rは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、Rはアリール基を示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。またR及びRは互いに連結して、これらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
【0010】
<2> 前記(メタ)アクリル系共重合体は、環状基を有する単量体に由来する構成単位を更に含む前記<1>に記載の偏光板用粘着剤組成物である。
【0011】
<3> 偏光子と、前記偏光子上に前記<1>または<2>に記載の偏光板用粘着剤組成物の付与により形成された粘着剤層とを有する粘着剤付偏光板である。
【0012】
<4> 画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された前記<3>に記載の粘着剤付偏光板とを備えた表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分なポットライフを維持しつつ、養生時間を短縮可能で、耐久性に優れる偏光板用粘着剤組成物、並びにこれを用いてなる粘着剤付偏光板及び表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリルとはアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0015】
<偏光板用粘着剤組成物>
本発明の偏光板用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう)は、水酸基を有する単量体に由来し、含有率が0.5質量%〜8質量%である構成単位、及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系共重合体と、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物と、特定構造を有するN−置換イミダゾール化合物とを含有し、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対する前記多価イソシアネート化合物の含有量が0.01質量部〜0.3質量部、前記N−置換イミダゾール化合物の含有量が0.02質量部〜0.2質量部である。前記偏光板用粘着剤組成物は、必要に応じて更に、シランカップリング剤、その他の添加剤等の他の成分を含有してもよい。
【0016】
偏光板用粘着剤組成物が上記のような構成であることで、十分なポットライフを維持しつつ、養生時間を短縮することができ、さらには適切な架橋反応速度と、優れた弾性と粘性のバランスを有するので、優れた耐久性を示すことが可能となる。また、前記偏光板用粘着剤組成物は、その構成成分である(メタ)アクリル系共重合体が酸性基を有していなくても、優れた耐久性を有し、短縮された養生時間で使用可能となることから、タッチパネルを備える表示装置に好ましく適用することができる。
【0017】
本発明においては、前記(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を特定量含んでおり、これが特定の構造を有する多価イソシアネート化合物で適度に架橋されることにより、弾性と粘性のバランスに優れ、さらに、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を特定量含有する前記(メタ)アクリル系共重合体と、多価イソシアネート化合物とN−置換イミダゾール化合物とを特定量含むことで架橋反応速度が適切な範囲に調整されることにより、基材への密着性にも優れることから、偏光板用粘着剤組成物の耐久性に優れると考えられる。また、(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有し、多価イソシアネート化合物が特定の構造を有していることで架橋反応が促進され、養生時間が短縮されると考えられる。更に(メタ)アクリル系共重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を特定量含有し、多価イソシアネート化合物とN−置換イミダゾール化合物とが特定の構造を有していることで、ポットライフを十分に維持しながら、架橋反応が促進され、ポットライフと養生時間の短縮を両立できると考えられる。
【0018】
(A)(メタ)アクリル系共重合体
前記偏光板用粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来し、含有率が0.5質量%〜8質量%である構成単位の少なくとも1種と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種とを含む(メタ)アクリル系共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう)の少なくとも1種を含有する。前記(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体と、アルキル(メタ)アクリレートと、必要に応じてその他の単量体を更に含み、水酸基を含む単量体の含有率が0.5質量%〜8質量%である単量体組成物を共重合して得られる共重合体である。
前記単量体組成物がその他の単量体を含む場合、(メタ)アクリル系共重合体は水酸基を含む単量体に由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位に加えてその他の単量体に由来する構成単位を含むことになる。
【0019】
前記(メタ)アクリル共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の少なくとも1種を含む。水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことで、粘着剤としての凝集力が向上して耐久性が向上し、且つ表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れを抑制することができる。
【0021】
前記(メタ)アクリル系共重合体を構成する水酸基を有する単量体は、1分子中に少なくとも1つの水酸基を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な重合性化合物であれば特に制限はない。水酸基を有する単量体の1分子中における水酸基数は特に制限されないが、1であることが好ましい。
水酸基を有する単量体として具体的には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、エチレン性二重結合を有するアルコール誘導体を挙げることができる。中でも水酸基を有する単量体は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、ヒドロキシアルキルアクリレートであることがより好ましい。
【0022】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数としては、2〜8であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが更に好ましい。また水酸基の置換位置は特に制限されない。
【0023】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール、メタリルアルコール等を挙げることができる。
水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(メタ)アクリル系共重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に0.5質量%〜8質量%であり、耐久性と養生時間短縮およびポットライフの観点から、2質量%〜8質量%であることが好ましく、2質量%〜6質量%であることがより好ましい。水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が2質量%未満であると、充分な耐久性と養生時間の短縮を達成することができない。また水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が8質量%を超えると、優れた耐久性と十分なポットライフを維持できない傾向がある。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体は、耐久性と養生時間短縮およびポットライフの観点から、水酸基を有する単量体に由来する構成単位として、アルキル基部分の炭素数が2〜6のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.5質量%〜8質量%含むことが好ましく、アルキル基部分の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を2質量%〜8質量%含むことがより好ましく、アルキル基部分の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキルアクリレートに由来する構成単位を2質量%〜6質量%含むことが更に好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種を含む。アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数としては、1〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましく、1〜6であることが特に好ましい。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもアルキル(メタ)アクリレートは、粘着剤の凝集力と接着力を調整しやすい点で、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキルアクリレートが更に好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、(メタ)アクリル系共重合体を構成する主成分として含まれることが好ましく、その含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの含有比率が前記範囲内であると、最適な弾性率に調整することができ、耐久性、タック性確保の点で有利である。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位に加えて、環状基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましく、芳香環基を有する単量体に由来する構成単位を含むことがより好ましい。(メタ)アクリル共重合体が環状基を有する単量体に由来する構成単位を更に含むことで、表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れをより効果的に抑制することができる。
【0030】
環状基を有する単量体は、分子内に少なくとも1つの環状基を有し、アルキル(メタ)アクリレートと共重合体可能な重合性化合物であれば特に制限はない。環状基を有する単量体における環状基としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、脂肪族炭化水素基等が挙げられ、芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。環状基を有する単量体における環状基の含有数は、1〜2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
環状基を有する単量体としては、環状基を有する(メタ)アクリレート、環状基を有する(メタ)アクリルアミド、スチレン誘導体等を挙げることができる。中でも環状基を有する単量体は、環状基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、芳香環基を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましく、芳香環基がアルキレン基、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが更に好ましく、芳香環基がオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
【0031】
環状基を有する単量体の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート等の芳香環基を有する(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体などを挙げることができる。中でも環状基を有する単量体は、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ナフチルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環基がオキシアルキレン基を介してエステル結合した(メタ)アクリレートであることが好ましい。
環状基を有する単量体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリル系共重合体が環状基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、その含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に、1質量%〜10質量%であることが好ましく、2質量%〜9質量%であることがより好ましく、3質量%〜7質量%であることが更に好ましい。環状基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が前記範囲であると、環状基を有する単量体による臭気の問題を生じにくく、表示装置の偏光板に適用した場合に光漏れをより効果的に抑制することができる。
【0033】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート及び必要に応じて含まれる環状基を有する単量体に由来する構成単位に加えて、これら以外のその他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
その他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の酸性基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等の塩基性基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクロリニトリル等のシアン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体などを挙げることができる。
【0034】
(メタ)アクリル系共重合体における酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体の総質量中に0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが更に好ましい。ここで実質的に含まないとは、不可避的に混入する酸性基を有する単量体に由来する構成単位の存在を許容することを意味する。
【0035】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、例えば80万〜180万とすることができ、100万〜180万であることが好ましく、130万〜180万であることがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲であることで、偏光板用着剤組成物の塗工時における取扱性、耐久性に優れる。
また(メタ)アクリル系共重合体の分散度(Mw/Mn)は特に制限されず、例えば2〜10とすることができ、4〜9であることが好ましく、5〜8であることがより好ましい。分散度が前記範囲であることで、耐久性に優れる。
【0036】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、通常の条件で測定することができる。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体は、水酸基を有する単量体、アルキル(メタ)アクリレート、必要に応じて含まれる環状基を有する単量体を含む単量体組成物を重合することで製造することができる。単量体組成物の重合方法は、特に制限されるものではなく、通常用いられる重合方法から適宜選択することができる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等を挙げることができる。中でも処理工程が比較的簡単で、かつ短時間で行なえることから、溶液重合が好ましい。
【0038】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流下で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。前記重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えばアゾ系化合物を用いることができる。
なお、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、アクリル系反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量に調整することができる。
【0039】
偏光板用粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、特に制限されない。(メタ)アクリル系共重合体の含有率は、偏光板用粘着剤組成物の総質量中に、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0040】
(B)多価イソシアネート化合物
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物(以下、単に「多価イソシアネート化合物」ともいう)の少なくとも1種を含有する。例えば前記多価イソシアネート化合物は、偏光板用粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系共重合体に対する架橋剤として作用する。(メタ)アクリル系共重合体が特定の範囲で水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含み、多価イソシアネート化合物が特定の構造を有することで、優れた耐久性と養生時間の短縮が両立できる。
【0041】
本発明においては、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造と、イソシアヌレート環構造とを有する多価イソシアネート化合物を用いることが必要である。例えば、芳香族ジイソシアネートに由来する部分構造を有し、イソシアヌレート環構造を有さない多価イソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネートに由来する部分構造を有さず、イソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物等では、養生時間の短縮効果が充分には得られない傾向がある。
【0042】
多価イソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物に由来する部分構造と、イソシアヌレート環構造を有する化合物であれば特に制限されない。中でも多価イソシアネート化合物は、複数の芳香族ジイソシアネート化合物におけるそれぞれのイソシアネート基が付加反応によってイソシアヌレート環構造を形成した多価イソシアネート化合物であることが好ましい。この場合、多価イソシアネート化合物を形成する芳香族ジイソシアネート化合物は1種のみであっても2種以上の混合物であってもよい。
【0043】
また芳香族ジイソシアネート化合物は芳香環上に2つのイソシアネート基を有する化合物であればよく、ベンゼン環上に2つのイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、トリレンジイソシアネートであることがより好ましく、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6トリレンジイソシアネートから選ばれる少なくとも一方であることが更に好ましい。
【0044】
多価イソシアネート化合物として具体的には、下記一般式(2)で表される芳香族ジイソシアネート化合物の3量体である化合物、下記一般式(3)で表される芳香族ジイソシアネート化合物の5量体である化合物、芳香族ジイソシアネート化合物の7量体等を挙げることができる。更に多価イソシアネート化合物は芳香族ジイソシアネート化合物とアルキレンジイソシアネート化合物から形成されるイソシアヌレート環構造を有する化合物であってもよく、トリレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートから形成されるイソシアヌレート環構造を有する化合物であることもまた好ましい。
多価イソシアネート化合物は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
一般式(2)及び一般式(3)において、R11からR25はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。R11〜R13のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R14〜R16のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R17〜R19のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R20〜R22のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。R23〜R25のうち1つはメチル基であって残りが水素原子であることが好ましい。
【0048】
前記芳香族ジイソシアネレート化合物に由来する部分構造、及びイソシアヌレート環構造を有する多価イソシアネート化合物は、常法により調製したものであっても、市販のものであってもよい。前記多価イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、住友バイエルウレタン株式会社製の商品名「デスモジュールIL1451CN」、「デスモジュールILBA」、「デスモジュールHL」、「スミジュールFL−2」、「スミジュールFL−3」、及び「SBUイソシアネート0817」、日本ポリウレタン工業株式会社製の商品名「コロネート2030」、「コロネート2037」、並びにSAPICI社製の商品名「Polurene KC」及び「Polurene HR」を挙げることができる。
【0049】
偏光板用粘着剤組成物において、多価イソシアネート化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、0.01質量部〜0.3質量部の範囲であり、好ましくは0.05質量部〜0.3質量部の範囲であり、より好ましくは0.05質量部〜0.2質量部の範囲である。多価イソシアネート化合物の含有量が0.01質量部未満では、架橋反応が充分に進行せずに凝集力が不足し、接着性及び耐久性が充分に得られない傾向がある。また多価イソシアネート化合物の含有量が0.3質量部を超えると、耐久性が悪化したり、ポットライフが充分に得られない傾向がる。
【0050】
偏光板用粘着剤組成物は、前記多価イソシアネート化合物に加えて、これ以外のその他の架橋剤を更に含んでいてもよい。その他の架橋剤としては、芳香族ジイソシアネートに由来する部分構造を有し、イソシアヌレート環構造とを有さない多価イソシアネート化合物以外のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができる。
偏光板用粘着剤組成物がその他の架橋剤を含む場合、その含有量は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
(C)イミダゾール化合物
偏光板用粘着剤組成物は、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の少なくとも1種を含む。一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物は、偏光板用粘着剤組成物において、例えば硬化促進剤として機能する。偏光板用粘着剤組成物が一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物を含むことで、優れた耐久性と十分なポットライフを維持しつつ、養生時間をより短縮することができる。
【0052】
【化1】
【0053】
一般式(1)において、Rは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、Rはアリール基を示し、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。またR及びRは互いに連結して、これらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。
【0054】
一般式(1)において、アルキル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。またアルキル基の炭素数は1〜2であることが好ましい。一般式(1)におけるアリール基は、炭素数が6〜10であることが好ましく、フェニル基又はナフチル基であることがより好ましい。一般式(1)におけるアラルキル基は、炭素数1〜2のアルキレン基と炭素数6〜10のアリール基からなることが好ましく、ベンジル基、フェニルエチル基であることがより好ましい。
【0055】
一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物は、ポットライフと養生時間短縮の観点から、Rがアルキル基又はアラルキル基であって、Rがアリール基、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、Rがアラルキル基であって、Rがアリール基、R、Rがそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基であることがより好ましく、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールであることがさらに好ましい。
【0056】
偏光板用粘着剤組成物において、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.02質量部〜0.2質量部の範囲であり、0.02質量部〜0.1質量部の範囲が好ましい。一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の含有量が0.02質量部以上であれば、養生時間短縮の効果が十分である。また、一般式(1)で表されるN−置換イミダゾール化合物の含有量が0.2質量部以内であると、架橋反応速度が適切であり、優れた耐久性と十分なポットライフが得られる。
【0057】
偏光板用粘着剤組成物は、N−置換イミダゾール化合物として1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールを前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.02質量部〜0.2質量部の範囲で含むことが好ましい。
【0058】
(D)シランカップリング剤
偏光板用粘着剤組成物は、シランカップリング剤の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。偏光板用粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、偏光板が組み込まれた表示装置(例えば液晶表示装置)が高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層と偏光板又は液晶セルとの間に剥がれがより発生し難くなる傾向がある。更に偏光板用粘着剤組成物が平滑なガラスに、より優れた接着性を示すようになる傾向がある。
【0059】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基を有するシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM−803」、「KBM−802」、「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」等のチオール基を有するシランカップリング剤、信越化学工業株式会社製の「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、「KBE−403」(商品名)等のエポキシ基を有するシランカップリング剤などを好適に使用することができる。
【0061】
シランカップリング剤の中でも、耐久性とリワーク性の観点から、チオール基を有するシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、チオール基を有するオリゴマー型のシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。ここでのチオール基を有するオリゴマー型シランカップリング剤としては、チオール基を有するシランカップリング剤とチオール基を有さないシランカップリング剤からなるシランカップリング剤であることが好ましく、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「X−41−1810」、「X−41−1805」、「X−41−1818」を挙げることができる。
【0062】
偏光板用粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有する場合、偏光板用粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.05質量部〜5質量部の範囲が好ましく、0.05質量部〜3質量部の範囲がより好ましく、0.1質量部〜1.5質量部の範囲が更に好ましい。
【0063】
(E)その他の成分
偏光板用粘着剤組成物は、上記成分の他、更に必要に応じて、溶剤、紫外線吸収剤等の耐候性安定剤、タッキファイアー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などを含有してもよい。偏光板用粘着剤組成物がその他の成分を含有する場合、その含有率は本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0064】
<粘着剤付偏光板>
本発明の粘着剤付偏光板は、少なくとも、偏光子と、既述の本発明の偏光板用粘着剤組成物の付与により偏光子上に形成された粘着剤層と、を有する。
【0065】
偏光子としては、一般に、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどが使用される。偏光子は、例えばトリアセチルセルロース(TAC)やポリシクロオレフィン(COP)、アクリルフィルム等の保護用シートの間に保持された例えば3層構造(例えばTAC/偏光子/TAC)に構成された偏光板として用いることができる。
【0066】
例えばTAC/偏光子/TACの3層構造の偏光板の少なくとも一方面に、既述の本発明の偏光板用粘着剤組成物を付与することにより粘着剤層を設けることで、粘着剤付偏光板が作製される。この場合、偏光板上に組成物を付与してもよいが、好ましくは使用時に剥離される保護用シート(剥離シート)上に付与する。偏光板用粘着剤組成物の付与は、液体の偏光板用粘着剤組成物を用いた浸漬法、塗布法、インクジェット法などの塗布方法により好適に行なえる。中でも、塗布法によることが好ましい。
【0067】
具体的には、本発明の偏光板用粘着剤組成物を保護用シート(剥離シート)上に塗布し、乾燥させ、保護用シート上に粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を偏光板上に転写、養生させることで粘着剤付偏光板が作製される。また、本発明の偏光板用粘着剤組成物を保護用シート(剥離シート)上に塗布し、乾燥させ、保護用シート上に粘着剤層を形成した後、粘着剤層の露出面にさらに保護用シートを密着して設けて支持体のない両面粘着テープを作製し、この粘着剤層を養生させた後、一方の保護用シートを剥離し、露出した粘着剤層を偏光板上に転写させることで粘着剤付偏光板が作製されてもよい。
【0068】
保護用シート(剥離シート)上に付与された粘着剤組成物は、熱風乾燥機等を用いて70℃〜120℃で1分〜3分程度の乾燥条件で乾燥されることが好ましい。
【0069】
更に、偏光板上に設けられた粘着剤層の露出面には、被着体に対する接触面を保護する観点から、露出面を保護するための保護用シート(剥離シート)を密着して設けておくことが好ましい。この保護用シートとしては、粘着剤層との間の剥離が容易に行なえるように、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートが好適に用いられる。表示パネルのガラス板等に貼り付けるときには、保護用シートを剥離し、露出した粘着剤層の表面をガラス基板等に密着させる。
また、偏光板の粘着剤層が設けられていない側の表面(露出面)には、その表面を保護する表面保護シートを更に設けてもよい。表面保護シートには、PETフィルムの片面に粘着加工されたプロテクトフィルム等が好適に用いられる。
【0070】
粘着剤層の層厚としては、特に制限されるものではないが、乾燥後の厚みで1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上50μm以下であり、更に好ましくは15μm以上30μm以下である。
【0071】
<表示装置>
本発明の表示装置は、画像を表示する表示パネルと、表示パネルの少なくとも一方面に配置された既述の本発明の粘着剤付偏光板とを設けて構成されている。
表示パネルとしては、液晶化合物が封入された液晶表示パネルや、有機エレクトロルミネッセンス表示パネルなどが挙げられる。
【0072】
本発明の表示装置の例としては、液晶表示パネルの両面に本発明の粘着剤付偏光板を、それぞれについて粘着剤層が液晶表示パネルの表面(例えばガラス基板の表面)に接触するように配置し、粘着剤層を介して液晶表示パネルの両面に偏光板を接着した構造(偏光板/粘着剤層/液晶表示パネル/粘着剤層/偏光板の構造)を備えた液晶表示装置を挙げることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
また、実施例8は、本発明の参考例である。
【0074】
(製造例1)
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)96質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)4質量部、酢酸エチル(EAc)90質量部を入れ、混合した後、反応容器内を窒素置換した。その後、撹拌下に窒素雰囲気中で、反応容器内の混合物を70℃に昇温した後に、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.02質量部と酢酸エチル(EAc)200質量部を逐次添加し6時間反応させた。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系共重合体1の溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて下記条件で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は152万、分散度(Mw/Mn)は6.8であった。
[条件]
・GPC:HLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK−GEL GMHXL 4本使用(東ソー株式会社製)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準試料:標準ポリスチレン
・流速:0.6ml/min.
・カラム温度:40℃
【0075】
(製造例2〜6)
製造例1において、(メタ)アクリル系共重合体1の合成に用いた単量体の種類及び比率を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体2〜6の溶液をそれぞれ得た。
また、得られた各(メタ)アクリル系共重合体について、製造例1と同様にして、Mw及びMnの測定を行なった。結果は、下記表1及び表2に示す。表1中、「BA」はn−ブチルアクリレート、「PHEA」はフェノキシエチルアクリレート、「2HEA」は2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、「−」は未配合であることを示す。
【0076】
【表1】
【0077】
<実施例1>
―粘着剤組成物の調製―
(メタ)アクリル系共重合体(表中では、「共重合体」)として、前記製造例1で得た(メタ)アクリル系共重合体1を100質量部(固形分)と、多価イソシアネート化合物(架橋剤)としてコロネート2037(日本ポリウレタン工業株式会社製)を0.125質量部(固形分)と、第3級イミダゾール化合物(硬化促進剤)としてキュアゾール1B2PZ(四国化成株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)を0.03質量部と、シランカップリング剤としてX−41−1810(信越化学工業株式会社製、チオール基を有するオリゴマー型)を0.1質量部と、を充分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。
【0078】
(ポットライフ)
上記で得られた粘着剤組成物のポットライフを、以下のようにして粘度を測定して粘度上昇率を算出することで評価した。
粘着剤組成物を粘度1500mPa・sとなるように酢酸エチルを用いて調整した後、BH型回転粘度計にて25℃、1分、10rpmでの粘度(a)を測定した。さらに25℃、50%RHの条件下で密閉容器にて24時間放置した後、BH型回転粘度計にて25℃、1分、10rpmでの粘度(b)を測定した。
得られた粘度(a)と粘度(b)を用いて、下式により粘度上昇率(%)を算出した。
粘度上昇率(%)=24時間放置後の粘度(b)/配合直後の粘度(a)×100
【0079】
−評価基準−
A:粘度上昇率(%)が110%未満
B:粘度上昇率(%)が110%以上120%未満
C:粘度上昇率(%)が120%以上
【0080】
(養生時間)
上記で得られた粘着剤組成物が養生に要する時間(養生時間)を以下のようにしてゲル分率を測定することで評価した。
粘着剤組成物の溶液をシリコーン系離型剤で表面処理した剥離フィルム上に、乾燥後の厚みが25μmとなるようにフィルム状の粘着剤層を作製した。次に、作製した粘着剤層を23℃×50%RH環境下で保管し、保管開始から24時間後、48時間後、72時間後、168時間後のゲル分率を以下のようにして測定した。保管時間毎のゲル分率の差が3%以内であり、168時間後で変化がない場合の最初の保管期間を養生終了とし判断した。
【0081】
ゲル分率は、下記方法により測定した。
1.精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)にフィルム状粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて質量を正確に測定して試料を作製する。
2.得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬する。
3.試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を測定する。
4.下式によりゲル分率を計算する。
ゲル分率(質量%) = (Z−X) / (Y−X)× 100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の質量(粘着剤層重量)(g)、Zは浸漬後、乾燥させた金網の質量(ゲル樹脂質量)(g)である
【0082】
−評価基準−
A:養生終了が24時間である。
B:養生終了が48時間である。
C:養生終了が72時間以上である。
【0083】
(耐久性)
シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルムの離型剤処理面に、乾燥後の塗工量が20g/cmとなるように、上記で得られた粘着剤組成物を塗布した。次に、これを熱風循環式乾燥機を用いて100℃で90秒間乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしてTACフィルム/PVAフィルム/TACフィルムの積層構造を有するもの;約190μm〕の裏面と前記粘着剤層の表面とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、65%RHの環境条件下で1日間養生させ、光学フィルムサンプルとして、剥離フィルム/粘着剤層/偏光ベースフィルムの積層構造を有する偏光フィルムを作製した。
【0084】
上記のようにして得られた偏光フィルムサンプルについて、吸収軸に対して長辺が0°になるように140mm×260mmの長方形状にカットし、0.7mm厚みのコーニング社製無アルカリガラス板「イーグルXG」の片面にラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置した。その後、80℃の耐熱条件、又は60℃、90%RHの耐湿熱条件で500時間放置した後、目視で観察し、発泡、又は剥がれの状態を確認し、下記評価基準で評価した。
【0085】
−評価基準−
A:発泡は全く認められなかった。更に外周部から内側に0.2mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
B:発泡はほとんど認められなかった。又は外周部から内側に0.2mm以上の位置に剥がれが認められるが、0.5mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
C:発泡がわずかに認められた。又は外周部から内側に0.5mm以上の位置に剥がれが認められるが、1.0mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
D:発泡が顕著に認められた。又は外周部から内側に1.0mm以上の位置に剥がれが認められた。
【0086】
<実施例2〜8、比較例1〜9>
実施例1において、粘着剤組成物の組成を下記表2、表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、これを用いて光学フィルムサンプルをそれぞれ作製した。
得られた粘着剤組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2、表3に示す。
なお、表中の略号は以下に示す通りであり、配合量は固形分換算の値である。
(架橋剤)
コロネート2037:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
コロネートL:日本ポリウレタン工業株式会社製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
(シランカップリング剤)
X−41−1810:信越化学工業株式会社製、チオール基を有するオリゴマー型
(硬化促進剤)
1B2PZ:四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール
1B2MZ:四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
表2および表3から、本発明の粘着剤組成物においては、十分なポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮できることが分かる。また、これを用いて作製した光学フィルムサンプルは、養生時間1日後においても優れた耐久性を有しており、短い養生時間で使用可能となることが分かる。