(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る入庫処理システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
[実施形態]
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る入庫処理システム1の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る入庫処理システムの概要を説明するための模式図である。
【0014】
本実施形態の入庫処理システム1は、主にタクシー事業者や宅配便事業者等の車両を役務に用いる事業者が使用するシステムである。
図1に示すように、入庫処理システム1は、事業者の業務用の車両2が、1日の業務終了時に事務所や支店等の車両管理側の施設(以下「センタ」という)10に入庫する際に、車両2からセンタ10内のセンタ側端末11に対して、この車両2の運行情報(運行履歴、走行経路、走行時間、売上など)のデータ送信を行う(本実施形態ではこの処理を「入庫処理」と表現する)ことによって、各車両2の運行情報をセンタ側端末11に集約して一元管理するためのものである。このような構成としては、周知のデジタルタコグラフ(車両の運行にかかる速度・時間等を自動的にメモリーカード等に記録する装置)などが挙げられる。
【0015】
図1に示すように、特に本実施形態では、入庫処理システム1は、車両2がセンタ10へ所定距離まで接近し、かつ、所定の入庫条件を満たす場合(例えば現在時刻が入庫用の指定時間帯に含まれる場合)に、当該車両2がセンタ10へ入庫しようとしているものと判定し、車両2が実際にセンタ10へ入庫する前に上記の入庫処理を開始する。入庫処理システム1は、車両2とセンタ側端末11との間で、通信種類の異なる複数の無線通信網(本実施形態では、第1通信網N1、第2通信網N2、及び第3通信網N3の3種類)を利用してデータ通信を実行できる。なお、複数の無線通信網としては、例えば3G回線や4G回線などの携帯電話通信網や、Wi−Fiなどの無線LAN通信網などを含むことができる。
【0016】
また、本実施形態では、入庫処理システム1は、入庫処理において複数の無線通信網N1,N2,N3のうちから所定の優先度や、通信回線の混雑度合に応じて1つの通信網を選択してデータ通信を行うことができる(
図1の例では第2通信網N2が選択されている)。さらに、入庫処理システム1は、
図1に示すようにセンタ10に複数の入庫場所A,Bがある場合には、各入庫場所に割り当てられる無線通信網を優先的に使用してデータ通信を行うこともできる(
図1の例では入庫場所Aに第1通信網N1が割り当てられ、入庫場所Bに第2通信網N2が割り当てられている)。
【0017】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る入庫処理システム1の構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る入庫処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に示すように、入庫処理システム1は、車両2に搭載される車載機6と、センタ10内のセンタ側端末11との間で、複数の無線通信網(第1通信網N1、第2通信網N2、第3通信網N3)のいずれかを利用して車両2の入庫処理を行うものである。
【0019】
車両2は、GPS受信機3と、車速センサ4と、外部機器5と、車載機6とを備える。
【0020】
GPS受信機3は、GPS衛星から送信される電波を受信し、これらの電波に基づいて位置を計算して、車載機6に出力する。車速センサ4は、車両2の走行速度を検出して、車載器6に出力する。外部機器5は、車両2に搭載され、車載機6の処理に必要な各種情報を取得して、車載機6に出力する。
【0021】
車載機6は、センタ側端末11との間で入庫処理を行う。車載機6は、制御部7と、第1無線通信部81と、第2無線通信部82と、第3無線通信部83とを備える。
【0022】
第1無線通信部81、第2無線通信部82、及び第3無線通信部83は、車載機6とセンタ側端末11との間で無線通信によるデータ送受信を行う。第1無線通信部81、第2無線通信部82、及び第3無線通信部83は、それぞれ通信種類の異なる通信網(第1通信網N1、第2通信網N2、第3通信網N3)を介して無線通信を行う。
【0023】
制御部7は、入庫処理の際にセンタ側端末11に送信する各種情報の生成及び記憶や、入庫処理全般を制御する。制御部7は、運行情報生成部71と、入庫処理制御部72と、通信選択部73と、入庫検出部74と、操作部75と、優先度情報記憶部76と、運行情報記憶部77と、を有する。
【0024】
運行情報生成部71は、GPS受信機3から入力される車両2の位置情報や、車速センサ4から入力される速度情報などに基づき、当該車両2の運行情報を生成する。また、運行情報生成部71は、車両2内の外部機器5などから入庫処理で送信する各種情報を取得して上記の運行情報に含めてもよい。運行情報生成部71は、生成した運行情報を運行情報記憶部77に出力する。
【0025】
入庫処理制御部72は、当該車両2の入庫処理を制御する。入庫処理制御部72は、GPS受信機3から入力される車両2の位置情報などに基づき、車両2が所定の入庫条件を満たす場合に入庫処理を実行する。ここで、本実施形態で用いる「入庫条件」とは、車両2がセンタ10に入庫するために行動していることを精度良く判定できる条件であり、例えば、車両2がセンタ10に対して所定距離以下のエリアに進入していることや、現在時刻が入庫用の指定時間帯であること、などを含めることができる。また、入庫処理制御部72は、入庫処理において、運行情報記憶部77に記憶されている車両2の運行情報をセンタ側端末11にデータ送信する。入庫処理制御部72は、第1無線通信部81、第2無線通信部82、及び第3無線通信部83のうち、通信選択部73により適宜選択される通信部を使用して、運行情報のデータ送信を行う。
【0026】
通信選択部73は、入庫処理において入庫処理制御部72が使用する通信部を、車載機6が備える第1無線通信部81、第2無線通信部82、及び第3無線通信部83のうちから選択する。通信選択部73は、優先度情報記憶部76に記憶されている各通信部81,82,83の使用優先度が規定されている「優先度情報」を参照して、優先度の高い通信部を入庫処理に使用する通信部として優先的に選択する。また、通信選択部73は、例えば通信網が混雑している場合など、選択した通信部が指定の通信速度を確保できていない場合には、現在選択している通信部の次に優先度が高いものを選択して、入庫処理制御部72が使用する通信部をこれに変更する。さらに、通信選択部73は、後述する入庫検出部74により車両2が所定の入庫場所に進入していることが検出された場合には、当該入庫場所に割り当てられている通信部の情報を取得し、入庫処理制御部72が使用する通信部をこれに変更することもできる。通信選択部73は、選択または変更した通信部の情報を入庫処理制御部72に出力する。
【0027】
入庫検出部74は、車両2が所定の入庫場所に進入していることを検出し、この情報を通信選択部73に出力する。入庫検出部74は、例えばGPS受信機3から入力される車両2の位置情報などに基づき、車両2が所定の入庫場所に進入していることを検出できる。
【0028】
操作部75は、車載機6の操作者(例えば車両2の運転者)による操作入力を受け付ける。操作部75は、例えば、入庫処理の完了をセンタ側端末11に通知する入庫完了指令用のボタンを含むことができ、このボタンが操作者により押下されたときに、入庫完了指令を入庫処理制御部72に出力する。
【0029】
優先度情報記憶部76は、車載機6が備える第1無線通信部81、第2無線通信部82、及び第3無線通信部83に関する使用優先度が規定されている「優先度情報」を記憶する。なお、この優先度情報は、複数の車両2において、個別に異なる設定とすることができる。例えば第1のグループの車両2において、第1無線通信部81に最高の優先度を設定し、第2無線通信部82に2番目の優先度を設定し、第3無線通信部83に3番目の優先度(最低の優先度)を設定する。一方、第2のグループの車両2では、第1のグループと異なり、第2無線通信部82に最高の優先度を設定し、第3無線通信部83に3番目の優先度を設定し、第1無線通信部81に最低の優先度を設定する。
【0030】
また、優先度情報記憶部76は、車両2が入庫時に駐車する入庫場所が複数ある場合には、個々の入庫場所ごとに優先的に使用すべく割り当てられる通信部の情報も記憶されている。
図1の例では、センタ10に2つの入庫場所A,Bがあり、入庫場所Aには第1通信網N1が割り当てられ、第1無線通信部81を優先的に使用するよう設定される。また、入庫場所Bには第2通信網N2が割り当てられ、第2無線通信部82を優先的に使用するよう設定されている。
【0031】
運行情報記憶部77は、運行情報生成部71により生成された車両2の運行情報を記憶する。また、運行情報記憶部77は、入庫処理制御部72へ運行情報を出力する。
【0032】
車載機6の制御部7は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路として構成できる。上述した制御部7の各要素の機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで車両2内の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0033】
センタ側端末11は、車両2の車載機6から送信された運行情報を集約して、各車両2の運行情報を一元的に管理する装置である。センタ側端末11は、例えばCPU、RAM、ROM、キーボード及びマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、ネットワークカード等のデータ送受信デバイス、ハードディスク等の補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成できる。
【0034】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る入庫処理システム1の動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る入庫処理システムによる運行情報送信処理を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートの処理は、車載機6の制御部7によって、例えば所定周期ごとに実行される。
【0035】
ステップS01では、入庫処理制御部72により、車両2がセンタ10に対して所定距離以下のエリアに進入しているか否かが判定される。入庫処理制御部72は、GPS受信機3により外部から受信される情報に基づいて車両2の現在位置を取得し、センタ10へ所定距離まで接近していることを判定することができる。ステップS01の判定の結果、車両2がセンタ10に対して所定距離以下のエリアに進入している場合にはステップS02に進み、そうでない場合には車両2が当該エリアに進入することを検知するまで待機する。
【0036】
ここで、上記の「センタ10に対して所定距離以下のエリア」とは、センタ10の敷地を基準とするエリアを意味するものでもよいし、センタ側端末11の設置位置を基準とするエリアを意味するものでもよいし、または、センタ側端末11が無線通信のために使用する通信機を基準とするエリアを意味するものでもよい。また、上記の「所定距離」は必ずしも全方位で同一でなくてもよい。
【0037】
図3に戻り、ステップS02では、入庫処理制御部72により、現在時刻が入庫用の指定時間帯に含まれるか否かが判定される。入庫処理制御部72は、例えば車両2や車載機6に設置される時計や、GPS受信機3により受信されるGPS情報などに基づいて現在時刻を取得する。ステップS02の判定の結果、現在時刻が入庫用の指定時間帯に含まれる場合にはステップS03に進み、そうでない場合にはステップS01に戻る。
【0038】
ステップS03では、上記のステップS01,S02の判定の結果、所定の入庫条件(車両2がセンタ10に対して所定距離以下のエリアに進入していること、かつ、現在時刻が入庫用の指定時間帯に含まれること)を満たしているため、入庫処理を開始すべく、まずは、通信選択部73により、優先度が最も高い通信部が選択される。通信選択部73は、優先度情報記憶部76を参照して、当該車両2向けに設定されている各通信部81,82,83の優先度情報を参照して、第1無線通信部81、第2無線通信部82、第3無線通信部83の中から優先度が最も高い通信部を選択する。通信選択部73は、選択した通信部の情報を入庫処理制御部72に出力する。ステップS03の処理が完了するとステップS04に進む。
【0039】
ステップS04では、入庫処理制御部72により、センタ側端末11に対して運行情報のデータ送信が開始される。入庫処理制御部72は、運行情報記憶部77に記憶されている車両2の運行情報を、ステップS03にて通信選択部73により選択された通信部を使用してセンタ側端末11に送信する。ステップS04の処理が完了するとステップS05に進む。
【0040】
ステップS05では、通信選択部73により、ステップS03にて選択され、現在運行情報のデータ送信に使用している通信部において、指定の通信速度以上が出ているか否かが判定される。ステップS05の判定の結果、指定の通信速度以上である場合にはステップS12に進み、そうでない場合にはステップS06に進む。
【0041】
ステップS06では、通信選択部73により、運行情報のデータ送信に使用する通信部が、現在のものから優先度が次に高い通信部に変更される。通信選択部73は、ステップS03と同様に、優先度情報記憶部76を参照して、第1無線通信部81、第2無線通信部82、第3無線通信部83の中から優先度が次に高い通信部を選択する。例えば、本ステップによる通信部の変更処理が1回目の場合には、通信選択部73は優先度情報の中で優先度が2番目に高い通信部を新たに選択する。また、本ステップによる通信部の変更処理が2回目の場合には、通信選択部73は優先度情報の中で優先度が3番目に高い通信部(すなわち本実施形態では優先度が最も低い通信部)を新たに選択する。通信選択部73は、選択した通信部の情報を入庫処理制御部72に出力する。入庫処理制御部72は、運行情報のデータ送信に使用している通信部を、通信選択部73により新たに選択された通信部に変更する。ステップS06の処理が完了するとステップS07に進む。
【0042】
ステップS07では、通信選択部73により、ステップS06にて選択され、現在運行情報のデータ送信に使用している通信部において、指定の通信速度以上が出ているか否かが判定される。ステップS07の判定の結果、指定の通信速度以上である場合にはステップS12に進み、そうでない場合にはステップS08に進む。
【0043】
ステップS08では、通信選択部73により、今回の処理フローにおいて、運行情報のデータ送信に使用する通信部の変更を所定回数行ったか否かが判定される。本実施形態では、車載機6が備える通信部は第1無線通信部81、第2無線通信部82、及び第3無線通信部83の3種類であるので、本ステップにおける通信部変更の所定回数は「2回」である。ステップS08の判定の結果、通信部の変更を既に所定回数行った場合にはステップS09に進み、そうでない場合にはステップS06に戻り通信部の変更が再度行われる。
【0044】
ステップS09では、通信選択部73により、運行情報のデータ送信に使用する通信部が、現在選択されているものから優先度が最も高い通信部に変更される。上記のステップS03〜S08の処理の結果、車載機6が備える全ての通信部81,82,83において指定の通信速度を確保できていない状況であるため、本ステップでは優先度最上位の通信部が暫定的に選択される。入庫処理制御部72は、運行情報のデータ送信に使用している通信部を、通信選択部73により新たに選択された優先度最上位の通信部に変更する。ステップS09の処理が完了するとステップS10に進む。
【0045】
ステップS10では、通信選択部73により、ステップS09にて選択され、現在運行情報のデータ送信に使用している優先度最上位の通信部において、指定の通信速度以上が出ているか否かが判定される。ステップS10の判定の結果、指定の通信速度以上である場合にはステップS12に進み、そうでない場合にはステップS11に進む。
【0046】
ステップS11では、ステップS10の判定の結果、ステップS09にて暫定的に選択された優先度最上位の通信部でも指定の通信速度を確保できないため、入庫処理制御部72により、通信速度が回復するまでは、センタ側端末11に対する運行情報のデータ送信が停止される。ステップS11の処理が完了するとステップS10に戻る。
【0047】
ステップS12では、上記のステップS03〜S11の処理の結果、指定の通信速度以上となる通信部を選択することができたため、入庫処理制御部72により、選択された通信部を使用して、センタ側端末11に対する運行情報のデータ送信が継続される。ステップS12の処理が完了するとステップS13に進む。
【0048】
ステップS13では、入庫検出部74により、車両2が所定の入庫場所に進入しているか否かが判定される。本実施形態では、センタ10に所属する各車両2が入庫時に駐車するスペースとして複数の入庫場所A,Bがセンタ10に設けられており、これらの複数の入庫場所A,Bごとに、それぞれ異なる通信部を使用してセンタ側端末11と通信を行うように指定されている(
図1参照)。入庫検出部74は、GPS受信機3により外部から受信される情報に基づいて車両2の現在位置を取得し、車両2が所定の入庫場所に進入していることを判定することができる。ステップS13の判定の結果、車両2が所定の入庫場所に進入している場合にはステップS14に進み、そうでない場合にはステップS15に進む。なお、本ステップにおいて、車両2が所定の入庫場所に実際に入庫する前に、この入庫場所に対して所定距離以下のエリアに進入した時点で、車両2が所定の入庫場所に進入していると判定してもよい。
【0049】
ステップS14では、通信選択部73により、運行情報のデータ送信に使用する通信部が、入庫場所ごとに指定されている通信部に変更される。通信選択部73は、ステップS13にて車両2が所定の入庫場所に進入していることが検出されたため、優先度情報よりも入庫場所に割り当てられている通信部を優先して選択する。例えば
図1の例では、車両2が入庫場所Aに進入する場合には、第1無線通信部81が優先的に選択される。なお、このような入庫場所と通信部との紐づけは車載機6が予め保持しており、例えば優先度情報記憶部76などに記憶されている。入庫処理制御部72は、運行情報のデータ送信に使用している通信部を、通信選択部73により新たに選択された通信部に変更する。ステップS14の処理が完了するとステップS15に進む。
【0050】
ステップS15では、入庫処理制御部72により、入庫処理が完了したか否かが判定される。入庫処理制御部72は、例えば操作部75を介して車載機6の操作者から入力される入庫完了指令を受けること、または、運行情報のデータ送信が完了したこと、などを判定条件として、入庫処理が完了したことを判定することができる。ステップS15の判定の結果、入庫処理が完了している場合にはステップS16に進み、そうでない場合にはステップS12に戻る。
【0051】
ステップS16では、入庫処理制御部72により、センタ側端末11に対して当該車両2の入庫処理が完了したことを知らせる入庫完了情報が送信される。ステップS16の処理が完了すると本制御フローを終了する。
【0052】
次に、本実施形態に係る入庫処理システム1の効果について説明する。
【0053】
本実施形態の入庫処理システム1は、センタ10に配置されたセンタ側端末11と、車両2に搭載された車載機6と、を具備する。車載機6は、センタ側端末11とのデータ通信を行う通信部(第1無線通信部81、第2無線通信部82、第3無線通信部83)と、車両2の入庫時に通信部81,82、83を介して当該車両2の運行情報をセンタ側端末11へ送信する入庫処理を制御する制御部7と、を備える。制御部7の入庫処理制御部72は、所定の入庫条件を満たし、かつ、車両2がセンタ10に対して所定距離以下のエリアまで入ったときに、通信部81,82,83を介して運行情報をセンタ側端末11に送信する。
【0054】
この構成により、車両2が所定の入庫場所に進入する前に入庫処理を開始して、車両2の運行情報をセンタ側端末11へ送信できるので、車両2が実際に入庫したときには、端末11へ送信すべきデータ量を低減でき、この結果、車両2が入庫場所に駐車した後の入庫処理に要する時間を短縮できる。
【0055】
また、本実施形態の入庫処理システム1において、「入庫条件を満たす場合」とは、現在時刻が所定の入庫用時間帯(上記の「入庫用の指定時間帯」)に含まれる場合を含む。
【0056】
この構成により、入庫用時間帯以外の時間帯に車両2がセンタ10周辺を走行するときに、誤って車両2の運行情報がセンタ側端末11へ送信されるのを防止でき、無駄なデータ送信を抑制できる。
【0057】
また、本実施形態の入庫処理システム1において、車両2は、通信種類の異なる複数の通信部(第1無線通信部81、第2無線通信部82、第3無線通信部83)を有し、制御部7の通信選択部73は、運行情報を送信する際に、複数の通信部から1つを選択し、選択した1つの通信部の通信速度が所定値以下の場合、他の通信部を選択する。
【0058】
この構成により、通信速度で有利な通信部を選択して運行情報を送信することができるので、運行情報の送信に要する時間を低減でき、車両2が入庫場所に駐車した後の入庫処理に要する時間をさらに短縮できる。
【0059】
また、本実施形態の入庫処理システム1において、車載機6の制御部7は、複数の通信部81,82,83のそれぞれの優先度を含む優先度情報を記憶する優先度情報記憶部76を有し、制御部7の通信選択部73は、運行情報を送信する際に、複数の通信部81,82,83から優先度が最も高い第一の通信部を選択する。また、制御部7は、選択した第一の通信部の通信速度が所定値以下の場合、優先度が次に高い第二の通信部を選択し、選択した第二の通信部の通信速度が所定値以下の場合、優先度が次に高い第三の通信部を選択する。
【0060】
この構成により、複数の通信部81,82,83から所定の優先度に基づき1つを選択できるので、より適切な通信部の選択が可能となる。例えば、複数の通信部81,82,83のうち、通信性能に優れるものに高い優先度を付ければ、選択した通信部の通信速度が所定値以下となるケースの低減が期待できる。
【0061】
また、本実施形態の入庫処理システム1において、優先度情報は、車両2ごとに個別に設定される。これにより、各車両2が選択する通信部の傾向を分散させることができ、より適切な通信部の選択が可能となる。
【0062】
また、本実施形態の入庫処理システム1において、制御部7の通信選択部73は、車両2が特定場所にいる場合に、複数の通信部81,82,83の中から特定場所に割り当てられる特定の通信部を選択する。この特定場所とは、例えば、車両2の入庫時に駐車する入庫場所である。
【0063】
この構成により、上記の優先度に基づく選択に加えて、さらに車両2の位置に応じて各車両2が選択する通信部の傾向を分散させることができるので、より適切な通信部の選択が可能となる。なお、本実施形態では上記の特定場所の具体例として「車両2の入庫場所」を例示したが、例えばセンタ10周辺の特定のエリアを特定場所として設定することもできる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0065】
上記実施形態では、まず優先度が最も高い通信部を選択してデータ送信を開始した後に、データ送信を行いながら通信速度に応じて適宜通信部を変更する構成を例示したが、優先度に基づき通信速度を選択する構成であれば他の構成でもよい。例えば、まず優先度が高い順に通信部の通信速度を確認して、通信速度を確保できる通信部を決定し、その後にデータ送信を開始する構成とすることもできる。
【0066】
上記実施形態では、入庫処理を開始するための入庫条件の一つとして、現在時刻が入庫用時間帯に含まれることを例示したが、他の条件を含めてもよい。例えば車載機6の操作部75に、車両2の運転者が入庫処理を開始したいときに押下する入庫開始ボタンを設け、このボタンが押下されたとき、かつ、車両2がセンタ10に対して所定距離以下のエリアに進入しているときに、入庫処理を開始する構成としてもよい。また、入庫開始ボタンが押下されることを入庫条件の1つとして追加してもよい。
【0067】
上記実施形態では、入庫処理システム1が、複数の通信部(第1無線通信部81、第2無線通信部82、第3無線通信部83)を備える構成を例示したが、単一の通信部により車載機6とセンタ側端末11との間でデータ通信を行う構成としてもよい。
【0068】
上記実施形態では、
図3のフローチャートに示す通り、(1)複数の通信部81,82,83の中から優先度情報及び通信速度に基づいてデータ通信に用いる1つの通信部を選択し、その後に、(2)車両が所定の入庫場所に入ったときにはこの入庫場所ごとに指定されている通信部に変更する構成を例示したが、上記(2)を含まない構成としてもよい。この場合、
図3のフローチャートでは、点線で囲まれるステップS13,S14の各処理を実施しなければよい。
【0069】
上記実施形態では、車両2の車載機6から運行情報を集約して一元管理するセンタ側端末11がセンタ10内に設置される構成を例示したが、センタ側端末11はセンタ10の敷地外に設置されてもよい。