特許第6422284号(P6422284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422284
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
   B41J2/335 101Z
   B41J2/335 101H
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-197959(P2014-197959)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-68304(P2016-68304A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(74)【代理人】
【識別番号】100081732
【弁理士】
【氏名又は名称】大胡 典夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−181058(JP,A)
【文献】 特開平04−284261(JP,A)
【文献】 特開2012−206273(JP,A)
【文献】 実開昭59−154778(JP,U)
【文献】 特開平08−150753(JP,A)
【文献】 特開2009−279803(JP,A)
【文献】 特開平04−221660(JP,A)
【文献】 特開昭62−183352(JP,A)
【文献】 実開昭58−101758(JP,U)
【文献】 米国特許第05570123(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流の供給を受けて発熱する発熱抵抗体が発熱面において主走査方向に沿って配置された発熱抵抗体基板と、
前記発熱抵抗体基板に主走査方向に沿って設けられた、電気接続用の複数の発熱抵抗体基板側端子と、
前記発熱抵抗体基板を着脱可能に支持し、装着時に前記発熱抵抗体の熱を放熱する放熱板と、
前記放熱板に設けられ、前記発熱抵抗体基板の前記発熱面側と当接し、当該発熱抵抗体基板における当該発熱面と反対の反対面を当該放熱板の一側面に当接させた状態に保持すると共に、主走査方向と直交する副走査方向に関し当該発熱抵抗体基板の移動を規制する保持爪と、
前記発熱抵抗体に前記電流を供給する回路が形成され、前記発熱抵抗体基板と熱膨張係数が相違する回路基板と、
前記回路基板に主走査方向に沿って設けられ、前記回路とそれぞれ接続され、複数の前記発熱抵抗体基板側端子とそれぞれ対応付けられた複数の回路基板側端子と、
前記発熱抵抗体基板側端子に、それぞれ対応付けられた前記回路基板側端子を圧接させた状態で、前記放熱板に対し前記回路基板を固定する一方、当該回路基板の固定を解除した場合には当該回路基板を再利用可能な状態に戻す固定部と
前記発熱抵抗体基板に設定した発熱抵抗体基板基準点と、前記回路基板に設定した回路基板基準点との相対位置を固定する基準点固定部と
を具え、
前記発熱抵抗体基板側端子及び前記回路基板側端子の主走査方向に沿った長さは、何れか一方において前記発熱抵抗体基板基準点又は前記回路基板基準点からの距離が遠い方が長く、他方において前記発熱抵抗体基板基準点又は前記回路基板基準点からの距離に拘わらず同等であり、
前記発熱抵抗体基板及び前記回路基板のうち熱膨張率が大きい方では、互いに対応する前記発熱抵抗体基板側端子及び前記回路基板側端子における、常温での主走査方向に沿った前記発熱抵抗体基板基準点又は前記回路基板基準点からの距離が短く、
前記発熱抵抗体基板側端子及び前記回路基板側端子は、前記発熱抵抗体基板及び前記回路基板の温度変化に伴う熱膨張により互いの相対位置が変化した場合に、対応付けられた相手側の端子とそれぞれ接触した状態及び接触した部分の主走査方向に関する長さを維持する
ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記保持爪は、前記発熱抵抗体基板における主走査方向に沿った側部を保持する
ことを特徴とする請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記固定部は、前記回路基板側端子の反対面側又はその近傍から前記発熱抵抗体基板側端子側に向けて力を加える
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記発熱抵抗体基板における前記発熱抵抗体基板側端子と同一の表面側に配置され、当該発熱抵抗体基板側端子を介して供給される前記電流を前記発熱抵抗体それぞれに供給する集積素子
をさらに具え、
前記固定部は、前記集積素子を覆う保護部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱領域に配列された複数の発熱抵抗体を発熱させ、その熱により感熱記録紙などの印刷媒体に文字や図形などの画像を形成する出力用デバイスである。このサーマルプリントヘッドは、バーコードプリンタ、デジタル製版機、ビデオプリンタ、イメージャ、シールプリンタなどの記録機器に広く利用されている。
【0003】
サーマルプリントヘッドは、例えば絶縁板上に多数の発熱抵抗体を整列させた発熱抵抗体基板と、これらの発熱抵抗体を駆動する回路を配置した回路基板とを、金属(例えばアルミニウム)でなる良熱伝導性の放熱板上に併設した構成となっている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
発熱抵抗体基板は、放熱板に対し、例えば熱伝導グリス等の熱伝導剤が部分的に塗布された上で、両面接着テープや接着剤により固定される。また回路基板も、放熱板に対し両面接着テープや接着剤により固定される。
【0005】
回路基板には、入力される制御信号に応じて発熱抵抗体基板の各発熱抵抗体をそれぞれ発熱させる駆動用IC(Integrated Circuit)が載置される。駆動用ICは、回路基板に設けられた端子と、発熱抵抗体基板に設けられた端子とに対し、それぞれボンディングワイヤにより電気的に接続され、樹脂により回路基板及び発熱抵抗体基板に跨るように封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−210748号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、かかる構成のサーマルプリントヘッドは、その製造工程において、例えば発熱抵抗体基板や回路基板といったモジュール単位で製造された後、これらが放熱板に取り付けられ、ボンディングワイヤが配線されてから樹脂により封止される。
【0008】
またサーマルプリントヘッドは、製造中の各段階において、部品やモジュールの単位で確認や検査が適宜行われ、正常に動作しない部品やモジュール(すなわち不良品)を除外することで、正常な部品やモジュールを用いて製造される。
【0009】
しかしながらサーマルプリントヘッドは、放熱板に各モジュールが取り付けられ、さらにボンディングワイヤの配線や樹脂の封止が行われた後の検査で、初めて不具合が検出される場合がある。
【0010】
このような場合、このサーマルプリントヘッドのうち不具合があるのは、一般に一部のモジュールのみであり、他のモジュールは正常であることが多い。すなわちこのようなサーマルプリントヘッドは、不具合があるモジュールを正常なモジュールと交換することで、正常に動作する正常な製品に仕上げることが可能となる。
【0011】
しかしながらサーマルプリントヘッドは、各モジュールが両面接着テープや接着剤により放熱板に固定され、また樹脂の封止等により各モジュールが連結されているため、モジュール単位での分解が極めて困難である。このためサーマルプリントヘッドは、一部のモジュールに不具合がある場合、他のモジュールが正常であっても、当該サーマルプリントヘッド全体を不良品として除外することになり、全体的な不良品の発生率が高まってしまう、という問題があった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、不良品の発生率を低減し得るサーマルプリントヘッドを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明のサーマルプリントヘッドにおいては、電流の供給を受けて発熱する発熱抵抗体が発熱面において主走査方向に沿って配置された発熱抵抗体基板と、発熱抵抗体基板に主走査方向に沿って設けられた、電気接続用の複数の発熱抵抗体基板側端子と、発熱抵抗体基板を着脱可能に支持し、装着時に発熱抵抗体の熱を放熱すると共に主走査方向と直交する副走査方向に関し当該発熱抵抗体基板の移動を規制する放熱板と、放熱板に設けられ、発熱抵抗体基板の発熱面側と当接し、当該発熱抵抗体基板における当該発熱面と反対の反対面を当該放熱板の一側面に当接させた状態に保持する保持爪と、発熱抵抗体に電流を供給する回路が形成され、発熱抵抗体基板と熱膨張係数が相違する回路基板と、回路基板に主走査方向に沿って設けられ、回路とそれぞれ接続され、複数の発熱抵抗体基板側端子とそれぞれ対応付けられた複数の回路基板側端子と、発熱抵抗体基板側端子に、それぞれ対応付けられた回路基板側端子を圧接させた状態で、放熱板に対し回路基板を固定する一方、当該回路基板の固定を解除した場合には当該回路基板を再利用可能な状態に戻す固定部と、発熱抵抗体基板に設定した発熱抵抗体基板基準点と、回路基板に設定した回路基板基準点との相対位置を固定する基準点固定部とを設け、発熱抵抗体基板側端子及び回路基板側端子の主走査方向に沿った長さは、何れか一方において発熱抵抗体基板基準点又は回路基板基準点からの距離が遠い方が長く、他方において発熱抵抗体基板基準点又は回路基板基準点からの距離に拘わらず同等であり、発熱抵抗体基板及び回路基板のうち熱膨張率が大きい方では、互いに対応する発熱抵抗体基板側端子及び回路基板側端子における、常温での主走査方向に沿った発熱抵抗体基板基準点又は回路基板基準点からの距離が短く、発熱抵抗体基板側端子及び回路基板側端子は、発熱抵抗体基板及び回路基板の温度変化に伴う熱膨張により互いの相対位置が変化した場合に、対応付けられた相手側の端子とそれぞれ接触した状態及び接触した部分の主走査方向に関する長さを維持するようにした。
【0014】
本発明は、固定部による回路基板の固定及び放熱板に対する発熱抵抗体基板の固定を解除した場合に、回路基板及び発熱抵抗体基板を何れも再利用可能な状態に戻すことができるので、不良品であったモジュールのみを排除して正常なモジュールを有効に再利用できる。また本発明は、基準点固定部により発熱抵抗体基板基準点と回路基板基準点との相対位置を固定すると共に、主走査方向に関して互いに対応する発熱抵抗体基板側端子及び回路基板側端子の長さ及び位置をそれぞれ最適化した。これにより本発明は、常温時及び熱膨張時の何れにおいても、互いに対応する回路基板側端子と発熱抵抗体基板側端子とを接触させ、且つ接触した部分の主走査方向の長さ、すなわち接触面積を一定に維持できる。これに伴い本発明は、温度変化に関わらず回路基板側端子及び発熱抵抗体基板側端子の接触抵抗をほぼ一定に維持し、流れる電流の不用意な変化による画質の低下も回避できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不良品の発生率を低減し得るサーマルプリントヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】サーマルプリントヘッドの全体構成を示す略線的斜視図である。
図2】サーマルプリントヘッドの構成を示す略線図である。
図3】サーマルプリントヘッドの各モジュールを示す略線図である。
図4】発熱抵抗体基板及び回路基板における電極の配置を示す略線図である。
図5】サーマルプリントヘッドの組立を示す略線図である。
図6】他の実施の形態によるサーマルプリントヘッドの構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[1.サーマルプリントヘッドの構成]
図1及び図2は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド1の模式的な斜視図及び側面図を示す。また図3は、サーマルプリントヘッド1を構成する各モジュールに分解した状態を示す。具体的にサーマルプリントヘッド1は、放熱板2、発熱抵抗体基板3、回路基板4、カバー板5、位置決めねじ6及び固定ねじ7の各モジュールにより構成されている。
【0019】
説明の都合上、以下では主走査方向を左右方向、副走査方向を前後方向と定義し、また両者と交差する方向を上下方向として説明する。
【0020】
放熱板2は、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金等の金属からなり、全体として左右方向(主走査方向)を長手方向とする直方体状に形成されている。また放熱板2は、上下方向に十分な厚さを有しており、外力等に対し容易に変形しないような、十分な剛性を有している。
【0021】
放熱板2の上面前側には、左右方向に沿った幅広の溝状でなり、周囲よりも下方へ窪んだ収容空間11が形成されている。収容空間11における前端及び後端の上側には、収容空間11の中央へ向けて保持爪としての爪状部12及び13がそれぞれ突設されている。また放熱板2の上面後側には、収容空間11の後端近傍における左右方向の中心にねじ穴14が穿設されると共に、このねじ穴14から左右方向に離れた2箇所にねじ穴15がそれぞれ穿設されている。
【0022】
発熱抵抗体基板3は、左右方向を長手方向とする長方形の板状に形成されている。この発熱抵抗体基板3は、図3に示したように、支持基板21上にグレーズ層22、抵抗膜層23、導電層24及び保護層25といった複数の層が順次積層されている。
【0023】
支持基板21は、例えばアルミナ等のセラミックスでなり、左右方向に細長い薄板状に形成されている。また支持基板21の前後長は、放熱板2における収容空間11の前後長よりも僅かに短くなっている。さらに、支持基板21の前端及び後端における上側部分には、放熱板2の爪状部12及び13とそれぞれ対応するように切り欠かれた切欠部21A及び21Bがそれぞれ形成されている。これに加えて図4(A)に示すように、切欠部21Bにおける左右方向の中心には、上方から見て半円状に切り欠かれた位置決め部21Cが形成されている。因みに図4(A)は、発熱抵抗体基板3及び回路基板4を上方から見下ろした様子を表している。
【0024】
グレーズ層22(図3)は、絶縁性を有するガラス材料でなり、例えば支持基板21上にペースト状のガラス材料が塗布され、焼成される。またグレーズ層22の前端近傍には、周囲よりも上方に隆起した隆起部22Aが形成される。
【0025】
抵抗膜層23は、例えばTa−SiOなどのサーメット材料でなり、比較的高い電気抵抗率を有する。この抵抗膜層23は、例えばグレーズ層22の上面にスパッタリングにより形成され、エッチングにより所定のパターンに形成される。因みに抵抗膜層23は、左右方向、すなわち主走査方向に関し、互いに分離した複数の領域として構成される。
【0026】
導電層24は、例えばアルミニウム(Al)のように電気伝導率が高い材料でなり、抵抗膜層23の上面にスパッタリングにより形成され、エッチングにより所定の配線パターンを構成する。因みに導電層24の配線パターンは、主に前後方向、すなわち副走査方向に沿った部分が多く形成される。また導電層24のうち隆起部22Aの上部における一部分には、電気的に切り離された隙間24Gが形成されている。
【0027】
これにより発熱抵抗体基板3は、導電層24の配線パターンに電流が供給された場合、隙間24Gにおいてのみこの電流を抵抗膜層23に流すため、この箇所を局所的に発熱させることができる。以下では、このように抵抗膜層23のうち電流が流れて発熱する箇所を発熱抵抗体とも呼び、また発熱抵抗体基板3において隙間24Gが形成されている箇所を発熱部3Gとも呼ぶ。
【0028】
保護層25は、例えばSiON等でなり、スパッタリングにより形成される。因みに保護層25は、導電層24の一部を意図的に露出させることにより、その露出箇所を発熱抵抗体基板3の電極3Tとして機能させている。
【0029】
また発熱抵抗体基板3の上面における後寄りには、ドライバIC(Integrated Circuit)27(図3)が取り付けられている。ドライバIC27は、上面に形成された端子と、発熱抵抗体基板3の上面に形成された端子との間が、ボンディングワイヤ28により電気的に接続され、さらに樹脂29により封止されている。
【0030】
かかる構成により発熱抵抗体基板3は、後端に形成された電極を介して電流や制御信号が供給されると、これを導電層24の配線パターン及びボンディングワイヤ28によりドライバIC27に供給する。ドライバIC27は、制御信号に従った端子にのみ電流を流し、これをボンディングワイヤ28により導電層24に供給する。導電層24は、供給された電流を前方へ流し、隙間24Gにおいて抵抗膜層23を通過させることにより発熱させる。これにより発熱抵抗体基板3は、所望のパターンで発熱部3Gを発熱させることができる。
【0031】
回路基板4は、例えばいわゆるガラスエポキシ基板であり、多層の配線基板となっている。また回路基板4は、上下方向に薄い長方形の板状に形成されており、左右方向の長さが発熱抵抗体基板3と揃えられている。
【0032】
具体的に回路基板4は、基材31を中心に構成されている。基材31は、例えばガラス繊維製の布を重ねたものにエポキシ樹脂を含浸したものである。基材31の両面には、比較的薄い銅(Cu)でなる配線層32及び33により、所定の回路パターンが形成されている。
【0033】
配線層32の上側及び配線層33の下側には、それぞれ保護層34及び35が形成されている。保護層34及び35は、いわゆるソルダーレジストであり、絶縁性を有すると共に、配線層32及び33を物理的に保護している。
【0034】
また保護層34及び35は、配線層32及び33の一部を意図的に露出させることにより、これらを回路基板4の電極4Tとして機能させている。この電極4Tには、メッキ処理によりニッケルメッキ層36及び金メッキ層37が順次形成されている。これにより電極4Tは、銅材料でなる配線層32の酸化を防いでいる。
【0035】
回路基板4の下面における後端近傍には、コネクタ38が取り付けられている。このコネクタ38は、複数の接続端子が組み込まれており、この接続端子と配線層32及び33とが電気的に接続されている。このコネクタ38は、例えばサーマルプリントヘッド1が取り付けられるプリンタ本体(図示せず)側のコネクタと嵌合することにより、複数の端子を一度に接続し、電流や制御信号等の供給を受けるようになっている。
【0036】
また回路基板4には、図4(A)に示したように、左右方向の中心であって放熱板2のねじ穴14と対応する箇所に、上下方向に貫通する丸孔でなる位置決め孔39が穿設されている。さらに回路基板4には、放熱板2のねじ穴15とそれぞれ対応する2箇所に、上下方向に貫通し左右方向に長い長孔でなる取付孔40が穿設されている。
【0037】
カバー板5は、例えばアルミニウムでなり、薄板状の材料が折曲加工されることにより、前側から順に傾斜部51、前部52、中部53及び後部54が形成されている。またカバー板5は、外力に対し容易に変形しない程度の十分な剛性を有している。
【0038】
傾斜部51は、板面を上斜め前方に向けている。中部53は、前部52及び後部54よりも下方に位置するよう、クランク状に屈曲されている。また中部53には、回路基板4と同様、左右方向の中心であってねじ穴14と対応する箇所に、上下方向に貫通する丸孔でなる位置決め孔55が穿設されている。さらに中部53には、放熱板2のねじ穴15とそれぞれ対応する2箇所に、上下方向に貫通し左右方向に長い長孔でなる取付孔56が穿設されている。
【0039】
位置決めねじ6は、一般的なねじと同様に構成されており、放熱板2のねじ穴14と螺合するようになっている。位置決めねじ6の軸部分における外径は、回路基板4における位置決め孔39の内径及びカバー板5における位置決め孔55の内径よりも僅かに小さくなっている。
【0040】
固定ねじ7は、位置決めねじ6と同様に構成されており、放熱板2の各ねじ穴15とそれぞれ螺合するようになっている。また固定ねじ7における頭部の外径は、少なくとも回路基板4における取付孔40の短径及びカバー板5における取付孔56の短径よりも大きくなっている。
【0041】
次に、サーマルプリントヘッド1を製造する場合における、モジュール単位の組立について説明する。まず、図5(A)に示すように、発熱抵抗体基板3が、放熱板2の収容空間11に対し、爪状部12及び13に切欠部21A及び21Bをそれぞれ嵌め込むようにして、左右方向から挿入される。これにより発熱抵抗体基板3は、爪状部12及び13によって前後の側辺部分が押さえられ、すなわち上方向及び前後方向への移動が規制された状態で、その底面を放熱板2の収容空間11における底部分と当接させる。
【0042】
続いて、図5(B)に示すように、放熱板2の上面における後側部分に対し、回路基板4の下面が当接される。このとき回路基板4は、下面前端近傍に形成された電極4Tを、発熱抵抗体基板3の上面後端近傍に形成された電極3Tとそれぞれ対向させ、且つ位置決め孔39及び取付孔40を放熱板2のねじ穴14及び15とそれぞれ合わせるよう、位置が調整される。
【0043】
さらに、図5(C)に示すように、回路基板4の上面に対し中部53及び後部54を重ねるようにして、発熱抵抗体基板3及び回路基板4に対してカバー板5が重ねられる。このときカバー板5は、中部53の前端57を回路基板4における電極4Tのほぼ真上に位置させ、位置決め孔55を回路基板4の位置決め孔39及び放熱板2のねじ穴14と合わせ、さらに取付孔56を回路基板4の取付孔40及び放熱板2のねじ穴15と合わせるよう、位置が調整される。
【0044】
その後、図2に示したように、ねじ穴14に対して位置決めねじ6が締め付けられる。これにより、位置決めねじ6の軸部分に対し、発熱抵抗体基板3の位置決め部21Cと、回路基板4の位置決め孔39と、カバー板5の位置決め孔55とがそれぞれ係合する。この結果、発熱抵抗体基板3、回路基板4及びカバー板5は、それぞれの左右方向の中心を、放熱板2における左右方向の中心に合わせた状態で、互いの位置が定められる。これを換言すれば、位置決めねじ6は、発熱抵抗体基板3における左右方向の位置の基準点である位置決め部21Cと、回路基板4における左右方向の位置の基準点である位置決め孔39との相対的な位置を固定することができる。
【0045】
さらに、2箇所のねじ穴15に対して2本の固定ねじ7がそれぞれ締め付けられることにより、放熱板2に対し回路基板4及びカバー板5が固定される。これを換言すれば、回路基板4は、位置決めねじ6、固定ねじ7及びカバー板5により、下方向へ向かう力が加えられ、放熱板2に押し付けられることになる。
【0046】
ところで、放熱板2における上面から収容空間11の底面までの距離L1(図3)は、発熱抵抗体基板3における支持基板21の下面から電極3Tの上面までの距離L2と、回路基板4における保護層35の下面から電極4Tの下面までの距離L3との加算値よりも小さい。このため回路基板4は、特にその前端近傍において、保護層35の下面を放熱板2の上面に当接させる前に、電極4Tを発熱抵抗体基板3の電極3Tに当接させる。
【0047】
すなわちサーマルプリントヘッド1は、位置決めねじ6、固定ねじ7及びカバー板5によって放熱板2に対し回路基板4を取り付けることにより、電極3Tと電極4Tとを電気的に接続させることができる。
【0048】
[2.電極の配置]
次に、図4を参照しながら、発熱抵抗体基板3の電極3T及び回路基板4の電極4Tの配置について説明する。なお説明の都合上、図4(A)では発熱抵抗体基板3に対し回路基板4を後方に平行移動させた状態を示している。また図4(A)では、電極3T及び電極4Tの一部、並びに発熱抵抗体基板3のドライバIC27等を省略している。
【0049】
ここでは、発熱抵抗体基板3の電極3T1、3T2及び3T3と、回路基板4の電極4T1、4T2及び4T3に着目する。電極3T1、3T2及び3T3及び電極4T1、4T2及び4T3は、何れも前後方向に長い長方形に形成されている。因みにサーマルプリントヘッド1では、電極3T1、3T2及び3T3が電極4T1、4T2及び4T3とそれぞれ対応付けられており、互いに当接して電気的に接続されることを前提に、回路パターン等が設計されている。
【0050】
電極3T1は、発熱抵抗体基板3における左右方向の中心を表す仮想的な中心線Cの近傍に位置している。電極3T3は、発熱抵抗体基板3における左端近傍に位置している。電極3T2は、電極3T1及び電極3T3のほぼ中間に位置している。また、電極3T1、3T2及び3T3における左右方向の長さは、何れも長さW3であり、互いに同等となっている。また電極4T1、4T2及び4T3における左右方向の位置は、それぞれ電極3T1、3T2及び3T3とほぼ同等となっている。
【0051】
その一方で、電極4T1、4T2及び4T3における左右方向の長さW41、W42及びW43は、互いに相違している。具体的に電極4T1の長さW41は、電極3T1の長さW3とほぼ同等となっている。一方、電極4T3の長さW43は、電極3T3の長さW3よりも十分に長くなっている。また電極4T2の長さW42は、電極3T2の長さW3よりも長いものの、長さW41及び長さW43のほぼ中間の値となっている。すなわち、数式により表すと、W3=W41<W42<W43のようになる。
【0052】
また、各電極の左右方向の位置を、各電極における中心線Cから遠い外側の辺、すなわち左辺と、当該中心線Cとの間隔により表すものとする。例えば電極3T1、3T2及び3T3の位置をそれぞれ長さL11、L12及びL13として表し、電極4T1、4T2及び4T3の位置をそれぞれ長さL21、L22及びL23として表すと、L21=L11、L22=L12、及びL23=L13といった関係が成立する。一方、各電極の中心線Cに近い内側の辺については、電極4T1の位置が電極3T1の位置と一致するものの、電極4T2及び4T3の位置が電極3T2及び3T3の位置よりも内側となっている。
【0053】
このためサーマルプリントヘッド1は、放熱板2に対し発熱抵抗体基板3及び回路基板4が取り付けられると、電極3T1、3T2及び3T3をそれぞれ対応付けられた電極4T1、4T2及び4T3と当接させ、電気的に接続させることができる。このときサーマルプリントヘッド1は、電極3T1、3T2及び3T3における電極4T1、4T2及び4T3とそれぞれ当接する部分の幅、すなわち左右方向の長さを、長さW3とすることができる。これを換言すれば、サーマルプリントヘッド1は、電極3T1、3T2及び3T3それぞれにおける左右方向の全範囲を、電極4T1、4T2及び4T3とそれぞれ当接させることができる。
【0054】
ところで図4(A)は、常温(例えば約20〜25℃)における発熱抵抗体基板3及び回路基板4を表している。しかしながらサーマルプリントヘッド1は、動作時に発熱抵抗体基板3の発熱部3Gを発熱させるため、当該発熱抵抗体基板3全体の温度が例えば約70℃〜80℃に上昇する。また発熱抵抗体基板3の熱は、放熱板2を介して回路基板4にも伝達される。このため回路基板4も、発熱抵抗体基板3と同程度まで温度が上昇する。
【0055】
発熱抵抗体基板3は、その大部分を占める支持基板21(図3)がセラミックスであるため、熱膨張率α3が比較的小さく、例えば0.000006[/℃]である。これに対し、回路基板4は、その大部分を占める基材31がガラス繊維及びエポキシ樹脂であるため、熱膨張率α4が比較的大きく、例えば0.0000145[/℃]である。
【0056】
このため発熱抵抗体基板3及び回路基板4は、例えば約70℃のように高温となった場合、図4(A)と対応する図4(B)に示すように、それぞれ常温時よりも膨張し、且つ発熱抵抗体基板3よりも回路基板4の方が大きく膨張する。
【0057】
ここで、発熱抵抗体基板3及び回路基板4は、それぞれの中心位置から各方向へ向けて膨張するものの、何れも左右方向に沿って細長い直方体状であるため、前後方向及び上下方向の膨張量が比較的小さく、左右方向への膨張量が比較的大きくなる。すなわち発熱抵抗体基板3及び回路基板4は、温度の上昇により、主に左右方向に伸張することになる。
【0058】
また発熱抵抗体基板3及び回路基板4は、位置決めねじ6(図2)に対し位置決め部21C及び位置決め孔39をそれぞれ係合させているため、温度上昇の前後において、左右方向の中心を互いに一致させた状態を維持できる。すなわち発熱抵抗体基板3及び回路基板4は、中心線Cを中心として、左右方向へそれぞれ膨張することになる。
【0059】
以下、膨張後の発熱抵抗体基板3における電極3T1、3T2及び3T3の位置をそれぞれ長さL31、L32及びL33とする。また、膨張後の回路基板4における電極4T1、4T2及び4T3の位置をそれぞれ長さL41、L42及びL43とする。
【0060】
まず電極3T3に着目すると、熱膨張による移動距離、すなわち長さL33とL13との差分である差分長さΔL33は、膨張前の長さL13と、膨張前後の温度差と、熱膨張率(線膨張係数ともいう)との乗算値として算出される。例えば、膨張前の長さL13が80[mm]、常温(25℃)と高温(70℃)との温度差ΔTが45℃であるとする。この場合、差分ΔL33は、次の(1)式により0.0216[mm]となる。
【0061】
ΔL33=L13*ΔT*α3
=80*45*0.000006=0.0216 ……(1)
【0062】
次に電極4T3に着目すると、膨張による移動距離、すなわち長さL43とL23との差分である差分長さΔL43は、(1)式と対応する(2)式により0.0522[mm]となる。
【0063】
ΔL43=L23*ΔT*α4
=80*45*0.0000145=0.0522 ……(2)
【0064】
すなわち電極4T3は、高温時において、電極3T3よりも外側(左側)へΔL43−ΔL33=0.0306[mm]だけずれることになる。以下、このずれ量を、差分ずれ量D3と呼ぶ。
【0065】
そこで電極4T3は、左右方向の長さである長さW43が、電極3T3の幅である長さW3よりも差分ずれ量D3だけ長くなっている。これにより、図5(B)に示したように、高温時において、電極4T3における内側(右側)の辺の位置が、電極3T3における内側(右側)の辺の位置と一致する。
【0066】
すなわち電極4T3は、高温時においても電極3T3と当接し続けることができる。そのうえ電極4T3は、当該電極3T3と当接する部分の幅(左右方向の長さ)を、常温時と同様に、当該電極3T3の全範囲に相当する長さW3に維持することができる。また電極4T2及び4T1も、それぞれの差分ずれ量を基に長さW42及びW41が適切に設定されているため、高温時においてもそれぞれ電極3T2及び3T1と当接し続けることができる。
【0067】
このようにサーマルプリントヘッド1は、熱膨張の前後において、発熱抵抗体基板3の電極3Tと回路基板4の電極4Tとを当接させ続け得るようになっている。
【0068】
[3.動作及び効果]
以上の構成において、サーマルプリントヘッド1の放熱板2は、上面の前側に収容空間11を形成し、その前端及び後端に爪状部12及び13を設けた。また発熱抵抗体基板3は、支持基板21の前端及び後端に、切欠部21A及び21Bを設けた。
【0069】
このためサーマルプリントヘッド1は、その組立工程において放熱板2の収容空間11に発熱抵抗体基板3が挿入されることにより(図5(A))、当該放熱板2に対する当該発熱抵抗体基板3の前後方向及び上下方向への移動を規制することができる。
【0070】
また発熱抵抗体基板3の上面後端近傍及び回路基板4の下面前端近傍には、それぞれ電極3T及び4Tを形成した。サーマルプリントヘッド1は、その組立工程において、互いに対応付けられた電極3Tと電極4Tとをそれぞれ対向させるようにして放熱板2の上面後側に回路基板4を載せ(図5(B))、さらにカバー板5を重ねて(図5(C))、放熱板2のねじ穴14に位置決めねじ6が締め付けられると共にねじ穴15に固定ねじ7が締め付けられる。これによりサーマルプリントヘッド1は、放熱板2に対し回路基板4を固定することができ(図1及び図2)、且つ互いに対応する電極3Tを電極4Tに圧接させて電気的に接続することができる。
【0071】
また放熱板2は、上面から収容空間11の底面までの距離L1(図3)を、発熱抵抗体基板3における支持基板21の下面から電極3Tの上面までの距離L2と、回路基板4における保護層35の下面から電極4Tの下面までの距離L3との加算値よりも小さくした。
【0072】
このためサーマルプリントヘッド1は、放熱板2の上面後側に回路基板4を載せた際に、電極3Tと電極4Tとの間に隙間を形成すること無く、両者を確実に当接させることができる。またサーマルプリントヘッド1は、電極3Tと電極4Tとの間に摩擦力が作用するため、発熱抵抗体基板3を放熱板2に押し付けるようにして固定でき、当該発熱抵抗体基板3が左右方向に移動して収容空間11から抜け落ちることを防止できる。
【0073】
またサーマルプリントヘッド1は、放熱板2に対して発熱抵抗体基板3を左右方向から挿入し、さらに位置決めねじ6及び固定ねじ7によって回路基板4及びカバー板5を固定することにより組み立てられる。
【0074】
このためサーマルプリントヘッド1は、組み立てた後であっても、位置決めねじ6及び固定ねじ7を緩めて取り外すことにより、カバー板5及び回路基板4の各モジュールを分離できる。さらにサーマルプリントヘッド1は、この状態から放熱板2の収容空間11から発熱抵抗体基板3を左右方向に引き抜くことで、放熱板2及び発熱抵抗体基板3に分解することもできる。これを換言すれば、放熱板2は、発熱抵抗体基板3を着脱可能に支持している。すなわちサーマルプリントヘッド1は、その組立後であっても、各モジュールを破壊すること無く、容易にモジュール単位に分解することができる。
【0075】
これによりサーマルプリントヘッド1は、組立後に不具合が検出されたとしても、破壊を伴うこと無く容易にモジュール単位に分解することができる。このように分解されたモジュールのうち正常なものは、他の正常なモジュールと組み合わせることで、正常な製品を完成させること、すなわち再利用若しくは再生することができる。この結果、サーマルプリントヘッド1は、モジュール単位に分解できない場合と比較して、不良品の発生率を低減でき、正常な製品を完成できる割合、いわゆる歩留まりを高めることができる。
【0076】
さらに回路基板4の電極4Tは、発熱抵抗体基板3及び当該回路基板4における熱膨張率の差分を踏まえ、左右の中心からの位置に応じて、左右方向の長さ及び位置を調整した(図5)。これによりサーマルプリントヘッド1は、常温時及び高温時の何れにおいても、互いに対応する電極3Tと電極4Tとを互いに当接させることができる。
【0077】
特に電極4Tは、電極3Tとの間における高温時と常温時とでの位置ずれ量の差分(差分ずれ量D3等)だけ、左右方向の幅(長さW43等)を当該電極3Tよりも大きくした(図4)。このためサーマルプリントヘッド1は、電極4Tのうち電極3Tと当接する部分の幅(左右方向の長さ)を、当該電極3Tの幅である長さW3に維持できる。これによりサーマルプリントヘッド1は、温度の変化に関わらず、回路基板4と発熱抵抗体基板3との間における、電流の供給や制御信号の伝達等を安定的に継続することができる。
【0078】
さらにサーマルプリントヘッド1は、発熱抵抗体基板3に位置決め部21Cを形成し、回路基板4に位置決め孔39を設け、位置決めねじ6により両者を左右方向に移動させないようにした。これによりサーマルプリントヘッド1は、熱膨張の前後において、発熱抵抗体基板3及び回路基板4における左右方向の中心を互いに揃えた状態を維持できるので、中心線Cを中心に算出した位置ずれ量の算出値と、熱膨張による実際のずれ量とを、良好に一致させることができる。この結果、サーマルプリントヘッド1は、温度変化にかかわらず、互いに対応する電極同士を確実に当接させることができる。
【0079】
そのうえ位置決めねじ6は、放熱板2に対する発熱抵抗体基板3の位置を固定することができる。このためサーマルプリントヘッド1は、熱膨張及び収縮を繰り返した場合にも、放熱板2に対し発熱抵抗体基板3を左右に変位させることなく、当該放熱板2に対する発熱抵抗体基板3の位置ずれや脱落を未然に防止できる。
【0080】
またカバー板5は、中部53の前端57を回路基板4における電極4Tのほぼ真上に位置させているため、位置決めねじ6及び固定ねじ7から加えられる力により、電極4Tを電極3Tに押し付けることができる(図2)。このためカバー板5は、本来の目的である印画媒体(紙やカード等)とドライバICとの接触による破損を防止できると共に、電極3T及び電極4Tにおける当接の安定化という副次的な効果も得ることができる。
【0081】
以上の構成によれば、サーマルプリントヘッド1は、放熱板2の収容空間11に発熱抵抗体基板3を挿入し、電極3Tと電極4Tとを互いに対向させて放熱板2の上面後側に回路基板4を載せ、さらにカバー板5を重ねて、位置決めねじ6及び固定ねじ7を締め付けて組み立てる。このためサーマルプリントヘッド1は、組立後に不具合が検出されたとしても、モジュール単位に容易に分解でき、正常なモジュールを再利用して正常な製品を完成させることができる。
【0082】
[4.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、放熱板2における収容空間11の前後に爪状部12及び13をそれぞれ形成すると共に、発熱抵抗体基板3の支持基板21における前後両端に切欠部21A及び21Bをそれぞれ形成し、これらの組み合わせにより発熱抵抗体基板3の上下方向及び前後方向への移動を規制する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図6(A)に示すサーマルプリントヘッド71のように、放熱板72及び発熱抵抗体基板73から後側の爪状部13及び切欠部21Bをそれぞれ省略しても良い。このサーマルプリントヘッド71は、回路基板4は、位置決めねじ6及び固定ねじ7によりカバー板5と共に固定されることで、その前端から発熱抵抗体基板73の後端に力を加え、当該発熱抵抗体基板73の後端が放熱板72から浮き上がることを防止できる。
【0083】
さらにサーマルプリントヘッド71の放熱板72は、放熱板2と比較して、爪状部12に代わる爪状部82の形状や収容空間81の後側面の形状等が一部変更されている。これによりサーマルプリントヘッド71は、図6(B)に示すように、発熱抵抗体基板73の前端を下方へ向けて放熱板72の爪状部82に引っ掛け、この前端を支点として後端を下方へ回転させるようにして収容空間81内に収めることができ、サーマルプリントヘッド1よりも組み立て作業を簡略化できる。
【0084】
また上述した実施の形態においては、放熱板2に対し発熱抵抗体基板3を直接当接させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば放熱板2と発熱抵抗体基板3との間にシリコングリスのような熱伝導材を介在させても良い。この場合、熱伝導材としては、液状やゲル状であることにより放熱板2と発熱抵抗体基板3との隙間を埋めることができ、且つ固化しないことにより分解時に放熱板2と発熱抵抗体基板3とを容易に分離できることが望ましい。
【0085】
また上述した実施の形態においては、発熱抵抗体基板3に設ける各電極3Tの幅(すなわち左右方向の長さ)を一定の長さW3に揃える一方、回路基板4に設ける電極4Tの幅を、中心線Cからの距離及び熱膨張係数に応じて変化させる場合について述べた(図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば各電極4Tの幅を一定に揃える一方、各電極3Tの幅を、中心線Cからの距離及び熱膨張係数に応じて変化させても良く、或いは各電極3T及び各電極4Tの幅を、何れも中心線Cからの距離及び熱膨張係数に応じて変化させても良い。この場合、要は温度変化により発熱抵抗体基板3及び回路基板4がそれぞれ熱膨張した場合にも、各電極3T及び各電極4Tの当接を維持できれば良い。また、各電極3Tの大きさ、すなわち前後方向及び左右方向の長さについても、統一する必要は無く、例えば電流を供給する電極を相対的に大きくしても良い。さらには、隣接する電極同士の間隔についても、中心線Cからの距離及び熱膨張係数に応じて変化させても良い。この場合、中心線Cに近い内側よりも、中心線Cから遠い外側の方を広くすれば良い。
【0086】
さらに上述した実施の形態においては、電極3T及び電極4Tを、それぞれ左右方向に沿って一列に、一直線状に配置する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば電極3T及び電極4Tを、それぞれ左右方向に沿って2列以上に渡って配置しても良い。また、一直線状に限らず、例えば前後方向に往復させる、いわゆる千鳥状に配置する等、様々に配置しても良い。
【0087】
さらに上述した実施の形態においては、回路基板4の電極4Tに、メッキ処理によりニッケルメッキ層36及び金メッキ層37を順次形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばニッケルメッキ層36及び金メッキ層37の何れか一方を省略しても良く、或いは金メッキ層37及びニッケルメッキ層36に代えて、他の材料によるメッキ層を設けても良い。一般に、配線層32(図3)を構成する銅は、経時変化等により酸化しやすく、酸化した場合に導通が損なわれる可能性がある。このため電極4Tには、酸化しにくい材料によりメッキ処理を施すことで、電極3Tと当接させた場合に互いに電気的に接続できれば良い。或いは、配線層32を銅以外の材料により構成しても良い。特に、酸化しにくい材料により構成した場合、メッキ層を省略しても良い。
【0088】
さらに上述した実施の形態においては、位置決めねじ6と、発熱抵抗体基板3の位置決め部21Cと、回路基板4の位置決め孔39とを互いに係合させることにより、発熱抵抗体基板3及び回路基板4における左右方向の中心を熱膨張に拘わらず互いに一致させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば位置決めねじ6、位置決め部21C及び位置決め孔39に代えて、発熱抵抗体基板3及び回路基板4の何れか一方に突起を設け、他方にこれと係合する切り欠きや孔部を形成しても良い。さらには、位置決めねじ6、位置決め部21C及び位置決め孔39を何れも省略しても良い。この場合、サーマルプリントヘッド1では、発熱抵抗体基板3及び回路基板4が熱膨張時に放熱板2との間に摩擦を生じるため、この摩擦による抵抗の合計値を最も小さくするよう、発熱抵抗体基板3及び回路基板4が何れも中心線Cを中心に左右方向へそれぞれ膨張することが期待できる。
【0089】
さらに上述した実施の形態においては、回路基板4における電極4T反対面にカバー板5の中部53を当接させることで、当該カバー板5から加えられる力を電極4Tに対しほぼ真上から加える場合について述べた(図4)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば前端57を、回路基板4における電極4Tのほぼ真上よりも後方に位置させるようにしても良い。この場合、要はカバー板5から回路基板4に加えられる力を、当該回路基板4の剛性によって電極4Tに十分に伝達することで、当該電極4Tを電極3Tに押し付けることができれば良い。
【0090】
さらに上述した実施の形態においては、回路基板4をいわゆるガラスエポキシ基板とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、回路基板4を、例えばフィルム状の剛性が低いFPC基板としても良い。この場合、カバー板5の剛性が十分に高く、電極4Tを電極3Tに確実に押し付けることが望ましい。
【0091】
さらに上述した実施の形態においては、固定ねじ7から加えられる力を、カバー板5により回路基板4に伝達する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば回路基板4自体の剛性が高い場合に、カバー板5の剛性を低減し、固定ねじ7から加えられる力を、回路基板4自体の剛性により電極4Tまで伝達しても良い。或いは、例えばカバー板5の下に補強用の板状部材を別途挟み込んでも良い。
【0092】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、発熱抵抗体基板としての発熱抵抗体基板3と、発熱抵抗体基板側端子としての電極3Tと、放熱板としての放熱板2と、回路基板としての回路基板4と、回路基板側端子としての電極4Tと、固定部としてのカバー板5、位置決めねじ6及び固定ねじ7とによってサーマルプリントヘッドとしてのサーマルプリントヘッド1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる発熱抵抗体基板と、発熱抵抗体基板側端子と、放熱板と、回路基板と、回路基板側端子と、固定部とによってサーマルプリントヘッドを構成しても良い。
【符号の説明】
【0094】
1、71……サーマルプリントヘッド、2、32……放熱板、3、73……発熱抵抗体基板、3G……発熱部、3T、3T1、3T2、3T3、4T、4T1、4T2、4T3……電極、4……回路基板、5……カバー板、6……位置決めねじ、7……固定ねじ、11、81……収容空間、12、13、82……爪状部、14、15……ねじ穴、21……支持基板、21A、21B……切欠部、21C……位置決め部、27……ドライバIC、28……ボンディングワイヤ、31……基材、32、33……配線層、34、35……保護層、36……ニッケルメッキ層、37……金メッキ層、38……コネクタ、39……位置決め孔、40……取付孔、51……傾斜部、53……中部、55……位置決め孔、56……取付孔、57……前端、C……中心線、D3……差分ずれ量、α3、α4……熱膨張率。
図1
図2
図3
図4
図5
図6