(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、印字ユニットにおいて、ロック機構の回動軸と、回動軸が挿通される本体フレームの軸孔と、の間には、はめあい公差が設定されている。このため、印字ユニットに外力が作用した場合には、ロック機構の回動軸がはめあい公差の範囲内で移動する(がたつきが生じる)おそれがある。ロック機構の回動軸が所望の位置から移動すると、ロック機構からプラテンローラに作用する保持力や保持力の作用方向が不安定となり、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置ずれ等が生じるおそれがある。その結果、印字かすれや、周期むら(周期的な振動に伴う発熱素子と記録紙との接触状態の変化により生じる印字むら)等の印字障害が発生する。
【0006】
そこで本発明は、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置を安定させ、印字品質を確保できる印字ユニットおよびサーマルプリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印字ユニットは、本体フレームと、前記本体フレームに着脱可能に装着されるプラテンローラと、前記プラテンローラを前記本体フレームに回転可能に保持するロック位置、および前記プラテンローラが前記本体フレームに対して離脱可能なロック解除位置の間で回動可能に前記本体フレームに支持されたロック機構と、前記プラテンローラの外周面に圧接されるサーマルヘッドと、を備えた印字ユニットにおいて、前記本体フレームおよび前記ロック機構のうちいずれか一方側の部材には、他方側の部材に設けられた軸孔内に挿通されるとともに、前記ロック機構を前記本体フレームに対して回動させる回動軸が設けられ、前記ロック位置に向けて前記ロック機構を付勢するとともに、前記回動軸と前記軸孔の開口縁とを当接させる付勢部材を備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、付勢部材は、ロック機構をロック位置に向けて付勢するとともに、回動軸を軸孔の開口縁における所定位置に当接させることで、本体フレームに対してロック機構を所望の位置に位置決めしておくことができる。これにより、仮に印字ユニットに対して外力が作用したとしても、例えば回動軸が軸孔とのはめあい公差の範囲内で移動するのを抑制することができる。よって、ロック機構からプラテンローラに作用する保持力や保持力の作用方向を安定させることができ、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置を安定させ、印字品質を確保できる。
【0008】
上記の印字ユニットにおいて、前記軸孔は、長孔であり、前記付勢部材は、前記軸孔の開口縁のうち、長手方向の一端側に位置する部分に前記回動軸を当接させる、ことが望ましい。
本発明によれば、軸孔の開口縁のうち、長手方向の一端側に位置する部分に回動軸を当接させることで、回動軸が軸孔の短手方向へ移動することを制限した上で、回動軸を軸孔の所望の位置に保持できる。このため、軸孔内において回動軸の位置が安定し、ロック機構のがたつきが抑制される。したがって、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置をより安定させることができる。
しかも、軸孔を長孔とすることで、例えば軸孔を真円等に形成する場合に比べて付勢部材による付勢方向を安定させることができるので、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置をより安定させるとともに、製品間でのばらつきを抑制できる。
また、軸孔を長孔とすることで、軸孔の寸法管理が容易になるので、製造ばらつきを改善できるとともに、軸孔を成形する金型の高寿命化を図り、製造コストの削減を図ることができる。
【0009】
上記の印字ユニットにおいて、前記軸孔の長手方向と前記付勢部材の付勢方向との交差角は、45°以下である、ことが望ましい。
本発明によれば、付勢部材の付勢方向が軸孔の長手方向に対して45°以下で交差しているため、付勢部材の付勢力のうち、半分以上の分力を軸孔の長手方向へ割り当てることができる。これにより、回動軸を軸孔内における所定位置により強い力で保持できる。したがって、ロック機構のがたつきをより確実に抑制でき、プラテンローラの位置をより安定させることができる。
【0010】
上記の印字ユニットにおいて、前記付勢部材は、前記本体フレームと前記ロック機構との間に介在している、ことが望ましい。
本発明によれば、付勢部材が印字ユニット内に取り付けられるため、付勢部材が取付られた状態で印字ユニットを筐体に組み付けることができる。これにより、付勢部材を筐体とロック機構との間に介在させる構成と比較して、印字ユニットを筐体へ組付けることが容易になり、製造コストを低減させることができる。
【0011】
本発明のサーマルプリンタは、上記の印字ユニットを備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、上記の印字ユニットを備えているため、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置を安定させ、印字品質を確保できるサーマルプリンタが得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、付勢部材は、ロック機構をロック位置に向けて付勢するとともに、回動軸を軸孔の開口縁における所定位置に当接させることで、本体フレームに対してロック機構を所望の位置に位置決めしておくことができる。これにより、仮に印字ユニットに対して外力が作用したとしても、例えば回動軸が軸孔とのはめあい公差の範囲内で移動するのを抑制することができる。よって、ロック機構からプラテンローラに作用する保持力や保持力の作用方向を安定させることができ、サーマルヘッドに対するプラテンローラの位置を安定させ、印字品質を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(サーマルプリンタ)
図1は、ペーパーカバーが閉位置にあるときのサーマルプリンタの斜視図である。
図2は、ペーパーカバーが開位置にあるときのサーマルプリンタの斜視図である。なお、サーマルプリンタは、設置面に載置された状態で使用され、図中において矢印UPを上方と定義し、矢印FRを前方と定義し、矢印LHを左方と定義する。
【0015】
図1に示すように、サーマルプリンタ1は、記録紙Pを印刷可能に構成されたものである。記録紙Pは、熱を加えると変色する感熱紙であり、各種ラベルやレシート、チケット等の印刷等に好適に使用される。
図2に示すように、記録紙Pは、中空孔5を有するように巻回されたロール紙Rの状態でサーマルプリンタ1にセットされ、ロール紙Rから引き出された部分に対して印刷が行われる。
【0016】
サーマルプリンタ1は、開口部3aを有するケーシング3と、ケーシング3に回動可能に支持され、ケーシング3の開口部3aを開閉するペーパーカバー20と、印字ユニット30と、を有する。
【0017】
ケーシング3は、ポリカーボネート等のプラスチックや金属材料により形成され、その前部は上壁10を有する略直方体状に形成される一方、後部は上方に向けて開口する箱型形状に形成されている。ケーシング3の内面には、不図示のリブ等が形成され、ケーシング3が補強されている。ケーシング3の上壁10には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部14が配置されている。操作部14は、電源スイッチやFEEDスイッチ等の各種機能スイッチ15が配置されるとともに、機能スイッチ15に隣接して電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプや、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ16が配置されている。また、ケーシング3の上壁10と側壁12との間には、ペーパーカバー20のオープンボタン18が設けられている。さらに、ケーシング3の上壁10における後端縁には、記録紙Pを切断する第1切断刃26が形成されている。
【0018】
ケーシング3の後部には、開口部3aを通してロール紙Rが収容されるロール紙収容部21が画成されている。ロール紙収容部21は、ロール紙Rを保持するガイドプレート22を備え、このガイドプレート22とペーパーカバー20の内面との間でロール紙Rを覆うように保持している。ガイドプレート22は、左右方向から見た断面視で弧状とされ、その内周面にロール紙Rの外周面が接触した状態でロール紙を保持するとともに、ロール紙Rから引き出された記録紙Pを印字ユニット30まで案内する。
【0019】
ペーパーカバー20は、ポリカーボネート等のプラスチックにより形成されている。ペーパーカバー20は、後端が図示しないヒンジシャフトにより、ケーシング3に対して回動可能に支持されている。また、ペーパーカバー20は、前端に取り付けられた後述のプラテンローラ51により、前端が印字ユニット30の後述する本体フレーム31(
図3参照)に係止可能に構成されている。ペーパーカバー20は、ケーシング3のオープンボタン18を押下することにより、本体フレーム31を内装するケーシング3との係止が解除され、閉位置(
図1参照)から開位置(
図2参照)へ開閉可能に構成されている。また、
図1に示すように、ペーパーカバー20の閉位置において、ペーパーカバー20の前端縁とケーシング3の上壁10における後端縁との間には、記録紙Pの幅方向に沿って間隙が設けられている。この間隙は、印刷された記録紙Pが排出される排出口19を構成している。さらに、ペーパーカバー20の前端縁には、記録紙Pを切断する第2切断刃27(
図2参照)が形成されている。排出口19から送り出された記録紙Pは、上述の第1切断刃26または第2切断刃27に接触させた状態で引き倒すことにより切断される。
【0020】
(印字ユニット)
図3は、印字ユニットの後方から見た斜視図である。
図4は、印字ユニットの前方から見た斜視図である。
図5は、プラテンローラを取り外した状態における印字ユニットの後方から見た斜視図である。
図6は、プラテンローラおよびサーマルヘッドを取り外した状態における印字ユニットの後方から見た斜視図である。
図3に示すように、印字ユニット30は、本体フレーム31と、サーマルヘッド41と、プラテンローラ51と、ロック機構60と、を備えている。
【0021】
(本体フレーム)
本体フレーム31は、金属等の板材が屈曲形成されてなり、前後方向から見て上方に向けて開放されたU字状を呈している。具体的に、本体フレーム31は、左右方向に延在する底部32と、底部32の左右方向両側から上方に向けて立設された一対の側壁部33(左側壁部33Aおよび右側壁部33B)と、底部32の上面に配設された支持部34と、を有する。本体フレーム31は、底部32がケーシング3内に配設された図示しないベース部材上に固定されている。
【0022】
図5に示すように、各側壁部33の上端縁には、下方に向けて切り込まれたローラ挿入溝35が形成されている。ローラ挿入溝35には、プラテンローラ51が上下方向に沿って着脱可能に挿入される(
図3参照)。
図3および
図4に示すように、右側壁部33Bには、モータ58が取り付けられている。モータ58は、右側壁部33Bに対して内側から取り付けられるとともに、その出力軸58aが右側壁部33Bを貫通して本体フレーム31から外側に突出している。
【0023】
図6に示すように、支持部34は、平面視矩形状の部材であって、左右方向両端部が上方に向けて突出するように形成されている。支持部34の上部には、ヘッド押圧板34aが固定されている。ヘッド押圧板34aは、左右方向を長手方向とした板状の部材であり、一対の側壁部33の間に配置されている。
【0024】
図3に示すように、本体フレーム31の後方下部には、左右方向に延びる第1シャフト36が配置されている。第1シャフト36は、両端部が一対の側壁部33にそれぞれ固定されている。
本体フレーム31において、第1シャフト36に対して前方斜め上方に位置する部分には、左右方向に沿って延びる第2シャフト37(請求項における「回動軸」に相当。)が配置されている。第2シャフト37は、第1シャフト36と同様に、両端部が一対の側壁部33にそれぞれ固定されている。
【0025】
(サーマルヘッド)
図7は、
図3のVII−VII線における断面図である。
図5および
図7に示すように、サーマルヘッド41は、記録紙Pに対して印刷を行うものであり、プラテンローラ51の外周面に圧接されている。サーマルヘッド41は、前後方向から見て矩形状に形成されている。サーマルヘッド41は、ケーシング3の上壁10の内側であって、開口部3a内に露出するように配置されるとともに、その長手方向と記録紙Pの幅方向とが一致した状態で配置されている(
図2参照)。サーマルヘッド41のヘッド面41aには、左右方向に平行にかつライン状に並んだ多数の発熱素子42が配列されている。ヘッド面41aは、記録紙Pの印字面との対向しており、プラテンローラ51の外周面との間で記録紙Pを挟持し得るようになっている。サーマルヘッド41の発熱素子42は、図示しない制御部からの信号に基づいて、それぞれ発熱するように制御されている。サーマルヘッド41は、発熱素子42の発熱が制御されて、各種の文字や図形等を記録紙Pの印字面へ印刷する。
【0026】
サーマルヘッド41は、本体フレーム31に支持されたヘッド支持体45に貼り付け固定されている。ヘッド支持体45は、左右方向を長手方向とした板状の部材であり、一対の側壁部33の間に配置されているとともに、後面にサーマルヘッド41が貼り付け固定されている。ヘッド支持体45は、ヘッド押圧板34aの後方に配置され、下部が第2シャフト37に回動可能に支持されている。
また、
図6および
図7に示すように、ヘッド支持体45とヘッド押圧板34aとの間には、ヘッド支持体45とヘッド押圧板34aとを互いに離間させる方向に向けて付勢する弾性部材46が介装されている。すわなち、弾性部材46は、ヘッド支持体45を後方に向けて常に押圧するように構成されている。弾性部材46は、左右方向に間隔をあけて複数(本実施形態では5個)配列されている。
【0027】
図5に示すように、ヘッド支持体45の上端部には、ヘッド支持体45の回動範囲を規制するためのストッパ45aが形成されている。ストッパ45aは、ヘッド支持体45における左右方向の外側に向けて延出するものであり、本体フレーム31の側壁部33の上部に形成された凹部33a内を臨んでいる。ストッパ45aは、ヘッド支持体45の回動に伴って凹部33a内を移動し、凹部33aにおける前後方向の両端面に接触可能に構成されている。ストッパ45aは、凹部33aの端面に接触することにより、ヘッド支持体45の回動量を規制している。
【0028】
(プラテンローラ)
図3および
図7に示すように、プラテンローラ51は、サーマルヘッド41に圧接され、サーマルヘッド41との間に記録紙Pを挟んだ状態で回転することで、記録紙Pを送り出す。プラテンローラ51は、ローラシャフト52と、ローラシャフト52に外装されたローラ本体53と、ローラシャフト52の両端に装着された一対の軸受54と、を有する。ローラシャフト52は、本体フレーム31の一対の側壁部33の離間距離よりやや長く形成されている。ローラ本体53は、例えばゴム等により形成され、ローラシャフト52の軸方向(左右方向)に沿って、ローラシャフト52の両端を除く全体に亘って一様に配置されている。
【0029】
図2に示すように、プラテンローラ51は、ペーパーカバー20の前端縁にプラテンフレーム55を介して回転自在に取り付けられるとともに、ペーパーカバー20の開閉に伴って本体フレーム31に着脱可能に構成されている。
図3に示すように、プラテンローラ51は、ペーパーカバー20が閉位置にある状態(
図1参照)において、両端に装着された一対の軸受54が本体フレーム31のローラ挿入溝35(
図5参照)に挿入される。プラテンローラ51は、ローラ挿入溝35に挿入された状態において、ロール紙Rから引き出された記録紙Pを間に挟んだ状態で、ローラ本体53がサーマルヘッド41に対して接触するように設けられている。
【0030】
また、プラテンローラ51の軸方向一端(右端)には従動ギヤ56が固定されている。従動ギヤ56は、プラテンローラ51が一対の側壁部33に保持されたときに、本体フレーム31に取り付けられた歯車伝達機構57に噛合するようになっている。歯車伝達機構57は、モータ58の出力軸58aに接続されており、モータ58からの回転駆動力を従動ギヤ56に伝達している。これによりプラテンローラ51は、一対の側壁部33に保持された状態で回転し、記録紙Pを送り出すことができる。
【0031】
(ロック機構)
図8は、ロック位置にあるロック機構の説明図であり、
図3のVIII−VIII線における断面図である。
図9は、ロック解除位置にあるロック機構の説明図であり、
図3のVIII−VIII線に相当する部分における断面図である。
図3および
図8に示すように、ロック機構60は、第2シャフト37に回動可能に支持され、ローラ挿入溝35に挿入されたプラテンローラ51を保持する。本実施形態では、ロック機構60は、プラテンローラ51を本体フレーム31に回転可能に保持するロック位置(
図8に示す位置)、およびプラテンローラ51が本体フレーム31に対して離脱可能なロック解除位置(
図9に示す位置)の間で回動する。ロック機構60は、プラテンローラ51の各軸受54をそれぞれ保持する一対のロックアーム62と、一対のロックアーム62を連結する連結板66と、を備えている。なお一対のロックアーム62は、同一形状に形成されているため、以下の説明では一方のロックアーム62についてのみ説明する。また、以下ロック機構60の構成の説明では、特に記載のない限り、ロック機構60がロック位置にある状態(
図8に示す状態)について説明する。
【0032】
図4に示すように、連結板66は、前後方向を厚さ方向とし、左右方向に沿って延びる板状とされ、本体フレーム31の一対の側壁部33の間でヘッド押圧板34aの前方に配置されている。連結板66は、左側の下端部にレバー突当部67を有する。レバー突当部67は、その下面が前後左右方向に沿って延設され、後述する解除レバー90の第2操作片93が当接する。
【0033】
図8に示すように、一対のロックアーム62は、平板状の部材であり、連結板66の左右方向両端部から後方に向けて各別に突設されている。ロックアーム62は、左右方向から見てローラ挿入溝35の下方に配置された基部63と、基部63の上端後部から上方に延出した抱え込み部64と、を有する。
【0034】
基部63の上下方向中央部には、軸孔81が形成されている。軸孔81は、左右方向から見てプラテンローラ51の中心軸Q2と第2シャフト37の中心軸Q1とを通る直線Lに直交する方向を長手方向とする長円形状に形成されている。
軸孔81には、第2シャフト37が挿入されている。これら軸孔81および第2シャフト37により、ロック機構60が第2シャフト37回りに回動する。また、ロック機構60は、軸孔81の範囲内で第2シャフト37に対してスライド移動可能に構成されている。このとき、ロック機構60は、ロック位置において第2シャフト37が軸孔81内の前端縁に当接し(
図8に示す状態)、ロック解除位置において軸孔81内の後端縁に当接する(
図9に示す状態)。
【0035】
基部63の下部には、第3シャフト68が取り付けられている。第3シャフト68は、第1シャフト36よりも前方において、左右方向に沿って配置され、両端部が一対の基部63にそれぞれ固定されている。第3シャフト68の中心軸Q3は、左右方向から見て直線L上に配置されている。
【0036】
抱え込み部64は、前後方向において、プラテンローラ51を挟んでサーマルヘッド41側とは反対側の領域から、プラテンローラ51の上方を通ってサーマルヘッド41側に向かって延出している(
図7参照)。抱え込み部64の前端面64a(基部63の上端面に連なる部分)は、上方に向かって斜め後方に延在した後、前方に向かって湾曲しながら延在している。前端面64aのうち湾曲している部分は、左右方向から見てプラテンローラ51の軸受54の外周面に沿う円弧状に形成されている。ロック機構60は、前端面64aの湾曲部分が軸受54に接触することで、軸受54をローラ挿入溝35の内周縁との間に挟み込み、ローラ挿入溝35内で軸受54を保持している。
【0037】
抱え込み部64の先端部64b(前端面64aの前端)は、左右方向から見て直線Lよりサーマルヘッド41側(前側)に位置するように形成されている。先端部64bは、基部63の上端面との最近接距離が、軸受54の外径より大きくなるように形成されている。
【0038】
また先端部64bは、ロック機構60がロック位置にある状態において、第2シャフト37の中心軸Q1との距離が、第2シャフト37の中心軸Q1と軸受54の外周面との最長距離より、短くなるように形成されている。これによりロックアーム62は、先端部64bが軸受54に前方から接触することで、第2シャフト37(中心軸Q1)回りの回動が制限される。
さらに先端部64bは、第2シャフト37が軸孔81内の後端縁に当接した状態(
図9に示す状態)において、第2シャフト37の中心軸Q1との距離が、第2シャフト37の中心軸Q1と軸受54の外周面との最長距離より、大きくなるように形成されている。これによりロックアーム62は、先端部64bが軸受54に接触せずに、第2シャフト37(中心軸Q1)回りを回動することができる。
【0039】
図3に示すように、第1シャフト36と第3シャフト68との間には、一対の付勢部材70が介在している。一対の付勢部材70は、それぞれ一対の基部63の内側面に沿って前後方向に延設されている。
図8に示すように、付勢部材70は、例えばコイルばねであって、第1シャフト36および第3シャフト68を接近させる方向に向けて付勢している。これにより付勢部材70は、ロック機構60をロック位置(第2シャフト37回りにおいて抱え込み部64が前方に向かう方向)に向けて付勢している。付勢部材70の付勢方向は、左右方向から見て直線Lに直交するように設定されている。すなわち、付勢部材70の付勢方向は、上述した軸孔81の長手方向に一致している。
【0040】
図4に示すように、本体フレーム31の左側壁部33Aには、オープンボタン18の操作に連動してプラテンローラ51と本体フレーム31との装着状態を解除する解除レバー90が設けられている。解除レバー90は、左側壁部33Aおよび支持部34間に支持され、左右方向回りに回動自在に取り付けられている。解除レバー90は、左右方向に延在する軸部91と、左側壁部33Aの外側において軸部91から後方に延出する第1操作片92と、左側壁部33Aの内側において軸部91から前方に延出する第2操作片93と、が一体的に形成されている。第1操作片92は、オープンボタン18に下方から連係し、オープンボタン18の押下に伴って押し下げられるように構成されている。第2操作片93は、ロック機構60のレバー突当部67に下方から連係し、オープンボタン18の押下に伴って押し上げられるように構成されている。
解除レバー90は、オープンボタン18の押下に伴い左方から見て時計回りに回動し、第2操作片93を介してロック機構60のレバー突当部67を押し上げる。これにより、ロック機構60はロック解除位置に向けて移行する(
図9参照)。
【0041】
次に、上述した印字ユニット30の作用を説明する。
まず、ペーパーカバー20の閉動作について説明する。なお、ペーパーカバー20の開位置において、ロック機構60は上述したロック位置にあるものとする。
図1および
図2に示すように、ロール紙Rをロール紙収容部21内に投入した後、ペーパーカバー20を閉じる。すると、まずプラテンローラ51の軸受54がロックアーム62の抱え込み部64に上方から各別に接触するとともに、ローラ本体53の外周面がサーマルヘッド41に接触する。
【0042】
ペーパーカバー20をさらに閉方向に向けて押し込むと、プラテンローラ51の軸受54が抱え込み部64を介してロック機構60をロック解除位置(付勢部材70の付勢力に抗する方向)に向けて押圧する。また、プラテンローラ51は、ローラ本体53の外周面がサーマルヘッド41を介してヘッド支持体45を押圧することで、ヘッド支持体45を第2シャフト37回りの弾性部材46の付勢力に抗する方向に向けて回動させる。これにより、抱え込み部64とサーマルヘッド41との間の前後方向の隙間を押し広げながら、軸受54が本体フレーム31のローラ挿入溝35内に各別に進入する。
【0043】
その後、軸受54が抱え込み部64の先端部64bを乗り越えた時点で、ロック機構60が付勢部材70の復元力によってロック位置に向けて回動する。これにより、軸受54が抱え込み部64の前端面64aとローラ挿入溝35の内周縁との間で保持され、プラテンローラ51が本体フレーム31に回転可能に保持されるとともに、ペーパーカバー20が閉位置となる。なお、この状態において、プラテンローラ51の従動ギヤ56が本体フレーム31に取り付けられた歯車伝達機構57に噛合する。
以上により、ペーパーカバー20の閉動作が終了する。
【0044】
図10は、印字ユニットの動作説明図であって、主に本体フレーム31の左側壁部33A、プラテンローラ51の軸受54、およびロック機構60を示した側面断面図である。
ここで、
図10に示すように、上述したようにロック機構60は、付勢部材70によりロック位置に向けて付勢されている。具体的に、ロック機構60は、ロック位置において、抱え込み部64の前端面64aにおける湾曲部分がプラテンローラ51の軸受54に接触している。このため、ロック機構60には、抱え込み部64の前端面64aと軸受54との接触部回りにロック位置(基部63が後方に向かう方向)に向かう第1のトルクT1が生じている。なお、抱え込み部64の前端面64aにおける湾曲部分は、軸受54の外周面に沿うように形成されている。このため、第1のトルクT1の回転中心は、軸受54(プラテンローラ51)の中心軸Q2と略一致している。
【0045】
これにより、ロック機構60は、ロック位置において、軸孔81の前端縁が第2シャフト37に前方から当接した当接状態を維持する。すなわち、第2シャフト37と軸孔81との当接状態は、付勢部材70の付勢力F(第1のトルクT1)により保持されるため、ロック機構60が第2シャフト37に対して軸孔81の範囲内で移動するのを抑制できる。
【0046】
また、ロック機構60がロック位置にあるとき(第2シャフト37と軸孔81の開口縁の前端部との当接状態)、ロック機構60には、付勢部材70の付勢力Fにより、第2シャフト37の中心軸Q1回りにロック位置に向かう第2のトルクT2が生じる。この第2のトルクT2により、ロック機構60の抱え込み部64は、前方に向かって付勢され、プラテンローラ51の軸受54を保持するとともに、プラテンローラ51の外周面をサーマルヘッド41(
図7参照)に圧接させる。
【0047】
本実施形態において、軸孔81は、その長手方向が左右方向から直線Lに直交する方向に一致している。すなわち、軸孔81の長手方向は、左右方向から見てプラテンローラ51の中心軸Q2を中心とし、第2シャフト37の中心軸Q1を通る仮想円の接線方向に一致している。
一方、付勢部材70は、付勢力Fが第3シャフト68に作用するとともに、付勢方向が左右方向から見てプラテンローラ51の中心軸Q2と第3シャフト68の中心軸Q3を結ぶ直線(直線L)に直交する方向に一致している。このため、付勢部材70の付勢力Fは、その全てが第1のトルクT1となり、第2シャフト37と軸孔81との接触部において、第2シャフト37と軸孔81との間に作用する押圧力となる。しかも軸孔81は長孔であるため、第2シャフト37が軸孔81内において軸孔81の短手方向に移動することが制限され、軸孔81内において第2シャフト37の位置が安定する。
【0048】
さらに、付勢部材70の付勢方向は、左右方向から見て第2シャフト37の中心軸Q1と第3シャフト68の中心軸Q3とを結ぶ直線(直線L)に直交する方向に一致している。このため、付勢部材70の付勢力Fは、その全てが第2のトルクT2となり、抱え込み部64とプラテンローラ51の軸受54との間に作用する押圧力となる。したがって、付勢部材70の付勢力Fを、軸孔81に対する第2シャフト37の位置決め、および抱え込み部64によるプラテンローラ51の保持に対して効率よく作用させることができる。
【0049】
次に、ペーパーカバー20の開動作について説明する。
まず、オープンボタン18を押下すると、それに連動して解除レバー90が回動する。これにより、第2操作片93を介してロック機構60がロック解除位置(付勢部材70の付勢力に抗する方向)に向けて押圧される。具体的に、ロック機構60は、抱え込み部64の前端面64aと軸受54との接触部回りに回動することで軸孔81の後端縁が第2シャフト37に接近するようにスライド移動する。これにより、ロック機構60が上方に向けて押し上げられ、抱え込み部64の先端部64bが軸受54の外周面から離間し、ロック機構60の第2シャフト37回りの回動が許容される。
この状態で、オープンボタン18をさらに押下すると、ロック機構60が第2シャフト37回りに回動することで、軸受54がローラ挿入溝35から離脱可能なロック解除位置まで抱え込み部64が退避する。この状態で、ペーパーカバー20を引き上げると、プラテンローラ51の軸受54がローラ挿入溝35から離脱する。これにより、プラテンローラ51が本体フレーム31から取り外されるとともに、ペーパーカバー20が開位置となる。
以上により、ペーパーカバー20の閉動作が終了する。
【0050】
ところで、サーマルプリンタ1(印字ユニット30)に外力が作用した場合には、ロック位置にあるロック機構60が本体フレーム31に対して上方(軸孔81の後端縁が第2シャフト37に接近する方向)に移動し、抱え込み部64が軸受54の外周面から離間するおそれがある。
この場合においても、ロック機構60は、付勢部材70の復元力によって本体フレーム31に対して下方(軸孔81の前端縁が第2シャフト37に接近する方向)に移動し、速やかにロック位置に復帰することになる。これにより、ロック位置において、軸孔81の前端縁が第2シャフト37に前方から当接した当接状態が維持される。特に、本実施形態では、軸孔81の長手方向が、付勢部材70の付勢方向に一致しているため、付勢部材70の付勢力Fを軸孔81の長手方向へ効果的に割り当てることができる。これにより、第2シャフト37を軸孔81内における所定位置により強い力で保持できる。したがって、ロック機構60のがたつきをより確実に抑制でき、プラテンローラ51の位置をより安定させることができる。
【0051】
このように、本実施形態では、本体フレーム31には、ロック機構60に設けられた軸孔81内に挿通されるとともに、ロック機構60を本体フレーム31に対して回動させる第2シャフト37が設けられている。そして、ロック位置に向けてロック機構60を付勢するとともに、第2シャフト37と軸孔81の開口縁とを当接させる付勢部材70を備えている。
この構成によれば、付勢部材70は、ロック機構60をロック位置に向けて付勢するとともに、第2シャフト37を軸孔81の開口縁における所定位置に当接させることで、本体フレーム31に対してロック機構60を所望の位置に位置決めしておくことができる。これにより、仮に印字ユニット30に対して外力が作用したとしても、例えば第2シャフト37が軸孔81の範囲内で移動するのを抑制することができる。よって、ロック機構60からプラテンローラ51に作用する保持力や保持力の作用方向を安定させることができ、サーマルヘッド41に対するプラテンローラ51の位置を安定させ、印字品質を確保できる。
【0052】
また、本実施形態では、第2シャフト37を軸孔81の開口縁における所定箇所に当接させているため、ロック機構60によるプラテンローラ51の保持精度は、第2シャフト37と軸孔81の開口縁における所定箇所との接触面の精度によって決まる。このため、従来の印字ユニットのように、ロック機構によるプラテンローラの保持精度を保証するために、製造時において軸孔の真円度や、軸孔と回動軸の同軸度等を管理する場合と比較して、製造ばらつきを容易に抑制できるとともに、軸孔81を備えたロック機構60の製造に用いる金型の管理が容易になるため、製造コストを削減させることができる。
また、軸孔81を長孔とすることで、軸孔81の寸法管理が容易になるので、製造ばらつきを改善できるとともに、軸孔81を成形する金型の高寿命化を図り、製造コストの削減を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態では、軸孔81は、長孔であり、付勢部材70は、軸孔81の開口縁のうち、長手方向の一端側に位置する部分に第2シャフト37を当接させている。
この構成によれば、軸孔81の開口縁のうち、長手方向の一端側に位置する部分に第2シャフト37を当接させることで、第2シャフト37が軸孔81の短手方向へ移動することを制限した上で、第2シャフト37を軸孔81の所望の位置に保持できる。このため、軸孔81内において第2シャフト37の位置が安定し、ロック機構60のがたつきが抑制される。したがって、サーマルヘッド41に対するプラテンローラ51の位置をより安定させることができる。
【0054】
しかも、軸孔81を長孔とすることで、例えば軸孔81を真円等に形成する場合に比べて付勢部材70による付勢方向を安定させることができるので、サーマルヘッド41に対するプラテンローラ51の位置をより安定させるとともに、製品間でのばらつきを抑制できる。
【0055】
また、付勢部材70は、本体フレーム31(第1シャフト36)とロック機構60(第3シャフト68)との間に介在している。この構成によれば、付勢部材70が印字ユニット30内に取り付けられるため、付勢部材70が取付られた状態で印字ユニット30をケーシング3に組み付けることができる。これにより、付勢部材70をケーシング3とロック機構60との間に介在させる構成と比較して、印字ユニット30をケーシング3へ組付けることが容易になり、製造コストを低減させることができる。
【0056】
そして本実施形態のサーマルプリンタ1は、印字ユニット30を備えているため、サーマルヘッド41に対するプラテンローラ51の位置を安定させ、印字品質を確保することができる。
【0057】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、ロック機構60は、ロック機構60に形成された軸孔81と、本体フレーム31が備えた第2シャフト37(回動軸)と、により回動自在とされていた。しかしながらこれに限定されず、ロック機構は、ロック機構が備える回動軸と、本体フレームに形成された軸孔と、により回動自在とされてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、軸孔81の長手方向と付勢部材70の付勢方向とが一致(平行)する構成について説明したが、両者の交差角は45°以下であれば構わない。この場合には、付勢部材70の付勢力のうち、半分以上の分力を軸孔81の長手方向へ割り当てることができる。これにより、第2シャフト37を軸孔81内における所定位置により強い力で保持できる。したがって、ロック機構60のがたつきをより確実に抑制でき、プラテンローラ51の位置をより安定させることができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、軸孔81が長円形状に形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、
図11に示すように、軸孔181は、楕円形状であってもよい。この場合、軸孔181の長手方向両端部における曲率半径を、第2シャフト37の半径よりも小さくなるように設定することが望ましい。そして第2シャフト37を軸孔181の長手方向の一端側に位置する部分に当接させることで、第2シャフト37と軸孔181の開口縁とは2箇所で接するため、第2シャフト37と軸孔181とのがたつきをより抑制できる。また、
図12に示すように、軸孔281は、円形状であってもよい。この場合でも、付勢部材70により第2シャフト37を軸孔281の所望の位置に位置決めでき、第2シャフト37が軸孔281とのはめあい公差の範囲内で移動するのを抑制できる。また、軸孔および回動軸(第2シャフト)の形状は、上記形状に限定されず、互いに所定箇所で当接し合う形状であればよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。