特許第6422372号(P6422372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422372
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/12 20140101AFI20181105BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20181105BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20181105BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20181105BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   B23K26/12
   B23K26/142
   H01L21/265 602C
   H01L21/268 G
   H01L21/20
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-42672(P2015-42672)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-159346(P2016-159346A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】政岡 正記
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−162138(JP,A)
【文献】 特開2000−021807(JP,A)
【文献】 特開2012−191112(JP,A)
【文献】 特開2014−140856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/12
B23K 26/142
H01L 21/20
H01L 21/265
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、上面に加工対象物を保持するテーブルと、
前記チャンバの、前記テーブルに対向する位置に設けられたレーザ導入窓と、
前記レーザ導入窓を通して前記チャンバ内にレーザビームを導入するレーザ光学系と、
前記テーブルと前記レーザ導入窓とに挟まれた領域を、前記チャンバ内の他の領域から隔離して隔離空間を画定する隔壁と、
前記隔離空間内に、前記レーザ導入窓から前記テーブルに向かう下降気流を発生する下降気流発生機構と
前記隔壁を昇降させる昇降機構と
を有するレーザ加工装置。
【請求項2】
前記下降気流発生機構は、
前記隔離空間にガスを導入するガス導入機構と、
前記ガス導入機構により前記隔離空間にガスが導入される位置よりも低い位置において、前記隔離空間内のガスを吸引するガス吸引機構と
を含む請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記ガス吸引機構は、前記テーブルの上面に開口するガス吸引口を含む請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記ガス吸引機構は、前記隔壁に取り付けられ、前記隔離空間内のガスを吸引するガス吸引口を含む請求項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に、窓の汚れを抑制することができるレーザ加工装置が開示されている。このレーザ加工装置においては、窓を通してチャンバ内にレーザビームが導入され、基板にレーザビームが入射する。ガス導出管からチャンバ内に導入されたガスが、窓と対向する基板に吹き付けられる。基板に吹き付けられたガスが、ガス吸引管を通して吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−253285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窓に対向する基板にガスが吹き付けられているため、レーザアニール中に基板から飛散したパーティクルが窓に付着することを抑制することができる。基板から飛散したパーティクルの一部は、ガス吸引管を通してチャンバ外に排出される。ところが、ガス吸引管を通して排出されなかったパーティクルは、チャンバ内に飛散し、チャンバの内壁に付着する。
【0005】
本発明の目的は、チャンバ内の汚染を抑制することが可能なレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、上面に加工対象物を保持するテーブルと、
前記チャンバの、前記テーブルに対向する位置に設けられたレーザ導入窓と、
前記レーザ導入窓を通して前記チャンバ内にレーザビームを導入するレーザ光学系と、
前記テーブルと前記レーザ導入窓とに挟まれた領域を、前記チャンバ内の他の領域から隔離して隔離空間を画定する隔壁と、
前記隔離空間内に、前記レーザ導入窓から前記テーブルに向かう下降気流を発生する下降気流発生機構と
前記隔壁を昇降させる昇降機構と
を有するレーザ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
テーブルとレーザ導入窓とに挟まれた領域が隔壁で隔離されているため、加工対象物から飛散したパーティクルが隔離空間の外まで飛散することを抑制することができる。これにより、チャンバ内の汚染が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例によるレーザ加工装置の概略断面図である。
図2図2Aは、ガス供給路及びガス噴出口の平面図であり、図2Bは、テーブルの平面図である。
図3図3Aは、他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図であり、図3Bは、レーザ加工時における隔壁とテーブルとの位置関係を示す部分断面図である。
図4図4Aは、さらに他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図であり、図4Bは、レーザ加工時における隔壁とテーブルとの位置関係を示す部分断面図である。
図5図5は、さらに他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図である。
図6図6は、さらに他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、実施例によるレーザ加工装置の概略断面図を示す。チャンバ10内にテーブル11が配置されている。テーブル11の上面に加工対象物30が保持される。加工対象物30は、例えば真空チャックによってテーブル11に固定される。昇降機構12がテーブル11を昇降させる。
【0010】
チャンバ10の、テーブル11に対向する位置(テーブル11の上方)に、レーザ導入窓15が設けられている。レーザ光学系40がレーザビームを出力する。レーザ光学系40の光源には、一例としてNd:YAGレーザ等の固体レーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ等のガスレーザが用いられる。レーザ光学系40は、レーザビームの経路上に配置された可変減衰器、ビームエキスパンダ、ビーム断面整形器(マスク)、ビーム走査器(例えば、ガルバノスキャナ)、集光レンズ等を含む。
【0011】
レーザ光学系40から出力されたレーザビームが、レーザ導入窓15を通してチャンバ10内に導入される。チャンバ10に導入されたレーザビームが、テーブル11に保持されている加工対象物30に入射する。これにより、レーザ加工が行われる。レーザ加工には、半導体ウエハの表面に高融点金属シリサイド膜を形成するためのアニール、イオン注入されたドーパントを活性化するための活性化アニール、アモルファスシリコンを結晶化するための結晶化アニール等が含まれる。
【0012】
隔壁20が、レーザ導入窓15とテーブル11とに挟まれた空間を、チャンバ10内の他の空間18から隔離することにより、隔離空間17を画定する。隔壁20は、例えば円筒状のアルミニウム部材で構成される。隔壁20の上端は、チャンバ10の天井の内面に接触している。レーザ導入窓15を通してチャンバ10に導入されたレーザビームは、隔離空間17を通過して加工対象物30に到達する。
【0013】
下降気流発生機構が、隔離空間17内に下降気流を発生させる。下降気流発生機構は、ガス導入機構とガス吸引機構とを含む。ガス導入機構が、隔離空間17内にガスを導入する。ガス導入機構は、開閉弁21、ガス供給路22、及びガス噴出口23を含む。開閉弁21及びガス供給路22を通して、ガス噴出口23までガスが輸送される。ガス噴出口23は、隔壁20の上端近傍に配置されており、隔壁20の内側に開口を有する。ガス噴出口23まで輸送されたガスが、ガス噴出口23から隔離空間17内に噴出する。
【0014】
ガス吸引機構は、ガス導入機構によって隔離空間17内にガスが導入される位置よりも低い位置において、隔離空間17内のガスを吸引する。ガス吸引機構は、ガス吸引口24、ガス吸引路25、及び排気ポンプ26を含む。ガス吸引口24は、テーブル11の上面に開口している。ガス吸引路25の一部がテーブル11内に設けられている。ガス吸引路25は、チャンバ10の外に配置された排気ポンプ26に接続されている。排気ポンプ26が、ガス吸引口24及びガス吸引路25を介して、隔離空間17内のガスを吸引する。隔離空間17の相対的に上方に配置されたガス噴出口23からガスが噴出し、相対的に下方に配置されたガス吸引口24からガスが吸引されることにより、隔離空間17内に下降気流が発生する。
【0015】
制御装置45が、レーザ光学系40、開閉弁21、排気ポンプ26、及び昇降機構12を制御する。制御装置45は、加工対象物30の厚さに応じて、加工対象物30の上面が目標とする高さに配置されるように昇降機構12を制御する。加工対象物30の上面を目標とする高さに配置することにより、加工対象物30の上面におけるレーザビームのプロファイルを好適な形状に保つことができる。加工対象物30の上面が目標とする高さに配置された状態で、テーブル11の上面と隔壁20の下端との間に微小な間隙が生じる。
【0016】
チャンバ10は、ガス導入口13及びガス排気口14を有する。ガス導入口13からチャンバ10内にガスが導入され、ガス排気口14からガスが排気される。ガス導入口13から導入されるガス、及びガス供給路22を通って供給されるガスは、同一のものである。このガスとして、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。
【0017】
図2Aに、ガス供給路22及びガス噴出口23の平面図を示す。ガス供給路22は、隔壁20を取り囲む環状部分22aを含む。複数のガス噴出口23が、環状部分22aから内側に向かって延び、隔壁20を貫通して、隔離空間17に開口している。複数のガス噴出口23は、隔離空間17の中心軸に関して回転対称となる位置に配置される。ガス噴出口23から隔離空間17の中心軸に向けて、ガスが噴出する。
【0018】
図2Bに、テーブル11の平面図を示す。テーブル11の上面に加工対象物30が保持されている。テーブル11の上面は加工対象物30よりも広い。ガス吸引口24は、テーブル11の上面のうち、加工対象物30の外周より外側の領域に開口している。ガス吸引口24は、加工対象物30を取り囲む円環状の平面形状を有する。ガス吸引口24は、平面視において隔壁20(図2A)よりも内側に配置されている。テーブル11の内部に、ガス吸引口24に沿うようにガス吸引路25の一部が設けられている。
【0019】
上記実施例では、図1に示したように、隔離空間17内に下降気流が発生しているため、加工対象物30から飛散したパーティクルがレーザ導入窓15まで到達しにくい。このため、パーティクルが付着することによるレーザ導入窓15の汚れを抑制することができる。
【0020】
飛散したパーティクルの大部分は、ガス吸引口24からガスとともに吸引される。さらに、隔離空間17が隔壁20によってチャンバ10内の他の空間18から隔離されている。このため、隔離空間17の外側の空間18までのパーティクルの飛散が防止される。これにより、チャンバ10の内面の汚れが抑制される。
【0021】
パーティクルが空間18まで飛散することを防止するために、テーブル11の上面と、隔壁20の下端との間隙をなるべく狭くすることが好ましい。一例として、レーザ加工時における間隙を、加工対象物30の厚さより狭くすることが好ましい。この場合、隔壁20の下端が加工対象物30の上面より低くなる。
【0022】
図3Aに、他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図を示す。以下、図1図2Bに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0023】
図1に示した実施例では、隔壁20がチャンバ10の上面に固定されていた。図3Aに示した実施例では、隔壁20が昇降機構27を介してチャンバ10に支持されている。昇降機構27は、制御装置45(図1)からの指令により、隔壁20を昇降させる。隔壁20の昇降を許容するために、ガス供給路22の一部がフレキシブル配管で形成されている。隔壁20が下降すると、隔壁20の上端とチャンバ10の上面との間に隙間が発生する。
【0024】
図3Bに、レーザ加工時における隔壁20とテーブル11との位置関係を示す。レーザ加工を行なう前に、制御装置45がテーブル11用の昇降機構12を制御し、加工対象物30の上面を目標とする高さに配置する。その後、制御装置45が隔壁20用の昇降機構27を制御して、隔壁20を下降させる。隔壁20の下端がテーブル11の上面に接触した時点で、下降を停止する。
【0025】
図3A及び図3Bに示した実施例では、レーザ加工時に隔壁20の下端とテーブル11の上面との間に隙間が生じない。このため、加工対象物30から飛散したパーティクルが隔離空間17の外側まで飛散してしまうことを防止する効果を高めることができる。隔壁20とチャンバ10の上面との間に隙間が生じているが、隔離空間17内に下降気流が発生しているため、上端の隙間からパーティクルが隔離空間17の外側に飛散することは殆どない。
【0026】
図4Aに、さらに他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図を示す。以下、図3A及び図3Bに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0027】
図4Aに示した実施例では、隔壁20の上端と、チャンバ10の上面との間に、フレキシブル部材28が配置されている。フレキシブル部材28は、隔壁20の昇降を許容し、かつ隔壁20の上端とチャンバ10の上面との間の隙間を塞いでいる。フレキシブル部材28として、例えばベローズを用いることができる。
【0028】
図4Bに、レーザ加工時における隔壁20とテーブル11との相対位置関係を示す。レーザ加工時には、図3Bに示した実施例と同様に、隔壁20の下端がテーブル11の上面に接触する。隔壁20が下降するときに、隙間の拡大に応じてフレキシブル部材28が変形する。このため、隔壁20の上端とチャンバ10の上面との間の隙間が、フレキシブル部材28で塞がれた状態が維持される。隙間が塞がれるため、隔離空間17から外部にパーティクルが飛散することを防止することができる。
【0029】
図5に、さらに他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図を示す。以下、図3A及び図3Bに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0030】
図3A及び図3Bに示した実施例では、平面視において、加工対象物30が隔壁20の内周面で囲まれた領域よりも小さい。図5に示した実施例では、平面視において、加工対象物30が隔壁20の内周面で囲まれた領域より大きい。テーブル11の上面のうち、隔壁20の内周面で囲まれた領域が加工対象物30で覆われてしまう。隔壁20の内周面で囲まれた領域にテーブル11の上面が露出しないため、テーブル11の上面に配置したガス吸引口からガスを吸引することができない。
【0031】
図5に示した実施例では、隔壁20にガス吸引口24が固定されている。ガス吸引口24は、ガス噴出口23よりも下に配置されている。ガス吸引口24が、ガス吸引路25を介して排気ポンプ26に接続されている。ガス吸引路25の一部はフレキシブル配管で形成されている。隔離空間17内のガスが、ガス吸引口24から吸引されることにより、隔離空間17内に下降気流が発生する。レーザ加工時には、加工対象物30の上面と隔壁20の下端との間に微小な隙間が確保される。
【0032】
ガス吸引口24が隔壁20に固定されているため、隔壁20の内周面で囲まれた領域より大きな加工対象物30の加工を行うことが可能である。
【0033】
図6に、さらに他の実施例によるレーザ加工装置の部分断面図を示す。以下、図5に示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0034】
図6に示した実施例では、隔壁20の下端に弾性部材29が取り付けられている。弾性部材29として、例えばスポンジ、ゴム等が用いられる。隔壁20を下降させると、弾性部材29が加工対象物30に接触する。さらに下降させると、加工対象物30の上面と隔壁20の下端との間隔の大きさに応じて弾性部材29が弾性変形する。このため、レーザ加工時に、弾性部材29によって、加工対象物30の上面と隔壁20の下端との間の隙間が塞がれる。
【0035】
加工対象物30の上面と隔壁20の下端との間の隙間が塞がれるため、加工対象物30から飛散したパーティクルが隔離空間17の外側まで飛散することを防止することができる。弾性部材29として、十分柔らかい材料を用いることにより、弾性部材29が加工対象物30に接触することによる加工対象物30の損傷を防止することができる。
【0036】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0037】
10 チャンバ
11 テーブル
12 昇降機構
13 ガス導入口
14 ガス排気口
15 レーザ導入窓
17 隔離空間
18 チャンバ内の他の空間
20 隔壁
21 開閉弁
22 ガス供給路
22a ガス供給路の環状部分
23 ガス噴出口
24 ガス吸引口
25 ガス吸引路
26 排気ポンプ
27 昇降機構
28 フレキシブル部材
29 弾性部材
30 加工対象物
40 レーザ光学系
45 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6