特許第6422382号(P6422382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422382
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】放送受信装置および出力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
   H04B1/16 Z
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-58451(P2015-58451)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-178546(P2016-178546A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】有田 靖仁
【審査官】 浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/117448(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/107588(WO,A1)
【文献】 特開2013−201469(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0053058(US,A1)
【文献】 特開平11−186926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/06
H04B 1/16
H04B 7/24− 7/26
H04H 20/00−20/46
H04H 20/51−20/86
H04H 20/91−40/27
H04H 40/90−60/98
H04N 5/38− 5/46
H04N 7/10
H04N 7/14− 7/173
H04N 7/20− 7/56
H04N 21/00−21/858
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1規格の放送を受信する第1受信部と、
前記第1規格の放送から遅延した第2規格の放送を受信する第2受信部と、
前記第1受信部によって受信された前記第1規格の放送からの、前記第2受信部によって受信された前記第2規格の放送の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記遅延時間算出部によって算出された前記遅延時間に応じて、前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、前記第1規格の放送の音声データの出力タイミングを、前記第2規格の放送の音声データの出力タイミングに同期させる遅延処理部と
を備えた放送受信装置であって、
前記遅延処理部は、前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理において、ゼロではない所定の遅延率を用いて音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす一方、音声を含むデータの遅延率よりも高い遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばすと共に、
データの出力時間の引き伸ばしに際し、
引き伸ばし後の前記音声を含まないデータが、前記遅延時間算出部によって算出された前記遅延時間を解消させることができる長さとなるように、可変の遅延率を用いて、前記音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす一方、
引き伸ばし後の前記音声を含まないデータが、所定の閾値よりも長くなる場合、当該所定の閾値と同じ長さとなるように、可変の遅延率を用いて、前記音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす
ことを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
第1規格の放送を受信する第1受信部と、
前記第1規格の放送から遅延した第2規格の放送を受信する第2受信部と、
前記第1受信部によって受信された前記第1規格の放送からの、前記第2受信部によって受信された前記第2規格の放送の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記遅延時間算出部によって算出された前記遅延時間に応じて、前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、前記第1規格の放送の音声データの出力タイミングを、前記第2規格の放送の音声データの出力タイミングに同期させる遅延処理部と
を備えた放送受信装置であって、
前記遅延処理部は、前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理において、ゼロではない所定の遅延率を用いて音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす一方、音声を含むデータの遅延率よりも高い遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばすと共に、
データの出力時間の引き伸ばしに際し、
前記音声を含まないデータを所定の長さ毎に、固定の遅延率を用いて、前記音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす一方、
前記音声を含まないデータを引き伸ばしたことにより、引き伸ばし後の音声を含まないデータの連続出力時間が所定の閾値に達した場合、当該音声を含まないデータ以降の音声を含むデータを検出して、検出した音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす
ことを特徴とする放送受信装置。
【請求項3】
前記第1規格の放送はDAB放送であり、前記第2規格の放送はIP放送であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記第1規格の放送はFM放送であり、前記第2規格の放送はIP放送である ことを特徴とする請求項1又は2に記載の放送受信装置。
【請求項5】
第1規格の放送の音声データと、前記第1規格の放送から遅延した第2規格の放送の音声データとを選択的に切り替えて出力する出力制御部を備えた放送受信装置による出力制御方法であって、
前記放送受信装置の遅延時間算出部が、前記第1規格の放送からの前記第2規格の放送の遅延時間を算出する遅延時間算出工程と、
前記放送受信装置の遅延処理部が、前記遅延時間算出工程にて算出された前記遅延時間に応じて、前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、前記第1規格の放送の音声データの出力タイミングを、前記第2規格の放送の音声データの出力タイミングに同期させる遅延処理工程と
を含み、
前記遅延処理工程の前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理において、前記遅延処理部は、ゼロではない所定の遅延率を用いて音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす一方、音声を含むデータの遅延率よりも高い遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばすと共に、データの出力時間の引き伸ばしに際し、引き伸ばし後の前記音声を含まないデータが、前記遅延時間算出部によって算出された前記遅延時間を解消させることができる長さとなるように、可変の遅延率を用いて、前記音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす一方、引き伸ばし後の前記音声を含まないデータが、所定の閾値よりも長くなる場合、当該所定の閾値と同じ長さとなるように、可変の遅延率を用いて、前記音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす
をことを特徴とする出力制御方法。
【請求項6】
第1規格の放送の音声データと、前記第1規格の放送から遅延した第2規格の放送の音声データとを選択的に切り替えて出力する出力制御部を備えた放送受信装置による出力制御方法であって、
前記放送受信装置の遅延時間算出部が、前記第1規格の放送からの前記第2規格の放送の遅延時間を算出する遅延時間算出工程と、
前記放送受信装置の遅延処理部が、前記遅延時間算出工程にて算出された前記遅延時間に応じて、前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、前記第1規格の放送の音声データの出力タイミングを、前記第2規格の放送の音声データの出力タイミングに同期させる遅延処理工程と
を含み、
前記遅延処理工程の前記第1規格の放送の音声データに対する遅延処理において、前記遅延処理部は、ゼロではない所定の遅延率を用いて音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす一方、音声を含むデータの遅延率よりも高い遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばすと共に、データの出力時間の引き伸ばしに際し、前記音声を含まないデータを所定の長さ毎に、固定の遅延率を用いて、前記音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす一方、前記音声を含まないデータを引き伸ばしたことにより、引き伸ばし後の音声を含まないデータの連続出力時間が所定の閾値に達した場合、当該音声を含まないデータ以降の音声を含むデータを検出して、検出した音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす
をことを特徴とする出力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置および出力制御方法に関し、特に、第1規格の放送と、第1規格の放送から遅延した第2規格の放送とを選択的に切り替えて出力するようになされた放送受信装置および出力制御方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに規格が異なるが同一内容である2つの放送(例えば、DAB(Digital Audio Broadcast)放送とIP(Internet Protocol)放送)を受信して、これら2つの放送を選択的に切り替えて出力できるようになされた放送受信装置が考案されている。これにより、例えば、一方の放送の受信環境が悪化した場合に、他方の放送に切り替えて出力することにより、同じ内容の放送を引き続きユーザが聞き続けることができるようになる。
【0003】
しかしながら、放送受信装置にて受信される2つの放送間で時間差が生じる場合がある。例えば、DAB放送とIP放送とを選択的に切り替えて出力できるようになされた放送受信装置において、IP放送は、放送局からプロバイダ、インターネットサーバ等を経由して放送受信装置へ送信されてくる。このため、放送受信装置にて受信されるDAB放送とIP放送との間に時間差が生じること、すなわち、IP放送の受信がDAB放送の受信よりも遅延することが知られている。
【0004】
そこで、従来、このような2つの放送間の時間差を解消させて2つの放送の出力タイミングを同期させることにより、2つの放送間でのシームレスな切り替えを行うことができるようにした技術が考案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、1系IP化送出サーバおよび2系IP化送出サーバを備えた二重化構成のIP放送送出システムにおいて、1系および2系のそれぞれについて、TS(Transport Stream)に定期的にタイムスタンプを付加し、TSに含まれるPCR(Program Clock Reference)コードとタイムスタンプとの差分値を検出し、1系および2系のそれぞれで検出された差分値をもとにTS信号に対して同期処理を行う技術が開示されている。これにより、1系IP化送出サーバおよび2系IP化送出サーバからIPパケットが同期して切替器に入力されるため、映像をスムーズに切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−227599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、DAB放送とIP放送とを選択的に切り替えて出力できるようになされた従来の放送受信装置において、DAB放送に対するIP放送の遅延時間を求め、この遅延時間に応じてDAB放送の音声データに対する遅延処理(タイムストレッチ)を行うことにより、DAB放送の音声データの出力タイミングを、IP放送の音声データの出力タイミングに同期させる方法が知られている。
【0008】
図9は、従来の放送受信装置による処理タイミングの一例を示す図である。ここでは、DAB放送とIP放送のいずれにおいても、互いに同じ内容の音声データが「1」,「2」,「3」,「4」,・・・と放送される例を説明する。また、ここでは、音声データの1コマを所定時間(例えば、1秒)の音声データと仮定して、模式的に示している。
【0009】
図9に示すように、DAB放送の音声データとIP放送の音声データとは互いに同じ内容ではあるが、IP放送は、放送局からプロバイダ、インターネットサーバ等を経由して放送受信装置へ送信されてくるため、DAB放送よりも遅延して受信される。図9に示す例では、IP放送は、DAB放送よりも音声データ4コマ分遅延している。
【0010】
そこで、図9に示す例では、DAB放送の音声出力からIP放送の音声出力へ切り替えをシームレスに行うことができるように、DAB放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、DAB放送の音声データの出力タイミングを、IP放送の音声データの出力タイミングに同期させるようにしている。
【0011】
具体的には、まず、放送受信装置は、電源がONに切り替えられると(タイミングt1)、DAB放送およびIP放送の音声データの受信を開始する。そして、放送受信装置は、DAB放送からのIP放送の遅延時間を算出する(タイミングt2)。このタイミングで、放送受信装置は、算出された遅延時間に応じて、DAB放送の出力音声の遅延処理を行う。
【0012】
具体的には、放送受信装置は、算出されたIP放送の遅延時間が解消されるように、DAB放送の音声データを必要なコマ数だけタイムストレッチする(タイミングt2〜t3)。タイムストレッチとは、音声データの出力処理の周波数を下げてその音声データの出力時間を引き伸ばすことである。
【0013】
この遅延処理により、放送受信装置は、DAB放送からのIP放送の遅延時間を解消させて、DAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとが同期した状態(タイミングt3以降の状態)で、DAB放送からIP放送へのシームレスな切り替えを行うことができるようになる。
【0014】
しかしながら、従来の放送受信装置は、DAB放送の音声データに対する遅延処理を行う際に、一定の遅延率(遅延処理前の出力時間に対する遅延処理後の出力時間の割合)を用いて音声データを遅延させている。このため、放送受信装置が遅延処理を行っている間、ユーザは、遅延処理によって変調された音声を長く聞き続けなければならないといった問題が生じていた。
【0015】
例えば、図9に示す例では、DAB放送の出力タイミングをIP放送の出力タイミングに同期させるため、DAB放送の4コマの音声データ「7」〜「10」を遅延させている。図9に示す例では、音声データ「7」〜「10」のいずれも、一定の遅延率(図9の例では、200%)を用いて出力時間が引き伸ばされている。この場合、ユーザは、音声データ「7」〜「10」が出力されている長時間(タイムストレッチが行われていない音声データ8コマ分の出力時間に相当)の間、遅延処理によって変調された音声を聞き続けなければならない。
【0016】
なお、図9の例では、説明を分かり易くするために遅延率を200%としているが、実際には、遅延率は110%程度であるため、変調された音声の出力時間は、より長時間化すると考えられる。
【0017】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、遅延処理によって2つの放送を同期させるようになされた放送受信装置において、遅延処理によって変調された音声が出力される時間を短時間化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記した課題を解決するために、本発明では、第1規格の放送からの第2規格の放送の遅延時間を算出し、算出された遅延時間に応じて、第1規格の放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、第1規格の放送の音声データの出力タイミングを、第2規格の放送の音声データの出力タイミングに同期させるようになされた放送受信装置において、第1規格の放送の音声データに対する遅延処理において、ゼロではない所定の遅延率を用いて音声を含むデータの出力時間を引き伸ばす一方、音声を含むデータの遅延率よりも高い遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばすようにすると共に、データの出力時間の引き伸ばしに際し、引き伸ばし後の音声を含まないデータが、算出された遅延時間を解消させることができる長さとなるように、可変の遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす一方、引き伸ばし後の音声を含まないデータが、所定の閾値よりも長くなる場合、当該所定の閾値と同じ長さとなるように、可変の遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばすようにしている。また、本発明の別の態様では、データの出力時間の引き伸ばしに際し、音声を含まないデータを所定の長さ毎に、固定の遅延率を用いて、音声を含まないデータの出力時間を引き伸ばす一方、音声を含まないデータを引き伸ばしたことにより、引き伸ばし後の音声を含まないデータの連続出力時間が所定の閾値に達した場合、当該音声を含まないデータ以降の音声を含むデータを検出して、検出した音声を含むデータの出力時間を引き伸ばすようにしている。
【発明の効果】
【0019】
上記のように構成した本発明によれば、第1規格の放送の音声データに対する遅延処理において、遅延処理によって引き伸ばされた音声データの出力時間全体において、音声を含まないデータの出力時間の占める割合が増加する一方で、音声を含むデータの出力時間の占める割合が減少するようになる。このため、本発明によれば、遅延処理によって変調された音声が出力される時間を短時間化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る放送受信装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る放送受信装置による処理の一例(第1例)を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態に係る放送受信装置による処理タイミングの一例(第1例)を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る放送受信装置による処理の一例(第2例)を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1実施形態に係る放送受信装置による処理タイミングの一例(第2例)を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る放送受信装置の機能構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る放送受信装置による処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態に係る放送受信装置による処理タイミングの一例を示す図である。
図9】従来の放送受信装置による処理タイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る放送受信装置10の機能構成例を示すブロック図である。図1に示す放送受信装置10は、DAB放送(第1規格の放送の一例)と、IP放送(第2規格の放送の一例)とを受信して、DAB放送の音声データ(第1規格の放送の音声データの一例)とIP放送の音声データ(第2規格の放送の音声データの一例)とを選択的に切り替えてスピーカ12に出力することが可能な装置である。
【0022】
図1に示すように、放送受信装置10は、第1受信部101、第1復調部102、DABバッファ103、第2受信部104、第2復調部105、IPバッファ106、遅延時間算出部107、無音データ検出部108、遅延処理部109および出力制御部110を備えている。
【0023】
上記各機能ブロック101〜110は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック101〜110は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0024】
第1受信部101は、DAB放送の放送波を受信する。第1復調部102は、第1受信部101によって受信されたDAB放送の放送波を復調する。DABバッファ103は、第1受信部101によって受信されたDAB放送(第1復調部102による復調後のDAB放送)に含まれている音声データを記憶する。
【0025】
第2受信部104は、IP放送の通信データを受信する。第2復調部105は、第2受信部104によって受信されたIP放送の通信データを復調する。IPバッファ106は、第2受信部104によって受信されたIP放送(第2復調部105による復調後のIP放送)に含まれている音声データを記憶する。
【0026】
第2受信部104によって受信されるIP放送は、第1受信部101によって受信されるDAB放送と同一の内容である。但し、第2受信部104によって受信されるIP放送は、第1受信部101によって受信されたDAB放送よりも遅延して受信される。第1受信部101が、DAB放送の放送波を直接受信するのに対し、第2受信部104は、放送局からプロバイダおよびインターネットサーバを経由して送信されてきたIP放送の通信データを受信するからである。
【0027】
出力制御部110は、第1受信部101によって受信されたDAB放送(第1復調部102による復調後のDAB放送)の音声データと、第2受信部104によって受信されたIP放送(第2復調部105による復調後のIP放送)音声データとを選択的に切り替えて出力する。例えば、出力制御部110は、DAB放送の受信信号強度が所定の閾値よりも高い場合には、DAB放送に切り替えて出力する。一方、出力制御部110は、DAB放送の受信信号強度が所定の閾値を下回った場合には、IP放送に切り替えて出力する。すなわち、出力制御部110は、IP放送よりも高品質なDAB放送を優先的に出力するようにしている。出力制御部110が出力した音声データは、アンプ11によって増幅され、スピーカ12から音声出力されることとなる。
【0028】
遅延時間算出部107は、第1受信部101によって受信されたDAB放送からの、第2受信部104によって受信されたIP放送の遅延時間を算出する。例えば、遅延時間算出部107は、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データと、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとを比較して、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データから、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとの同一データを特定する。そして、遅延時間算出部107は、IPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データの受信タイミングと、DABバッファ103から特定された同一データの受信タイミングとに基づいて、DAB放送からのIP放送の遅延時間を算出する。
【0029】
なお、遅延時間算出部107は、遅延処理部109による遅延処理の対象のデータが無音データから有音データに切り替わる毎、および、有音データから無音データに切り替わる毎に、残りの遅延時間を算出する。例えば、遅延処理部109が初めに無音データの遅延処理を行った後、遅延処理の対象のデータが無音データから有音データに切り替わったとき、遅延時間算出部107は、最初に算出した遅延時間から、無音データの遅延処理により解消された遅延時間を減じることにより、当該無音データの遅延処理後の残りの遅延時間を算出する。
【0030】
その後、遅延処理部109が有音データの遅延処理を行った後、遅延処理の対象のデータが有音データから無音データに切り替わったとき、遅延時間算出部107は、無音データの遅延処理後に算出した残りの遅延時間から、当該有音データの遅延処理により解消された遅延時間を減じることにより、当該有音データの遅延処理後の残りの遅延時間を算出する。
【0031】
無音データ検出部108は、DAB放送の音声データから音声を含まない音声データ(以下、「無音データ」と示す)を検出する。また、無音データ検出部108は、無音データの長さを検出する。例えば、無音データ検出部108は、ミュート、ゼロデータ、DAB−BER(Bit Error Rate)が所定の閾値より高いデータ等を無音データとして検出する。なお、第1規格の放送としてFM放送を適用した場合には、瞬時周波数の最大周波数偏移(Deviation)が所定の閾値より低いデータを無音データとして検出することもできる。
【0032】
遅延処理部109は、遅延時間算出部107によって算出された遅延時間に応じて、DAB放送の音声データに対する遅延処理(タイムストレッチ)を行う。これにより、遅延処理部109は、出力制御部110が出力するDAB放送の音声データの出力タイミングを、出力制御部110が出力するIP放送の音声データの出力タイミングに同期させる。
【0033】
ここで、遅延処理部109は、DAB放送の音声データに対する遅延処理において、音声を含む音声データ(以下、「有音データ」と示す)の遅延率よりも高い遅延率を用いて、無音データ検出部108によって検出された無音データをタイムストレッチするようにしている。特に、第1実施形態では、遅延処理部109は、無音データのタイムストレッチ後の出力時間が所定の閾値thを超えない範囲で、当該無音データをタイムストレッチするようにしている。
【0034】
一例として、遅延処理部109は、引き伸ばし後の無音データが所定の長さとなるように、当該無音データの長さと所定の閾値thとに応じた可変の遅延率を用いて、当該無音データの出力時間を引き伸ばす。具体的には、遅延処理部109は、引き伸ばし後の無音データが、残りの遅延時間を解消させることができる長さとなるように、可変の遅延率を用いて、当該無音データの出力時間を引き伸ばす。ここで、引き伸ばし後の無音データが所定の閾値thよりも長くなる場合、遅延処理部109は、当該所定の閾値thと同じ長さとなるように、可変の遅延率を用いて、当該無音データの出力時間を引き伸ばす。
【0035】
他の一例として、遅延処理部109は、無音データを所定の長さ毎に、固定の遅延率を用いて、所定の閾値thを超えない範囲で当該無音データの出力時間を引き伸ばす。そして、遅延処理部109は、無音データを引き伸ばしたことにより、無音データの連続出力時間が所定の閾値thに達した場合、当該無音データ以降の有音データを検出して、検出した有音データの出力時間を引き伸ばす。
【0036】
〔放送受信装置10による処理の一例(第1例)〕
図2は、本発明の第1実施形態に係る放送受信装置10による処理の一例(第1例)を示すフローチャートである。図2に示す処理は、例えば、放送受信装置10の電源がONに切り替えられたときに実行される。この第1例では、遅延処理部109が、可変の遅延率を用いて無音データの出力時間を引き伸ばす例を説明する。
【0037】
なお、図2に示してはいないが、放送受信装置10の電源がONに切り替えられると、第1受信部101によるDAB放送の受信および第1復調部102による復調と、第2受信部104によるIP放送の受信および第2復調部105による復調とが、並行して行われるようになる。
【0038】
まず、DABバッファ103が、第1受信部101によって受信されたDAB放送の音声データを記憶する(ステップS202)。また、IPバッファ106が、第2受信部104によって受信されたIP放送の音声データを記憶する(ステップS204)。そして、遅延時間算出部107が、DABバッファ103に記憶された音声データと、IPバッファ106に記憶された音声データとに基づいて、DAB放送からのIP放送の遅延時間を算出する(ステップS206)。さらに、遅延処理部109が、ステップS206で算出された遅延処理に応じて、DAB放送の音声データに対する遅延処理を開始する(ステップS208)。
【0039】
この遅延処理では、まず、無音データ検出部108が、遅延処理の対象とする音声データから所定の長さのデータを抽出する(ステップS210)。そして、無音データ検出部108が、ステップS210で抽出した所定の長さのデータが無音データか否かを判断する(ステップS212)。ここで、所定の長さのデータが無音データではないと無音データ検出部108が判断した場合(ステップS212:No)、遅延処理部109が、当該所定の長さのデータを有音データ用の固定の遅延率でタイムストレッチする(ステップS226)。
【0040】
そして、遅延処理部109が、ステップS226の有音データのタイムストレッチによって残りの遅延時間(タイムストレッチの開始直後から有音データの場合はステップS206で算出された遅延時間)が解消したか否かを判断する(ステップS228)。ここで、残りの遅延時間が解消したと遅延処理部109が判断した場合(ステップS228:Yes)、遅延処理部109がDAB放送の遅延処理を終了して(ステップS230)、放送受信装置10は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0041】
一方、残りの遅延時間が解消していないと遅延処理部109が判断した場合(ステップS228:No)、放送受信装置10は、ステップS210以降の処理を再度実行する。
【0042】
一方、ステップS212において、所定の長さのデータが無音データであると無音データ検出部108が判断した場合(ステップS212:Yes)、遅延時間算出部107が、遅延処理部109による遅延処理前に算出された遅延時間から、遅延処理部109による遅延処理によって解消した遅延時間を減じることにより、残りの遅延時間を算出する(ステップS214)。また、無音データ検出部108が、無音データの長さを特定する(ステップS216)。そして、遅延処理部109が、遅延時間算出部107によって算出された残りの遅延時間(タイムストレッチの開始直後から無音データの場合はステップS206で算出された遅延時間)が解消するまで無音データをタイムストレッチすると仮定した場合に、タイムストレッチ後の無音データの出力時間が閾値thよりも大きくなるか否かを判断する(ステップS218)。
【0043】
ここで、タイムストレッチ後の無音データの出力時間が閾値thよりも大きくなると遅延処理部109が判断した場合(ステップS218:Yes)、遅延処理部109が、無音データの出力時間が閾値thと同じ長さとなる遅延率を用いて、無音データをタイムストレッチする(ステップS222)。そして、無音データのタイムストレッチが終わると、遅延時間算出部107が、無音データのタイムストレッチ前に算出された遅延時間から、無音データのタイムストレッチによって解消した遅延時間を減じることにより、残りの遅延時間を算出する(ステップS224)。その後、遅延処理部109が、無音データの次の有音データを、有音データ用の固定の遅延率でタイムストレッチする(ステップS226)。そして、放送受信装置10は、上記したステップS228の判断処理へ処理を進める。
【0044】
一方、タイムストレッチ後の無音データの出力時間が閾値thよりも大きくならないと遅延処理部109が判断した場合(ステップS218:No)、遅延処理部109が、無音データの出力時間が残りの遅延時間を解消させることができる出力時間となる遅延率を用いて、無音データをタイムストレッチする(ステップS220)。そして、無音データのタイムストレッチが終わると、遅延処理部109がDAB放送の遅延処理を終了して(ステップS230)、放送受信装置10は、図2に示す一連の処理を終了する。
【0045】
〔処理タイミングの一例(第1例)〕
図3は、本発明の第1実施形態に係る放送受信装置10による処理タイミングの一例(第1例)を示す図である。図3(a)は、音声データ1コマ分の無音データを遅延処理の対象データの先頭に含む例を示す。図3(b)は、音声データ2コマ分の無音データを遅延処理の対象データの先頭に含む例を示す。ここでは、DAB放送とIP放送のいずれにおいても、互いに同じ内容の音声データが「1」,「2」,「3」,「4」,・・・と放送される例を説明する。また、ここでは、音声データの1コマを所定時間(例えば、1秒)の音声データと仮定して、模式的に示している。
【0046】
図3(a),(b)に示すように、DAB放送の音声データとIP放送の音声データとは互いに同じ内容ではあるが、IP放送は、放送局からプロバイダ、インターネットサーバ等を経由して放送受信装置10へ送信されてくるため、DAB放送よりも遅延して受信される。図3(a),(b)に示す例では、IP放送は、DAB放送よりも音声データ4コマ分遅延している。
【0047】
そこで、図3(a),(b)に示す例では、DAB放送の音声出力からIP放送の音声出力へ切り替えをシームレスに行うことができるように、DAB放送の音声データに対する遅延処理を行うことにより、DAB放送の音声データの出力タイミングを、IP放送の音声データの出力タイミングに同期させるようにしている。
【0048】
具体的には、まず、放送受信装置10の電源がONに切り替えられると(タイミングt1)、第1受信部101がDAB放送の受信を開始するとともに、第2受信部104がIP放送の受信を開始する。そして、遅延時間算出部107が、DAB放送からのIP放送の遅延時間を算出すると(タイミングt2)、このタイミングで、遅延処理部109が、算出された遅延時間に応じて、DAB放送の出力音声の遅延処理を行う。
【0049】
具体的には、遅延処理部109は、算出されたIP放送の遅延時間が解消されるように、DAB放送の音声データを必要なコマ数だけタイムストレッチする(タイミングt2〜t3)。
【0050】
この遅延処理により、遅延処理部109は、DAB放送からのIP放送の遅延時間を解消させて、DAB放送の出力タイミングとIP放送の出力タイミングとが同期した状態(タイミングt3以降の状態)にすることができる。したがって、出力制御部110は、DAB放送からIP放送へのシームレスな切り替えを行うことができるようになる。
【0051】
ここで、図3(a)と図3(b)とでは、遅延処理の対象データの先頭にある無音データの長さが異なるため、互いに異なる無音データの遅延率が適用されている。なお、図3(a),(b)において、無音データには「無」を付している。また、有音データには「有」を付している。
【0052】
例えば、図3(a)に示す例では、遅延処理の開始タイミング(タイミングt2)において、DAB放送の先頭の音声データは無音データ「7」であり、その次の音声データは有音データ「8」である。このとき、残りの遅延時間は、音声データ4コマ分である。また、閾値thは、音声データ4コマ分であるとする。
【0053】
この場合、まず、遅延処理部109は、無音データ「7」をタイムストレッチして当該無音データ「7」の出力時間を残りの遅延時間を解消させることができる出力時間としたときに、当該無音データ「7」の出力時間が閾値thを超えるか否かを判断する。図3(a)に示す例では、無音データ「7」の出力時間を音声データ5コマ分にタイムストレッチすれば、残りの遅延時間を解消させることができるが、閾値th(音声データ4コマ分)を超えてしまう。そこで、遅延処理部109は、無音データ「7」をその出力時間が閾値thとなるようにタイムストレッチする。
【0054】
この無音データ「7」のタイムストレッチによって、遅延時間は、音声データ3コマ分解消する。よって、残りの遅延時間は、音声データ1コマ分となる。その後、遅延処理部109は、次の有音データ「8」を有用データ用の固定の遅延率(200%)によりタイムストレッチする。これにより、残りの遅延時間が解消し、DAB放送の出力タイミングがIP放送の出力タイミングと同期する(タイミングt3)。
【0055】
一方、図3(b)に示す例では、遅延処理の開始タイミング(タイミングt2)において、DAB放送の先頭の音声データは無音データ「7」であり、その後に、無音データ「8」、有音データ「9」、有音データ「10」と続く。このとき、残りの遅延時間は、音声データ4コマ分である。
【0056】
この場合、まず、遅延処理部109は、無音データ「7」と無音データ「8」とを足し合わせた音声データαをタイムストレッチして当該音声データαの出力時間を残りの遅延時間を解消させることができる出力時間としたときに、当該音声データαの出力時間が閾値thを超えるか否かを判断する。図3(b)に示す例では、音声データαの出力時間を音声データ6コマ分にタイムストレッチすれば、残りの遅延時間を解消させることができるが、閾値th(音声データ4コマ分)を超えてしまう。そこで、遅延処理部109は、音声データαをその出力時間が閾値thとなるようにタイムストレッチする。
【0057】
この音声データαのタイムストレッチによって、遅延時間は、音声データ2コマ分解消する。よって、残りの遅延時間は、音声データ2コマ分となる。その後、遅延処理部109は、次の有音データ「9」を有用データ用の固定の遅延率(200%)によりタイムストレッチする。続けて、遅延処理部109は、有音データ「10」を有用データ用の固定の遅延率(200%)によりタイムストレッチする。これにより、残りの遅延時間が解消し、DAB放送の出力タイミングがIP放送の出力タイミングと同期する(タイミングt3)。
【0058】
なお、図3(b)の場合は、タイムストレッチ後の無音データの長さは図9に示した従来例と同じになるが、閾値thを音声データ4コマ分よりも長くすれば、タイムストレッチ後の無音データの長さを図9に示した従来例よりも長くすることができる。
【0059】
〔放送受信装置10による処理の一例(第2例)〕
図4は、本発明の第1実施形態に係る放送受信装置10による処理の一例(第2例)を示すフローチャートである。図4に示す処理は、例えば、放送受信装置10の電源がONに切り替えられたときに実行される。この第2例では、遅延処理部109が、固定の遅延率を用いて無音データの出力時間を引き伸ばす例を説明する。
【0060】
なお、図4に示してはいないが、放送受信装置10の電源がONに切り替えられると、第1受信部101によるDAB放送の受信および第1復調部102による復調と、第2受信部104によるIP放送の受信および第2復調部105による復調とが、並行して行われるようになる。
【0061】
まず、DABバッファ103が、第1受信部101によって受信されたDAB放送の音声データを記憶する(ステップS402)。また、IPバッファ106が、第2受信部104によって受信されたIP放送の音声データを記憶する(ステップS404)。そして、遅延時間算出部107が、DABバッファ103に記憶された音声データと、IPバッファ106に記憶された音声データとに基づいて、DAB放送からのIP放送の遅延時間を算出する(ステップS406)。さらに、遅延処理部109が、ステップS408で算出された遅延時間に応じて、DAB放送の音声データに対する遅延処理を開始する(ステップS408)。
【0062】
この遅延処理では、まず、無音データ検出部108が、遅延処理の対象とする音声データから所定の長さのデータを抽出する(ステップS410)。そして、無音データ検出部108が、ステップS410で抽出された所定の長さのデータが無音データか否かを判断する(ステップS412)。ここで、所定の長さのデータが無音データではないと無音データ検出部108が判断した場合(ステップS412:No)、遅延処理部109が、当該所定の長さのデータを有音データ用の固定の遅延率でタイムストレッチする(ステップS414)。
【0063】
そして、遅延処理部109が、ステップS414の有音データのタイムストレッチによって残りの遅延時間(タイムストレッチの開始直後から有音データの場合はステップS406で算出された遅延時間)が解消したか否かを判断する(ステップS416)。ここで、残りの遅延時間が解消したと遅延処理部109が判断した場合(ステップS416:Yes)、遅延処理部109がDAB放送の遅延処理を終了して(ステップS430)、放送受信装置10は、図4に示す一連の処理を終了する。
【0064】
一方、残りの遅延時間が解消していないと遅延処理部109が判断した場合(ステップS416:No)、放送受信装置10は、ステップS410以降の処理を再度実行する。
【0065】
一方、ステップS412において、所定の長さのデータが無音データであると無音データ検出部108が判断した場合(ステップS412:Yes)、遅延時間算出部107が、遅延処理部109による遅延処理前に算出された遅延時間から、遅延処理部109による遅延処理によって解消した遅延時間を減じることにより、残りの遅延時間を算出する(ステップS418)。そして、遅延処理部109が、所定の長さのデータを無音データ用の固定の遅延率でタイムストレッチする(ステップS420)。
【0066】
そして、遅延処理部109が、ステップS420の無音データのタイムストレッチによって残りの遅延時間(タイムストレッチの開始直後から無音データの場合はステップS406で算出された遅延時間)が解消したか否かを判断する(ステップS422)。ここで、残りの遅延時間が解消したと遅延処理部109が判断した場合(ステップS422:Yes)、遅延処理部109がDAB放送の遅延処理を終了して(ステップS430)、放送受信装置10は、図4に示す一連の処理を終了する。
【0067】
一方、残りの遅延時間が解消していないと遅延処理部109が判断した場合(ステップS422:No)、遅延処理部109が、無音データの連続出力時間が閾値thを超えたか否かを判断する(ステップ424)。ここで、無音データの連続出力時間が閾値thを超えていないと遅延処理部109が判断した場合(ステップ424:No)、放送受信装置10は、ステップS410以降の処理を再度実行する。
【0068】
一方、無音データの連続出力時間が閾値thを超えたと遅延処理部109が判断した場合(ステップ424:Yes)、遅延時間算出部107が、遅延処理部109による遅延処理前に算出された遅延時間から、ステップS420のタイムストレッチによって解消した遅延時間を減じることにより、残りの遅延時間を算出する(ステップS426)。
【0069】
その後、無音データ検出部108が、当該無音データ以降の音声データから、有音データを次の遅延処理対象として検出する(ステップ428)。そして、放送受信装置10は、ステップS410以降の処理を再度実行する。
【0070】
〔処理タイミングの一例(第2例)〕
図5は、本発明の第1実施形態に係る放送受信装置10による処理タイミングの一例(第2例)を示す図である。図5(a)は、音声データ2コマ分の無音データを遅延処理の対象データの先頭に含む例を示す。図5(b)は、音声データ3コマ分の無音データを遅延処理の対象データの先頭に含む例を示す。図5(a),(b)において、IP放送およびDAB放送の音声データの内容および受信タイミングについては、第1実施形態(図3)と同様であるため、説明を省略する。但し、図5(a),(b)に示す例では、IP放送は、DAB放送よりも音声データ6コマ分遅延している。また、閾値thは、音声データ6コマ分とする。
【0071】
図5(a),(b)に示す例では、音声データ1コマを所定の長さのデータとして、音声データ1コマ毎に、タイムストレッチを行う。また、無音データの遅延率として、固定の遅延率(300%)を適用している。また、有音データの遅延率として、固定の遅延率(200%)を適用している。なお、図5(a),(b)において、無音データには「無」を付している。また、有音データには「有」を付している。
【0072】
例えば、図5(a),(b)に示す例では、遅延処理の開始タイミング(タイミングt2)において、DAB放送の先頭の音声データは無音データ「9」である。このとき、残りの遅延時間は、音声データ6コマ分である。
【0073】
図5(a)の場合、まず、遅延処理部109は、無音データ「9」を固定の遅延率(300%)を用いてタイムストレッチする。この段階で、残りの遅延時間(音声データ6コマ分)は解消しておらず、無音データの連続出力時間は閾値th(音声データ6コマ分)を超えていない。よって、遅延処理部109は、次の無音データ「10」を固定の遅延率(300%)を用いてタイムストレッチする。この段階で、残りの遅延時間は解消していないが、無音データの連続出力時間は閾値thに達している。ここまでのタイムストレッチで、解消した遅延時間は音声データ4コマ分である。よって残りの遅延時間は、音声データ2コマ分である。
【0074】
続いて、遅延処理部109は、有音データ「11」を固定の遅延率(200%)を用いてタイムストレッチする。この段階で、残りの遅延時間(音声データ2コマ分)は解消していない。よって、続いて、遅延処理部109は、次の有音データ「12」を固定の遅延率(200%)を用いてタイムストレッチする。これにより、残りの遅延時間が解消し、DAB放送の出力タイミングがIP放送の出力タイミングと同期する(タイミングt3)。
【0075】
一方、図5(b)の場合、まず、遅延処理部109は、無音データ「9」を固定の遅延率(300%)を用いてタイムストレッチする。この段階で、残りの遅延時間(音声データ6コマ分)は解消しておらず、無音データの連続出力時間は閾値th(音声データ6コマ分)を超えていない。よって、遅延処理部109は、次の無音データ「10」を固定の遅延率(300%)を用いてタイムストレッチする。この段階で、残りの遅延時間は解消していないが、無音データの連続出力時間は閾値thに達している。ここまでのタイムストレッチで、解消した遅延時間は音声データ4コマ分である。よって残りの遅延時間は、音声データ2コマ分である。
【0076】
ここで、次の無音データ「11」を固定の遅延率(300%)を用いてタイムストレッチしてしまうと、無音データの連続出力時間が閾値thを超えてしまう。このため、遅延処理部109は、無音データ「11」を出力せず、当該無音データ「11」以降の最初の有音データ「12」を、固定の遅延率(200%)を用いてタイムストレッチする。この段階で、残りの遅延時間(音声データ2コマ分)は解消していない。よって、続いて、遅延処理部109は、次の有音データ「13」を固定の遅延率(200%)を用いてタイムストレッチする。この段階でも、残りの遅延時間は解消していない。よって、続いて、遅延処理部109は、次の有音データ「14」を固定の遅延率(200%)を用いてタイムストレッチする。これにより、残りの遅延時間が解消し、DAB放送の出力タイミングがIP放送の出力タイミングと同期する(タイミングt3)。
【0077】
このように、第1実施形態の放送受信装置10によれば、DAB放送の音声データに対する遅延処理において、遅延処理によって引き伸ばされた音声データの出力時間全体において、無音データの出力時間の占める割合が増加する一方で、有音データの出力時間の占める割合が減少するようになる。このため、第1実施形態の放送受信装置10によれば、遅延処理によって変調された音声が出力される時間を短時間化することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
次に、図6〜8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る放送受信装置10’の機能構成例を示すブロック図である。図6に示す放送受信装置10’は、遅延処理部109の代わりに遅延処理部109’を備えている点で、第1実施形態の放送受信装置10(図1参照)と異なる。
【0079】
遅延処理部109’は、DAB放送からのIP放送の残りの遅延時間に関わらず、無音データのタイムストレッチ後の出力時間が、残りの遅延時間を解消することができる長さの出力時間となるように、当該無音データをタイムストレッチする。すなわち、この第2実施形態では、無音データのタイムストレッチを行う際に、無音データのタイムストレッチ後の出力時間の長さが閾値thによって制限されない。
【0080】
〔放送受信装置10’による処理の一例〕
図7は、本発明の第2実施形態に係る放送受信装置10’による処理の一例を示すフローチャートである。図7に示す処理は、例えば、放送受信装置10’の電源がONに切り替えられたときに実行される。
【0081】
まず、DABバッファ103が、第1受信部101によって受信されたDAB放送の音声データを記憶する(ステップS702)。また、IPバッファ106が、第2受信部104によって受信されたIP放送の音声データを記憶する(ステップS704)。そして、遅延時間算出部107が、DABバッファ103に記憶された音声データと、IPバッファ106に記憶された音声データとに基づいて、DAB放送からのIP放送の遅延時間を算出する(ステップS706)。さらに、遅延処理部109’が、ステップS708で算出された遅延時間に応じて、DAB放送の音声データに対する遅延処理を開始する(ステップS708)。
【0082】
この遅延処理では、まず、無音データ検出部108が、遅延処理の対象とする音声データから所定の長さのデータを抽出する(ステップS710)。そして、無音データ検出部108が、ステップS710で抽出した所定の長さのデータが無音データか否かを判断する(ステップS712)。ここで、所定の長さのデータが無音データではないと無音データ検出部108が判断した場合(ステップS712:No)、遅延処理部109’が、当該所定の長さのデータを有音データ用の固定の遅延率でタイムストレッチする(ステップS720)。
【0083】
そして、遅延処理部109’が、ステップS720の有音データのタイムストレッチによって残りの遅延時間(タイムストレッチの開始直後から有音データの場合はステップS706で算出された遅延時間)が解消したか否かを判断する(ステップS722)。ここで、残りの遅延時間が解消したと遅延処理部109’が判断した場合(ステップS722:Yes)、遅延処理部109’がDAB放送の遅延処理を終了して(ステップS724)、放送受信装置10’は、図7に示す一連の処理を終了する。
【0084】
一方、残りの遅延時間が解消していないと遅延処理部109’が判断した場合(ステップS722:No)、放送受信装置10’は、ステップS710以降の処理を再度実行する。
【0085】
一方、ステップS712において、所定の長さのデータが無音データであると無音データ検出部108が判断した場合(ステップS712:Yes)、遅延時間算出部107が、遅延処理部109’による遅延処理前に算出された遅延時間から、遅延処理部109’による遅延処理によって解消した遅延時間を減じることにより、残りの遅延時間を算出する(ステップS714)。また、無音データ検出部108が、無音データの長さを特定する(ステップS716)。そして、遅延処理部109’が、無音データの出力時間が残りの遅延時間を解消させることができる出力時間となる遅延率を用いて、無音データをタイムストレッチする(ステップS718)。そして、無音データのタイムストレッチが終わると、遅延処理部109’がDAB放送の遅延処理を終了して(ステップS724)、放送受信装置10’は、図7に示す一連の処理を終了する。
【0086】
〔処理タイミングの一例〕
図8は、本発明の第2実施形態に係る放送受信装置10’による処理タイミングの一例を示す図である。図8(a)は、音声データ1コマ分の無音データを遅延処理の対象データの先頭に含む例を示す。図8(b)は、音声データ2コマ分の無音データを遅延処理の対象データの先頭に含む例を示す。図8(a),(b)において、IP放送およびDAB放送の音声データの内容および受信タイミングについては、第1実施形態(図3)と同様であるため、説明を省略する。但し、図8(a),(b)に示す例では、IP放送は、DAB放送よりも音声データ8コマ分遅延している。
【0087】
図8(a)と図8(b)とでは、遅延処理の対象データの先頭にある無音データの長さが異なるため、互いに異なる無音データの遅延率が適用されている。なお、図8(a),(b)において、無音データには「無」を付している。また、有音データには「有」を付している。
【0088】
例えば、図8(a)に示す例では、遅延処理の開始タイミング(タイミングt2)において、DAB放送の先頭の音声データは無音データ「11」であり、その次の音声データは有音データ「12」である。このとき、残りの遅延時間は、音声データ8コマ分である。
【0089】
この場合、遅延処理部109’は、無音データ「11」の出力時間が、残りの遅延時間を解消させることができる出力時間となるように、無音データ「11」をタイムストレッチする。図8(a)に示す例では、無音データ「11」の出力時間を音声データ9コマ分に(すなわち、遅延率900%で)タイムストレッチすることにより、残りの遅延時間を解消させることができる。このタイムストレッチにより、残りの遅延時間が解消し、DAB放送の出力タイミングがIP放送の出力タイミングと同期する(タイミングt3)。
【0090】
一方、図8(b)に示す例では、遅延処理の開始タイミング(タイミングt2)において、DAB放送の先頭の音声データは無音データ「11」であり、その後に、無音データ「12」、有音データ「13」と続く。このとき、残りの遅延時間は、音声データ8コマ分である。
【0091】
この場合、遅延処理部109’は、無音データ「11」と無音データ「12」とを足し合わせた音声データαの出力時間が、残りの遅延時間を解消させることができる出力時間となるように、音声データαをタイムストレッチする。図8(b)に示す例では、音声データαの出力時間を音声データ10コマ分に(すなわち、遅延率500%で)タイムストレッチすることにより、残りの遅延時間を解消させることができる。このタイムストレッチにより、残りの遅延時間が解消し、DAB放送の出力タイミングがIP放送の出力タイミングと同期する(タイミングt3)。
【0092】
このように、第2実施形態の放送受信装置10’によれば、DAB放送の音声データに対する遅延処理において、遅延処理によって引き伸ばされた音声データの出力時間全体において、無音データ以降は、当該無音データの出力時間のみが占めるようになる。すなわち、例えば、先頭データが無音データの場合、無音データの出力時間が全体を占めるようになる。このため、第2実施形態の放送受信装置10’によれば、遅延処理によって変調された音声が出力される時間を短時間化することができる。
【0093】
なお、上記第1,第2実施形態では、第1の規格の放送としてDAB放送を適用し、第2の規格の放送としてIP放送を適用しているが、本発明はこれに限らない。例えば、第1の規格の放送としてFM放送を適用し、第2の規格の放送としてIP放送を適用してもよい。また、第1の規格の放送としてFM放送を適用し、第2の規格の放送としてDAB放送を適用してもよい。
【0094】
また、上記第1,第2実施形態では、DABバッファ103に記憶されたDAB放送の音声データとIPバッファ106に記憶されたIP放送の音声データとを比較することによってDAB放送からのIP放送の遅延時間を算出するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、DAB放送の放送データに付与されている時刻情報と、IP放送の通信データに付与されている時刻情報との時間差を、DAB放送からのIP放送の遅延時間として算出するようにしてもよい。
【0095】
その他、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0096】
10,10’ 放送受信装置
11 アンプ
12 スピーカ
101 第1受信部
102 第1復調部
103 DABバッファ
104 第2受信部
105 第2復調部
106 IPバッファ
107 遅延時間算出部
108 無音データ検出部
109,109’ 遅延処理部
110 出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9