(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共役ジエン重合体と溶剤とを含む共役ジエン重合体溶液を、濃縮装置としての二軸押出機で搬送しながら加熱することで濃縮し、濃縮された共役ジエン重合体溶液を前記二軸押出機の吐出口から吐出する濃縮工程と、
前記濃縮された共役ジエン重合体溶液を脱揮装置で脱揮して、残揮発成分量を5質量%未満にする脱揮工程と、を有し、
前記濃縮工程において、前記濃縮装置としての二軸押出機のスクリューの回転方向が、搬送方向上流から見て左側スクリューは時計回り、右側スクリューは反時計回りであり、スクリュー回転速度比が1:1〜1:10であり、前記濃縮された共役ジエン重合体溶液を、スクリュー軸に対して上方向に吐出する、共役ジエン重合体の製造方法。
前記濃縮工程においてスクリュー軸に対して上方向に吐出された、前記濃縮された共役ジエン重合体溶液を、搬送装置としての二軸押出機で前記脱揮装置へ搬送する工程を含む、請求項1に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
前記濃縮装置としての二軸押出機の、吐出口の開口面積(S0)と、前記二軸のスクリューの合計断面積(S1)との比(S0/S1)が0.2〜0.8である、請求項1又は2に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
前記濃縮装置としての二軸押出機に供給される前記共役ジエン重合体溶液中の前記共役ジエン重合体の濃度が5〜90質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
前記濃縮装置中の共役ジエン重合体溶液が、前記共役ジエン重合体100質量部に対して1〜100質量部の伸展油を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の実施形態に制限するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
〔共役ジエン重合体の製造方法〕
本実施形態の共役ジエン重合体の製造方法は、共役ジエン重合体と溶剤とを含む共役ジエン重合体溶液を、濃縮装置としての二軸押出機で搬送しながら加熱することで濃縮し、濃縮された共役ジエン重合体溶液を前記二軸押出機の吐出口から吐出する濃縮工程と、前記濃縮された共役ジエン重合体溶液を脱揮装置で脱揮して、残揮発成分量を5質量%未満にする脱揮工程とを有しており、前記濃縮工程において、前記濃縮装置としての二軸押出機のスクリューの回転方向が、搬送方向上流から見て左側スクリューは時計回り、右側スクリューは反時計回りであり、スクリュー回転速度比が1:1〜1:10であり、濃縮された前記共役ジエン重合体溶液を、スクリュー軸に対して上方向に吐出する。以下、各工程について説明する。
【0018】
〔濃縮工程〕
本実施形態では、濃縮装置として、二軸のスクリューを有する押出機(以下、単に「二軸押出機」ともいう)を使用する。濃縮装置のスクリューの回転方向は、搬送方向上流(一般的には電動機が設置されている方向)から見て、左側スクリューは時計回り、右側スクリューが反時計回りであり、スクリュー回転速度比が1:1〜1:10であり、濃縮物がスクリュー軸方向に対して上方向に吐出される。
【0019】
濃縮装置としての二軸押出機としては、特に限定されないが、例えば、樹脂混練に用いられる二軸スクリュー押出機、二軸スクリュー型ニーダー、及びこれらに類似した構造のものが挙げられる。
【0020】
本実施形態に用いられる濃縮装置としての二軸押出機の一態様の縦断面図を
図1に示す。濃縮装置は、電動機1と、これに結合して回転する二軸のスクリュー5を有する。二軸のスクリュー5は、2本の軸の長手方向が互いに平行になるように配置されていることが好ましい。さらに、濃縮装置は、供給物が搬送される搬送方向の上流側から下流側に向けて、供給口2、ベント口3及び吐出口4を順に備え、これらはスクリュー軸に対して垂直上向きに設けられている。
図2は、搬送方向上流から見た2軸のスクリューそれぞれの回転方向を示す。搬送方向上流から見て左側のスクリュー6は時計周り、右側のスクリュー7は反時計周りに回転することを示す。2つのスクリューが、異方向に回転することで、同方向回転の場合に比べて、スクリューのセルフクリーニング性に優れるため好ましい。
【0021】
濃縮工程においては、濃縮装置の供給口2から共役ジエン重合体溶液を供給し、二軸のスクリュー5で搬送しながら加熱することで濃縮し、吐出口4から濃縮された共役ジエン重合体溶液(本明細書において、単に「濃縮物」と記載することもある)を吐出する。ベント口3には真空ポンプが接続され、濃縮装置内の圧力を一定に保つことが好ましい。
【0022】
二軸のスクリューの回転方向が搬送方向上流から見て左側のスクリュー6が時計回り、右側のスクリュー7が反時計回りで、濃縮物の吐出口4がスクリュー軸方向に対して上方向であると、濃縮装置に供給する共役ジエン重合体溶液の供給量が増えた場合にもベントアップを防ぐことができ、濃縮物の吐出も安定するため、目的の残揮発成分量の濃縮物を安定して得ることができる。従って、濃縮物を脱揮して得られる共役ジエン重合体の残揮発成分量を低い状態で安定させることができる。
【0023】
スクリュー回転速度比は、1:1〜1:10の範囲内であれば限定されない。本願明細書において、「スクリュー回転速度比」とは、左側スクリューの回転速度と右側スクリューの回転速度との比を意味し、左右どちらの回転速度が高くてもよいし、回転速度が等しくてもよい。吐出量の安定、濃縮物及び脱気後の残揮発分量、並びに脱気後のゲル含有量の観点から、スクリュー回転速度比は、1:1超〜1:10であることが好ましく、1:1超〜1:2であることがより好ましく、2:3、又は1:2であることが更に好ましく、1:2であることがより更に好ましい。スクリュー回転速度比を1:1以外の比に設定するためには、各スクリューの条数を変更することにより調整できる。スクリュー回転速度比が1:1の場合は、2本のスクリューの条数を等しくすればよい。
【0024】
左右のスクリュー回転速度が異なると、スクリューのセルフクリーニング性の観点で好ましく、スクリュー回転速度比が1:2では搬送性とセルフクリーニング性のバランスが良いためより好ましい。左右のスクリューの回転速度は、それぞれ独立に、10〜500rpmの範囲内にあることが好ましい。10rpm以上では搬送性が優れ、500rpm以下ではゲル成分の含有量の増加が抑制される。
【0025】
濃縮工程はバッチ式でも連続式でもよい。連続式の方が、生産効率が良く好ましい。ここで、連続式とは、共役ジエン重合体溶液の単位時間当たりの供給量を一定として、継続的に供給する方式である。バッチ式とは、所定量の原料を供給した後に供給を止め、濃縮装置における脱揮操作を開始し、該脱揮操作が完了したら、濃縮装置内の脱揮された共役ジエン共重合体を吐出する方式である。
【0026】
本願明細書において、濃縮工程により得られる「濃縮物」とは、共役ジエン重合体溶液から溶剤を蒸発させ、共役ジエン重合体濃度を高くしたものである。濃縮物に含まれる残揮発分量の好ましい範囲は、濃縮物全量に対して5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%である。5質量%以上では吐出性と脱揮工程への搬送性が良く、30質量%以下では脱揮工程後の脱揮後の共役ジエン共重合体の残揮発分量を低くすることができる。濃縮物の残揮発分量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0027】
共役ジエン重合体溶液を連続式に濃縮する工程においては、濃縮物の吐出性が安定している、即ち、濃縮物の単位時間当たりの吐出量が安定していると、濃縮物の残揮発分量が安定するので好ましい。ここで、「残揮発分量が安定している状態」とは、濃縮操作を少なくとも2時間以上継続し、その間に吐出される濃縮物の残揮発分量を10分おきに測定した時の残揮発分量(質量%)の最大値と最小値の差が5質量%未満であることをいう。濃縮物の残揮発分量のばらつきは、3質量%未満であるとより好ましい。5質量%未満であると、濃縮物を脱揮して得られる共役ジエン重合体の残揮発分量も安定する。
【0028】
本実施形態において、濃縮工程では、濃縮された共役ジエン重合体溶液を、スクリュー軸に対して上方向に吐出する。ここで、「上方向」とは、吐出方向がスクリュー軸よりも上であればよく、吐出方向とスクリュー軸とのなす角度は特に限定されない。重合体濃縮物の搬送性の観点から、吐出方向とスクリュー軸とのなす角度は、上方向に略垂直であることが好ましい。
【0029】
濃縮装置としての二軸押出機の吐出口の面積(S1)と、二軸スクリューの合計断面積(S0)との比(S1/S0)は、0.2〜0.8であることが好ましい。S1/S0が0.2以上では、ベントアップを抑制しゲル成分量を抑えることができ、0.8以下では単位時間当たりの吐出量が安定する傾向がある。ここで、スクリューの断面積は、スクリュー径(D)から、S0=(D/2)
2×3.14×2の式で算出される。吐出口の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、長方形でもよい。なお、二軸のスクリューの径(直径)は、互いに等しいことが好ましい。
【0030】
濃縮装置としての二軸押出機は、気化した溶剤ガス成分を濃縮装置の外に排気するための1つ以上のベント口3を有することが好ましい。溶剤ガスは、ベント口3から排出された後、冷却器等で冷却、凝縮し、液体として回収、再利用してもよい。
【0031】
濃縮装置としての二軸押出機の加熱手段としては限定されず、例えば、高温の水蒸気、オイル等の熱媒を流通させることのできるジャケットを使用して、共役ジエン重合体溶液を加熱することができる。この時の加熱温度は、濃縮速度の観点から、50℃以上300℃以下であることが好ましく、混合物の搬送性とゲル抑制の観点から、100℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0032】
濃縮装置としての二軸押出機内の気相部の圧力は、濃縮速度の観点から、常圧以下であることが好ましい。ただし、濃縮速度、及び共役ジエン重合体の溶剤ガスによる同伴防止等の観点からは、50torr以上650torr以下であることが好ましい。圧力を制御するために、ベント口に配管を通して真空ポンプを接続してもよい。
【0033】
濃縮を促進することを目的に、ストリッピング剤を添加してもよい。ストリッピング剤としては水、アルコール、及び超臨界炭酸ガスが挙げられる。
【0034】
共役ジエン重合体溶液を、濃縮装置に供給する前に加熱すると、濃縮速度が向上する傾向にあり、好ましい。加熱する温度は、特に限定されないが、装置内の圧力における溶剤の沸点以上に溶液を加熱すると、濃縮速度が高くなる傾向にあるためより好ましく、該溶剤の沸点よりも50℃以上高く加熱することがさらに好ましく、該溶剤の沸点よりも80℃以上高く加熱することがよりさらに好ましい。また、当該装置内での濃縮時の共役ジエン重合体の溶剤ガスへの同伴を防止する観点から、120℃以下に加熱することが好ましく、100℃以下に加熱することがより好ましい。具体的には、共役ジエン重合体溶液中の溶剤がヘキサンで、二軸のスクリューを有する装置内の圧力が400torrの場合、400torrにおけるヘキサンの沸点は約50℃なので、共役ジエン重合体溶液を50℃以上に加熱するとよい。
【0035】
本実施形態の一態様として、濃縮工程においてスクリュー軸に対して上方向に吐出した濃縮された共役ジエン重合体溶液を、搬送装置としての二軸押出機で脱揮装置へと搬送する工程を有することが好ましい。これによって、濃縮物の濃縮装置からの吐出を促進させることができ、共役ジエン重合体溶液の供給量が増えた場合でも、濃縮装置からの濃縮物の吐出性が安定する。
【0036】
図3に、濃縮装置と搬送装置とが接続された装置の一例を示す。
図3の装置は、濃縮装置の吐出口4と搬送装置としての二軸押出機8が接続している。濃縮装置の吐出口4から吐出された濃縮物が、搬送装置内に供給され、二軸押出機により脱揮工程が行われる脱揮装置まで搬送される。
【0037】
搬送装置としての二軸押出機8は、濃縮装置から脱揮装置へと濃縮物を搬送することができればよく、搬送と同時に濃縮物を更に濃縮する機能を備えていてもよい。搬送装置としては、特に限定されないが、例えば、二軸スクリュー押出機、二軸スクリュー型ニーダー、及びこれらに類似した構造を有する装置が挙げられる。
【0038】
〔脱揮工程〕
濃縮工程で得られた共役ジエン重合体の濃縮液は、脱揮工程において、さらに残揮発分量が低減される。本実施形態では、脱揮工程後の共役ジエン重合体に含まれる残揮発分量は、各種ゴム製品へ加工する際の加工性や、加工製品の性能等の観点から5質量%未満にする。脱揮工程で得られた共役ジエン重合体は、更に成形工程へ搬送し、当業界で「ベール」と称される形態に成形してもよい。
【0039】
脱揮後の共役ジエン重合体に含まれる残揮発分量は、重合に用いた溶剤等の原料の他、水を含んでいてもよい。残揮発分量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0040】
脱揮工程に用いられる装置(以下、「脱揮装置」ともいう。)は、濃縮物中の残揮発分量を低減できるものであれば特に限定されない。脱揮装置としては、例えば、二軸のスクリューを具備する押出し機(二軸押出機)、ニーダー、パドルドライヤー、熱風コンベア等を挙げることができる。濃縮物の表面更新性が優れることから、脱揮装置は、二軸押出機、又は二軸スクリュー型ニーダーが好ましい。脱揮装置が二軸のスクリューを有する装置である場合、二軸のスクリューの回転方向は同方向でも異方向でもよく、回転速度は異なっても、同じであってもよい。
【0041】
脱揮装置は、気化した溶剤ガス成分を濃縮装置の外に排気するための1つ以上のベント口を有することが好ましい。溶剤ガスは、ベント口から排出された後、冷却器等で冷却、凝縮し、液体として回収、再利用してもよい。
【0042】
脱揮装置において、脱揮される共役ジエン重合体溶液は加熱されることが好ましい。加熱温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、脱揮された共役ジエン重合体溶液の搬送性とゲル抑制の観点から、100℃以上200℃以下であることがより好ましい。例えば脱揮装置が二軸押出機の場合、加熱手段としては限定されず、例えば、高温の水蒸気、オイル等の熱媒を流通させることのできるジャケットを使用して、共役ジエン重合体溶液の濃縮物を加熱することができる。
【0043】
脱揮装置内の気相部の圧力は、濃縮速度の観点から、常圧以下であることが好ましい。ただし、脱揮速度、及び共役ジエン重合体の溶剤ガスによる同伴防止等の観点からは、50torr以上650torr以下であることが好ましい。圧力を制御するために、ベント口に配管を通して真空ポンプを接続してもよい。
【0044】
脱揮を促進することを目的に、ストリッピング剤を添加してもよい。ストリッピング剤としては水、アルコール、及び超臨界炭酸ガスが挙げられる。
【0045】
共役ジエン重合体溶液を、脱揮装置に供給する前に加熱すると、脱揮速度が向上する傾向にあり、好ましい。濃縮装置及び搬送措置等により加熱された共役ジエン重合体溶液を脱揮装置に供給してもよい。加熱する温度は、特に限定されないが、脱揮装置内の圧力における溶剤の沸点以上に溶液を加熱すると、脱揮速度が高くなる傾向にあるためより好ましく、該溶剤の沸点よりも50℃以上高く加熱することがさらに好ましく、該溶剤の沸点よりも80℃以上高く加熱することがよりさらに好ましい。また、当該装置内での脱揮時の共役ジエン重合体の溶剤ガスへの同伴を防止する観点から、120℃以下に加熱することが好ましく、100℃以下に加熱することがより好ましい。具体的には、共役ジエン重合体溶液中の溶剤がヘキサンで、脱揮装置として二軸のスクリューを有する装置を用いる場合、脱揮装置内の圧力が400torrの場合、400torrにおけるヘキサンの沸点は約50℃なので、共役ジエン重合体溶液を50℃以上に加熱するとよい。
【0046】
濃縮工程における濃縮装置の吐出口と、脱揮工程における脱揮装置の供給口は、離れていてもよく、直接接続してもよく、又は途中に搬送装置を設けて接続してもよい。搬送装置を設けて接続すると、濃縮物の搬送量が安定して促進されるため好ましい。
【0047】
脱揮工程後に得られた共役ジエン重合体は、当業界で「ベール」と称される直方体に圧縮成形されてもよい。また、該共役ジエン重合体は、天然ゴム等のゴム材料;及びシリカ、カーボン等の無機材料等と配合して、タイヤ、各種工業用ベルト、履物等に加工して用いられることが好ましい。
【0048】
〔共役ジエン重合体溶液〕
本実施形態において、共役ジエン重合体溶液は、少なくとも共役ジエン重合体と溶剤とを含む溶液のことをいう。具体的には、溶液重合で共役ジエン単量体を重合した結果、残存する溶剤中に共役ジエン重合体が存在している溶液が挙げられる。ここで、共役ジエン重合体溶液中の共役ジエン重合体は、溶剤に全て溶解している状態でなくてもよく、全てが溶解している状態、一部が溶解している状態、溶解せずに溶剤に分散している状態等のものが含まれる。
【0049】
<共役ジエン重合体>
本実施形態において、共役ジエン重合体は、共役ジエン単量体を重合することによって得られる単独重合体であってもよい。共役ジエン単量体としては、重合可能な単量体であれば特に限定されず、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、及び1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、及びイソプレンが好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
共役ジエン単量体中に、アレン類、アセチレン類等が不純物として含有されていると、共役ジエン重合体末端の変性反応を阻害するおそれがある。そのため、これらの不純物の含有量濃度(質量)の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。アレン類としては、プロパジエン、1,2−ブタジエンが挙げられる。アセチレン類としては、エチルアセチレン、ビニルアセチレンが挙げられる。
【0051】
本実施形態において、共役ジエン重合体は、上記の共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体である共役ジエン重合体であってもよい。芳香族ビニル単量体は、共役ジエン単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、具体的には、スチレン、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、及びジビニルベンゼンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0052】
共役ジエン重合体中に結合した芳香族ビニル単量体の量(以下、単に「結合芳香族ビニル量」ともいう。)は、共役ジエン重合体の総量(100質量%)に対して、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。結合芳香族ビニル量がこのような範囲であることで、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがより優れる傾向にあり、耐摩耗性及び破壊強度も満足する共役ジエン重合体の加硫物を得られる傾向にある。結合芳香族ビニル量は、後述する実施例に記載の結合スチレン量を測定する方法に準じて、用いる芳香族ビニル単量体に合わせて測定する。
【0053】
共役ジエン重合体における共役ジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−又は3,4−結合)は、10モル%以上75モル%以下であることが好ましく、13モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。ビニル結合量がこのような範囲であることで、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがより優れ、耐摩耗性及び破壊強度も満足する共役ジエン重合体の加硫物を得ることができる傾向にある。なお、共役ジエン重合体が共役ジエン重合体である場合は、その共役ジエン重合体は、ランダム重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。ビニル結合量は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0054】
ランダム共重合体として、具体的には、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、及びブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体が挙げられる。共重合体鎖中の各単量体の組成分布は、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、及び組成分布に勾配があるテーパー(勾配)ランダム共重合体が挙げられる。共役ジエン重合体の結合様式、すなわち1,4−結合、1,2−結合等の組成は、分子鎖によって均一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
ブロック共重合体として、具体的には、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、及び4個からなる4型ブロック共重合体等挙げられる。ここで、スチレン等の芳香族ビニル単量体からなるブロックをSで表し、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン単量体からなるブロック及び/又は芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体からなるブロックをBで表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、及びS−B−S−B4型ブロック共重合体等の式で表される。
【0056】
上記式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。例えば、ブロックBが芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル単量体は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ブロックBに、芳香族ビニル単量体が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらに、ブロックBに、芳香族ビニル単量体含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。共役ジエン重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量及び組成の構造は、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
<重合開始剤>
共役ジエン単量体及び芳香族ビニル単量体を重合する際の重合開始剤は、アニオン性重合開始剤であれば特に限定されないが、安定性や取扱い性の観点から、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属のアルキル化合物であることが好ましく、これらの中でも重合効率の観点から、有機リチウムがより好ましい。
【0058】
有機リチウムとしては、低分子の有機リチウム、及び可溶化したオリゴマーの有機リチウムが挙げられる。また、有機リチウムにおける、有機基とリチウムの結合様式においては、炭素−リチウム結合からなる化合物、窒素−リチウム結合からなる化合物、及び錫−リチウム結合からなる化合物が挙げられる。
【0059】
炭素−リチウム結合を有する有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。
【0060】
窒素−リチウム結合からなる有機リチウムとしては、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ−n−ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、及びリチウムモルホリドが挙げられる。
【0061】
有機リチウムとしては、具体的に挙げた上述のモノ有機リチウムだけでなく、多官能有機リチウムも挙げられる。モノ有機リチウム及び多官能リチウムは単独のみならず、これらを併用してもよい。
【0062】
多官能有機リチウムとしては、1,4−ジリチオブタン、sec−ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンの反応物;1,3,5−トリリチオベンゼン、n−ブチルリチウムと1,3−ブタジエンとジビニルベンゼンとの反応物;n−ブチルリチウムとポリアセチレン化合物との反応物が挙げられる。また、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書に開示されている有機リチウムも挙げられる。有機リチウムとしては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n−ブチルリチウム、及びsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0063】
有機リチウムを重合に用いる際は、取扱い性及び重合溶液への分散性を良くするために、炭化水素溶剤に希釈して溶液にしたものが用いられる。
【0064】
炭化水素溶剤としては、C4〜C8の炭化水素溶剤、トルエン、キシレンが挙げられる。さらに、炭化水素溶剤は環式の構造を有するものでもよく、不飽和結合又は分岐構造を有するものでもよい。沸点及び蒸気圧が製造工程上取り扱いやすいことから、C5,及びC6の炭化水素溶剤が好ましく、ペンタン、ノルマルヘキサン(以下、「n−ヘキサン」ともいう)、及びシクロヘキサンがより好ましい。
【0065】
有機リチウムを上記炭化水素溶剤に希釈したときの濃度は、重合開始効率とモノマーとの均一混合性の観点から、炭化水素溶剤中、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
<重合反応用溶剤>
共役ジエン単量体の重合反応は、溶剤(以下、「重合反応用溶剤」ともいう。)中で重合する溶液重合の反応が好ましい。重合反応用溶剤としては、共役ジエン単量体が溶解するものであれば特に限定されず、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。重合反応用溶剤は、上述の重合開始剤としての有機リチウムを希釈する炭化水素溶剤と同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
重合反応に供する前に、不純物であるアレン類及びアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体が得られる傾向にあり、重合後に変性反応を行う場合には高い変性率が達成される傾向にあるため、好ましい。
【0068】
<極性化合物>
共役ジエン単量体を含む単量体の重合反応においては、極性化合物を添加してもよい。極性化合物は、芳香族ビニル単量体を共役ジエン単量体とランダムに共重合させるためにも用いることができ、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる。また、重合速度の改善等にも効果がある。
【0069】
極性化合物として、具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらの極性化合物は、それぞれ1種のみならず、2種以上を併用してもよい。
【0070】
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上100モル以下であることが好ましい。また、極性化合物(ビニル化剤)は、重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量を用いることができる。
【0071】
多くの極性化合物は、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル単量体の分布の調整剤及びスチレンブロック量の調整剤としても用いることができる。共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体とをランダム化する方法としては、特開昭59−140211号公報に記載されているような、共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法が挙げられる。
【0072】
重合温度は、重合が進行する温度であれば特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合中の失活を抑制する観点から、120℃以下であることが好ましい。
【0073】
製造工程において、共役ジエン重合体のコールドフローを防止する観点から、分岐をコントロールするためのジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル単量体を用いてもよい。
【0074】
<変性剤>
上述のような方法で共役ジエン重合体を得た後、さらに、共役ジエン重合体の活性末端にエポキシ基及びアルコキシシリルキ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物(以下、「変性剤」ともいう。)を反応させることで、共役ジエン重合体を変性させることが好ましい。
【0075】
エポキシ基を有する化合物として、具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;4,4’−ジグリシジル−ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物が挙げられる。
【0076】
上述したエポキシ基を有する化合物の中では、分子中に、2個以上のエポキシ基及び1個以上の窒素含有基を有する多官能化合物が好ましく、後述する一般式(1)で表される化合物がより好ましく、ジグリシジルアミノ基を持つ多官能化合物がさらに好ましい。また、ジグリシジルアミノ基を持つ多官能化合物は、分子中に、エポキシ基を2個以上有し、3個以上有することが好ましく、4個以上有することがより好ましい。
【0077】
アルコキシシリル基を有する化合物として、具体的には、ジメトキシジメチルシラン、キシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリフェノキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)エチルシラン、トリ(2−メチルブトキシ)ビニルシラン、トリフェノキシフェニルシラン、テトラフェノキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、フェノキシジビニルクロロシラン、メトキシジエチルクロロシラン、ジフェノキシメチルクロロシラン、ジフェノキシフェニルヨードシラン、ジエトキシメチルクロロシラン、ジメトキシエチルクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、トリス(2−エチルヘキシルオキシ)クロロシラン、フェノキシメチルジクロロシラン、メトキシエチルジクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、フェノキシフェニルジヨードシラン、フェノキシジクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、及びビス(2−メチルブトキシ)ジブロモシランが挙げられる。
【0078】
上述したアルコキシシリル基を有する化合物の中でも、分子中に、窒素原子及び2個以上のアルコキシシリル基を有する化合物が好ましく、後述する一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0079】
変性剤は、下記の一般式(1)で表される化合物及び下記の一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0080】
【化1】
式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立して、炭素数1〜10のアルキレン基、又は、エーテル基及び3級アミン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R
3及びR
4は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は、エーテル基及び3級アミン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1〜20の炭化水素基、又は、エーテル基、3級アミン基、エポキシ基、カルボニル基及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1〜20の炭化水素基を表し、nは、1〜6の整数を表す。
【0081】
【化2】
式(2)中、R
1及びR
2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表し、R
3及びR
4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R
5は、炭素数1〜6のアルキレン基を表し、隣接する窒素原子及び珪素原子とともに3員環以上の環構造を構成し、R
6は、炭素数1〜20のアルキレン基、活性水素原子を有しない且つヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20のアルキレン基、又は、有機置換シリル基を表し、mは、1又は2の整数を表し、nは、2又は3の整数を表す。R
1〜R
4が複数存在する場合は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
上記の一般式(1)で表される化合物としては、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0083】
上記の一般式(2)で表される化合物としては、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ,2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ,2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。これらの中でも、変性剤の官能基とシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点、並びに加工性の観点から、mが2、nが3であるものがより好ましく、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンがさらに好ましい。
【0084】
重合終了後に、反応溶液に必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。失活剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。中和剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;無機酸の水溶液;炭酸ガスが挙げられる。
【0085】
得られた共役ジエン重合体に対して、重合後のゲルの生成を防止する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。ゴム用安定剤は、公知のものを用いることができるが、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が好ましい。
【0086】
共役ジエン重合体の重量平均分子量(Mw)は、加工性及び物性の観点から、10万以上200万以下であることが好ましく、20万以上180万以下であることがより好ましく、30万以上150万以下であることがさらに好ましい。共役ジエン重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.02以上6.0以下であることが好ましく、1.05以上5.0以下であることがより好ましく、1.07以上4.0以下であることがさらに好ましい。分子量分布が6.0以下であることにより、低ヒステリシスロス性が良好となる傾向にある。また、分子量分布が1.02以上であることで、シリカ配合物の混合性及び加工性が良好となる傾向にある。なお、分子量分布は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)である。また、重量平均分子量及び数平均分子量は、標準ポリスチレン試料を用いた検量式として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と表す。)から求められ、詳細には実施例に記載した方法に準じて測定する。
【0087】
共役ジエン重合体の100℃におけるムーニー粘度は、20以上120以下であることが好ましく、30以上110以下であることがより好ましく、40以上100以下であることがさらに好ましい。ムーニー粘度が120以下であることで、シリカ配合物の混合性及び加工性が良好となる傾向にある。また、ムーニー粘度が20以上であることで、加硫物性が良好となる傾向にある。ムーニー粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0088】
<伸展油>
本実施形態の共役ジエン重合体溶液は、伸展油を含むことが好ましい。伸展油としては、アロマチック系、ナフテン系、パラフィン系オイル、RAE(Residual Aromatic Extracts)、MES(Mild Extracted Solvates)、及びT−DAE(Treated Distilled Aromatic Extracts)が挙げられ、250℃以上の高沸点である伸展油がより好ましい。
【0089】
これらの伸展油は、脱揮工程によって共役ジエン重合体溶液から溶剤を脱揮した際にも、脱揮されずに共役ジエン重合体と共に残存し、共役ジエン重合体を他の材料と混合加工する際に、加工性を改良する効果を有する。これらの伸展油は、一般的には「ゴム伸展油」、「オイル」、又は「プロセスオイル」とも呼ばれている。
【0090】
共役ジエン重合体溶液は、該共役ジエン重合体溶液に含まれる共役ジエン重合体100質量部に対して、伸展油を1質量部以上100質量部以下含むことが好ましく、10質量部以上50質量部以下含むことがより好ましく、15質量部以上40質量部以下含むことがさらに好ましい。伸展油を1質量部以上含むことで、加工性が改良される傾向にあり、伸展油を100質量部以下含むことで、共役ジエン重合体の加硫物の機械特性が優れる傾向にある。
【0091】
本実施形態の共役ジエン重合体溶液は、本実施形態における濃縮工程以外の別の方法によって溶剤を濃縮する工程を、濃縮工程の前又は後に経てもよく、例えば、重合後にフラッシュ乾燥等の手段を用いて濃縮してもよい。
【0092】
共役ジエン重合体溶液には、開始剤等を希釈する溶剤、重合工程で添加される極性化合物、重合終了時に添加される失活剤、中和剤、ゴム用安定剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。また、これら以外に、共役ジエン重合体溶液は、共役ジエン重合体を溶解可能な溶剤と混合させることで調製してもよい。さらに、共役ジエン重合体溶液中で、共役ジエン重合体は溶剤に溶解していても分離していてもよい。
【0093】
濃縮工程に供給される共役ジエン重合体溶液は、該共役ジエン重合体溶液の総量(100質量%)に対して、該共役ジエン重合体溶液の流動性の観点から、共役ジエン重合体を5質量%以上90質量%以下含むことが好ましく、8質量%以上50質量%以下含むことがより好ましく、12質量%以上30質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0094】
濃縮工程に供給される共役ジエン重合体溶液の25℃における粘度は、供給時の取扱い性の観点から、0.01Pa・s以上100,000Pa.s以下であることが好ましく、スクリュー搬送性の観点から、10Pa・s以上10,000Pa.s以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0095】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。後述する製造例、実施例及び比較例における各種物性及び評価は下記の方法で測定及び評価した。
【0096】
(物性1)結合スチレン量
共役ジエン重合体を試料として、試料0.1mgをクロロホルム30mLに溶解してクロロホルム溶液とした。スチレンのフェニル基による紫外光吸収波長(254nm)における紫外光吸収量により、共役ジエン重合体100質量%に対する結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製の商品名「UV−2450」)。また、結合スチレン量と結合ブタジエン量との合計量を100質量%として、結合ブタジエン量を算出した。
【0097】
(物性2)ブタジエン部分のビニル結合量
共役ジエン重合体の試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して、溶液セルを作製した。測定セルを用いて、赤外分光光度計(日本分光社製の商品名「FT−IR230」)を使用して、600〜1000cm
-1の範囲における赤外線スペクトルを測定した。その結果得られた吸光度より、ハンプトンの方法の計算式(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)に従い、ブタジエン部分のビニル結合量(モル%)を求めた。
【0098】
(物性3)重量平均分子量及び分子量分布
共役ジエン重合体の試料に対して、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム3本を連結して用いたGPCを使用して、試料及び標準ポリスチレンのクロマトグラムを測定した(ガードカラム;東ソー社製の商品名「TSKguardculmn HHR−H」、カラム;東ソー社製の商品名「TSKgel G6000HHR」、「TSKgel G5000HHR」、「TSKgel G4000HHR」)。標準ポリスチレンの測定結果から検量線を作成し、これにより重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用した。試料10mgを、20mlのTHFに溶解し、これを200μLのカラムに注入して測定した。オーブン温度40℃、THFの流量1.0mL/分の条件で、東ソー社製の商品名「HLC8020」(検出器;RI)を用いて測定した。
【0099】
(物性4)ムーニー粘度
共役ジエン重合体の試料に対して、JIS K6300−1:2013に準拠して、100℃で1分間予熱し、4分後の粘度を測定した。
【0100】
(評価1)濃縮物の残揮発分量
濃縮工程後の濃縮物100gを、180℃、50torrの条件下で、3時間おいた。この操作による濃縮物または共役ジエン重合体の重量減少分(δ[g])を残揮発分とし、100×δ/(100−δ)の計算式から濃縮物の残揮発分量(質量%)を求めた。
【0101】
(評価2)脱揮後のゲル含有量
脱揮工程後に得られた共役ジエン重合体3gを、トルエン100gに完全に溶解させ、100メッシュのろ紙(α1〔g〕)でろ過した。ろ過後のろ紙を乾燥させ、秤量し(α2〔g〕)、(100×(α2−α1)/3)の計算式からゲル含有量(質量%)を求めた。なお、この測定の定量限界値及び検出限界値は0.1質量%であり、それ未満の場合は「検出不能」と記載した。
【0102】
(評価3)脱揮工程後の共役ジエン重合体の残揮発分量
脱揮工程後の共役ジエン重合体の残揮発分量を、上記評価1と同様にして測定した。
【0103】
(製造例1)共役ジエン重合体溶液(A)
4枚パドルの撹拌翼を具備する10L反応器(反応器の径(D)に対する反応器の長さ(L)の比率としてL/D=4)を2つ直列に配置し、1基目を重合反応器、2基目を変性反応器とした。予め水分等の不純物を除去した1,3−ブタジエンを22.0g/分、スチレンを7.1g/分、n−ヘキサンを144g/分の条件で混合し、更に不純物不活性化処理用として、重合反応器に入る直前でn−ブチルリチウム(処理用n−ブチルリチウム)0.10mmol/分をスタティックミキサーで混合した後、重合反応器の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.040g/分の速度で、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.210mmol/分の速度で、重合反応器の底部へ供給し、反応器出口の内温を90℃となるように重合反応を継続させた。1基目の重合反応器から押出された重合溶液を、そのまま2基目の変性反応器に供給した。
【0104】
変性反応器の温度を85℃に保ち、変性剤としてテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを0.42mmol/分の速度で変性反応器の底部から添加し、変性反応を実施した。反応器内の液面高さが反応器全体の70%となるように反応液を流出し、その流出液に酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)のn−ヘキサン溶液)を0.048g/分、プロセスオイルとしてS−RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー(株)製、NC−140)を5.80g/分で連続的に添加し、共役ジエン重合体溶液(A)を得た。
【0105】
得られた共役ジエン重合体溶液(A)は、n−ヘキサン83質量部、共役ジエン重合体17質量部、プロセスオイル3.4質量部を含有していた。ここで、得られた共役ジエン重合体溶液(A)から、後述の実施例1の操作により得られた共役ジエン重合体を試料として分析した結果、結合スチレン量24質量%、結合ブタジエン量76質量%、ブタジエン中のビニル結合量65モル%であり、重量平均分子量(Mw)80万、分子量分布(Mw/Mn)1.9であった。また、共役ジエン重合体のムーニー粘度は65であった。
【0106】
(製造例2)共役ジエン重合体溶液(B)
共役ジエン重合体溶液(B)は、プロセスオイルの含有量を2.6質量部とした他は、共役ジエン重合体溶液(A)と同じ製法により製造した。ここで、得られた共役ジエン重合体溶液(B)から、後述の実施例2の操作により得られた共役ジエン重合体を試料として分析した結果、ムーニー粘度は75であった。その他の組成及び物性は、表1に示す。
【0107】
(製造例3)共役ジエン重合体溶液(C)
共役ジエン重合体溶液(C)は、プロセスオイルを全く含まない他は、共役ジエン重合体溶液(A)と同じ製法により製造した。ここで、得られた共役ジエン重合体溶液(C)から、後述の実施例3の操作により得られた共役ジエン重合体を試料として分析した結果、ムーニー粘度は95であった。その他の組成及び物性は、表1に示す。
【0108】
(製造例4)共役ジエン重合体溶液(D)
変性剤として、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの代わりに、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン0.21mmolを用いた他は、共役ジエン重合体溶液(A)と同様の製法により、共役ジエン重合体溶液(D)を得た。得られた共役ジエン重合体溶液(D)から、後述の実施例4の操作により得られた共役ジエン重合体を試料として分析した結果、ムーニー粘度は80であった。その他の組成及び物性は、表1に示す。以上の結果を表1にまとめる。
【0109】
【表1】
【0110】
(実施例1)
使用した濃縮装置としての二軸押出機の模式図を
図1に示す。二軸押出機として、スクリュー径(D)が100mm、スクリュー径(D)に対するスクリュー長さ(L)の比率(L/D)が9の二軸スクリュー型ニーダー(以下、単に「ニーダー」ともいう)を用いた。濃縮物の吐出口(4)は、スクリュー軸方向の長さ100mm、幅80mmの長方形で、スクリュー軸方向に対して垂直上向きに設けられていた。二軸のスクリューの合計断面積(S1)と吐出口の面積(S0)の比(S0/S1)は、0.51であった。
【0111】
この二軸スクリュー型ニーダーの供給口(2)から、共役ジエン重合体溶液(A)を連続的に供給した。この時、スクリュー回転速度と搬送方向上流側(
図1において、電動機(1)側)から見た時の回転方向は、左側スクリュー(6)は150rpmの時計回り、右側スクリュー(7)は300rpmの反時計回りであった(
図2参照)。ニーダーのジャケットに200℃の熱媒オイルを供給しながら、共役ジエン重合体溶液(A)を加熱した。ベント口(3)は配管を通して真空ポンプに接続され、装置内部を100torrに保った。共役ジエン重合体溶液(A)をスクリューで搬送しながら濃縮し、吐出口から吐出して、共役ジエン重合体の濃縮溶液を得た。
【0112】
共役ジエン重合体溶液(A)の供給量は、供給開始後から最初の2時間は毎時120Kgとした。その間、吐出量は安定していた。濃縮物(S2)の残揮発成分量を10分おきに測定したところ、いずれも10〜11質量%で安定していた。
【0113】
次に共役ジエン重合体溶液(A)の供給量を毎時180Kgに増やし、さらに2時間濃縮操作を継続した。その間も吐出量は安定していた。そこで得られた濃縮物(S3)の残揮発成分量を20分おきに測定した結果、いずれも19〜20質量%の範囲であった。次に溶液供給量を毎時200Kgに増加させたところ、ベント口に重合体溶液が侵入する現象が発生したため、操作を中止した。
【0114】
上記濃縮操作で得られた濃縮物の脱揮を行うために、濃縮物を、スクリュー径が25mm、L/D=30で、ベント口を有する、脱揮装置としての二軸押出機に毎時100kgで供給した。脱揮装置としての二軸押出機のスクリューは同方向に100rpmで回転し、ジャケット温度は180℃であった。濃縮物を脱揮しながら搬送し、吐出口から共役ジエン重合体を吐出した。吐出された共役ジエン重合体を10分ごとに採取し、脱揮後の残揮発分量を測定した結果、濃縮物(S2)から得られた共役ジエン重合体は0.06質量%、濃縮物(S3)から得られた共役ジエン重合体は0.08質量%で一定であった。いずれもゲルは検出されなかった。
【0115】
(実施例2)
共役ジエン重合体溶液(B)を用い、濃縮装置のスクリュー回転数を、右側を150rpm、左側を300rpmとした他は実施例1と同条件で濃縮操作を行った。濃縮物の吐出量は、溶液供給量毎時120Kg及び毎時180Kgでともに安定しており、濃縮物の残揮発分量は、供給量が毎時120Kgのときの濃縮物(S4)は8〜9質量%、毎時180Kgのときの濃縮物(S5)は21〜22質量%の範囲であった。また実施例1と同様に濃縮液を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は、S4の場合は0.05質量%、S5場合は0.08質量%で一定であり、いずれもゲルは検出されなかった。
【0116】
(実施例3)
共役ジエン重合体溶液(C)を用い、濃縮装置のスクリュー回転数を、右側を200rpm、左側を100rpmとした他は実施例1と同条件で濃縮操作を行った。濃縮物の吐出性は、供給量毎時120Kg及び毎時180Kgでともに安定しており、残揮発分量は、供給量が毎時120Kgのときの濃縮物(S6)は7〜8質量%、毎時180Kgのときの濃縮物(S7)は18〜19質量%の範囲であった。また実施例1と同様に濃縮液を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は、S6の場合は0.04質量%、S7の場合は0.07質量%で一定であり、いずれもゲルは検出されなかった。
【0117】
(実施例4)
共役ジエン重合体溶液(D)を用いた他は、実施例1と同条件で濃縮操作を行った。濃縮物の吐出量は、供給量毎時120Kg及び毎時180Kgでともに安定しており、残揮発分量は、供給量が毎時120Kgのときの濃縮物(S8)は13〜14質量%、毎時180Kgのときの濃縮物(S9)は21〜22質量%の範囲であった。また実施例1と同様に濃縮液を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は、S8の場合は0.07質量%、S9の場合は0.08質量%で一定であり、いずれもゲルは検出されなかった。
【0118】
(実施例5)
実施例1で用いた濃縮装置の吐出口に、スクリュー径50mmの、搬送装置としての二軸押出機(8)を接続することにより、濃縮装置の吐出口(4)から吐出された濃縮物を、搬送装置としての二軸押出機(8)で、脱揮装置としての二軸押出機へと搬送するようにした。濃縮装置と搬送装置とが接続された装置の構成の概略図を
図3に示す。濃縮装置において、共役ジエン重合体溶液の供給量を毎時200Kgにしても、共役ジエン重合体溶液がベント口(3)に侵入することなく、濃縮物の吐出も安定していた。この濃縮物(S10)の残揮発分量は24〜25質量%であった。また、実施例1と同様にしてS10を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は0.1質量%で一定であり、ゲルは検出されなかった。
【0119】
(実施例6)
スクリュー回転数を左右共に300rpmとした他は実施例2と同様に行った。濃縮物の吐出量は、供給量毎時120Kg及び毎時180Kgでともに安定しており、残揮発分量は、供給量が毎時120Kgのときの濃縮物(S11)は16〜17質量%、毎時180Kgのときの濃縮物(S12)は24〜25質量%の範囲であった。また実施例1と同様に濃縮液を脱揮して得られた共役ジエン共重合体の残揮発分量は、S11の場合は0.09質量%、S12の場合は0.1質量%で一定であり、いずれもゲルは検出されなかった。
【0120】
(比較例1)
濃縮装置のスクリューの回転速度と搬送方向上流から見た時の回転方向を、左右共に300rpmの時計回りとした他は実施例1と同様に行った。供給量が毎時120Kgの時の濃縮物(S13)の吐出量は常に安定し、濃縮物の残揮発分量は12〜13質量%であった。その後(A)の供給量を毎時180Kgにすると、吐出量は変動し、濃縮物(S14)の残揮発分量も15〜42質量%と、広い範囲で変動した。また実施例1と同様に濃縮液を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は、S13では0.07質量%で一定であったが、S14では0.7〜5.4質量%の範囲でばらついた。いずれもゲルは検出されなかった。
【0121】
(比較例2)
濃縮装置としての二軸スクリュー型ニーダーの吐出口を、スクリュー軸方向に対して垂直下向きとした他は実施例1と同様に行った。供給量が毎時120Kgの時の濃縮物(S15)の吐出量は安定し、残揮発分量は12〜13質量%であった。供給量を毎時180Kgにしたところ、装置のベント口にポリマー溶液が流入したため、操作を継続することができなかった。実施例1と同様にS15を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は0.1質量%で、ゲルは検出されなかった。
【0122】
(比較例3)
スクリューの回転方向を、右側を時計回り、左側を反時計回りとした他は実施例1と同様に行った。供給量が毎時120Kgの時の濃縮物(S17)の吐出量は安定し、濃縮物(S17)の残揮発分量は14〜15質量%であった。供給量を毎時180Kgにしたところ、装置のベント口にポリマー溶液が流入したため、操作を継続することができなかった。実施例1と同様にS17を脱揮して得られた共役ジエン重合体の残揮発分量は0.1質量%で、ゲルは検出されなかった。
【0123】
各実施例及び比較例における濃縮工程の条件と、濃縮工程後の共役ジエン重合体(濃縮物)及び脱揮工程後の共役ジエン重合体の特性を表2に示す。
【0124】
【表2】