(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(構成)
1.ガスタービンプラント
図1は、本実施形態に係るガスタービン燃焼器(以下、燃焼器)を適用したガスタービンプラントの一構成例を表す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービンプラント1000は、圧縮機1、燃焼器2、タービン3及び発電機30を備えている。
【0012】
圧縮機1は、タービン3により回転駆動され、吸気部(不図示)を介して吸い込まれた空気(吸い込み空気)100を圧縮して高圧空気(燃焼空気)101を生成し、燃焼器2に供給する。燃焼器2は、圧縮機1から供給された高圧空気101と燃料系統200(後述する)から供給された燃料とを混合して燃焼し、高温の燃焼ガス102を生成してタービン3に供給する。タービン3は、燃焼器2から供給された燃焼ガス102が膨張することにより回転駆動される。発電機30は、タービン3と同軸に連結され、タービン3の回転動力を電力に変換する。なお、本実施形態では、圧縮機1、タービン3及び発電機30はシャフト31により相互に連結されている。
【0013】
2.燃焼器
燃焼器2は、ガスタービンのケーシング4に取り付けられている。燃焼器2は、バーナ5、燃焼器ライナ(以下、内筒)10、フロースリーブ(以下、外筒)11、尾筒内筒12、尾筒外筒13、燃料系統200及び燃料ヘッダ40を備えている。
【0014】
内筒10は、バーナ5の燃焼ガス102の流れ方向の下流側に設けられている。以下、燃焼ガス102の流れ方向の「上流」「下流」を「燃焼ガス上流」「燃焼ガス下流」と言う。内筒10は円筒状に形成され、圧縮機1から供給される高圧空気101と燃焼器2で生成される燃焼ガス102とを隔てている。外筒11は、円筒状に形成され、内筒10の外周側に、内筒10を覆うように設けられている。内筒10と外筒11との間に形成される環状の空間は、圧縮機1から燃焼器2に供給される高圧空気101が流れる環状流路(第1環状流路)48を構成している。第1環状流路48を流れる高圧空気101は、内筒10の外壁面側から内筒10を対流冷却する。内筒10の壁面には多数の孔(不図示)が形成されている。第1環状流路48を流れる高圧空気101の一部は、内筒10の壁面に形成された多数の孔から内筒10の内部へ流入し、内筒10の内周面のフィルム冷却に使用される。第1環状流路48を流れる高圧空気101のうち内筒10のフィルム冷却に使用されなかった分は、第1環状流路48を流れてバーナ5に到達する。バーナ5に到達した高圧空気101は、燃料系統200から燃料ヘッダ40を介してバーナ5に供給された燃料と共に燃焼室50内に噴射され、燃焼される。
【0015】
内筒10の内側には燃焼室50が形成されている。燃焼室50では、圧縮機1から供給された高圧空気101と燃料系統200から供給された燃料との混合気が燃焼され、燃焼ガス102が生成される。内筒10のバーナ5から遠い側(燃焼ガス下流側)は、尾筒内筒12の一端に挿し込まれている。尾筒内筒12の他端は、燃焼器2とタービン3とを接続する管路(不図示)に接続している。尾筒内筒12は、燃焼室50で発生した燃焼ガス102をタービン3に導く機能を有する。尾筒内筒12の外周側に、尾筒内筒12を覆う円筒状の尾筒外筒13が設けられている。外筒11のバーナ5から遠い側(燃焼ガス下流側)は、尾筒外筒13の一端に挿し込まれている。尾筒外筒13の他端は、ケーシング4内に開口している。尾筒内筒12と尾筒外筒13との間に形成される環状の空間は、圧縮機1から燃焼器2に供給される高圧空気101を第1環状流路48に導く環状流路(第2環状流路)47を構成している。第2環状流路47を流れる高圧空気101は、尾筒内筒12の外壁面側から尾筒内筒12を対流冷却する。
【0016】
燃料系統200は、共通燃料系統20と第1〜第4燃料系統20A〜20Dとを備えている。共通燃料系統20は、燃料供給源(不図示)に接続している。共通燃料系統20には、燃料遮断弁(開閉弁)21が設けられている。第1〜第4燃料系統20A〜20Dには、それぞれ第1〜第4燃料流量調節弁21A〜21Dが設けられている。本実施形態では、第1〜第4燃料系統20A〜20Dは、共通燃料系統20から並列に分岐している。なお、共通燃料系統20から分岐する燃料系統の数は4つに限定されない。
【0017】
第1〜4燃料系統20A〜20Dを流れる燃料は、内筒10の中心軸からの径方向距離によって区画された燃料ヘッダ40に供給される。燃料ヘッダ40は、外筒11の第1環状流路48を流れる高圧空気101の流れ方向の下流側に設けられている。以下、第1環状流路48を流れる高圧空気101の流れ方向の「上流」「下流」を「空気上流」「空気下流」と言う。燃料ヘッダ40は、外筒11の一端(空気下流側の端部)を閉止している。本実施形態では、燃料ヘッダ40は、内筒10の中心軸から径方向外側に向かって順に、第1ヘッダ部40A、第2ヘッダ部40B、第3ヘッダ部40C及び第4ヘッダ部40Dに区画されている。第1〜第4ヘッダ部40A〜40Dに、第1〜第4燃料系統20A〜20Dがそれぞれ接続している。第1〜第4燃料系統20A〜20Dを通じて第1〜第4ヘッダ部40A〜40Dに供給された燃料は、燃料ノズル91(後述する)の先端から噴射されてバーナ5に供給される。なお、燃料ヘッダ40の区画数は4つに限定されない。
【0018】
第1燃料系統20Aを通じて第1ヘッダ部40Aに供給される燃料(以下、F1燃料)の流量は、第1燃料流量調節弁21Aによって調節される。同様に、第2,3,4燃料系統20B,20C,20Dを通じて第2,3,4ヘッダ部40B,40C,40Dに供給される燃料(以下、F2,F3,F4燃料)の流量は、第2,3,4燃料流量調節弁21B,21C,21Dによってそれぞれ調節される。本実施形態では、第1〜第4燃料流量調節弁21A〜21DによりF1〜F4燃料の流量を個別に調節することで、ガスタービンプラント1000の発電量が制御される。
【0019】
3.バーナ
図2は、本実施形態に係る燃焼器のバーナ付近の構造を示す部分断面図である。
図2に示すように、バーナ5は、内筒10の中心軸(不図示)を中心とした同心円状の複数(本実施形態では8つ)の環状列に区分されており、これら複数の環状列を内周側から外周側に向かって第1列、第2列、…、第8列と適宜称する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、複数の環状列のうち最も内側の領域を構成する4列(第1〜第4列)が第1バーナ部5Aを構成し、第5列が第2バーナ部5Bを構成し、第6列が第3バーナ部5Cを構成し、外周側の2列(第7,8列)が第4バーナ部5Dを構成している。第1〜第4バーナ部5A〜5Dに、前述した第1〜第4ヘッダ部40A〜40Dを介してF1〜F4燃料が供給される。第1〜第4バーナ部5A〜5Dに供給されたF1〜F4燃料は、燃料ノズル91に流入し、燃焼室50に噴射される。本実施形態では、第1〜第4燃料系統20A〜20Dから第1〜第4バーナ部5A〜5Dに供給されるF1〜F4燃料の流量を個別に調節することにより、後述する燃料ステージングが可能となる。バーナ5は、複数の燃料ノズル91と、空気孔プレート32とを備えている。
【0021】
3−1.燃料ノズル
図2に示すように、複数の燃料ノズル91は、燃料ヘッダ40に支持されている。複数の燃料ノズル91は先端が円筒状に形成されており、燃料系統200(
図1を参照)から供給された燃料を空気孔プレート32に向かって噴射する。複数の燃料ノズル91は、同心円状に第1〜第8列に配置されており、各列の全周に渡って設けられている(環状に配置されている)。
【0022】
3−2.空気孔プレート
図2に示すように、空気孔プレート32は、複数の燃料ノズル91の燃料の流れ方向の下流側に配置されている。以下、燃料の流れ方向の「上流」「下流」を「燃料上流」「燃料下流」と言う。空気孔プレート32は、複数の燃料ノズル91に対応する同心円状の複数の空気孔33(33A,33B)を有している。空気孔プレート32は、サポート15を介して燃料ヘッダ40に取り付けられている。空気孔プレート32と燃料ヘッダ40との間には供給流路41が形成されている。本実施形態では、サポート15は平板を曲げ加工して形成されている。サポート15をこのような形状に形成すると、その曲げ構造によって空気孔プレート32の周方向の熱伸びを吸収することができ、バーナ5の信頼性を高めることができる。空気孔プレート32の外周面と内筒10との間に形成される環状の空間は、第1環状流路48を流れる高圧空気101の一部を燃焼室50の外周部に供給する外周流路94を構成している。空気孔プレート32は、上述したようにサポート15を介して燃料ヘッダ40に取り付けられているとともに、スプリングシール14を介して内筒10の内側に保持されている。スプリングシール14は、空気孔プレート32の外周面と内筒10との間に設けられている。スプリングシール14にはスリット(不図示)が形成されており、伸縮性を有するように構成されている。また、スプリングシール14には、外周流路94を流れる高圧空気101が流通可能な孔部(不図示)が形成されている。空気孔プレート32は、ベースプレート32A、旋回プレート32B及びガイド部37を備えている。
【0023】
・ベースプレート
ベースプレート32Aは、内筒10と同軸の円盤状のプレートであって、複数の燃料ノズル91の燃料下流側に複数の燃料ノズル91の先端から離間して配置されている。つまり、本実施形態では、燃料ノズル91はベースプレート32Aに形成された空気孔33A(後述する)には挿し込まれていない。以下、空気孔33Aの燃料上流側の開口部を「第1の入口」、燃料下流側の開口部を「第1の出口」と言う。
【0024】
ベースプレート32Aには、複数の燃料ノズル91にそれぞれ対応する複数の空気孔33Aが形成されている。つまり、複数の空気孔33Aは、同心円状に第1〜第8列に配置され、各列の全周に渡って設けられており、1つの空気孔33Aが1つの燃料ノズル91の燃料下流側にその燃料ノズル91に対応して配置されている。このように燃料ノズル91と空気孔33Aとを対応させて(対向させて)配置することにより、
図2の拡大図に示すように、燃料ノズル91から噴射された燃料(以下、燃料噴流)34の周囲が空気孔33Aを通過する空気(以下、空気噴流)35で覆われた同軸噴流としてベースプレート32Aを通過させることができる。本実施形態では、空気孔33Aは、第1の入口及び第1の出口を構成する2つの円と母線とが直交する直円柱状に形成され、対応する燃料ノズル91と同軸上に配置されている。
【0025】
・旋回プレート
旋回プレート32Bは、内筒10と同軸の円盤状のプレートであって、ベースプレート32Aの燃料下流側にベースプレート32Aと密着して配置されている。旋回プレート32Bは、延在部93を備えている。延在部93は、旋回プレート32Bの径方向外周側の燃焼室50側の壁面から燃焼ガス下流側に延在して設けられている。延在部93は、スプリングシール14を介して空気孔プレート32を内筒10に対して確実に保持するために、空気孔プレート32の燃料の流れ方向の厚みを確保するものである。延在部93には、貫通孔92が形成されている。貫通孔92は、延在部93を空気孔プレート32の径方向に貫通しており、外周流路94の出口として機能する。つまり、外周流路94を流れる高圧空気101は、貫通孔92を介して燃焼室50に流入する。
【0026】
図3は、本実施形態に係る旋回プレートを燃焼ガス下流側から見た図である。
図3に示すように、旋回プレート32Bには複数の空気孔33Bが形成されている。複数の空気孔33Bは、ベースプレート32Aに形成された複数の空気孔33Aにそれぞれ対応しており、1つの空気孔33Bが1つの空気孔33Aと連通している。つまり、複数の空気孔33Bは、同心円状に第1〜第8列に配置され、各列の全周に渡って設けられている。なお、本実施形態では、複数の空気孔33Bは複数の空気孔33Aと同数設けられている。
【0027】
図4は、本実施形態に係る旋回プレートの部分拡大図であって、
図3のIV−IV線の矢視断面図である。
図4に示すように、空気孔33Bは、燃料上流側及び下流側の開口部を構成する2つの楕円と母線とが直交しない斜円柱状に形成されている。以下、空気孔33Bの燃料上流側の開口部を「第2の入口」、燃料下流側の開口部を「第2の出口」と言う。空気孔33Bは、旋回角を有する旋回空気孔であり、第2の出口が第2の入口に対して周方向にずれている。具体的には、第2の入口及び第2の出口の中心を結んで得られる空気孔33Bの中心軸Yが空気孔33Aの中心軸Xに対して周方向に所定の角度α°をなすように旋回プレート32Bに対して周方向に傾斜している。なお、本明細書において、所定の角度α°は、第2の出口から噴射される空気及び燃料の方向(噴射方向)を決定づけるパラメータであり、環状列毎に最適な値に設定されている。
【0028】
バーナ5において周方向に隣接する2つの空気孔間に形成される間隙(孔間距離)が消炎距離より大きく設定されると、旋回プレート32Bに火炎が近付くことにより火炎の安定性が強化される。一方、孔間距離が消炎距離以下に設定されると、旋回プレート32Bから離れて火炎が形成される。第2の出口付近では、空気孔33Bから燃焼室50にかけて流路が急拡大することにより、燃料噴流34と空気噴流35の混合が急速に進む。そのため、旋回プレート32Bから下流に離れた位置に火炎を形成することにより、燃料と空気が十分に混合された予混合気が火炎に到達して燃焼し、低NOx燃焼を実現できる。つまり、各環状列における孔間距離をそれぞれ最適な値に調整することにより、安定燃焼と低NOx燃焼の両方を実現することができる。
【0029】
・ガイド部
図5は、
図2の点線で囲んだ領域Aの拡大図である。
図5は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
【0030】
図5に示すように、ガイド部37は、ベースプレート32Aの外周面の空気下流側(後端側)に、内筒10の空気下流側の端部から離間して設けられている。ガイド部37は、壁部37A及び曲部37Bを備えている。
【0031】
壁部37Aは、空気孔プレート32のベースプレート32Aの外周面から内筒10よりも外周側(外筒11側)まで突出するように設けられている。そのため、バーナ5の軸方向断面において、ガイド部37は、ガイド部37の外筒11に最も近い部分(以下、「頂部」と記載する)における外径が内筒10の外径より大きくなっている。なお、空気孔プレート32の径方向におけるガイド部37の頂部の内筒10からの距離は、外筒11と内筒10との距離の約1/5以上かつ約1/2以下とすることが望ましい。ガイド部37の頂部の内筒10からの距離を外筒11と内筒10との距離の約1/5未満とすると、壁部37Aの付近に淀み域(後述する)を生じさせ難くなるためである。一方、ガイド部37の頂部の内筒10からの距離が長いほうがベースプレート32Aの空気孔33Aに供給される空気流量の偏差の低減効果が大きくなるが、ガイド部37の頂部の内筒10からの距離を外筒11と内筒10との距離の約1/2より大きくすると、ガイド部37の頂部と外筒11との距離が短くなって第1環状流路48が狭まるため、ガイド部37の頂部と外筒11の間を通過する際に高圧空気101の流速が増加して全圧損失が大きくなり、ガスタービン効率が低下するためである。
【0032】
曲部37Bは、外筒11及び燃料ヘッダ40に向かって凸形状に形成され、空気孔プレート32の断面視でベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aに弧状に繋がっている。なお、本実施形態では、曲部37Bは、壁部37Aから空気孔プレート32の径方向最外周の空気孔33(具体的には、ベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33A)までを繋いでいる。つまり、曲部37Bは、壁部37Aからベースプレート32Aの径方向最外周側の空気孔33Aまでを滑らかに繋ぐような曲率を有するように形成されている。そのため、ガイド部37は、空気下流側の端部(ガイド部37の燃料ヘッダ40に最も近い部分)が第1の入口よりも燃料ヘッダ40側に位置している。
【0033】
(動作)
図6は、本実施形態に係るガイド部周辺の燃料と空気の流れを模式的に示す図である。
【0034】
図6に示すように、内筒10のフィルム空気に利用されなかった高圧空気101は、第1環状流路48を燃料ヘッダ40に向かって流れる。この高圧空気101は、第1環状流路48から供給流路41に流入し、ベースプレート32Aの複数の空気孔33Aに空気噴流35として供給される。ここで、第1環状流路48から供給流路41に流入する高圧空気101のうち、曲部37Bの表面の近傍を流れる高圧空気101(以下、近傍空気104)は、曲部37Bの表面に沿って転向し、ベースプレート32Aの径方向外側、特に最外周の空気孔33Aに導かれる。このとき、第1環状流路48を燃料ヘッダ40に向かって流れる高圧空気101のうち内筒10に沿う一部の流れは、ガイド部37の壁部37Aに衝突する。これにより、壁部37Aの付近に淀み域が生じる。第1環状流路48に対して燃焼室50は低圧(つまり、外周流路94の入口側に対して出口側は低圧)なので、壁部37Aの付近に生じた淀み域の高圧空気101は、第1環状流路48と燃焼室50の圧力差により外周流路94に流入し、第1環状流路48を流れる高圧空気101の流れ方向と逆向き(例えば、180°)に流れる。以下、外周流路94に流入した高圧空気101を補助空気105と言う。補助空気105は、スプリングシール14の孔部を通り抜けて、旋回プレート32Bの延在部93に形成された貫通孔92を介して燃焼室50に径方向内向きに噴射する。
【0035】
一方、燃料系統200から燃料ヘッダ40を介して燃料ノズル91に供給された燃料は、燃料ノズル91の先端の噴射口から噴射され、燃料噴流34として空気孔33Aに流入する。空気孔33Aに流入した燃料噴流34は、空気噴流35と急速に混合しながら空気孔33Aを通過し、混合気として旋回プレート32Bに形成された空気孔33Bに流入する。上述したように、空気孔33Bは空気孔33Aに対して周方向に所定の角度α°で傾斜した管路(斜円柱管路)状に形成されているため、空気孔33Bを流れる混合気には旋回方向の力成分が付与され循環流を形成する。空気孔33Bは燃焼室50に開口しているため混合気の流路が急拡大し、第2の出口付近で混合が更に促進される。空気孔33Bから噴出した燃料噴流34と空気噴流35の混合気は、予混合気36として燃焼室50に噴出し燃焼される。
【0036】
図7は、本実施形態に係る燃焼器における燃料ステージングを示す図である。
図7において、横軸は経過時間、縦軸は燃料流量を示している。
【0037】
図7に示すように、ガスタービン点火時は、燃料系統200から第1〜第3燃料系統20A〜20Cを介して第1〜第3バーナ部5A〜5CにF1〜F3燃料が供給される。つまり、バーナ5の第1列〜第6列に設けられた燃料ノズル91から燃料が噴射される。一方、第4バーナ部5DにはF4燃料が供給されないため、バーナ5の第7列及び第8列に設けられた燃料ノズル91から燃料は噴射されない。
【0038】
ガスタービン点火後、第1バーナ部5AにのみF1燃料を供給する(つまり、第1列〜第4列のみから燃料が噴射される)単独燃焼に切り替えられ、定格回転数無負荷状態(FSNL:Full Speed No Load)に達するまでタービン3が昇速される。この間、第2〜第4バーナ部5B〜5Dには燃料は供給されない(つまり、第2列〜第4列から燃料は噴射されない)。
【0039】
タービン3が定格回転数まで昇速したら発電を開始し、ガスタービン負荷を増加させる。このガスタービン負荷の増加に応じて、バーナ5の燃空比が安定燃焼範囲となるように第2バーナ部5B、第3バーナ部5C及び第4バーナ部5Dの順にF2燃料、F3燃料及びF4燃料を追加供給していき、燃料の供給範囲をバーナ5の第5列、第6列並びに第7列及び第8列と段階的に拡大させていく。ガスタービン負荷は、第1〜第4バーナ部5A〜5Dの全てに燃料が供給され、第1列〜第8列の全てから燃料が噴射される燃焼状態で、定格回転数定格負荷(FSFL:Full Speed Full Load)に達する。
【0040】
(効果)
(1)
図8は、第1列〜第8列に供給される空気の流量偏差を説明する数値流体解析結果を示す図である。縦軸は流量偏差、横軸は環状列(本実施形態では、第1〜第8列)を示している。
図8において、点線は従来構造の燃焼器、実線は本実施形態に係る燃焼器2を示している。
【0041】
本実施形態に係る燃焼器2では、ガイド部37の曲部37Bを外筒11及び燃料ヘッダ40に向かって凸形状とし、ベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aに弧状に繋がるように形成している。そのため、曲部37Bの表面の近傍を流れる高圧空気101(近傍空気104)が曲部37Bの表面からはく離することを抑制し、近傍空気104をベースプレート32Aの径方向外側、特に最外周の空気孔33Aに供給することができる。従って、
図8に示すように、第1〜第8列間の空気流量の不均一を低減させ、第1〜第8列の全ての列において、従来構造の燃焼器に比べて空気の流量偏差を小さくすることができる。加えて、曲部37Bを外筒11に向かって凸形状とすることにより、ガイド部37の空気上流側において高圧空気101を静圧回復させることができる。そのため、ベースプレート32Aの空気孔33Aに供給される高圧空気101のバーナ5の周方向における流量偏差をより小さくすることができる。
【0042】
図9は、燃料の均等度とNOxの排出量の関係を説明する図である。横軸は燃料の均等度、縦軸はNOxの排出量を示している。
図9において、点線は従来構造の燃焼器、実線は本実施形態に係る燃焼器を示している。なお、本明細書において「燃料の均等度」とは、燃料ノズル1本当たりの燃料流量の各環状列(本実施形態では、第1〜第8列)間のばらつきの度合いを示す指標を言う。具体的に、燃料ノズル1本当たりの燃料流量の各環状列間におけるばらつきが大きい状態を均等度が低い(不均等)、ばらつきが小さい(例えば、全ての環状列で燃料流量が等しい)の状態を均等度が高い(均等)とする。一般的に、燃料の均等度が低いと安定燃焼に有利となるが、NOxの排出量が増加する。反対に、燃料の均等度が高いとNOxの排出量は減少するが、燃焼が不安定化する。
【0043】
図9に示すように、燃料の均等度が高くなるにつれてNOxの排出量は下がるが、従来構造の燃焼器では、
図9中のP点(均等度A)まで燃料の均等度が高くなると却って燃焼が不安定化し始める。これは、第1〜第8列における空気流量がほぼ均一となることを想定して各列における燃料流量を設定したものの、従来構造の燃焼器では、
図8に示すように、安定燃焼を担う第1〜第4列で空気流量が高くなり、局所燃空比が想定した値より低くなるためである。従って、従来構造の燃焼器では、燃料の均等度を均等度A以上にすることは難しい。加えて、従来構造の燃焼器では、
図8に示すように、低NOx燃焼を担う外周側の第7列及び第8列(特に第8列)で空気流量が低くなり、局所燃空比が想定した値より高くなるため、NOxの排出量の低減を図り難い。
【0044】
これに対し、本実施形態に係る燃焼器2では、
図8に示すように、第1〜第8列の全ての列で空気の流量偏差を従来構造の燃焼器よりも小さくすることができる。そのため、第1列〜第8列における空気流量がほぼ均一になることを想定して各列における燃料流量を設定し、燃料の均等度を均等度A以上にした場合でも安定燃焼を維持することができ、かつ、外周側の列(第5〜第8列)において低NOx燃焼を実現できるため従来構造の燃焼器に比べてNOxの排出量を低減させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、壁部37Aを空気孔プレート32の外周面から内筒10よりも外周側まで突出するように設け、高圧空気101の一部を壁部37Aに衝突させて空気孔プレート32の外周面と内筒10との間に形成された外周流路94を介して燃焼室50の空気孔プレート32側の外周部に供給している。そのため、バーナ5の安定燃焼をより維持することができる。加えて、高圧空気101は燃焼ガス102よりも低温なので、空気孔プレート32を外周面側から冷却することができる。
【0046】
(2)第1,2環状流路48,47は扁平型の円管流路であるため、第1環状流路48から外周流路94に流入した高圧空気101(補助空気105)は、一般的に、バーナ5の周方向において若干の流量偏差を有している。これに対し、本実施形態では、上述したように高圧空気101を壁部37Aに衝突させることにより、高圧空気101を静圧回復させることができる。そのため、補助空気105のバーナ5の周方向における流量を均一化し、補助空気105のバーナ5の周方向における流量の偏差を小さくして燃焼室50に供給することができる。従って、バーナ5の安定燃焼を更に維持することができる。
【0047】
(3)本実施形態では、空気孔プレート32の外周面と内筒10の間に設けられたスプリングシール14に、補助空気105が流通可能な孔部を形成している。そのため、空気孔プレート32を内筒10の内側に保持しつつ、外周流路94を流れる高圧空気101を貫通孔92に導くことができる。
【0048】
(4)本実施形態では、空気孔プレート32の燃焼室50側の壁面から燃焼ガス102の流れ方向の下流側に延在する延在部93が設けられている。そのため、内筒10との間でスプリングシール14を押さえるためのストロークを確保することができ、空気孔プレート32を内筒10に対してより確実に保持することができる。
【0049】
(5)本実施形態では、空気孔プレート32に形成された複数の空気孔33から燃料噴流34と空気噴流35の同軸噴流を燃焼室50に噴出するため、燃料と空気の界面が増加して燃料と空気の混合がより促進される。これにより、燃焼室50における燃焼時にNOxの排出量を低減することができる。
【0050】
(6)本実施形態では、複数の空気孔33Aを燃料ノズル91に対応して形成している。そのため、空気孔プレート32と燃料ヘッダ40との間に形成された空間(供給流路41)に可燃範囲の未燃混合気が連続して形成され難い。従って、この空間に火炎が逆流して空気孔プレート32が溶損することを回避でき、燃焼器2の信頼性を高めることができる。
【0051】
(7)本実施形態では、空気孔33Bが空気孔33Aに対して周方向に角度α°で傾斜しているため、空気孔33Bを流れる流体は旋回成分を伴って空気孔33Bから噴射される。従って、バーナ5の下流側に循環流を形成することができ、より安定した火炎を形成することができる。
【0052】
(8)本実施形態では、燃料ヘッダ40を第1〜第4ヘッダ部40A〜40Dに区画し、燃料系統200から第1〜第4バーナ部5A〜5Dに供給されるF1〜F4燃料をそれぞれ個別に制御(調節)することができる。そのため、燃料を供給する燃料ノズル91の本数をガスタービンの各運転過程で要求される燃料流量に応じて段階的に変化させる燃料ステージングが可能となる。従って、ガスタービン部分負荷運転時の安定燃焼を実現するとともにNOxの排出量を抑制することができる。
【0053】
<第2実施形態>
(構成)
図10は、本実施形態に係るガイド部周辺の燃料と空気の流れを模式的に示す図である。
図10は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
図10において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係る燃焼器は、第1環状流路48が流路拡張部44を備える点で第1実施形態に係る燃焼器2と異なる。その他の構成は、第1実施形態に係る燃焼器2と同様である。
【0055】
図10に示すように、本実施形態では、外筒11の第1環状流路48を挟んで空気孔プレート32の延在部93の燃焼ガス下流側の端部に対向する位置からガイド部37の頂部に対向する位置までの部分が、空気下流側に向かって径方向外側に傾斜し、流路拡張部44を形成している。以下、外筒11の上述した部分を傾斜部11Aと言う。傾斜部11Aは、空気孔プレート32の断面視で勾配が緩やかな直線状の傾斜面であり、空気孔プレート32の中心軸から傾斜部11Aまでの距離が空気下流側に向かって増加するように形成されている。そのため、流路拡張部44では、第1環状流路48の流路面積が空気下流側にいくにつれて増加している。本実施形態では、傾斜部11Aの空気上流側における外筒11と内筒10の間の第1環状流路48の流路面積をA1、ガイド部37の頂部における第1環状流路48の流路面積をA2としたとき、A1≦A2を満足するように流路拡張部44が形成されている。なお、A1≦A2を満足するように流路拡張部44が形成される限りにおいては、傾斜部11Aは上述した部分に限定されない。
【0056】
(効果)
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0057】
第1実施形態では、外筒11を高圧空気101の流れ方向に延在する直円柱状に形成する一方、ガイド部37の頂部における外径が内筒10の外径より大きくなるため、A2がA1より小さくなる(A2<A1)。従って、ガイド部37の頂部を通過する際に高圧空気101の流速が増加し、全圧損失が増加し得る。
【0058】
これに対し、本実施形態では、A2がA1以上となる(A1≦A2)ように流路拡張部44を形成しているので、ガイド部37の頂部を通過する際の高圧空気101の流速の増加を抑えて、全圧損失の増加を抑制することができる。
【0059】
<第3実施形態>
(構成)
図11は、ガイド部周辺の燃料と空気の流れを模式的に示す図である。
図11は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
図11において、上記第2実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0060】
本実施形態に係る燃焼器は、外筒11が曲面部45を備える点で第2実施形態に係る燃焼器と異なる。その他の構成は、第2実施形態に係る燃焼器と同様である。
【0061】
図11に示すように、曲面部45は、ガイド部37の曲部37Bに応じて凹形状に曲がった曲面で、流路拡張部44から燃料ヘッダ40までを弧状に繋いでいる。つまり、曲面部45は、流路拡張部44から燃料ヘッダ40までを滑らかに繋ぐ曲面で形成されている。なお、本実施形態では、外筒11が曲面部45を備える構成を例示したが、燃料ヘッダ40が曲面部45を備える構成としても良い。
【0062】
(効果)
本実施形態では、第2実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0063】
本実施形態では、流路拡張部44から燃料ヘッダ40までを弧状に繋ぐ凹形状の曲面部45を備えている。そのため、曲面部45の表面の近傍を流れる高圧空気101の流れを曲面部45でガイドして滑らかに転向させ、供給流路41に流入させることができる。従って、第1環状流路48から供給流路41に流入する高圧空気101の径方向の速度分布を均一化させて、全圧損失を更に抑制することができる。
【0064】
<第4実施形態>
(構成)
図12は、ガイド部周辺の燃料と空気の流れを模式的に示す図である。
図12は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
図12において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
本実施形態に係る燃焼器は、ガイド部37がテーパ部37Cを更に備える点で第3実施形態に係る燃焼器と異なる。その他の構成は、第3実施形態に係る燃焼器と同様である。
【0066】
図12に示すように、テーパ部37Cは壁部37Aと曲部37Bとの間に介在し、壁部37A及び曲部37Bはテーパ部37Cに対して滑らかに接続している。これにより、壁部37Aから曲部37Bまでが滑らかに繋がっている。つまり、本実施形態では、曲部37Bは、テーパ部37Cからベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aまでを繋ぐように形成されている。テーパ部37Cは、バーナ5の軸方向断面において、空気孔プレート32の中心軸に対して空気下流側に向かって径方向外側に傾斜している。そのため、テーパ部37Cの空気孔プレート32の中心軸からの距離は、空気下流側に向かって増加する。
【0067】
(効果)
本実施形態にように、ガイド部37の壁部37Aと曲部37Bの間にテーパ部37Cを設けても、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
加えて、ガイド部37の壁部37Aと曲部37Bの間に上り傾斜のテーパ部37Cを設けることにより、壁部37Aから曲部37Bまで高圧空気101を緩やかにガイドすることができる。従って、ガイド部37付近の高圧空気101の流速の増加を抑え、全圧損失の増加を更に抑制することができる。
【0069】
<第5実施形態>
(構成)
図13は、ガイド部周辺の燃料と空気の流れを模式的に示す図である。
図13は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
図13において、上記第3実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0070】
本実施形態は、ガイドベーン38を更に備える点で第3実施形態と異なる。その他の構成は、第3実施形態と同様である。
【0071】
図13に示すように、ガイドベーン38は、第1環状流路48のガイド部37と燃料ヘッダ40の間に設けられている。ガイドベーン38は、後縁部38Bが前縁部38Aに対し空気孔プレート32の径方向内側かつ最外周の空気孔側に位置するように配置されている。また、ガイドベーン38は、腹側面(正圧面、つまり凹状に窪んだ面)を空気孔プレート32側に、背側面(負圧面、つまり凸状に出っ張った面)を燃料ヘッダ40側に向けている。腹側面は曲部37Bに概ね沿って曲がっている。なお、本実施形態では、バーナ5の軸方向から見て、ガイドベーン38をバーナ5と同軸のリング状に構成しているが、複数のガイドベーンを環状に配置した構成としても良い。また、本実施形態では、ガイドベーン38は、バーナ5の軸方向におけるガイドベーン38とガイド部37の空気下流側の端部の距離と、ガイドベーン38と燃料ヘッダ40の距離とが同程度となるように設けられているが、ガイド部37の空気下流側の端部と燃料ヘッダ40の間のガイドベーン38の位置は限定されない。
【0072】
(効果)
本実施形態では、第3実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0073】
本実施形態では、第1環状流路48のガイド部37と燃料ヘッダ40の間にガイドベーン38を設けているため、ガイドベーン38の内周側(腹側)に沿って流れる内周側ベーン空気106Aをベースプレート32Aの径方向外側、特に最外周側の空気孔33Aに導きつつ、外周側(背側)に沿って流れる外周側ベーン空気106Bをバーナ5の径方向内側に導くことができる。従って、空気孔33Aに供給される空気流量の偏差をより小さくし、安定燃焼の維持及びNOxの排出量の低減を図ることができる。
【0074】
<第6実施形態>
(構成)
図14は、ガイド部周辺の燃料と空気の流れを模式的に示す図である。
図14は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
図14において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0075】
本実施形態は、サポート15の代わりに多孔板(接続部材)43を備える点で第1実施形態と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0076】
多孔板43は、内筒10と同軸の短管形状の部材であり、第1環状流路48と供給流路41を区画するように設けられている。多孔板43は、ガイド部37の空気下流側の端部と燃料ヘッダ40を接続している。つまり、本実施形態では、空気孔プレート32は、多孔板43を介して燃料ヘッダ40に取り付けられている。
【0077】
図15は、
図14の矢印XV−XV線による矢視断面図である。本実施形態では、
図15に示すように、多孔板43には円形状の連通孔46が軸方向及び周方向に複数列設けられていて、多数形成されている。連通孔46は第1環状流路48と供給流路41を連通しており、第1環状流路48を流れる高圧空気101は連通孔46を通って供給流路41に流入する。なお、
図14に示すように、多孔板43は、ガイド部37の空気下流側の端部の近傍に連通孔46が位置するように設けられているので、ガイド部37の曲部37Bの表面に沿った高圧空気101(近傍空気104)は、この連通孔46を通って供給流路41に流入する。
【0078】
(効果)
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0079】
本実施形態では、多数の連通孔46が形成された多孔板43を第1環状流路48と供給流路41を区画するように設けているので、第1環状流路48を流れる高圧空気101は多数の連通孔46により整流されて供給流路41に流入する。そのため、近傍空気104をベースプレート32Aの径方向外側、特に最外周側の空気孔33Aにより効率よく導くことができる。また、第1環状流路48から供給流路41に流入する高圧空気101のバーナ5の周方向における流量の偏差をより小さくすることができるので、燃焼安定性を向上させ、NOx排出量を更に低減させることができる。
【0080】
(変形例)
図16は、第6実施形態に係る多孔板の変形例を示す図である。上述した多孔板43の代わりに、
図16に示すような、窓型サポート(接続部材)51を設けても良い。
図16に示すように、窓型サポート51には四角形状の窓部52が周方向に多数形成されている。本変形例では、窓部52は軸方向に1列に配置されていて、開口面積が連通孔46よりも大きくなるように形成されている。
【0081】
多孔板43の代わりに窓型サポート51を設けた場合でも、第1環状流路48を流れる高圧空気101は整流されるため、第6実施形態と同様の効果が得られる。加えて、窓部52は開口面積が連通孔46よりも大きくなるように形成されているので、窓型サポート51の空気上流側と下流側の差圧を多孔板43よりも小さくすることができ、全圧損失を抑制することができる。
【0082】
<第7実施形態>
図17は、ガイド部周辺の燃料と空気の流れ模式的に示す図である。
図17は、空気上流側を紙面上側、空気下流側を紙面下側としている。
図17において、上記第6実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0083】
本実施形態は、多孔板43を設ける位置が第6実施形態と異なる。その他の構成は、第6実施形態と同様である。
【0084】
図17に示すように、本実施形態では、外筒11は、第1外筒11B及び第2外筒11Cを備えている。第1外筒11Bは、空気下流側の端部が第1環状流路48を挟んでガイド部37の頂部に対向するように設けられている。第2外筒11Cは、空気上流側の端部が第1外筒11Bの空気下流側の端部に接続し、空気上流側の端部が燃料ヘッダ40に接続するように設けられている。第1外筒11Bの空気下流側の端部と第2外筒11Cの空気上流側の端部の間には、空間部11Dが形成されている。
【0085】
多孔板43は、下端部(空気孔プレート32に近い側の端部)がガイド部37の頂部に接続し、上端部(空気孔プレート32から遠い側の端部)が空間部11Dに挿入されている。本実施形態では、多孔板43は、内筒10と同軸の円盤状のプレートであり、ガイド部37の頂部と外筒11を接続している。つまり、空気孔プレート32は、多孔板43を介して外筒11に取り付けられている。本実施形態では、多孔板43は、バーナ5と同軸のドーナツ型の円盤形状に構成されている。
【0086】
本実施形態のように、多孔板43をガイド部37の頂部と外筒11を接続するように設けた場合でも、第6実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態でも、多孔板43の代わりに、上述した窓型サポート51を適用することができる。その場合には、上述した変形例と同様の効果が得られる。
【0087】
<第8実施形態>
(構成)
図18は本実施形態に係る燃焼器の断面図、
図19は本実施形態に係る燃焼器の空気孔プレートを燃焼ガスの流れ方向の下流側から見た図である。
図18,19において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0088】
本実施形態に係る燃焼器201は、複数の燃料ノズルと空気孔とを同心円状に配置して構成されたバーナを燃焼部に複数配置したいわゆるマルチ噴射式ガスタービン燃焼器である。
【0089】
図18,19に示すように、燃焼器201は、燃焼部の中心に燃焼器201と同軸に配設された1つのバーナ(パイロットバーナ)49と、パイロットバーナ49の周囲に配設された6つのバーナ(メインバーナ)42とを備えている。すなわち、本実施形態では、燃焼器201は7つのバーナを備えたマルチバーナ構造で構成されている。パイロットバーナ49及びメインバーナ42は、空気孔プレート32を共用している。なお、本実施形態では、パイロットバーナ49及びメインバーナ42は、同心円状の複数(本実施形態では3つ)の環状列に区分されており、これら複数の環状列を内周側から外周側に向かって第1列、第2列、第3列と適宜称する。
【0090】
パイロットバーナ49は、同心円状に第1〜第3列に配置された複数の燃料ノズル91と、複数の燃料ノズル91に対応する複数の空気孔33(33A,33B)が形成された空気孔プレート32の一部とを備えている。メインバーナ42は、同心円状に第1〜第3列に配置された複数の燃料ノズル91と、複数の燃料ノズル91に対応する複数の空気孔33(33A,33B)が形成された空気孔プレート32の他の一部とを備えている。
【0091】
パイロットバーナ49の第1列〜第3列を構成する第1バーナ部50Aには第1燃料系統20Aが接続し、6つのメインバーナ42のうち2つのメインバーナ42の第1列を構成する第2バーナ部50Bには第2燃料系統20Bが接続し、6つのメインバーナ42のうち他の4つのメインバーナ42の第1列を構成する第3バーナ部50Cには第3燃料系統20Cが接続し、6つのメインバーナ42の第2列及び第3列を構成する第4バーナ部50Dには第4燃料系統20Dが接続している。
【0092】
本実施形態でも、第1実施形態と同様、内筒10のフィルム空気に利用されなかった高圧空気101は、第1環状流路48から供給流路41に流入し、ベースプレート32Aの空気孔33Aに空気噴流35として導かれる。そして、燃料ノズル91から噴射された燃料は、空気噴流35と混合して空気孔33Bから予混合気として噴出し、パイロットバーナ49及びメインバーナ42の下流側にそれぞれ旋回流60を形成する。この旋回流60によって循環流61が発生し、火炎面62が形成される。なお、本実施形態でも、第1実施形態と同様、第1〜第4バーナ部50A〜50Dに供給される燃料を個別に調節することにより、燃料ステージングが可能である。
【0093】
(効果)
本実施形態のように、マルチ噴射式ガスタービン燃焼器の場合でも第1実施形態と同様の効果が得られる。具体的に、第1実施形態では、曲部37Bの表面の近傍を流れる高圧空気101(近傍空気104)をベースプレート32Aの径方向外側、特に最外周の空気孔33に導くことができるが、本実施形態では、メインバーナ42の最外周列(第3列)に配置された複数の空気孔33のうちガイド部37側、特にガイド部37に最も近い空気孔に近傍空気104を導くことができる。そのため、パイロットバーナ49及びメインバーナ42の空気孔33に高圧空気101を均一に供給することができる。従って、パイロットバーナ49及びメインバーナ42の空気孔33に供給される高圧空気101のバーナ5の周方向における流量偏差を小さくすることができ、安定燃焼と低NOx燃焼の両方を実現することができる。
【0094】
<その他>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することも可能である。
【0095】
上述した各実施形態では、空気孔プレート32の空気孔33を各環状列の全周に渡って形成した場合を説明した。しかしながら、本発明の本質的効果は各空気孔に供給される空気流量の偏差を縮小させることが可能な燃焼器を提供することであり、この本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも空気孔33が各環状列の全周に渡って形成されている必要はない。例えば、外周側の環状列において、環状列の一部分に空気孔33を形成する場合もある。
【0096】
また、上述した第1〜第4実施形態では、ベースプレート32A及び旋回プレート32Bに同心円状に第1〜第8列に複数の空気孔33A,33Bを形成した場合を説明した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしもベースプレート32A及び旋回プレート32Bに形成する空気孔列の数を8列とする必要はない。例えば、ベースプレート32A及び旋回プレート32Bに形成する空気孔列の数を、7列以下或いは9列以上としても良い。
【0097】
また、上述した各実施形態では、燃料ノズル91の先端がベースプレート32Aの空気孔33Aの第1の入口から離間している構成を説明した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、該構成とする必要はない。例えば、燃料ノズル91の先端を空気孔33内に挿入してもよい。この場合、空気孔33Aの第1の入口の面積が減少するため、空気噴流35の流速が増加し、燃料ノズル91から噴射される燃料と空気との混合が更に促進される。
【0098】
また、上述した各実施形態では、燃料ノズル91の先端を単純な円筒状に形成した場合を説明したが、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも円筒状に形成する必要はない。例えば、燃料ノズル91の先端に径方向に突出する突起物を設置してもよい。これにより、燃料ノズル91から噴出される燃料に渦流れを発生させ、燃料と空気の混合をより促進することができる。また、燃料ノズル91の先端に複数の燃料噴出孔を形成してもよい。これにより、燃料の初期分散を高め、燃料と空気の混合をより促進することができる。
【0099】
また、上述した各実施形態では、ガイド部37の曲部37Bがベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aに繋がる構成を説明したが、曲部37Bとベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aとの間に隙間が形成されている、つまり曲部37Bとベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aが離間していても、高圧空気101(近傍空気104)をベースプレート32Aの径方向最外周の空気孔33Aに導くことができる。