(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422413
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
A47J27/00 103H
A47J27/00 103A
A47J27/00 103N
A47J27/00 109A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-179711(P2015-179711)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-51538(P2017-51538A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小暮 栄治
【審査官】
西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−40428(JP,A)
【文献】
特開平9−37933(JP,A)
【文献】
特開2005−160917(JP,A)
【文献】
特開平10−314017(JP,A)
【文献】
特開2012−10924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を有する本体と、
前記本体に開閉自在に設けられた蓋体と、
前記本体に収納され、前記加熱手段で加熱される内釜と、
を備え、
前記内釜は、
外縁が円周方向に突出した羽部と、
前記羽部より上方側に突出した非金属製の鍔部と、
前記鍔部の外側面部に設けられた磁性金属部材と、を有し、
前記蓋体は、
前記磁性金属部材を誘導加熱する誘導加熱コイルを有する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記磁性金属部材は、
前記鍔部の上端部まで設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記磁性金属部材は、
前記羽部の上側面まで設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記磁性金属部材は、
鏡面加工が施され、又は色付き部材により構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記内釜の上部の温度を検知する蓋センサーと、
該蓋センサーが基準の温度未満の温度を検知したときに、前記磁性金属部材を前記誘導加熱コイルにより誘導加熱する制御装置と、を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部に羽部及び非金属製の鍔部を備えた内釜を有する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本体に着脱自在に収納される内釜の上部に羽部を設けると共に、本体の上部に抵抗線ヒーターと一体的に組み合わされた羽部加熱部を設け、内釜を本体内に挿入したとき、羽部が羽部加熱部に当接して保持されるようにし、さらに本体には内釜の底部を加熱する主加熱部を設け、制御部で、炊飯、むらし、保温などの工程に応じて、主加熱部と羽部加熱部の通電を制御する炊飯器が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−65457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の炊飯器は、内釜の羽部加熱部により羽部自体を加熱することができるが、羽部より上部の鍔部は加熱することができないため、羽部より上部の鍔部の温度は下がりやすく、また、温度が上がりにくいという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、羽部より上部の鍔部を誘導加熱により加熱することができる炊飯器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、加熱手段を有する本体と、前記本体に開閉自在に設けられた蓋体と、前記本体に収納され、前記加熱手段で加熱される内釜と、を備え、前記内釜は、外縁が円周方向に突出した羽部と、前記羽部より上方側に突出した非金属製の鍔部と、前記鍔部の外側面部に設けられた磁性金属部材とを、有し、前記蓋体は、前記磁性金属部材を誘導加熱する誘導加熱コイルを有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る炊飯器によれば、内釜の鍔部の外側面部に設けられた磁性金属部材に対向する位置に誘導加熱コイルを設ける。このようにすることで、炊飯器の本体に収容された内釜の羽部より上部を誘導加熱により直接加熱することができる炊飯器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の側面視における概略縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る炊飯器の正面視における概略縦断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る内釜の概略断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る内釜の概略拡大図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る内釜の概略拡大図である。
【
図7】本発明の実施の形態3に係る内釜の概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の炊飯器の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の形態は一例であり、本発明を限定するものではない。また、各図において同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。さらに、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
[炊飯器の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の概略斜視図である。
図1に示されるように、炊飯器100は、本体1と、本体1の上部に開閉自在に取り付けられる蓋体4と、を備える。本体1の外郭は、外枠14と底板15とを有する。本体1の前面側の上部には蓋体4を開閉するための蓋開閉ボタン4aが設けられている。また、蓋体4の上面には炊飯器100を操作するための複数の操作部9と、炊飯器100内の蒸気を排出する蒸気排出口8aが設けられている。
【0011】
図2は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の側面視における概略縦断面図である。また、
図3は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の正面視における概略縦断面図である。
図2及び
図3に示されるように、炊飯器100は、内部に米などの調理物である被加熱物を保持する内釜3が取り出し自在に収容されている。また、炊飯器100は、内釜3を誘導加熱する誘導加熱コイル12を有する本体1と、本体1の上部であって本体1のヒンジ部10に開閉自在に設けられた蓋体4とを有する。さらに、炊飯器100は、蓋体4に取り外し自在に取り付けられ、蓋体4で本体1の上面を閉じた際に、内釜3の上部開口を閉塞する内蓋8と、炊飯器100の動作を制御する制御装置5とを備えている。なお、誘導加熱コイル12は、本発明における「加熱手段」に相当する。
【0012】
内蓋8の中央部付近には開口部が設けられ、当該開口部には蓋センサー6が設けられている。蓋センサー6は、内蓋8の開口部より露出した位置であって、炊飯器100内の蒸気が直接当たる位置に設置され、内釜3の上部の雰囲気温度を検知する。
【0013】
誘導加熱コイル12は、内釜3が収容される開口の底部に配置され、それぞれ円環状に形成されている。その底部の中央には、誘導加熱コイル12により誘導加熱される内釜3の温度を検出する底温度センサー13が設置されている。
【0014】
内釜3は、上部が開口した有底筒状の釜であり、外縁が円周方向に突出して形成された羽部3bと、羽部3bより上方側に円周方向に突出した鍔部3cとを備えている。鍔部3cは、非金属製であり、鍔部3cの外側面部には磁性金属部材3aが円周方向に沿って設けられている。磁性金属部材3aは鍔部3cに直接貼り付けても良いし、磁性金属部材3aと鍔部3cとを焼結させて一体化させても良い。
【0015】
蓋体4の内部であって、内釜3の磁性金属部材3aと対向する位置には、誘導加熱コイル4cが渦巻き状に巻き付けられている。蓋体4内に設けられた制御装置5は、蓋センサー6で検知した温度が、例えば74℃未満の温度となったとき、誘導加熱コイル4cに通電させ、誘導加熱コイル4cに対向する位置に設けられた磁性金属部材3aを誘導加熱する。
【0016】
誘導加熱された磁性金属部材3aの熱は、熱伝達によって内釜3の鍔部3cを温める。このようにすることで、鍔部3cに露が発生することが無くなり、露が滴下することで内釜3内のご飯に露が付着し、ご飯が必要以上に水分を含み、ふやけてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0017】
図4は、本発明の実施の形態1に係る内釜の概略断面図である。
図4に示されるように、内釜3は、上部に開口部3eを有する有底筒状の釜であり、内部に米などの調理物である被加熱物を保持するものである。内釜3の材質は非金属製であって、例えば土鍋となっており、内釜3の内面側はフッ素コーティング加工が施されている。内釜3は、誘導加熱コイル12の磁界により内釜3の底部の磁性体(図示せず)が発熱し、内釜3自体が加熱される。
【0018】
内釜3は、開口部3eより下側の内釜3の上部に、円周方向の外側に向かって突出した羽部3bを周囲に有している。また、内釜3は、水平で平坦な場所に載置された場合に、羽部3bから上方に向かって突出した鍔部3cを円周方向に沿って有している。鍔部3cの上部には上端部3dが形成されている。このように、内釜3は、いわゆる羽釜形状をなしている。
【0019】
内釜3を羽釜形状とすることで、羽部3bより上部に鍔部3cによって形成された空間が生じる。これにより、内釜3を大火力で加熱しても上記の空間によって、おねばが蒸気排出口8aから吹きこぼれることがなくなるため、大火力で持続的に加熱することで、お米の旨み成分であるおねばを多く発生させ、より美味しいご飯を炊くことが可能となる。
【0020】
図5は、本発明の実施の形態1に係る内釜の概略拡大図である。すなわち、
図4の円で囲った部分の拡大概略図である。
図5に示されるように内釜3の鍔部3cの外側面部には、磁性金属部材3aが円周方向に沿って設けられている。このような構成とすることで、誘導加熱コイル4cによって磁性金属部材3aを誘導加熱することができるとともに、鍔部3cの強度を強化することが可能となる。また、磁性金属部材3aを鏡面加工、又は色付き部材により構成されるようにする。このようにすることで、従来の内釜よりも意匠的な見栄えが良くなり、ユーザに高級感を与えることができる。
【0021】
[実施の形態1の効果]
以上のことから、本実施の形態1によれば、炊飯器100が、加熱手段を有する本体1と、本体1に開閉自在に設けられた蓋体4と、本体1に収納され、加熱手段で加熱される内釜3と、を備え、内釜3は、外縁が円周方向に突出した羽部3bと、羽部3bより上方に突出した非金属製の鍔部3cと、鍔部3cの外側面部に設けられた磁性金属部材3aと、を有し、蓋体4は、磁性金属部材3aと対向する位置に、磁性金属部材3aを誘導加熱する誘導加熱コイル4cを設ける。このようにすることで、誘導加熱コイル4cによって磁性金属部材3aを誘導加熱することができるとともに、鍔部3cの強度を強化することが可能となる。また、鍔部3cを通常の発熱体で温めると蓋体4の側面が熱くなり過ぎることがあるが、誘導加熱コイル4cにより、鍔部3cの磁性金属部材3aを誘導加熱で温めることができるため、鍔部3cを加熱しても蓋体4自体の温度の上昇を抑えることができる。
【0022】
また、内釜3の磁性金属部材3aは、鏡面加工が施され、又は色付き部材により構成されている。このようにすることで、従来の内釜よりも意匠的な見栄えが良くなり、ユーザに高級感を与えることができる。
【0023】
また、炊飯器100は、蓋体4は、内釜3の上部の温度を検知する蓋センサー6をさらに備え、蓋センサー6が基準の温度未満の温度を検知した場合に、磁性金属部材3aを誘導加熱コイル4cにより誘導加熱する。このようにすることで、鍔部3cの温度が下がっても鍔部3cの磁性金属部材3aを誘導加熱で温めることができるため、鍔部3cに露が付くことを防ぐことができる。
【0024】
実施の形態2.
本実施の形態2における内釜3の基本的な構成は実施の形態1における内釜3と同様であるため、以下、実施の形態1との相違点を中心に本実施の形態2を説明する。実施の形態1と本実施の形態2との相違点は、磁性金属部材が鍔部の上端部まで延在する点である。
【0025】
図6は、本発明の実施の形態2に係る内釜の概略拡大図である。すなわち、
図4の円で囲った部分の拡大概略図である。
図6に示されるように、磁性金属部材3aは、鍔部3cの外側面部の下端部から上端部3dまで延在している。
【0026】
[実施の形態2の効果]
以上のことから、磁性金属部材3aは、鍔部3cの上端部3dまで延在する。このようにすることで、実施の形態1の効果に加えて、鍔部3cの上端部3dの強度を強化することができ、上端部3dに衝撃等が加わったとしても上端部3dが欠けることを防ぐことができる。
【0027】
実施の形態3.
本実施の形態3における内釜3の基本的な構成は実施の形態1における内釜3と同様であるため、以下、実施の形態1との相違点を中心に本実施の形態3を説明する。実施の形態1と本実施の形態3との相違点は、磁性金属部材が鍔部の上端部から羽部の上側面まで延在する点である。
【0028】
図7は、本発明の実施の形態3に係る内釜の概略拡大図である。すなわち、
図4の円で囲った部分の拡大概略図である。
図7に示されるように、磁性金属部材3aは、鍔部3cの上端部3dから羽部3bの上側面3fまで延在している。なお、本実施の形態3では、磁性金属部材3aが鍔部3cの上端部3dから羽部3bの上側面3fまで延在している例を示したが、本発明はこれに限定されず、磁性金属部材3aは鍔部3cの上端部3dまで延在していなくてもよい。
【0029】
[実施の形態3の効果]
以上のことから、磁性金属部材3aは、鍔部3cの上端部3dから羽部3bの上側面3fまで延在する。このようにすることで、実施の形態1の効果に加えて、羽部3bの強度を強化することができ、羽部3bに衝撃等が加わったとしても羽部3bが欠けることを防ぐことができる。
【0030】
以上、実施の形態1〜3について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の全て又は一部を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 本体、3 内釜、3a 磁性金属部材、3b 羽部、3c 鍔部、3d 上端部、3e 開口部、3f 上側面、4 蓋体、4a 蓋開閉ボタン、4c 誘導加熱コイル、5 制御装置、6 蓋センサー、8 内蓋、8a 蒸気排出口、9 操作部、10 ヒンジ部、12 誘導加熱コイル、13 底温度センサー、14 外枠、15 底板、100 炊飯器。