特許第6422538号(P6422538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6422538
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】曲面研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/16 20060101AFI20181105BHJP
   B24B 21/20 20060101ALI20181105BHJP
   B24B 19/08 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   B24B21/16
   B24B21/20
   B24B19/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-163036(P2017-163036)
(22)【出願日】2017年8月28日
【審査請求日】2018年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515026982
【氏名又は名称】株式会社松田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】徳竹 仁志
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−170856(JP,A)
【文献】 特開昭58−109264(JP,A)
【文献】 特開2014−124702(JP,A)
【文献】 特開平06−170713(JP,A)
【文献】 特開2012−231191(JP,A)
【文献】 特開平08−090398(JP,A)
【文献】 特開平03−281169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 21/00−21/20
B24B 41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨上面(Wa)が長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワーク(W)の上記被研磨上面(Wa)を研磨するための曲面研磨装置であって、
上記被研磨上面(Wa)を上記ワーク(W)の長手方向に沿った縦方向(X)に走行して該被研磨上面(Wa)を研磨するためのエンドレス状の研磨ベルト(10)と、該研磨ベルト(10)を上記被研磨上面(Wa)へ押圧するための矩形状板型の押圧部材(11)と、を備え、
上記押圧部材(11)は、上記被研磨上面(Wa)の上方位置から上記研磨ベルト(10)を上記被研磨上面(Wa)へ押圧しつつ上記ワーク(W)の長手方向に沿った軸心(La)廻りに回転自在に設けられていることを特徴とする曲面研磨装置。
【請求項2】
被研磨上面(Wa)が長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワーク(W)の上記被研磨上面(Wa)を研磨するための曲面研磨装置であって、
上記被研磨上面(Wa)を上記ワーク(W)の長手方向に沿った縦方向(X)に走行して該被研磨上面(Wa)を研磨するためのエンドレス状の研磨ベルト(10)と、該研磨ベルト(10)が循環走行するように懸下される複数のローラ(18)(19)と、上記被研磨上面(Wa)の上方位置から上記研磨ベルト(10)を上記被研磨上面(Wa)へ押圧するための矩形状板型の押圧部材(11)と、該押圧部材(11)が上下方向(Z)に移動自在かつ上記ワーク(W)の長手方向に沿った軸心(La)廻りに回転自在に設けられた押圧ベース部材(13)と、ユニット移動手段(2)によって吊り下げ状に保持されたユニットベース部材(12)と、を有するベルト研磨ユニット(1)を備え、
上記ベルト研磨ユニット(1)は、上記ユニットベース部材(12)が上記ユニット移動手段(2)にて上記縦方向(X)へ移動自在に設けられ、さらに、上記押圧ベース部材(13)が水平状かつ上記縦方向(X)に直交状の横方向(Y)に往復移動自在に直線往復動ガイド手段(39)を介して上記ユニットベース部材(12)に垂下状に連結され、上記押圧ベース部材(13)が上記ユニットベース部材(12)に対して上記横方向(Y)に往復移動自在に設けられていることを特徴とする曲面研磨装置。
【請求項3】
上記ベルト研磨ユニット(1)は、上記横方向(Y)に、鉛直状軸心(Lk)を挟んで一対に設けられ、
一方の上記ベルト研磨ユニット(1A)と、他方の上記ベルト研磨ユニット(1B)と、を上記鉛直状軸心(Lk)廻りに回動自在として切換使用可能に構成した請求項2記載の曲面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板状のワークの平面を、研磨ベルトにて研磨する平面研磨装置があった(例えば、特許文献1参照)。このような平面研磨装置は、図7に示すように、被研磨上面Waの横断面が弯曲凸状であるワークWを研磨するためには使用できず、職人が手作業で、被研磨上面Waを研磨していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−170713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ワーク長手方向の寸法が数mになるような長い被研磨上面の研磨は、職人による手作業では多大な時間と労力が必要になり、効率が悪いといった問題や、熟練した技量がないと仕上がりにムラが生じてしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、熟練した技量がなくとも、美しく、かつ、効率良く被研磨上面の研磨を行うことが可能な曲面研磨装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の曲面研磨装置は、被研磨上面が長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワークの上記被研磨上面を研磨するための曲面研磨装置であって、上記被研磨上面を上記ワークの長手方向に沿った縦方向に走行して該被研磨上面を研磨するためのエンドレス状の研磨ベルトと、該研磨ベルトを上記被研磨上面へ押圧するための矩形状板型の押圧部材と、を備え、上記押圧部材は、上記被研磨上面の上方位置から上記研磨ベルトを上記被研磨上面へ押圧しつつ上記ワークの長手方向に沿った軸心廻りに回転自在に設けられているものである。
【0007】
また、被研磨上面が長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワークの上記被研磨上面を研磨するための曲面研磨装置であって、上記被研磨上面を上記ワークの長手方向に沿った縦方向に走行して該被研磨上面を研磨するためのエンドレス状の研磨ベルトと、該研磨ベルトが循環走行するように懸下される複数のローラと、上記被研磨上面の上方位置から上記研磨ベルトを上記被研磨上面へ押圧するための矩形状板型の押圧部材と、該押圧部材が上下方向に移動自在かつ上記ワークの長手方向に沿った軸心廻りに回転自在に設けられた押圧ベース部材と、ユニット移動手段によって吊り下げ状に保持されたユニットベース部材と、を有するベルト研磨ユニットを備え、上記ベルト研磨ユニットは、上記ユニットベース部材が上記ユニット移動手段にて上記縦方向へ移動自在に設けられ、さらに、上記押圧ベース部材が水平状かつ上記縦方向に直交状の横方向に往復移動自在に直線往復動ガイド手段を介して上記ユニットベース部材に垂下状に連結され、上記押圧ベース部材が上記ユニットベース部材に対して上記横方向に往復移動自在に設けられているものである。
また、上記ベルト研磨ユニットは、上記横方向に、鉛直状軸心を挟んで一対に設けられ、一方の上記ベルト研磨ユニットと、他方の上記ベルト研磨ユニットと、を上記鉛直状軸心廻りに回動自在として切換使用可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横断面が弯曲凸状である被研磨上面の研磨作業を機械化(自動化)することができる。即ち、被研磨上面の研磨を容易かつ迅速に効率良く行うことができる。熟練した技量がなくとも被研磨上面をムラなく美しく仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の曲面研磨装置の実施の一形態を示す正面図である。
図2】要部断面側面図である。
図3】要部断面正面図である。
図4図3のA−A断面図である。
図5図3のB−B断面図である。
図6】研磨ベルトの動作を説明するための作用説明図である。
図7】ワークの一例を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る曲面研磨装置は、図7に示すように、被研磨上面Waの横断面が弯曲凸状であって、かつ、被研磨上面Waが長手方向にストレート状(縦断面直線状)であるワークWの上記被研磨上面Waを、研磨するためのものである。
【0011】
図1に示すように、ワークWが水平状姿勢となるように保持可能なワーク保持手段8と、被研磨上面Waを研磨するためのエンドレス状の研磨ベルト10を有するベルト研磨ユニット1と、ベルト研磨ユニット1を吊り下げ状に保持するユニット移動手段2と、を備えている。
ここで、ワークWの長手方向に沿った水平状の方向を縦方向(左右方向)Xと呼び、水平状かつ縦方向Xと直交状の方向を横方向(前後方向)Yと呼ぶ。
【0012】
ベルト研磨ユニット1(以下、ユニット1と呼ぶ場合もある)は、被研磨上面Waを研磨するための研磨面を表て面(外面)に有するエンドレス状(無端状)の研磨ベルト10(図2に於ては図示省略する)と、研磨ベルト10が循環走行するように懸下される複数のローラ18,19と、研磨ベルト10を被研磨上面Waへ(研磨ベルト10を裏面側からワーク側へ)押圧するための板型の押圧部材11と、ユニット移動手段2によって吊り下げ状に保持されたユニットベース部材12と、ユニットベース部材12の下部に吊り下げ状に取着された押圧ベース部材13と、を備えている。
【0013】
複数のローラ18,19は、ユニットベース部材12に回転自在に取着している大径の循環用ローラ18と、押圧ベース部材13に回転自在に取着している小径の補助用ローラ19とである。各ローラ18,19は横方向Yの水平状回転軸心廻りに回転自在である。
【0014】
ユニットベース部材12には、押圧ベース部材13の縦方向Xの一方(左右一方)側に配設された駆動用の循環用ローラ18Aと、駆動用の循環用ローラ18Aを回転駆動させるローラ用モータ(図示省略)と、押圧ベース部材13の上方位置に配設されアクチュエータ等によって上下移動自在に設けられて従動(自由)回転するテンション付与用の循環用ローラ18Cと、複数の空転自在な従動用の循環用ローラ18Bと、が設けられている。循環用ローラ18は、クラウン付が望ましい。
【0015】
複数の循環用ローラ18,18によってエンドレス状の研磨ベルト10が矩形環状(四辺形状)に懸下される。そして、循環用ローラ18にて四辺形状に懸下された環状の研磨ベルト10において、水平状の下辺部の縦方向中間部を、押圧ベース部材13に設けた複数の補助用ローラ19,19によって、押圧部材11の下面に摺接するように誘導して、研磨ベルト10の表て面(下面)が、被研磨上面Waを縦方向Xに走行するように構成している。
【0016】
図3に示すように、押圧ベース部材13に、押圧部材11(プラテン部材11や押盤部材11と呼ばれる場合もある)と、押圧部材11をワーク側(下方)へ押圧するためのエアシリンダ等の押圧用アクチュエータ14と、上下スライド自在に保持された左右一対のガイド軸部材15,15と、研磨ベルト10を押圧部材11の下面(押圧付与面)へ摺接させるための複数の補助用ローラ19,19と、が設けられている。
【0017】
押圧部材11は、押圧ベース部材13に、上下方向Zに移動自在、かつ、ワークWの長手方向に沿った軸心La(縦方向Xの軸心La)廻りに回転自在に設けている。
図3及び図4に示すように、押圧用アクチュエータ14は、ロッド部が下方突出状となるように、押圧ベース部材13の下部側の被取付部(固定部)13bにバレル部が固着されている。そして、押圧用アクチュエータ14の伸縮ロッド先端は、押圧部材11に、球状の雄部材17aと球面凹状の雌部材17bとを有する球体型自在継手部材(ボールリンク部材)17を介して、上下方向(高さ方向)Zの力が伝達されるように連結されている。
【0018】
図3及び図5に示すように、ガイド軸部材15は、押圧ベース部材13の下部側の被取付部13bに固着された上下スライド軸受部材16と、下部側の被取付部13bに上下方向Zに貫設された孔部と、を挿通している。そして、ガイド軸部材15の下端部は、押圧部材11に上方突出状に設けた枢支片部材11fに、縦方向Xの軸心Laと同軸心状に配設された枢着軸によって枢着されている(縦方向Xの軸心Laを、以下、回転軸心Laと呼ぶ場合もある)。回転軸心Laは水平状である。
【0019】
押圧部材11は、矩形状の板型(盤形状)であって、金属製又は樹脂製の基台部材11aと、基台部材11aの下面に着脱自在(交換自在)に取着される板状の低摩擦材11dと、基台部材11aの上面に固着される雌部材17bと、基台部材11aの上面に固着される枢支片部材11fと、を有している。
【0020】
低摩擦材11dは、押圧部材11の下面(押圧付与面)を形成している。
低摩擦材11dとしては、自己潤滑性を有するものが好ましく、例えば、固体潤滑剤(固体グラファイト潤滑剤)を有するグラファイトキャンバス(グラファイト布)である。
なお、低摩擦材11dとしては、ポリテトラフルオロチレンで成型又はコーティングしたものであっても良い。
【0021】
また、図2及び図3に示すように、押圧ベース部材13には、押圧部材11の左右両側(縦方向Xの両側)に、研磨ベルト10を押圧部材11の下面へ摺接するようにガイドするストレート状の補助用ローラ19A,19Aを設けている。
ストレート状とすることで、平坦面状の押圧付与面(低摩擦材11d)にシワや捩れを発生させずに摺接させることができる。
そして、ストレート状の補助用ローラ19Aよりも上方位置かつ左右外方位置(縦方向Xの外方位置)に、クラウン付補助用ローラ19B,19Bを設けている。クラウン付とすることで、押圧部材11が回転しても研磨ベルト10が外れるのを防止できる。また、研磨ベルト10が横方向Y(研磨ベルト10のベルト幅方向)へ位置ズレするのを防止できると共に各ローラ19,18から外れるのを防止できる。
【0022】
そして、押圧ベース部材13は、上部が、横方向Yに直線状の往復動用ガイドレール部材39aと、往復動用ガイドレール部材39aを走行(スライド)する往復動用スライダ部材39bと、を備えた直線往復動ガイド手段39を介して、ユニットベース部材12に垂下状に取着(連結)している。押圧ベース部材13の上面にガイドレール部材39aが固着され、ユニットベース部材12の下面にスライダ部材39bを固着している。往復動用スライダ部材39bは、往復動用ガイドレール部材39aから上下方向Zに分離が阻止された連結状態で、横方向Yへ直線走行可能なものである。
【0023】
さらに、ユニットベース部材12に対して押圧ベース部材13を横方向Yに往復移動させるための往復駆動手段30を備えている。
往復駆動手段30は、駆動軸が下方突出状となるようにユニットベース部材12に固着された往復動用モータ31と、往復動用モータ31の駆動軸と基端部32bが連動連結され往復動用モータ31の鉛直状軸心廻りの回転力を横方向Yの往復移動に変換して伝達するためのコネクティングロッド型の連結部材32と、押圧ベース部材13の上部側の被取付部13aに立設され連結部材32の先端部32aに貫設された連結孔部32dを挿通する受け軸部材33と、を備えている。
【0024】
往復動用モータ31の駆動軸と、連結部材(コネクティングロッド)32の基端部32bと、の連動連結は、駆動軸の鉛直状軸心廻りの回転を横方向Yの往復移動に変換可能であればよく、例えば、連結部材32に基端部32bに貫設した駆動用孔部の中心と、往復動用モータ31の駆動軸の軸心とを、平面視で相互に偏心位置に配設して連結可能なクランクシャフトやカム部材等の偏心連結用部材を介して連動連結している。
【0025】
従って、押圧ベース部材13に設けられている押圧部材11及び補助用ローラ19A,19Bは、横方向Yに往復移動する。押圧ベース部材13は、例えば、100cpm〜300cpm(サイクル毎分)で往復移動する。下限値未満であると、研磨作業に時間がかかる。上限値を超えると他部材の共振を招いたりして、不具合が発生する虞れが高くなる。
【0026】
つまり、被研磨上面Waを縦方向Xに走行する研磨ベルト10を、押圧部材11にて被研磨上面Waへ押圧して摺接させ、ワークW側への押圧を保持しつつ、横方向Yに往復移動させる。押圧部材11は、軸心La廻りに回転自在で、被研磨上面Waの接線勾配と一致せしめながら、横方向Yに往復移動するという揺動動作を行う。つまり、図6に示すように、横断視で、研磨ベルト10の下面(研磨面)が、被研磨上面Waに接線状に摺接しつつ横方向Yに往復移動する。
熟練した職人が手の平で紙やすりを被研磨上面Waへ均一状に押し当てつつ往復移動させるような動作を、押圧部材11が行う(熟練した職人の手作業を再現する)。
【0027】
また、押圧ベース部材13は、往復移動する。なお、図6に於ては、研磨ベルト10の動作をわかりやすくするために実際よりも振幅を大きくして図示している。
【0028】
さらに、図1及び図2に示すように、ユニット1を吊り下げ状に保持しつつユニット1を縦方向Xへ走行させるためのユニット移動手段2を備えている。
先ず、ユニット移動手段2は、正面視門型に形成される枠構造体20を備えている。
枠構造体20は、鉛直状の支柱部材20bと、支柱部材20bの上端部に支持されてワーク上方位置に配設される縦方向Xに長い水平状のビーム(梁状部材)20aと、を有している。図2に示すように、ビーム20aは、横方向Yに一対設けている。
【0029】
さらに、ユニット移動手段2は、各ビーム20a,20aの上面に固着された縦方向Xに直線状の走行レール部材21と、走行レール部材21を走行可能な走行用スライダ部22aを有する支持ベース部材22と、駆動軸が下方突出状となるように支持ベース部材22に固着された走行用モータ23と、走行用モータ23によって鉛直状回転軸心廻りに回転駆動するピニオン24と、ピニオン24に歯合すると共に一方のビーム20aの上面に固着された縦方向Xに直線状のラック部材25と、を備えている。
つまり、走行用モータ23が駆動すると、ピニオン24がラック部材25に歯合状態で回転し、支持ベース部材22は、ビーム20a,20a(走行レール部材21,21)上を走行する。走行用モータ23の駆動軸の回転を正逆制御することで縦方向Xに往復移動する。
【0030】
そして、ユニット移動手段2は、支持ベース部材22に垂下状に固着された円筒型の筒状部材26と、筒状部材26の上下中間部の外鍔部26aに上端部が連結されると共に下端部がユニットベース部材12に固着された垂下状の複数の吊持支持部材27,27と、筒状部材26を挿通して下端部がユニットベース部材12に固着される軸部材28と、を備え、ユニット1(ユニットベース部材12)を吊り下げ状に保持(支持)している。軸部材28は上端部に拡径状段差部を有し、その段差部に、筒状部材26に内嵌状に配設されたスラストベアリングを対応させて、ユニット1の荷重を、スラストベアリングを介して、支持ベース部材22へ伝達している。
【0031】
ここで、図2に示すように、ベルト研磨ユニット1は、鉛直状軸心Lkを挟んで、横方向Yに一対設けている。鉛直状軸心Lkは、軸部材28の軸心でもある。
一方のベルト研磨ユニット(第1ユニット)1Aは、ワークWの上方位置に配設され、他方のベルト研磨ユニット(第2ユニット)1Bは、平面視で鉛直状軸心Lkを中心に180°反対位置(ワークWから横方向Yへ離間した位置)に配設される。
そして、第1ユニット1Aと第2ユニット1Bと、を鉛直状軸心Lk廻りに回動自在として、切換使用可能とするためのユニット切換手段5を備えている。
【0032】
ユニット切換手段5は、筒状部材(外筒部材)26に挿通され鉛直状軸心Lk廻りに回転自在に(軸受部材を介して)保持される軸部材28と、軸部材28を鉛直状軸心Lk廻りに回転駆動させるための切換用モータ52と、切換用モータ52の駆動軸と軸部材28の上部とを連動連結するウォームギヤ機構部53と、を備えている。
【0033】
図2の状態から、切換用モータ52を駆動させて、軸部材28を鉛直状軸心Lk廻りに180度回動させると、第1ユニット1Aがワーク上方位置から離間すると共に、第2ユニット1Bがワーク上方位置に配設される。つまり、研磨作業を行うユニット1が切り換わる。そして、第1ユニット1Aが研磨作業中は、第2ユニット1Bを運転休止状態にでき、運転休止状態のユニット1に対して、損耗した研磨ベルト10の交換作業等の保守・点検作業を行うことができ、研磨作業全体を中止(停止)させる必要が無く、作業効率が向上する。
【0034】
さらに、ユニット切換手段5は、筒状部材26の外鍔部26aに固着された平面視円形状の環状レール部材54と、各吊持支持部材27の上端部に固着され環状レール部材54をスライド移動(走行)するための回動用スライダ部材55と、を備えている。
回動用スライダ部材55は、環状レール部材54から上下方向Zに分離が阻止された連結状態で、環状走行可能である。このように、環状レール部材54と回動用スライダ部材55を設けることで、ユニット切換動作(ユニットベース部材12の回動)をスムーズかつ安定した姿勢で素早く行うことができる。支持部材27と軸部材28とによってユニットベース部材12を吊り持ち支持でき、剛性にも優れる。
【0035】
さらに、第1ユニット1Aの研磨ベルト10の粒度と、第2ユニット1Bの研磨ベルト10の粒度と、を相違させている。例えば、一方を、荒(粗)加工用の研磨ベルト10とし、他方を、仕上げ加工(仕上げ研磨)用の研磨ベルト10とする。このように構成することで、上述のようにユニットの位置切換を行えば、ワークWの荒加工と仕上げ加工を容易かつ迅速に自動で行うことができる。
【0036】
なお、切換使用の説明を容易にするために、第1ユニット1Aのユニットベース部材12(12A)と、第2ユニット1Bのユニットベース部材12(12B)とを、別体で構成した場合で説明したが、一方のユニットベース部材12Aと、他方のユニットベース部材12Bとを、1つの円形状ベース部材で併用する(ターンテーブル型に一体化する)も良い。
【0037】
次に、図1及び図2に示すように、ワーク保持手段8は、ワークWの長手方向両端部を保持するワーク支持台81と、ワークW(ワーク支持台81)を横方向Yへ水平状移動させるための横移動手段と、ワークWを上下方向Zに鉛直状移動させるための上下動手段と、ワークWを縦方向Xに沿った軸心廻りに回動(X軸廻りの回動Mx)させるための縦軸回動手段と、ワークWを横方向Yに沿った軸心廻りに回動(Y軸廻りの回動My)させるための横軸回動手段と、ワークWを高さ方向Zに沿った軸心廻りに回動(Z軸廻りの回動Mz)させるための上下軸回動手段と、を備え、ワークWを、縦方向Xの水平状移動以外の5つの自由度をもって姿勢制御可能に構成している。
【0038】
また、本発明は、図7に示すように、被研磨上面Waが長手方向にストレート状(縦断面直線状)であって、かつ、被研磨上面Waの横断面が弯曲凸状であるワークWの上記被研磨上面Waを、研磨するのに最適である。特に、航空機の翼の一部分を構成する翼面部材の翼面の研磨に最適である。
【0039】
また、図示省略するが、ベルト研磨ユニット1(ローラ用モータ、押圧用アクチュエータ14、往復動用モータ31等)や、ユニット移動手段2(走行用モータ23、切換用モータ52等)や、ユニット切換手段5やワーク保持手段8等の動作を制御するためのCPUやシーケンサ等の制御部及びボタンやタッチパネル等の操作部を備えている。
【0040】
なお、本発明は、設計変更可能であって、押圧用アクチュエータ14は電動式であっても良い。ローラ用モータ、走行用モータ23、往復動用モータ31、切換用モータ52は、電気駆動式、エア駆動式のいずれであっても良い。押圧部材11に雄部材17aを設け、押圧用アクチュエータ14に雌部材17bを設けても良い。
【0041】
以上のように、本発明の曲面研磨装置は、被研磨上面Waが長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワークWの上記被研磨上面Waを研磨するための曲面研磨装置であって、上記被研磨上面Waを研磨するためのエンドレス状の研磨ベルト10と、該研磨ベルト10を上記被研磨上面Waへ押圧するための押圧部材11と、を備え、上記押圧部材11は、上記ワークWの長手方向に沿った軸心La廻りに回転自在に設けられているので、横断面が弯曲凸状である被研磨上面Waの研磨作業を機械化(自動化)することができる。即ち、被研磨上面Waの研磨を容易かつ迅速に効率良く行うことができる。熟練した技量がなくとも被研磨上面Waをムラなく美しく仕上げることができる。職人の熟練した技量を再現できる。
【0042】
また、被研磨上面Waが長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワークWの上記被研磨上面Waを研磨するための曲面研磨装置であって、上記被研磨上面Waを上記ワークWの長手方向に沿った縦方向Xに走行して該被研磨上面Waを研磨するためのエンドレス状の研磨ベルト10と、該研磨ベルト10が循環走行するように懸下される複数のローラ18,19と、該研磨ベルト10を上記被研磨上面Waへ押圧するための押圧部材11と、を有するベルト研磨ユニット1を備え、上記ベルト研磨ユニット1は、上記縦方向Xへ移動自在に設けられ、さらに、上記押圧部材11が、水平状かつ上記縦方向Xに直交状の横方向Yに往復移動自在に設けられると共に、上記縦方向Xの軸心La廻りに回転自在に設けられているので、横断面が弯曲凸状である被研磨上面Waの研磨作業を機械化(自動化)することができる。即ち、被研磨上面Waの研磨を容易かつ迅速に効率良く行うことができる。熟練した技量がなくとも被研磨上面Waをムラなく美しく仕上げることができる。職人の熟練した技量を再現でき、研磨残しなく均一状に仕上げることができる。
【0043】
また、上記ベルト研磨ユニット1は、上記横方向Yに、鉛直状軸心Lkを挟んで一対に設けられ、一方の上記ベルト研磨ユニット1Aと、他方の上記ベルト研磨ユニット1Bと、を上記鉛直状軸心Lk廻りに回動自在として切換使用可能に構成したので、第1ユニット1Aが作動中に、第2ユニット1Bを運転休止状態にでき、運転休止状態ベルト研磨ユニット1に対して、損耗した研磨ベルト10の交換作業等の保守・点検作業を行うことができ、研磨作業全体を中止(停止)させる必要が無い。しかも、第1ベルト研磨ユニット1Aの研磨ベルト10を荒(粗)加工用とし、第2ベルト研磨ユニット1Bを仕上げ加工用とすれば、ワークWの荒加工と仕上げ加工を容易かつ迅速に自動で行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ベルト研磨ユニット
ユニット移動手段
1A 一方のベルト研磨ユニット
1B 他方のベルト研磨ユニット
10 研磨ベルト
11 押圧部材
12 ユニットベース部材
13 押圧ベース部材
18 ローラ
19 ローラ
La 軸心
Lk 鉛直状軸心
W ワーク
Wa 被研磨上面
X 縦方向
Y 横方向
【要約】
【課題】熟練した技量がなくとも、美しく、かつ、効率良く被研磨上面の研磨を行うことが可能な曲面研磨装置を提供する。
【解決手段】被研磨上面Waが長手方向にストレート状であって、かつ、横断面が弯曲凸状であるワークWの被研磨上面Waを研磨するための曲面研磨装置であって、被研磨上面Waを研磨するためのエンドレス状の研磨ベルト10と、研磨ベルト10を被研磨上面Waへ押圧するための押圧部材11と、を備え、押圧部材11は、ワークWの長手方向に沿った軸心La廻りに回転自在に設けられている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7