特許第6422554号(P6422554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422554
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】電子方位計及び電子方位計の調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 17/38 20060101AFI20181105BHJP
   G01C 17/32 20060101ALI20181105BHJP
   G04G 21/02 20100101ALI20181105BHJP
   G04C 3/00 20060101ALI20181105BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   G01C17/38 C
   G01C17/32
   G04G21/02 J
   G04C3/00 B
   G04G19/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-205202(P2017-205202)
(22)【出願日】2017年10月24日
(62)【分割の表示】特願2013-64756(P2013-64756)の分割
【原出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2018-36273(P2018-36273A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊原 隆史
(72)【発明者】
【氏名】栗山 義雄
【審査官】 武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−47841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 17/38
G01C 17/32
G04C 3/00
G04G 19/00
G04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気センサと、
アナログ表示を駆動する1以上のステップモータと、
前記地磁気センサと前記ステップモータを制御するコントローラと、
前記地磁気センサのゲイン補正値を記憶するゲイン補正値メモリと、
を有する電子方位計であって、
前記コントローラは、前記電子方位計の周辺の光量が閾値以上となることを検出する計測前明検出を行った後、前記電子方位計の周辺の光量が閾値以下となる計測前暗検出を行い、その後前記地磁気センサによる計測であるゲイン計測を行う電子方位計。
【請求項2】
前記コントローラは、前記計測前明検出、前記計測前暗検出及び前記ゲイン計測を所定の回数繰り返し、得られた計測値に基づいて前記ゲイン補正値を求め、前記ゲイン補正値メモリに記憶させる請求項1に記載の電子方位計。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電子方位計の周辺の光量が閾値以下となる状態が所定の時間継続することを前記太陽電池により検出する調整前暗検出を行った後、前記計測前明検出を行う請求項1又は2に記載の電子方位計。
【請求項4】
前記調整前暗検出における光量の検出周期は、前記計測前明検出又は前記計測前暗検出における光量の検出周期より長い請求項3に記載の電子方位計。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子方位計のゲイン調整を行う電子方位計の調整方法であって、
前記電子方位計を地磁気シミュレータ内かつ暗所に配置することにより、前記電子方位計が自律的にゲイン調整を実行していく状態に設定するステップと、
前記地磁気シミュレータにより所定の磁場を発生するステップと、
前記電子方位計に光を照射した後、光の照射を取りやめるステップと、を有する電子方位計の調整方法。
【請求項6】
さらに前記地磁気シミュレータにより発生する磁場を変更するステップと、
再度前記電子方位計に光を照射した後、光の照射を取りやめるステップと、を有する請求項5に記載の電子方位計の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子方位計及び電子方位計の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子方位計は、地磁気センサにより地磁気方位を計測し、その計測結果を任意の表示器により表示する。このとき、電子方位計は、かかる方位計測結果自体やその他の情報を表示する電気モータ駆動の指針等のアナログ表示を備えている場合がある。例えば、電子方位計がアナログ表示の時計としての機能をも兼ね備える場合には、電気モータにより駆動される時分針を備えることになる。なお、ここでアナログ表示とは、情報を、機械的部材の姿勢、すなわち、その位置や回転角度により表示するものを指し、いわゆる回転式の指針や円板、レトログラード等は本明細書に言うアナログ表示である。
【0003】
一般に、電子方位計等のアナログ表示の駆動にはステップモータが用いられ、ロータは着磁されている。そのため、ロータのポジションが変化すると、ロータが発生する磁界の向きが変化するため、地磁気センサの計測結果は、ロータのポジションに依存して変動する。そのため、電子方位計は、ロータのポジションに応じて発生する磁界をあらかじめ計測しておき、地磁気センサの計測結果からロータに起因する磁界を差し引くことによりロータの影響を排除した計測結果を得るようにしている。このロータのポジションに応じて発生する磁界をあらかじめ計測する作業をオフセット調整と呼んでいる。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、ステップモータのロータの向きが特定組み合わせパターンの状態であらかじめ定められた複数の方向から別々に外部磁界を印加したときの磁気センサの各出力値を記憶し、特定組み合わせパターン以外の複数の組み合わせパターンの状態であらかじめ定められた1の方向から外部磁界を印加したときの磁気センサの出力値をそれぞれ記憶する電子式方位計の調整方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−47841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術では、電子式方位計のステップモータのロータの向きの全ての組み合わせパターンに対し、外部磁界を印加して磁気センサの出力値を測定し記憶しなければならない。このとき、電子式方位計を正確に調整するためには、外部磁界を正確に制御しなければならず、いわゆる地磁気シミュレータ(3軸ヘルムホルツコイル)等の大掛かりで高額な装置が必要である。
【0007】
そして、電子方位計のステップモータのロータの全ての組み合わせパターンについて計測を行うには相当程度の時間が必要となる。この時間は、電子方位計の機能が複雑化し、ステップモータの数が増加するにつれ指数関数的に増大する。例えば、使用されるステップモータが2ポジションのものであり、その数がnであるとすれば、ロータの組み合わせパターンの数は2nとなる。
【0008】
結果として、電子方位計の調整は地磁気シミュレータを長時間占有することとなり、電子方位計の生産性が低下し、それに付随してコストの増大を招来していた。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子方位計において、地磁気シミュレータを長時間占有することなく簡便に地磁気センサの調整を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下のとおりである。
【0011】
(1)地磁気センサと、アナログ表示を駆動する1以上のステップモータと、前記地磁気センサと前記ステップモータを制御するコントローラと、前記地磁気センサのゲイン補正値を記憶するゲイン補正値メモリと、を有する電子方位計であって、前記コントローラは、前記電子方位計の周辺の光量が閾値以上となることを検出する計測前明検出を行った後、前記電子方位計の周辺の光量が閾値以下となる計測前暗検出を行い、その後前記地磁気センサによる計測であるゲイン計測を行う電子方位計。
【0012】
(2)(1)において、前記コントローラは、前記計測前明検出、前記計測前暗検出及び前記ゲイン計測を所定の回数繰り返し、得られた計測値に基づいて前記ゲイン補正値を求め、前記ゲイン補正値メモリに記憶させる電子方位計。
【0013】
(3)(1)又は(2)において、前記コントローラは、前記電子方位計の周辺の光量が閾値以下となる状態が所定の時間継続することを前記太陽電池により検出する調整前暗検出を行った後、前記計測前明検出を行う電子方位計。
【0014】
(4)(3)において、前記調整前暗検出における光量の検出周期は、前記計測前明検出又は前記計測前暗検出における光量の検出周期より長い電子方位計。
【0015】
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子方位計のゲイン調整を行う電子方位計の調整方法であって、前記電子方位計を地磁気シミュレータ内かつ暗所に配置することにより、前記電子方位計が自律的にゲイン調整を実行していく状態に設定するステップと、前記地磁気シミュレータにより所定の磁場を発生するステップと、前記電子方位計に光を照射した後、光の照射を取りやめるステップと、を有する電子方位計の調整方法。
【0016】
(6)(5)において、さらに前記地磁気シミュレータにより発生する磁場を変更するステップと、再度前記電子方位計に光を照射した後、光の照射を取りやめるステップと、を有する電子方位計の調整方法。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の(1)又は(2)の側面によれば、地磁気シミュレータによる磁場の発生及びその変更があったことを光の照射により電子方位計に伝達することができるので、測定誤差の発生が低減され、また、電子方位計が磁場の発生及びその変更があったことを検知するための追加の部材は不要である。
【0018】
また、上記本発明の(3)の側面によれば、地磁気シミュレータによる磁場の発生及びその変更の前にゲイン調整動作が開始してしまう事態の発生を防止できる。
【0019】
また、上記本発明の(4)の側面によれば、ゲイン調整動作前の暗検出における電力消費を抑える一方で、ゲイン調整動作中は高速な応答をさせることができる。
【0020】
また、上記本発明の(5)または(6)の側面によれば、地磁気シミュレータの占有時間は短時間となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る電子方位計の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子方位計のシステムブロック図である。
図3】電子方位計のオフセット調整を行っている様子を示す図である。
図4】オフセット調整の際の電子方位計の動作を説明するタイムチャートである。
図5】オフセット調整を行う際にコントローラが実行する処理のフローチャートである。
図6】電子方位計のゲイン調整を行っている様子を示す図である。
図7】ゲイン調整の際の電子方位計の動作を説明するタイムチャートである。
図8】ゲイン調整を行う際にコントローラが実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る電子方位計1の正面図である。同図に示されるように、電子方位計1は腕時計であり、電子方位計としての機能は、腕時計の付加機能として実装されている。しかしながら、時計としての機能を省略して電子方位計単体とすることは差し支えない。
【0024】
電子方位計1はケース2内に電子方位計としての機能、時計としての機能を発揮するための各種機構を収容した構造となっている。ケース2の正面には、風防(透明のため、図示していない)に覆われた文字板3と時、分、秒を示すアナログ表示である指針4、日付表示5等の時計としての機能に関する部材と、アナログ表示である方位針6、及び方位表示7(4箇所)が設けられている。文字板3の下には太陽電池が配置されており、透明または半透明の文字板3を透過した光線により発電がなされるようになっている。
【0025】
電子方位計1は地磁気の向きを測定し、測定結果に基づいて方位針6を特定の方位、この場合は北を指すように回転駆動するものである。すなわち、方位針6が方位表示7のNの位置を指すように電子方位計1全体を回転させると、方位表示7はそれぞれ正しい方角を指し示すこととなる。
【0026】
ケース2には、その12時位置と6時位置に設けられたバンド固定部2aにバンド8が取り付けられる。また、ケース2の3時位置には、竜頭9及び押ボタン10が設けられている。
【0027】
なお、図1に示したケース2のデザインや、時計としての機能に関する部材のデザインや配置、形式等は一例であり、これをどのようにするかは任意である。また、電子方位計1は電子方位計及び時計としての機能以外のさらなる機能を備えていてもよい。そのような機能は、例えば、気圧計(又は高度計)、水圧計(又は水深計)、寒暖計、照度計、線量計等としての機能が挙げられる。これらの機能の複数を同時に備えてもよい。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る電子方位計1のシステムブロック図である。電子方位計1は、地磁気センサ11による計測結果がコントローラ12に入力され、コントローラ12により方位針用ステップモータ13が駆動されることにより、方位針6を回転駆動するようになっている。また、コントローラ12は時計回路12aを有しており、現在時刻や日付を計時している。時計用ステップモータ14は時計回路12aの計時結果に基づいて駆動され、それにより指針4及び日付表示5が回転駆動される。また、コントローラ12には竜頭9や押ボタン10からの操作情報が入力される。地磁気センサ11、コントローラ12、方位針用ステップモータ13及び時計用ステップモータ14には二次電池15から必要に応じて電力が供給される。さらに、太陽電池16により発電された電力は二次電池15を充電するよう供給され、同時に、太陽電池16による発電量(本実施形態では、発生電圧)はコントローラ12によりモニタされる。さらに、電子方位計1は、不揮発性メモリ17を備えており、コントローラ12は適宜不揮発性メモリ17にアクセスし、情報を記憶し、また読み出すことができる。
【0029】
なお、ここで示すコントローラ12は、必ずしも単体の部材であることを要せず、適宜のIC(Integrated Circuits)や発振回路等の各種回路、増幅器等の各種電子部品を集積したものであってよい。また、不揮発性メモリ17は、コントローラ12と物理的に独立していても、統合されていてもよい。さらに、方位針用ステップモータ13及び時計用ステップモータ14は必ずしもそれぞれ単体のモータであることを要せず、必要に応じて複数のモータを設けてよい。図2では時計用ステップモータ14を単体であるかのごとく図示しているが、本実施形態では、指針4のうち、時分針を駆動するモータ、秒針を駆動するモータ、及び日付表示5を駆動するモータの3つの時計用ステップモータ14を備えているため、ステップモータの数は総計で4である。
【0030】
以上説明した電子方位計1は、方位測定に先立って、調整を行わなければならない。この調整には主に2種類のものがあり、1つ目は、前述したように、ロータのポジションに依存して変動する磁界の影響を排除するため、あらかじめ各ロータポジションに対応する磁界を測定し、測定結果に基づいて、地磁気センサ11の測定結果に加算(又は減算)する補正値(以下、この補正値をオフセット補正値と呼ぶ。)を求めて不揮発性メモリ17に記憶させるというもので、これをオフセット調整と称する。ロータのポジションに依存して変動する磁界の影響は、地磁気センサ11の測定結果に対し、原点位置のずれ(オフセット)として現れる。オフセット補正値は、この原点位置のずれをキャンセルするための補正値であり、ロータポジション毎に求められる。なお、本明細書では、ロータポジションという語を、1以上のステップモータのロータの向きの組み合わせを意味するものとして用いている。本実施形態では、ロータの数は4であるから、24=16通りのロータポジションが存在することになる。電子方位計1は、方位測定の際に、ロータポジションに応じたオフセット補正値を不揮発性メモリ17から読み出し、測定値の原点位置を補正する。オフセット補正値は不揮発性メモリ17の所定のアドレスに格納されるが、当該アドレスにより示される領域を以降、オフセット補正値メモリと称する。
【0031】
2つ目の調整は、地磁気センサ11のゲイン調整である。地磁気センサ11は、平行でない2方向(通常は直交する2方向)についてそれぞれ磁界強度を測定し、合成することにより地磁気センサ11に作用する磁界の向きを検出するが、このとき測定する2方向についての感度が異なっていると、合成後に正しい磁界の向きが得られない。そこで、あらかじめ強さ及び向きが分かっている磁界内に電子方位計1を置き、その測定結果から、測定する2方向についての感度が等しくなるようなゲインに対する補正値(以下、この補正値をゲイン補正値と呼ぶ。)を求めて不揮発性メモリ17に記憶させる。電子方位計1は、方位測定の際に、ゲイン補正値を不揮発性メモリ17から読み出し、地磁気センサ11の測定方向毎の測定値にゲイン補正値を乗じた後合成する。なお、ゲイン補正値がゲインそのものである場合には、ゲイン補正値をゲインとして用いる。ゲイン補正値は不揮発性メモリ17の所定のアドレスに格納されるが、当該アドレスにより示される領域を以降、ゲイン補正値メモリと称する。
【0032】
まず、電子方位計1のオフセット調整方法を説明する。図3は、電子方位計1のオフセット調整を行っている様子を示す図である。
【0033】
オフセット調整をする際に、まず、電子方位計1を、電子方位計1自身が自動的にオフセット調整を開始し得る状態に設定する。この状態を、オフセット調整モードと呼ぶこととすると、電子方位計1をオフセット調整モードに移行する方法は種々のものがあり、任意に設定してよい。例えば、作業者が電子方位計1に特殊な操作を行ったり(例えば、押ボタン10を2つ同時に長押ししたり、所定のパターンで押す等)、電子方位計1の外部から無線通信によりコントローラ12にオフセット調整モードに移行するよう指示したりしてよい(このときの通信は、例えば任意のステップモータのコイルを通信コイルとして用いるコイル通信であってよい)。あるいは、オフセット補正値メモリにオフセット補正値が格納されていない状態であることにより、電子方位計1が自動的にオフセット調整モードとなるようにしてもよい。また、電子方位計1は、自身がオフセット調整モードであることを表示してもよい。例えば、方位針6が12時位置を指す等してよい。
【0034】
つづいて、作業者は、電子方位計1を磁気シールド18内に収容する。磁気シールド18は、一例として図3に示すような形状の容器であり、初透磁率が大きい材料で形成されるとともに、外光を遮断する機能を有している。磁気シールド18の材質は、初比透磁率が1000以上、より好ましくは10000以上の材質が良く、本実施形態ではパーマロイである。なお、図3では、磁気シールド18の一部を切欠いて内部に収容された電子方位計1の様子が見えるようにしている。同図ではバンド8は電子方位計1から外されているが、付けた状態であってもよい。
【0035】
磁気シールド18内部には、外部磁界が入らないため、磁気シールド18内部に収容された電子方位計1は、外部磁界が0の状態に置かれることになる。同時に、磁気シールド18内の電子方位計1には外部からのアクセスは原則的にできないので、電子方位計1は、自身がこの状態に置かれたことをなんらかの手段により自ら検知して、オフセット調整を開始しなければならない。すなわち、電子方位計1が磁気シールド18内部に収容され、オフセット調整を開始すべきであることを示す条件をオフセット調整開始条件と呼ぶならば、電子方位計1は、かかるオフセット調整開始条件を検出するオフセット調整開始条件検出部を備えていることとなる。
【0036】
本実施形態では、オフセット調整開始条件は、電子方位計1が所定の時間以上暗闇に置かれることである。すなわち、電子方位計1を磁気シールド18内に収容すると、磁気シールド18により外光が遮断されるため、電子方位計1は暗闇におかれることとなるからである。また、所定の時間以上の継続を条件とするのは、一時的に電子方位計1が影に入る等、取り扱いの途中で誤ってオフセット調整が開始されることがないようにするためである。また、オフセット調整開始条件検出部は、太陽電池16が相当する。すなわち、太陽電池16の発電電圧により電子方位計1の周辺の光量を知ることができるため、コントローラ12は、太陽電池16により検出された周辺の光量が所定の閾値以下である場合に、電子方位計1が暗闇に置かれていると判断する。
【0037】
電子方位計1は、磁気シールド18内に収容されてから所定の時間、例えば、3秒経過した時点で自動的にオフセット調整を開始する。このオフセット調整は、ステップモータを制御してあるロータポジションを選択し、その時点での地磁気センサ11の計測値を測定し、計測値の正負を反転させてオフセット補正値としてオフセット補正値メモリに記憶させる、という動作を全てのロータポジションについて繰り返すというものである。
【0038】
電子方位計1のオフセット調整に必要な時間が経過した後、作業者は電子方位計1を磁気シールド18から取り出す。オフセット調整はこれで終了である。なお、電子方位計1は、オフセット調整が終了したことを、例えば、方位針6が1時位置を指すことや、電子方位計1がアラーム音を発する等により表示してもよい。
【0039】
図4は、オフセット調整の際の電子方位計1の動作を説明するタイムチャートである。同図は、外光の明暗、押ボタン操作のON/OFF、オフセット調整モードのON/OFF、電子方位計1の動作及び方位針6の位置を横軸を時間にとり示したものである。
【0040】
まず、図中符号100で示すように所定の押ボタン操作がなされたことを契機として、電子方位計1は符号101で示すようにオフセット調整モードとなる。同時に、符号102で示すように、電子方位計1のコントローラ12は、暗検出を行う。これは、前述の通り、電子方位計1の周辺の光量が所定の閾値以下であることを検出するものである。この暗検出では、太陽電池16による光量検出は、例えば0.5秒毎に行われる。さらに、符号103に示すように、方位針6を12時位置に移動させ、オフセット調整モードであることを表示する。なお、符号103で示した時点より前の方位針6の位置は特に定まっていないため図示してない。
【0041】
その後、符号104に示した時点で電子方位計1が磁気シールド18内に収容され、外光が遮断されたものとする。コントローラ12は、符号105に示すように、電子方位計1の周辺の光量が所定の閾値以下となった状態が3秒継続するのを待ち、符号106に示すようにオフセット調整を開始する。このオフセット調整に要する時間は、ステップモータの数に大きく依存するが、数十秒から数分程度である。
【0042】
コントローラ12は、オフセット調整の終了後、符号107に示すように再び暗検出を一度おこなう。この動作は必ずしも必要ではないが、オフセット調整の終了後に、電子方位計1が暗状態に置かれていることを検出することにより、オフセット調整の途中で電子方位計1が磁気シールド18から取り出される等、電子方位計1が磁気シールド18内に正しく収容されていないことを検出できる。依然として電子方位計1が暗状態にある場合には、オフセット調整が正常に終了したものとして、コントローラ12はオフセット調整モードを終了し、方位針6を1時の位置に回転させる。電子方位計1が明状態にある場合には、オフセット調整に失敗したものとして、方位針6をエラーを示す位置、例えば、6時の位置に回転させるとよい。
【0043】
図5はオフセット調整を行う際にコントローラ12が実行する処理のフローチャートである。
【0044】
コントローラ12は、まず、ステップS01で押ボタン10に所定の操作がなされたか否かを判定する。操作がなされていなければ操作がなされるまで待ち、操作がされていればステップS02へと進む。ステップS02では電子方位計1をオフセット調整モードとし、続くステップS03で方位針6を12時位置に移動させる。そして続くステップS04で電子方位計1が暗状態に3秒以上置かれた状態となるのを待つ。
【0045】
電子方位計1が暗状態に3秒以上置かれていたならば、ステップS05でロータポジションを選択する。ここでのロータポジションの選択は、後述するように繰り返し行われ、これまで選択されていないロータポジションが選択される。したがって、ロータポジションの組み合わせの数と等しい回数だけ選択が行われたなら、全てのロータポジションが一度づつ選択させることになる。各ステップモータのロータは、選択されたロータポジションとなるよう制御され、必要であれば回転される。
【0046】
続くステップS06で地磁気センサ11による地磁気測定を行う。このとき、電子方位計1は磁気シールド18内に収容されているため、地磁気センサ11により測定される磁界は、各ステップモータのロータにより生じるものと、地磁気センサ11自身の0点誤差になる。測定値は、正負を反転した後、ステップS07にてオフセット補正値メモリに記憶する。
【0047】
ステップS08では、ステップS05によるロータポジションの選択が、全てのロータポジションについて行われたか否かを判定する。全てのロータポジションが選択されていなければ、ステップS05へと戻り、ロータポジションを変更し、地磁気測定を繰り返す。全てのロータポジションが選択されていたならば、ステップS09へと進む。
【0048】
ステップS09では、電子方位計1が暗状態に置かれた状態であるか否かを再度判定する。これは、図4の符号107で示した動作に相当する処理である。暗状態であれば、ステップS10へと進み、方位針6を1時位置に移動させ、オフセット調整が終了したことを表示する。なお、このとき、不揮発性メモリ17の任意のアドレスに、オフセット調整が完了していることを示すフラグを記憶させておいてもよい。暗状態でなければ、電子方位計1が、オフセット調整の途中で磁気シールド18から取り出されたか、または磁気シールド18内に収容されることなくオフセット調整を開始した可能性があるため、ステップS11にて方位針6を6時位置に移動し、オフセット調整に失敗したことを表示する。なお、このとき、オフセット補正値メモリに記憶されたオフセット補正値を消去したり、不揮発性メモリ17の任意のアドレスに、オフセット調整が完了していないことを示すフラグを記憶させるなどして、コントローラ12がオフセット調整が終了していないことを検出できるようにしておいてもよい。
【0049】
いずれの場合もステップS12へと進み、オフセット調整モードを解除する。なお、ここでオフセット調整モードであるか否かは、不揮発性メモリ17の任意のアドレスに、オフセット調整モードであることを示すフラグを記憶させることにより明示的に記録してもよいし、コントローラ12が、図5に示すステップS02からステップS12までの処理を実行中であることをもってオフセット調整モードである、としてもよい。
【0050】
なお、上述の実施形態では、オフセット調整開始条件検出部は太陽電池16であり、電子方位計1が一定の時間以上暗状態に置かれることをオフセット調整開始条件としていたが、必ずしもこれに限定はされるものでなく、合理的に電子方位計1が磁気シールド18内に収容されたことを検出できる限り、これらを他のものとしてもよい。例えば、オフセット調整開始条件を、押ボタン10に所定の操作があった後、一定の時間が経過することとしてもよい。この時間を、例えば10秒とすると、作業者は、押ボタン10に所定の操作をしてから10秒以内に電子方位計1を磁気シールド18内に収容すればよいことになる。押ボタン10の操作後の時間の経過はコントローラ12内に設けられたタイマにより監視され、10秒が経過した時点でコントローラ12はオフセット調整を開始することとなる。この場合、タイマがオフセット調整開始条件検出部に該当することになる。
【0051】
続いて、電子方位計1のゲイン調整方法を説明する。図6は、電子方位計1のゲイン調整を行っている様子を示す図である。
【0052】
ゲイン調整をする際に、まず、電子方位計1を、ゲイン調整を開始し得る状態に設定する。この状態を、ゲイン調整モードと呼ぶこととすると、電子方位計1は、ゲイン調整モードでは、自律的に周囲の状況から自身の置かれている状態を判断し、ゲイン調整を実行していく。電子方位計1をゲイン調整モードに移行する方法は種々のものがあり、先に説明したオフセット調整モードと同様に任意に設定してよい。ここでは、作業者が電子方位計1の押ボタン10に特殊な操作を行うことでゲイン調整モードに移行するものとする。また、電子方位計1は、自身がゲイン調整モードであることを表示してもよい。例えば、この場合は方位針6が2時位置を指す等である。
【0053】
続いて、作業者は、電子方位計1を地磁気シミュレータ19内に置かれた遮光容器20内に収容する。地磁気シミュレータ19は、遮光容器20が載置されている領域において、向きと強さを制御された均一な磁界を発生し得る装置であればどのようなものであってもよいが、本実施形態では、図示するような3軸ヘルムホルツコイルを地磁気シミュレータ19として用いている。遮光容器20は、外光を遮断するような容器であるとともに、比透磁率がほぼ1となる(すなわち、磁気的に透明な)材質により形成され、地磁気シミュレータ19が発生した磁界に影響を及ぼさないように配慮されている。遮光容器20の材質は、具体的には、例えば、アルミニウムである。遮光容器20の内部には、光源21が設けられており、必要に応じて遮光容器20の内部に収容された電子方位計1に光線を照射できるようになっている。光源21の種類に限定はないが、ここでは発光ダイオードを光源21として用いている。地磁気シミュレータ19及び光源21は、制御装置22により制御される。制御装置22は、地磁気シミュレータ19及び光源21の動作をシーケンシャルに制御することができるものであればどのようなものであってもよく、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等からなる一般的なコンピュータであってもよいし、いわゆるPLC(Programmable Logic Controller)であってもよい。なお、遮光容器20の内部には電子方位計1を位置決めするための構造を設けておき、電子方位計1の位置と方向が地磁気シミュレータ19に対し常に一定となるようにしておくことが好ましい。図6では、遮光容器20内部の電子方位計1と光源21を破線で示している。
【0054】
ゲイン調整では、地磁気センサ11の平行でない2方向についてのゲイン補正値を求める必要があるため、電子方位計1に、平行でない少なくとも2方向について、向き及び強さが既知である磁界をかけ、それぞれの磁界について地磁気センサ11による計測を行う必要がある。そのため、電子方位計1は、地磁気シミュレータ19により磁界が発生されるタイミングを知る必要がある。しかしながら、地磁気シミュレータ19内に置かれた電子方位計1を物理的に操作することにより係るタイミングを通知するのは不可能ではないものの、自動化に不適である、作業時間のロスを生じやすい、電子方位計1の位置ずれを起こしやすい等好ましくない特徴を持つ。また、先に述べた無線通信によりかかるタイミングを通知することも可能であるが、電子方位計1自身に無線通信を受信するための構成が追加で必要となってしまう。
【0055】
そこで、本実施形態では、電子方位計1が有する太陽電池16を利用して、地磁気シミュレータ19により磁界が発生されるタイミングを検出するようにしている。すなわち、制御装置22が地磁気シミュレータ19により磁界を印加するタイミングに応じて光源21の発光・非発光を制御し、かかる光源21の発光・非発光を検知することにより電子方位計1はかかるタイミングを検知するのである。電子方位計1を遮光容器20内に収容するのは、光源21の発光・非発光の検知を確実にするためである。しかしながら、遮光容器20を用意することなく、地磁気シミュレータ19が設置された部屋自体の照度を低く抑えるようにしても差し支えない。
【0056】
まず、電子方位計1は、自身が地磁気シミュレータ19の所定の位置に載置されたことを検出する。この検出は、電子方位計1が所定の時間以上暗闇に置かれ、周囲の光量が閾値以下となる状態が所定の時間継続することを検出することによりなされる。なぜなら、電子方位計1を遮光容器20内に収容すると、遮光容器20により外光が遮断されるため、電子方位計1は暗闇におかれることとなるからである。また、所定の時間以上の継続を条件とするのは、一時的に電子方位計1が影に入る等、取り扱いの途中で誤ってゲイン調整が開始されることがないようにするためである。この場合の光量の検出もまた太陽電池16の発電電圧を参照することによりなされる。この暗状態の検出を、以降では調整前暗検出と呼ぶ。
【0057】
本実施形態では、調整前暗検出における所定の時間は3秒である。調整前暗検出がなされた以降は、光源21の点灯があってから、消灯する毎に、あらかじめ定められた順番で既知の磁界が発生されているものとして地磁気センサ11による計測が行われる。以降では、このときの光源21の点灯の検出を計測前明検出、また光源21の消灯の検出を計測前暗検出、さらに、地磁気センサ11による計測をゲイン計測と呼ぶ。
【0058】
計測前明検出、計測前暗検出及びゲイン計測は制御装置22及び電子方位計1により自動的に実行される。制御装置22は光源21を点灯し、地磁気シミュレータ19に最初の所定の磁界(例えば、この磁界の向きを0°とする)を発生させ、磁力が安定してからそのままの状態で光源21を消灯する。この光源21の点灯・消灯をそれぞれ計測前明検出及び計測前暗検出により検出して、電子方位計1のコントローラ12は、ゲイン計測を行い、その計測値を記憶する。
【0059】
さらに制御装置22は光源21を点灯し、地磁気シミュレータ19に次の所定の磁界(例えば、この磁界の向きを120°とする)を発生させ、光源21を消灯する。これに伴い、コントローラ12はゲイン計測を行い、その計測値を記憶する。
【0060】
理論的には、非平行の2方向の磁界についての計測を行えばゲイン調整は可能であるから、ゲイン調整をここで終了してもよいが、本実施形態では、測定誤差を低減するため、さらにもう一方向の磁界についての計測を行うようにしている。すなわち、制御装置22はさらに光源21を点灯し、地磁気シミュレータ19にさらに次の所定の磁界(例えば、この磁界の向きを270°とする)を発生させ、光源21を消灯する。コントローラ12はゲイン計測を行い、その計測値を記憶する。もちろん、印加する磁界の向きの数はさらに増加させてもよいが、これは調整により得られる実用上必要な精度と、調整に要する時間との兼ね合いにより適宜定めてよい。
【0061】
地磁気シミュレータ19による磁界の発生とその計測がすべて終了したなら、コントローラ12は得られた計測結果から、ゲイン補正値を算出し、ゲイン補正値メモリに記憶し、ゲイン調整モードを終了する。なお、電子方位計1は、ゲイン調整が終了したことを、例えば、方位針6が3時位置を指すこと等により表示してもよい。
【0062】
作業者は、ゲイン調整に必要な時間が経過したことを確認し、又は、制御装置22からの通知により、電子方位計1を遮光容器20から取り出す。ゲイン調整はこれで終了である。
【0063】
図7は、ゲイン調整の際の電子方位計1の動作を説明するタイムチャートである。同図は、外光の明暗、地磁気シミュレータ19の状態、押ボタン操作のON/OFF、ゲイン調整モードのON/OFF、電子方位計1の動作及び方位針6の位置を横軸を時間にとり示したものである。なお、外光の明暗には、光源21による光線の照射も含まれる。
【0064】
まず、図中符号200で示すように所定の押ボタン操作がなされたことを契機として、電子方位計1は符号201で示すようにゲイン調整モードとなる。同時に、符号202で示すように、電子方位計1のコントローラ12は、調整前暗検出を行う。これは、前述の通り、電子方位計1が所定の時間以上暗闇に置かれることを検出するものである。この調整前暗検出では、太陽電池16による光量検出は、例えば0.5秒毎に行われる。さらに、符号203に示すように、方位針6を2時位置に移動させ、ゲイン調整モードであることを表示する。なお、符号203で示した時点より前の方位針6の位置は、前述のオフセット調整モードが終了したことを示す1時位置となっている。
【0065】
その後、符号204に示した時点で電子方位計1が遮光容器20内に収容され、外光が遮断されたものとする。コントローラ12は、符号205に示すように、電子方位計1の周辺の光量が所定の閾値以下となった状態が3秒継続するのを待つ。その後、コントローラ12は符号206に示すように計測前明検出を行う。この計測前明検出は、光源21の点灯状態を検出するものであり、太陽電池16により周辺の光量が所定の閾値以上であることをもって検出完了とする。この計測前明検出における太陽電池16による光量検出の周期は、調整前暗検出の周期よりも短く、例えば0.1秒毎に行われる。これは、調整前暗検出の完了後は電子方位計1は遮光容器20内に収容されていると考えられるため、外光の影響を受けることはなく、また、検出周期を短くすることにより電子方位計1の動作の応答を早くすることによりゲイン調整全体に要する時間を短縮することができるためである。
【0066】
制御装置22は、符号207に示すように、光源21を点灯する。この点灯時間は、計測前明検出が可能な程度の長さとし、ここでは0.2秒である。また、制御装置22は光源21の点灯と同時に(又は消灯と同時に)地磁気シミュレータ19に0°の磁界を発生させる。
【0067】
符号206で示す計測前明検出で、コントローラ12は符号207に示す光源21の点灯状態を検出し、符号208に示す計測前暗検出を行う。この計測前暗検出は、光源21の消灯状態を検出するものである。この計測前暗検出における太陽電池16による光量検出の周期もまた、調整前暗検出の周期よりも短く、例えば0.1秒毎に行われるが、これは計測前明検出における光量検出の周期を短くしたと同様の理由による。
【0068】
計測前暗検出がなされると、コントローラ12は、符号209に示すゲイン計測を行う。このとき、地磁気シミュレータ19により0°の磁界が印加されていることが既知であるので、地磁気センサ11の計測結果は、0°の磁界における結果として記憶しておく。ゲイン計測が終了すると、コントローラ12は符号210に示すように再び計測前明検出を行い、以降、必要な数だけ(本実施形態では3回)計測前明検出−計測前暗検出−ゲイン計測を繰り返す。
【0069】
制御装置22は、地磁気シミュレータ19の磁界を一定時間、少なくともゲイン計測が確実に終了する程度の時間保持する。図7に示した例では3秒である。その後、符号211に示すように光源21を0.2秒間点灯し、地磁気シミュレータ19に120°の磁界を発生させる。さらに3秒後、同様に、符号212に示すように光源21を0.2秒間点灯し、地磁気シミュレータ19に270°の磁界を発生させる。これにより、コントローラ12は地磁気シミュレータ19により発生させられる磁界の向きが変化する毎にゲイン計測を行い、その計測結果を記憶する。
【0070】
必要な回数のゲイン計測が終了すると、符号213で示すように、コントローラ12は記憶された計測値から、ゲイン補正値を算出し、ゲイン補正値メモリに記憶させる。これにより、ゲイン調整は終了である。その後、コントローラ12は、ゲイン調整モードを終了し、方位針6を3時の位置に回転させる。
【0071】
図8はゲイン調整を行う際にコントローラ12が実行する処理のフローチャートである。
【0072】
コントローラ12は、まず、ステップS21で押ボタン10に所定の操作がなされたか否かを判定する。操作がなされていなければ操作がなされるまで待ち、操作がされていればステップS22へと進む。ステップS02では電子方位計1をゲイン調整モードとし、続くステップS23で方位針6を2時位置に移動させる。そして続くステップS24で電子方位計1が暗状態に3秒以上置かれた状態となるのを待つ。なおこのステップS24は調整前暗検出に相当する。
【0073】
電子方位計1が暗状態に3秒以上置かれていたならば、ステップS25で電子方位計1が明状態となるのを待つ。なおこのステップS25は計測前明検出に相当する。
【0074】
電子方位計1が明状態となったならば、ステップS26で電子方位計1が暗状態となるのを待つ。なおこのステップS26は計測前暗検出に相当する。
【0075】
電子方位計1が暗状態となったならば、ステップS27でゲイン計測を行う。続くステップS28では、ゲイン計測が所定の回数、ここでは3回行われたか否かが判断される。行われていなければ、ステップS25へと戻る。
【0076】
ゲイン計測が所定の回数行われていれば、ステップS29でゲイン補正値を算出し、ゲイン補正値メモリに記憶させ、ステップS30で方位針6を3時位置に移動させ、ゲイン調整が終了したことを表示し、ステップS31でオフセット調整モードを解除する。以上の動作によりゲイン調整は終了である。
【0077】
なお、以上の説明で計測前明検出と計測前暗検出は、それぞれ単に明状態と暗状態を検出するものとしたが、これらを所定の時間明状態または暗状態が継続していることを検出するものとしてもよい。
【0078】
以上説明した各実施形態は、本発明を実施する上での一例であり、本発明をここで示した具体的構成に限定するものではない。当業者は、これらの実施形態に、適宜の変形を加え、その形状や配置、数、材質等の変更を行ってもよい。また、図示したフローチャートは、実施形態において発揮されるべき機能を実現するための一例であり、同様の機能を実現できるものであれば、異なる制御を採用することは一向に差し支えない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められ、これら実施形態に適宜の変形を加えたものをも含みうる。
【符号の説明】
【0079】
1 電子方位計、2 ケース、2a バンド固定部、3 文字板、4 指針、5 日付表示、6 方位針、7 方位表示、8 バンド、9 竜頭、10 押ボタン、11 地磁気センサ、12 コントローラ、12a 時計回路、13 方位針用ステップモータ、14 時計用ステップモータ、15 二次電池、16 太陽電池、17 不揮発性メモリ、18 磁気シールド、19 地磁気シミュレータ、20 遮光容器、21 光源、22 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8