【実施例1】
【0012】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
図1の断面図に示すように、自動車などの車両1における、車室2の前部には、フロントウインドウガラス4(またはフロントシールド)と車室前壁パネル3とが上下に設けられている。そして、フロントウインドウガラス4の下側には、車室前壁パネル3を覆い隠すようにインストルメントパネル5が設けられている。
【0013】
このインストルメントパネル5の内部には、車室前壁パネル3の車両後方側(
図1中右側)に位置するように車幅方向(
図1の紙面と直交方向)へ延びる車体強度部材6が配設されている。そして、この車体強度部材6の下部には、ステアリングコラム7を取付けるためのコラムブラケットが設けられている。この場合、コラムブラケットは、車両前方側に位置するコラムロワブラケット8と、車両後方側に位置するコラムアッパーブラケット9と、に分かれている。そして、ステアリングコラム7と、コラムロワブラケット8およびコラムアッパーブラケット9との間は、それぞれボルト・ナットなどの締結具によってほぼ上下方向に締結固定されている。
【0014】
そして、インストルメントパネル5の内部の上側には、更に、空調ダクト11,12や、ハーネス13などの電線の束や、計器装置14が車両前方側から順に設けられている。また、インストルメントパネル5には、計器装置14の上部を覆うメータフード15が一体または別体に設けられている。そして、ステアリングコラム7の、インストルメントパネル5から車両後方側へ突出した部分には、コラムカバー16が取付けられる。
【0015】
ここで、車室前壁パネル3は、車室2とエンジンルームとの間を仕切るダッシュパネルなどの金属製のパネルのことである。車室前壁パネル3は、フロントウインドウガラス4の下側に設けられる。車体強度部材6は、クロスカービームまたはステアリングサポートメンバと呼ばれるものであり、通常、鉄などの金属製の丸パイプ状のものとされている。この場合には、車体強度部材6は、鉄やアルミなどの金属製またはアルミ合金やマグネシウム合金などの軽合金製の非円形断面、例えば、三角形断面や矩形断面のものなどとされている。なお、車体強度部材6は、上記のどちらであっても良い。上記した空調ダクト11は、窓曇り防止のために、フロントウインドウガラス4に対して空調用空気を吹き出すためのデフロスターダクトである。また、他の空調ダクト12は、乗員へ向けて空調用空気を吹き出すためのベンチレーターダクトである。この場合、空調ダクト12は、空調ダクト11の下側に設置されている。
【0016】
更に、上記したコラムロワブラケット8の上部における、空調ダクト11とハーネス13との間の位置に、ヘッドアップディスプレイ装置21を取付ける。このヘッドアップディスプレイ装置21は、
図2に示すように、ケーシング22の内部に、運転情報などとなる画像23や映像を表示可能な画像表示器27と、この画像表示器27に表示された画像23を車室2内へ導くための光路形成部品25と、を備えて、
図3に示すように、車両1のフロントウインドウガラス4を透して見える外部の風景26に上記画像23の虚像を重ねて表示し得るようにしたものである。なお、この図は左ハンドル車のものとなっている。
【0017】
ここで、画像表示器27は、例えば、画像23を形成可能なプロジェクター24からの画像23を投影するスクリーンや、液晶表示パネルや、VFD(蛍光表示管)などであっても良い。
【0018】
そして、
図2に戻って、上記した光路形成部品25は、この画像表示器27に表示された画像23を反射させてフロントウインドウガラス4へと導く単数または複数の反射鏡28,29によって構成される。
【0019】
この場合、例えば、前段の反射鏡28は平面鏡または凸面鏡とされ、後段の反射鏡29は凹面鏡または拡大鏡とされている。後段の反射鏡29は、画像23を上下反転した状態に映すものとなる。この反射鏡29は、フロントウインドウガラス4上に大きな画像23を映し出せるようにするために、前段の反射鏡28と比べて大型のものとされている。なお、
図1に示すように、画像23を通すために、ケーシング22の上部には、透明な窓部22aなどの防塵カバーが設けられ、インストルメントパネル5の窓部22aと対向する部分には、開口部5aが設けられている。
【0020】
図3に示すように、上記した外部の風景26は、例えば、上側に空が、また、下側に、走行車線や対向車線や歩道などの道路部分が、そして、上下の中間部分の両側に建物や街路樹などが見られるようなものとなる。
【0021】
これに対し、上記した画像23は、風景26の下側の道路部分などに対して主に映し出されるようになっている。そして、例えば、画像23の下側の中央部分に制限速度23aと現在速度23bとを並べて表示したり、その上側などに道路のセンターライン23cや車両の進行方向23dを示す線や矢印などを表示したり、更に、歩道側に歩行者に対する注意喚起マーク23eを表示したりすることができるものとなっている。
【0022】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにしている。
【0023】
(1)
図4、
図5に示すように、上記反射鏡28,29は、基本形状が四角形のものとされる。そして、この基本形状が四角形の反射鏡28,29(特に、反射鏡29)は、4つのコーナー部31〜34のうちの少なくとも1つに、コーナー欠落部42〜44を有するものとされる。
【0024】
ここで、基本形状が四角形の反射鏡28,29は、例えば、画像23と同様の画面形状を有する横長の長方形状のものとされる。なお、基本形状が四角形とは、反射鏡29を平坦面とした時の形状が矩形状になるということである。反射鏡29は、このような基本形状を、必要に応じて、曲面化したものとされる。コーナー欠落部42〜44は、主に大型の拡大鏡とされた後段の反射鏡29に対して形成される。なお、前段の反射鏡28については、特に図示しないが、必要に応じて上記したコーナー欠落部42〜44と同様のコーナー欠落部を形成するようにしても良い。前段の反射鏡28にコーナー欠落部を形成する場合には、後段の反射鏡29のコーナー欠落部42〜44と関連した位置に設けるようにする。
【0025】
(2)コーナー欠落部42〜44は、基本形状が四角形の反射鏡29の隣接する辺35〜38間を、直線、または、なだらかな曲線によって結ぶように切欠かれたもの(切欠線)とされる。
【0026】
ここで、なだらかな曲線は、急激な変化や目立った凹凸のない曲線のことである。なだらかな曲線には、直線と曲線(例えば、角取部など)とを組み合わせた形状や、曲率半径の大きな円弧や、直線に近い自由曲線などが含まれる。
【0027】
(3)上記コーナー欠落部42〜44が、少なくとも、上記画像23における使用頻度の低い位置と対応するコーナー部52〜54に設けられる。
【0028】
ここで、使用頻度の低い位置とは、例えば、
図3に示すように、フロントウインドウガラス4に映し出された画像23の上隅や下隅である。上隅は、上右隅および上左隅の両方が使用頻度の低い位置となる。また、下隅は、特に車両中央側の下隅、即ち、左ハンドル車の場合には下右隅、右ハンドル車の場合には下左隅が使用頻度の低い位置となる。
【0029】
つまり、画像23の上隅、即ち、上右隅および上左隅は、外部の風景26における空と道路との境界部分の位置で、しかも、両側の建物や街路樹などが次々と外側へ流れて行くように見える位置となっている。そして、例えば、歩行者に対する注意喚起マーク23eを表示させたい位置からは、若干外側に外れた位置となっている。
【0030】
また、画像23の車両中央側の下隅、即ち、左ハンドル車の場合には下右隅、右ハンドル車の場合には下左隅は、外部の風景26の中でも歩道側の車両にかなり近い位置となっている。そして、例えば、歩行者に対する注意喚起マーク23eの表示を終えて消す位置よりも若干外側の位置となっている。
【0031】
これらの位置は、画像23の上下が反転される反射鏡29においては、下右隅や、下左隅や、左ハンドル車における上右隅または右ハンドル車における上左隅のコーナー部32〜34となる。
【0032】
(4)上記基本形状が四角形の上記反射鏡29が、ケーシング22内に、
図5に示すように、水平方向に対し傾けて設置される。そして、上記コーナー欠落部42〜44が、傾斜配置された上記反射鏡29の対角位置となる、最も上側のコーナー部32と、最も下側のコーナー部34とのうちの少なくともいずれか1つに設けられる。
【0033】
ここで、反射鏡29が、水平方向に対して傾けて設けられるのは、フロントウインドウガラス4が、垂直な平坦面ではなく、車両後方へ向けて傾斜すると共に、車幅方向や車両前後方向に対して凸形状に屈曲された自由曲面となっているからである。そして、傾斜した曲面状のフロントウインドウガラス4に対して、画像23を水平に映し出せるように向きを補正するためである。この場合、反射鏡29の傾斜は、車両中央側へ向かうに従い上がり勾配となるようなものとされる。例えば、左ハンドル車の場合、最も上側のコーナー部32は、右上隅となり、最も下側のコーナー部34は、左下隅となる。また、特に詳細には説明しないが、右ハンドル車の場合、上記とは反対に、最も上側のコーナー部32は、左上隅となり、最も下側のコーナー部34は、右下隅となる。図では、最も上側のコーナー部32と、最も下側のコーナー部34との両方に設けるようにしている。
【0034】
(5)傾けて設置された上記反射鏡29に対し、上記コーナー欠落部42〜44が水平になるように形成される。
【0035】
ここで、水平は、ケーシング22に収容されて、車体に取付けられた状態を基準としている。水平は、実質的に水平と見なせる程度の僅かな傾きを含むことができる。
【0036】
(6)或いは、上記基本形状が四角形の反射鏡29が、全てのコーナー部31〜34に対して、上記コーナー欠落部41〜44を有するようにしても良い(コーナー欠落部41は図示せず)。
【0037】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0038】
(1)ヘッドアップディスプレイ装置21は、ケーシング22の内部に備えられた画像表示器27が運転情報などの画像23を表示し、この画像23が、光路形成部品25によって車室2内へ導かれ、フロントウインドウガラス4に映し出される。これによって、乗員の前方、即ち、目線の先に上記画像23の虚像が見えるようになる。その結果、車両1のフロントウインドウガラス4を透して見える外部の風景26に上記画像23の虚像を重ねて表示させることができる。
【0039】
この際、光路形成部品25では、例えば、プロジェクター24からの画像23を画像表示器27(スクリーン)に投影し、または、液晶表示パネルや、VFD(蛍光表示管)などによって画像23を直接表示し、画像表示器27に表示された画像23を反射鏡28,29が反射させて車室2内へ導くようになっている。そして、反射鏡29に拡大鏡を用いることにより、画像23を大きく拡大することができる。
【0040】
そして、基本形状が四角形の反射鏡29が、4つのコーナー部31〜34のうちの少なくとも1つにコーナー欠落部42〜44を有するものとされた。これにより、コーナー欠落部42〜44を設けた分だけ、反射鏡29を、基本サイズが同じであっても、より小さなものにすることができる。よって、ヘッドアップディスプレイ装置21の小型化を図ることが可能となる。即ち、画像23の大型化とヘッドアップディスプレイ装置21の小型化という、相反する要求を両立させることが可能となる。その結果、車両1に対するヘッドアップディスプレイ装置21の設置スペースを小さくすることが可能となる。即ち、インストルメントパネル5内部の狭いスペースに対しても、大きな画像23を投影できるヘッドアップディスプレイ装置21を無理なく設置することができるようになる。
【0041】
(2)コーナー欠落部42〜44は、基本形状が四角形の反射鏡29の隣接する辺35〜38間を、直線、または、なだらかな曲線によって結ぶように切欠かれたものとされる。これにより、画像23の失われる部分を目立たなくすることができると共に、反射鏡29に対してコーナー欠落部42〜44を設け易くすることができる。
【0042】
(3)コーナー欠落部42〜44を、画像23における使用頻度の低い位置と対応するコーナー部32〜34に設けた。これにより、画像23にとって必要な部分を失わせることなく、また、乗員にコーナー欠落部42〜44の存在を知られることなく、コーナー欠落部42〜44を設けることができる。
【0043】
(4)コーナー欠落部42〜44を、ケーシング22内に傾斜配置された反射鏡29の対角位置となる、最も上側のコーナー部32と、最も下側のコーナー部34とのうちの少なくともいずれか1つに設けた。これより、最も上側のコーナー部32と、最も下側のコーナー部34との一方または両方がなくなるので、その分だけ、反射鏡29の高さ寸法を確実に小さくすることができる(h1>h2)。例えば、上下両方のコーナー部32,34をコーナー欠落部42,44とした場合、コーナー欠落部42〜44を設けない場合(h1)と比べて、反射鏡29の高さ寸法h2を、25%程度も小さくすることが可能となる。その結果、ヘッドアップディスプレイ装置21を上下方向に対して最大限に小型化または薄型化することができる。
【0044】
(5)傾けて設置された反射鏡29に対し、コーナー欠落部42〜44が水平になるように形成された。これにより、より少ない切欠き量でより効率的に反射鏡29の高さ寸法を小さくすることができる(h2>h3)。
【0045】
(6)或いは、基本形状が四角形の反射鏡29における、全てのコーナー部31〜34に対しコーナー欠落部41〜44(コーナー欠落部41、図示せず)を形成するようにしても良い。これにより、反射鏡29は、楕円形や長円形に近似した多角形状またはこれに類する比較的均整の良い形状となるので、反射鏡29の製造を容易化することができると共に、反射鏡29の取付けを容易化することができる。また、邪魔になるコーナー部31〜34の全てがなくなるので、反射鏡29の基本形状を一回り大きく形成することが可能となって、画面の更なる大型化を図ることもできるようになる。
【0046】
以上、この実施の形態の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。