(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422648
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】ケーブル接続構造、ケーブル接続キット、及び接続構造形成方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/113 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
H02G15/113
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-272761(P2013-272761)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-128338(P2015-128338A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】堀部 大
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
【審査官】
松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−204117(JP,A)
【文献】
特開平08−265953(JP,A)
【文献】
特開2011−221045(JP,A)
【文献】
特開2006−087219(JP,A)
【文献】
特開昭63−190512(JP,A)
【文献】
特開平11−144695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00−15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のケーブルシースを有するケーブル同士を接続するケーブル接続構造であって、
前記ケーブル同士の接続部を覆う透光性の樹脂部と、
前記樹脂部内に設置され前記樹脂部を透して視覚的に水の検出状態を表示する水検出センサと、を備え、
前記水検出センサは、前記ケーブルシースの表面に配置されている、ケーブル接続構造。
【請求項2】
前記水検出センサは、前記ケーブルの長手方向に沿って複数設置された、請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項3】
前記水検出センサは、前記ケーブルの周方向に沿って複数設置された、請求項1に記載のケーブル接続構造。
【請求項4】
前記ケーブルは、前記ケーブルシースの内部に内蔵された心線を有するケーブルであり、
前記複数の水検出センサの一部は、前記心線の表面に設置された、請求項2又は3に記載のケーブル接続構造。
【請求項5】
管状のケーブルシースを有するケーブル同士を接続する接続構造を構築するためのケーブル接続キットであって、
前記ケーブル同士の接続部を覆うための容器部材と、
前記容器部材を型として前記接続部を覆う透光性の樹脂部を前記容器部材内に形成するための樹脂材と、
前記容器部材内に設置され前記樹脂部を透して視覚的に水の検出状態を表示するための水検出センサと、を備え、
前記水検出センサは、前記ケーブルシースの表面に配置される、ケーブル接続キット。
【請求項6】
管状のケーブルシースを有するケーブル同士を接続する接続構造を構築するための接続構造形成方法であって、
前記ケーブル同士の接続部の近傍の前記ケーブルシースの表面に視覚的に水の検出状態を表示する水検出センサを設置するセンサ設置工程と、
前記接続部及び前記水検出センサを覆う容器部材を設置する容器部材設置工程と、
前記容器部材を型として前記容器部材内に樹脂材を投入し前記接続部及び前記水検出センサを覆う透光性の樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、を備えた接続構造形成方法。
【請求項7】
前記センサ設置工程では、前記水検出センサが前記ケーブルの長手方向に沿って複数設置される、請求項6に記載の接続構造形成方法。
【請求項8】
前記センサ設置工程では、前記水検出センサが前記ケーブルの周方向に沿って複数設置される、請求項6に記載の接続構造形成方法。
【請求項9】
前記ケーブルは、前記ケーブルシースの内部に内蔵された複数の心線を有するケーブルであり、
前記センサ設置工程では、前記複数の水検出センサの一部は前記心線の表面に設置される、請求項7又は8に記載の接続構造形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続構造、ケーブル接続キット、及び接続構造形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の電力ケーブル接続装置が知られている。この電力ケーブル接続装置は、電力ケーブルの導体同士を接続した導体接続部及び該導体接続部を覆う絶縁層を有するケーブル接続部と、ケーブル接続部を覆う保護外装部とを備えた電力ケーブル接続装置であって、保護外装部は、樹脂を含浸し得る性質を有する絶縁性の補強材をケーブル接続部に巻付けるかまたは被せることにより形成された補強用被覆体と、補強用被覆体に含浸され所定の条件で硬化する絶縁樹脂と、により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のケーブル接続構造においては、実際に不具合が発生する前に所定の措置を行うことが好ましく、不具合の予兆が事前に判りやすいことが望まれる。本発明は、ケーブル接続部の不具合の予兆を知ることができるケーブル接続構造、ケーブル接続キット、及び接続構造形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、1つの態様において、ケーブル同士を接続するケーブル接続構造であって、前記ケーブル同士の接続部を覆う透光性の樹脂部と、前記樹脂部内に設置され前記樹脂部を透して視覚的に水の検出状態を表示する水検出センサと、を備えたケーブル接続構造である。
【0006】
他の態様において、前記水検出センサは、前記ケーブルの表面に設置されてもよい。
【0007】
更に他の態様において、前記水検出センサは、前記ケーブルの長手方向に沿って複数設置されてもよい。
【0008】
更に他の態様において、前記水検出センサは、前記ケーブルの周方向に沿って複数設置されてもよい。
【0009】
更に他の態様において、前記ケーブルは、管状のケーブルシースと、当該ケーブルシースの内部に内蔵された心線と、を有するケーブルであり、前記水検出センサは、前記ケーブルシースの表面と前記心線の表面に設置されてもよい。
【0010】
本発明は、更に他の態様において、ケーブル同士を接続する接続構造を構築するためのケーブル接続キットであって、前記ケーブル同士の接続部を覆うための容器部材と、前記容器部材を型として前記接続部を覆う透光性の樹脂部を前記容器部材内に形成するための樹脂材と、前記容器部材内に設置され前記樹脂部を透して視覚的に水の検出状態を表示するための水検出センサと、を備えたケーブル接続キットである。
【0011】
更に他の態様において、前記水検出センサは、構築された前記接続構造において前記ケーブルの表面に設置されてもよい。
【0012】
本発明は、更に他の態様において、ケーブル同士を接続する接続構造を構築するための接続構造形成方法であって、前記ケーブル同士の接続部の近傍の所定の位置に視覚的に水の検出状態を表示する水検出センサを設置するセンサ設置工程と、前記接続部及び前記水検出センサを覆う容器部材を設置する容器部材設置工程と、前記容器部材を型として前記容器部材内に樹脂材を投入し前記接続部及び前記水検出センサを覆う透光性の樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、を備えた接続構造形成方法である。
【0013】
更に他の態様において、前記センサ設置工程では、前記水検出センサは前記ケーブルの表面に設置されてもよい。
【0014】
更に他の態様において、前記水検出センサが前記ケーブルの長手方向に沿って複数設置されてもよい。
【0015】
更に他の態様において、前記センサ設置工程では、前記水検出センサが前記ケーブルの周方向に沿って複数設置されてもよい。
【0016】
更に他の態様において、前記ケーブルは、管状のケーブルシースと、当該ケーブルシースの内部に内蔵された複数の心線と、を有するケーブルであり、前記センサ設置工程では、前記水検出センサは前記ケーブルシースの表面と前記心線の表面に設置されてもよい。
【0017】
本発明は、更に他の態様において、管状のケーブルシースと、当該ケーブルシースの内部に内蔵された複数の心線と、を有する多心ケーブル同士を接続するケーブル接続構造であって、前記心線同士が電気的に接続された複数の導電接続部を覆う透光性の樹脂部と、前記導電接続部のそれぞれの近傍に設置され前記樹脂部を透して視覚的に温度を表示する複数の温度センサと、を備えたケーブル接続構造である。
【0018】
本発明は、更に他の態様において、管状のケーブルシースと、当該ケーブルシースの内部に内蔵された複数の心線と、を有する多心ケーブル同士を接続する接続構造を構築するためのケーブル接続キットであって、前記心線同士が電気的に接続された複数の導電接続部を覆うための容器部材と、前記容器部材を型として前記導電接続部を覆う透光性の樹脂部を前記容器部材内に形成するための樹脂材と、前記導電接続部のそれぞれの近傍に設置され前記樹脂部を透して視覚的に温度を表示するための複数の温度センサと、を備えたケーブル接続キットである。
【0019】
本発明は、更に他の態様において、管状のケーブルシースと、当該ケーブルシースの内部に内蔵された複数の心線と、を有する多心ケーブル同士を接続する接続構造を構築するための接続構造形成方法であって、前記心線同士が電気的に接続された複数の導電接続部のそれぞれの近傍に視覚的に温度を表示する複数の温度センサを設置するセンサ設置工程と、前記導電接続部及び前記温度センサを覆う容器部材を設置する容器部材設置工程と、前記容器部材を型として前記容器部材内に樹脂材を投入し前記導電接続部及び前記温度センサを覆う透光性の樹脂部を形成する樹脂部形成工程と、を備えた接続構造形成方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーブル接続部の不具合の予兆を知ることができるケーブル接続構造、ケーブル接続キット、及び接続構造形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るケーブル接続構造を示す分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るケーブル接続キットの一例を示す図である。
【
図5】変形例に係るケーブル接続構造を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るケーブル接続構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るケーブル接続構造、ケーブル接続キット、及び接続構造形成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るケーブル接続構造1の分解斜視図であり、
図2はその断面図である。ケーブル接続構造1は、2本の多心電力ケーブル3同士を電気的に接続する構造である。ここでは、電力ケーブル3が3心ケーブルである場合を例として説明する。各電力ケーブル3は、管状のケーブルシース5と、ケーブルシース5の内部に内蔵された3本の心線7を備えている。心線7は、導体9と当該導体9を被覆する絶縁被覆11とを備えている。
【0024】
ケーブル接続構造1においては、電力ケーブル3同士の接続部21が形成されている。接続部21では、各電力ケーブル3のケーブルシース5の先端からそれぞれ3本の心線7が突出しており、各心線7では、導体9が絶縁被覆11の先端から突出している。そして、対応する3組の導体9同士が接続子13によって接続され、更に接続子13及び導体9の周りに自己融着テープ15が巻かれている。これにより、心線7同士が電気的に接続された導電接続部17が合計3箇所形成されている。また、電力ケーブル3は、ケーブルシース5の先端部の所定の範囲に巻き付けられたシーリングテープ23を有している。なお、接続部21は、3つの導電接続部17同士の間に挿入されたスペーサ(図示省略)を含んでもよい。接続子13としては、圧着接続子または圧接接続子などが考えられるが、本図面は、接続子13として圧着接続子を採用して説明する。
【0025】
ケーブル接続構造1は、接続部21の周りを覆う透光性のケース31と、ケース31を型として接続部21をモールド封止する透光性の樹脂部33とを備えている。樹脂部33の存在により、接続部21の外部からの電気的絶縁や接続部21への水分侵入防止が図られる。なお、
図1においては樹脂部33の図示を省略している。ケース31は、電力ケーブル3を挟む2つのパーツ31a,31bで構成されている。また、ケース31は、電力ケーブル3を引出すための引出口35を長手方向の両端に有している。上述のシーリングテープ23は、引出口35を超えてケース31の外側までの範囲でケーブルシース5の周りに巻き付けられている。この構成により、引出口35近傍において電力ケーブル3はシーリングテープ23の部分で樹脂部33に接触することになり、電力ケーブル3と樹脂部33との良好な密着性が得られる。
【0026】
また、ケース31の引出口35には、電力ケーブル3との隙間を塞ぐためのフィットテープ37(
図2)が巻き付けられている。ケース31は、樹脂部33の樹脂材料を内部に導入するための樹脂注入口39を有している。樹脂注入口39は樹脂材料の導入後に蓋部材で塞がれてもよい。また、ケーブル接続構造1は必ずしもケース31を備えていなくてもよい。この場合、注入した樹脂部33の硬化後にケース31を除去する。
【0027】
更に、ケーブル接続構造1は、ケース31内の各所に配置された水検出センサ41,42及び温度センサ43を備えている。
【0028】
水検出センサ41,42は、水を検出し検出状態を視覚的に表示する。水検出センサ41,42としては、例えば、水に接触したときに不可逆的に色調が変化する不可逆性の漏水検出シートが用いられる。この種の不可逆的な水検出センサを採用すれば、浸水の履歴を知ることが出来るので好ましい。
【0029】
水検出センサ41は、各電力ケーブル3のシーリングテープ23上に設置され、電力ケーブル3の長手方向に沿って複数個(
図1,2の場合はそれぞれ2個)配列されている。水検出センサ42は、各心線7の絶縁被覆11上に設置され、電力ケーブル3の長手方向に沿って複数個(
図1,2の場合はそれぞれ2個)配列されている。各水検出センサ41,42は、何れも電力ケーブル3の表面に設置されている。電力ケーブル3の表面は、ケース31内に侵入する水の流路になり易いので、ケース31内に侵入する水を検出することができる。また、各水検出センサ41,42は、電力ケーブル3と樹脂部33とに挟まれるように両者の境界面上に設置されている。
【0030】
水検出センサ41,42は、例えば、引出口35を通じて外部からケース31内に侵入した水を検出することができる。更に水検出センサ42は、ケーブルシース5の内部45(
図1)を通じて外部からケース31内に侵入した水も検出することができる。ケース31内に侵入した水が導電接続部17に到達すれば接続部21の不具合の原因になり得るところ、水検出センサ41,42によれば、ケース31に侵入した水を導電接続部17に到達する前に検出することができる。また、水検出センサ41,42が、電力ケーブル3の長手方向に沿って複数個配列されることで、水がどの位置まで到達したかを知ることができる。なお、シーリングテープ23上の水検出センサ41や、心線7上の水検出センサ42を複数配列することは必須ではなく、それぞれ1個ずつの水検出センサ41,42が設置されてもよい。また、電力ケーブル3の周方向を覆うように全周に亘って延びる水検出センサ41、42が設置されてもよく、又は電力ケーブル3の周方向に沿って複数の水検出センサ41、42が設置されてもよい。
【0031】
また、ケース31と樹脂部33とが透光性を有するので、ケース31及び樹脂部33を透して水検出センサ41,42をケース31外から視認することができ、水の検出状態を知ることができる。よって、侵入した水に起因する接続部21の不具合の予兆を稼働中においても知ることができる。なお、水検出センサ41を見易くするため、フィットテープ37が巻かれる位置よりも導電接続部17に近い位置に水検出センサ41を設置することが好ましい。
【0032】
温度センサ43は、温度を検知し検知状態を視覚的に表示する、温度センサ43としては、例えば
図3に示されるように、高温に晒された示温スポットの色調が不可逆的に変化する不可逆性の示温ラベル44が用いられる。例えば、
図3に示された示温ラベル44は発色温度が80℃、90℃及び100℃である3つの示温スポット44a,44b,44cを有している。この種の不可逆的な温度センサ43を採用すれば、高温が発生した履歴を知ることが出来るので好ましい。発色温度は、示温ラベルを変更することにより、40℃から280℃まで設定可能であっても良い。また、示温ラベルの各示温スポットの発色温度は10℃刻みの設定に限定されず、他の温度刻みで設定されてもよい。また、温度センサ43は1つの示温スポットを有するものであってもよい。
【0033】
温度センサ43は、各導電接続部17の自己融着テープ15上に1つずつ設置されており、各導電接続部17における高温発生の履歴を検出することができる。また、ケース31と樹脂部33とが透光性を有するので、ケース31及び樹脂部33を透して各温度センサ43をケース31外から視認することができ、高温発生の履歴を知ることができる。導電接続部17における高温発生は、例えば断線などの不具合の予兆であるところ、この不具合の予兆を稼働中においても知ることができる。
【0034】
また、各導電接続部17のそれぞれに独立して温度センサ43が設置されている。よって、各導電接続部17が三相(例えば、赤相、青相、及び白相)の何れであるかを視覚的に区別可能であれば、三相の何れかの不具合の予兆を個別に知ることができる。また、三相を視覚的に区別可能とするためには、三相に対応する心線7の絶縁被覆11をそれぞれ違う色にしてもよく、また、目印となるラベルを各温度センサ43に隣接して貼付してもよい。
【0035】
水検出センサ41,42及び温度センサ43をケース31の外側から視認可能とするために、樹脂部33は以下のような透光性を有することが好ましい。樹脂部33の透光性は、作業者が観察することになる光の透過方向、観察対象としたい箇所の肉厚、等を考慮して樹脂部33の透明度を調節するとよく、ケーブル接続構造1が成形された状態においてセンサ41〜43が配置された部分に介在する樹脂部33の光透過率が、400−700nmで25〜100%の範囲で調整されれば良い。また、ケース31の光透過率は樹脂部33のみを介してセンサ41〜43を観察する場合は、考慮する必要が無く、ケース31と樹脂部33とを介してセンサ41〜43を観察する場合は、ケース31と樹脂部33の組み合わせ時における光透過率が、400−700nmで25〜100%の範囲で調整されれば良い。
【0036】
また、上述の透光性、及びケーブル接続構造1に要求される電気的特性を実現するために、樹脂部33を構成する樹脂材料としては、例えば、シリコーン、変性シリコーン、エポキシ、ウレタン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムまたはそれらの組み合わせなどを採用することができる。その中でもシリコーンを採用した場合、ケーブル接続構造1が解体可能でありかつ耐紫外線性を有するので好ましい。
【0037】
本発明者らが実験的に作製した樹脂材料について説明する。ここで作製した樹脂材料は、2種の液体材料を混合反応させて生成させるものである。2種類の液体材料としては、WACKER社製の市販品(WACKER SilGel 612 Part A 及び WACKER SilGel 612 Part B)を使用した。WACKERSilGel 612 Part A 及び WACKER SilGel 612 Part Bの混合割合を変えながら樹脂材料No.1, No.2, 及びNo.3の3種類を作製した。なお、上記3種類のうちWACKER社が推奨する混合割合は樹脂材料No.2のものである。各樹脂材料No.1, No.2, 及びNo.3の特性を測定して下表1に示した。低電圧(600V以下)用ケーブル同士の接続構造に用いる樹脂材料としては、樹脂材料No.1を採用することが好ましい。また、樹脂材料No.1が、JCAA specification (JCAA A101)規格に示されたPowerfrequency withstand voltage、Heating cycle、及びWater tightnessの条件を満足することも、本発明者らが実験によって確認した。
【表1】
【0038】
続いて、上述したケーブル接続構造1を構築するためのケーブル接続キットの一例について説明する。
図4に示されるように、ケーブル接続キット2には、ケース31のパーツ31a,31bと、樹脂材34と、シール状の水検出センサ41,42と、シール状の温度センサ43と、テープ類47(自己融着テープ15、フィットテープ37など)と、がセットとして含まれている。樹脂材34は、例えば、袋に収納された2種の液体材料34a,34bを含む。液体材料34a,34bは、混合されたときに反応し樹脂部33を形成する。なお、
図4においては、ケーブル接続キット2の各構成要素の形状や寸法等を誇張して描写している場合があり、
図4における構成要素の寸法比は必ずしも他の図面とは一致しない。
【0039】
続いて、上述したケーブル接続構造1を構築するための接続構造形成方法の一例について説明する。この接続構造形成方法は、上記のケーブル接続キット2を用いて実行される。
【0040】
まず公知の方法で電力ケーブル3同士が接続され接続部21が形成される。次に接続部21周辺の所定の位置に水検出センサ41,42と温度センサ43とが貼付される(センサ設置工程)。前述のとおり、水検出センサ41は、各電力ケーブル3のシーリングテープ23上に設置され、水検出センサ42は、各心線7の絶縁被覆11上に設置される。温度センサ43は、各導電接続部17の自己融着テープ15上に1つずつ設置される。
【0041】
その後、接続部21の周囲にケース31のパーツ31a,31bが設置され、接続部21を覆うケース31が組み立てられる(容器部材設置工程)。その後、ケース31の両端にフィットテープ37が巻かれ、樹脂材34の2種の液体材料34a,34bが混合されて、樹脂注入口39からケース31内に流し込まれる。その後、液体材料34a,34bが反応して硬化することでケース31を型として樹脂部33が形成され、樹脂部33によって接続部21がモールド封止される(樹脂部形成工程)。以上でケーブル接続構造1が完成する。なお、樹脂部形成工程の後、ケース31が除去されてもよい。
【0042】
図5に示されるケーブル接続構造101にも、ケーブル接続構造1が備える水検出センサ41,42と温度センサ43とを適用することができる。ケーブル接続構造101は、ケース31に代えて、接続部21の周囲に設置されたメッシュスペーサ105と、メッシュスペーサ105の周囲に巻き付けられた透光性のPVCテープ131とを備えている。PVCテープ131は、樹脂部33を形成する樹脂部形成工程において、型として機能する。この構造では、PVCテープ131に設けられた圧入口139を通じて、圧入ガン(図示省略)により樹脂材料がメッシュスペーサ105内に圧入される。そして、メッシュスペーサ105内で硬化した樹脂材料が樹脂部33を形成し接続部21をモールド封止する。なお、
図5においては、樹脂部33の図示が省略されている。
図5のケーブル接続構造101において、
図2のケーブル接続構造1と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るケーブル接続構造について説明する。
図6に示されるケーブル接続構造201では、複数(ここでは2本)のケーブル203の導体同士が圧着接続子13で圧着接続されている。ケーブル接続構造201は、ケーブル203の被覆部205の表面に設置された水検出センサ41と、ケーブル203同士の接続部221及び水検出センサ41を覆う透光性の樹脂部233と、樹脂部233を収納する透光性の可撓性容器231と、を備えている。ケーブル203の表面上のすべての水検出センサ41が樹脂部233に埋め込まれる深さまで、接続部221が樹脂部233に埋め込まれている。なお、可撓性容器231の開口231aがブチルゴム系のパテ材料で封止されたり、テープ等で縛られてもよい。接続部221が樹脂部233に埋め込まれることにより、接続部221の外部からの電気的絶縁や接続部221への水分侵入防止が図られる。
【0044】
ケーブル接続構造201を構築する場合、樹脂部233の2種の液体材料を可撓性容器231で混合し、未硬化の状態の樹脂部233にケーブル203同士の接続部221を挿入してもよい。または、2種の液体材料を可撓性容器231で混合して硬化させ、硬化後の樹脂部233にケーブル203同士の接続部221を挿入してもよい。硬化後の樹脂部233に接続部221を挿入する方法においては、例えば、前述のWACKER SilGel 612 Part A とWACKER SilGel 612 PartBとの配合を82.5:100とし、室温で24時間以上または60℃で1時間硬化させたものを樹脂部233とすることができる。上記の配合によれば、硬化後の樹脂部233は、接続部221を挿入できる程度に軟らかく、かつ可撓性容器231から容易に流出しない程度の硬さとなる。
【0045】
この種のケーブル接続構造201においても、樹脂部233内のケーブル203の表面に水検出センサ41を設置することにより、侵入した水を接続部221に到達する前に検出することができ、不具合の予兆を知ることができる。また、水検出センサ41が、ケーブル203の長手方向に沿って複数個配列されることで、水がどの位置まで到達したかを知ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。例えば、第1実施形態は電力ケーブル3として3心ケーブルの接続構造を例として説明したが、本発明は単心ケーブルや3心ケーブル以外の多心ケーブルにも適用することができる。また、電力ケーブルとてしは低電圧用ケーブルや高電圧用ケーブルにも適用できる。そして、ケーブルの線材は単線や撚り線など他様々な線材や電線が適用できる。第1実施形態における接続部21は、3つの導電接続部17を束ねるように巻き付けられた透明の絶縁テープ(図示省略)を含んでもよい。第1実施形態における温度センサ43は、各導電接続部17上に接触して設置されているが、各導電接続部17の高温発生を十分に検知できるような近傍であれば、導電接続部17から離間して設置されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ケーブル接続構造、2…ケーブル接続キット、3…多心電力ケーブル、5…ケーブルシース、7…心線、17…導電接続部、21…接続部、31…ケース(容器部材)、31a.31b…パーツ(容器部材)、33…樹脂部、34…樹脂材、41,42…水検出センサ、43…温度センサ、45…内部。