(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.第1の実施の形態]
以下には、本発明による第1の実施の形態として、系統安定化システムの実施の形態を
図1〜
図4を用いて説明する。本実施形態の系統安定化システムは、電力系統で事故を検出した場合に、当該事故の除去後の系統モデルを用いて潮流計算を行う。本実施形態の系統安定化システムでは、その潮流計算の計算結果から、過負荷発生箇所の検出と、検出した過負荷箇所を解消するための制御対象の選択と制御を行う。
【0013】
[1−1.構成]
図1は、本発明の電力系統の保護システムの概略を示す構成図である。本実施形態の系統安定化システム1は、電力系統Eから系統情報を取得し、その系統情報に基づいて過負荷箇所の検出、及び検出した過負荷箇所を解消するための制御対象の選択と制御を行う。系統安定化システム1は、系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4、事後系統モデル作成部5、過負荷解消制御対象選択部6、出力部7とを備える。
【0014】
系統データ収集部2は、電力系統Eにおける系統情報を一定周期で収集する。系統データ収集部2は、電力系統内の各電気所に設置される各種機器とネットワークを介してオンラインで接続され、系統情報としてSV情報、TM情報を収集する。SV情報とは、電力系統内の遮断器CB、線路開閉器LS、及び保護リレー等の動作情報であり、TM情報とは、母線電圧や、送電線、変圧器、発電機等の対象系統内の各箇所の潮流の情報である。
【0015】
系統モデル作成部3では、系統データ収集部2で収集したSV情報及びTM情報から系統モデルの作成を行う。系統モデル作成部3では、系統情報記憶部3aと、モデル生成部3bとを備える。
【0016】
系統情報記憶部3aは、系統データ収集部2で収集した電力系統内の各電気所におけるSV情報及びTM情報を記憶する。
【0017】
モデル作成部3bは、系統情報記憶部3aに記憶された情報を元に系統モデルP1の作成を行う。
図2は、SV情報、TM情報及び系統モデルの一例を示す図である。モデル生成部3bで作成する系統モデルP1は、電力系統Eにおけるノードデータ、ブランチデータ、発電機データから構成されている。ノードは母線、負荷、発電機を、ブランチは送電線、変圧器を示す。
【0018】
ノードデータは、電力系統Eに設置されたノードを区別するために各ノードに付された識別番号、ノードの種類を示すノードタイプ、各ノードにおける有効電力、無効電力、電圧等からなる。このうち、有効電力、無効電力、電圧は、電力系統Eにおいて時々刻々と変化するデータである。
【0019】
ブランチデータは、電力系統Eに設置されたブランチを区別するために各ブランチに付された識別番号、ブランチの始端ノード、ブランチの終端ノード、運用回線数、インピーダンス等からなる。このうち、運用回線数は電力系統Eにおいて系統運用操作および系統事故の除去等により変化するデータである。
【0020】
発電機データは、電力系統Eに設置された発電機データを区別するために各発電機データに付された識別番号、定格容量、定格出力、内部定数等の発電機の情報を示すデータからなる。
【0021】
以上のデータからなる系統モデルP1は、系統解析シミュレーションにおける潮流計算を行う際のデータである。系統モデルP1を入力データとして潮流計算を行うことにより、系統各部の電圧、潮流値を求めることができる。
【0022】
モデル作成部3bでは、系統モデルP1のデータのうち、時々刻々と変化するデータ、すなわちノードの有効電力、無効電力、電圧、ブランチの運用回線数を、一定周期で書き換えることにより、系統モデルP1を作成する。情報を取得できない電気所のTM情報については、状態推定機能を用いて補完する。
【0023】
作成した系統モデルP1は、系統モデル作成部3に図示しないデータベースに記憶される。系統モデルP1の作成は、SV情報及びTM情報を収集する度ごとに行われる。
【0024】
事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4は、電力系統で発生した事故及び当該事故の除去の検出と、モデル作成部3bにおける系統モデルP1の作成の凍結、および後述する事後演算機能の起動信号の出力を行う。事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4は、事故検出部4a、系統モデル凍結部4b、及び事後演算起動部4cとを備える。
【0025】
事故検出部4aは、電力系統で発生した事故及び当該事故の除去の検出を行う。電力系統で発生した事故は、系統情報収集部2から取得した各電気所の事故検出信号により検出する。また、当該事故の除去の検出は、系統情報収集部2から取得したCB入切情報または潮流値から送電線、変圧器の遮断を検出することで行う。
【0026】
系統モデル凍結部4bは、電力系統の事故を検出した場合に、モデル作成部3bで作成する電力系統のモデルP1の作成を凍結する。これにより事故発生前に作成した電力系統のモデルP1が事前系統モデルP2となる。
【0027】
事後演算起動部4cは、電力系統の事故の除去を検出した場合に事後演算機能を起動する起動信号の出力を行う。事後演算機能は、事後系統モデルP3を作成し、その事後系統モデルP3に基づく潮流計算の結果により、電力系統内に過負荷箇所がなくなるように制御対象の選択を行うための演算機能である。事後演算機能を実現するために、事後系統モデル作成部5と、過負荷解消制御対象選択部6とを備える。
【0028】
事後系統モデル作成部5は、凍結した前記事前系統モデルP2と、事故除去後の前記電力系統の情報に基づいて事後系統モデルP3の作成を行う。事後系統モデル作成部5は、事前系統モデル記憶部5a、事後系統情報記憶部5b、及び事後系統モデル作成部5cとを備える。
【0029】
事前系統モデル記憶部5aは、系統モデル凍結部4bにて凍結した事前系統モデルP2を記憶する。
【0030】
事後系統情報記憶部5bでは、事後演算起動部4cから出力された起動信号を受けた時点で系統情報収集部2から取得した系統情報を記憶する。事後演算起動部4cによる起動信号は、電力系統の事故の除去を検出した後に出力させるため、事後系統情報記憶部5bに記憶される系統情報は、事故の除去後の系統情報である。
【0031】
事後系統モデル作成部5cでは、事前系統モデル記憶部5aに記憶した系統モデルP2に、事後系統情報記憶部5bに記憶した系統情報を反映して事後系統モデルP3を作成する。事後系統モデルP3の作成は、凍結した事前系統モデルP2に対して、事故除去または系統操作による送電線、変圧器の遮断を、対応するブランチの運用回線数の削減または対応するブランチの削除として反映することで行う。これにより、事故後の系統モデルP3が作成できる。
【0032】
過負荷解消制御対象選択部6は、事後系統モデルP3に基づいて電力系統における過負荷箇所の有無の判定を行い、その判定結果に基づいて電力系統内の制御対象の選択を行う。過負荷解消制御対象選択部6は、過負荷判定部6a、制御対象選択部6bとを備える。
【0033】
過負荷判定部6aでは、事後系統モデルP3を用いて潮流計算を実施し、過負荷箇所の有無を判定する。
【0034】
制御対象選択部6bでは、制御対象として効果的な負荷乃至発電機を選択し、選択した制御対象の遮断を反映した事後系統モデルを入力として潮流計算を行い過負荷箇所の有無を判定する。制御対象選択部6bでは、この処理を、過負荷箇所がなくなるまで繰り返すことにより、過負荷解消のための制御対象を選択する。
【0035】
出力部7は、制御対象選択部6bにて決定した制御対象に対して制御指令を出力すると共に、運用者に対して制御対象選択部6bにて決定した制御対象を示す動作表示乃至系統運用操作ガイダンスの表示指令を出力する。出力部7は、制御出力部7aと、警報出力部7bとを備える。
【0036】
制御出力部7aは、制御対象選択部6bにて決定した制御対象に対して制御指令を出力する。制御指令は、電力系統内の制御機器に対して伝送され、制御機器の遮断が実行される。また、制御出力部7aは、系統モデル凍結部4bに対して、系統モデルP1の凍結を解除する指示である事前系統モデル凍結解除指令を出力する。系統モデル凍結部4bでは、事前系統モデル凍結解除指令が入力すると、凍結していた電力系統モデルP1の凍結が解除され、系統モデルP2の作成が再開される。
【0037】
警報出力部7bは、運用者に対して制御対象選択部6bにて決定した制御対象に対する制御を行った場合の系統運用の表示を行う。系統安定化システム1は、図示しない表示部を備える。警報出力部7bは、この表示部に対して、制御対象選択部6bにて決定した制御対象を示す系統運用操作ガイダンスの表示指令を出力する。表示部に動作表示乃至系統運用操作ガイダンスが表示されることで、運用者は、制御内容を把握することができる。動作表示は、制御が実施された際に制御内容を表示するものであり、系統運用操作ガイダンスは制御が必要なことを運用者に促し、運用者が手動で制御を行うものである。動作表示と系統運用操作ガイダンスのどちらを表示するかは一方固定としても、切替可能としてもよい。
【0038】
[1−2.システム動作]
以上のような構成を有する
図1の系統安定化システム1の動作の概略は次の通りである。
図3は、系統安定化システム1の一連の処理を示すフローチャートである。
【0039】
系統安定化システム1では、電力系統Eにおける系統情報を定周期で収集する(S01)。収集した系統情報より、系統モデルP1が作成される(S02)。
【0040】
系統モデルP1の作成は、電力系統内で事故が発生するまで継続して行われる(S03のNO)。電力系統内で事故が発生した場合には(S03のYES)、系統モデルP1の作成を凍結し、事前系統モデルP2とする(S04)。その後、当該事故が除去されたかの確認を行う(S05)。事故の除去の検出ができない場合には、一定時間の後、再度事故が除去されたかの確認を行う(S05のNO)
【0041】
事故の除去の検出ができた場合(S05のYES)には、事前系統モデルP2に対して、事故除去または系統操作による送電線、変圧器の遮断を、対応するブランチの運用回線数の削減または対応するブランチの削除として反映することで、事後系統モデルP3の作成を行う(S06)。その後、作成した事後系統モデルP3を用いて潮流計算を実施し(S07)、過負荷箇所の有無を判定する(S08)。過負荷箇所が無いと判定した場合には(S08のNO)、発生した事故の影響により過負荷が発生した箇所が無いと判定し、系統モデルP1の作成の凍結を解除する。
【0042】
一方、過負荷箇所が有ると判定した場合には(S08のYES)、過負荷を解消するために、制御を行う制御対象として効果的な負荷乃至発電機を選択する(S09)。
そして、選択した制御対象の遮断を反映した事後系統モデルP3を入力として潮流計算を実施し(S10)、過負荷箇所の有無を判定する(S11)。一方、過負荷箇所が有ると判定した場合には(S11のYES)、新たな制御対象を選択し、選択した制御対象の遮断を反映した事後系統モデルP4を入力として潮流計算を実施し、過負荷箇所の有無を判定する(S9〜11)。これを過負荷箇所が無くなるまで実施する。そして、過負荷箇所が無くなった場合には、選択された制御対象に対して、制御指令を出力し、その旨を運用者に対して出力し、事前系統モデルP1の作成の凍結を解除する(S12)。
【0043】
過負荷箇所を解消するための制御対象の選択方法としては様々な方法があるが、ここではその一例として、負荷制限対象の選択方法例を、
図4を用いて説明する。同図はメッシュ系統の一例であり、電気所S−A間の送電線において事故が発生し、事故除去により同送電線が遮断された後、電気所R−A間の送電線で過負荷が発生したケースを示している。同図中系統内の潮流の向きおよび大きさを、矢印の向きおよび太さで示している。
【0044】
まず、系統内の変電所を、過負荷判定部6aにて求められた過負荷箇所(電気所R−A間のブランチ)を介して潮流が流入する電気所(電気所A)を制御電気所として選択し、その制御電気所の中で負荷ノードを選択し、過負荷が解消できるかを潮流計算で確認する。過負荷が解消できない場合は、制御電気所(電気所A)から潮流が流入する先の電気所(電気所BまたはF)のうち、潮流値が大きい電気所(電気所B)を、次の制御電気所とし、その制御電気所の中で負荷ノードを追加で選択し、過負荷が解消できるかを潮流計算で確認する。
【0045】
過負荷が解消できない場合は次の制御電気所(電気所F)について、上記と同様の処理を行う。上記の処理を過負荷が解消されるまで繰り返すことによって、過負荷解消のための制御対象選択を行う。同一の電気所内の負荷ノード選択方法としては、予め設定した優先順位に従って選択する方法、制御量が最小となる負荷ノードの組合せを選択する方法、またはそれらの方法の組合せ等がある。また、一つの電気所内での負荷の全停が許容されない場合には、負荷ノードの選択可否を設定できるようにし、選択方法に反映することも考えられる。上記は負荷制限対象の選択方法例を述べたが、電源制限対象についても同様の方法で制御対象の選択を行うこともできる。
【0046】
[1−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0047】
(1)事後系統モデルP3に基づいて、電力系統における過負荷箇所の有無の判定を行うため、事前の過負荷発生箇所の想定および適正な制御量の算出が難しいメッシュ系統やループ系統でも過負荷を検出し、過負荷解消制御を行うことができる。
【0048】
(2)一定周期で電力系統が情報を収集し、その情報に基づいて系統モデルP1の作成を行っている。そして、事故の検出とともに系統モデルP1の凍結を行い、事前系統モデルP2とする。
【0049】
(3)事前系統モデルP2と、事故除去後の電力系統の情報に基づいて事後系統モデルP3の作成を行う。これにより、事故除去後の電力系統の情報から事後系統モデルP3を作成する場合と比較して、事後の系統動揺がなくなるまで待つ必要がないため、短時間で事後系統モデルP3の作成を行うことができる。
【0050】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
系統安定化システム1の第2実施形態について、
図5、
図6を用いて説明する。第2の実施形態は、事故除去後の系統情報を使って、事後系統モデルP3を作成し、潮流計算を行うことを特徴とする。事故除去後に系統モデルP3を作成する場合、系統動揺があると正しいTM情報が得られないため、正しい系統モデルが作成できない。そこで、本実施形態では、系統動揺収束判定部9を設けている。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
図5は、本実施形態に係る系統安定化システム1を示すブロック図である。本実施形態の系統安定化システム1は、事後演算起動判定部8、系統動揺収束判定部9、事後系統モデル作成部10、過負荷解消制御対象選択部6、出力部7とを備える。系統動揺収束判定部9と、事後系統モデル作成部10と、過負荷解消制御対象選択部6は、事後演算起動判定部8での起動判定成立によって起動する、事後演算機能である。系統情報収集部2、過負荷解消制御対象選択部6、出力部7については、実施例1と同様のため、説明は省略する。
【0052】
事後演算起動判定部8は、電力系統で発生した事故及び当該事故の除去の検出、および後述する事後演算機能の起動信号の出力を行う。事後演算起動判定部4は、事故検出部4a、及び事後演算起動部4cとを備える。
【0053】
系統動揺収束判定部9は、系統情報収集部2から取得した系統情報を用いて、系統の動揺が収束したかどうかの判定を行う。系統動揺の収束判定の方法としては、対象系統内のブランチの通過潮流の動揺振幅が所定値以下に収まることを確認し、系統動揺収束判定成立とする等、様々な方法がある。また、判定用の所定値を、ユーザによる可変設定としても良い。
【0054】
事後系統モデル作成部10は、系統動揺収束判定部9において系統動揺収束判定が成立した場合、現在の系統情報に基づいて系統モデルを作成する。この系統モデルが事後系統モデルP3となる。事後系統モデルの作成方法については、系統モデル作成部3と同様である。
【0055】
[2−2.システム動作]
以上のような構成を有する
図5の系統安定化システム1の動作の概略は次の通りである。
図6は、系統安定化システム1の一連の処理を示すフローチャートである。
【0056】
系統安定化システム1では、電力系統Eにおける系統情報を一定周期で収集する(S01)。収集した系統情報に基づいて、電力系統内における事故の発生を監視する(S03)。電力系統内で事故が発生した場合には(S03のYES)、当該事故が除去されたかの確認を行う(S05)。事故の除去の検出ができない場合には、一定時間の後、再度事故が除去されたかの確認を行う(S05のNO)。
【0057】
事故の除去の検出ができた場合(S05のYES)には、当該事故の影響による系統動揺が収束したかの確認を行う(S13)。系統動揺の収束が確認できない場合には、一定時間の後、再度系統動揺の収束の確認を行う(S13のNO)。
【0058】
系統動揺の収束が確認できた場合(S13のYES)には、事後系統モデルP3の作成を行う(S05)。その後、作成した事後系統モデルP3を用いて潮流計算を実施し、過負荷箇所の有無を判定する。過負荷箇所が無いと判定した場合には(6のNO)、発生した事故の影響により過負荷が発生した箇所が無いと判定する。
【0059】
一方、過負荷箇所が有ると判定した場合には(6のYES)、過負荷を解消するために、制御を行う制御対象として効果的な負荷乃至発電機を選択する。出力部は、過負荷を解消するために選択した制御機器に対して制御指令を出力すると共に、事前系統モデルP1の作成の凍結を解除する(S12)。
【0060】
[2−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0061】
(1)事後系統モデルP3に基づいて、電力系統における過負荷箇所の有無の判定を行うため、事前の過負荷発生箇所の想定および適正な制御量の算出が難しいメッシュ系統やループ系統でも過負荷を検出し、過負荷解消制御を行うことができる。
【0062】
(2)事故後の系統情報を用いて事後系統モデルを作成するため、正確な系統モデルを作成することができる。これにより、過負荷判定部6aでの演算および判定の精度を高めることができる。その結果、制御の高精度化を図ることができる。また、系統動揺が収束するまで待つ必要があるが、過負荷制御は過負荷状態発生から数十〜数百秒オーダの制御であるため、制御の仕上がり時間上支障はない。
【0063】
[3.第3実施形態]
[3−1.構成]
系統安定化システム1の第3実施形態について、
図7、
図8を用いて説明する。第3実施形態は、電力系統において、実際に過負荷状態が発生していることを確認して制御を実施することを特徴としている。そこで、本実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、過負荷検出部11及び過負荷箇所確認部12cを設けている。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図7は、本実施形態に係る系統安定化システム1を示すブロック図である。本実施形態の系統安定化システム1は、系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4、事後系統モデル作成部5、過負荷解消制御対象選択部12、出力部7、及び過負荷検出部11とを備える。系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4、事後系統モデル作成部5、及び出力部7については、第1実施形態と同様のため、説明は省略する。
【0065】
過負荷検出部11では、系統情報収集部2から取得した系統情報を用いて、電力系統で実際に過負荷が発生している箇所を検出する。過負荷検出部11は、事後演算機能の一部として事故除去後に起動する方法と、常時処理する方法のどちらでも同等の機能が得られる。また、過負荷箇所の検出は、系統情報収集部2から取得した各箇所の潮流値が所定値を所定時間継続して超過することを判定して行う。
【0066】
過負荷箇所確認部12cでは、第1実施形態の過負荷判定部6aにて判定した過負荷箇所と過負荷検出部11にて検出した過負荷箇所を照合確認する。
【0067】
[3−2.システム動作]
以上のような構成を有する
図7の系統安定化システム1の動作の概略は次の通りである。
図8は、系統安定化システム1の一連の処理を示すフローチャートである。
【0068】
系統安定化システム1では、電力系統Eにおける系統情報を定周期で収集する処理(S01)から、過負荷箇所の有無を判定(S11)までは、第1実施形態と同様である。本実施形態においては、潮流計算の結果、過負荷箇所が無いと判定した場合には(S11のNO)、電力系統の実系統上に過負荷箇所があるかの確認を行う(S15)。電力系統の実系統上に過負荷箇所がない場合には、発生した事故の影響により過負荷が発生した箇所が無いと判定し、事前系統モデルの作成の凍結を解除する(S15のNO)。
【0069】
一方、実系統上に過負荷箇所が有ると判定した場合には(S15のYES)、過負荷箇所の比較を行う。過負荷箇所の照合確認は、過負荷判定部6aでの判定結果と、過負荷検出部11での検出結果が一致しているか否かで判定する(S16)。
【0070】
一致していると判定した場合には(S16のYES)、過負荷判定部6aで選択した制御対象に対して、制御指令を出力し、その旨を運用者に対して出力し、事前系統モデルP1の作成の凍結を解除する(S12)。
【0071】
[3−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、過負荷箇所の判定結果を、電力系統の実系統における過負荷の検出箇所と照合確認することにより、より正確な制御を行うことができる。また、不要制御防止の効果も得られる。
【0072】
また、本実施形態においては、過負荷検出部11における電力系統で実際に過負荷が発生している箇所を検出後に、事後演算機能を起動させても良い。例えば、過負荷検出部11で過負荷の発生箇所の検出を行った際に、事後系統モデル作成部5に対して起動信号を送信する。事後系統モデル作成部5では、事後演算起動部4cからの起動信号と、過負荷検出部11からの起動信号との入力基づいて、事後系統モデルの作成を行うようにしても良い。
【0073】
前述の通り、事後演算起動部4cの起動信号は、事故検出部4aによる系統情報収集部2から取得した各電気所の事故検出信号に基づいて出力される。一方、過負荷検出部11では、系統情報収集部2から取得した系統情報を用いて、電力系統で実際に過負荷が発生している箇所を検出する。この様に事後系統モデル作成部5の起動条件を、各電気所からの事故検出信号に基づく起動信号と、実際の系統情報を用いた過負荷検出に基づく起動信号の両方の入力とする所謂AND条件とする。これにより、一方の起動信号の入力のみをトリガーとする場合と比較して、系統での事故の発生を高精度で判定することができ、不要制御防止の効果を更に高くすることができる。
【0074】
また、ユーザの要望や設置場所の条件に合わせて、事後系統モデル作成部5の起動条件を各電気所からの事故検出信号に基づく起動信号の入力と、実際の系統情報を用いた過負荷検出に基づく起動信号の入力のいずれかとする所謂OR条件としても良い。OR条件であれば、各電気所からの事故検出信号に基づく起動信号のみで事後系統モデル作成部5の作成を行うことができるのは当然として、実際の系統情報を用いた過負荷検出に基づく起動信号の入力のみで事後系統モデル作成部5の作成を行うことができるので、想定事故以外の原因によって過負荷箇所が発生した場合や、伝送不良などにより各電気所からの事故検出信号が送られない場合にでも、電力系統内の過負荷箇所を解消させる制御を行うことが可能となる。
【0075】
[4.第4実施形態]
[4−1.構成]
系統安定化システム1の第4実施形態について、
図9、
図10を用いて説明する。第4の実施形態は、実系統で過負荷が発生しているにもかかわらず、潮流計算を用いた過負荷判定部6aで過負荷が検出されない場合、バックアップ制御機能により制御が実施できることを特徴とする。本実施形態では、第3実施形態の構成に加えて、バックアップ制御部16を設けている。なお、第3の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0076】
図9は、本実施形態に係る系統安定化システム1を示すブロック図である。本実施形態の系統安定化システム1は、系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動部4、事後系統モデル作成部5、過負荷解消制御対象選択部6、出力部7、過負荷検出部11及びバックアップ制御部16とを備える。系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4、事後系統モデル作成部5、過負荷解消制御対象選択部6、出力部7、及び過負荷検出部11については、第3実施形態と同様のため、説明は省略する。
【0077】
バックアップ制御部16は、実系統で過負荷が発生しているにもかかわらず、潮流計算を用いた過負荷判定部6aで過負荷が検出されない場合、バックアップ制御機能により制御を実施する。バックアップ制御部16は、バックアップ制御起動部16aと、バックアップ制御パターン記憶部16bと、バックアップ制御パターン選択部16cを備える。
【0078】
バックアップ制御起動部16aは、過負荷検出部11において実系統で過負荷箇所が検出されているにもかかわらず、過負荷判定部6aでは過負荷を検出していない場合や、過負荷判定部6aと過負荷検出部11の結果が一致しない場合、バックアップ制御を起動する。
【0079】
バックアップ制御パターン記憶部16bでは、バックアップ制御用の制御パターンを記憶している。ここで制御パターンとは、制御対象の選択の組合せを指す。バックアップ制御パターンは、想定事故が発生した場合の制御量を、オフライン事前シミュレーション等により求め、予め装置に設定しておく。
【0080】
バックアップ制御パターン選択部16cでは、バックアップ制御パターン記憶部16bに記憶した制御パターンから、過負荷検出部11が検出した過負荷を解消するための制御パターンを選択し、制御対象として出力部7に出力する。
【0081】
[4−2.システム動作]
以上のような構成を有する
図9の系統安定化システム1の動作の概略は次の通りである。
図10は、系統安定化システム1の一連の処理を示すフローチャートである。
【0082】
系統安定化システム1では、電力系統Eにおける系統情報を一定周期で収集する処理(S01)から、過負荷判定部6aで判定した過負荷箇所が、過負荷検出部11で検出した過負荷箇所と一致しているかの照合確認(S16)までは、第3実施形態と同様である。本実施形態においては、過負荷箇所の照合確認は、過負荷判定部6aでの判定結果と、過負荷検出部11での検出結果が一致しているか否かで判定の結果、一致していないと判定した場合には、バックアップ制御パターン記憶部16bに記憶した制御パターンから、過負荷検出部11が検出した過負荷を解消するための制御パターンを選択し(S17)、制御対象に対して制御指令を出力し、事前系統モデルP1の作成の凍結を解除する(S12)。
【0083】
[4−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、第3の実施形態の効果に加えて、実系統で過負荷が発生しているにもかかわらず、潮流計算を用いた過負荷検出部11で過負荷検出がない場合や、過負荷判定部6aで判定した過負荷箇所と過負荷検出部11で検出した過負荷箇所が一致しない場合でも、バックアップ制御により制御を実施できるので、制御の信頼性向上と誤不動作防止の効果が得られる。
【0084】
[5.第5実施形態]
[5−1.構成]
系統安定化システムの第5実施形態について、
図11を用いて説明する。第5の実施形態は、第1実施形態における系統安定化システム1に、機能試験のための系統情報模擬機能を持たせたことを特徴とする。本実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、試験用系統情報記憶部13、系統情報切替部14、及び出力ロック部15を設けている。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0085】
図11は、本実施形態に係る系統安定化システム1を示すブロック図である。本実施形態の系統安定化システム1は、系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4、事後系統モデル作成部5、過負荷解消制御対象選択部6、出力部7、試験用系統情報記憶部13、系統情報切替部14、及び出力ロック部15とを備える。系統情報収集部2、系統モデル作成部3、事前系統モデル凍結・事後演算起動判定部4、事後系統モデル作成部5、過負荷解消制御対象選択部6、及び出力部7については、第1実施形態と同様のため、説明は省略する。
【0086】
試験用系統情報記憶部13では、ヒューマンインターフェイス機能等を介して入力した試験用系統情報を記憶する。なお、試験用系統情報は、オンライン系統情報の全情報を模擬する方法と、一部の情報のみ模擬する方法がある。
【0087】
系統情報切替部14では、系統モデル作成部3以降の処理で使用する系統情報を、系統情報収集部2から取得した実系統の系統情報に切替え、システム試験時には試験用系統情報記憶部13に記憶した試験用系統情報に切替える。
【0088】
出力ロック部15では、制御指令および動作表示乃至系統運用操作ガイダンス表示が試験中に不要に出力されないように、必要に応じて出力部7の処理をロックする。出力ロック部15の起動は、系統情報切替部14の切替条件に連動させて系統情報が試験用系統情報に切替られた時に起動する方法や、独立したユーザ設定を設ける方法がある。
【0089】
[5−2.システム動作]
以上のような構成を有する
図11の系統安定化システム1の動作の概略は次の通りである。試験用系統情報に基づいてシミュレーションを行う場合には、運用者は試験用系統情報記憶部13に対して、ヒューマンインターフェイス機能を利用して試験用系統情報の入力を行う。
【0090】
次に、運用者は、入力した試験用系統情報を利用し、試験が実施できるように、系統モデル作成部3で使用する系統情報を、系統情報収集部2から取得した実系統の系統情報から、試験用系統情報記憶部13に記憶した試験用系統情報に切替える。
【0091】
そして、出力部7より制御指令や動作表示乃至系統運用操作ガイダンス表示の指示が実際に出力されないように、出力ロック部15により、必要に応じて出力部をロックする。
【0092】
[5−3.効果]
以上のような構成及び作用を有する本実施形態によれば、実系統の系統情報の代わりに試験用系統情報を入力することにより、系統安定化システム1の機能を容易に確認することができる。
【0093】
[6.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0094】
第3実施形態において、第1実施形態の構成に過負荷検出部11及び過負荷箇所確認部12cとを付け加えたが、第2実施形態の構成に過負荷検出部11及び過負荷箇所確認部12cとを付け加えることもできる。
【0095】
第5実施形態において、第1実施形態の構成に試験用系統情報記憶部13、系統情報切替部14、及び出力ロック部15を付け加えたが、第2実施形態、第3実施形態乃至第4実施形態の構成に試験用系統情報記憶部13、系統情報切替部14、及び出力ロック部15を付け加えることもできる。