(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他の一つを前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記二次側成形体とが分離されて、別部材として用いられ、前記一次側成形体と二次側成形体とは、同一の材料により形成され、前記一次側成形体と二次側成形体のそれぞれの分離位置には、そのいずれか一方にガイド凹部が形成され、そのいずれか他方にガイド凸部が形成され、前記ガイド凹部とガイド凸部とが相対的に摺動可能に構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他の一つを前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記二次側成形体とが分離されて、別部材として用いられ、
筆記芯が受ける筆記圧に基づいて回転カムを回転駆動させる回転駆動機構を備え、前記回転カムの回転運動を前記筆記芯に伝達するように構成したシャープペンシルであって、
前記回転駆動機構は、前記回転カムを回転可能にかつ軸方向に移動可能に支持する樹脂成形されたホルダー部材と、前記ホルダー部材に取り付けられ、前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す作用を与える樹脂成形された摺動部材とが具備されると共に、筆記芯が受ける筆記圧に基づく前記回転カムの軸方向の移動によって、前記回転カムに回転運動を与えるように構成され、
前記ホルダー部材には軸方向に長いガイド凸部として機能する柱状体が形成されると共に、前記摺動部材には前記柱状体に対応したガイド凹部として機能するガイド部が形成されることにより、前記摺動部材が前記柱状体に対してスライド可能に取り付けられ、かつ前記回転カムを軸方向の前方に向かって押し出す付勢力を与えるクッションスプリングが、前記摺動部材に当接して配置され、
前記ホルダー部材および摺動部材とが、前記一次側成形体と二次側成形体のいずれか一方および他方を構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他の一つを前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記二次側成形体とが分離されて、別部材として用いられ、
内部に流動体の貯留部を設けて、使用開始前は流動体の吐出口を栓体でシールした状態を維持する軸本体と、穂先を保持して使用開始前はストッパーを介して軸本体に接合した状態を維持するが、使用する時にストッパーを外してその分だけ軸方向に移動して、軸本体に対して接合する先軸と、先軸の内部に配設されて先軸が軸本体に対し接合する際の移動により、前記軸本体の前端開口部に配置された口蓋に取り付けられた前記栓体に当たって、その栓抜きを行うことにより貯留部から穂先への流動体の供給を可能とする流動体導通管とを備えてなる流動体の塗布具であって、
前記口蓋および栓体が、前記一次側成形体と二次側成形体のいずれか一方および他方を構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他の一つを前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記二次側成形体とが分離されて、別部材として用いられ、
ノック操作部をノック操作することにより、筆記体を口先部より出没させるノック式筆記具であって、
溝状のハートカムが形成されたハートカム回転子と、前記ハートカム回転子に施されたハートカムに接触する接触子を備えたハートカム回転子の支持体とによりノック繰り出し機構が構成され、前記ノック操作の繰り返しにより、前記ノック繰り出し機構によって、筆記体を口先部より突出させた状態、および筆記体を口先部内に没入させた状態を順次繰り返すように構成され、
前記ノック繰り出し機構を構成するハートカム回転子およびハートカム回転子の支持体が、前記一次側成形体と二次側成形体のいずれか一方および他方を構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他の一つを前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記二次側成形体とが分離されて、別部材として用いられ、
繰り出しノブの操作により、軸筒の尾端部から消しゴムを繰り出すことができる消しゴム受け台が備えられたシャープペンシルであって、
前記消しゴム受け台は、軸方向に沿って切欠き溝が形成された軸回転される繰り出しノブと、前記繰り出しノブ内に配置されて前記切欠き溝に沿って軸方向に移動可能であると共に、消しゴムを保持した消しゴムホルダーとにより構成され、
前記消しゴムホルダーに形成された係止突起が、前記消しゴム受け台を収容する内周面に螺旋状に形成された繰り出しねじのねじ溝に螺合された状態で配置され、
前記消しゴム受け台を構成する消しゴムホルダーおよび繰り出しノブが、前記一次側成形体と二次側成形体のいずれか一方および他方を構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他の一つを前記一次側成形体の表面の一部を利用した二次側成形体として二色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記二次側成形体とが分離されて、別部材として用いられ、
前端部に筆記芯の先端パイプを出没可能にする開口が形成され、内部に前記先端パイプが取り付けられたスライダーを摺動可能に配置したスライダーカバーを備えたシャープペンシルであって、
前記スライダーカバーには、軸方向に沿って案内溝が形成されると共に、前記スライダーには前記案内溝内を移動する突起が軸芯から外側に向かって形成されており、
前記スライダーカバーおよびスライダーが、前記一次側成形体と二次側成形体のいずれか一方および他方を構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
複数の樹脂成形部材が備えられ、前記樹脂成形部材の少なくとも一つを一次側成形体として形成し、前記樹脂成形部材の少なくとも他を前記一次側成形体の表面に沿った複数の多次側成形体として多色成形により形成し、
前記一次側成形体と前記多次側成形体とが分離されて、それぞれ別部材として用いられ、前記一次側成形体と多次側成形体とは、同一の材料により形成され、前記一次側成形体と多次側成形体のそれぞれの分離位置には、そのいずれか一方にガイド凹部が形成され、そのいずれか他方にガイド凸部が形成され、前記ガイド凹部とガイド凸部とが相対的に摺動可能に構成したことを特徴とする筆記具または塗布具。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明に係る筆記具または塗布具を、筆記動作に伴い筆記芯を除々に回転させることができるシャープペンシルに利用した例について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分もしくは同一の機能を果たす部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面については代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0025】
先ず
図1、
図2、
図4に示すように、軸筒1の先端部には、飾りリング2が取り付けられた口先部材3が螺合されることで、口先部材3は軸筒1に対して着脱可能に取り付けられている。
前記軸筒1の軸芯に沿って筒状の芯ケース4が収容されており、この芯ケース4の先端部には短軸の芯ケース継手5が取り付けられ、前記芯ケース継手5を介して真ちゅう製のチャック6が連結されている。
【0026】
前記チャック6内には、その軸芯に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、またチャック6の先端部が周方向に複数(例えば3つ)に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具7内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具7は前記チャック6の周囲を覆うようにして配置された回転駆動機構21の一部を構成する回転カム23の先端部内面に装着されている。
【0027】
前記回転カム23の前端部には、前記した口先部材3内に収容されて、その前端部が口先部材3より突出されるスライダー9が、回転カム23の外周面を覆うようにして嵌合されて取り付けられ、さらにスライダー9の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ10がパイプ保持具11を介して取り付けられている。
また、前記スライダー9の内周面における前記した先端パイプ10の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が装着されている。
【0028】
前記した構成により、芯ケース4に続くチャック6内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ10に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。そして、前記した回転カム23と芯ケース継手5との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0029】
すなわち、前記チャックスプリング13は、その前端部が回転カム23の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手5の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の軸方向の拡開作用により、前記チャック6は回転カム23内を後退して、その先端部がリング状の締め具7内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0030】
前記した回転カム23を含む筆記芯の回転駆動機構21は、その外郭がホルダー部材22により構成され、このホルダー部材22に円柱状に形成された前記回転カム23が回転可能にかつ軸方向にスライド可能に装着されている。
【0031】
また、前記ホルダー部材22内の後半部には、ホルダー部材22に対して軸方向にスライド可能となるように、円筒状に形成された摺動部材24が装着されており、この摺動部材24内には金属製のクッションスプリング25が配置されている。このクッションスプリング25の一端は前記摺動部材24の前端部内面に当接し、摺動部材24を介して前記回転カム23に対して、当該回転カム23を軸方向の前方に押し出す作用を与えている。
【0032】
また、前記ホルダー部材22の後端部には、樹脂により成形された中栓26が嵌め込まれて前記クッションスプリング25の後端部を受けており、前記中栓26の後端部には、円環状のアンダーカット部26aが形成され、このアンダーカット部26aによって中栓26は軸筒1内において嵌合されて固定されている。
【0033】
さらに前記中栓26の中央部は、周方向に複数のスリットを形成することで蛇腹状になされており、この蛇腹構造によりスプリング体26bを構成し、このスプリング体26bの作用により、前記ホルダー部材22を前方に向かって押し出すように構成されている。
これにより、ホルダー部材22の一部を軸筒内に形成された段部1aに当接させて、ホルダー部材22を含む回転駆動機構21の位置決めを果たしている。
【0034】
なお、前記回転カム23、摺動部材24、中栓26の内側面は、前記した芯ケース4を通す空間部になされており、これにより芯ケース4およびチャック6等は独立して軸方向に移動可能になされている。
そして、前記回転駆動機構21は、ホルダー部材22、回転カム23、摺動部材24、中栓26等を備えてユニット化されており、このユニット化された回転駆動機構21の構成については、
図5以降に基づいて後で詳細に説明する。
【0035】
図1および
図3に示されているように、軸筒1の後端部にはクリップ31aが一体に形成された円筒状のクリップ支持体31が、軸筒1の内周面に嵌合されて取り付けられている。また、前記クリップ支持体31および軸筒1内に沿って円筒状に形成されたノック棒32が装着されており、このノック棒32の前端部と、前記した中栓26の後端部との間には軸スプリング33が装着され、ノック棒32を軸筒の後部に向かって突出させる作用を与えている。
なお、前記ノック棒32の外径が太くなされた段部32cが、前記クリップ支持体31の内周面の一部に軸方向に当接することで、ノック棒32の抜け止めが構成されると共に、ノック棒32の位置決めを果たしている。
【0036】
前記ノック棒32の後端部には、消しゴム34が着脱可能に装着されると共に、前記消しゴム34を覆うノックカバー35が、ノック棒32の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
前記ノック棒32における消しゴム34の装着位置には、小口径になされた筆記芯の補給孔32aが形成され、その直前には軸に直交するようにして当接部32bが形成されている。
【0037】
加えて、ノック棒32に形成された当接部32bと、前記した芯ケース4の後端部とは、軸方向に所定の間隔をもって対峙した構成にされている。
この構成によると、筆記に伴いチャック6および芯ケース4が若干後退しても、芯ケース4の後端部が前記ノック棒32に衝突することはなく、前記回転駆動機構21の回転動作に障害を与えるのを避けることができる。
【0038】
以上の構成において、前記したノックカバー35をノック操作することにより、前記した軸スプリング33は収縮し、ノック棒32の当接部32bが芯ケース4を前方に押し出す。これにより、チャック6が前進してスライダー9を若干前方に押し出す。しかしスライダー9の一部が口先部材3内に当接してその前進が阻まれるため、チャック6の先端部が締め具7から相対的に突出してチャック6による筆記芯の把持状態が解除される。
そして、前記ノック操作を解除することにより、前記軸スプリング33の作用により、ノックカバー35は元の状態に後退すると共に、チャックスプリング13の作用によりチャック6および芯ケース4も軸筒1内において後退する。
【0039】
この時、筆記芯は保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により一時的に保持されており、この状態でチャック6が後退してその先端部が前記締め具7内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。
すなわち、ノックカバー35のノック操作の繰り返しによりチャック6が前後に移動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック6から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0040】
図5〜
図11は、筆記芯の回転駆動機構21の外郭を構成するホルダー部材22を示している。このホルダー部材22は、その中央部に円筒部22aが形成され、この円筒部22aの内周面が前記回転カム23を回転可能に、かつ軸方向に移動可能に支持する機能を果たす。
【0041】
前記円筒部22aの一端部側、すなわち回転駆動機構21を軸筒1内に装着した状態における前端部側には、軸方向に長い一対の弾性部材22bが軸対称の位置(180度対向する位置)にそれぞれ形成されている。この一対の弾性部材22bは前記した中央の円筒部22aに一体に樹脂成形により形成され、かつ細長く形成されることで弾性作用が付与されている。
【0042】
そして、一対の弾性部材22bにおける円筒部22a側の基端部、すなわち前記円筒部22aの端面には円環状に連続して鋸歯状に成形された多数のカム(これを、第1固定カムという。)22cが形成されている。
また、一対の弾性部材22bの先端部には、それぞれ鋸歯状に形成されたカム(これを、第2固定カムという。)22dが形成されている。
なお、前記第2固定カム22dは、前記弾性部材22bの長手方向の先端部から軸芯に向かって、若干鈍角に屈曲した傾斜面上に成形されている。
【0043】
前記した中央の円筒部22aの他端部側、すなわち回転駆動機構21が軸筒1内に装着された状態における後端部側には、軸方向に伸びる一対の柱状体22eが軸対称の位置に形成されており、この柱状体22eを介して第2円筒部22fが前記円筒部22aと一体に成形されている。
【0044】
加えて、前記ホルダー部材22における前記した一対の柱状体22eおよび第2円筒部22fに囲まれた領域には円筒状に形成された摺動部材24が装着されている。この摺動部材24の前端部には、鍔部24aが軸方向に直交するように突出して形成されており、この鍔部24aにおける前記一対の柱状体22eに対峙する位置には、
図9に断面図で示したとおり、凹状のガイド部24bが形成されている。
また、前記摺動部材24の後端部は、円筒状に形成されて摺接部24cを構成している。すなわち、この摺接部24cは、
図11に示すように前記したホルダー部材22の第2円筒部22fの内周面に摺接する機能を果たす。
【0045】
そして、この実施の形態においては、前記一対の柱状体22eは、周方向の幅寸法が軸方向において同一となるように直線状に構成されており、かつ一対の柱状体22eの内側間の対向寸法が軸方向において同一となるように構成されている。
したがって、前記鍔部24aに形成された凹状のガイド部24bが、前記一対の柱状体22eに沿ってスライドすることで、前記摺動部材24は回転が阻止されつつ、ホルダー部材22内を軸方向に往復移動するように作用する。
【0046】
また、前記摺動部材24の円筒状の前端面には、周方向にほぼ等間隔をもって半球状の小突起24dが形成されている。これらの小突起24dは前記した回転カム23の後端部に当接して回転カム23を前方に押し出す作用を与えつつ、回転カム23の後端面との間で滑りが生ずるように機能する。
【0047】
なお、前記したホルダー部材22の前記柱状体22eの内側面は、摺動部材24を一次側成形体として利用して、二色成形される。
この実施の形態においては、二色成形を実行するにあたって、一次側成形体としての摺動部材24はPOMにより成形し、摺動部材24の一部の外側面を利用して二色成形される前記柱状体22を含むホルダー部材22も、同一の樹脂素材であるPOMを用いて二次成形される。
【0048】
前記したとおり、摺動部材24のガイド部24bの外形を利用して、ホルダー部材22の柱状体22eを二色成形することにより、ホルダー部材22における前記柱状体22eは、摺動部材24に形成される前記ガイド部24bの形状に転写された状態で成形される。これにより、両者間のクリアランスを限り無く小さく成形することができる。
【0049】
また、一次側成形体と二次側成形体とに、同一の素材であるPOMを利用することで、二色成形後において両者は貼り付くことなく分離され、しかもPOM同志は互いに潤滑性(滑り)が良好であるという特質を生かすことができ、前記ホルダー部材22に対する摺動部材24の軸方向の移動も抵抗なく円滑になし得ることができる。
なお、前記した摺動部材24を一次側成形体とし、前記ホルダー部材22を二次側成形体として二色成形する一例については、
図23に基づいて後で説明する。
【0050】
図12〜
図15は、前記したホルダー部材22の軸方向の前方に、回転カム23を装着すると共に、ホルダー部材22の後端部側にクッションスプリング25および中栓26を装着することで、ユニット化された回転駆動機構21を構成した状態を示している。
前記回転カム23は円筒状に形成されると共に、中央部が大径部になされ、その大径部の軸に直交する上下の面には、円環状に連続して多数の鋸歯状のカム23a,23bがそれぞれ形成されている。なお、以下においては前記ホルダー部材22の第1固定カム22cに噛み合うカム23aを上側のカムと称呼し、第2固定カム22dに噛み合うカム23bを下側のカムと称呼する。
【0051】
そして、前記回転カム23の回転軸23cを、ホルダー部材22に形成された一対の弾性部材22b側から押し込むことで、一対の弾性部材22bは互いに外側に押し広げられつつ、回転軸23cは円筒部22a内に収容される。これにより、回転カム23はホルダー部材22に対して回転可能に、かつ軸方向に移動可能に装着される。
【0052】
なお、この実施の形態においては、前記下側のカム23bは円錐形状に成形された傾斜面上に成形されており、これに噛み合う第2固定カム22dは、前記したとおり弾性部材22bの長手方向の先端部から軸芯に向かって、若干鈍角に屈曲した傾斜面上に成形されている。したがって、この形態によると前記したクッションスプリング25の作用により回転カム23が軸方向の前方に向かって付勢されるので、回転カム23の軸芯がホルダー部材22の軸芯に一致した理想的な噛み合い状態を実現させることができる。
【0053】
一方、前記ホルダー部材22の第2円筒部22fには、その後端部より中栓26が嵌め込まれ、前記したクッションスプリング25を、前記摺動部材24内に装着した状態で、回転駆動機構21が構成されている。
すなわち前記中栓26には、
図15に断面図で示したとおり、その前端部が外径を細くした嵌合部26cが形成されている。
【0054】
したがって、先ずクッションスプリング25を摺動部材24内に装着した後に、前記嵌合部26cをホルダー部材の第2円筒部22fに対して後端部側から押し込むことで、
図12〜
図15に示す回転駆動機構21を形成させることができる。
そして、前記回転駆動機構21は、軸筒1の後端部側より挿入し、すでに
図1、
図2、
図4等に基づいて説明したとおり、中栓26のアンダーカット部26aを軸筒1内の所定の位置に嵌合させることで、前記回転駆動機構21は軸筒1内に装着される。
【0055】
以上のように構成された筆記芯の回転駆動機構21によると、
図2および
図4に示すようにチャック6が筆記芯を把持した状態で、前記回転カム23はチャック6と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記したクッションスプリング25の作用により、摺動部材24を介して回転カム23は前方に付勢されている。
【0056】
一方、筆記動作により先端パイプ10から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック6は前記クッションスプリング25の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転カム23も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転カム23に形成された鋸歯状の上側のカム23aは、前記第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされる。
【0057】
この場合、対峙した状態の上側のカム23aと第1固定カム22cは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように上側カム23aが第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされることによって、回転カム23は上側カム23aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0058】
そして、前記したように上側カム23aが第1固定カム22cに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の鋸歯状の下側カム23bと第2固定カム22dは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0059】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッションスプリング25の作用により回転カム23は軸方向に僅かに押し出されて前進し、回転カム23に形成された下側カム23bが、第2固定カム22dに噛み合う。これにより回転カム23は下側カム23bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0060】
以上のとおり、前記したシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転カム23の軸方向への往復運動(クッション動作)に伴って、回転カム23は上側カム23aおよび下側カム23bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記したチャック6を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0061】
図16〜
図19は、回転駆動機構21の第2の実施の形態を示したものであり、このうち
図16および
図17は、ホルダー部材22の構成を示している。
この第2の実施の形態においては、ホルダー部材22に形成された一対の柱状体22eの一部には、柱状体の周方向の幅寸法を縮小する段部22gが柱状体22eの幅方向の両側に形成されている。
すなわち、この実施の形態においては、前記段部22gは柱状体22eの長手方向の中央部において、長手方向のほぼ1/3を占める程度の長さに渡って形成されている。
【0062】
これは、すでに説明したとおりホルダー部材22に対して摺動部材24を二色成形するにあたり、ホルダー部材22と摺動部材24との位置関係は、
図16および
図17に示した位置関係においてなされる。すなわち、摺動部材24の鍔部24aは、ホルダー部材22の柱状体22eにおける円筒部22a寄りの位置において二色成形される。
そして、ホルダー部材22に対して回転カム23を装着した場合には、前記摺動部材24の鍔部24aの位置は、幅寸法を縮小する段部22gの形成位置に設定される。
【0063】
図18および
図19は、前記
図16および
図17に示すホルダー部材22を利用して回転駆動機構21を構成した場合の要部の断面図を示したものである。
この実施の形態によると、特に
図19に示すように、柱状体22eの内側面と摺動部材24のガイド部24bとの間のクリアランスは限り無く小さく設定されるのに対して、柱状体22eにおける幅方向において、ガイド部24cの凹部の両外側に若干のクリアランス(隙間g1)が発生するようになされる。
【0064】
この両外側に形成される隙間g1は、前記した段部22gを形成したことによるものとなる。したがって、前記ホルダー部材22を樹脂成形(一次成形)するに際して、前記段部22gの幅寸法を予め金型に反映しておくことで、前記ガイド部24cの両外側のクリアランスの調整をすることができる。
【0065】
次に
図20は、回転駆動機構21の第3の実施の形態を示したものであり、この例においては、ホルダー部材22に形成された一対の柱状体22eの周方向の幅寸法が、軸方向の後方に向かって僅かに縮小するテーパー形状を構成している。
すなわち、一対の柱状体22eにおける円筒部22a側の幅寸法をa1、第2円筒部22f側の幅寸法をa2とした場合、a1>a2の関係となるように構成されている。
【0066】
この構成によると、筆記圧が加わり前記回転カム23および摺動部材24が後退動作するに伴って、摺動部材24のガイド部24cの両外側と、前記柱状体22eとの間に生ずるクリアランス、すなわち
図19に示した隙間g1の発生度合いが大きくなるように作用する。したがって、ホルダー部材22を成形する際の前記した柱状体22eの幅寸法a1,a2を調整することで、適切なクリアランスの調整を図ることができる。
【0067】
図21および
図22は、回転駆動機構21の第4の実施の形態を示したものであり、この例においては、ホルダー部材22に形成された各柱状体22eを結ぶ内径寸法が、軸方向の後方に向かって僅かに拡大するテーパー形状を構成している。
すなわち、一対の柱状体22eにおける円筒部22a側における対向寸法をb1、第2円筒部22f側における対向寸法をb2とした場合、b1<b2の関係となるように構成されている。
【0068】
この構成によると、筆記圧が加わり前記回転カム23および摺動部材24が後退動作するに伴って、摺動部材24のガイド部24cと、前記柱状体22eとの間に生ずるクリアランスの発生度合いが大きくなるように作用する。したがって、ホルダー部材22を成形する際の前記した柱状体22eの対向寸法b1,b2を調整することで、適切なクリアランスの調整を図ることができる。
【0069】
ところで、前記したように筆記芯の回転駆動機構21を備えたシャープペンシルにおいては、筆記に伴い芯が前記したクッション動作を伴うために、独特の違和感が発生することが検証されている。特に筆記圧の解除により前記した回転カム23を前進移動させる金属製のクッションスプリング25を用いた場合には、筆記芯の後退動作において「ヘコヘコ」した感触が伴われ、また前記クッションスプリング25による戻り動作において「カチャカチャ」する感触が発生する。
【0070】
その原因としては、筆記芯に一定の加重(筆記圧)が加わった時に、突然後退動作が開始することが挙げられる。また、筆記圧が解除された時における前記クッションスプリング25による戻り動作のスピードが速く、このためにペンを浮かせた瞬間においても、紙面をペン先(筆記芯)が追従するという動作が発生する。したがって、いわゆるハネやハライなどの筆記操作を行った時に、ペン先を浮かせたつもりでも思ったところで筆記が終わらないという挙動が発生し、これらが相乗して前記した独特の違和感になるものと考えられる。
【0071】
前記した課題を解消するためには、前記した回転駆動機構21の一部にダンパー機能を持たせることで、前記したクッション動作が緩慢になされるように配慮することが望ましい。これを実現する好ましい例においては、
図15および
図18に示すようにホルダー部材22内における中栓26と摺動部材24との間の空間部に、粘着性媒体として例えば粘着性グリースGが封入される。
この構成によると、ホルダー部材22の内側面と、摺動部材24の外周面(
図18に示す摺接部24c)との間に、前記した粘着性グリースGが介在されるので、前記摺動部材24の軸方向の移動に前記したダンパー機能が付与される。
【0072】
前記したダンパー機能を付与させる粘着性グリースGとしては、そのちょう度が100〜400の範囲のものを用いることが望ましく、例えば信越化学工業社製の商品名「信越シリコーングリース」品番:G330〜334,G340〜342,G351〜353,G631〜633などを好適に利用することができる。
【0073】
ダンパー機能として前記した粘着性グリースGを利用することで、筆記芯の急激な軸方向への移動動作には大きな粘性抵抗が発生し、比較的緩慢に動く静的な荷重に対しては粘性抵抗が小さくなる。これにより、ペン先と紙面との接触時の衝撃を筆圧、筆記速度に応じて効果的に緩和させることが可能となる。
【0074】
図23は、前記した回転駆動機構21を構成するホルダー部材22と摺動部材24を樹脂成形する例を示したものである。すなわち
図23においては、摺動部材24が一次側成形体として、またホルダー部材22が二次側成形体として、二色成形される例を示している。
【0075】
図23(A)は、一次側成形体としての摺動部材24を成形する状態を示しており、第1金型101,第1コアピン103および第2コアピン104により形成されるキャビティ内において、摺動部材24が一次側成形体として成形される。
なお、前記第1金型101は図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号101aは第1金型101に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0076】
図23(B)は、一次側成形体としての摺動部材24が、第1金型101から離型された状態を示しており、摺動部材24は第1コアピン103に取り付けられた状態で第1金型101から離型される。
【0077】
そして、一次側成形体としての摺動部材24は、
図23(C)に示す第2金型102内に収容され、第1コアピン103および第3コアピン105により形成されるキャビティ内において、ホルダー部材22が二次側成形体として成形される。
なお、第2金型102においても、図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号102aは第2金型102に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0078】
この二次側成形体としてのホルダー部材22の成形時においては、一次成形された摺動部材24のガイド部24bの外形を利用して、ホルダー部材22の柱状体22eが成形される。したがって、ホルダー部材22における前記柱状体22eは、摺動部材24に形成される前記ガイド部24bの形状に転写された状態で成形される。これにより、両者間のクリアランスを限り無く小さく成形することができる。
【0079】
図23(D)は、一次側成形体としての摺動部材24と、二次側成形体としてのホルダー部材22が、第2金型102から離型された状態を示している。
この状態においてホルダー部材22に形成された一対の弾性部材22の間から、図示せぬ治具としての押し込みロッドを軸方向に挿入し、一次側成形体としての摺動部材24を軸方向に押し込むことで、ホルダー部材22に対して摺動部材24が分離する。これにより、
図5〜
図8に基づいてすでに説明したとおり、摺動部材24を内部に収容した状態のホルダー部材22を得ることができる。
【0080】
また、すでに説明したとおり、この実施の形態においては、一次側成形体としての摺動部材24、および二次側成形体としてのホルダー部材22は、共にPOMを用いて二色成形される。
【0081】
次に
図24〜
図26は、この発明を流動体の塗布具に利用した例を示している。
この
図24〜
図26に示す実施の形態は、インキや、マニキュア等化粧料などの流動体を塗布するための流動体の塗布具であり、より詳しくは、保管時や販売時等の使用開始前の状態においては、穂先への流動体の供給をストップしておき、購入者が使用する場合に、穂先へ流動体を導入させるようにした流動体の塗布具に関する。
【0082】
図24,
図25において、符号41で示す軸本体は樹脂製であり、内部に流動体の貯留部42が設けられ、前端に細径な接合筒部43を設けて、その外面の軸方向に位置が異なる2か所にそれぞれアンダーカットによる凸状の第1係止部44と第2係止部45を設けている。
軸本体41の前端開口部の内面部には口蓋46を嵌着し、その口蓋46に設けた通孔を流動体の吐出口47となし、その吐出口47に使用開始前の状態において円柱状の栓体48を水密に嵌合している(
図24参照)。
【0083】
先軸49は、樹脂製で先細状をしており、その内部に多数の繊維を束ねて先細状とした穂先50を、その先端が先端口から突出するように装着して保持している。先軸49の後端部は軸本体41の先端部の細径な接合筒部43の外周部に嵌着するように構成されている。また、先軸49の後端部における内面部には、前記第1係止部44と係合して仮接合の状態を維持すると共に、後述するストッパー51を外した状態で、軸本体41に対し先軸49を軸方向に押圧した場合に、前記した第2係止部45を弾性変形により乗り越えて係止することにより本接合状態となる凸状の係止部52を設けている。
【0084】
なお、先軸49は軸本体41と仮接合した状態で、その後端縁と軸本体41の外面段部53との間に後述するストッパー51におけるリング部54の幅とほぼ同一の隙間が生じるように、また軸本体41と本接合した状態で、その後端縁が軸本体41の外面段部53に当接するように寸法が設定されている。
【0085】
ストッパー51は樹脂製で、軸本体41における接合筒部43の根元部の外周部に嵌着する弾性変形可能なC状のリング部54と、そのリング部54に一体的に突設されたつまみ片55とから構成されている。そして軸本体41と先軸49が仮接合した状態で、両者の間にリング部54が介装された状態を維持するが、使用を開始する時につまみ片55を
図24の矢印方向に引っ張ってリング部54を弾性変形させてストッパー51を外し、軸本体41と先軸49の本接合を可能とする。
【0086】
先軸49の内部に配設される流動体の導通管57は、穂先50の後方位置に固定され、その内部の導孔58の前端部には、穂先50の内部に挿入された小径パイプ59の後端部が挿入されている。
導通管57はその後端に前記した口蓋46の吐出口47に貫通可能な細径の押入筒部60を設け、またそれより前方の外面部には、テーパー状のシール面61を設けており、軸本体41と先軸49が仮嵌合の状態では、押入筒部60の先端が栓体48に達することがなく、また軸本体41と先軸49が本接合された状態では、押入筒部60が吐出口47を貫通して栓体48を抜き、かつシール面61が口蓋46の開口縁に水密に当接するように寸法設定されている(
図25参照)。
【0087】
なお、吐出口47から抜かれた円柱状の栓体48は軸本体41の貯留部42に入る。そして、前記軸本体41の貯留部42内には、流動体の攪拌ボール62が収容されている。
また図には示されていないが、先軸49および穂先50覆う有底筒状のキャップが用意されており、このキャップの開口部が先軸49の根元部に装着されることで、軸本体41にキャップが同軸状となるように嵌合される。
【0088】
図26は、前記した栓体48と口蓋46とを二色成形する例を示したものである。すなわち
図26においては、栓体48が一次側成形体として、また口蓋46が二次側成形体として二色成形される。
【0089】
図26(A)は、一次側成形体としての栓体48を成形する状態を示しており、第1金型101,第1コアピン103により形成されるキャビティ内において、栓体48が一次側成形体として成形される。
なお、前記第1金型101は図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号101aは第1金型101に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0090】
図26(B)は、一次側成形体としての栓体48が、第1金型101から離型された状態を示しており、栓体48は第1コアピン103に取り付けられた状態で第1金型101から離型される。
【0091】
そして、一次側成形体としての栓体48は、
図26(C)に示す第2金型102内に収容され、第1コアピン103および第2コアピン104により形成されるキャビティ内において、口蓋46が二次側成形体として成形される。
なお、第2金型102においても、図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号102aは第2金型102に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0092】
この二次側成形体としての口蓋46の成形時においては、一次成形された栓体48における円柱状の外周面を利用して、口蓋46の一部が成形される。これにより口蓋46に栓体48が密着した状態で成形される。
【0093】
図26(D)は、一次側成形体としての栓体48と、二次側成形体としての口蓋46が、第2金型102から離型された状態を示している。
前記栓体48を中央部に密閉状態に取り付けた口蓋46は、
図24に示したとおり、軸本体41に取り付けられて、軸本体41内の流動体の吐出口を、前記栓体48でシールした状態維持する。
【0094】
そして、
図24および
図25に基づいて説明したとおり、ストッパー51を外して先軸49を押し込むことで、導通管57の押入筒部60が前記栓体48に当接し、栓体48は口蓋46から外れて、貯留部42内に入り、口蓋46に吐出口47が開口される。
なお、この実施の形態においても、一次側成形体としての栓体48、および二次側成形体としての口蓋46は、好ましくはそれぞれPOMを用いて二色成形される。
【0095】
図27〜
図31は、この発明をノック式ボールペンに利用した例を示している。
図27は、その全体構成を断面図で示したものであり、軸筒1の前端部には、口先部材3が螺合されることにより軸筒1に対して着脱可能に取り付けられている。
前記軸筒1内にはボールペンリフィール71が収容されており、このボールペンリフィール71の先端部に取り付けられたボールペンチップ71aが、後述するノックカバーのノック操作により、口先部材3から出没されるように構成されている。
また、ボールペンリフィール71と口先部材3との間には戻し用コイルスプリング72が配置され、この戻し用コイルスプリング72は、ボールペンリフィール71を後退する方向に付勢している。
【0096】
前記軸筒1の後半部にはクリップ73aが一体に成形された円筒状のクリップ支持体73が、軸筒1の内周面に嵌合されて取り付けられている。そして円筒状のクリップ支持体73内には、ハートカム回転子74と、このハートカム回転子74に施されたハートカムに接触する接触子を備えた回転子支持体75が配置されており、このハートカム回転子74と回転子支持体75とによりノック繰り出し機構76を構成している。なお、ノック繰り出し機構76については、
図28〜
図30に基づいて後述する。
【0097】
前記回転子支持体75は、円筒状のクリップ支持体73内に嵌合されて取付けられており、この回転子支持体75内に位置する前記ハートカム回転子74の前端部は、前記したボールペンリフィール71の後端部に当接している。したがって、ハートカム回転子74は、前記した戻し用コイルスプリング72の作用を受けて、前記ボールペンリフィール71を介して後退する付勢力を受けている。
そして、ハートカム回転子74の後端部は、ノックカバー77によって覆われており、前記ノックカバー77に形成された鍔部が、前記クリップ支持体73の内周面の一部に、軸方向で当接することにより、ノックカバー77が離脱しないように構成されている。
【0098】
図28〜
図30に示すノック繰り出し機構76は、前記したとおりハートカム回転子74と回転子支持体75とにより構成されている。
前記ハートカム回転子74には、円筒面の軸対称の位置、すなわち円筒面の表裏180度の位置に、符号74a〜74dで示す溝状のハートカムが、一巡するようにして形成されている。
このハートカムを構成する溝の深さは、
図29に示されているように、符号74aから74bに向かってせり上がり、符号74bにおいて深さが深くなる。これは符号74bから74cに至る経路、符号74cから74dに至る経路、さらに符号74dから74aに至る経路においても同様である。
【0099】
また、前記円筒部材75には、端部から一対の切り込み溝75aが形成されて、符号75bで示す可撓性が付与された領域が形成されている。そして領域75bで示す端部には、
図30に示されているとおり、軸中心方向に向かって突出する接触子75cが形成されている。すなわち前記接触子75cは、前記ハートカム回転子74に形成された符号74a〜74dで示す溝状のハートカム内に位置するように構成されている。
【0100】
前記したノック繰り出し機構を備えた
図27に示すボールペンにおいて、その尾端部のノックカバー77をノック操作すると、ハートカム回転子74とボールペンリフィール71が前方に向かって押し出される。
この時、ハートカム回転子74を支持する回転子支持体75に形成された接触子75cが、符号74a〜74dで示す溝状のハートカム内に位置し、ハートカム回転子74の軸方向の移動と共に符号74a〜74dで示す溝状のハートカム内を相対移動して、ハートカム回転子74を軸回転させる。
【0101】
したがって、ノックカバー77のノック操作の停止により、回転子支持体75に形成された接触子75cは、符号74cで示すハートカムを係止する。これにより、ハートカム回転子74の前進状態が保持され、ボールペンリチップ71aは口先部材3から突出した状態になされる。
また、ノックカバー77を再度ノック操作することにより、ハートカム回転子74とボールペンリフィール71はスプリング72の作用を得て後退し、回転子支持体75に形成された接触子75cは、符号74aで示すハートカムを係止する。これにより、ハートカム回転子74は後退し、ボールペンリチップ71aは口先部材3内に没入される。
【0102】
図31は、前記したノック繰り出し機構76を構成するハートカム回転子74と回転子支持体75を樹脂成形する例を示したものである。すなわち
図31は、ハートカム回転子74が一次側成形体として、また回転子支持体75が二次側成形体として、二色成形される例を示している。
【0103】
図31(A)は、一次側成形体としてのハートカム回転子74を成形する状態を示しており、第1金型101,第1コアピン103により形成されるキャビティ内において、ハートカム回転子74が一次側成形体として成形される。
なお、前記第1金型101は図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号101aは第1金型101に形成された樹脂注入用のランナーである。
したがって、ハートカム回転子74に形成される符号74a〜74dで示す溝状のハートカムは、第1金型101の離型方向に向かって形成される。
【0104】
図31(B)は、一次側成形体としてのハートカム回転子74が、第1金型101から離型された状態を示しており、ハートカム回転子74は第1コアピン103に取り付けられた状態で第1金型101から離型される。
【0105】
そして、一次側成形体としてのハートカム回転子74は、
図31(C)に示す第2金型102内に収容され、この第2金型102と第1コアピン103により形成されるキャビティ内において、回転子支持体75が二次側成形体として成形される。
なお、第2金型102においても、図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号102aは第2金型102に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0106】
この二次側成形体としての回転子支持体75を成形する際においては、一次成形されたハートカム回転子74の一部の外形を利用して成形される。特に回転子支持体75に形成される前記した接触子75cは、符号74aで示される溝状のハートカムにおける始端部を利用して二次成形される。
これにより、前記接触子75cは、
図30に示されたように軸中心方向に向かって突出した状態に成形される。
【0107】
図31(D)は、一次側成形体としてのハートカム回転子74と、二次側成形体としての回転子支持体75が、第2金型102から離型された状態を示している。
この状態において、ハートカム回転子74を回転子支持体75内に押し込むことで、回転子支持体75に突出形成された接触子75cは、ハートカム回転子74側から分離する。したがって、回転子支持体75におけるハートカム回転子74に摺動する部分は、摺動部分が転写された状態で成形される。これにより、両者間のクリアランスを限り無く小さく成形することができる。
【0108】
この実施の形態においても、すでに説明したとおり、一次側成形体としてのハートカム回転子74、および二次側成形体としての回転子支持体75は、共にPOMを用いて二色成形することが望ましい。
【0109】
次に
図32は、この発明をシャープペンシルの第2の例に利用した全体構成の断面図である。なお
図32においては、
図1〜
図4に基づいてすでに説明したシャープペンシルの各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は省略する。
この
図32に示すシャープペンシルの第2の例は、
図1〜
図4に示す筆記芯の回転駆動機構21を備えたシャープペンシルの機能に加え、尾端部から消しゴムを繰り出すことができる消しゴム受け台が装着されている。
【0110】
すなわち、
図32に示すシャープペンシルにおいては、軸筒1の後部に配置されたノック棒32には、その後端部の内周面に消しゴムの繰り出しねじ32dが、螺旋状に形成されている。そして、前記繰り出しねじ32dが形成されたノック棒32の円筒内空間には、繰り出しノブ81と消しゴムホルダー82とによる消しゴム受け台83が配置されている。
【0111】
図32に示すように前記繰り出しノブ81は、概ね円筒状に形成され、その尾端部が前記ノック棒32から突出して、筆記芯を繰り出す際のノック操作部を兼ねている。すなわち、繰り出しノブ81をノック操作することで、筆記芯を繰り出すことができる点は、
図1〜
図4に基づいてすでに説明した動作と同様である。
また繰り出しノブ81の尾端部の端面には、
図33に示すように消しゴム34が繰り出される開口81aが形成されている。
加えて、繰り出しノブ81の前半部における円筒面には、軸方向に沿う一対の切欠き溝81bが軸対称の位置に対向して形成されている。
【0112】
一方、前記消しゴムホルダー82は、前記繰り出しノブ81に形成された一対の切欠き溝81bに内接して摺動する二脚82aと、この二脚82aを連結する折り曲げ中央部の連結部82bにより、ほぼU字状に形成されている。そして、ほぼU字状に形成された二脚82aで囲まれた中央部分82cが、前記消しゴム34を保持する機能を果たしている。
【0113】
したがって、前記消しゴムホルダー82は、前記繰り出しノブ81内を軸方向に摺動可能に収容されている。
また、消しゴムホルダー82の前記二脚82aの前端部付近には、それぞれ外側に突出する一対の係止突起82dが形成されている。この一対の係止突起82dは、
図32に示したノック棒32に形成された繰り出しねじ32dのねじ溝に螺合するものである。
【0114】
以上説明した消しゴム受け台83が、
図32に示すようにシャープペンシルに組み込まれた状態において、前記繰り出しノブ81を一方向に軸回転させると、繰り出しノブ81の回転に伴って、内部に摺動可能に装着された消しゴムホルダー82も同方向に軸回転を受ける。
前記消しゴムホルダー82が軸回転することで、当該消しゴムホルダー82の前記二脚82aに形成された一対の係止突起82dが、前記ノック棒32に形成された繰り出しねじ32dのねじ溝に螺合しつつ、消しゴムホルダー82を軸方向に移動させる。
【0115】
したがって、消しゴムホルダー82に取り付けられた前記消しゴム34は、繰り出しノブ81に形成された開口81aから繰り出される。
なお、消しゴム34が開口81aから繰り出された状態において、前記繰り出しノブ81を他方向に軸回転させることで、前記と逆の作用により前記消しゴム34は繰り出しノブ81内に収容させることができる。
【0116】
図36は、前記した消しゴム受け台83を構成する繰り出しノブ81と消しゴムホルダー82を樹脂成形する例を示したものである。すなわち
図36においては、消しゴムホルダー82が一次側成形体として、また繰り出しノブ81が二次側成形体として、二色成形される例を示している。
【0117】
図36(A)は、一次側成形体としての消しゴムホルダー82を成形する状態を示しており、第1金型101,第1コアピン103形成されるキャビティ内において、消しゴムホルダー82が一次側成形体として成形される。
なお、前記第1金型101は図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号101aは第1金型101に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0118】
図36(B)は、一次側成形体としての消しゴムホルダー82が、第1金型101から離型された状態を示しており、消しゴムホルダー82は第1コアピン103に取り付けられた状態で第1金型101から離型される。
【0119】
そして、一次側成形体としての消しゴムホルダー82は、
図36(C)に示す第2金型102内に収容され、第2金型102と第1コアピン103により形成されるキャビティ内において、繰り出しノブ81が二次側成形体として成形される。
なお、第2金型102においても、図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号102aは第2金型102に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0120】
この二次側成形体としての繰り出しノブ81の成形時においては、一次成形された消しゴムホルダー82の前記した一対の脚部82aの外形(脚部82aの長手方向の両側縁)を利用して、軸方向に沿う一対の切欠き溝81bが成形される。したがって、一対の切欠き溝81bは、消しゴムホルダー82が形成される前記一対の脚部82aの外形に転写された状態で成形される。これにより、両者間のクリアランスを限り無く小さく成形することができる。
【0121】
図36(D)は、一次側成形体としての消しゴムホルダー82と、二次側成形体としての繰り出しノブ81が、第2金型102から離型された状態を示している。
この状態において、図示せぬ治具としての押し込みロッドを
図36(D)の矢印方向に押し込んで、繰り出しノブ81から消しゴムホルダー82を分離することにより、繰り出しノブ81内に消しゴムホルダー82を摺動可能に収容した消しゴム受け台83を得ることができる。
【0122】
またすでに説明したとおり、この実施の形態においても、一次側成形体としての消しゴムホルダー82、および二次側成形体としての繰り出しノブ81は、好ましくは共にPOMを用いて二色成形される。
【0123】
次に
図37および
図38は、この発明をシャープペンシルの第3の例に利用した全体構成および前半部を拡大して示した断面図である。なお
図37および
図38においては、
図1〜
図4に基づいてすでに説明したシャープペンシルの各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は省略する。
図37に示すシャープペンシルは、
図1〜
図4に示す筆記芯の回転駆動機構21を備えたシャープペンシルの機能に加え、先端パイプを必要に応じてスライダーカバー内に収容することができるように構成されている。
【0124】
図37および
図38に示すシャープペンシルは、先軸1Aと、後軸1Bとが中央部で直線状に連結されて軸筒を構成している。そして、先軸1Aを覆うようにして軟質ゴム製のグリップ1Cが捲装されている。
この実施の形態においては、筆記芯の回転駆動機構21は、後軸1B側に配置されており、前記回転駆動機構21とチャック6とは、中継パイプ92を介して連結されている。また、後軸1Bにはクリップに代えて、飾りバッチ93が取り付けられている。
【0125】
さらにこの実施の形態においては、
図38に拡大して示したとおり、前記した中継パイプ92の前端部に、スライダー9を軸方向に摺動可能に支持するスライダーカバー91が嵌合されて取り付けられている。
前記スライダーカバー91の前半部の一定の領域は、その内径が軸方向にほぼ等しく形成されており、このスライダーカバー91内に、先端パイプ10が取り付けられたスライダー9が、軸方向に摺動可能に収容されている。
【0126】
そして、スライダーカバー91の前端部中央には、
図39〜
図45に示されているように、前記先端パイプ10が出没できる開口91aが形成されている。
また前記スライダーカバー91の周側面には、軸対称の位置に軸方向に沿って一対の案内溝91bが形成されており、スライダー9には前記一対の案内溝91b内を移動する一対の突起9aが軸対称の位置に外側に向かって形成されている。
すなわち、スライダー9とスライダーカバー91は相対的なスライドは可能であるが、互いに分離されないように構成されており、これにより前記スライダー9および先端パイプ10の脱落を防止することができる。
また、スライダー9の突起9aとスライダーカバー91の案内溝91bを形成することで、残芯時に筆記する際もスライダー9の回転方向の空回りを防止することができる。
【0127】
図39(A)はスライダーカバー91に収容された前記スライダー9が前進した状態を示し、
図39(B)はスライダー9が後退した状態を示している。
すなわち、スライダー9が後退した状態においては、スライダー9に取り付けられた先端パイプ10は、スライダーカバー91内に収容される。これにより、不使用時においては先端パイプ10が突出していることによる不用意な怪我などを避けることができる。
【0128】
なお、
図39(B)に示すように先端パイプ10を後退させるには、ノックカバー35をノック操作してチャック6を解放し、このチャック6の解放状態で先端パイプ10を指先などでスライダーカバー91内に押し込むことで、先端パイプ10は筆記芯Lと共に後退する。
また、
図39(A)に示すように先端パイプ10を前進させるには、前記ノックカバー35をノック操作すると、チャック6が前進してチャック6の先端部によってスライダー9をスライダーカバー91内において前方に押し出す。したがって、スライダー9に取り付けられた先端パイプ10もスライダーカバー91内を前進してスライダーカバー91の前方に突出し、
図39(A)に示す状態となる。
【0129】
図39(A)に示したように、スライダー9が前進した筆記可能な状態においては、筆記に伴う前記したクッション動作により、前記した回転駆動機構21が回転駆動される。これに伴い、口先部材3から突出している前記スライダーカバー91も、筆記芯Lの回転と共に回転駆動を受ける。
【0130】
したがって、筆記する紙面等の直前に存在する前記スライダーカバー91の回転動作を、筆記しつつ容易に確認することができる。しかも前記スライダーカバー91には、
図39(A)に示されているように、スライダーカバー91に形成された案内溝91bから、スライダー9に形成された突起9aが突出した状態になされているので、これらが回転する様子を確実に監視することができる。
【0131】
なお
図42に示したように、スライダー9の胴部9bの後端外径をφA、前端外径をφBとし、φA>φBを満たす(例えばφA−φB=φ0.1〜1.0mm)寸法に形成すると、下向きでノック操作をすることでチャック6の押圧力だけでなくスライダー9および先端パイプ10の自重による重力落下が可能になる。この自重による重力落下を利用することで、
図40〜
図42、および
図46に示されるように、チャック6の前進限より前方のスライダーの前進限までスライダー9を移動させることができる。
これにより、先端パイプ10の突出長さを増やすことができ、先端パイプ10の後退限までノック操作することなく、パイプ10による紙面の引きずり感を感じること無く書き続けることができる。
【0132】
そして、この実施の形態においては、スライダーカバー91に形成された一対の案内溝91bは、スライダーカバー91の先端部側に向かって溝幅が徐々に狭くなるテーパー状に形成されている。
したがって、スライダー9が前進した
図40〜
図42に示す状態においては、スライダー9の前端部付近に形成された一対の突起9aが、スライダーカバー91のテーパー状に形成された案内溝91bの先端部に位置して、両者のクリアランスが少ない状態で位置決めがなされる。
なお、この時のスライダー9の後端部側は、スライダーカバー91の内径が軸方向にほぼ等しく形成された部分に位置して、この時の両者のクリアランスが少ない位置に設定される。この構成により、筆記動作中における先端パイプ10の遊び(がたつき)を少なくすることができ、筆記の感触を向上させることに寄与できる。
【0133】
前記したように、スライダー9がスライダーカバー91内を前進および後退動作する構成においては、特に筆記がなされるスライダー9の前進状態において、スライダーカバー91との間で遊び(がたつき)が少ないことが重要であり、これは
図47に示す二色成形を採用することにより実現することができる。
【0134】
図47は、前記したスライダー9とスライダーカバー91とを樹脂成形する例を示したものである。すなわち
図47はスライダー9が一次側成形体として、またスライダーカバー91が二次側成形体として、二色成形される例を示している。
【0135】
図47(A)は、一次側成形体としてのスライダー9を成形する状態を示しており、第1金型101,第1コアピン103,第2コアピン104により形成されるキャビティ内において、スライダー9が一次側成形体として成形される。
なお、前記第1金型101は図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号101aは第1金型101に形成された樹脂注入用のランナーである。
【0136】
図47(B)は、一次側成形体としてのスライダー9が、第1金型101から離型された状態を示しており、スライダー9は第1コアピン103に取り付けられた状態で第1金型101から離型される。
【0137】
そして、一次側成形体としてのスライダー9は、
図47(C)に示す第2金型102内に収容され、この第2金型102と第1コアピン103,第2コアピン104により形成されるキャビティ内において、スライダーカバー91が二次側成形体として成形される。
なお、第2金型102においても、図面の前後方向に型開きおよび型閉めがなされるように構成され、符号102aは第2金型102に形成された樹脂注入用のランナーを示している。
【0138】
この二次側成形体としてのスライダーカバー91は、
図47(C)に示すように、一次成形されたスライダー9がスライダーカバー91内で前進した状態で成形されることが望ましい。これにより、スライダー9の円柱状の外形が、スライダーカバー91の内側に転写された状態で成形され、後述するように成形後における両者間のクリアランスを限り無く小さくすることができる。
【0139】
図47(D)は、一次側成形体としてのスライダー9と、二次側成形体としてのスライダーカバー91が、第2金型102から離型された状態を示している。
この状態において、スライダーカバー91に形成された開口91a側から、例えば前記した先端パイプ10をスライダー9に向かって圧入することで、同時にスライダー9をスライダーカバー91内において、軸方向で分離することができる。
【0140】
この実施の形態においても、すでに説明したとおり、一次側成形体としてのスライダー9、および二次側成形体としてのスライダーカバー91は、共にPOMを用いて二色成形することが望ましい。
【0141】
以上説明したこの実施の形態においては、スライダー9とスライダーカバー91とは、スライダー9前進した状態で二色成形をすることにより、両者間のクリアランスを限り無く小さくすることができる。したがってこれをシャープペンシルとして組み上げた商品においては、筆記動作における先端パイプ10のがたつき等をほぼ皆無にすることができるなど、シャープペンシルの筆記の感触を向上させることに寄与することができる。
【0142】
なお、以上説明した二色成形においてなされる一次側成形体と二次側成形体とは、必ずしも図に示した特定な成形順序によって得る必要はなく、一次側成形体と二次側成形体とは、前後を入れ替えて成形しても同様の作用効果をもたらす筆記具または塗布具を得ることができる。また、二色のみならず三色以上の多色成形にも適用可能であり、同様の作用効果をもたらす筆記具または塗布具を得ることができる。