(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、重量平均分子量が300000〜1500000である(メタ)アクリル系ポリマーと、
アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、水酸基価が70mgKOH/g以上であり、重量平均分子量が1000〜30000である(メタ)アクリル系オリゴマーと、
イソシアネート化合物と、を含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーと前記(メタ)アクリル系オリゴマーとの合計質量に対する(メタ)アクリル系オリゴマーの割合が1質量%〜40質量%であり、
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、全構成単位100質量%に対して、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が−50℃以下であるモノマーに由来する構成単位を50質量%以上含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価をC(mgKOH/g)、前記(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価をD(mgKOH/g)、前記(メタ)アクリル系ポリマーの含有量をc(質量部)、前記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量をd(質量部)としたときに、下記式で表される水酸基価の合計が15mgKOH/g〜90mgKOH/gである、粘着剤組成物。
水酸基価の合計=C×{c/(c+d)}+D×{d/(c+d)}
前記イソシアネート化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる水酸基と前記(メタ)アクリル系オリゴマーに含まれる水酸基との合計1当量に対して、イソシアネート基が0.4当量〜2.2当量となる量である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において「工程」なる用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
本明細書において(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーとは、これを構成するモノマーのうち少なくとも主成分であるモノマーが(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであるポリマー又はオリゴマーを意味する。主成分であるモノマーとは、ポリマー又はオリゴマーを構成するモノマーの中で最も含有率(質量%)が大きいモノマーを意味する。本発明の(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーのある実施態様では、主成分である(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上である。
本明細書において「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両者を意味する。
【0018】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、重量平均分子量が300000〜1500000である(メタ)アクリル系ポリマーと、
アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、水酸基価が70mgKOH/g以上であり、重量平均分子量が1000〜30000である(メタ)アクリル系オリゴマーと、
イソシアネート化合物と、を含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価をC(mgKOH/g)、前記(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価をD(mgKOH/g)、前記(メタ)アクリル系ポリマーの含有量をc(質量部)、前記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量をd(質量部)としたときに、下記式で表される水酸基価の合計が15mgKOH/g〜90mgKOH/gである。
水酸基価の合計=C×{c/(c+d)}+D×{d/(c+d)}
【0019】
本発明の粘着剤組成物は、上記要件を満たすことにより、塗工性に優れるとともに、粘着フィルムとしたときの加熱処理後の剥離性と汚染性に優れる。その理由について、本発明者らは次のように考えている。
【0020】
一般的に、オリゴマーを含む粘着剤組成物は、オリゴマーを含まない場合よりも粘着力が低下して剥離性が向上する傾向にある。一方で、オリゴマーを含む粘着剤組成物は、剥離した際にオリゴマーが被着体に残りやすく、汚染性が低下する傾向にある。
【0021】
本発明者らは、粘着剤組成物に含まれるオリゴマーとして水酸基価が70mgKOH/g以上である(メタ)アクリル系オリゴマーを用いることで、粘着力が低下して剥離性が向上し、かつ汚染性の低下も抑制されることを見出した。これは、本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基の量が多く、粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーとが十分に架橋されることにより、(メタ)アクリル系オリゴマーが被着体に残りにくくなるためと考えられる。
【0022】
また、本発明の粘着剤組成物では(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価との合計が15mgKOH/g以上であることにより、架橋が十分に進行し、加熱処理後の粘着力を低くすることができると考えられる。また、(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価との合計が90mgKOH/g以下であることにより、過度に架橋が進行することなく、必要な粘着力を維持することができると考えられる。
【0023】
さらに、本発明の粘着剤組成物は、高速での塗工時にスジが発生しにくい。この理由は、以下のように考えられる。
2種以上の重合体を含む粘着剤組成物は、重合体間の絡み合いにより、擬塑性が強くなりやすいことが知られている。また、重合体に含まれる水酸基の量が多い粘着剤組成物は、水素結合により擬塑性が強くなりやすいことが知られている。本発明者らの検討において、擬塑性が強いと、塗工性が悪い傾向にあることがわかった。本発明における粘着剤組成物は、分子量が十分に小さいオリゴマーをポリマーと併用することで、重合体間の物理的な絡み合いが非常に少なく、擬塑性が低く抑えられ、塗工性に優れていると考えられる。また、(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価の合計を特定の範囲内とすることで、水素結合に起因する擬塑性が低く抑えられるため、塗工性に優れると考えられる。
【0024】
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価は、(メタ)アクリル系ポリマーと十分に架橋させる観点からは、85mgKOH/g以上であることが好ましく、100mgKOH/g以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価は、適切な粘着力と粘着剤層のヘイズの観点からは、200mgKOH/g以下であることが好ましく、180mgKOH/g以下であることがより好ましく、160mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価との合計は、架橋を十分に進行させる観点からは、20mgKOH/g以上であることが好ましく、25mgKOH/g以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価との合計は、過度な架橋の進行を抑制する観点からは、80mgKOH/g以下であることが好ましく、70mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0026】
粘着剤組成物における(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価の比率((メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価/(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価)は、汚染性の観点からは、0.6以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。粘着力の観点からは、前記比率は13以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価は、それぞれ以下の計算式によって求められる。
【0028】
水酸基価(mgKOH/g)={(A/100)÷B}×56.1×1000
A=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される全モノマー中の、水酸基を有するモノマーの含有率(質量%)
B=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される水酸基を有するモノマーの分子量
なお、56.1はKOHの分子量である。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される水酸基を有するモノマーが2種以上である場合は、それぞれのモノマーについて上記の計算式に準じて水酸基価を求め、得られた値を合計して水酸基価を求める。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価との合計は、以下の計算式によって求められる。
【0031】
水酸基価の合計(mgKOH/g)=C×{c/(c+d)}+D×{d/(c+d)}
C=(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価
D=(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価
c=(メタ)アクリル系ポリマーの含有量(質量部)
d=(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量(質量部)
【0032】
粘着剤組成物における(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価と(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価の比率は、以下の計算式によって求められる。
【0033】
水酸基価の比率=C×{c/(c+d)}/D×{d/(c+d)}
C=(メタ)アクリル系ポリマーの水酸基価
D=(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価
c=(メタ)アクリル系ポリマーの含有量(質量部)
d=(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量(質量部)
【0034】
本発明の粘着剤組成物では、(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーとの合計100質量%に対して(メタ)アクリル系オリゴマーの割合が1質量%〜40質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの割合が1質量%以上であると、粘着剤組成物に(メタ)アクリル系オリゴマーを添加した効果が十分に得られる。(メタ)アクリル系オリゴマーの割合が40質量%以下であると、オリゴマーによる被着体の汚染を十分に抑制できる。同様の観点より、(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーとの合計100質量%に対して(メタ)アクリル系オリゴマーの割合が3質量%〜30質量%であることがより好ましく、3質量%〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
<(メタ)アクリル系ポリマー>
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、重量平均分子量が300000〜1500000である。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことで、粘着力を容易に調整することができる。また、(メタ)アクリル系ポリマーが水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことで、後述の架橋剤によって架橋される。さらに、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が300000以上であることで汚染性に優れ、1500000以下であることで塗工性及びなじみ性に優れる。本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは1種のみであっても、モノマーの組成、分子量等が異なる2種以上であってもよい。
【0037】
本明細書において「アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位」とは、アルキル(メタ)アクリレートが付加重合して形成される構成単位を意味する。「水酸基を有するモノマーに由来する構成単位」とは、水酸基を有するモノマーが付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0038】
アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を構成するアルキル(メタ)アクリレートは、無置換のアルキル(メタ)アクリレートであり、その種類は特に制限されない。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル基の炭素数は、1〜18の範囲であることが好ましく、1〜12の範囲であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が上記範囲内であると、粘着性と粘着フィルムとしたときの基材との密着性の点で有利である。
【0039】
アルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
アルキル(メタ)アクリレートは、適切な粘着力と基材へのなじみ性を付与する観点からは、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位に占めるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、適切な粘着力を付与する観点からは、全構成単位100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。汚染性の観点からは、(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位に占めるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、全構成単位100質量%に対して97質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることがより好ましく、95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を構成する水酸基を有するモノマーの種類は、特に制限されない。例えば、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル部位は、直鎖状、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル部位の炭素数は、1〜12の範囲であることが好ましい。アルキル部位の炭素数が上記範囲内であると、粘着性と粘着フィルムとしたときの基材との密着性の点で有利である。水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル部位の炭素数は、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。
【0044】
水酸基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのポリアルキレングリコール部位を構成するアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの組み合わせ等が挙げられる。
【0045】
水酸基を有するモノマーとして具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。水酸基を有するモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
被着体に対する適度な粘着力及び良好な剥離性を得る観点からは、水酸基を有するモノマーは水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート及び12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0047】
水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらのモノマーは、他のモノマーとの相溶性及び共重合性が特に良好であり、イソシアネート化合物との反応性も良好である。
【0048】
(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成単位100質量%に対してアクリロイル基を有するモノマー(以下、アクリルモノマーともいう)に由来する構成単位を50質量%以上含むことが好ましい。全構成単位100質量%に対してアクリルモノマーに由来する構成単位を50質量%以上含むであることで、共重合性が良好となり、水酸基を(メタ)アクリル系ポリマー中により均一に分布させることができ、架橋のムラがより抑制され、汚染性がより向上する。(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成単位100質量%に対してアクリルモノマーに由来する構成単位を60質量%以上含むことがより好ましく、アクリルモノマーに由来する構成単位を80質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル系ポリマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位以外のその他の構成単位を含んでもよい。この場合、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位との合計の割合は、(メタ)アクリル系ポリマーの全構成単位100質量%に対して70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0050】
その他の構成単位を構成するモノマーの種類は、特に制限されない。このようなモノマーとして具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の環状基を有する(メタ)アクリレートモノマー、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノビニルモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステルモノマー、これらのモノマーの各種誘導体などが挙げられる。また、カルボキシ基、グリシジル基、アミド基又はN−置換アミド基、三級アミノ基等の、水酸基以外の官能基を有するモノマーが挙げられる。
【0051】
カルボキシ基を有するモノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチルレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
グリシジル基を有するモノマーとして具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0053】
アミド基又はN−置換アミド基を有するモノマーとして具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0054】
三級アミノ基を有するモノマーとして具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、汚染性の観点からは、400000以上であることが好ましく、500000以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、なじみ性及び塗工性の観点からは、1300000以下であることが好ましく、1200000以下であることがより好ましく、1000000以下であることがさらに好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分散度(Mw/Mn)は、特に制限されないが、粘着性及び被着体に対する汚染抑制の観点から、1〜30の範囲であることが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、下記条件にて、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0058】
−条件−
・GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
・カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流速 :0.6mL/分
・カラム温度:40℃
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は−50℃以下であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーのTgが−50℃以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーの弾性が十分に低く、加熱処理後の粘着力を低く抑えることができ、剥離性がより向上する。
【0060】
(メタ)アクリル系ポリマーのTgは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーの全部又は一部を単独重合体としたときのTgが−50℃以下であるモノマーとすることにより、−50℃以下となるようにすることができる。単独重合体としたときのTgが−50℃以下であるモノマーとしては、具体的には、ブチルアクリレート(−55℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−76℃)、ラウリルメタクリレート(−65℃)、オクチルアクリレート(−65℃)、イソオクチルアクリレート(−58℃)、イソノニルアクリレート(−58℃)、イソミリスチルアクリレート(−56℃)等が挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマーのTgは、下記式から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・+w(k−1)/Tg(k−1)+wk/Tgk
式中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k−1)、Tgkは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体としたときのガラス転移温度(K)をそれぞれ表す。w1、w2、・・・、w(k−1)、wkは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの質量分率をそれぞれ表し、w1+w2+・・・+w(k−1)+wk=1である。
【0062】
<(メタ)アクリル系オリゴマー>
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含み、水酸基価が70mgKOH/g以上であり、重量平均分子量が1000〜30000である。
【0063】
(メタ)アクリル系オリゴマーがアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことで、適切な粘着力と基材へのなじみ性が粘着剤組成物に付与される。また、(メタ)アクリル系オリゴマーが水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことで、汚染性に優れる。さらに、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が1000以上であることで汚染性に優れ、30000以下であることで塗工性に優れる。さらに、(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価が70mgKOH/g以上であることで(メタ)アクリル系ポリマーと十分に架橋され、汚染性に優れる。本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系オリゴマーは1種のみであっても、モノマー組成、重量平均分子量等が異なる2種以上であってもよい。
【0064】
(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占めるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、適切な粘着力を粘着剤組成物に付与する観点から、全構成単位100質量%に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占めるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の割合は、全構成単位100質量%に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル系ポリマーについて上述したアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができ、好ましい例も同様である。
【0065】
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基を有するモノマーに由来する構成単位を構成する水酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーについて上述した水酸基を有するモノマーを挙げることができ、好ましい例も同様である。
【0066】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、全構成単位100質量%に対してアクリルモノマーに由来する構成単位を50質量%以上含むことが好ましい。全構成単位100質量%に対してアクリルモノマーに由来する構成単位を50質量%以上含むことで、共重合性が良好となり、水酸基を(メタ)アクリル系オリゴマー中により均一に分布させることができ、架橋のムラがより抑制され、汚染性がより向上する。(メタ)アクリル系オリゴマーは、全構成単位100質量%に対してアクリルモノマーに由来する構成単位を60質量%以上含むことがより好ましく、全構成単位100質量%に対してアクリルモノマーに由来する構成単位を70質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位以外の構成単位を含んでもよい。この場合、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占めるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と、水酸基を有するモノマーに由来する構成単位との合計の割合は、全構成単位100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び水酸基を有するモノマーに由来する構成単位以外の構成単位を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーについて上述したモノマーが挙げられる。
【0068】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、汚染性の観点から、4000以上であることが好ましく、7000以上であることがより好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、塗工性の観点から、25000以下であることが好ましく、20000以下であることがより好ましい。
【0069】
(メタ)アクリル系オリゴマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分散度(Mw/Mn)は、特に制限されないが、粘着性及び被着体に対する汚染抑制の観点から、1〜30の範囲であることが好ましい。
【0070】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、上述の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法と同様にして測定される。
【0071】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、−20℃以下であることが好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーのTgが−20℃以下であると、加熱処理後の粘着力を低く抑えることができ、剥離性がより向上する。
【0072】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、上述の(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度の計算方法と同様にして計算される。
【0073】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、単独重合体としたときのガラス転移温度が−50℃以下であるモノマーに由来する構成単位を、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位100質量%に対して50質量%以上含むことが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度が十分に低くなり、粘着剤層が被着体によりなじみやすくなる。これにより、被着体の加工中などにおける粘着剤層の脱落を防止しやすくなる。単独重合体としたときのTgが−50℃以下であるモノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーについて上述した単独重合体としたときのTgが−50℃以下であるモノマーが挙げられる。
【0074】
<イソシアネート化合物>
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記した芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
粘着剤組成物が透明性を重視する用途に使用される場合、イソシアネート化合物は、鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物及び鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5両体及びアダクト体からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造を有するイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。これらのイソシネート化合物は、芳香環に由来する構造を有していないので、加熱処理後の粘着剤層が黄変し難く、透明性により優れる粘着フィルムを得ることができる。
【0076】
イソシアネート化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネートL」、「コロネート2031」、「コロネート2030」、「コロネート2234」、「コロネート2785」、「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、日本ポリウレタン株式会社製〕、「スミジュールN3300」、「デスモジュールN3400」、「スミジュールN−75」〔以上、住友バイエルウレタン株式会社製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔以上、旭化成工業株式会社製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上、三井武田ケミカル株式会社製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0077】
イソシアネート化合物の含有量は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる水酸基と(メタ)アクリル系オリゴマーに含まれる水酸基との合計を1当量としたとき、この合計水酸基1当量に対してイソシアネート基が0.4当量〜2.2当量となる量であることが好ましい。イソシアネート基の当量が合計水酸基1当量に対して0.4当量以上であると、架橋後の粘着剤層が十分に硬くなり、加熱処理後の粘着力が十分に低くなり剥離性が良好となる。また、架橋していない(メタ)アクリル系オリゴマーの量が少なくなるため、汚染性に優れる。イソシアネート基の当量が合計水酸基1当量に対して2.2当量以下であると、(メタ)アクリル系ポリマーと反応していないイソシアネート化合物の量が低く抑えられ、汚染性に優れる。
本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート化合物の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれる水酸基と(メタ)アクリル系オリゴマーに含まれる水酸基との合計1当量に対してイソシアネート基が0.6当量〜1.8当量となる量であることがより好ましく、イソシアネート基が0.7当量〜1.3当量となる量であることがさらに好ましい。
【0078】
(その他の成分)
本発明の粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル系オリゴマー及びイソシアネート化合物の他に含んでもよいその他の成分としては、架橋触媒、キレート剤、溶剤、耐候性安定剤、タッキファイヤ−、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤、(メタ)アクリル系ポリマー以外のポリマー、(メタ)アクリル系オリゴマー以外のオリゴマー等が挙げられる。粘着剤組成物がこれらの成分を含む場合の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲内において設定することができる。
【0079】
架橋触媒としては、例えばジブチルスズラウリレート、ジオクチルスズラウリレート等の有機スズ化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。粘着剤組成物がこれらの架橋触媒を含むことで、初期硬化速度を早くすることができる。これらの架橋触媒の中でも、粘着力や架橋反応速度を適切な範囲に調整しやすいことから、有機スズ化合物が好ましい。
【0080】
粘着剤組成物が架橋触媒を含む場合には、ポットライフが短くなる傾向にあるため、さらにキレート剤を含むことが好ましい。粘着剤組成物がキレート剤を含むと、ポットライフが長くなる傾向にある。
キレート剤としては、例えばβ−ジケトン類やβ−ケトエステル類等が挙げられる。β−ジケトン類やβ−ケトエステル類としては、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル等が挙げられる。粘着剤組成物がこれらのキレート剤を含むことで、ポットライフを向上させることができる。これらのキレート剤の中でも、ポットライフを向上させる観点から、アセチルアセトンが好ましい。
【0081】
架橋触媒とキレート剤の組合せとしては、粘着力やポットライフを向上させる観点から、有機スズ化合物とアセチルアセトンの組合せが好ましい。
【0082】
<(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの重合方法>
本発明の粘着剤組成物に使用される(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの重合方法は、特に制限されない。例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の方法を適用できる。中でも、処理工程が比較的簡単であり、かつ短時間で行うことができる点で、溶液重合が好ましい。
【0083】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、モノマー、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0084】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油等の脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0085】
有機溶媒のうち、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの重合に際しては、エステル類、ケトン類等の重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒を用いることが好ましい。特に、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの溶解性、重合反応の容易さ等の点から、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン等が好ましい。
【0086】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等を使用することが可能である。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ−i−プロピルペルオキシジカルボナト、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナト、t−ブチルペルオキシビバラト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン等が挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−i−ブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)等が挙げられる。
【0087】
重合開始剤のうち、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの重合に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特にアゾビス系の重合開始剤が好ましい。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーの重合に際しては、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーの合計量100質量部に対して0.01質量部〜2質量部の範囲であることが好ましく、0.1質量部〜1質量部の範囲であることがより好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重合に際しては、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーの合計量100質量部に対して0.1質量部〜20質量部の範囲であることが好ましく、1質量部〜10質量部の範囲であることがより好ましい。
【0088】
(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの重合に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を使用できる。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、α‐メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類、p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類、トリブチルボランなどのボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペンなどのハロゲン化炭化水素類、クロラール、フラルデヒドなどのアルデヒド類、炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類、チオフェノール、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類、炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類、ビネン、ターピノレンなどのテルペン類等が挙げられる。
【0089】
連鎖移動剤の使用量は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーの合計量100質量部に対して0.005質量部〜10.0質量部の範囲とすることができる。
【0090】
重合反応時の重合温度としては、30℃〜180℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは50℃〜150℃の範囲である。特に、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーを製造する場合の重合温度としては、50℃〜100℃の範囲であることがより好ましく、60℃〜90℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0091】
<粘着フィルム>
本発明の粘着フィルムは、基材と、前記基材上に設けられ、本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層と、を備える。本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層を有することで外観に優れるとともに、加熱処理後であっても、剥離性及び汚染性に優れている。
【0092】
本発明の粘着フィルムを構成する基材の材料は、特に制限されない。透視による光学部材の検査や管理の観点から、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。中でも、表面保護性能の観点からはポリエステル系樹脂が好ましく、実用性の観点からはポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
【0093】
基材の厚みは、特に制限されない。例えば、500μm以下とすることができ、5μm〜300μmの範囲であることが好ましく、10μm〜200μmの範囲であることがより好ましい。
【0094】
基材上に設けられる粘着剤層の形成方法は特に制限されず、通常用いられる方法で行うことができる。例えば、本発明の粘着剤組成物をそのままの状態で、又は必要に応じて溶媒で希釈した状態で、ベースフィルムである基材に直接塗布し、乾燥して溶媒を除去する方法により行うことができる。その他の方法としては、シリコーン樹脂等により離型処理が施された紙やポリエステルフィルム等の剥離シートの上に本発明の粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、次いで剥離シートの粘着剤層が形成された面を基材に接触させて加圧し、基材側に粘着剤層を転写する方法が挙げられる。このようにして作製された基材上の粘着剤層の表面には、必要に応じて、離型フィルムをラミネートしてもよい。
【0095】
基材上に形成された粘着剤層は、乾燥後に一定期間養生することが好ましい。養生の条件は、例えば23℃、50%RHの環境下で1〜10日間とすることができる。粘着剤層を養生することにより、粘着剤層に含まれるイソシアネート化合物によって(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーとが十分に架橋された状態とすることができる。
【0096】
粘着剤層の厚さは、粘着フィルムの用途に応じて求められる粘着力や被着体の表面粗さ等に応じて設定することができる。一般には1μm〜100μmの範囲内であり、好ましくは5μm〜50μmの範囲内であり、さらに好ましくは15μm〜30μmの範囲内である。
【0097】
本発明の粘着フィルムは、粘着剤層が被着体に対して充分な粘着力を有し(低速での剥離時の粘着力が充分大きい)、かつ中速での剥離時に容易に剥離できる(中速での剥離時の粘着力が大きくならない)ことが好ましい。さらに、粘着剤層が十分ななじみ性を有し、表面が平滑な被着体に用いたときのみならず、表面に微小な凹凸を有する被着体に用いたときにでも、粘着剤が被着体表面を充分に濡らすことができる、良好ななじみ性を有している(切断した場合に切断端がめくり上がらない)ことが好ましい。
【0098】
すなわち、粘着剤層の被着体に対する23℃での180度ピールの粘着力は、剥離速度10m/分(中速剥離)における粘着力(剥離力)が0.6N/25mm以下であることが好ましい。中速剥離時の粘着力が0.6N/25mm以下であることで、容易に剥離することができる。特に広幅での剥離性が良好となる。
同様の観点から、中速剥離における剥離力は、0.3N/25mm以下であることがより好ましい。
【0099】
粘着剤層のゲル分率は、粘着力の観点から、90質量%〜100質量%が好ましく、93質量%〜100質量%がより好ましく、95質量%〜100質量%がさらに好ましい。
【0100】
本明細書において、粘着剤層のゲル分率は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される、溶媒不溶分の割合である。具体的には、下記(1)〜(4)に従って測定する。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて質量を正確に測定して試料を作製する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(g)である。
【0101】
本発明の粘着フィルムの用途としては、加熱処理される被着体に貼り付ける用途が挙げられる。具体的には、例えば、ハードコートPET等の加熱処理が行われる光学部材の表面保護フィルム、フレキシブルプリント基板等の電子部材の製造工程において使用される表面保護フィルム、及び補強フィルムが挙げられる。すなわち、本発明の粘着フィルムは、加熱処理工程において被着体の表面を保護又は補強し、加熱処理工程後、汚染なく容易に剥がすことができる耐熱性の粘着フィルムとして用いることが可能である。加熱処理は、例えば、100℃〜250℃の範囲とすることができる。
【0102】
なお、本発明の粘着フィルムは、粘着剤層を架橋させる際の架橋点として水酸基を用いている。これにより、カルボキシ基等の酸性基を架橋点として用いる場合に比べて金属の酸化を生じにくいため、金属表面に貼り付ける用途にも好適に用いることができる。
【0103】
中でも、本発明の粘着剤組成物は透明性が高いので、本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層を備えた粘着フィルムは、被着体に貼り合せた状態で外観検査等の検査工程を実施することができる。このため、ハードコートPET等の光学部材の表面保護フィルム用途に適している。なお、光学部材の表面保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護するものである。光学部材は表面保護フィルムが光学部材に積層された状態のまま、高温乾燥印刷工程、エッチング工程などの加熱処理が施される。その後、表面保護が不要となった段階で、光学部材から剥離除去される。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
なお、実施例21は、本発明の参考例である。
【0105】
−(メタ)アクリル系ポリマーの製造−
(製造例1)
温度計、攪拌機、還流冷却器、及び逐次滴下装置を備えた反応容器内に、酢酸エチル25質量部、アルキルアクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)24.3質量部、水酸基を有するモノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)0.7質量部を入れ、撹拌を行いながら反応容器内の温度を還流が発生するまで昇温させた。還流開始から10分後、2EHA72.3質量部、4HBA 7.7質量部、重合開始剤として1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル(V―40:和光純薬工業製)0.2質量部を酢酸エチル20質量部に溶解させた溶液を120分かけて滴下し、滴下終了後さらに150分間かけて反応を完結させた。反応完結後、固形分が35質量%となるように酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー組成(質量%)、重量平均分子量(Mw)、水酸基価及びTgを表1に示す。重量平均分子量(Mw、単位:万)は、既述の方法で測定したものである。水酸基価及びTgは既述の方法で計算したものである。具体的には、水酸基価は次のとおり計算した。なお、4HBAの分子量は、144.2である。
{(3/100)÷144.2}×56.1×1000=11.7(mgKOH/g)
なお、「固形分」とは(メタ)アクリル系ポリマーの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量である。
【0106】
(製造例2〜12)
製造例1において、モノマーの組成を表1に示すように変更すると共に、溶剤量や開始剤量の調整により、下記表1に示すように分子量を調整したこと以外は、製造例1と同様の方法により(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系ポリマーの組成(質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)及びTgを表1に示す。表中の「MA」はメチルアクリレート、「LMA」はラウリルメタクリレートをそれぞれ表す。
【0107】
−(メタ)アクリル系オリゴマーの製造−
(製造例A)
温度計、撹拌機、還流冷却器、及び逐次滴下装置を備えた反応容器内に、アルキルアクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)8質量部、水酸基を有するモノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)2質量部、トルエン31.7質量部、メチルエチルケトン(MEK)31.7質量部、重合開始剤として2,2’‐アゾビス(イソ酪酸メチル)(V―601:和光純薬工業製)0.67質量部を入れ、撹拌を行いながら反応容器内の温度を還流が発生するまで上昇させた。還流開始から10分後、2EHA72質量部、4HBA18質量部、2,2’‐アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V―601:和光純薬工業製)9.0質量部をMEK14.7質量部に溶解させた溶液を90分かけて滴下し、滴下終了後さらに230分かけて反応を完結させた。反応完結後、固形分が35%となるようにトルエンを加え、(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を調製した。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマーのモノマー組成(質量%)、重量平均分子量(Mw)及び水酸基価を表2に示す。重量平均分子量(Mw、単位:万)は、既述の方法で測定したものである。水酸基は既述の方法で計算したものであり、具体的には次のとおり計算した。なお、4HBAの分子量は、144.2である。
{(20/100)÷144.2}×56.1×1000=77.8(mgKOH/g)
なお、「固形分」とは(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量である。
【0108】
(製造例B〜L)
製造例Aにおいて、モノマーの組成を表2に示すように変更すると共に、溶剤量や開始剤量の調整により、下記表2に示すように分子量を調整したこと以外は、製造例Aと同様の方法により(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系オリゴマーの組成(質量%)、重量平均分子量(Mw、単位:万)及び水酸基価を表2に示す。表中の「MA」はメチルアクリレート、「LMA」はラウリルメタクリレート、「2HEA」は2−ヒドロキシエチルアクリレートをそれぞれ表す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
(実施例1)
−粘着剤組成物の作製−
製造例1で調製した(メタ)アクリル系ポリマーの溶液(固形分:35質量%)90質量部と、製造例Aで調製した(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液(固形分:35質量%)10質量部と、イソシアネート化合物(スミジュールN3300、住化バイエルウレタン株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造を有するイソシアネート化合物)2.43質量部((メタ)アクリル系ポリマーに含まれる水酸基及び(メタ)アクリル系オリゴマーに含まれる水酸基の合計水酸基1当量に対して、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が1.00当量)と、架橋触媒(アデカスタブOT−1、株式会社ADEKA製、ジオクチルチンジラウレート、有効成分:100質量部)をアセチルアセトンで300倍に希釈したもの2.1質量部とを混合し、充分に撹拌して粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を用いて、以下の試験用粘着フィルムの作製方法に従って試験用粘着フィルムを作製し、各種試験を行った。水酸基価の合計及び水酸基価の比率を表3に示す。
水酸基価の合計及び水酸基価の比率は既述の方法で計算したものであり、具体的には次のとおり計算した。
水酸基価の合計
11.7×{90/(90+10)}+77.8×{10/(90+10)}=18.3
水酸基価の比率
11.7×{90/(90+10)}/77.8×{10/(90+10)}=1.4
【0112】
−試験用粘着フィルムの作製−
上記で得られた粘着剤組成物を用い、以下のようにして、試験用粘着フィルムを作製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーU35、東レ株式会社製、厚さ:125μm)の上に、乾燥後の塗工量が20g/m
2となるように粘着剤組成物を塗布し、熱風循環式乾燥機にて100℃で60秒間乾燥して粘着剤層を形成した。その後、シリコーン系離型剤で表面保護された離型フィルムの上に、粘着剤層が接するようにPETフィルムを載置し、加圧ニップロールにより圧着して貼りあわせた。その後、23℃、50%RHの環境下で2日間、架橋反応を終了させるための養生を行なって試験用粘着フィルムを作製した。
得られた粘着剤層のゲル分率を表3に示す。なお、ゲル分率は既述の方法により測定したものである。
【0113】
−測定・評価−
[剥離性]
上記で作製した試験用粘着フィルムを25mm×150mmの大きさにカットし、得られた粘着フィルム片から離型フィルムを剥がし、ハードコート処理されたPETフィルム(KBフィルムG01S、株式会社きもと製)のハードコート処理された面に貼り付け、2kgのゴムロールを1往復して圧着した。この試験サンプルを23℃、50%RH環境下で1時間放置後、150℃環境下で1時間加熱処理を行い、続いて23℃、50%RH環境下で1時間放置した。その後、粘着フィルムを長辺(150mm)方向に剥離した場合の180°剥離における粘着力を剥離速度10m/分(中速剥離)の条件で測定し、以下の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0114】
A:0.1N/25mm以上、0.25N/25mm未満である場合(剥離性が非常に良好)
B:0.05N/25mm以上0.1N/25mm未満、又は0.25N/25mm以上0.4N/25mm未満である場合(剥離性が良好)
C:0.4N/25mm以上0.5N/25mm未満である場合(剥離性がやや悪いが許容範囲内)
D:0.5N/25mm以上、又は0.05N/25mm未満である場合(剥離性が悪く不良)
【0115】
[汚染性]
加熱処理後の粘着力の測定に用いた、試験用保護フィルムを剥離した後のハードコート処理されたPETフィルムのハードコート処理された表面上に、2μLの純水を滴下し、滴下から30秒後に接触角測定装置(Drop Master DM−701、協和界面科学株式会社製)を用いて水の接触角(θ1)を測定した。得られた値と、予め測定しておいた試験用保護フィルムを貼り付けていないハードコート処理面の水の接触角(θ0=84°)との差の絶対値(Δθ=|θ1−θ0|)を汚染性の指標とし、以下の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0116】
A:Δθが2.0以下である場合(汚染性が非常に良好)
B:Δθが2.0を超え4.5以下である場合(汚染性が良好)
C:Δθが4.5を超え7.5以下である場合(汚染性が悪いが許容範囲内)
D:Δθが7.5を超えている場合(汚染性が悪く不良)
【0117】
[塗工性]
製造例1〜12で調製した(メタ)アクリル系ポリマーの溶液と、製造例A〜Lで調製した(メタ)アクリル系オリゴマーの溶液を、表3に記載の配合比率で配合して混合液を調製し、混合液の剪断粘度を下記条件で測定した。測定機器はMCR−301(Anton Paar社製)に25mmφコーンプレート(CP25−2)を装着して行い、ステージ温度:25℃、シアレート:0.001〜3000(1/秒)、測定時間:60秒、混合液の温度:25℃の測定条件で行った。得られたグラフの内、シアレート(1/秒)が0.01〜0.1の部分にベースラインを引き、測定値がベースラインから離れたときのシアレート(1/秒)を読み取り、以下の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0118】
A:シアレート(1/秒)が5.0以上である場合(塗工性が非常に良好)
B:シアレート(1/秒)が1.0以上5.0未満である場合(塗工性が良好)
C:シアレート(1/秒)が0.5以上1.0未満である場合(塗工性が悪いが許容範囲内)
D:シアレート(1/秒)が0.5未満である場合(塗工性が悪く不適)
【0119】
[なじみ性]
上記で作製した試験用粘着フィルムを、面積が25mm×150mmの粘着剤層を有する部分と、その両側に存在する30mmの粘着剤層が形成されていない部分と、からなる25mm×210mmの短冊状にカットした。得られた粘着フィルム片から離型フィルムを剥がし、粘着剤層が外側になるように湾曲させ、上記粘着剤層が形成されていない部分を重ねて指でつまんだ。湾曲した粘着剤層の先端にあたる部分をハードコート処理されたPETフィルム(KBフィルムG01S、株式会社きもと製)の表面に接触させ、指を離してから粘着剤層がPETフィルムのハードコート処理面に密着して全体に濡れ広がるまでの時間を測定し、以下の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
【0120】
A:30秒未満である場合(なじみ性が良く非常に良好)
B:30秒以上、60秒未満である場合(なじみ性が良く良好)
C:60秒以上、120秒未満である場合(なじみ性がやや悪いが許容範囲内)
D:120秒以上、または、粘着剤層が端まで濡れ広がらない場合(なじみ性が悪く許容範囲外)
【0121】
(実施例2〜23、比較例1〜9)
(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの種類及び比率を表3に示すように変更し、イソシアネート化合物の量を、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーに含まれる水酸基の合計1当量に対して、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が表3に示す当量となるように調整した以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物を作製した。作製した粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして試験用粘着フィルムを作製した。得られた試験用粘着フィルムについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3に示すように、実施例1〜22で作製した粘着剤組成物は剥離性、汚染性、塗工性及びなじみ性のいずれにおいても良好又は許容範囲内という評価であった。
なお、実施例1〜20及び22は、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位100質量%に対して、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が−50℃以下であるモノマーに由来する構成単位が50質量%以上である。
(メタ)アクリル系オリゴマーを含有しない比較例1の粘着剤組成物は、剥離性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系オリゴマーの水酸基価が70mgKOH/gより低い比較例2及び比較例3の粘着剤組成物は、剥離性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーの合計の水酸基価が15mgKOH/gより低い比較例4の粘着剤組成物は、剥離性と汚染性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーの合計の水酸基価が90mgKOH/gより高い比較例5の粘着剤組成物は、剥離性となじみ性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が1500000より大きい比較例6の粘着剤組成物は、塗工性となじみ性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が300000より小さい比較例7の粘着剤組成物は、汚染性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が30000より大きい比較例8の粘着剤組成物は、塗工性の評価が低かった。
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量が1000より小さい比較例9の粘着剤組成物は、汚染性の評価が低かった。