特許第6422788号(P6422788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422788
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】オーバーラップフィルム、及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/52 20060101AFI20181105BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20181105BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   B65D75/52
   B32B27/32 E
   B65D65/40 D
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-16120(P2015-16120)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-141403(P2016-141403A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
(72)【発明者】
【氏名】大西 直樹
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−121821(JP,A)
【文献】 特開2008−201463(JP,A)
【文献】 特開2004−106848(JP,A)
【文献】 特開2011−042175(JP,A)
【文献】 特開平08−300547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00−65/46
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性ポリオレフィン系フィルムと、
前記熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの裏面に積層され且つ塩素化ポリオレフィン系樹脂を含むアンカーコート層と、
前記アンカーコート層の裏面に積層され且つウレタン系樹脂を含むデザイン印刷層と、
前記デザイン印刷層の裏面に積層され且つウレタン系樹脂及び無機顔料を含む第2印刷層と、
を有するオーバーラップフィルム。
【請求項2】
前記第2印刷層が、酸化チタンを含む、請求項1に記載のオーバーラップフィルム。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの外周部において、そのフィルムの裏面が露出した領域を有する、請求項1または2に記載のオーバーラップフィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のオーバーラップフィルムと、容器本体と前記容器本体から径外方向に突出されたフランジ部とを有する容器と、を有し、
前記アンカーコート層、デザイン層及び第2印刷層の積層された領域が少なくとも前記フランジ部の突出頂部に被さった状態で、前記オーバーラップフィルムが前記容器に熱収縮装着されている、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮によって被着体に被覆装着されるオーバーラップフィルムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
オーバーラップフィルムは、食品などが入れられた容器や日用品などの各種被着体に、熱収縮によって装着されて使用される、被着体を被覆する包装材の1種である。例えば、即席麺入りカップ容器の多くは、絵柄、商標、商品の説明書きなどのデザイン印刷層が設けられたオーバーラップフィルムにて被覆包装されている。
オーバーラップフィルムにて被着体が包装された包装体は、機械的製造工程では、通常、次のようにして製造される。長尺状のオーバーラップフィルムを、被着体を包むようにして筒状にしつつそのMD方向(長手方向)に沿った両側端部を熱シールし、被着体を包んで筒状に形成された長尺状のオーバーラップフィルムを、被着体の前後両側でTD方向に溶断熱シールした後、被着体を内側に内包して3方がシールされたオーバーラップフィルムを加熱することによって熱収縮させることにより、包装体が得られる。
【0003】
ところで、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを用いたオーバーラップフィルムが知られている。ポリオレフィン系フィルムは印刷適性が低いため、この熱収縮性ポリオレフィン系フィルムにデザイン印刷層を設ける場合には、印刷適性を向上させるため、表面処理としてコロナ放電処理が行われる。
前記コロナ放電処理はフィルムの熱シール性を低下させるが、フィルムのうち熱シールする部分のみを除いてコロナ放電処理を行うことも困難である。
特許文献1には、表面処理が施されていない熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに、塩素化ポリオレフィン系樹脂を含むインキを用いてデザイン印刷層を形成することが開示されている。
【0004】
しかしながら、塩素化ポリオレフィン系樹脂をバインダー樹脂として含むデザイン印刷層は、オーバーラップフィルムを被着体に熱収縮装着した際に、亀裂を生じるおそれがある。特に、このオーバーラップフィルムを即席麺入りカップ容器に熱収縮装着した際、カップ容器のフランジ部にオーバーラップフィルムが強く密着するので、そのフランジ部の縁に対応して、デザイン印刷層に亀裂が生じやすい。
デザイン印刷層に前記亀裂が生じると、その本来のデザインの中にデザイン抜け部が見えるので、商品価値が損なわれ、その改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−231852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱収縮装着してもデザイン印刷層に亀裂が生じ難いオーバーラップフィルム及びそのフィルムが装着された包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオーバーラップフィルムは、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムと、前記熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの裏面に積層され且つ塩素化ポリオレフィン系樹脂を含むアンカーコート層と、前記アンカーコート層の裏面に積層され且つウレタン系樹脂を含むデザイン印刷層と、前記デザイン印刷層の裏面に積層され且つウレタン系樹脂及び無機顔料を含む第2印刷層と、を有する。
【0008】
本発明の好ましいオーバーラップフィルムは、前記第2印刷層が、酸化チタンを含む。
本発明の好ましいオーバーラップフィルムは、前記熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの外周部において、そのフィルムの裏面が露出した領域を有する。
【0009】
本発明の別の局面によれば包装体を提供する。
本発明の包装体は、前記オーバーラップフィルムと、容器本体と前記容器本体から径外方向に突出されたフランジ部とを有する容器と、を有し、前記アンカーコート層、デザイン層及び第2印刷層の積層された領域が少なくとも前記フランジ部の突出頂部に被さった状態で、前記オーバーラップフィルムが前記容器に熱収縮装着されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオーバーラップフィルムは、熱収縮装着によってデザイン印刷層に亀裂が生じ難い。
かかるオーバーラップフィルムが被着体に装着された包装体は、オーバーラップフィルムのデザイン印刷層内にデザイン抜け部が生じ難く、外観上も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】1つの実施形態に係るオーバーラップフィルムを裏面側から見た平面図。
図2図1のII−II線で切断し横断面図。ただし、中間部を省略している(以下、全ての断面図について同様)。
図3図1のIII−III線で切断した縦断面図。
図4】アンカーコート層、デザイン印刷層及び第2印刷層の積層構造の他の実施形形態を示す横断面図(他の実施形態に係るオーバーラップフィルムを、図1のII−II線と同様の箇所で切断。以下、図5乃至図7も同様)。
図5】アンカーコート層、デザイン印刷層及び第2印刷層の積層構造のさらなる他の実施形形態を示す横断面図。
図6】アンカーコート層、デザイン印刷層及び第2印刷層の積層構造のさらなる他の実施形形態を示す横断面図。
図7】アンカーコート層、デザイン印刷層及び第2印刷層の積層構造のさらなる他の実施形形態を示す横断面図。
図8】オーバーラップフィルムを装着する容器の正面図。
図9】オーバーラップフィルムを容器に装着する手順を示す概略斜視図。
図10】1つの実施形態に係る包装体の斜視図。
図11】同実施形態に係る包装体の底面図。
図12】他の実施形態に係る包装体の斜視図。
図13】さらなる他の実施形態に係る包装体の斜視図。
図14】実施例1で作製したオーバーラップフィルムを裏面側から見た平面図。
図15】実施例で使用した容器の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
ただし、本明細書において、「裏面」は、オーバーラップフィルムを被着体に装着した際に、被着体側となる面をいい、「表面」は、前記裏面とは反対側の面をいう。
なお、各図において表された形状、大きさ、各層の厚み及びそれらの相対的な比率などは、実際の寸法とは異なっていることに留意されたい。
【0013】
<オーバーラップフィルムの層構成>
図1は、長尺状のオーバーラップフィルム11を示す。機械的生産過程では、オーバーラップフィルム11は、通常、長尺体の形態で供給され、被着体に熱収縮装着する際に、所要長さでTD方向に沿って切断され(通常は、熱シールも兼ねた溶断で切断される)、被着体を被包できる大きさの1つのオーバーラップフィルム1が形成される。なお、図1の一点鎖線は、切断予定線を示し、この切断予定線で切断されたものが、1つのオーバーラップフィルム1となる。
本発明のオーバーラップフィルム1は、図1乃至図3に示すように、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2と、アンカーコート層3、デザイン印刷層4及び第2印刷層5が積層された領域6と、を有する。以下、アンカーコート層3、デザイン印刷層4及び第2印刷層5が積層された領域を積層領域6という場合がある。
詳しくは、オーバーラップフィルム1は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2と、前記熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の裏面に積層されたアンカーコート層3と、前記アンカーコート層3の裏面に積層されたデザイン印刷層4と、前記デザイン印刷層4の裏面に積層された第2印刷層5と、を有する。前記アンカーコート層3は、バインダー樹脂として塩素化ポリオレフィン系樹脂を含む。前記デザイン印刷層4は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂を含む。前記第2印刷層5は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂を含み、さらに、無機顔料を含む。好ましくは、アンカーコート層3は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の裏面に直接接して設けられ、デザイン印刷層4は、アンカーコート層3の裏面に直接接して設けられ、第2印刷層5は、デザイン印刷層4の裏面に直接接して設けられる。
本発明のオーバーラップフィルム1は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2と、前記アンカーコート層3、デザイン印刷層4及び第2印刷層5の積層領域6と、を有することを条件として、他の層を有していてもよい。
【0014】
アンカーコート層3の周囲には、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の裏面が露出した領域21が設けられている。この熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の裏面が露出した領域は、コロナ放電処理などの表面処理が施されていない、フィルム面そのものである(以下、裏面露出領域21という場合がある)。換言すると、アンカーコート層3は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の外周縁よりも内側に設けられており、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の外周縁を含む外周部には、平面視で環状の裏面露出領域21が設けられている。この裏面露出領域21が設けられていることにより、後述するように、良好な熱シール部を構成できる。
なお、長尺状のオーバーラップフィルム11については、長尺状の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムのMD方向(長手方向)に所定間隔を開けてアンカーコート層3が規則的に設けられている。
【0015】
このアンカーコート層3の裏面に、デザイン印刷層4が設けられている。デザイン印刷層4は、アンカーコート層3に重ねて設けられている。デザイン印刷層4は、アンカーコート層3の外周縁よりも内側に配置されていている。換言すると、デザイン印刷層4の縁がアンカーコート層3の外周縁に重なる又はそれを越えないように、デザイン印刷層4が設けられている。
このデザイン印刷層4の裏面に、第2印刷層5が設けられている。第2印刷層5は、デザイン印刷層4に重ねて設けられている。第2印刷層5は、デザイン印刷層4の縁よりも内側に配置されている。換言すると、第2印刷層5の縁がデザイン印刷層4の縁に重なる又はそれを越えないように、第2印刷層5が設けられている。
【0016】
図4は、他の実施形態に係るオーバーラップフィルムの断面図であり、図5乃至図7は、それぞれ独立して、さらなる他の実施形態に係るオーバーラップフィルムの断面図である。これらの他の実施形態においても、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の外周部には、裏面露出領域21が設けられている。
【0017】
図2乃至図3に示す積層構造は、デザイン印刷層4がベタ状に設けられているが、例えば、図4に示すように、デザイン印刷層4が独立した2つの以上の範囲に設けられていてもよい。なお、ベタ状とは、1つの範囲に連続して設けられていることをいう。詳しくは、ベタ状に設けるとは、平面視で四角形状、ドーナツ状などの全体として1つの連続した範囲に設けることが含まれる。
また、特に図示しないが、第2印刷層5についても、同様に独立した2つの以上の範囲に設けられていてもよい。デザイン印刷層4が2つの以上の範囲に設けられていている場合、第2印刷層5は、図4に示すように、それらのデザイン印刷層4の裏面を含んでベタ状に設けられていてもよい。この場合、第2印刷層5は、デザイン印刷層4の裏面及びアンカーコート層3の裏面に跨がって直接積層されている。
或いは、特に図示しないが、第2印刷層5は、それらのデザイン印刷層4の裏面のみに設けられていてもよい。或いは、特に図示しないが、第2印刷層5は、それらのデザイン印刷層4の裏面の一部とアンカーコート層3の裏面の一部に跨がって設けられていてもよい(この場合、デザイン印刷層4の裏面には、第2印刷層5が積層されていない部分を有する)。
【0018】
また、図2乃至図3に示す積層構造は、デザイン印刷層4の縁がアンカーコート層3の外周縁よりも内側に且つ第2印刷層5の縁がデザイン印刷層4の縁の内側に配置されているが、これに限定されない。
例えば、図5において、デザイン印刷層4は、その縁の一部又は全部がアンカーコート層3の外周縁上に一致して配置され、第2印刷層5は、アンカーコート層3の縁及びデザイン印刷層4の縁よりも内側に配置されている。
図6において、デザイン印刷層4は、その縁がアンカーコート層3の外周縁よりも内側に配置され、第2印刷層5は、デザイン印刷層4の縁を超え、その第2印刷層5の縁の一部又は全部がアンカーコート層3の外周縁上に一致して配置されている。
図7において、デザイン印刷層4は、その縁の一部又は全部がアンカーコート層3の外周縁上に一致して配置され、第2印刷層5は、その縁の一部又は全部がアンカーコート層3の外周縁上に一致して配置されている。
なお、図5乃至図7に示す実施形態においても、上述の図4に示す実施形態と同様に、デザイン印刷層4及び/又は第2印刷層5が、独立した2つの以上の範囲に分かれて設けられていてもよい。
【0019】
アンカーコート層3の縁に一致するようにデザイン印刷層4を精度良く印刷することは煩雑であるため、デザイン印刷層4は、その縁がアンカーコート層3の外周縁よりも内側に位置するように設けられていることが好ましい。同様の理由から、第2印刷層5についても、その縁がアンカーコート層3の外周縁よりも内側に位置するように設けられていることが好ましい。
さらに、第2印刷層5がデザイン印刷層4の縁を越えて設けられている場合には、オーバーラップフィルム1の表面側から見たときに、第2印刷層5のうちその越えた部分がデザイン印刷層4に付随したような線状模様となって視認される。また、第2印刷層5の縁がデザイン印刷層4の縁に一致して設けられている場合には、オーバーラップフィルム1の表面側から斜めに見たときに、その第2印刷層5の縁がデザイン印刷層4に付随したような細い線状模様となって視認されることがある。このような外観を生じないようにするために、第2印刷層5は、デザイン印刷層4の縁の内側に設けられていることが好ましい。
【0020】
なお、図2乃至図7に示す実施形態では、デザイン印刷層4及び第2印刷層5はアンカーコート層3の外周縁を越えていないが、デザイン印刷層4及び/又は第2印刷層5がアンカーコート層3の外周縁を少し越えた状態で積層されていてもよい。
また、図2乃至図7に示す実施形態では、第2印刷層5の裏面が、オーバーラップフィルム1の最裏面を構成している(ただし、第2印刷層5の裏面が、オーバーラップフィルム1の最裏面の全てを構成しているわけではなく、その最裏面が主として第2印刷層5の裏面にて構成されている)。この場合、オーバーラップフィルム1を被着体に装着した際には、第2印刷層5の裏面が被着体に接するようになるので好ましいが(第2印刷層5が被着体接触層となる)、この第2印刷層5の裏面に保護層が積層されていてもよい。
【0021】
<熱収縮性ポリオレフィン系フィルム>
熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2は、フィルムを構成する主成分樹脂がポリオレフィン系樹脂である、無色透明又は有色透明の熱収縮性フィルムである。この熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の少なくとも裏面、好ましくは表面及び裏面は、コロナ放電処理などの表面処理が施されていない。
なお、本明細書において、主成分樹脂は、それに含まれる樹脂成分の中で最も多い成分(質量比)をいう。
前記熱収縮性は、所要温度(例えば、70℃〜160℃)に加熱されると収縮する性質をいう。熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2は、その面内の少なくとも1つの方向(第1方向)に熱収縮し、好ましくは面内において直交する2つの方向(第1方向及び第2方向)に熱収縮する。
熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の熱収縮率は、特に限定されない。例えば、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の、90℃に加熱した際の第1方向及び第2方向における熱収縮率は、それぞれ独立して、20%以上であり、好ましくは25%以上である。
式:熱収縮率(%)=[{(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)−(第1方向(又は第2方向)の浸漬後の長さ)}/(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)]×100。
熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の厚みは、特に限定されず、例えば、10μm〜60μmであり、好ましくは12μm〜40μmである。
熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレンで構成されたポリプロピレンフィルム;ポリエチレンで構成されたポリエチレンフィルムなどが挙げられ、ポリプロピレンフィルムが好ましい。前記ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体などが挙げられ、前記ポリエチレンとしては、ポリエチレン単独重合体、ポリエチレン共重合体などが挙げられる。
なお、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2には、公知の空気抜き用の孔が複数穿設されている。空気抜き用の孔は、図示せず。
【0022】
<アンカーコート層>
前記アンカーコート層3は、表面処理が施されていない面の印刷適性を向上させるための層である。熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の裏面そのものには、インキを直接印刷して良好なデザイン印刷層4を形成することが困難であるが、アンカーコート層3を設けることにより、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の裏面側に良好なデザイン印刷層4を形成できる。
前記アンカーコート層3は、その裏面のデザイン印刷層4を視認できるようにするため、無色透明又は有色透明である。
アンカーコート層3は、樹脂成分として塩素化ポリオレフィン系樹脂を含んでいる。
前記塩素化ポリオレフィン系樹脂としては、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン又は塩素化ポリプロピレンをエチレン性不飽和結合を有するアクリルポリマー又はウレタンポリマーで変性したアクリル変性又はウレタン変性塩素化ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
塩素化ポリオレフィン系樹脂の塩素含有率は、特に限定されないが、良好な印刷適性の観点から、5質量%〜45質量%が好ましい。
アンカーコート層3の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01μm〜3μmであり、好ましくは0.05μm〜2μmである。塩素化ポリオレフィン系樹脂を含むアンカーコート層3は、通常、トルエンなどの有機溶剤に塩素化ポリオレフィン系樹脂を溶解させたコート液を所要範囲に塗工し、それを乾燥することによって形成されるが、完全に溶剤が揮発せずに残留することがある。この点、前記のような非常に薄い厚みのアンカーコート層3は、残留溶剤の影響も格段に低く、また、厚みの薄いアンカーコート層3であってもデザイン印刷層4のインキの印刷適性を向上できる。
【0023】
<デザイン印刷層>
デザイン印刷層4は、商品名、絵柄、成分表示、バーコード、2次元コード、注意書きなどの各種デザイン表示が表された印刷層である。デザイン印刷層4は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂と着色剤とを含むインキを、公知の印刷法にて印刷することによって形成できる。デザイン印刷層4は、その全部又は一部が光透過性を有していてもよく、又は、全部が不透明でもよい。
【0024】
前記デザイン印刷層4は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂と、着色剤と、を含む。
前記着色剤としては、従来公知の顔料又は染料を用いることができる。
前記ウレタン系樹脂は、特に限定されず、インキ用のポリウレタン系樹脂を用いることができる。ウレタン系樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族及び脂環族の公知のジイソシアネート類の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。前記ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、必要に応じて3官能以上のポリイソシアネート類やポリイソシアネートアダクト体を、ジイソシアネート類と混合して用いることもできる。
【0025】
上記ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ブタンジオール(1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等)、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどの低分子量グリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリカプロラクトン共重合体等のポリエーテルジオール;プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類とアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸などの2塩基酸類とから得られるポリエステルジオール;ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ラクトンブロック共重合ジオールなどのラクトンジオール;などのジオール類が挙げられる。また、必要に応じてジオール類と、3官能以上のポリオール化合物(ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなど)とを混合して用いることもできる。
これらの中では、ポリエステルジオール系のポリウレタン(ポリオール化合物としてポリエステルジオールを用いて得られたポリウレタン)が好ましい。
【0026】
前記ウレタン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、柔軟性の観点から、−60〜40℃が好ましく、より好ましくは−50〜30℃である。上記Tgは、例えば、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。DSC測定は、特に限定されないが、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製、示差走査熱量計「DSC6200」を用いて、昇温速度10℃/分の条件で行うことができる。
前記ウレタン系樹脂は、市販品を用いることも可能である。例えば、三洋化成工業(株)製の「サンプレン IBシリーズ、LQシリーズ」などが市場で入手可能である。
【0027】
デザイン印刷層4の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1μm〜5μmである。
デザイン印刷層4のバインダー樹脂は、ウレタン系樹脂を含んでいることを条件として、その他のバインダー樹脂や任意の添加剤を含んでいてもよい。ただし、ウレタン系樹脂は、デザイン印刷層4におけるバインダー樹脂の主成分樹脂である。
デザイン印刷層4中のウレタン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、そのデザイン印刷層4の総量(100質量%)に対して、50質量%〜95質量%が好ましく、60質量%〜90質量%がより好ましい。ウレタン系樹脂の含有量が余りに少ないと、デザイン印刷層4の柔軟性が低下する上、デザイン印刷層4とアンカーコート層3の密着性が低下するおそれがある。
【0028】
<第2印刷層>
第2印刷層5は、ウレタン系樹脂と無機顔料を含む印刷層である。第2印刷層5は、例えば、無色透明、有色透明、無模様一色又は無模様多色の印刷層である。第2印刷層5は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂と無機顔料とを含むインキを、公知の印刷法にて印刷することによって形成できる。第2印刷層5は、その全部又は一部が光透過性を有していてもよく、又は、全部が不透明でもよい。
前記第2印刷層5のウレタン系樹脂としては、上記デザイン印刷層4で例示したようなウレタン系樹脂が挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料;シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料;マイカ、金属酸化物被覆マイカなどのパール顔料;などが挙げられる。無機顔料は、1種単独で又は2種以上を併用できる。これらの中では、無機顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、シリカ、炭酸カルシウム、マイカから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタンを含むことがより好ましい。
なお、酸化チタンや酸化アルミニウムなどの白色顔料を含む第2印刷層5は、白色を呈し、マイカなどのパール顔料を含む第2印刷層5は、虹色を呈する。
【0029】
第2印刷層5の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5μm〜5μmである。
第2印刷層5のバインダー樹脂は、ウレタン系樹脂を含んでいることを条件として、その他のバインダー樹脂や任意の添加剤を含んでいてもよい。ただし、ウレタン系樹脂は、第2印刷層5におけるバインダー樹脂の主成分樹脂である。
第2印刷層5中のウレタン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、その第2印刷層5の総量(100質量%)に対して、20質量%〜55質量%が好ましく、25質量%〜50質量%がより好ましい。ウレタン系樹脂の含有量が余りに少ないと、第2印刷層5の柔軟性が低下し、第2印刷層5がデザイン印刷層4の柔軟性を低下させるおそれがある。
第2印刷層5中の無機顔料の含有量は、特に限定されないが、その第2印刷層5の総量(100質量%)に対して、40質量%〜85質量%が好ましく、45質量%〜80質量%がより好ましく、50質量%〜75質量%がさらに好ましい。さらに、無機顔料が酸化チタンの場合には、第2印刷層5中の酸化チタンの含有量は、第2印刷層5の総量(100質量%)に対して、60質量%〜85質量%が好ましく、65質量%〜80質量%がより好ましい。無機顔料の含有量が余りに少ないと、デザイン印刷層4の亀裂防止効果を十分に奏さないおそれがあり、一方、無機顔料の含有量が余りに多いと、相対的にバインダー樹脂量が少なくなり、第2印刷層5の強度が低くなる。
【0030】
<オーバーラップフィルムの使用例>
本発明のオーバーラップフィルム1は、各種被着体に熱収縮装着して使用される。
オーバーラップフィルム1は、保護フィルム的な目的で、1つの被着体の周囲に被覆装着して使用され、或いは、保護兼結束フィルム的な目的で、複数の被着体からなる集合物の周囲に被覆装着して使用される。
被着体は、特に限定されず、物品が収納された容器でもよく、物品そのものでもよい。
被着体としては、例えば、即席麺などのインスタント食品、ヨーグルトなどの乳製品、ゼリーやプリンなどの嗜好食品、飲料、調味料、シャンプーなどのサニタリー品、精肉類などの生鮮食品などが収納された容器;乾電池などの物品そのものなどが挙げられる。
被着体が物品入り容器である場合、その容器の外形状は、特に限定されず、円筒状、楕円筒状、四角筒状などの筒状;逆円錐台状、逆楕円錐台状、逆四角錐台状などの逆錐台状;瓢箪状などの異形状などが挙げられる。
その容器の材質も特に限定されず、例えば、合成樹脂、発泡合成樹脂、金属、ガラス、陶器、木質材などが挙げられる。
【0031】
例えば、図8に示す容器7(被着体)は、物品が収納された容器本体71と、その容器本体71から径外方向に突出されたフランジ部72と、容器本体71の上面開口部を閉塞する蓋材73と、を有する。この容器7は、全体として逆錐台状のカップ容器7である。図示例の容器本体71は、水平断面外形状が四角形の逆四角錐台状である。フランジ部72は、容器本体71の上端部において水平方向に突設されている。そのフランジ部72の突出頂部72aは、その容器7の側方における最外形部を成している。また、蓋材73は、特に限定されないが、例えば、フランジ部72に剥離可能に接着されたシート蓋などが用いられる。
このような容器7は、即席麺などのインスタント食品を収納する容器として汎用されているものである。
【0032】
次に、前記容器7にオーバーラップフィルム1を装着して包装体を製造する手順を説明する。
図9は、包装体の製造手順を示す概略斜視図である。図9において、網掛けを付した部分は、積層領域6を示し、白抜き部分は、裏面露出領域21を示し、斜線を付した部分は、熱シール部27,28,29を示す(以下、図10乃至図13も同様)。
図9に示すように、長尺状のオーバーラップフィルム11を筒状にしつつそのMD方向(長手方向)に沿った両側端部の裏面同士を重ね合わせ(合掌貼り)、両面を熱シールすることにより、MD方向に延びる熱シール部27を形成する。この両側端部は、アンカーコート層3などを有さない裏面露出領域21であるので、前記熱シールを良好に行える。この筒状に形成された長尺状のオーバーラップフィルム11の筒内に、容器7(被着体)を挿入する。なお、オーバーラップフィルム11にて容器7を包むようにしながら両側端部の裏面同士を熱シールして、オーバーラップフィルム11を筒状に形成してもよい。
筒内に容器7が入れられた長尺状のオーバーラップフィルム11を、その容器7の前後両側端部でTD方向に溶断熱シールして熱シール部28,29を形成する。なお、この前後両側端部もアンカーコート層3などを有さない裏面露出領域21であるので、前記熱シールを良好に行える。このようにして、容器7を被包し且つ3方が熱シール部(TD方向に延びる2つの溶断熱シール部28,29とMD方向に延びる1つの熱シール部27)とされた袋状のオーバーラップフィルム1が得られる。
その後、この容器7を被包した袋状のオーバーラップフィルム1を、シュリンクトンネルなどに導いて所要温度に加熱することにより、袋状内に存在する空気が空気抜き用孔から外部に逃げながらオーバーラップフィルム1が熱収縮して容器7に密着し、包装体10が得られる。
【0033】
図10は、その包装体10の斜視図を、図11は、同底面図を示す。
包装体10は、オーバーラップフィルム1の積層領域6が容器7のフランジ部72の突出頂部72aに被さった状態で、オーバーラップフィルム1が容器7に装着されている。オーバーラップフィルム1の熱シール部27,28,29は、裏面露出領域21に形成されている。また、包装体10において、前記熱シール部27,28,29は、容器7のフランジ部72に重なっておらず、熱シール部27の大部分は、容器本体71の底面に、熱シール部27の一部と熱シール部28,29は、容器本体71の側面に配置されている。
一般に、オーバーラップフィルムは、熱収縮により被着体に密着するが、オーバーラップフィルムの全てが被着体に密着する場合は少なく、オーバーラップフィルムは、被着体の最外点を結んだ最外形部に沿って強く密着する。このようにオーバーラップフィルムは、熱収縮時に、被着体の最外形部に対応する箇所が被着体に強く密着するので、従来のオーバーラップフィルムにあっては、その箇所に対応するデザイン印刷層に亀裂が生じ易い。
この点、本発明のオーバーラップフィルム1は、容器7のフランジ部72の突出頂部72aに積層領域6が被さっていても、その突出頂部72aに対応する箇所におけるデザイン印刷層4に亀裂が生じることを防止できる。もちろん、突出頂部72aに対応する箇所以外においても、積層領域6のデザイン印刷層4に亀裂が生じるおそれはない。
本発明のオーバーラップフィルム1が熱収縮前後においてデザイン印刷層4に亀裂が生じ難い理由は明確ではないが、本発明者らは下記のように推定している。
すなわち、本発明のオーバーラップフィルム1のデザイン印刷層4は、バインダー樹脂としてウレタン系樹脂を含んでいるので、比較的柔軟であり、熱収縮性ポリオレフィン系フィルム2の熱収縮に追従し易い。さらに、そのデザイン印刷層4の裏面に設けられた第2印刷層5もバインダー樹脂としてウレタン系樹脂を含んでいるので、熱収縮に追従し易い上、さらに無機顔料を含んでいるので、耐熱性に優れ、第2印刷層そのものが割れなどを生じ難いので、第2印刷層がデザイン印刷層4を補強する作用がある。このような理由から、オーバーラップフィルム1を加熱して収縮させる際に、デザイン印刷層4に亀裂が生じ、その層中にデザイン抜け部が生じることを防止できる。
特に、第2印刷層5の裏面が、オーバーラップフィルム1の最裏面を構成している場合で、デザイン印刷層4に第2印刷層5が積層された領域においては、第2印刷層5が被着体に直接接触し且つデザイン印刷層4が被着体に直接接触しないので、デザイン印刷層4の亀裂発生を効果的に防止できる。
【0034】
図12は、水平断面外形状が円形状(又は楕円形状)の容器本体を有する容器7に、オーバーラップフィルム1が熱収縮装着された包装体10を示す。この包装体10は、容器本体71の形状が異なっていることを除いて、図10の包装体10と同様にして製造できる。
図12の包装体10も、逆円錐台状(又は逆楕円錐台状)の容器本体の上端部に、フランジ部72が径外方向に突出されており、積層領域6が少なくともフランジ部72の突出頂部72aに被さった状態でオーバーラップフィルム1が装着されている。
【0035】
図13は、複数(例えば、5つ)の容器7の集合物に、オーバーラップフィルム1が熱収縮装着された包装体10を示す。この包装体10は、被着体が集合物からなることを除いて、図10の包装体10と同様にして製造できる。
図13の各容器7は、フランジ部が形成されていないが、この各容器7の上端部の一部分は集合物の最外形部となっている。オーバーラップフィルム1は、その積層領域6が少なくとも前記集合物の最外形部に被さった状態で装着されている。
このように本発明のオーバーラップフィルム1を、フランジ部を有さない容器に装着することにより、包装体が構成されていてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
[使用した材料]
熱収縮性ポリオレフィン系フィルム:厚み15μmの表面処理のないポリプロピレンフィルム(興人フィルム&ケミカルズ製の商品名「コージンポリセットAS」)。
アンカーコート剤:5質量部の塩素化ポリプロピレン樹脂(日本製紙ケミカル製の商品名「スーパークロン803MW」。塩素含有率29.5%)と、95質量部のトルエンと、からなる溶液。
【0038】
デザインインキ1:30質量部のウレタン系樹脂(三洋化成製の商品名「IB−915」。Mw=4万〜5万、Tg=約−50℃)と、15質量部の藍顔料(銅フタロシアニンブルー)と、50質量部の溶剤と、5質量部の添加剤と、からなるインキ。
デザインインキ2:9質量部のアクリル系樹脂(三菱レイヨン製の商品名「BR−113」。Mw=7.5万、Tg=約75℃)と、15質量部の藍顔料(銅フタロシアニンブルー)と、70質量部の溶剤と、5質量部の添加剤と、からなるインキ。
【0039】
第2インキA:31.5質量部のウレタン系樹脂(三洋化成製の商品名「IB−915」。Mw=4万〜5万、Tg=約−50℃)と、25質量部の無機白色顔料(酸化チタン)と、19質量部の溶剤と、4.5質量部の添加剤と、からなるインキ。
第2インキB:31.5質量部のウレタン系樹脂(三洋化成製の商品名「IB−915」。Mw=4万〜5万、Tg=約−50℃)と、35質量部の無機白色顔料(酸化チタン)と、19質量部の溶剤と、4.5質量部の添加剤と、からなるインキ。
第2インキC:31.5質量部のウレタン系樹脂(三洋化成製の商品名「IB−915」。Mw=4万〜5万、Tg=約−50℃)と、45質量部の無機白色顔料(酸化チタン)と、19質量部の溶剤と、4.5質量部の添加剤と、からなるインキ。
第2インキD:10.5質量部のアクリル系樹脂(三菱レイヨン製の商品名「BR−113」。Mw=7.5万、Tg=約75℃)と、45質量部の無機白色顔料(酸化チタン)と、40質量部の溶剤と、4.5質量部の添加剤と、からなるインキ。
第2インキE:65.5質量部のウレタン系樹脂(三洋化成製の商品名「IB−915」。Mw=4万〜5万、Tg=約−50℃)と、30質量部の溶剤と、4.5質量部の添加剤と、からなるインキ。
【0040】
[実施例1]
上記熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの面内の、縦横480mm×265mmの範囲に、グラビア印刷機を用いて、アンカーコート剤をベタ状に塗布し、乾燥することにより、厚み約1μmのアンカーコート層を形成した。
このアンカーコート層の裏面に、グラビア印刷機を用いて、デザインインキ1をベタ状に塗布し、乾燥することにより、厚み約1μmのデザイン印刷層を形成した。
このデザイン印刷層の裏面に、グラビア印刷機を用いて、第2インキAをベタ状に塗布し、乾燥することにより、厚み約2.5μmの第2印刷層を形成した。
その後、アンカーコート層の外周縁から10mm離れた線に沿って熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを裁断することにより、図14に示すように、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの外周部を除いた中央部に、アンカーコート層、デザイン印刷層及び第2印刷層(積層領域)が積層されたオーバーラップフィルムを作製した。なお、図14の無数のドットを付加した部分は、積層領域であり、白抜きは、フィルムの裏面が露出した裏面露出領域であり、フィルムの幅及び長さ、並びに裏面露出領域の幅の具体的寸法を併記している。
【0041】
[実施例2]
第2インキAに代えて、第2インキBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、オーバーラップフィルムを作製した。
【0042】
[実施例3]
第2インキAに代えて、第2インキCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、オーバーラップフィルムを作製した。
【0043】
[比較例1]
デザインインキ1に代えて、デザインインキ2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、オーバーラップフィルムを作製した。
【0044】
[比較例2]
第2インキAに代えて、第2インキDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、オーバーラップフィルムを作製した。
【0045】
[比較例3]
デザインインキ1に代えて、デザインインキ2を用いたこと、及び、第2インキAに代えて、第2インキDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、オーバーラップフィルムを作製した。
【0046】
[比較例4]
第2インキAに代えて、第2インキEを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、オーバーラップフィルムを作製した。
【0047】
<デザインインキの定着評価(加熱なし)>
実施例1のオーバーラップフィルムの積層領域を有する部分を、100mm角に切り出してサンプル片を得た。このサンプル片の両端部を両手で掴み、10回手で揉んだ後、デザイン印刷層の状態を目視で確認した。その結果を、以下の評価基準で区別した。他の実施例及び比較例についても同様にして、加熱しない状態での印刷層の定着具合を確認した。それらの結果を、表1及び表2のインキ定着(加熱無)に示す。
○:デザイン印刷層の剥離がなかった。
△:デザイン印刷層中に生じた皺に沿って、少し剥離が生じていた。
×:デザイン印刷層中に生じた皺の周辺部にまで剥離が生じていた。
【0048】
<デザインインキの定着評価(加熱あり)>
実施例1のオーバーラップフィルムの積層領域を有する部分を、200mm角に切り出してサンプル片を得た。このサンプル片の四方を治具に取付け、ジェッター(白光社製のヒーティングガン)を用いて、サンプル片を縦横それぞれ50%の長さに熱収縮させた。熱収縮後のサンプル片の両端部を両手で掴み、10回手で揉んだ後、デザイン印刷層の状態を目視で確認した。その結果を、上記評価基準で区別した。他の実施例及び比較例についても同様にして、加熱後の状態での印刷層の定着具合を確認した。それらの結果を、表1及び表2のインキ定着(加熱有)に示す。
【0049】
<包装体のデザイン印刷層の評価>
図15に示すような寸法のフランジ部付き容器を準備した。この容器は、発泡樹脂製のフランジ部付きの容器本体と、フランジ部の上面に熱溶着されたシート蓋と、を有する。容器本体の開口部は、上面視略正方形状の開口であり、フランジ部の突出頂部は、その開口部よりも大きな上面視略正方形状であり、フランジ部の突出頂部は、容器の側方における最外形部である。
【0050】
実施例1の手順で作製したオーバーラップフィルムの面内に縦横約30mmの間隔で空気抜き用の孔(孔径:約0.3mm)を穿設した。このオーバーラップフィルムの長さ285mmの両側端部の裏面(裏面露出領域)を重ね合わせ、熱シールすることにより、オーバーラップフィルムを筒状に形成した。この筒状のオーバーラップフィルムの筒内に図15に示す容器を差入れ、筒状に形成されたオーバーラップフィルムの長さ500mmの側端部の裏面をそれぞれ熱シールすることにより、図9に示すような、容器を被包し且つ3方が熱シールされた袋状のオーバーラップフィルムを作製した。
次に、直径100mm、高さ100mmの円柱状の金属台が設置された160℃の恒温槽内に、内部に容器を被包した前記袋状のオーバーラップフィルムを、その容器の底面が金属台の上面に向かい合うようにして載せ、恒温槽の扉を閉め、20秒間加熱してオーバーラップフィルムを熱収縮させた。このようにして、図10に示すような、包装体を得た。この包装体は、容器のフランジ部の突出頂部の全てにオーバーラップフィルムの積層領域が密着していた。
【0051】
(印刷層の亀裂)
得られた包装体の外側から、デザイン印刷層の状態を目視で観察し、さらに、オーバーラップフィルムを手で破り、容器から引き剥がした後、そのフィルムの裏面側からデザイン印刷層の状態を目視で観察した。その結果を、以下の評価基準で区別した。
○:デザイン印刷層に亀裂は発生していなかった。
△:フィルムを破る前には亀裂が無かったが、破った後に裏面から見ると、デザイン印刷層に少し亀裂が発生していた。
×:フィルムを破る前からデザイン印刷層に亀裂が発生していた。
【0052】
(印刷層の剥離)
オーバーラップフィルムを手で破り、容器から引き剥がした後、デザイン印刷層の剥離を目視で観察した。その結果を、以下の評価基準で区別した。
○:デザイン印刷層の剥離は発生していなかった。
×:デザイン印刷層の剥離が生じていた。
【0053】
(印刷層の転移)
オーバーラップフィルムを手で破り、容器から引き剥がした後、デザイン印刷層が容器に転移していないかを目視で観察した。その結果を、以下の評価基準で区別した。
○:デザイン印刷層のインキの転移は発生していなかった。
×:デザイン印刷層のインキの転移が生じていた。
【0054】
他の実施例及び比較例についても、実施例1のオーバーラップフィルムと同様にして、包装体を作製し、同様に、その包装体のデザイン印刷層の評価を行った。それらの結果を、表1及び表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
デザイン印刷層がウレタン系樹脂を含み、且つ、第2印刷層がウレタン系樹脂及び酸化チタン(無機顔料)を含む実施例1乃至3のオーバーラップフィルムは、デザイン印刷層のインキ定着性に優れ、さらに、包装体に装着した後でも、デザイン印刷層の亀裂や剥離が生じ難いことが判る。
【符号の説明】
【0058】
1 オーバーラップフィルム
2 熱収縮性ポリオレフィン系フィルム
3 アンカーコート層
4 デザイン印刷層
5 第2印刷層
6 アンカーコート層、デザイン印刷層及び第2印刷層が積層された領域
7 容器
72 フランジ部
72a フランジ部の突出頂部
10 包装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15