特許第6422902号(P6422902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6422902-可搬式水力外灯 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422902
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】可搬式水力外灯
(51)【国際特許分類】
   F21L 13/02 20060101AFI20181105BHJP
   F03B 7/00 20060101ALI20181105BHJP
   A01M 1/04 20060101ALI20181105BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20181105BHJP
【FI】
   F21L13/02
   F03B7/00
   A01M1/04 Z
   F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-31858(P2016-31858)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-152128(P2017-152128A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】592070579
【氏名又は名称】山田技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠幸
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3192894(JP,U)
【文献】 特開昭62−113865(JP,A)
【文献】 特開2015−001302(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0172043(US,A1)
【文献】 特開2002−235654(JP,A)
【文献】 特開2011−094522(JP,A)
【文献】 特開2009−218019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21L 13/02
A01M 1/04
F03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車の回転にて発電機を回して発生する電気で照明を点灯するようにした外灯において、上記水車はベースから起立した支柱上端部に配置され該支柱には垂直に起立する細長い側板を取付け、側板上端には防雨屋根を備えると共に、該防雨屋根に持ち手を取付けて構成し、上記水車の回転軸は水平として垂直面内で回転可能に軸支され、そして所定の間隔をもった平行円板間には複数枚の羽根を取付けた構造とし、上記水車の上方には水を供給する為に先端部をL形に湾曲して羽根に流れ落ちるようにした給水管を有し、上記水車の回転にて電気を発生する発電機、該発電機にて発生した電気にて点灯する照明を備え、該照明は上記防雨屋根から下方へ延びる支持板に軸ピンを介して向きを変えることが出来るようにしたアームの先端に取付け、上記水車は落差が0.5m〜1mで1〜2リットル/秒の水量にて稼動し、また装置全体の重量を7kg以下とし、ベースから持ち手までの高さを90cm以内としたことを特徴とする可搬式水力外灯。
【請求項2】
上記照明を昆虫に対する誘引性の高いLEDで構成して誘蛾灯として機能させた請求項1記載の可搬式水力外灯。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は僅かな水量で発電し、この電力を利用して点灯することが出来る可搬式の外灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人が集まる場所では夜になると外灯が点灯して暗闇状態ではないが、山間部などの人気がない地域になると暗闇になる場所も多い。一般住宅に電気が通じていないことはないが、住宅から離れた場所では明りが全くなくて危険なことも多い。
例えば、市街地の職場から山間の自宅に帰宅した後、家の裏庭にある畑へ行って野菜物を採取する場合に明りがなく真っ暗闇の中で作業をしなくてはならない。また、採取した野菜を小川で洗う時にも明りがなく危険である。
【0003】
近年、小型水車や小型風車を動力源とした発電装置も多用されているが、従来の小型水車であってもある程度の流れを伴う河川がなくてはならず、山間の集落ともなれば小型水車が稼働する河川はない。
また、風車にしても木々が乱立する山間では、所定必要な風が常に吹くことはない。従来から水車を用いた発電機、及び風車を用いた発電機に関しての技術は各多く開発されている。
【0004】
例えば、特開2016−14360号に係る「水車装置、およびそれを利用した小規模発電機」は、簡単に運搬、設置、利用、撤去および保管できる程度に十分に小型・軽量化し、構造が簡素で少量の水量であっても効率的に発電可能な上、耐久性に秀でたものである。
すなわち、台型ベースに天面水槽および排水路を確保し、該天面水槽には、円形器状内壁の中心に軸受け座を設け、落水口を開口したケーシングを埋設し、同ケーシングの遠心周壁回りに複数の誘導管路及び供給端を接続し、同各誘導管路の吸入口を、該ケーシングの遠心周壁周りの同じ向きに揃う接線近似遠心方向に向け、天面水槽に露出開口するよう配し、軸受け座には翼輪の主軸を回転自在に軸着した水車装置である。
【0005】
特開2014−118831号に係る「水車装置、および水力発電装置」は、ケースの側壁部を排水側に先すぼまりの円錐台形状とし、内部に羽根車を配置し、ケースには、側壁部に羽根車の軌跡の接線方向から羽根車に水を供給する給水管を備え、小径側に羽根車の軸線に沿い水を排出する排水管を備えている。羽根車は円錐台形状の軸部材の周囲に排水管側にむけ回転軸からの距離が小さく構成した12枚のブレードを備え、周縁が排水側壁部の内壁に近接した円錐台形の軌跡を描く。ブレードは、回転軸に対して45°で傾斜し、かつ回転軸からの放射方向に対して45°で傾斜するよう設けている。
【0006】
特開2011−27078号に係る「小型風力発電装置」は、小型風力発電装置であって、強風時、ブレードに作用する風力を十分低減できる程度に風車の向きを変化させる。
風を受けて風車が回転し、この風車の回転によりナセルが発電を行う小型風力発電装置であって、回転速度検出手段が風車の回転速度を検出し、風車と風車方向変更手段との間に設けられたクラッチ手段が、風車の回転速度が基準値以上のときは風車の回転を風車方向変更手段に伝達し、風車の回転速度が基準値未満の時は風車の回転を風車方向変更手段に伝達しないようにする。風車方向変更手段が、風車の回転により駆動されて風車の向きを上下方向もしくは左右方向のいずれか一方に向けて変化させる。
【0007】
【特許文献1】特開2016−14360号に係る「水車装置、およびそれを利用した小規模発電機」
【特許文献2】特開2014−118831号に係る「水車装置、および水力発電装置」
【特許文献3】特開2011−27078号に係る「小型風力発電装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように比較的小型の水車や風車は色々と知られている。しかし、従来の小型水車と言えども山間を流れる谷水を利用して回転し、この回転力にて発電機を回すことは出来ない。勿論、このようなごく小型の水力発電装置は存在していない。
本発明が解決しようとする課題はこの問題点であって、ごく僅かな水流にて水車を回して発電することが出来、この電力を用いて外灯を点灯することが出来る可搬式水力外灯を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る可搬式水力外灯を構成する水車は、落差が0.5m〜1mで、1〜2リットル/秒の水量を利用して回転し、発電することが出来るように構成している。低落差・小水量で効率よく発電することが出来る発電機と水に混入する草や小枝などのゴミで水車が停止せず、故障しないように構成している。
そこで、ベースには支柱を起立すると共に該支柱に水車を回転可能に軸支し、該水車は支柱に設けた水平な回転軸を中心として垂直面内で回転する。
【0010】
水車は複数の羽根を有し、この羽根に落下水が当たるように水車の上方に流出管(給水管)の出口を配置している。そして、水車の回転軸の回転にて小型発電機が回転することが出来るように連動した構造としている。小型発電機は水車の回転軸と直結してもよく、又はギヤ等を介して発電機を連動してもよい。
さらに、フレームにはLED照明が取付けられ、上記発電機にて発生した電気によってLED照明が点灯することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可搬式水力外灯は、山間を流れる僅かな水量(例えば、谷水)で発電することが出来る。外灯のない、裏庭や作業場に可搬式水力外灯を持ち運んで設置することで、周りを明るくすることが可能であり、この際、特別な電気配線も不要となる。
本発明の可搬式水力外灯は水平軸を中心として垂直面内で回転する水車を備えた構造であり、この水車の外周部に上方から落下する僅かな水を落として該水車は回転し、この回転力にて発電機を回すことが出来、発電機から発生する電力でLED照明が点灯する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る可搬式水力外灯を示す正面図。
図2】本発明に係る可搬式水力外灯を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図2は本発明に係る可搬式水力外灯を示す実施例で、正面図と側面図を示している。同図の1は水車、2はLED照明、3は持ち手をそれぞれ表し、該水車1はベース4から起立する両支柱5,5の上端部に軸支されて回転することが出来る。水車1は平行な両円板6,6の間に複数枚の羽根7,7・・・を配列した構造と成っている。
【0014】
上記支柱5,5には細長い側板8,8を取付けて垂直に起立し、該側板8,8の上端には防雨屋根9を取付けている。また、防雨屋根9から下方へ延びる支持板10にはアーム11a,11bが取付けられ、該アーム11a,11bの先端にはLED照明2a,2bを有している。ここで、アーム11a,11bは支持板10に軸ピンを介して向きを変えることが出来るように成っている。
【0015】
ところで、上記水車1の上方には給水管12が配置され、該給水管12は山間を流れる谷水を給水管12へ導いて、水車1に流し落す。その為に、給水管12の先端部はL形に湾曲して、水車1の羽根7,7・・・に勢いよく流れ落ち、該水車1を回転することが出来る。ここで、上記給水管12は側板8,8に取付けて可搬式水力外灯の一部として構成することも出来るが、可搬式水力外灯から切り離して構成し、適当な給水管12を配置することも可能である。
ところで、水車1の回転によって発電機が駆動して電気を発生し、この電気を上記LED照明2a,2bヘ導いて点灯することが出来る。
【0016】
この可搬式水力外灯は、落差0.5m〜1.0mの水量1〜2リットル/秒を給水管12から水車1に供給する場合、理論エネルギーとして約9.8wを得ることが出来る。効率を20〜30%とするならば、1.9〜2.9Wの照明電源が得られる。
低落差・小水量で効率よく発電するには、低回転で発電が出来る発電機と、水に混入している草や小枝などのゴミで停止することがない水車構造が求められる。
【0017】
上記実施例で示す型式の水車1の場合、水平な回転軸を中心として垂直面内で回転し、水中にゴミが混入している場合、該ゴミは水車の上を乗り越えて下流へ流れ落ち、水車の回転に影響しないようにしている。そこで、水車1の直径は約30cmとし、水量2リットル/秒を給水するとして、水車1の幅は15cmとしている。
【0018】
そして、発電機としては雨水に強くて低回転で発電し、自転車に取付けられてる頑丈なハブダイナモを使用することが出来る。該ハブダイナモの軸を水車1の回転軸に直結する構造とし、水車1と発電機を一体化して構成している。
上記可搬式水力外灯では、落差が1m、水量が1リットル/秒とした場合、約1.8Wの電力が得られた。
また、落差が0.5mで、水量が2リットル/秒の場合も約1.8Wの電力を発生することが出来た。
【0019】
照明負荷として、6V−0.25W程度の自転車ライトを利用する場合、4台点灯しても1Wの消費電力であり、水量が多少変化しても対応可能となる。
ところで、上記実施例で示した可搬式水力外灯は、その重量が7kg以内に収まり、ベース4から持ち手3までの高さは90cm以内に収まる。従って、手軽に持ち運びすることが出来、設置する際も、また所定の場所に収納する場合も便利である。
【0020】
ところで、本発明の可搬式水力外灯は所定の場所を照らす以外の利用方法として誘蛾灯としての利用が有る。 蛾や一部の甲虫・カメムシ類のように夜行性の昆虫類は、照明光源に誘引されるものが多く、昆虫が視覚で感じる光の波長域は、人間の可視光の範囲(400〜700nm)よりも紫外領域(250〜400nm)にずれていて、多くの昆虫は人間には見えない紫外線を「色」として認識している。夜行性の昆虫を誘引する光源のうち、相対的に紫外線を多く放射する光源の方が誘引力は高いと言われている。これら昆虫に対する誘引性の高い光源をLEDで構成して可搬式水力誘蛾灯として機能させることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 水車
2 LED照明
3 持ち手
4 ベース
5 支柱
6 円板
7 羽根
8 側板
9 防雨屋根
10 支持板
11 アーム
12 給水管



図1
図2