特許第6422907号(P6422907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422907
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20181105BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20181105BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20181105BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L21/31 B
   H01L21/302 101H
   C23C16/44 J
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-50181(P2016-50181)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-168534(P2017-168534A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎哉
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−107243(JP,A)
【文献】 特開2012−054541(JP,A)
【文献】 特開2003−077839(JP,A)
【文献】 特開2010−287361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/44
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応部からの排気ガスを搬送する第1配管と、
前記第1配管へクリーニングガスを供給する第1供給部と、
前記第1配管に設けられたヒータと、
前記第1配管または前記ヒータの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサで検知された温度に基づいて前記ヒータへ供給する電力を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記第1配管の温度をほぼ一定にするように前記ヒータへ供給する電力を制御する、半導体製造装置。
【請求項2】
反応部からの排気ガスを搬送する第1配管と、
前記第1配管へクリーニングガスを供給する第1供給部と、
前記第1配管に設けられたヒータと、
前記第1配管または前記ヒータの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサで検知された温度に基づいて前記ヒータへ供給する電力を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記第1配管または前記ヒータの温度をほぼ一定にするように前記クリーニングガスに含まれる不活性ガスの含有率を制御する半導体製造装置。
【請求項3】
反応部からの排気ガスを搬送する第1配管と、
前記第1配管へクリーニングガスを供給する第1供給部と、
前記第1配管に設けられたヒータと、
前記第1配管または前記ヒータの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサで検知された温度に基づいて前記ヒータへ供給する電力を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記第1配管または前記ヒータの温度が第1温度以上になったときに、前記クリーニングガスの供給量を減少させあるいはその供給を停止させる半導体製造装置。
【請求項4】
反応部からの排気ガスを搬送する第1配管と、
前記第1配管へクリーニングガスを供給する第1供給部と、
前記第1配管に設けられたヒータと、
前記第1配管または前記ヒータの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサで検知された温度に基づいて前記ヒータへ供給する電力を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記第1配管または前記ヒータの温度が第1温度以上となったときに、前記クリーニングガスに含まれる不活性ガスの含有率を増大させる半導体製造装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1配管または前記ヒータの温度をほぼ一定にするように前記クリーニングガスに含まれる不活性ガスの含有率を制御する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1配管または前記ヒータの温度が第1温度以上になったときに、前記クリーニングガスの供給量を減少させあるいはその供給を停止させる、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第1配管または前記ヒータの温度が第1温度以上となったときに、前記クリーニングガスに含まれる不活性ガスの含有率を増大させる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やRIE(Reactive Ion Etching)装置等の半導体製造装置において、成膜処理やエッチング処理を行っていると、排気配管内に副生成物が溜まる。シリコンを含有する副生成物は、例えば、ClFガスのようなクリーニングガスを用いて除去することができる。このような副生成物とクリーニングガスとが反応するときには熱が発生するので、従来、排気配管の温度をモニタすることによって、クリーニングの終点を検知していた。
【0003】
しかし、クリーニングによって排気配管内に溜まっている副生成物が次第に少なくなると、単位面積当たりの発熱量が低下する。発熱量が低下し排気配管の温度が低下すると、副生成物とクリーニングガスとの反応速度もそれに伴って低下する。このため、クリーニングの終点検知の直前において、クリーニング処理は、比較的遅い反応速度で緩やかに長時間に亘って進行する。これでは、クリーニング時間が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−004962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気配管内のクリーニング時間を短縮することができる半導体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による半導体製造装置は、反応部からの排気ガスを搬送する第1配管を備える。第1供給部は、第1配管へクリーニングガスを供給する。ヒータは、第1配管に設けられている。温度センサは、第1配管またはヒータの温度を検知する。コントローラは、温度センサで検知された温度に基づいてヒータへ供給する電力を制御する。コントローラは、第1配管の温度をほぼ一定にするようにヒータへ供給する電力を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態による半導体製造装置1の構成の一例を示すブロック図。
図2】反応生成物からの反応熱、ヒータ90からの供給熱および排気配管60の温度の関係を示すグラフ。
図3】本実施形態による装置1のクリーニング処理の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0009】
図1は、本実施形態による半導体製造装置1(以下単に、装置1ともいう)の構成の一例を示すブロック図である。装置1は、例えば、CVD装置、エピタキシャル装置等の成膜装置あるいはRIE装置等のエッチング装置でよい。
【0010】
装置1は、チャンバ10と、反応ガス供給部20と、処理コントローラ30と、ポンプ40と、除害装置50と、排気配管60と、クリーニングガス供給部70と、希釈ガス供給部80と、ヒータ90と、ヒータ・コントローラ95と、温度センサSとを備えている。
【0011】
反応部としてのチャンバ10は、半導体基板(図示せず)を収容可能であり、該半導体基板の表面に材料膜を成膜し、あるいは、半導体基板または半導体基板上の材料膜をエッチングするために反応ガスを導入する。チャンバ10の内部は、ポンプ40と圧力調整弁(図示せず)によって所定の圧力に調圧されており、反応ガス供給部20から反応ガスを受け入れる。
【0012】
第2供給部としての反応ガス供給部20は、配管によってチャンバ10と接続されており、チャンバ10へ反応ガスを供給する。反応ガスは、例えば、シランや塩化シラン等のシリコンを含有する成膜ガス、フッ化硫黄やフッ化炭素等のフッ素を含有するエッチングガスでよい。
【0013】
処理コントローラ30は、チャンバ10、反応ガス供給部20、ポンプ40、除害装置50等の装置1の各構成を制御し、成膜処理またはエッチング処理を実行する。また、処理コントローラ30は、クリーニングガス供給部70および希釈ガス供給部80を制御して排気配管60のクリーニング処理を実行する。
【0014】
ポンプ40は、排気配管60を介してチャンバ10に接続されており、チャンバ10内を真空引きし減圧する。ポンプ40は、チャンバ10内を真空引きすることによって、チャンバ10内の反応生成ガス、および、クリーニングガス供給部70からのクリーニングガスを排気配管60へ導く。
【0015】
除害装置50は、排気配管60に接続されており、反応生成ガスやクリーニングガスを処理して無害化し、処理後のガスを装置1の外部へ排出する。
【0016】
排気配管60は、チャンバ10からポンプ40および除害装置50まで接続し、ポンプ40を介してチャンバ10内の反応生成ガスを除害装置50へ搬送する。排気配管60は、反応ガス供給部20の配管とは異なる位置に接続されており、成膜処理またはエッチング処理時に発生する反応生成ガスをチャンバ10から排気する。排気配管60には、例えば、ステンレス等の耐腐食性材料を用いている。
【0017】
反応生成ガスが排気配管60を通過する際に、反応生成物が液化あるいは固化して排気配管60の内壁に付着する場合がある。例えば、装置1がシラン等を用いて成膜処理をする場合、反応生成物として、塩化シランポリマが排気配管60の内壁に付着する場合がある。大量の反応生成物が排気配管60に溜まると、ポンプ40による排気能力や減圧能力等に悪影響を与える。そこで、装置1は、定期的にクリーニングガス供給部70からのクリーニングガスを用いて排気配管60内をクリーニング処理する。
【0018】
第1供給部としてのクリーニングガス供給部70は、チャンバ10近傍の排気配管60に接続されており、クリーニングガスを排気配管60へ供給する。クリーニングガスには、例えば、ClFガスまたはNFガスを用いる。ClFガスまたはNFガス等のクリーニングガスは、塩化シランポリマ等の反応生成物と反応して反応生成物を除去することができる。
【0019】
希釈ガス供給部80は、クリーニングガス供給部70とともに、チャンバ10近傍の排気配管60に接続されており、希釈ガスをクリーニングガスと共に供給することができる。希釈ガスには、例えば、窒素等の不活性ガスを用いる。希釈ガスは、クリーニングガスを希釈し、クリーニングガスと反応生成物との反応速度および反応熱を制御するために用いられる。
【0020】
ヒータ90は、排気配管60の周囲に設けられており、排気配管60を加熱することができる。ヒータ90には、温度センサSが設けられている。温度センサSは、排気配管60またはヒータ90の温度を検知し、その検知された温度(温度測定値)をヒータ・コントローラ95へ出力する。ヒータ90は、排気配管60の全体を加熱できるものが好ましく、例えば、排気配管60の周囲全体を被覆可能なジャケットヒータが望ましい。代替的に、ヒータ90は、排気配管60の一部分に設けられていてもよい。さらに、図1に示すように、複数の温度センサSがヒータ90または排気配管60に設けられていることが望ましい。
【0021】
コントローラとしてのヒータ・コントローラ95は、温度センサSからの温度測定値に基づいて、ヒータ90へ供給する電力を制御する。即ち、ヒータ・コントローラ95は、温度センサSからの温度測定値を用いてヒータ90への供給電力をフィードバック制御する。これにより、ヒータ・コントローラ95は、ヒータ90および排気配管60の温度を制御することができる。例えば、ヒータ・コントローラ95は、ヒータ90および排気配管60の温度がほぼ一定になるようにヒータ90への供給電力を制御する。これにより、クリーニングガスと反応生成物との反応速度を安定させることができる。また、ヒータ・コントローラ95は、温度センサSでの温度測定値やその温度測定値の変化率に基づいて、処理コントローラ30へ制御信号CNTを出力する。処理コントローラ30は、制御信号CNTに応じてクリーニングガス供給部70および/または希釈ガス供給部80を制御する。これにより、処理コントローラ30は、排気配管60の温度に応じて、クリーニングガスの流量あるいは希釈ガスの流量を調節することができる。
【0022】
図2は、反応生成物からの反応熱、ヒータ90からの供給熱および排気配管60の温度の関係を示す概略的なグラフである。縦軸は、反応生成物からの反応熱(kcal)、ヒータ90からの供給熱(kcal)および排気配管60の温度(℃)を示す。横軸は、クリーニング処理開始からの経過時間である。尚、t0がクリーニング処理開始時点である。
【0023】
ラインL1は、反応生成物からの反応熱(即ち、クリーニングガスと反応生成物との反応熱)を示す。ラインL2は、ヒータ90からの供給熱を示す。ヒータ90からの供給熱は、ヒータ・コントローラ95から電力供給を受けたヒータ90から発生する熱である。ラインL3は、排気配管60またはヒータ90の温度(即ち、温度センサSで検出された温度測定値)を示す。
【0024】
クリーニングガスが反応生成物と反応する際に、反応熱が発生する。クリーニング処理の開始当初、排気配管60の内壁には反応生成物が大量に付着している場合、ラインL1で示すように、反応生成物からの反応熱は短時間で急激に上昇する(t0〜t1)。クリーニング処理が進み、反応生成物の量が少なくなると、反応生成物からの反応熱は低下する(t1〜t2)。
【0025】
ここで、本実施形態では、ラインL2に示すように、ヒータ・コントローラ95が、排気配管60またはヒータ90の温度をほぼ一定にするように、ヒータ90への電力供給を制御する。これにより、反応生成物からの反応熱とヒータ90からの供給熱との和をほぼ一定に維持することができる。即ち、反応生成物およびヒータ90における全体の熱量がほぼ一定になるように(ヒータ90からの供給熱が反応生成物からの反応熱を補うように)、ヒータ90からの供給熱は、反応生成物からの反応熱の増減に対して逆に変化する。例えば、ヒータ90からの供給熱は、反応生成物からの反応熱が増大する場合には低下し、一方、反応生成物からの反応熱が低下する場合には増大する。排気配管60またはヒータ90の温度をほぼ一定にすることによって、クリーニングガスと反応生成物との反応速度を安定させることができる。
【0026】
もし、ヒータ90が設けられていない場合、排気配管60の温度は、反応生成物からの反応熱に伴って変化する。従って、排気配管60の温度は、t1またはt1の直後に最大となり、その後、t2へ向かって低下する。この場合、クリーニングガスと反応生成物との反応速度も、排気配管60の温度とともに変化する。従って、t1の前後において、クリーニングガスと反応生成物との反応速度は速いものの、その後、反応速度は次第に低下する。その結果、反応生成物が或る程度分解されて少なくなると、クリーニングガスと反応生成物との反応が緩慢になり、クリーニング処理終了までの時間が長くなってしまう。図2では、ラインL1のt2近傍の裾(テール)が長くなる。
【0027】
これに対し、本実施形態による装置1は、ヒータ90からの供給熱が反応生成物からの反応熱を補い、排気配管60またはヒータ90の温度をほぼ一定にする。従って、クリーニングガスと反応生成物との反応速度が安定し、反応生成物がほぼ一定の速度で分解・除去され得る。その結果、反応生成物が或る程度分解されて少なくなっても、クリーニングガスと反応生成物との反応速度は維持され、クリーニング処理終了までの時間が短縮される。即ち、ラインL1のt2近傍の裾(テール)が短くなる。
【0028】
また、もし、ヒータ90が一定の出力で排気配管60を加熱する場合、排気配管60の温度は、依然として反応生成物からの反応熱に伴って変化する。この場合、ヒータ90からの供給熱がさらに付加されるので、排気配管60の温度は、t1またはt1の直後に非常に高くなるおそれがある。温度が高すぎると、クリーニングガスが分解され失活してしまうおそれがある。例えば、ClFガスは、約180℃の温度で分解されてしまう。即ち、ClFガスの臨界温度は、約180℃である。従って、反応生成物からの反応熱およびヒータ90からの供給熱によって、排気配管60の温度が約180℃を超えると、クリーニング処理ができなくなる可能性がある。また、温度が高すぎると、排気配管60(例えば、ステンレス)やフランジ面のシール材(Oリング)(図示せず)が反応生成物によって腐食または劣化する可能性もある。一方、ヒータ90からの供給熱が低すぎると、上述のように、反応生成物が或る程度分解されて少なくなったときに、クリーニング処理終了までの時間が長くなってしまう。
【0029】
これに対し、本実施形態による装置1は、反応生成物およびヒータ90における全体の熱量がほぼ一定になるように、ヒータ90からの供給熱を反応生成物からの反応熱に従って変化させている。これにより、排気配管60またはヒータ90の温度がほぼ一定に制御され得る。例えば、排気配管60またはヒータ90の温度は、クリーニングガスの臨界温度および排気配管60の腐食を考慮して、約100℃の温度に制御される。これにより、装置1は、排気配管60の腐食を抑制しつつ、クリーニング処理を停滞させずにクリーニング時間を短時間にすることができる。
【0030】
例えば、クリーニングガス(例えば、CLFガス)と反応生成物(例えば、塩化シラン)との反応速度は、それらの活性化エネルギーから計算すると25℃の場合と比べて、100℃の場合に約10倍になると推測される。従って、反応生成物が少なくなったときに、ヒータ90が排気配管60を加熱することによって、クリーニングガスと反応生成物との反応を促進し、クリーニング処理を短時間で終了させることができる。
【0031】
クリーニング処理の終点は、ヒータ90への供給電力の単位時間当たりの変化率で判断すればよい。例えば、ラインL2に示すように、ヒータ90への供給電力の変化率は、反応生成物とクリーニングガスとの反応が進行しているときには大きい(0〜t2)。しかし、反応生成物の量が少なくなり、クリーニング処理が終点に近付くと、ヒータ90への供給電力の変化率は小さくなる(t2〜)。例えば、t1近傍において、ラインL2の接線の傾きは比較的大きい。しかし、t2以降、ラインL2の接線の傾きは比較的小さくなる。従って、ヒータ・コントローラ95および処理コントローラ30は、ヒータ90への供給電力の単位時間当たりの変化率が或る閾値未満になったときにクリーニングガスの供給を停止すればよい。これにより、反応生成物の量がほとんど無くなったときに、クリーニング処理を自動的に終了させることができる。
【0032】
尚、クリーニング処理の終点は、クリーニング処理開始からの時間に基づいて決定してもよい。この場合、処理コントローラ30は、統計的に得られたクリーニング時間に基づいて、クリーニング処理開始から所定時間経過後にクリーニング処理を終了する。このようにしても、クリーニング処理を自動的に終了させることができる。勿論、クリーニング処理の終点は、ヒータ90への供給電力の変化率およびクリーニング処理開始からの経過時間の両方を用いて決定してもよい。
【0033】
次に、本実施形態による装置1の動作を説明する。
【0034】
図3は、本実施形態による装置1のクリーニング処理の一例を示すフロー図である。処理コントローラ30は、チャンバ10および反応ガス供給部20を用いて成膜処理またはエッチング処理を実行する。このとき、成膜処理またはエッチング処理で生成した反応生成ガスをチャンバ10から排気するために、ポンプ40が排気配管60を介してチャンバ10の内部を排気する。成膜処理またはエッチング処理を繰り返し実行した後、処理コントローラ30は、クリーニング処理を開始する。
【0035】
まず、ヒータ・コントローラ95がヒータ90へ電力を供給し、排気配管60を所定温度まで加熱する(S10)。このとき、クリーニングガスと反応生成物との反応はまだ始まっていない。従って、排気配管60はヒータ90からの供給熱によって所定温度まで加熱される。
【0036】
次に、クリーニングガス供給部70がクリーニングガスを排気配管60へ供給する(S20)。これにより、排気配管60の内壁に付着した反応生成物がクリーニングガスと反応する。従って、反応生成物から反応熱が発生する。このとき、希釈ガスの供給量は任意でよい。
【0037】
クリーニングガスと反応生成物との反応が進行している間、ヒータ・コントローラ95は、温度センサSから温度測定値のフィードバックを受けて、ヒータ90および排気配管60の温度がほぼ一定になるようにヒータ90への供給電力を制御する(S30)。
【0038】
このとき、ヒータ・コントローラ95および処理コントローラ30は、ヒータ90および排気配管60の温度がほぼ一定となるように、クリーニングガスに含まれる希釈ガスの含有率を制御してもよい。この場合、クリーニングガスの供給量および/または希釈ガスの供給量を調整してからヒータ90および排気配管60の温度に反映されるまでに或る程度時間がかかる。しかし、このような手法であっても、ヒータ90および排気配管60の温度を制御することは可能である。
【0039】
ここで、反応生成物からの反応熱が非常に大きい場合、ヒータ・コントローラ95がヒータ90への電力供給を停止しても、ヒータ90および排気配管60の温度が高くなりすぎる場合がある。このような事態に対処するために、装置1は、インターロック機能を有していてもよい。
【0040】
例えば、ヒータ90および排気配管60の温度が閾値温度(第1温度)以上になった場合(S35のYES)、ヒータ・コントローラ95は、制御信号CNTを立ち上げて処理コントローラ30へ送信する(S40)。処理コントローラ30は、制御信号CNTに応じて、クリーニングガス供給部70を制御し、クリーニングガスの供給量を減少させあるいはその供給を停止させる。それとともに、あるいは、代替的に、処理コントローラ30は、制御信号CNTに応じて、希釈ガス供給部80を制御し、希釈ガスの供給量(含有率)を増大させる(S50)。クリーニングガスの供給量を減少させあるいはその供給を停止させることによって、クリーニングガスと反応生成物との反応が抑制されるので、反応生成物からの反応熱が抑制される。その結果、ヒータ90および排気配管60の温度が低下する。また、希釈ガスの供給量(クリーニングガスに対する含有率)を増大させても、同様にヒータ90および排気配管60の温度が低下する。このようなインターロック機能は、クリーニングガスの供給量および希釈ガスの供給量のいずれか一方あるいはその両方を調整することによって実行してよい。
【0041】
ステップS50の動作によって、ヒータ90および排気配管60の温度が閾値温度未満になった場合(S55のYES)、ヒータ・コントローラ95は、制御信号CNTを立ち下げてクリーニングガス供給部70および希釈ガス供給部80を元に戻す(S60)。これにより、クリーニングガスの供給量および希釈ガスの供給量をステップS20およびS30におけるそれらの供給量に戻す。そして、ステップS20へ戻り、クリーニング処理を続行する。
【0042】
ヒータ90および排気配管60の温度が閾値温度(第1温度)未満である場合(S35のNO)、ヒータ・コントローラ95および処理コントローラ30は、ヒータ90への供給電力の単位時間当たりの変化率が閾値未満であるか否かを判断する(S70)。ここで、ヒータ・コントローラ95は、排気配管60またはヒータ90の温度だけでなく、ヒータ90への供給電力の単位時間当たりの変化率もモニタする。ヒータ90への供給電力の単位時間当たりの変化率が閾値以上である場合(S70のNO)、ヒータ・コントローラ95および処理コントローラ30は、反応生成物の多くがまだ除去されていないと判断し、クリーニングガスの供給量および希釈ガスの供給量を変更することなく、クリーニング処理を続行する(S20)。
【0043】
一方、ヒータ90への供給電力の単位時間当たりの変化率が閾値未満になった場合(S70のYES)、ヒータ・コントローラ95および処理コントローラ30は、排気配管60内の反応生成物が除去されたと判断し、クリーニングガスの供給を停止する(S80)。
【0044】
このように、本実施形態による装置1は、ヒータ90からの供給熱が反応生成物からの反応熱を補い、排気配管60またはヒータ90の温度をほぼ一定にする。これにより、反応生成物が少なくなっても、クリーニングガスと反応生成物との反応速度は維持され、クリーニング処理終了までの時間が短縮される。
【0045】
また、ヒータ・コントローラ95は、排気配管60またはヒータ90の温度が閾値温度以上になったときに、クリーニングガスの供給量を減少させあるいはその供給を停止させる。それとともに、あるいは、代替的に、ヒータ・コントローラ95は、排気配管60またはヒータ90の温度が閾値温度以上になったときに、クリーニングガスに含まれる不活性ガスの含有率を増大させる。このようなインターロック機能を備えることによって、装置1は、排気配管60またはヒータ90の温度を閾値温度未満に維持し、排気配管60の腐食を抑制しつつ、クリーニングガスが分解され失活することを抑制することができる。その結果、クリーニング処理を停滞させずにクリーニング時間を短縮することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1・・・装置、10・・・チャンバ、20・・・反応ガス供給部、30・・・処理コントローラ、40・・・ポンプ、50・・・除害装置、60・・・排気配管、70・・・クリーニングガス供給部、80・・・希釈ガス供給部、90・・・ヒータ、95・・・ヒータ・コントローラ、S・・・温度センサ
図1
図2
図3