(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着層は、前記絶縁層側から前記回路基板に貼り付ける面側に向かって、絶縁性樹脂層、粘着性ゴム層の順に少なくとも2つの層を備える請求項1に記載の異方導電性シート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る異方導電性シートおよびその製造方法の各実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
1.異方導電性シートの構成
以下に、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートについて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートの例示的な使用状況を示す。
【0023】
本発明の実施の形態に係る異方導電性シート1は、被試験体(測定対象ともいう)の配線に断線等の異常がないかどうかを評価するための導通評価部材である。例えば、評価に供する被試験体をLGAパッケージ20(絶縁体21の下面に、ランド状にフラットな電極22を備える)とし、LGAパッケージ20と、回路基板10(絶縁基板11の上面に配線12を備える)との間に異方導電性シート1を挟んで、回路基板10側の所定の配線12と、LGAパッケージ20側の所定の電極22との間に電圧を付与する。異方導電性シート1は、その厚さ方向に貫通する細い金属線(後述する)を備えており、1または複数の金属線が配線12と電極22との間を電気的に接続する。LGAパッケージ20に断線等の異常がない場合には、配線12と電極22との間に電流が流れる。
【0024】
しかし、LGAパッケージ20に異常がある場合には、回路基板10とLGAパッケージ20との間に電流が流れない。回路基板10上に複数の配線12が存在する場合には、電圧を加える箇所を変化させて上記と同じ試験を行うことができる。異方導電性シート1は、その略厚さ方向に貫通する金属線の長さ方向に導電性を有するが、それ以外の方向(例えば、シート面に平行な方向)には導電性を有していない。このため、回路基板10上の複数の配線12に異方導電性シート1の複数の金属線が接触しても、異方導電性シート1を経由して、複数の配線12間に短絡が生じることはない。
【0025】
図2は、
図1中の異方導電性シートの平面図(2A)および底面図(2B)をそれぞれ示す。
【0026】
異方導電性シート1は、複数本の金属線32と、金属線32同士の絶縁を確保するに十分な絶縁性を有する層であって、その層の厚さ方向に複数本の金属線32を貫通させた絶縁層33と、絶縁層33の一方の面33aの一部(ここでは、外周)にあって、金属線32同士の絶縁を確保するに十分な絶縁性を有すると共に回路基板10に粘り付け可能な粘着層34と、を備える。
【0027】
ここで、絶縁層33の厚さ方向への金属線32の「貫通」は、金属線32が絶縁層33の一方の面33aからその反対側の面33bに到達していれば良く、金属線32の両端が絶縁層33の両面33a,33bから突き出している場合に限定されない。本願でいう上記の「貫通」は、上記の突き出している状態に至っていなくとも、金属線32の両先端面が絶縁層33の両面33a,33bから少なくとも面一に露出している状態をも含むように広義に解釈される。すなわち、金属線32は、絶縁層33の一方の面33aと面一若しくは一方の面33aから突出し、絶縁層33の一方の面33aと反対側の面33bと面一若しくは反対側の面33bから突出する。この実施の形態では、金属線32は、絶縁層33の厚さ方向に貫通し、絶縁層33の一方の面33aおよび反対側の面33bの両方の面から突出している。
【0028】
また、本願でいう「絶縁」あるいは「絶縁性」は、金属線32同士の絶縁性を確保するのに十分な電気抵抗を有することを意味しており、好ましくは、その体積抵抗率が1.0×10
12Ω・cm以上である性質をいう。絶縁層33は、その略厚さ方向に貫通する金属線32同士の絶縁性を確保しており、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル系ゴム、ポリブタジエンゴム、天然ゴムなどのエラストマーから好適に成る。絶縁層33のより好適な材料としては、シリコーンゴムを挙げることができる。特に、好適な絶縁層33は、ショアA 硬度が40〜80度のシリコーンゴムである。
【0029】
本願でいう「導電」あるいは「導電性」は、回路基板10の配線12に接触して、1.5V以上の電圧を加えたときに電流が流れる程度の低電気抵抗を有することを意味しており、例えば、好適には、体積抵抗率が1.0×10
−1Ω・cm以下である性質をいう。金属線32は、導電性を有する金属を用いて成る細線である。その詳細な構造は、後述する。
【0030】
異方導電性シート1は、絶縁層33の一方の面(ここでは、回路基板10に接触する側の面)33aにおいて、金属線32と回路基板10の配線12とを電気的に接続させるコンタクト領域43以外の非コンタクト領域44に、粘着層34を積層している。非コンタクト領域44における金属線32は、その先端が絶縁層33の一方の面33aを越えて粘着層34の内部に留まるように配置されている。ただし、金属線32は、その先端が絶縁層33の一方の面33aと面一まで到達し、粘着層34の内部に侵入していなくても良い。
【0031】
絶縁層33の一方の面33aは、その中央部分に、回路基板10に金属線32を接触させる平面視にて四角形のコンタクト領域43を有し、その外周に四角枠形状の非コンタクト領域44を有する。非コンタクト領域44は、粘着層34で覆われている。金属線32の先端は、粘着層34を貫通しておらず、絶縁層33の一方の面33aまで、若しくは、この実施の形態のように、一方の面33aから突出する場合であっても粘着層34の内部に留まっている。
【0032】
金属線32同士の間隔は、異方導電性シート1の大きさ、あるいは回路基板10の大きさ、配線12,22の幅などの条件によって適宜変更でき、特に制約を受けるものではない。この実施の形態では、金属線32同士の縦横方向の好適な間隔をともに20〜80μmの範囲としている。また、金属線32自体の外径および長さについても、特に制約はない。この実施の形態では、金属線32の好適な外径を20〜30μm、好適な長さを150〜200μmとしている。絶縁層33の外形寸法などについても特に制約はないが、この実施の形態では、絶縁層33の好適な厚さを、金属線32の長さと同一若しくはそれ以下とすることを前提に、140〜160μmとし、好適な縦横の寸法を、それぞれ、横4.5mm×縦5.5mmとしている。かかる場合、コンタクト領域43の好適な大きさは、横3.0mm×縦3.5mmであるが、特にそれに限定されるものではない。
【0033】
図3は、
図2の異方導電性シートのI−I線断面図(3A)、当該断面図の縁近傍部位P部の拡大図(3B)および当該断面図の略中央部位Q部の拡大図(3C)をそれぞれ示す。
【0034】
金属線32は、この実施の形態では、絶縁層33の一方の面33aおよび反対側の面33bの両面から突出している。各面からの突出長さL1,L2は、L2が粘着層34の厚さより短いという前提で、特に制約されない。この実施の形態では、L1およびL2を、ともに10〜40μm、より好ましくは15〜30μmとしている。ただし、回路基板10若しくはLGAパッケージ20の電極22の面の面精度が悪く、あるいは反りなどが大きい場合には、突出長さL1,L2は、50〜100μmの範囲まで長くし、金属線32と電極12,22とのコンタクト性を向上させるのが好ましい。
【0035】
金属線32は、単一の金属からなるものでも良いが、好ましくは、複数種の金属から成る。この実施の形態における金属線32は、芯材51としての銅合金、その外周の中間被覆材52としてのニッケル若しくはニッケル基合金、その外周の最表面被覆材53としての金(Au)から構成される。金属線32は、製造工程において、切断面が露出するが、その切断面に、中間被覆材52、最表面被覆材53の順にコートされる。最表面被覆材53をコートするのは、配線12,22との電気的接続を高める必要からである。中間被覆材52をコートするのは、最表面被覆材53が芯材51の内部に拡散するのを防止する必要からである。金属線32は、金(Au)のみで構成しても良いが、その場合には金属線32の強度が低くなるために異方導電性シート1のライフサイクルが短くなり、かつコストも高くなる。このため、強度に優れる芯材51を金属線32に用いている。また、中間被覆材52は、最表面被覆材53に金(Au)を用いたときに、金(Au)が芯材51に拡散するのを防止するためである。
【0036】
粘着層34は、回路基板10に対して、繰り返し貼り付け可能な層であり、その接着性を低めた層である。粘着層34は、好ましくは、絶縁層33側から外側(回路基板10に貼り付ける面側)に向かって、絶縁性樹脂層45、粘着性ゴム層46の順に少なくとも2つの層を備える。このため、少なくとも上記2つの層45,46を備える限り、粘着層34にこれらの層45,46以外の第三の層を備えることもできる。例えば、絶縁性樹脂層45と粘着性ゴム層46との間、絶縁層33と絶縁性樹脂層45との間などに、第三の層を備えても良い。
【0037】
絶縁性樹脂層45は、金属線32と接触しても金属線32同士を短絡させないだけの十分な絶縁性を有する層である。また、絶縁性樹脂層45は、それ自体の形状保持力に優れた樹脂若しくはエラストマーの層である。このため、コンタクト領域43に流出し、あるいはその厚み方向に圧力が加わった際に容易に潰れてコンタクト領域43にはみ出す危険性が低い。さらに、絶縁性樹脂層45は、絶縁層33と高い接着力を備える。このため、異方導電性シート1を回路基板10に貼り付けた後、それを剥がす際に、絶縁性樹脂層45と絶縁層33との間が剥離する危険性が低い。絶縁性樹脂層45を構成する材料としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどを好適に例示できるが、特に、アクリル樹脂から成る層をより好適に例示できる。
【0038】
異方導電性シート1は、その使用時に、表と裏の区別をしやすく、その裏面を回路基板10などに容易に貼り付けできるようにするのが好ましい。粘着層34に着色すれば、異方導電性シート1の表と裏を瞬時に区別できる。ここで、絶縁性樹脂層45は、粘着性ゴム層46より内部に存在し、直接、回路基板10と接触しない。しかも、絶縁層33および粘着性ゴム層46を透明または半透明の材料で形成すれば、異方導電性シート1の表側および裏側から絶縁性樹脂層45の存在を視認可能である。以上より、絶縁性樹脂層45を着色、とりわけ黒色に着色するのが望ましい。着色の方法としては、有機染色材料、顔料などを用いることができる。いずれであっても、絶縁性樹脂層45の絶縁性を損なわないような着色材料を用いるのが好ましい。
【0039】
粘着性ゴム層46は、粘着層34の最下面(回路基板10側の面)にあって、回路基板10に対して着脱自在に、異方導電性シート1を固定可能とする層である。粘着性ゴム層46としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリエステル系ゴム、ポリブタジエンゴム、天然ゴムなどのエラストマーから好適に形成できる。その中でも、粘着性ゴム層46のより好適な材料としては、粘着性、絶縁性などに優れたシリコーンゴムを挙げることができる。
【0040】
絶縁性樹脂層45および粘着層ゴム層46の各厚さは、コンタクト試験時に異方導電性シート1のコンタクト領域43の上方から加圧した際に、コンタクト領域43の金属線32が回路基板10の配線に十分に接触可能であり、かつ粘着層34から金属線32が突き抜けなければ、特に制約されない。金属線32が粘着層34を容易に突き抜けないようにするためには、絶縁性樹脂層45および粘着層ゴム層46の内、相対的に強度に優れる絶縁性樹脂層45をより厚く形成するのが好ましい。この実施の形態では、絶縁性樹脂層45の好適な厚さを25〜35μm、粘着性ゴム層46の好適な厚さを8〜20μmとしている。粘着層34の総厚を大きくし過ぎると、コンタクト領域43の縁近傍の金属線32を回路基板10の配線12に接触させることが難しくなり、コンタクト領域43の実質的な使用面積が小さくなる。一方、粘着層34の総厚を小さくし過ぎると、異方導電性シート1の製造時あるいは使用時に、非コンタクト領域44の金属線32が粘着層34を突き抜ける危険性がある。このため、この実施の形態では、粘着層34の総厚を、好ましくは32〜55μm、さらに好ましくは38〜48μmとしている。ただし、粘着層34の好ましい総厚は、金属線32が絶縁層33の一方の面33aから突出する長さにも依存する。粘着層34の上記好ましい総厚は、金属線32の突出長さが約20μmのときのものであるが、突出長さが20μmより短い場合には、粘着層34の総厚を上記好ましい総厚よりも小さくしても良い。逆に、突出長さが20μmを超える場合には、粘着層34の総厚を上記好ましい総厚よりも大きくしても良い。
【0041】
絶縁層33において、粘着層34との貼付面を易接着性処理面とするのが好ましい。絶縁層33と粘着層34(この実施の形態では、特に、絶縁性樹脂層45)との接着強度をより高めることができるからである。ここで、易接着性処理面を形成するための易接着処理は、絶縁層33の一方の面33a(特に、非コンタクト領域44)へのカップリング剤の塗布、火炎処理、プラズマ照射、紫外線照射、シラン化合物を混合した可燃性ガスを用いた火炎処理「イトロ処理(登録商標)ともいう」などの、絶縁層33の一方の面33aと粘着層34との接着性を高めることのできる処理をいう。
【0042】
図4は、
図2の異方導電性シートの第一変形例の
図3と同様のI−I線断面図(4A)および当該断面図の略中央部位R部の拡大図(4B)をそれぞれ示す。
【0043】
図4に示す第一変形例は、
図2の異方導電性シート1の金属線32を、絶縁層33の反対側の面33bに垂直な方向からその面33bに水平な面に向かって角度θだけ傾斜させた異方導電性シート1aである。その点以外は、異方導電性シート1と同じ構成である。異方導電性シート1aの金属線32aは、先に説明した金属線32と同様、絶縁層33の一方の面33aおよび反対側の面33bから突出している。その突出長さL1,L2は、ともに、L2が粘着層34の厚さより短いという前提で、特に制約されない。この実施の形態では、L1およびL2を、ともに10〜40μm、より好ましくは15〜30μmとしている。ただし、前述の金属線32と同様、回路基板10若しくはLGAパッケージ20の電極22の面の面精度が悪く、あるいは反りなどが大きい場合には、突出長さL1,L2は、50〜100μmの範囲まで長くするのが好ましい。
【0044】
異方導電性シート1aは、上述のように、金属線32aを絶縁層33の厚さ方向に対して傾斜させて、絶縁層33中に立設させて成る。その傾斜角度θは、1〜60度の範囲の鋭角であれば制約されないが、好ましくは、10〜50度、さらに好ましくは20〜30度である。金属線32aを角度θで傾斜させるのは、異方導電性シート1aの上面から加圧したときに、その圧力を金属線32aの軸方向に100%付与せず、もって金属線32aを座屈しにくくし、その寿命を長くする必要からである。また、金属線32aの圧縮抵抗力を弱め、異方導電性シート1aの圧縮不足を生じさせないようにするためであり、この結果、コンタクト時の圧縮荷重を小さくできるからである。
【0045】
図5は、
図2の異方導電性シートの第二変形例の
図3と同様のI−I線断面図(5A)および当該断面図の略中央部位S部の拡大図(5B)をそれぞれ示す。
【0046】
図5に示す第二変形例は、
図2の異方導電性シート1の金属線32を、絶縁層33の一方の面33aから突出させず、その反対側の面33bからのみ突出させた異方導電性シート1bである。その点以外は、異方導電性シート1と同じ構成である。異方導電性シート1bの金属線32bが反対側の面33bから突出する長さL1は、特に制約されない。この実施の形態では、L1を10〜40μm、より好ましくは15〜30μmとしている。
【0047】
なお、金属線32bを金属線32aのように角度θだけ傾斜させても良い。また、金属線32,32a,32bは、いずれも、絶縁層33の反対側の面33bから長さL1だけ突出しているが、反対側の面33bと面一の関係とし、突出させないようにしても良い。
【0048】
2.異方導電性シートの製造方法
以下に、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法について説明する。
【0050】
図6は、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートを構成する異方導電性コネクタの製造方法の例示的なフローを示す。
図7は、
図6のフローの前半部分を図示する。
図8は、
図6のフローの後半部分(8A)およびその変形例(8B)をそれぞれ図示する。
【0051】
図7および
図8(8A)は、異方導電性シート1を構成する異方導電性コネクタの製造方法を図示したものであり、
図8(8B)は、
図8(8A)に代えて、異方導電性シート1aを構成する異方導電性コネクタに特有の工程を図示したものである。
【0052】
図6に示すように、この実施の形態に係る異方導電性シートを構成する異方導電性コネクタの製造方法の例示的なフローは、
1)硬化性組成物積層ステップ(ステップS101)、
2)金属線配置ステップ(ステップS102)、
3)硬化性組成物積層ステップ(ステップS103)、
4)二段積層ステップ(ステップS104)、
5)硬化ステップ(ステップS105)、
6)多積層ステップ(ステップS106)、
7)スライスステップ(ステップS107)、および
8)エッチングステップ(ステップS108)を含む。
上記1)〜8)までのステップは、総称して、コネクタ準備ステップ(ステップS100)と称する。以下、コネクタ準備ステップ(ステップS100)に含まれる各ステップについて、
図7および
図8を参照しながら説明する。
【0053】
1)硬化性組成物積層ステップ(ステップS101)
四角形の基材フィルム(例えば、ポリエステル製のフィルム)60の一方の面に、硬化後に絶縁層33となる硬化性組成物63aを積層する。積層方法には特に制約は無く、ミラブル型のシリコーンゴム材料に硬化剤等を混練して、それをロール間に通して薄いシート状に成形後、基材フィルム60上にトッピングする方法を好適に例示できる。この方法を用いると、硬化性組成物63aが基材シート60から流れてしまったり、積層後に金属線32を配置する際に金属線32が硬化性組成物63a中に埋まったりする問題が生じにくいので、液状のシリコーンゴム材料を用いるのに比べて有利である。ただし、上記方法に代えて、スクリーン印刷若しくはインクジェット方式の印刷に代表される印刷、スプレー(噴霧)、ディッピング(浸漬)あるいはバーコータを用いた方法を用いることも可能である。
【0054】
2)金属線配置ステップ(ステップS102)
次に、硬化性組成物63aの面に、複数本の金属線32が互いに平行になり、かつ基材フィルム60の一辺にも平行になるように、金属線32を配置する。
【0055】
3)硬化性組成物積層ステップ(ステップS103)
次に、複数の金属線32の上から、ステップS101と同様に、硬化性組成物63aを積層する。これによって、片面に基材フィルム60を備えた一層品65が完成する。
【0056】
4)二段積層ステップ(ステップS104)
上記ステップS101〜S103により作製したもう一つの一層品65を用意し、先に作製した一層品65と、接着層66を介在させ、基材フィルム60の無い側の面同士で積層する。接着層66は、シリコーン系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系あるいはシアノアクリレート系の各種接着剤を用いて形成可能である。特に好適な接着剤は、シリコーン系接着剤であり、硬化後に、絶縁層33よりもショア硬度Aの低い層を形成可能なものをより好適に使用する。例えば、絶縁層33をショア硬度Aにて60〜80度とするシリコーンゴム層とする場合には、接着層66の硬化後のショア硬度Aが40〜55度のシリコーンゴム層とするのが好ましい。
【0057】
5)硬化ステップ(ステップS105)
次に、加硫化等を行い、硬化性組成物63aを硬化させる。硬化後に、一方の面にある基材フィルム60を剥がし、片面に基材フィルム60を備えた二段積層体67を完成する。
【0058】
6)多積層ステップ(ステップS106)
二段積層体67を所定数(N個)揃えた後、それらの間に接着層66を介在させて多層に積層し、プレス機にて加圧して、多層積層体70を作製する。かかる加圧は、耐圧容器(金型など)の内部で行うのが好ましい。
【0059】
7)スライスステップ(ステップS107)
次に、金属線32と直角方向に、多層積層体70を一定厚さにスライスして異方導電性コネクタ75を複数枚作製する。
【0060】
8)エッチングステップ(ステップS108)
図8(8A)は、
図7におけるスライスステップの状況であって、
図7の矢印Yの方向から見た図である。スライス後の異方導電性コネクタ75は、絶縁層33の厚さとその内部にある金属線32の長さがほぼ同一である。金属線32を絶縁層33の表側の面および裏側の面の内のいずれか1つの面から突出させたい場合には、突出させたい側の面からエッチング処理を行い、絶縁層33の表面を選択的にエッチングして、金属線32を絶縁層33の表面から突出させる。
【0061】
図8(8A)に示す例は、絶縁層33の両面から金属線32を突出させる場合に、当該両面に対してレーザEを照射する例である。絶縁層33の片面をエッチングする場合には、当該片面だけにレーザEを照射すれば良い。また、エッチング処理は、レーザエッチングに限定されるものではなく、プラズマエッチング、化学エッチング(酸等を用いたエッチング)などの如何なる種類のエッチング処理でも良い。さらに、エッチング処理は、必須の工程ではなく、絶縁層33の両面から金属線32を突出させない場合には、不要である。
【0062】
金属線32が絶縁層33の厚さ方向に対して角度θにて傾斜する異方導電性コネクタ75aを作製する場合には、
図8(8A)に代えて、
図8(8B)のような工程を行うのが好ましい。
図8(8A)に示す多層積層体70aは、前述の多層積層体70と異なり、金属線32aの長さ方向に絶縁層33を徐々に傾斜させた構造を有する。多層積層体70aは、その形態に合った容器内に
図7中の一層品65あるいは
図7中の二段積層体67を、基材フィルム60の剥がした面に接着層66を介在させて積層していくことによって作製可能である。
【0063】
次に、多層積層体70aの作製後、その傾斜面に平行(金属線32aの配置方向にも平行)にスライスし、一定厚さの異方導電性コネクタ75aを複数枚作製する。異方導電性コネクタ75aにおいて、金属線32aは、絶縁層33の厚さ方向に対して角度θだけ傾斜する。その後、エッチング処理を施す場合には、
図8(8A)と同様のエッチングステップを行う。
【0065】
図9は、本発明の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法の例示的なフローを示す。
図10は、
図9のフローを図示する。
【0066】
図9に示すように、この実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法の例示的なフローは、
1)コネクタ準備ステップ(ステップS100)、
2)粘着層形成ステップ(ステップS200)、
3)コンタクト領域開口ステップ(ステップS300)、および
4)コネクタ貼付ステップ(ステップS400)を含む。
【0067】
さらに、2)粘着層形成ステップ(ステップS200)は、
好ましくは、
2−1)塗布ステップ(ステップS201)、
2−2)樹脂層形成ステップ(ステップS202)、および
2−3)硬化ステップ(ステップS203)を含む。
【0068】
また、当該例示的なフローは、コネクタ準備ステップ(ステップS100)とコネクタ貼付ステップ(ステップS400)との間に、好ましくは、1−2)易接着処理ステップ(ステップS150)を含む。さらに、当該例示的なフローは、異方導電性シート1を複数製造する方法の場合に、5)カットステップ(ステップS500)を含み得る。以下、異方導電性シート1を複数枚製造する方法を例に、上記各ステップについて、
図9および
図10を参照しながら説明する。
【0069】
1)コネクタ準備ステップ(ステップS100)
このステップは、複数本の金属線32を絶縁層33の厚さ方向に貫通させた異方導電性コネクタ75を準備するステップであり、好ましくは、先に、
図7および
図8(8A)を参照して説明した複数の製造ステップから成る。ただし、それら複数の製造ステップは必須ではなく、また、これに限定されるものではない。例えば、コネクタ準備ステップは、市販の異方導電性コネクタ75(あるいは異方導電性コネクタ75a)を単に用意するステップであっても良い。
【0070】
1−2)易接着処理ステップ(ステップS150)
このステップは、異方導電性コネクタ75における粘着層34との貼付面に、粘着層34と接着しやすい易接着処理を施すステップである。易接着処理は、非コンタクト領域44へのカップリング剤の塗布、火炎処理、プラズマ照射、紫外線照射、イトロ処理(登録商標)などの絶縁層33の一方の面33aと粘着層34との接着性を高めることのできる処理である。ただし、このステップは省略しても良い。
【0071】
2)粘着層形成ステップ(ステップS200)
このステップは、
図10に示すように、樹脂基材シート80の一方の面に、金属線32同士の絶縁を確保するに十分な絶縁性を有すると共に回路基板10に粘り付け可能な粘着層34を形成するステップである。樹脂基材シート80としては、例えば、PET製の鏡面基材を好適に用いることができる。樹脂基材シート80の厚さは、特に制約は無く、一例として、70〜150μmのPET製の鏡面基材を好適に用いる。樹脂基材シート80は、コネクタ貼付ステップ(ステップS400)の際に剥がされるシートであって、異方導電性シート1を構成する部材ではない。粘着層34が単一層の場合には、以下の塗布ステップ(ステップS201)、樹脂層形成ステップ(ステップS202)および硬化ステップ(ステップS203)に分ける必要はないが、この実施の形態では、粘着層34が絶縁性樹脂層45と粘着性ゴム層46とを含むことから、上記3つのステップに分けて説明する。
【0072】
2−1)塗布ステップ(ステップS201)
このステップは、樹脂基材シート80の一方の面に、粘着層34を構成する粘着性ゴム層46を硬化形成可能な硬化性ゴム組成物46aを塗布するステップである。硬化性ゴム組成物46aを塗布する方法には特に制約は無く、例えば、スクリーン印刷若しくはインクジェット方式の印刷に代表される印刷、スプレー(噴霧)、ディッピング(浸漬)あるいはバーコータを用いた方法を用いることができる。ただし、別の方法として、ステップS101,S103と同様の方法、すなわち、硬化性ゴム組成物46aにミラブル型のシリコーンゴム材料を用いて、薄いシート状に成形後に樹脂基材シート80上にトッピングする方法を用いても良い。硬化性ゴム組成物46aからなる層の厚さは、例えば、好ましくは10〜25μm、さらに好ましくは12〜20μmの範囲である。これによって、硬化後の粘着性ゴム層46の厚さを、その好適な厚さ8〜20μmの範囲にすることができる。硬化性ゴム組成物46aとしては、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を好適に用いることができる。
【0073】
2−2)樹脂層形成ステップ
このステップは、硬化性ゴム組成物46aの層表面に、粘着層34を構成する絶縁性樹脂層45を形成するステップである。絶縁性樹脂層45は、好ましくは、樹脂製セパレータ(好ましくは、PET製のセパレータであって、重剥離セパレータとも称する)82と、紙セパレータ(紙製のセパレータであって、軽剥離セパレータとも称する)83との間に挟まれ、三層構造の粘着テープ81を構成する。粘着テープ81から紙セパレータ83を剥がして、絶縁性樹脂層45の側を硬化性ゴム組成物46aの層表面に貼り付けると、樹脂製セパレータ82付きの絶縁性樹脂層45を硬化性ゴム組成物46aに積層することができる。粘着テープ81としては、一例として基材レスアクリル粘着テープを好適に用いることができる。
【0074】
2−3)硬化ステップ(ステップS203)
このステップは、硬化性ゴム組成物46aを硬化させて粘着性ゴム層46を形成し、粘着性ゴム層46と絶縁性樹脂層45とを含む粘着層34を形成するステップである。硬化に際し、室温(23℃)から加温するか否かは不問であるが、好ましくは、加温して硬化するのが望ましい。一例として、減圧下にて70〜100℃の範囲で加熱硬化するのが好ましい。
【0075】
3)コンタクト領域開口ステップ(ステップS300)
このステップは、粘着層34において、絶縁層33を貫く金属線32と回路基板10の配線12とを電気的に接続させるコンタクト領域43を開口するステップである。この実施の形態におけるコンタクト領域開口ステップは、複数個の異方導電性シート1を作製することから、複数個のコンタクト領域43を開口するステップであるが、1個の異方導電性シート1を作製する場合には1個のコンタクト領域43を開口するステップであっても良い。この実施の形態では、コンタクト領域開口ステップは、好適には、樹脂基材シート80から少なくとも粘着層34まで切り込んで穴85を複数個形成するステップである。「少なくとも粘着層34」であるから、樹脂製セパレータ82まで切り込んでも良い。コンタクト領域開口ステップにて用いる開口ツールとしては、如何なるツールをも用いることができるが、好適には、ピナクル刃を用いることができる。
【0076】
4)コネクタ貼付ステップ(ステップS400)
このステップは、コンタクト領域43となる穴85を覆うように、粘着層34に異方導電性コネクタ75の一方の面33aを貼り付けるステップである。貼り付けの際には、絶縁性樹脂層45上の樹脂製セパレータ82を
図10の矢印Fで示すように剥がす。続いて、絶縁性樹脂層45上に異方導電性コネクタ75を貼り付ける。
【0077】
5)カットステップ(ステップS500)
このステップは、前述のコネクタ貼付ステップ(ステップS400)よりも後のステップであって、異方導電性コネクタ75および粘着層34をカットして、複数個の異方導電性シート1を切り出すステップである。この実施の形態では、複数個の異方導電性シート1を作製することから、樹脂基材シート80をカットせず、粘着層34までの位置(
図10のラインL)までを点線Hのようにカットしている。樹脂基材シート80は、複数個の異方導電性シート1を付けた台紙としての役割を有している。このため、カットステップにおいて、樹脂基材シート80を残している。ただし、1個の異方導電性シート1を作製する場合には、樹脂基材シート80をもカットしても良い。
【0078】
以上、異方導電性シート1の好適な製造例について説明したが、絶縁層33の厚さ方向に対して斜めに貫通する金属線32aを備える異方導電性シート1a、絶縁層33の一方の面33aから金属線32bが突出しない異方導電性シート1bなどにも、上記と同様の製造方法を適用できる。単に、コネクタ準備ステップ(ステップS100)において、異方導電性コネクタ75を変更するだけであるため、上述と同様のステップS150、ステップS200〜ステップS500を適用可能である。
【0079】
3.その他の実施の形態
上述のように、本発明の異方導電性シートおよびその製造方法の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上記形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、粘着層34は、絶縁層33側から回路基板10に貼り付ける面側に向かって、絶縁性樹脂層45、粘着性ゴム層46の順に2つの層を備えるが、絶縁性樹脂層45を備えなくても良い。また、非コンタクト領域44における金属線32,32aの先端は、粘着性ゴム層46に到達せずに、絶縁性樹脂層45の内部で止まっているが、粘着性ゴム層46の内部まで到達していても良い。その場合には、金属線32,32aの先端から粘着性ゴム層46の下面(回路基板10に接する面)まで十分に長い距離を有するのが好ましい。
【0081】
また、上述の実施の形態に係る異方導電性シートの製造方法において、樹脂層形成ステップ(ステップS202)を、硬化性ゴム組成物46aを硬化させた粘着性ゴム層46の上に絶縁性樹脂層45を形成するステップとして、硬化ステップ(ステップS203)を絶縁性樹脂層45の形成前に硬化性ゴム組成物46aを硬化させるステップとしても良い。その場合には、硬化ステップ(ステップS203)の次に、樹脂層形成ステップ(ステップS202)を行う。
【0082】
図11は、
図1〜
図6の異方導電性シートのさらなる変形例(1c,1d,1e,1f)の各底面図を示す。
【0083】
図11(11A)に示す異方導電性シート1cは、コンタクト領域43を閉鎖空間ではなく、絶縁層33の一辺側を開放した四角形状とし、非コンタクト領域44を略コの字形状としたシートである。このため、粘着層34も略コの字形状となっている。また、
図11(11B)に示す異方導電性シート1dは、コンタクト領域43を閉鎖空間ではなく、絶縁層33の二辺側を開放した形状とし、非コンタクト領域44を2つに分離した略コの字形状としたシートである。このため、粘着層34も2つに分離した略コの字形状となっている。さらに、
図11(11C)に示す異方導電性シート1eは、異方導電性シート1dと同じコンタクト領域43および同じ非コンタクト領域44を有し、かつ1つの非コンタクト領域44にマーク90を備える。マーク90は、異方導電性シート1e中の金属線32aが絶縁層33の厚さ方向に平行ではなく、マーク90側に傾斜していることを意味する。すなわち、
図11(11C)に示す例では、金属線32aは、
図11の紙面下方に向かって倒れるように傾斜している。
【0084】
このように、本発明の異方導電性シートは、非コンタクト領域44および粘着層34の形状をどのように変形しても良い。ただし、非コンタクト領域44および粘着層34は、コンタクト領域43の外側に存在する方が好ましく、さらには、絶縁層33の一方の面33aの外周に沿って形成される方が好ましい。異方導電性シート1,1a,1b,1c,1d,1eの中央部分をコンタクト領域43として確保し、その周囲を回路基板10の表面に貼り付ける方が、異方導電性シート1,1a,1b,1c,1d,1eを回路基板10に安定して固定できるからである。
【0085】
図11(11D)に示す異方導電性シート1fは、コンタクト領域43を閉鎖空間ではなく、上記形態と異なり、絶縁層33の二辺を開放した四角形状とし、非コンタクト領域44を略L字形状としたシートである。粘着層34も略L字形状となっている。回路基板10上に異方導電性シート1fを貼り付けた際、異方導電性シート1fの片側二辺はフリーとなる。メモリやCPUなどの半導体部品は、常温以外の条件下(高温の場合、低温の場合もある)で検査に供されることがある。特に高温下の検査では、異方導電性コネクタ75,75aが熱膨張し、異方導電性シート1のように四辺にて回路基板10に貼り付けると、異方導電性シート1の中央部分が膨らんでしまい、コンタクト領域43と回路基板10との電気的接続が不安定になりやすい。異方導電性シート1fのようにL字形状の粘着層34にて回路基板10に貼り付けると、粘着層34以外の二辺側のフリー領域全体で熱膨張に伴う変形を受けるため、局所的な大きな変形が生じにくく、コンタクト領域43が回路基板10から浮き上がるような変形を防止できる。したがって、常温以外の温度条件下で検査をする場合には、
図11(11D)に示す異方導電性シート1fを使用する方が好ましい。
【0086】
図6〜
図8を参照して説明した異方導電性コネクタ75,75aの製造方法は、好適な製造方法に過ぎず、他の製造方法にて異方導電性コネクタ75,75aを製造しても良い。例えば、金型内にて一層品65を形成し、その上に金属線32、さらにその上に硬化性組成物63aを積層し、それを繰り返すことによって、二段積層体67同士を接着せずに、一層品65を順次積層させた多層積層体70,70aを作製することもできる。
【0087】
図9中の易接着処理ステップ(ステップS150)は、異方導電性シート1等の製造方法において必須のステップではなく、省略しても良い。