(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記増幅部は、ゲインクランプを減らすための少なくとも1つの狭帯域レーザー増幅部が後に続く少なくとも1つの広帯域レーザー増幅部が含まれる複数のステージを有する;
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記第1波形生成部は、前記レーザーソースに適用される電流を直接的に変調するように構成されるレーザーソースドライバを介して、前記レーザーソースに前記第1信号を適用するように構成される;
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記レーザーソースドライバは、誘導ブリルアン散乱を緩和するように、前記予め選択された波形で周波数チャープを生成するために、前記レーザーソースに適用される電流をランピングすることにより、前記レーザーソースに適用される電流を直接的に変調するように構成される;
ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
前記予め歪ませたレーザー信号を増幅することは、ゲインクランプを減らすための少なくとも1つの狭帯域レーザー増幅部が後に続く少なくとも1つの広帯域レーザー増幅部を含む複数のステージを介して、前記予め歪ませたレーザー信号を送信することを含む;
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
前記第1波形生成部からの前記第1信号を、レーザーソースドライバを介して前記レーザーソースに適用することにより、前記レーザーソースに適用される電流を直接的に変調するステップ;
を更に有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明が、その実施形態を示す添付図面に関連して更に説明される。しかしながら、本発明は、多種多様な形態で実現されてもよく、本願で説明される実施形態に限定して解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が明確且つ十分になるように提供されており、当業者に本発明の概念を適切に伝えるであろう。
【0033】
本願で使用されるように、導電性ケーブル又は光ファイバを介して直接的に、或いは、コネクタやレンズ等のような他のコンポーネントを介して間接的に、電気的又は光学的な信号が或るコンポーネントから他のものへ伝搬する場合に、2つのコンポーネントは「結合されている」又は「光学的に結合されている」と言及される。
【0034】
本発明の実施形態は、増幅及び周波数変換の最中に、入力シードパルス信号についての予想される歪又は逸脱を抑制又は補償するために、入力シードパルス信号を予め歪ませることにより又は予め逸脱させることにより、任意の又は所望の波形を有する高エネルギー光パルスを生成するシステム及び方法を提供する。
【0035】
例えば、電子光学通信装置の構築、開発及び検査などのような等のような様々な分野において、(例えば、約0.1ナノジュール(nJ)のような)低エネルギーレーザー信号又はパルスを増幅し、所望の波形又は時間的なパルスプロファイルを有する(例えば、100ミリジュール(mJ)を越えるような)高エネルギーレーザーパルスを生成することが望まれている。
【0036】
しかしながら、高エネルギーレーザーパルスを得るために低エネルギーレーザーパルスを増幅及び周波数変換するプロセスは、レーザー信号波形において歪みを生じせ、高エネルギーパルスが、任意に設定される(例えば、予め選択される)時間的パルスプロファイル又は波形形状を持つことを困難にする。レーザー信号を増幅し、レーザー信号の周波数を変換するために使用される増幅部に使用されるコンポーネントの性質に起因して、本質的に、信号歪が生じてしまう。しかしながら、光コンポーネントにより引き起こされる歪の性質及び大きさは、定量化され、低エネルギー光シードパルスを予め歪ませるために使用され、予想される歪みを補償し、所望の任意の波形形状を有する高エネルギー光パルスを生成する。
【0037】
従って、本発明の実施形態は、非常に高いパルスコントラスト比(pulse contrast ratio)を有するパルスチェーンにより、相対的に弱いソースを増幅することにより、非常に大きなパルスエネルギーを有する任意波形のパルス時間特性を生成するシステム及び方法を提供する。1つ以上の増幅部は、所望のエネルギーゲインを達成するために使用されるが、増幅された自然放出(ASE)及び誘導ブリルアン散乱(SBS)等のような特性は、時間プロファイルにおいて変動を生じる。従って、本発明の実施形態は、レーザー波長及び時間振幅変調を分離し従ってそれらの独立した制御をもたらすように動作する。波長制御は、SBS制限の減少を可能にする。時間振幅制御は、増幅部チェーンにおける振幅歪効果の補正を可能にする。本発明の実施形態は、光増幅部のような様々な光デバイスの配置を利用して、パルスコントラストに影響を及ぼし得るASEの影響を軽減する。
【0038】
特に、レーザー信号シードパルスの増幅及び周波数変換に起因する歪が定量化されるので、レーザー信号シードパルスは、レーザー信号の直接的な変調(例えば、レーザーソースに適用される電流を変えること)とレーザー信号の間接的な変調(例えば、外部信号に従ってレーザー信号を変調すること)との組み合わせを利用して変調され、増幅及び周波数変換の前に予め歪ませたレーザー信号シードパルスを生成する。予め歪ませた低エネルギーレーザー信号シードパルスの増幅及び周波数変換の後に、所望の出力波形に合致する時間パルスプロファイルを有する高エネルギー光パルスの取得が可能になる。
【0039】
図1は、任意の又は所望の波形を有する高エネルギー光パルスを生成するためのシステム100の概略ブロック図を示す。システム100は、増幅及び周波数変換の前に予め歪ませたレーザー信号パルス104を生成するように構成されるプレディストーション信号生成部102を含む。
【0040】
上述したように、レーザー増幅部106及び周波数変換部108におけるレーザー信号パルスの増幅及び周波数変換は、レーザー信号パルスを歪ませる。プレディストーションレーザー信号パルス104は予め歪められるので(すなわち、プレディストーションレーザー信号パルスは、増幅及び周波数変換に先立って歪められる又は逸脱させられるので)、増幅及び周波数変換の最中に生じる歪は補償され、所望の(又は任意に規定される)時間プロファイル、振幅及び周波数を有する最終的な出力レーザーパルス110をもたらす。
【0041】
図2はシステム100の詳細を示す。プレディストーション信号生成部102は、第1の任意波形生成部112を含む。第1の任意波形生成部112は、ユーザーが指定した又はユーザーが規定した波形出力信号に従って、レーザーダイオードドライバによって受信されることが可能な任意の電気的な波形を生成することが可能な適切な任意の波形生成部であるとすることが可能である。
【0042】
第1の任意波形生成部112は、レーザーソースドライバ114に結合され、更にレーザーソースドライバ114はレーザーソース116に結合される。レーザーソースドライバ114は、相対的にノイズが無い正確な電流をレーザーソース116に提供する電流源として機能することが可能な適切な任意のレーザーソースドライバであってよい。レーザーソース116は、システム100の設計及び機能に従う適切な任意のレーザーソースであってよい。例えば、レーザーソース116は、連続波レーザーソースであってもよく、しかも、レーザーダイオード、ソリッドステートレーザー(例えば、ネオジムドープ:イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)、ガスレーザー、化学レーザー、色素レーザー、金属蒸気レーザー、又は、他の適切な任意のレーザー源等のような半導体レーザーを含んでもよい。
【0043】
第1の任意波形生成部112は、レーザーソースドライバ114がレーザーソース116に適用する電流を変調するために、第1信号118をレーザーソースドライバ114に適用することで、レーザー信号シードパルスを直接的に変調する。レーザーソース116は、レーザーソースドライバ114がレーザーソース116に適用する電流に基づいて、対応するレーザー信号シードパルス124を生成する。
【0044】
例えば、
図3aに示されるように、レーザー信号シードパルス124は、所定の時間期間にわたって実質的に一定の割合で上昇する電流を有してもよい。一実施形態では、例えば、レーザー信号シードパルスの電流124は、
図3に示されるように、ゼロアンペア(A)から実質的に一定のレートで、或いは、0から20ナノ秒(ns)まで線形な勾配で約300mAまで増えてもよい。レーザー信号シードパルスの電流124をランピングすることは、レーザー波長とドライブ電流との間の固有の関係に起因して、プレディストーションレーザー信号パルス104についての対応する周波数チャープをもたらす結果となる。ドライブ電流のランピングにより周波数チャープを誘導することにより、SBSは、SBSプロセスのゲイン帯域幅よりも広いスペクトル帯域幅にわたってパルスエネルギーを拡散することで緩和される。更に、レーザー信号シードパルスの電流124のランピングは、所与の消光比(extinction ratio)に対する優れたパルスコントラスト比をもたらし、レーザーソース116に適用される電流のランピングは、強度変調部122の出力におけるパルスコントラスト比を改善するように動作する。
【0045】
図2に関し、レーザーソース116は強度変調部(例えば、電気光学強度変調部)122に光学的に結合される。上述したように、レーザーソース116は、レーザーソースドライバ114がレーザーソース116に適用する電流に基づいて、対応するレーザー信号シードパルス124を生成するように構成される。レーザーソース116は、レーザー信号シードパルス124を、強度変調部122の入力に適用する。従って、強度変調部122は、レーザーソース116からの直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124を受信するように構成される。強度変調部122は、(例えば、オプティラブ(Optilab)LT-1064-10電気光学コンバータ、或いは、フォトライン(Photline)NIR-MX-LN-10等のような)入力信号の強度を変調することが可能であり、かつ、光ビームの強度を変調することが可能な適切な任意の強度変調部であってよい。
【0046】
間接的な変調を行うために、プレディストーション信号生成部102は、第2の任意波形生成部126を更に含む。第2の任意波形生成部126は、ユーザーが指定した又はユーザーが決定した波形出力信号に従って、電気的な波形を生成することが可能な適切な任意の波形生成部であるとすることが可能である。第2の任意波形生成部126は、第1の任意波形生成部112よりもかなり高い周波数で動作することが可能である。例えば、第1の任意波形生成部112は1ギガヘルツ(GHz)帯域幅で動作するように構成され、第2の任意波形生成部126は10GHz帯域幅で動作するように構成されてもよい(例えば、テクトロニックス(Tektronix)AWG7102である場合)。
【0047】
第2の任意波形生成部126は無線周波数増幅器128に結合され、更に無線周波数増幅器128は強度変調部122に結合される。無線周波数増幅部128は、低電力電気信号を、高電力電気信号に変換することが可能な適切な任意の無線周波数増幅部であってもよい(例えば、Optilab LT-1064-10-R-PM)。
【0048】
第2の任意波形生成部126は、第2信号を無線周波数増幅部128に適用することにより、レーザー信号シードパルスを間接的に変調するように構成される。無線周波数増幅部128は、第2信号130に基づいて、増幅された電気信号132を生成し、増幅された電気信号132を強度変調部122に適用し、直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124を間接的に変調する。
【0049】
図3bは、
図3aに示されるレーザー信号シードパルス124と同じ20ナノ秒間の期間にわたって、増幅された電気信号132の波形の一例を示す。しかしながら、上述のように、増幅された電気信号132の波形は、システム100の設計及び機能、所望の出力波形、及び、レーザー信号シードパルス124の波形に従って変化し得る。
【0050】
図2において、強度変調部122は、増幅された電気信号132に基づいて、レーザー信号シードパルス124を間接的に変調し、対応する予め歪ませた(又はプレディストーション)レーザー信号パルス104を生成するように構成される。具体的には、強度変調部122により提供されるプレディストーションレーザー信号パルス104の波形は、レーザー信号シードパルスの波形124と、増幅された電気信号132との積に等しくてもよい。すなわち、レーザー信号シードパルスの波形124、及び、増幅された電気信号132は、所望のプレディストーションレーザー信号パルス104を獲得するように、それぞれ、第1の任意波形生成部112及び第2の任意波形生成部126により制御されることが可能である。
【0051】
バイアスコントローラ136は、強度変調部122の出力に結合され、及び、パルス同士の間に存在する低レベルの光を受信し、強度変調部122の消光比の最適化を促すように強度変調部122の出力電圧を調整するように構成される。
【0052】
プレディストーションレーザー信号パルス104は、歪を補償するために予め歪められるレーザー信号パルスであり、その歪は、比較的低いパワー(例えば、約0.1nJのオーダー)から比較的高いパワー(例えば、090ないし100mJのオーダー)の間で、プレディストーションレーザー信号104が増幅される場合に、既知の又は生じることが予想される歪、及び、(例えば、約1064nmないし約532nmの周波数を2倍にするような場合に)信号の周波数変換の間に生じることが予想される又は既知の歪である。
【0053】
図1に関連して上述したように、増幅部106は、プレディストーション信号生成部102に結合され、及び、プレディストーション信号生成部102からのプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、プレディストーションレーザー信号パルス104を増幅するように構成される。増幅部106は、プレディストーションレーザー信号パルス104を順に増幅するように選択的に結合される複数のコンポーネントを含む増幅チェーンとして構成されてもよい。
【0054】
図2においては、増幅部106は、広帯域レーザー増幅部142とプレディストーション信号生成部102との間に結合される低速光ゲート及びアイソレータユニット140を含む。低速光ゲート及びアイソレータユニット140は、プレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、「OFF」状態で強度変調部122を介して漏れ込む光が、増幅チェーン内を伝搬し、これにより、シードパルスが生成される前に、蓄えられたエネルギーを増幅部から取り出されてしまうことを防止又は軽減するように構成される。低速光ゲート及びアイソレータユニット140は、高エネルギー増幅パルスの反射又は後方伝搬が、シードパルスソースに到達してダメージを与えてしまうことを防止又は軽減するように動作する。
【0055】
広帯域レーザー増幅部142は、低速光ゲート及びアイソレータユニット140からプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、プレディストーションレーザー信号パルス104を増幅してゲインクランプ(gain clamping)を減らすように動作する。広帯域レーザー増幅部142からの増幅された自然放出(ASE)は、プレディストーションレーザー信号パルス104と比較して広い波長範囲にわたって拡散されるので、広帯域レーザー増幅部142は、この増幅ステージで放出されるASEが、プレディストーションレーザー信号パルス104が到着する前に、後続ステージからエネルギーを取り出してしまうことを防止又は軽減するように動作する。
【0056】
高速光ゲート及びアイソレータユニット144は、広帯域レーザー増幅部142と第1の狭帯域レーザー増幅部146との間に結合される。高速光ゲート及びアイソレータユニット144は、広帯域レーザー増幅部142からプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、シードパルスの通過を許容するようにゲートがオープンである場合を除いて、広帯域レーザー増幅部142と第1の狭帯域レーザー増幅部146との間で双方向でASEを減らすように、構成される。高速光ゲート及びアイソレータユニット144は、後続の増幅ステージにより放出されるASEが、広帯域レーザー増幅部142に到達してしまうことを防止又は軽減するように、及び、進行中の高エネルギーパルスからの反射が、広帯域レーザー増幅部142及びプレディストーション信号生成部102に到達してしまうことを防止又は軽減するように、動作する。
【0057】
狭帯域レーザー増幅部146は、高速光ゲート及びアイソレータユニット144からプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、プレディストーションレーザー信号パルス104を増幅してゲインクランプを減らすように動作する。
【0058】
第2の高速光ゲート及びアイソレータユニット148は、第1の狭帯域レーザー増幅部146と第2の狭帯域レーザー増幅部150との間に結合される。第2の高速光ゲート及びアイソレータユニット148は、広帯域レーザー増幅部142からプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、増幅チェーンを通るシードパルスの伝搬を許容するようにゲートがオープンである場合を除き、狭帯域レーザー増幅部146及び狭帯域レーザー増幅部150の間で双方向でASEを減らすように構成される。第2の高速光ゲート及びアイソレータユニット148は、後続の増幅ステージにより放出されるASEが、プレディストーションレーザー信号パルス104が到着する前に、広帯域レーザー増幅部142及び第1の狭帯域レーザー増幅部146に到達してしまうことを防止するように動作する。第2の高速光ゲート及びアイソレータユニット148は、進行中の高エネルギーパルスからの反射が、広帯域レーザー増幅部142、第1の狭帯域レーザー増幅部146及びプレディストーション信号生成部102に後方伝搬してしまうことを防止又は軽減するように動作する。
【0059】
第2の狭帯域レーザー増幅部150は、高速光ゲート及びアイソレータユニット148からプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、システム100の設計及び機能に従って、プレディストーションレーザー信号パルス104を増幅する。第2の狭帯域レーザー増幅部150は、ゲインクランプを減らし、及び、所望のゲインを提供する程度に十分なエネルギーを蓄えるために、第1の狭帯域レーザー増幅部146の能力に関する制限に応じて、プレディストーションレーザー信号パルス104の増幅を促進するように、動作する。
【0060】
周波数変換部108は、増幅部106の狭帯域レーザー増幅部150に選択的に結合される。周波数変換部108は、プレディストーションレーザー信号パルス104が増幅された後に増幅部106からプレディストーションレーザー信号パルス104を受信し、プレディストーションレーザー信号パルス104の周波数を別の周波数に変換する。別の実施形態では、周波数変換部108は、増幅部106と電気−光学強度変調部122との間に光学的に結合され、プレディストーションレーザー信号パルス104が増幅部106により増幅される前に、プレディストーションレーザー信号パルス104を受信する。
【0061】
周波数変換部108は、第1周波数から第2周波数へレーザー信号の周波数を変換することが可能な適切な任意の周波数変換部であってもよい。例えば、周波数変換部108は、約1064ナノメートル(nm)の波長ないし約532nmの波長で光信号の周波数を2倍にするように構成されてもよい。周波数変換部108は、例えば、リチウムトリオベート(LBO)、リチウムナイオベート(LN)、リチウムタンタル(LT)、チタンリン酸カリウム(KTP)、或いは、他の適切な周波数変換材料(第1周波数から第2周波数へ光周波数を変換することが可能な材料)等のような適切な周波数ダブラー(doubler)又は二次高調波生成部(SHG)結晶を含んでもよい。周波数変換部は、光周波数を変更することが可能な適切な任意のデバイスであってもよく、カイ2非線形性(chi 2 nonlinearity)を有する材料に限定されない。例えば、周波数変換部は、誘導ラマン散乱により光キャリア周波数を変更する固体、液体又は気体のサブストレートであってもよい。周波数変換部108は、プレディストーションレーザー信号パルス104の周波数を変換した後に、最終的な出力レーザーパルス110を出力するように結合される。
【0062】
増幅及び周波数変換の前にプレディストーションレーザー信号パルス104を生成することは、増幅部106及び周波数変換部108で生じることが既知の又は予想されるシードパルスの歪補償を可能にする。従って、最終的な出力レーザーパルス110は、比較的少ない信号歪と共に、所望の増加したエネルギーレベル及び周波数における所望の波形を有する。
【0063】
図3cは、最終的な出力レーザーパルス110をもたらすように、増幅部106及び周波数変換部108に対する入力として適用される例示的なプレディストーションレーザー信号パルス104を示す。
図3dは、増幅部106を利用してプレディストーションレーザー信号パルス104を増幅し、周波数変換部108を利用してプレディストーションレーザー信号パルス104の周波数を変換した後に生成される、対応する最終的な出力レーザーパルス110を示す。
【0064】
最終的な出力レーザーパルス110を生成するために必要なプレディストーションレーザー信号パルス104の波形は、増幅チェーン106及び周波数変換部108の構成要素についての既知の特性と、その構成要素が引き起こす予想される歪とに基づいて計算されることが可能である。例えば、所望の最終的な出力レーザーパルス110は、
図3dに示されるように、20ナノ秒(ns)のパルス持続期間を有する「シルクハット(top hat)」形状の所望の波形エンベロープを有し、ゼロないし約8メガワット(MW)の範囲に及ぶパワーを有する正弦波形状の波形を有することが仮定される。
【0065】
そのような場合、プレディストーションレーザー信号パルス104の波形は、
図3cに示されるような形状を有してもよく、この場合、プレディストーションレーザー信号パルス104のパワーは、20nsのパルス期間の間に、ゼロから約9ミリワット(mW)まで各サイクルで少しずつ上昇するピークパワーレベルを有する。プレディストーションレーザー信号パルス104の増幅及び周波数変換の間に、信号は歪められるが、最終的な出力レーザーパルス110は、
図3dに示されるような所望の「シルクハット」形状を有する。すなわち、プレディストーションレーザー信号パルス104は、増幅部106における信号の増幅及び周波数変換部108における信号の周波数変換の間に生じる既知の又は予想される歪を補償するように、予め歪められ、これにより、最終的な出力レーザーパルス110は、所望の波形に実質的に等しい波形及び高いエネルギーレベルを有することになる。
【0066】
従って、システム100は、第1信号118及び第2信号130を調整することにより(及びそれに応じて直接的に変調されるレーザー信号シードパルス124及び増幅された電気信号132をそれぞれ調整することにより)、任意の所望の形状を有する出力波形を生成し、最終的な出力レーザーパルス110という所望の出力波形に対応する必要なプレディストーションレーザー信号パルス104を生成する手段を提供する。
【0067】
レーザー増幅部の出力で所望の出力波形を生成するためのプレディストーションレーザー信号パルス104の入力パルス波形は、以下の数式(1)により表現されてもよい(この点については、例えば、Anthony E. Siegman, Lasers§10.1(Aidan Kelly et al. eds., 1986)を参照されたい):
【数1】
ここで、I
in(t)は入力パルス波形強度を表し、I
out(t)は所望の出力パルス波形強度を表し、G
0は、小さな信号ゲインを表し、これは、増幅チェーンのコンポーネントについての既知の特性に基づく、増幅チェーンに蓄えられるポンプエネルギーに関連する。U
satは増幅チェーンの飽和フルエンス(saturation fluence)を表現し、U
out(t)は出力フルエンスを表現する。出力フルエンスU
out(t)は、以下の数式(2)に従って負の無限大から時間tまでの期間にわたって積分をとることにより計算されることが可能である:
【数2】
【0068】
増幅に起因する歪に加えて、周波数変換のプロセスも、レーザーパルスの時間特性を歪ませる。例えば、二次高調波生成に関する非空乏化ポンプ近似(undepleted pump approximation)では、二次高調波の出力強度は、基本周波数の入力強度の二乗に比例する。従って、周波数変換部に入力される及びそこから出力されるビームの時間特性の形状は、異なることになる。非空乏化ポンプ近似が有効である又は正確である場合、周波数変換部からの出力における二次高調波ビームの所望の時間波形を生成するために、基本周波数で入力ビームに適用される対応する波形は、所望の出力波形の平方根となる。
【0069】
従って、所望の出力パルス波形I
out(t)を取得するための入力パルス波形I
in(t)は、増幅チェーン106及び周波数変換部108の既知の又は予想される特性に基づいて計算されることが可能である。
【0070】
更に、上述したように、プレディストーションレーザー信号パルス104の入力パルス波形I
in(t)は、以下の数式(3)に従って、直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124及び増幅された電気信号132の積に等しい:
【数3】
ここで、I
direct(t)は直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124の波形であり、I
indirect(t)はシードパルスを間接的に変調するように作用する増幅された電気信号132の波形である。一実施形態では、直接的に変調されるレーザー信号シードパルス124の波形は、プレディストーションレーザー信号パルス104で周波数チャープを形成するために、
図3aに示されるように、パルスの時間期間の間に、一定の上昇する又は増加する傾斜の電流を有するように、任意波形生成部112により制御される。プレディストーションレーザー信号パルス104における周波数チャープは、誘導ブリルアン散乱(SBS)を抑制又は低減する。そのような場合において、波形I
indirect(t)は、以下の数式(4)に示すように、プレディストーションレーザー信号パルス104の入力パルス波形I
int(t)を、直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124の波形I
direct(t)で除算することにより、比較的容易に規定されることが可能である。
【数4】
【0071】
上述したように、増幅チェーン及び周波数変換部により引き起こされるパルス時間プロファイルの歪は、増幅チェーン及び周波数変換部内のコンポーネントについての既知の又は測定された特性に基づいて定量化され、小信号ゲインG
0及び飽和フルエンスU
satを算出することが可能であり、小信号ゲインG
0は増幅チェーンに蓄えられるポンプエネルギー量に基づいており、飽和フルエンスU
satは放出断面積及びレーザー発振波長に関連する材料特性である。
【0072】
従って、本発明の実施形態は、数式(1)及び(2)を利用して入力パルス波形I
in(t)を計算することにより(その計算は、所望の出力波形I
out(t)を生成することになる)、所望の出力波形I
out(t)を取得するシステム及び方法を提供する。いったん入力パルス波形I
in(t)が計算されると、直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124及び増幅された電気信号132に関する対応する波形の算出が可能になり、それぞれ、第1の任意波形生成部112及び第2の任意波形生成部126により制御される。すなわち、第1及び第2の任意波形生成部112、126は、増幅部及び周波数変換部に対する入力であるレーザー信号シードパルス(すなわち、プレディストーションレーザー信号パルス104)を直接的及び間接的に操作し、所望の予め選択された波形を得る。
【0073】
図4は本発明の一実施形態による増幅部106の更なる詳細を示す。液晶スイッチ160は、パッチケーブル162によりプレディストーション信号生成部102に結合されるファイバである。液晶スイッチ160は、低速光ゲート又は時間ゲートとして機能し、その低速光ゲート等は、強度変調部122が「OFF」状態である場合に強度変調部122を通じてリークするかもしれないダイオードソース116からの光が、信号パルスが到着する前に増幅チェーンに到達して蓄積エネルギーを取り出してしまうことを防止又は軽減する。液晶スイッチ160は、ポンプパルス持続期間と比較して短い時間の中で、適切な消光比とともに(例えば、「ON」及び「OFF」状態の間で20dBの消光)切り替えを行うことが可能な適切な任意の液晶スイッチであってよい。例えば、液晶スイッチ160は、アジルトン(Agiltron)NSSW-120115323スイッチや、SWDR-111221112スイッチドライバ等であってもよい。
【0074】
液晶スイッチ160は、自由空間に入った後にレーザー信号ビームをコリメートするために、パッチケーブルによりファイバーコリメータ164に結合されるファイバであってもよい。ファイバーコリメータ164を通過した後、レーザー信号ビームはアイソレータ170を経由する。アイソレータ170は、増幅された信号パルスの反射及び増幅チェーンで放出されたASEがプレディストーション信号生成部102の方に向かって伝搬してしまうこと(すなわち、後方に進行するビーム)を防止又は軽減するように動作する。レーザー信号ビームは、レーザー信号ビームの偏光を回転させるように動作する半波プレート172を介して進行する。すなわち、半波プレート172は、レーザー信号ビームの偏光状態を、システム100の以後のコンポーネントのブリュースター角(Brewster's angle)に整合させる。レーザー信号ビームは、増幅部106の増幅チェーンに入るようにミラー174により方向付けられる又は反射される。別の実施形態では、レーザー信号ビームは、ファイバ増幅部を組み込むシステムの設計及び機能に応じて、増幅部106の増幅チェーンのうちの最初のステージ又は複数のステージを通じてファイバ内に残ってもよい。例えば、信号のパワーが、信号が自由空間に入る場所であるファイバーケーブル部分のダメージ又はSBSに関するピークパワー閾値に到達するまで、信号は1つ以上の増幅ステージに留まってもよい。
【0075】
プレディストーション信号生成部102から出力されるプレディストーションレーザー信号パルス104は、低エネルギーパルスである。例えば、一実施形態では、プレディストーションレーザー信号パルス104は、パルス当たり約0.1nJないしパルス当たり約0.9nJの範囲内のエネルギーレベルを有する。プレディストーションレーザー信号パルス104の波長は、システム100の設計及び機能に応じて異なってよい。外部空洞ダイオードレーザー(ECDL)又は分散フィードバック(DFB)ダイオードレーザーであるようなレーザーソースが周波数安定化半導体レーザーである一実施形態では、プレディストーションレーザー信号パルス104は1064nmの波長を有する。
【0076】
レーザー信号ビームが増幅部106の増幅チェーンに入ると、信号は、その信号を増幅する一連の光コンポーネントを通じて伝搬する。増幅部106の特定のコンポーネントは、システム100の設計及び機能に応じて修正され、それに応じて小信号ゲインG
0及び飽和フルエンスU
satに影響する。例えば、飽和フルエンスU
satは、増幅媒体に依存して異なる。従って、システム100の設計及び機能に応じて、増幅チェーンは、より多くの又はより少ない増幅ステージを含んでもよく、増幅ステージは、広帯域の複数の増幅器又は狭帯域の複数の増幅器として構成されてよい。一実施形態では、増幅部106は、少なくとも1つの広帯域ゲイン増幅部(例えば、
図2に示されるような広帯域増幅部142)及び少なくとも1つの狭帯域ゲイン増幅部(例えば、
図2に示されるような狭帯域増幅部146)を含む。広帯域ゲイン増幅部とそれに続く狭帯域ゲイン増幅部の組み合わせは、増幅部106の増幅チェーンにおけるASE及び寄生振動(parasitic oscillation)を低減又は抑制し、その理由は、広帯域ステージにより放出されるASEの多くの部分は、後続の狭帯域ゲイン増幅部からのゲインを経験しないからである。
【0077】
説明の簡明化のため、及び、プレディストーション信号生成部102から出て結合された直後の信号波形と、増幅部106の様々なステージを経て伝搬した後のレーザー信号波形の形状とを区別するために、直後の信号は、ポイントAから始まって増幅ステージを経由するレーザー信号180として言及される。ただし、ポイントAにおけるレーザー信号180の波形は、プレディストーション信号生成部102から出て結合されるプレディストーションレーザー信号パルス104の波形と実質的に同一であってよい。
【0078】
レーザー信号180が増幅部106の増幅チェーンを通じて伝搬して行くにつれて、レーザー信号180のエネルギーは、ポイントB,C,D,Eの各増幅ステージを経て、レーザー信号のエネルギーが先行するポイントにおけるエネルギーより大きくなるように増加する。増幅ステージの数は、システム100の設計及び機能に応じて異なり、増幅部106に求められるゲインの大きさに依存して、
図4に示すものよりも多い又は少ない増幅ステージを含んでもよい。
【0079】
レーザー信号180は、ミラー182によりリダイレクト又は反射され、レーザー信号180のビームの焦点を合わせる又は狭めるためにレンズ184を通った後に、ビームは増幅部106の増幅チェーンの第1ステージで増幅される。増幅チェーンの第1ステージは、例えば、プレーナウェーブガイド186を含み、プレーナウェーブガイド186はレンズ184,188及び第1ポンプダイオードアレイ190に光学的に結合される。全体的に、プレーナウェーブガイド186は、Yb:glass増幅器又はNd:glass増幅器等のような広帯域ゲイン増幅器として動作してもよいし、或いは、Nd:YAG増幅器のような狭帯域ゲイン増幅器であってもよい。一実施形態では、増幅チェーンの第1ステージは、広帯域ゲイン増幅器の後に狭帯域ゲイン増幅器が続き、増幅チェーンにおけるASE及び寄生振動を抑制する。プレーナウェーブガイドを利用することは、増幅ステージからのエネルギーの取り出しを最大化又は最適化するために、ドーピング(添加)及びクラッディング(被覆)を最適に選択することを許容する。第1ダイオードアレイ190は、レーザー信号180を増幅するプレーナウェーブガイド186をポンピングするように構成される。代替的に、プレーナウェーブガイド186及び第1ダイオードアレイ190は、レーザー信号180のエネルギーを増加することが可能な適切な任意のレーザー増幅器により置換されてもよい。
【0080】
プレーナウェーブガイド186及びダイオードアレイ190により第1増幅ステージで増幅された後、レーザー信号180は、プレーナウェーブガイド186から出て結合され及びレンズ192によりコリメートされた後に、ミラー194によりリダイレクト又は反射され、第2アイソレータ196を経由する。第2アイソレータ196は、適切な任意のアイソレータであってもよく、レーザー信号180のビーム反射、或いは、以後の増幅ステージからのASEが、逆方向に伝搬してしまうこと(例えば、プレーナウェーブガイド186の方に又はレーザーシードソースの方に向かうこと)を防止又は軽減するように構成され、そのような逆方向の伝搬は、シードパルスが到達する前に、増幅器186からの蓄積エネルギーの取り出しや光学面に対するダメージを招くおそれがあり、或いは、レーザー信号180における意図されていない強度及び周波数変動を招くおそれがある。第2アイソレータ196を通過した後、レーザー信号180は、レーザー信号180の偏光を回転させる半波プレート198を経て進行し、その後、レーザー信号180はミラー200によってリダイレクト又は反射され、第1ポッケルスセル(Pockels cell)(例えば、第1光ゲート)202を経て伝搬する。
【0081】
ポイントBにおいて、第1ポッケルスセル202に進む前に、レーザー信号180は、プレーナウェーブガイド186及びダイオードアレイ190による第1増幅ステージの増幅に起因して、ポイントAにおけるエネルギーレベルより大きなエネルギーレベルを有する。第1ポッケルスセル202は、増幅部106の増幅チェーンのうちの第1及び第2増幅ステージの間でASEのカップリングを防止又は軽減するように動作する。
【0082】
第1ポッケルスセル202を通過した後、レーザー信号180はミラー204により反射又はリダイレクトされ、第1偏光子206を経由する。第1偏光子206は、レーザー信号180の偏光状態に整合した第1伝送軸を有し、そのため、レーザー信号180は、レーザー信号180の偏光状態を実質的に変えることなく、及び、第1偏光子206を経て進行するレーザー信号180の強度又はエネルギーを実質的に減らすことなく、第1偏光子206を経て進行する。
【0083】
レーザー信号180のビームは、レンズ208により狭められた後に、プレーナウェーブガイド210を含む第2増幅ステージを経由する第1パスを形成する。レーザー信号180はプレーナウェーブガイド210を経て進行し、プレーナウェーブガイド210はレンズ208,212及び第2ポンプダイオードアレイ214に光学的に結合される。全体的に、プレーナウェーブガイド210及びダイオードアレイ214は、レーザー信号増幅器として動作し、及び、Yb:glass増幅器又はNd:glass増幅器等のような適切な任意の広帯域ゲイン増幅器として動作してもよいし、或いは、Nd:YAG増幅器のような狭帯域ゲイン増幅器であってもよい。一実施形態では、プレーナウェーブガイド210が広帯域ゲイン増幅器であり、以後の増幅器が狭帯域ゲイン増幅器である。第2ダイオードアレイ214は、レーザー信号180を増幅するためにプレーナウェーブガイド210をポンピングするように構成される。代替的に、プレーナウェーブガイド210及び第2ダイオードアレイ214は、レーザー信号180のエネルギーを増やすことが可能な適切な任意のレーザー増幅器により置換されてもよい。
【0084】
プレーナウェーブガイド210を経て進行した後に、レーザー信号180のビームは、レンズ216によりコリメートされ、ミラー218によりリダイレクト又は反射され、第2偏光子220を経由する。第2偏光子220も、レーザー信号180の偏光状態に整合した第1伝送軸を有し、そのため、第2偏光子220は、レーザー信号180の偏光状態を実質的に変えることなく、及び、レーザー信号180の強度又はエネルギーを実質的に減らすことなく、レーザー信号180が偏光子220を経て進行することを許容するように、構成されている。
【0085】
半波プレート222は、第2偏光子220からレーザー信号180を受信し、レーザー信号180の偏光状態を例えば90度だけ回転するように構成され、そのため、レーザー信号180の偏光状態は、偏光子の第2伝送軸に実質的に整合するようになる。レーザー信号180は、偏光子206を経てミラー224によりリダイレクト又は反射される。半波プレート222を経由して進行した後、レーザー信号180の偏光状態は、偏光子206の第2伝送軸に実質的に整合するようになるので、レーザー信号180は、偏光子206から出て結合され、レンズ208及び増幅部106の第2増幅ステージ(プレーナウェーブガイド210を含む)を経由する第2パスを形成する。従って、増幅部106は、レーザー信号180が、プレーナウェーブガイド210の第2増幅ステージを経由する2つのパスを形成し、レーザー信号180のエネルギーを更に増やすことを可能にするように構成される。
【0086】
2回目にプレーナウェーブガイド210を経由して進行した後、レーザー信号180は、レンズ216によりコリメートされ、ミラー218によりリダイレクト又は反射され、偏光子220を経由する。偏光子220は、2回目にプレーナウェーブガイド210を進行した後にレーザー信号180の偏光状態に実質的に整合する第2伝送軸を有し、これにより、レーザー信号180は偏光子220から出てミラー226の方に結合される。増幅部106の第2増幅ステージを経て2つのパスを形成した後に、レーザー信号180は、ポイントCにおいて、ポイントBにおけるエネルギーレベルよりも大きなエネルギーレベルを有する。
【0087】
レーザー信号180は、その後、ミラー226によりリダイレクト又は反射され、半波プレート228、光アイソレータ230及び半波プレート232を経て進行する。半波プレート228,232は、レーザー信号180の偏光方向を回転させ、以後のビーム経路の偏光軸に整合させるように構成される。
【0088】
次に、レーザー信号180のビームは、一連のレンズ234、236及び238によりサイズ変更され及びコリメートされ、一連のミラー240及び242によりリダイレクト又は反射された後に、プレーナウェーブガイド244を含む増幅部106の第3増幅ステージにより増幅される。レーザー信号180は、レンズ238,252及び第3ポンプダイオードアレイ248に光学的に結合されるプレーナウェーブガイド244を経由して進行する。プレーナウェーブガイド244は、Yb:glass増幅器又はNd:glass増幅器のような適切な任意の広帯域ゲイン増幅器であってもよいし、或いは、Nd:YAG増幅器のような狭帯域ゲイン増幅器であってもよい。プレーナウェーブガイドを利用することは、増幅ステージからのエネルギー取り出しを最大化又は最適化するように、ドーピング及びクラッディングの選択を最適化することを可能にする。一実施形態では、プレーナウェーブガイド244及びダイオードアレイ248は、増幅部106の先行するステージの広帯域ゲイン増幅器とともに組み合わせられる狭帯域増幅器として動作し、増幅部106の増幅チェーンにおけるASE及び寄生振動を抑制するように動作する。第3ダイオードアレイ248は、レーザー信号180を増幅するプレーナウェーブガイド244をポンピングするように構成される。代替的に、プレーナウェーブガイド244は、レーザー信号180のエネルギーを増やすことが可能な適切な任意のレーザー増幅器により置換されてもよい。
【0089】
プレーナウェーブガイド244を経て進行した後に、レーザー信号180のビームは、ミラー250によりリダイレクト又は反射され、レンズ252によりコリメートされた後に、偏光子254を経由して進行する。偏光子254は、レーザー信号180の偏光状態を実質的に整合する第1伝送軸を有し、そのため、レーザー信号180の偏光状態を実質的に偏光することなく、及び、レーザー信号180の強度又はエネルギーを実質的に偏光することなく、レーザー信号180は偏光子254を経て進行する。
【0090】
レーザー信号180は半波プレート256を経て進行し、半波プレート256はレーザー信号180の偏光状態を例えば45度だけ回転させるように構成される。レーザー信号180は、ファラデー回転子(Faraday rotator)258及び偏光子260を経由する第1パスを形成した後に、ハイリフレクタ(high reflector)262により第2パスに関して偏光子260及びファラデー回転子258により反射される。
【0091】
半波プレート256、ファラデー回転子258及び偏光子260を経由する2つのパスを形成した後に、レーザー信号180の偏光状態は変更し254の第2伝送軸に実質的に整合されており、そのため、レーザー信号180は偏光子254により高反射率鏡264の方に出て結合される。ファラデー回転子258、半波プレート256、偏光子254,260及び高反射率鏡264は、二重パスアイソレータとして動作し、レーザー信号180のビームに対して反対に伝搬するビームのエネルギーを減らす。(例えば、プレーナウェーブガイド244及びダイオードアレイ248を含む)第3増幅ステージを経て進行した後、レーザー信号180は、ポイントDにおいて、ポイントCにおけるエネルギーレベルより大きなエネルギーレベルを有する。
【0092】
レーザー信号280は、その後、第2ポッケルスセル266を経てミラー264によりリダイレクト又は反射される。第2ポッケルスセル266は、増幅部106の増幅チェーンの第3及び第4増幅ステージの間でASEのカップリングを防止する又は減らすように、高速光ゲート又は時間ゲートとして動作することが可能な適切な任意のポッケルスセルであってよい。例えば、第2ポッケルスセル266は、レーザーメトリックスモデル(Lasermetrics model)Q1059P-12SG-1064ポッケルスセル(KD*Pクリスタル)であってもよい。第2ポッケルスセルは、例えば、2nsの立ち上がり/立ち下がり時間で動作することが可能であってもよい。
【0093】
レーザー信号180のビームは、その後、レンズ268及び270により整形され、272により狭められ、一連のミラー274及び276によりリダイレクトされた後、プレーナウェーブガイド278を含む増幅部106の第4増幅ステージにより増幅される。レーザー信号180は、レンズ280及び第4ダイオードアレイ282に光学的に結合されたプレーナウェーブガイド278を経て進行する。プレーナウェーブガイド278は、Yb:glass増幅器又はNd:glass増幅器のような適切な任意の広帯域ゲイン増幅器であってもよいし、或いは、Nd:YAG増幅器のような狭帯域ゲイン増幅器であってもよい。プレーナウェーブガイドを利用することは、増幅ステージからのエネルギー取り出しを最大化又は最適化するように、ドーピング及びクラッディングの選択を最適化することを可能にする。一実施形態では、プレーナウェーブガイド278及びダイオードアレイ282は、増幅部106の先行するステージの広帯域ゲイン増幅器とともに組み合わせられる狭帯域増幅器として動作し、増幅部106の増幅チェーンにおけるASE及び寄生振動を抑制するように動作する。第4ダイオードアレイ282は、レーザー信号180を増幅するプレーナウェーブガイド278をポンピングするように構成される。代替的に、プレーナウェーブガイド278は、レーザー信号180のエネルギーを増やすことが可能な適切な任意のレーザー増幅器により置換されてもよい。(例えば、プレーナウェーブガイド278及びダイオードアレイ282を含む)第4増幅ステージを経て進行した後に、レーザー信号180は、ポイントEにおいて、ポイントDにおけるエネルギーレベルよりも大きなエネルギーレベルを有する。
【0094】
増幅部106の第4増幅ステージを経て進行した後、レーザー信号180は増幅部106の増幅チェーンを後にしてもよい。代替的に、増幅部106の増幅チェーンは、レーザー信号180のエネルギーを更に増やすために追加的な増幅ステージを含んでいてもよい。レーザー信号180は、ミラー284によりリダイレクトされ、一連のレンズ286,288及び290を経由し、それらのレンズは、レーザー信号180が周波数変換部292を経て進行する前に、レーザー信号180のビームを整形する。周波数変換部292は、第1周波数又は波長から、第2周波数又は波長へ、レーザー信号180の周波数又は波長を変換するように構成されることが可能な適切な任意のコンポーネントであってよい。例えば、周波数変換部292は、リチウムトリボレート(LBO)のような二次高調波生成部又は周波数二重化クリスタル、或いは、適切な他の周波数変換モジュールであってもよい。周波数変換部292は、例えば、約60%以上の変換効率を有してもよい。
【0095】
周波数変換部292を経て進行した後、レーザー信号180の一部分は、(例えば、1064nmのような)より長い波長信号を含み、その部分は、第1のハーモニック分離部294を経て進行し、ビームダンプ(beam dump)296により吸収される。レーザー信号180の残りの部分は、第2ハーモニック分離部298の方へリダイレクトされ、第2ハーモニック分離部298は、残りのレーザー信号180のうち長い波長を更にフィルタリングするように構成されている。
【0096】
第2ハーモニック分離部298は、最終的な出力レーザーパルス110を出力するようにレーザー信号180をリダイレクトし、レーザーパルス110は、例えば
図3dに示される「シルクハット」状の波形のような所望の波形に実質的に等しい時間プロファイルを有する、或いは、プレディストーションレーザー信号パルス104より何桁も大きな(例えば、10
5倍大きな)エネルギーレベルを有し、かつ、プレディストーションレーザー信号パルス104より高い周波数(例えばその周波数の2倍)を有する他の任意の所望の波形を有してもよい。例えば、プレディストーションレーザー信号パルス104は、約1064nmという波長でパルス当たり約0.1nJのエネルギーレベルを有してもよく、最終的な出力レーザーパルス110は、約532nMという波長でパルス当たり約90mJ、或いは、約1064nmの波長でパルス当たり150mJより大きい範囲内でピークエネルギーレベルを有してもよい。システム100は、約20Hzのパルス反復周波数(pulse repetition frequency:PRF)を有するように構成されてもよい。
【0097】
増幅チェーンの入力信号(例えば、プレディストーションレーザー信号パルス104)は予め歪められるので、最終的なレーザーパルス110は、入力信号が予め歪められていなかった場合よりも、所望の出力パルスに対する歪みが小さな所望の出力波形に実質的に等しい波形を有する。特に、プレディストーションレーザー信号パルス104は、第1の任意波形生成部112を利用してレーザーソース116に適用される電流を直接的に変調し、かつ、第2の任意波形生成部126により駆動される強度変調部122を利用してレーザー信号シードパルス124を間接的に変調することにより生成される。更に、レーザーソース116に適用される電流を直接的に変調することは、SBSを減らす又は抑制することが可能なプレディストーションレーザー信号パルス104の周波数チャープを可能にする特徴を有する。例えば、レーザーソース116に適用される電流は、レーザー信号シードパルス124の中心周波数を連続的に掃引するように、相対的に一定の割合で増やされてもよい。
【0098】
最終的な出力レーザーパルス110の所望の波形、及び、増幅部106の増幅チェーンで使用されるコンポーネントの既知の特徴に基づいて、必要なプレディストーションレーザー信号パルス104の波形は、上述したように算出されることが可能である。そして、プレディストーションレーザー信号パルス104は、直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124及び増幅された電気信号132を強度変調部122へ適用し、必要なプレディストーションレーザー信号パルス104を生成することにより生成されることが可能であり、この場合において、プレディストーションレーザー信号パルス104の波形は、直接的に変調されたレーザー信号シードパルス104と増幅された電気信号132との波形の積に等しい。直接的に変調されたレーザー信号シードパルス124及び増幅された電気信号132の波形は、それぞれ、第1の任意波形生成部112及び第2の任意波形生成部126により制御されることが可能である。
【0099】
増幅部106の増幅チェーンにおけるブロードバンドゲイン増幅器とその後に続くナローバンドゲイン増幅器との組み合わせは、増幅チェーンにおけるASE及び寄生振動を抑制する。例えば、Yb:glass又はNd:glass増幅器のようなブロードバンドゲイン増幅器の後にNd:YAG増幅器のようなナローバンドゲイン増幅器を含んでもよい。
【0100】
増幅部106の増幅ステージ同士の間の信号の時間的なゲート制御は、増幅ステージ間でのASEのカップリングを防ぎ又は減らし、ポッケルスセル202、266及び液晶スイッチ160の組み合わせを利用して実行されてもよい。
【0101】
従って、本発明の実施形態は、任意波形生成部を利用して電気−光学伝送波変調部を駆動することにより、レーザーソース(例えば、レーザーダイオード)に印加する電流の変調、及び、レーザー信号シードパルスの間接的又は外的な変調を行い、対応するプレディストーションレーザー信号シードパルスを生成する。レーザー信号シードパルスの直接的及び間接的な変調の双方を利用して、プレディストーションレーザー信号シードパルス104を生成することは、レーザー信号シードパルスの振幅変調及び周波数変調を分離することを可能にし、そのような分離は、レーザー信号シードパルスの増幅及び周波数変換の最中に、レーザー信号シードパルスの時間パルスプロファイルの整形、及び、波形の歪み補償を、更に許容することになる。
【0102】
レーザーシードパルスを生成するための直接的及び間接的な変調についての上述した組み合わせは、間接的な変調しか行わない場合よりも改善されたパルスコントラスト比を提供する。例えば、間接的な変調のみが使用される状況は、ダイオードレーザーからの出力を、電気−光学(EO)変調部への入力に適用することを含み、ダイオードレーザーは一定の電流で駆動される。EO変調部は、例えば、EO変調部が最大の伝送レートで動作している場合に(ON状態)、その出力において100mWの光パワーを生成するかもしれない。EO変調部の消光率は例えば20dBであってもよく、ある波形でEO変調部の出力において光パルスを生成し、その波形の瞬時パワーは20dB毎に1mWから100mWまで変化する。従って、パルスのコントラスト比は約20dBとなる。
【0103】
これに対して、ダイオードレーザーが、
図3aに関して上述されたような最小値及び最大値の間で増加する(すなわち、直接的な変調の)電流によって駆動される場合、上記と同様な動作状態の下で、EO変調部は、変調部が「ON」状態にある場合に、1mWないし100mWの間で変動する光パワーを有する出力信号を生成する。光パワーのこの変動は、レーザーダイオード電流の直接的な変調に起因する。ダイオード電流が最小である場合、EO変調部は、0.01mWないし1mWの間で出力において光パワーを変化させることが可能である。ダイオード電流が最大である場合、EO変調部は1mWないし100mWの間で出力における光信号を変化させることが可能である。直接的な変調及び間接的な変調の組み合わせを利用することにより、上記の本発明は、上記の状態の下で、EO変調部の出力において光波形の生成を可能にし、そのピークパワーは、約40dBのパルスコントラスト比とともに、例えば0.01mWないし100mWの間で変動する。
【0104】
更に、直接的な変調は、パルスモードで動作するダイオードレーザーが、連続動作モードよりも高いピークパワーをもたらすことを可能にする。従って、ダイオードレーザーは、直接変調が間接変調と組み合わせて使用される場合に、相対的に高いエネルギーでシードパルスを生成し得る。
【0105】
なお、直接変調の間の電流変動は、光周波数における対応する変化を更に生成し、パルスコントラスト比に影響することなく、光ファイバにおける誘導ブリルアン散乱の影響を軽減する。
【0106】
広範囲に及ぶ発明の目的から逸脱することなく、上記の本発明についての説明された及び他の実施形態に、様々な変形がなされてよいことが、当業者に認められるであろう。従って、本発明は、特定の実施形態又は開示された構成に限定されず、特許請求の範囲及びその均等物により規定される本発明の目的及び精神の範囲内に属する任意の変形、応用又は修正を包含するように意図されていることが、理解されるであろう。