(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6423028
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02F 1/24 20060101AFI20181105BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20181105BHJP
F01L 1/34 20060101ALI20181105BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20181105BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
F02F1/24 G
F02F7/00 N
F01L1/34 Z
F02B77/00 N
F01M1/06 Z
F01M1/06 N
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-43644(P2017-43644)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-145934(P2018-145934A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 嘉
(72)【発明者】
【氏名】赤井 佑史
(72)【発明者】
【氏名】横田 亮
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−104406(JP,A)
【文献】
特開平10−317924(JP,A)
【文献】
特開2007−198241(JP,A)
【文献】
特開2008−255801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/24
F02F 7/00
F02B 77/00
F01L 1/34
F01M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変動弁機構の切替弁を取付可能な取付面を有する内燃機関本体と、
前記取付面に取り付けられるカバープレートとを有する内燃機関であって、
前記カバープレートは、前記取付面に裏面において締結された板部と、前記板部の表面から突出する突部とを有し、
前記板部は、前記取付面との間に、前記内燃機関本体に形成されたポンプ側の油路、及び、動弁機構側の油路を接続する油路を形成し、
前記取付面に対向する位置にはエンジン補機が配置され、
前記突部は前記エンジン補機と隙間をおいて対向していることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記ポンプ側の油路はポンプに接続された一端と前記取付面に開口した他端とを備える上流油路を含み、
前記動弁機構側の油路は前記取付面に開口した一端、及び、前記動弁機構に接続可能な他端とをそれぞれ備えた第1下流油路及び第2下流油路とを含み、
前記内燃機関本体には、更に、前記取付面に開口した一端と動弁室に開口した他端とを備えるドレイン油路が形成され、
前記板部と前記取付面との間には2つの空間を画定するシール材が配置され、
一方の空間には前記上流油路と前記第1下流油路と前記第2下流油路とが開口し、
他方の空間には前記ドレイン油路が開口していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記取付面において前記ドレイン油路、前記第1下流油路、前記上流油路、及び前記第2下流油路が記載の順に上下に並んで開口し、
前記シール材が8の字状をなし、前記2つの空間を画定することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
ロッカーシャフトと、前記内燃機関本体に形成され、前記ロッカーシャフトを支持する支持孔とを更に備え、
前記第1下流油路及び前記第2下流油路は前記支持孔に延びて、前記ロッカーシャフトの外周面に対向する面において開口することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記板部が前記取付面に沿って延在し、
前記板部の表面には、延在方向の一端側において、前記板部から突出する前記突部が形成され、
前記板部の裏面には、前記延在方向の前記一端側において、前記取付面に当接する支持面が形成され、
前記板部の側縁には、裏面において前記取付面に当接する複数のボルトボスが形成されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つの項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記板部の表面には前記突部に接続し、前記板部の中心にまで延在するリブが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記取付面は前記内燃機関本体の後面に形成され、
前記内燃機関本体の後方には吸気マニホールドと、前記吸気マニホールドに接続されたスロットルバルブとが設けられ、
前記突部の突端面は前記スロットルバルブと隙間をおいて対向することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記板部は上下に延び、
前記板部には、前記シール材の左側外方、右側外方、及び下側外方においてそれぞれ、ボルトボスが形成され、
前記支持面は前記シール材の上側に配置されていることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1つの項に記載の内燃機関。
【請求項9】
前記カバープレートには配管取付部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つの項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、吸気バルブのリフト量やタイミングを変更する可変バルブ機構を備えたものがある。可変バルブ機構は、油圧によって駆動される油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに供給する油圧を制御する油圧制御装置とを有する。油圧制御装置は、油圧アクチュエータに比較的近いシリンダヘッドに組み込まれることが多い。可変バルブ機構は車種やグレード等に応じて搭載が選択される構成であるため、シリンダヘッドへの装着及び省略が容易に選択できる構成であることが好ましい。このような観点から、可変バルブ機構を省略した内燃機関において、油圧制御装置を装着すべき空間にダミープラグを装着し、ダミープラグによって油路の接続及びシールを行うものがある(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−104406号公報
【特許文献2】特開平10−317924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダヘッドの周辺には、インジェクタや燃料分配管等の燃料供給装置が設けられている。車両衝突時に燃料供給装置に荷重が加わることを抑制するため、燃料供給装置の周辺の補機や装置等を所定の位置に確実に支持することが好ましい。上述のダミープラグは、シリンダヘッドの外面に単に設けられているだけであり、補機等を所定の位置に支持するために何ら貢献していない。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、内燃機関において油路を形成するカバープレートによって補機の移動を規制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、可変動弁機構(200)の切替弁(202)を取付可能な取付面(31)を有する内燃機関本体(9)と、前記取付面に取り付けられるカバープレート(73)とを有する内燃機関(1)であって、前記カバープレートは、前記取付面に裏面において締結された板部(75)と、前記板部の表面から突出する突部(77)とを有し、前記板部は、前記取付面との間に、前記内燃機関本体に形成されたポンプ側の油路(43)、及び、動弁機構側の油路を接続する油路(47、51)を形成し、前記取付面に対向する位置にはエンジン補機(110)が配置され、前記突部は前記エンジン補機と隙間をおいて対向している内燃機関が提供される。
【0007】
この態様によれば、カバープレートはポンプ側の油路(上流油路)と動弁機構側の油路(下流油路)とを接続する油路を形成すると共に、車両衝突時に、突部が補機の内燃機関本体に向かう移動を規制するため、補機等を適切な位置に保持し易くなる。
【0008】
また、上記の態様において、前記ポンプ側の油路はポンプに接続された一端と前記取付面に開口した他端とを備える上流油路(43)を含み、前記動弁機構側の油路は前記取付面に開口した一端、及び、前記動弁機構に接続可能な他端とをそれぞれ備えた第1下流油路(47)及び第2下流油路(51)とを含み、前記内燃機関本体には、更に、前記取付面に開口した一端と動弁室に開口した他端とを備えるドレイン油路(55)が形成され、前記板部と前記取付面との間には2つの空間(101、103)を画定するシール材(71)が配置され、一方の空間には前記上流油路と前記第1下流油路と前記第2下流油路とが開口し、他方の空間には前記ドレイン油路が開口しているとよい。
【0009】
この態様によれば、ドレイン油路の一端が閉じられるために、異物の侵入が防止される。また、上流油路とドレイン油路とが接続されていないため、潤滑油がドレイン油路に漏れ出ることが無い。
【0010】
また、上記の態様において、前記取付面において前記ドレイン油路、前記第1下流油路、前記上流油路、及び前記第2下流油路が記載の順に上下に並んで開口し、前記シール材が8の字状をなし、前記2つの空間を画定するとよい。
【0011】
この態様によれば、上流油路からの潤滑油がドレイン油路に流れ出ず、且つ、上流油路、第1下流油路、及び第2下流油路を容易に接続することができる。
【0012】
また、上記の態様において、ロッカーシャフト(23)と、前記内燃機関本体に形成され、前記ロッカーシャフトを支持する支持孔(25)とを更に備え、前記第1下流油路及び前記第2下流油路は前記支持孔に延びて、前記ロッカーシャフトの外周面に対向する面において開口するとよい。
【0013】
この態様によれば、ロッカーシャフトと支持孔との間には微小な隙間が形成されている。そのため、第1下流油路、及び、第2下流油路に溜まった空気を、支持孔からロッカーシャフトと支持孔との隙間を通って、第1下流油路、及び、第2下流油路の外に排出することができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記板部が前記取付面に沿って延在し、前記板部の表面には、延在方向の一端側において、前記板部から突出する前記突部が形成され、前記板部の裏面には、前記延在方向の前記一端側において、前記取付面に当接する支持面(91)が形成され、前記板部の側縁には、裏面において前記取付面に当接する複数のボルトボス(81)が形成されているとよい。
【0015】
この態様によれば、突部が支持面によって内燃機関本体に裏面から支持されているため、補機から突部の先端に加わる荷重に対向するのに十分な強度をカバープレートに持たせることができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記板部の表面には前記突部に接続し、前記板部の中心にまで延在するリブ(89)が形成されているとよい。
【0017】
この態様によれば、突部の剛性が高まる。
【0018】
また、上記の態様において、前記取付面は前記内燃機関本体の後面に形成され、前記内燃機関本体の後方には吸気マニホールド(112)と、前記吸気マニホールドに接続されたスロットルバルブ(110)とが設けられ、前記突部の突端面は前記スロットルバルブと隙間をおいて対向するとよい。
【0019】
この態様によれば、突部の突端面がスロットルバルブに対向するため、スロットルバルブの内燃機関本体に向かう移動を抑制することができる。同時に、スロットルバルブに接続された吸気マニホールドの内燃機関本体への移動が規制されるため、吸気マニホールドとインジェクタや燃料配管との衝突を防止することができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記板部は上下に延び、前記板部には、前記シール材の左側外方、右側外方、及び下側外方においてそれぞれ、ボルトボスが形成され、前記支持面は前記シール材の上側に配置されているとよい。
【0021】
この態様によれば、支持面、及び、ボルトボスによってシール材が上下左右方向から囲まれるため、潤滑油の漏れを抑えることができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記カバープレートには配管取付部(87)が形成されているとよい。
【0023】
この態様によれば、カバープレートの近傍をより効果的に活用することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の構成によれば、内燃機関において油路を形成するカバープレートによって補機の移動を規制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】カバープレートが取り付けられた内燃機関における油路の説明図
【
図5】本実施形態の内燃機関が車両に搭載されたときの上面の模式図
【
図6】本実施形態の内燃機関が車両に搭載されたときの側面の模式図
【
図7】可変バルブ機構を有する内燃機関における油路の一態様を示す説明図
【
図8】可変バルブ機構を有する内燃機関における油路の一態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明による内燃機関の実施形態を、
図1〜
図8を参照して説明する。
【0027】
本実施形態に係るエンジン1(内燃機関)は自動車等の車両に搭載されるレシプロエンジンであって、以下では、エンジン1が車両に搭載されたときを基準として前後左右を定める。
図1に示されるように、エンジン1は、シリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に結合したシリンダヘッド5と、シリンダブロック3の下面に結合したクランクケース7とを含むエンジン本体9(内燃機関本体)を備える。また、シリンダヘッド5の上面にはヘッドカバー11が結合し、クランクケース7の下面にはオイルパン13が結合している。シリンダブロック3には、オイルパン13に流入する潤滑油をエンジン1の各所に供給するためのオイルポンプ15が設けられている。
【0028】
シリンダヘッド5には、
図5に示されるように、左右に並ぶ複数のシリンダ17と、シリンダに繋がる吸気ポート19と、その吸気ポートからシリンダに流れ込む吸気を制御する吸気バルブとが設けられている。
図2に示されるように、シリンダヘッド5の上面とヘッドカバー11の下面との間には、カム室21(動弁室)が形成され、その中に吸気バルブ及び排気バルブを開閉駆動する動弁機構が設けられている。
【0029】
シリンダヘッド5の上部には、筒状をなして左右に延び、ロッカーアームを回動可能に支持するロッカーシャフト23と、そのロッカーシャフト支持孔25が設けられている。ロッカーシャフト支持孔25は断面が円形をなす孔であって、その内周の壁面がロッカーシャフト23の外周面に対向して当接することで、ロッカーシャフト23はロッカーシャフト支持孔25に支持される。ロッカーシャフト23は、例えばロッカーシャフト23とロッカーシャフト支持孔25とを接続するアイボルト等によって、ロッカーシャフト支持孔25に固定されている。ロッカーシャフト23にはその内部に延在方向に延びる油路が形成されている。また、シリンダヘッド5の上面には、下方に半円状に凹むカムシャフト用軸受27が形成されている。カムシャフト用軸受27にはカムシャフト29が回動可能に支持され、カムシャフト29の上側にはキャップ部材30が設けられている。ロッカーシャフト23及びカムシャフト29はカム室21を左右に通過するように配置されている。
【0030】
シリンダヘッド5の上部左側の後面には後方を向き、上下に延びる取付面31が設けられている。シリンダヘッド5には、オイルポンプ15に接続され、取付面31に達する上流油路43が形成されている。上流油路43の一端側は取付面31において開口し、上流開口41を形成している。シリンダヘッド5には、更に、取付面31からロッカーシャフト支持孔25に達する第1下流油路47が形成されている。第1下流油路47の一端側は、取付面31において開口し、第1下流開口45を形成している。第1下流油路47の他端側は、ロッカーシャフト支持孔25のロッカーシャフト23に対向する壁面において開口し、第1取付座開口46を形成されている。シリンダヘッド5には、更に、取付面31からロッカーシャフト支持孔に達する第2下流油路51が形成されている。第2下流油路51の一端側は取付面31において開口し、第2下流開口49を形成している。第2下流油路51の他端側は、ロッカーシャフト支持孔25のロッカーシャフト23に対向する壁面において開口し、第2取付座開口50を形成している。第1下流開口45、上流開口41、及び、第2下流開口49は、取付面31において、上側から記載の順に上下に並んで形成されている。第1下流油路47と第2下流油路51とは、エンジン本体9において、取付面31とロッカーシャフト支持孔25とをそれぞれ独立に接続している。
【0031】
エンジン本体9には、取付面31とカム室21とを接続するドレイン油路55が形成されている。ドレイン油路55は、一端側において取付面31の第1下流開口45の上側において開口し、ドレイン開口53を形成している。他端側において、シリンダブロック3の上面において開口し、カム室21に接続している。また、上流油路43の所定の位置Pにおいて、上流油路43から分岐し、カムシャフト用軸受27において開口する第1潤滑油路61が形成されている。また、その第1潤滑油路61から、所定の位置Qにおいて分岐し、ロッカーシャフト支持孔25のロッカーシャフト23の外周に対向する面を通って、ロッカーシャフト23に形成された油路に繋がる第2潤滑油路62が形成されている。
【0032】
本実施形態では、ロッカーシャフト支持孔25とロッカーシャフト23との間に微小な隙間が形成され、第1下流油路47及び第2下流油路51はそれぞれ、第1取付座開口46及び第2取付座開口50を介して、カム室21に接続している。
【0033】
取付面31の左右縁には、概ね同じ高さの位置に左右一対のボルト穴と、左右方向について左右のボルト穴の概ね中間であり、その下方に配置されたボルト穴とが形成されている。取付面31には、取付面31に沿って延在するカバープレート73が、そのボルト穴に螺結するボルトを用いて、取り付けられている。
図3に示されるように、カバープレート73は上下に延び、前後に向く主面を有する板状の板部75と、板部75から後方に向けて突出する突部77とを有する。本実施形態では、突部77は板部75の表面上端から上方に延びた後、略90度屈曲し、後方に突出している。突部77の後端には概ね後方に向く突端面79が形成されている。また、本実施形態では、突端面79は上面視でやや左後方に向くように形成されている。
【0034】
板部75の左縁、右縁、下縁には、それぞれボルトボス81が形成されている。ボルトボス81はそれぞれ板部75の板状をなす部分から前後に突出し、その後端に後方に向く締結面83が形成されている。板部75の表面(後面)下部には後方に突出するボス85が設けられ、そのボス85の突端には配管取付部87が形成されている。本実施形態では、配管取付部87として、ボス85の突端に形成されたボルト穴88が形成されている。更に、板部75の表面には、上端において突部77に接続し、左右両縁に形成されたボルトボス81の間を通過し、板部75の中心にまで延在するリブ89が形成されている。
【0035】
図4に示されるように、板部75の裏面(前面)上端には、前方に向き、左右に延びる支持面91が形成されている。
図5に示されるように、支持面91は側面視で突部77の基端の前側に設けられている。板部75の裏面には、支持面91の下側において、上下に延びる略8の字状をなすシール材用溝93が形成されている。シール材用溝93によって、板部75の裏面には上側及び下側にそれぞれ1つずつの領域が画定されている。更に、本実施形態では、シール材用溝93は、上方において支持面91に、左右外方、及び下方において締結面83に囲まれている。
【0036】
シール材71は、シール材用溝93に対応する略8の字状をなし、断面が略円形に形成されている。シール材71がシール材用溝93に装着された後、
図1に示されるように、螺子をボルトボス81に通し、取付面31に設けられたボルト穴に締結することで、カバープレート73は取付面31に取付けられる。このとき、
図2に示されるように、板部75は取付面31に締結され、3つの締結面83、及び支持面91が取付面31に当接し、板部75と取付面31とに押圧されることによって、シール材71の断面が変形する。板部75と取付面31との間には、変形したシール材71によって画定され、それぞれ封じられた空間である上側空間101と下側空間103とが形成される。上側空間101を形成する取付面31の壁面にはドレイン開口53が形成され、ドレイン油路55が上側空間101に開口している。下側空間103を形成する取付面31の壁面には第1下流開口45、上流開口41、及び、第2下流開口49が形成され、第1下流油路47と上流油路43と第2下流油路51とが下側空間103に開口している。
【0037】
図5及び
図6に示されるように、各シリンダ17に2本ずつ吸気ポート19が接続され、吸気ポート19は後方に延びてシリンダヘッド5の後面に開口している。その吸気ポート19には、吸気ポートに吸気を供給する吸気マニホールド112と、エンジンの吸気量を調節し、エンジンの出力を調節するスロットルバルブ110とが記載の順に接続されている。吸気マニホールド112はシリンダヘッド5の後面に結合し、各吸気ポートに接続する多岐管部112Aと、多岐管部112Aが集合する集合部112Bとを備える。多岐管部112Aは、シリンダヘッド5から後方に延びて左方且つ上方に屈曲して集合部112Bに連結している。集合部112Bはシリンダヘッド5の左側後方に配置され、スロットルバルブ110は集合部112Bの左側に結合している。スロットルバルブ110はシリンダヘッド5の左端後方であり、且つ、取付面31に前後に対向する位置に配置されている。
【0038】
更に、エンジン1の背面には、図示しない燃料ポンプに接続された燃料配管118と、燃料配管118に接続され、燃料を各シリンダ17に分配するためのデリバリパイプ116と、デリバリパイプ116から吸気ポート19のそれぞれに燃料を噴射するためのインジェクタ114が設けられている。燃料配管118は、シリンダヘッド5の左側下方から右側に向かって延び、取付面31の前方であり、スロットルバルブ110の下側を通過して、多岐管部112Aの左端上側に到達している。燃料配管118は、デリバリパイプ116と燃料ポンプとの間において、ボルト穴88に螺子止めされた所定の部材を介して、配管取付部87に結合されている。多岐管部112Aの上側には、左右に延びるデリバリパイプ116が設けられ、燃料配管118はデリバリパイプ116の左端に結合している。デリバリパイプ116には、その下側から延びて各吸気ポート19に上側後方から挿入された複数のインジェクタが結合している。
【0039】
次に、本実施形態のエンジン1の効果について説明する。
図7及び
図8に示されるように、本実施形態に示されるシリンダヘッド5は、可変バルブ機構200(可変動弁機構)を有するエンジン201にも共用することができる。そのエンジン201のカムシャフト29には、異なるプロファイルを持つ低速用、及び高速用のカムの2種類のカムと、それぞれのカムに追随する低速用ロッカーアーム及び高速用ロッカーアームが設けられている。低速用ロッカーアームは吸気バルブを押し下げるように構成されている。また、ロッカーアームには低速用ロッカーアームと高速用ロッカーアームとの間には連結・解除をするためのピンと、そのピンを収容する油路とが形成されている。ロッカーシャフト23にはその油路に接続される2つの油室A、Bが形成され、それぞれの油室の油圧を制御することによってピンが収容された油路の油圧を変化させ、ピンによるロッカーアーム間の連結・解除が制御される。低速用ロッカーアーム及び高速用ロッカーアームが連結されると、吸気バルブは高速用のカムのプロファイルに基づいて動作し、解除されると、吸気バルブは低速用のカムのプロファイルに基づいて動作する。
【0040】
ロッカーシャフト23に設けられた2つの油室A、Bの油圧は、切替弁202に設けられた弁204の開閉によって制御される。
図7には弁204が閉じられたとき、
図8には弁204が開かれたときの油路がそれぞれ示されている。
図7では、オイルポンプ15が上流油路43を介して第2下流油路51に接続されるため、油室Aの油圧が高くなる。
図8では、オイルポンプ15が上流油路43を介して第1下流油路47に接続されるため、油室Bの油圧が高くなる。したがって、弁204の開閉によって、可変バルブ機構200を構成することが可能となる。
【0041】
本実施形態のエンジン1では、取付面31にカバープレート73が取り付けられると、
図2に示されるように、カバープレート73と取付面31との間に、上流油路43、第1下流油路47、及び第2下流油路51に接続する油路が形成される。ロッカーシャフト23とロッカーシャフト支持孔25との間に隙間が形成されているときには、第1下流油路47及び第2下流油路51に溜まった空気が、上流油路43からの油圧によって、第1取付座開口46、及び第2取付座開口50から押し出され、カム室21に排出される。このときの潤滑油の流れは、ロッカーシャフト支持孔25とロッカーシャフト23との隙間の大きさ等によって制限される。上流油路43は直接、ドレイン油路55に接続されていないため、潤滑油の流速を低く抑えることができる。そのため、オイルポンプ15に負荷がかかりにくく、潤滑油を効率よく循環させることができる。
【0042】
突部77はエンジン本体9から後方に突出するように形成されているため、エンジン本体9が後方に移動したときに、突部77はエンジン本体9の後方への移動を規制し、エンジン本体9の後面に設けられたインジェクタ114やデリバリパイプ116を保護する役割を果たす。例えば、車両衝突時等によってエンジン本体9が後方に移動するときには、突部77がスロットルバルブ110と衝突し、スロットルバルブ110のエンジン本体9への接近を防止する。そのため、スロットルバルブ110に接続された吸気マニホールド112もまた、エンジン本体9に衝突しにくくなり、デリバリパイプ116やインジェクタ114に荷重が加わり難くなる。
【0043】
突部77の後端である突端面79はやや左後方に向くように形成されているため、スロットルバルブ110が突部77に衝突すると、スロットルバルブ110はデリバリパイプ116及びインジェクタ114から離れる左方向に案内される。したがって、車両衝突時にデリバリパイプ116及びインジェクタ114をより効果的に保護することが可能となる。
【0044】
突部77の基端と支持面91とが側面視で前後に揃うように形成されているため、突部77の剛性が高められ、大きな荷重が加わった場合でも、吸気マニホールド112のデリバリパイプ116やインジェクタ114への接近を防止することができる。スロットルバルブ110がカバープレート73に衝突するとき、突部77の突端には前方に向く荷重が加わる。突部77が裏面から支持されるため、前方からの荷重に対するカバープレート73の強度が高められている。よって、カバープレート73の突端に大きな荷重が加わった場合でも、スロットルバルブ110のエンジン本体9の側へより移動を規制することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、カバープレート73がスロットルバルブ110に対向する位置に配置されている。スロットルバルブ110はエンジン本体9に直接結合していないため、直接結合している吸気マニホールド112等よりも、車両衝突時にはエンジン本体9に対して変位しやすい。また、スロットルバルブ110は電気的なバルブの開閉を行うため、大型で荷重が大きくなることがある。そのため、スロットルバルブ110の移動を規制することによって、吸気マニホールド112の変形を防止することができ、燃料配管118、デリバリパイプ116、インジェクタ114等の燃料を内部に有する装置や配管を効果的に保護することができる。
【0046】
図4に示されるように、シール材71が支持面91、及び、ボルトボス81によって上下左右方向から囲まれているため、シール材71の断面が均一に変形し易くなり、潤滑油の漏れを効果的に抑えることができる。
【0047】
また、カバープレート73には配管取付部87が形成されているため、別途、エンジン本体9に配管取付部87を用意する必要がなく、カバープレート73をより効果的に活用することができる。
【0048】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、突端面79はやや左後方を向くように構成されていたが左後方には限定されず、車両衝突時にスロットルバルブ110等のエンジン補機を燃料配管118、デリバリパイプ116、インジェクタ114等の燃料を内部に有する装置や配管から遠ざける向きであればいかなる方向であってもよい。例えば、多岐管がエンジン本体9から後方且つ右方へ延びるように形成され、その先にスロットルバルブ110が設けられる場合には、カバープレート73はエンジン本体9の後面の右端に設けられ、突端面79は右後方を向くように形成されるとよい。
【0049】
また、本実施形態のエンジン1では、上流油路43と第1下流油路47と第2下流油路51とを接続する油路が形成されていたが、上流油路43及び第1下流油路47、又は、上流油路及び第2下流油路51を接続する油路を形成するように構成してもよい。また、上流油路43、第1下流油路47、第2下流油路51、及びドレイン油路55を接続し、ドレイン油路55からカム室21へ流れ込む油路のコンダクタンスを低下させる(例えば、ドレイン油路55のカム室21への開口に細いパイプを接続する等)ように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 :エンジン(内燃機関)
9 :エンジン本体(内燃機関本体)
23 :ロッカーシャフト
25 :ロッカーシャフト支持孔
31 :取付面
43 :上流油路
47 :第1下流油路
51 :第2下流油路
55 :ドレイン油路
71 :シール材
73 :カバープレート
75 :板部
77 :突部
81 :ボルトボス
87 :配管取付部
89 :リブ
91 :支持面
101 :上側空間
103 :下側空間
110 :スロットルバルブ
112 :吸気マニホールド
200 :可変バルブ機構(可変動弁機構)
202 :切替弁