(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コーン分割体を構成する鋳物金属が、質量基準で、C:2.0〜4.0%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.06〜1.5%、V:6.0〜16.0%、Mg:0.01〜0.1%、及びNi:1.0%以下を含み、残部がFeと不可避的不純物である合金組成からなると共に、Mgの溶湯添加処理によって、球状化されたV炭化物がパーライト母相中に晶出せしめられてなる合金白鋳鉄にて構成されている請求項1に記載のローラカッター。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道や道路等のためのトンネルを掘削する機械として、シールドマシン等の各種のトンネル掘削機が用いられてきている。そして、そのようなトンネル堀削機の一つとして、前端部において、カッターヘッドの回転駆動に伴なって回転すると共に、その外周部に設けられた切刃部により岩盤等を切るように圧砕するローラカッターを備えたものが、知られている。
【0003】
また、そのようなローラカッターとしては、特開平11−200754号公報(特許文献1)には、チップ側面部に保護部材を密着させて固定してなる穿削用刃(ビット)が、明らかにされている。そこでは、円筒状のビットの外周面に、超硬合金からなる多数のチップが、その一部をビットの本体に入り込ませた状態で一体的に取り付けられてなる構成が、採用されているのである。また、かかる特許文献1においては、チップの側面部に保護部材を被せた後に、鋳型内に溶湯を鋳込んで、ビット本体を成形することにより、チップの表面が、脆くなったり、変質してしまうようなことが起こらず、それどころか、ビット本体が冷却されて収縮することにより、強固にチップを保持することが出来ることが、記載されている。
【0004】
ところで、このような構造を有するビット(ローラカッター)にあっては、トンネルの掘削を行なう際に、チップを含むビット本体の全体が、岩盤等に切り込ませられることとなる。そのため、ビット本体が、岩盤との接触により削り取られて磨耗してしまい、ビット本体に埋め込まれたチップが脱落して、掘削効率が低下すると共に、ビットの耐久性が低くなって、その寿命が短くなってしまうという問題を内在している。
【0005】
そこで、そのような問題の解消を図るべく、従来から、ビット本体の表面部位に対して、硬度の高い材質からなる硬化肉盛りを施すことが行なわれている。しかしながら、このような硬化肉盛りを設けただけでは、ビットの耐久性を充分に向上させることは困難であり、更に硬化肉盛りを形成するために、工数が掛かり、ビットの製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0006】
また、ビット本体の全体を耐磨耗性の高い材質にて構成することも、考えられる。ところが、一般に、そのように耐磨耗性の高い材料は脆性も高いものであるため、熱膨張率の違いによって、チップとの境界部分を起点として割れ(クラック)等が発生したり、チップとの接合強度が確保出来ないといった問題を生じる恐れがある。更に、ビット本体が比較的大きく肉厚な部材であるところから、冷却時の収縮により内部に応力が集中して、割れ等が発生し易くなり、結果として、ビットの耐久性が低下してしまう等といった、新たな問題を生じるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、超硬チップの脱落を防止すると共に、割れ等の発生を効果的に抑制乃至は阻止することが出来るように改良された構造を有する、耐久性に優れたローラカッターを提供することにあり、また、そのようなローラカッターを有利に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、上述せるようなローラカッターに係る課題を解決するために、超硬合金からなる超硬チップが
、山形断面形状において周方向に延びる先端部
の両側面を外周面に露呈するようにして
、周方向に所定の間隔を隔てて埋設された環状のカッターコーンが
、外周部に回転可能に配設されて、トンネル掘削機の前端部に取り付けられるローラカッターであって、該カッターコーンが、周方向の複数箇所で分割されてなる形態を呈するコーン分割体の複数によって、全体として環状をなすように構成されていると共に、該コーン分割体のそれぞれが、前記超硬チップを緩衝筒体内に収容してなる形態において
金属にて鋳包んでな
る鋳物にて構成され、且つ該緩衝筒体が、前記コーン分割体を構成する鋳物金属よりも硬度が低い金属材質とされて、それら鋳物金属と超硬チップと緩衝筒体とが一体化されて
おり、更に該超硬チップが、該鋳物金属との間に空隙が存在しないようにして、該緩衝筒体を介して、前記鋳物内に埋設されて、前記先端部の山形断面形状の両側面のみが前記コーン分割体の外周面に露呈されるようにすると共に、それら鋳物金属と超硬チップと緩衝筒体のそれぞれのコーン分割体外周部側の端部にて、連続した円形の輪郭を呈するように構成したことを特徴とするローラカッターを、その要旨とするものである。
【0010】
なお、このような本発明に従うローラカッターの望ましい態様の一つによれば、前記コーン分割体を構成する鋳物金属が、質量基準で、C:2.0〜4.0%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.06〜1.5%、V:6.0〜16.0%、Mg:0.01〜0.1%、及びNi:1.0%以下を含み、残部がFeと不可避的不純物である合金組成からなると共に、Mgの溶湯添加処理によって、球状化されたV炭化物がパーライト母相中に晶出せしめられてなる合金白鋳鉄にて構成されている。
【0011】
さらに、本発明にあっては、前記緩衝筒体が、鋼材質にて構成されていることが、望ましい。
【0012】
そして、本発明にあっては、前記したローラカッターの製造方法に係る課題を解決するために、超硬合金からなる超硬チップが
、山形断面形状において周方向に延びる先端部
の両側面を外周面に露呈するようにして
、周方向に所定の間隔を隔てて埋設された環状のカッターコーンが
、外周部に回転可能に配設されて、トンネル掘削機の前端部に取り付けられるローラカッターの製造方法であって、(a)前記カッターコーンが、周方向の複数箇所で分割されてなる形態を呈するコーン分割体の複数によって、全体として環状をなすように構成されるようにして、それぞれのコーン分割体を与える鋳造キャビティを有する鋳型を準備する工程と、(b)該コーン分割体を鋳造するための金属溶湯と、前記超硬合金からなる超硬チップと、該超硬チップの外周面形状と同等乃至はそれより大きな内周面形状を有する筒状形状を呈し、且つ該コーン分割体を与える材質よりも硬度が低い金属材質からなる緩衝筒体とを、それぞれ準備する工程と、(c)かかる準備された超硬チップ及び緩衝筒体を、該超硬チップが該緩衝筒体内に収容され
ると共に、該超硬チップの収容下において該緩衝筒体内に残存する空洞部分に砂を充填せしめてなる形態において、前記鋳型の鋳造キャビティ内の所定位置に配置する工程と、(d)該鋳造キャビティ内に、前記金属溶湯を注湯することにより、前記超硬チップを前記緩衝筒体内に収容してなる形態において鋳包んでなる鋳物
中間体を鋳造
する工程と、(e)かかる鋳物中間体を鋳型から取り出して、前記緩衝筒体内に充填されている砂を除去すると共に、該鋳物中間体の外周面から突出する緩衝筒体部分を除去せしめることにより、それら超硬チップと緩衝筒体とが鋳物金属と一体化されてなる
鋳物から構成される前記コーン分割体の複数をそれぞれ形成する工程と、(
f)かくして得られたコーン分割体の複数を環状に組み合わせて、前記カッターコーンを構成する工程と、を含むことを特徴とするローラカッターの製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に従うローラカッターにあっては、ローラカッターの外周部に配設されるカッターコーンが、周方向の複数箇所で分割されてなる形態を呈するコーン分割体の複数によって、全体として環状をなすように構成されているところから、かかるコーン分割体のそれぞれが、超硬チップを鋳包んでなる金属鋳物にて構成されているにも関わらず、鋳造時に生じる内部応力の周方向への伝播が有利に抑制されて、コーン分割体を構成する鋳物金属内部における応力集中が緩和されることとなる。これにより、コーン分割体に割れ等が生じることが有利に阻止されると共に、コーン分割体の内部に残留する応力が緩和されることによって、コーン分割体が破損し難くなり、以てカッターコーン、ひいてはローラカッターの耐久性を有利に向上せしめることが可能となるのである。
【0014】
また、そのようなコーン分割体のそれぞれが、超硬チップを緩衝筒体内に収容してなる形態において鋳包んでなる金属鋳物にて構成され、且つかかる緩衝筒体が、コーン分割体を構成する鋳物金属よりも硬度が低い金属材質とされて、それら鋳物金属と超硬チップと緩衝筒体とが一体化されているところから、超硬チップとコーン分割体を構成する鋳物金属との熱膨張率の違いにより発生する応力が、緩衝筒体によって緩衝されることとなる。これにより、コーン分割体において、超硬チップとコーン分割体を構成する鋳物金属との境界部分を起点として割れ等が生じることが有利に阻止されると共に、かかる境界部分に残留する応力が緩和されることによって超硬チップの脱落が生じ難くなり、以て、掘削効率の低下が有利に抑制乃至は阻止されると共に、カッターコーン、ひいてはローラカッターの耐久性を有利に向上せしめることが可能となるのである。
【0015】
さらに、本発明に従うローラカッターにおいては、上述のようにして、超硬チップの脱落を防止すると共に、割れ等の発生を抑制乃至は阻止することが出来るようになっているところから、コーン分割体を構成する鋳物金属として、脆性が比較的高いが、耐磨耗性の良好な材料を用いることが可能となるのであり、これによって、ローラカッターの耐久性をより有利に向上せしめることが可能になるという利点もある。
【0016】
そして、本発明に従うローラカッターの製造方法によれば、それぞれのコーン分割体を与える鋳造キャビティを有する鋳型が準備されるところから、それらコーン分割体を鋳造する鋳型の大きさが、比較的小さいもので済むこととなる。そのため、鋳型に係るコストを低減することが出来、以て、ローラカッターの製造コストを有利に低減することが可能となる。
【0017】
また、鋳造キャビティ内に、コーン分割体を鋳造するための金属溶湯を注湯することにより、超硬チップを緩衝筒体内に収容してなる形態において鋳包んで、それら超硬チップと緩衝筒体とが鋳物金属と一体化されてなるコーン分割体の複数をそれぞれ形成するようになっているところから、超硬チップを埋設するための工程が不要となり、ローラカッターの製造コストを有利に低減することが出来る利点がある。更に、超硬チップがより強固に保持されることとなるところから、超硬チップの脱落を抑制乃至は阻止して、ローラカッターの耐久性を有利に向上させることが出来ることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0020】
先ず、
図1及び
図2には、本発明に従う構造を有するローラカッターの一例が、それぞれ、側面図及び部分断面図の形態において示されている。そこにおいて、ローラカッター10は、トンネル掘削機の前端部に対して固定的に取り付けられる支持軸部材12と、かかる支持軸部材12に対して、図示しないベアリング等を介して、
図1に細線矢印で示されるように、中心軸:P回りに回転自在に外嵌装着されている回転部14とを、備えている。なお、回転部14は、全体として略円筒形状を呈し、その中心軸:Pは、支持軸部材12の中心軸に対して同軸とされている(以下、本実施形態においては、この中心軸:Pに平行な方向を軸方向と言い、中心軸:Pに直角な方向を径方向と言う)。
【0021】
より詳細には、回転部14は、
図2に示されるように、略円筒形状の回転部本体16とと共に、環状のカッターコーン18、リングスペーサ20、及び固定リング22を備える構成とされ、それらが一体的に結合せしめられており、全体として、その周方向に直角な断面が、中央部が径方向外方に向かって突出するような山形形状とされている。
【0022】
ここで、回転部本体16の外周面24上において、軸方向中央部に配設されている環状のカッターコーン18は、外周面を形成する傾斜上面26、26と、傾斜側面28、28及び内周面30を有し、その周方向に直角な断面が、内周面30側(径方向内方)に向かって拡がると共に、外周面側中央部が径方向外方に突出する、略左右対称五角形形状となるように構成されている。そして、カッターコーン18には、超硬合金からなる公知の超硬チップ32の複数が、先端部をカッターコーン18の外周面に露呈するようにして、周方向に所定の間隔を隔てて埋設されている。
【0023】
また、回転部本体16の軸方向一方側(
図2における右側)には、径方向外方に突出するようにして、係合凸部34が設けられており、かかる係合凸部34のカッターコーン18と対向する側面が、傾斜側面28に対応する係合傾斜面36とされている。そして、回転部本体16の軸方向他方側の端部においては、その外周面形状が外周面24に対して若干小径とされた雄ネジ部38が形成されている。
【0024】
さらに、回転部本体16の外周面24上に、軸方向他方側(
図2における左側)から嵌め込まれているリングスペーサ20にあっては、カッターコーン18と対向する側面が、傾斜側面28に対応する傾斜面40とされている。更にまた、固定リング22は、その内周面に形成された雌ネジ部42により、回転部本体16の雄ネジ部38に螺合せしめられている。
【0025】
そして、回転部本体16の外周面24上に、カッターコーン18が配設されると共に、軸方向の他方側から嵌め込まれたリングスペーサ20を介して、固定リング22が締め付けられることにより、それら回転部本体16とカッターコーン18とリングスペーサ20と固定リング22とが一体的に結合されて、回転部14が構成されているのである。なお、カッターコーン18の傾斜上面26、26は、それぞれ、途中に屈曲部が形成されて、傾斜側面28側部位の軸方向に対する傾斜が若干緩やかになるようにされていると共に、回転部本体16に形成された係合凸部34の外周面及びリングスペーサ20の外周面と滑らかに連続するようにされている。
【0026】
すなわち、回転部14においては、カッターコーン18の軸方向の両側に形成された傾斜側面28、28が、回転部本体16に設けられた係合凸部34の係合傾斜面36と、リングスペーサ20の傾斜面40とに、それぞれ、面接触せしめられた状態で、固定リング22と回転部本体16との間に設けられたネジ機構による押圧力が作用せしめられることにより、カッターコーン18が、両側から強力に挟持されると共に、回転部本体16の外周面24に押し付けられるようになっている。これにより、カッターコーン18が、回転部本体16の外周面24上において、軸方向へ移動しないように位置規制されると共に、周方向へ摺動移動することも阻止されて、回転部本体16の外周面24上に強固に外嵌固定された状態が維持され、かかるカッターコーン18が、回転部本体16と一体的に回転するように構成されている。かくして、環状のカッターコーン18が、ローラカッター10の外周部において、回転可能に配設されることとなるのである。
【0027】
ところで、本実施形態におけるカッターコーン18は、
図1から明らかなように、一つのカッターコーンが周方向の複数箇所で分割されてなる形態を呈する複数(ここでは6個)のコーン分割体44a〜44fが組み合わされて、全体として環状をなすように構成されているのである。そして、ここでは、それらコーン分割体44a〜44fは、全て同様の構成とされている。このため、以下においては、
図2に断面形態が示されているコーン分割体44aについて説明し、他のコーン分割体44b〜44fに係る詳細な説明は省略することとする。また、コーン分割体44a〜44fにおいて、先述したカッターコーン18の構造と対応する部分には、同一の符号を付すと共に、末尾にa〜fの文字を付すことにより、各コーン分割体44a〜44fの対応する部分を指すものとして、詳細な説明を省略する。
【0028】
図1及び
図2にも示されているように、コーン分割体44aは、鋳物金属部分である本体部46と、この本体部46に埋設されている複数(ここでは4個)の超硬チップ32、32、32、32と、それら本体部46と各超硬チップ32との境界部分にそれぞれ配設されている緩衝筒体部48、48、48、48とを有し、そしてそれら本体部46と超硬チップ32、32、32、32と緩衝筒体部48、48、48、48とが鋳造により一体化されてなる金属鋳物にて、構成されている。
【0029】
ここで、コーン分割体44aの本体部46は、一般に、高い耐磨耗性を備える鋳鉄にて構成されている。特に、そのような鋳鉄としては、質量基準で、C:2.0〜4.0%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.06〜1.5%、V:6.0〜16.0%、Mg:0.01〜0.1%、及びNi:1.0%以下を含み、残部がFeと不可避的不純物である合金組成からなると共に、Mgの溶湯添加処理によって、球状化されたV炭化物がパーライト母相中に晶出せしめられてなる合金白鋳鉄が、有利に用いられることとなる。この鋳鉄は、上記の如く合金組成の範囲が規定されていることにより、カッターコーンに有効な耐磨耗性を備えると共に、V(バナジウム)とC(炭素)との化合物であるV炭化物が球状の形態で晶出せしめられていることにより、耐衝撃性(靭性)が有利に向上せしめられている特徴を有している。なお、このような材質は、特開2002−275573号公報に詳細に示されており、また株式会社岡本から、STARK(スターク)(商品名)として、市販もされている。本実施形態においては、このSTARK材質にて、本体部46が構成されている。
【0030】
また、超硬チップ32は、超硬合金からなる公知のものであって、
図3に示されるように、その山形形状を呈する先端部が、本体部46の二つの傾斜上面26a、26aにて形成される外周面に露呈されるようにして、本体部46に埋設されている。そして、ここでは、かかる超硬チップ32の側面部50の周囲(本体部46との境界部分)に、緩衝筒体部48が配設されており、超硬チップ32が、緩衝筒体部48を介して本体部46により締め付けられるようにして、保持(把持)されている。
【0031】
なお、そのような緩衝筒体部48は、コーン分割体44aの本体部46を構成する鋳物金属よりも硬度が低い金属材質にて構成されており、本実施形態では、主として、鋼材質の一つであるクロムモリブデン鋼(SCM)にて構成されている。ここで、「主として」の用語は、緩衝筒体部48にあっては、緩衝筒体部48の本体部46との境界部分の一部乃至は緩衝筒体部48の全部が、本体部46を構成する鋳物金属との合金となっているからであり、
図2及び
図3中に二点鎖線で示されるように、本体部46と緩衝筒体部48との境界は曖昧なものとなっている。なお、このような構成は、後に例示するように、コーン分割体44aが超硬チップ32を所定の緩衝筒体(52)内に収容してなる形態において鋳包んで形成されることにより、発現されることとなる。
【0032】
ここで、かかる緩衝筒体部48にあっては、その内周面側において、超硬チップ32が把持せしめられる一方、本体部46を構成する鋳物金属よりも硬度の低い金属材質にて構成されていることにより、その外周面側において、本体部46が超硬チップ32を締め付けるように把持することによって生じる、本体部46に作用せしめられる反力(応力)が緩和せしめられている。
【0033】
また、かくの如き構造を有するローラカッター10は、有利には、以下の如き方法に従って製造されることとなる。
【0034】
ここでは、先ず、目的とするローラカッター10の構成部材であるコーン分割体44aが形成される。そのために、コーン分割体44aの本体部46を鋳造するためのSTARK材質の金属溶湯(54)と、超硬合金からなる4つの超硬チップ32、32、32、32と、超硬チップ32の外周面形状と略同等の内周面形状を有し、且つ超硬チップ32より充分に大きな長さを有する、円筒形状のクロムモリブデン鋼(SCM)からなる4つの緩衝筒体52、52、52、52とが、それぞれ準備される。更に、別途、コーン分割体44aを与える鋳造キャビティ(56)を備える、鋳型58が準備される。かかる鋳型58は、下型60と、かかる下型60に対して重ね合わされるように、その上方に対向配置される上型62とを含んで、砂型にて構成されている。
【0035】
かかる準備された超硬チップ32、32、32、32及び緩衝筒体52、52、52、52は、それぞれ、超硬チップ32が緩衝筒体52内に収容されてなる形態において、
図4及び
図5に示されるように、下型60の所定位置に形成された4つの下側保持凹所64、64、64、64内に配置される。更に、下型60には、下側保持凹所64、64、64、64と連通するようにして、本体部46の外形形状の一部(ここでは、本体部46を軸方向中央にて半分に分割した形態)に対応する内面形状を有する下側キャビティ形成凹所66が形成されており、各超硬チップ32は、緩衝筒体52内に収容された状態で、下側キャビティ形成凹所66内の所定位置、即ち、形成される本体部46に対して埋設せしめられるべき位置にて、保持されている。なお、図中、68は、鋳造操作中の、緩衝筒体52内における超硬チップ32の変位を阻止するために、緩衝筒体52内の空洞部分に充填された砂である。
【0036】
また、このとき、上型62は、
図5に示されるように、下型60に対して、その上方に所定距離を隔てて対向配置されている。かかる上型62は、クレーン等の公知の移動装置により、上下方向に所定距離だけ移動可能とされていると共に、下型60の下側保持凹所64、64、64、64及び下側キャビティ形成凹所66に対応する内形形状を有する、上側保持凹所70、70、70、70及び上側キャビティ形成凹所72が、その下面において開口するように、形成されている。
【0037】
次いで、所定の移動装置により、上型62が下型60に接近移動せしめられ、
図6に示されるように、上型62と下型60とが所定の圧力で型閉じされる。これにより、上型62の上側キャビティ形成凹所72と、下型60の下側キャビティ形成凹所66とに囲まれた部分にて、目的とするコーン分割体44aの本体部46を形成するための鋳造キャビティ56が形成される。このとき、超硬チップ32が収容された緩衝筒体52は、上型62の上側保持凹所70と下型60の下側保持凹所64との間で挟まれて、保持されることとなる。
【0038】
そして、
図7に示されるように、鋳造キャビティ56内に所定の金属溶湯54が注湯されることにより、超硬チップ32が緩衝筒体52内に収容されてなる形態において鋳包まれてなる鋳物が、鋳造されることとなるのである。即ち、超硬チップ32及び緩衝筒体52と一体化されるようにして、本体部46が、所定の形状をもって形成されると共に、緩衝筒体52の鋳造キャビティ56内部分において、緩衝筒体部48が形成されて、超硬チップ32が、本体部46の所定位置に埋設された状態で保持されることとなる。
【0039】
このような超硬チップ32の保持構造(緩衝筒体部48の形成態様)について、より詳細には、
図8の(a)に示されるように、鋳造キャビティ56内に注湯された金属溶湯54が緩衝筒体52の鋳造キャビティ56内部分に接すると、その熱により、少なくとも超硬チップ32の側面部50に被せられた緩衝筒体52の一部乃至は全部が、溶融して金属溶湯54と一体(溶接状態)とされるか、又は、溶融はしないが、金属溶湯54との間で拡散合金化が生じて一体化(接合)されることとなる。なお、
図8(a)において模式的に示されるように、緩衝筒体52の鋳造キャビティ56内部分は、金属溶湯54の熱により、膨張せしめられる。
【0040】
そして、金属溶湯54が鋳造キャビティ56内で冷却されて、本体部46の鋳造操作が完了されることとなるが、このとき、
図8(b)に示されるように、形成された緩衝筒体部48及び本体部46により、超硬チップ32の側面部50が締め付けられて、強固に保持されるようになるのである[
図8(b)における白抜き矢印参照]。このような保持力(締付け力)は、本体部46及び緩衝筒体部48と、超硬チップ32との間に、熱膨張率の差があるところから、生じるものである。即ち、本体部46を構成するSTARK材質及び緩衝筒体部48を構成するSCMの熱膨張率が、およそ10〜13ppm/K程度であるのに対して、超硬チップ32を構成する超硬合金の熱膨張率が、およそ5ppm/K程度であるところから、冷却に際して、緩衝筒体部48及び本体部46が、超硬チップ32と比較して大きく収縮することにより、そのような締付け力が生じることとなるのである。更に、ここでは、緩衝筒体部48が、比較的硬度の低い材質からなるため、
図8の(b)に模式的に示されるように、本体部46が収縮することにより生じる締付け力によって、その外周面形状が小さくなるように変形し、以て、本体部46に作用する応力(反力)が緩和されるようになっている。
【0041】
その後、上型62と下型60とが型開きされて、
図9に示されるような、鋳物(中間体74)が取り出される。かかる中間体74においては、本体部46から突出するようにして、緩衝筒体52の一部が残存している。そのような中間体74に対して、緩衝筒体52内に充填されている砂68が除去されると共に、緩衝筒体52の本体部46からの突出部分がグラインダ等により除去されて、超硬チップ32の先端部が本体部46の外周面に露呈せしめられる。かくして、
図10に示されるような、超硬チップ32と緩衝筒体52が、鋳物金属からなる本体部46と一体化されてなる構造を有する、目的とするコーン分割体44aが得られるのである。
【0042】
さらに、引き続き、上記の工程が5回繰り返されて、5個のコーン分割体44b〜44fが形成される。そして、このようにして得られた6個のコーン分割体44a〜44fを組み合わせることにより、
図11に示されるような環状のカッターコーン18が、構成されるのである。次いで、それらコーン分割体44a〜44fからなるカッターコーン18が、別途準備された、支持軸部材12に対して回転自在に取り付けられている回転体本体16に外嵌装着されると共に、リングスペーサ20を介して、固定リング22にて締め付けられることによって、固定せしめられることとなる。かくして、
図1に示されるようなローラカッター10が、得られるのである。
【0043】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、カッターコーン18が、一体の円環状鋳物にて構成されるものではなく、個々に鋳造された複数のコーン分割体44a〜44fによって、全体として環状をなすように構成されているところから、かかるコーン分割体44a〜44fのそれぞれが、超硬チップ32を鋳包んでなる金属鋳物にて構成されているにも関わらず、鋳造時、特に冷却収縮時に生じる内部応力の周方向への伝播が、分割体としたことによって有利に抑制されて、それらコーン分割体44a〜44fを構成する鋳物金属からなる本体部46の内部における応力集中が、効果的に緩和されることとなるのである。そして、これにより、コーン分割体44a〜44fにおいて割れ等が生じることが有利に阻止されると共に、コーン分割体44a〜44fの内部に残留する応力が緩和されることによって、コーン分割体44a〜44fが破損し難くなり、以て、カッターコーン18、ひいてはローラカッター10の耐久性を有利に向上せしめることが可能となったのである。
【0044】
しかも、そのようなコーン分割体44a〜44fからなるカッターコーン18にあっては、トンネルを掘削する際に、カッターコーン18に作用する衝撃が、カッターコーン18の分割箇所(互いに隣接するコーン分割体44a〜44fの境界部分)で有効に吸収されようになるのであり、また、それによって各コーン分割体44a〜44fが破損し難くなるところからも、カッターコーン18(ローラカッター10)の耐久性を有利に改善することが出来ることとなる。
【0045】
また、それらコーン分割体44a〜44fが、その一部において、超硬チップ32の脱落や本体部46の破損等を生じた場合であっても、カッターコーン18全体を交換する必要がない特徴がある。即ち、破損等が生じたコーン分割体44のみを修理、交換することが出来るところから、ローラカッター10の補修コストを有利に低減することが出来るという利点も有しているのである。
【0046】
さらに、コーン分割体44a〜44fにおいて、緩衝筒体52が、コーン分割体44a〜44fを構成する鋳物金属よりも硬度が低い金属材質とされて、それら鋳物金属からなる本体部46と超硬チップ32と緩衝筒体52とが一体化されているために、換言すれば、超硬チップ32が、そのような緩衝筒体52からなる緩衝筒体部48を介して、本体部46に埋設されているところから、超硬チップ32と本体部46との熱膨張率の違いにより発生する応力が、緩衝筒体部48によって、効果的に緩和されることとなる。これにより、コーン分割体44a〜44fにおいて、超硬チップ32と本体部46との境界部分を起点として割れ等が生じることが有利に阻止されると共に、かかる境界部分に残留する応力が緩和されることによって、超硬チップ32の脱落が生じ難くなり、以て掘削効率の低下が有利に抑制乃至は阻止されると共に、カッターコーン18、ひいてはローラカッター10の耐久性を有利に向上せしめることも可能となるのである。
【0047】
そして、本実施形態のローラカッター10においては、上述のような、カッターコーン18の分割構造、及び緩衝筒体部48の存在により、各コーン分割体44a〜44fを構成する本体部46において、割れ等の発生が有利に抑制乃至は阻止されるようになっているところから、コーン分割体44a〜44fを構成する鋳物金属として、例示のSTARK材質を始めとする、脆性が比較的高いが、耐磨耗性の良好な材料を用いることが可能となるのであり、これによって、ローラカッター10の耐久性をより有利に向上せしめることが可能になるという利点がある。
【0048】
なお、ここでは、緩衝筒体52の材質や本体部46を構成する鋳物金属の熱膨張率が、超硬合金からなる超硬チップ32の熱膨張率よりも高いものとされているところから、冷却時の収縮によって、超硬チップ32を締め付ける応力が生じ、超硬チップ32がより強固に保持されることとなり、以て、超硬チップ32の脱落がより有利に阻止されるようになっている。
【0049】
また、このような本実施形態に従う手法によりローラカッター10を製造すれば、それぞれのコーン分割体44a〜44fを与える鋳型として、鋳造キャビティ56を有する鋳型58が準備されるところから、そのような鋳型58の大きさが、カッターコーン18全体を一度に鋳造するための鋳型に比べて、比較的小さいもので済むこととなる。そのため、鋳型58の製造に係るコストを低減することが出来、以て、ローラカッター10の製造コストを有利に低減することが可能となるのである。
【0050】
さらに、鋳造キャビティ56内に、コーン分割体44a〜44fを鋳造するための金属溶湯54を注湯することにより、超硬チップ32を緩衝筒体52内に収容してなる形態において鋳包んで、それら超硬チップ32と緩衝筒体52が鋳物金属からなる本体部46と一体化されてなるコーン分割体44a〜44fを、それぞれ形成するようになっているところから、超硬チップ32を本体部46に埋設するための工程が不要となるのであり、以て、ローラカッター10の製造コストを有利に低減することが出来る。加えて、超硬チップ32が緩衝筒体52(緩衝筒体部48)及び本体部46によって強固に保持されることとなるところから、超硬チップ32の脱落を抑制乃至は阻止して、ローラカッター10の耐久性を有利に向上させることが出来ることとなる。
【0051】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0052】
例えば、先の実施形態においては、緩衝筒体52が、超硬チップ32に対して充分に大きな長さを有するものとされているが、これは、緩衝筒体52の先端部を下型60の下側保持凹所64内に収容して、緩衝筒体52を鋳造キャビティ56内の所定位置に保持するための構成であり、何等これに限定されるものではない。即ち、緩衝筒体52は、少なくとも超硬チップ32の側面部50を覆う長さとされていればよいのである。更に、
図12に示されるように、超硬チップ32の側面部50のみを覆う長さを有する4つの緩衝筒体52、52、52、52を連結した形態を有する連結ホルダ76を用いることも可能である。これにより、4つの緩衝筒体52、52、52、52を一度に下型60の下側保持凹所64、64、64、64内に配置することが可能となる。なお、連結ホルダ76から径方向内方に向かって延びる棒状の部材は、支持部材78であり、
図13に示されるようにして、鋳造キャビティ56内での連結ホルダ76の姿勢を保持するために設けられているものである。
【0053】
また、緩衝筒体52の内周面形状(内径)は、超硬チップ32の外周面形状(外径)と略同等なものに限られず、それよりも大きな内周面形状とされていてもよい。即ち、超硬チップ32の外周面(側面部50)と緩衝筒体52の内周面との間に、ある程度の隙間があってもよい。その場合、鋳造操作の実施に際して、注湯された金属溶湯54が緩衝筒体52と超硬チップ32との間に入り込んで、
図14に示されるように、コーン分割体44において、超硬チップ32と緩衝筒体部48との間に、薄い鋳物金属層80が形成されることとなる。このような場合であっても、超硬チップ32の溶融や、超硬チップ32と金属溶湯54との間での合金化は殆ど起こらず、超硬チップ32の性能は確保される。また、そのような隙間に入り込んだ程度の鋳物金属層80においては、割れ等を生じさせる程の応力は生じない。
【0054】
さらに、緩衝筒体52の材質としては、例示のクロムモリブデン鋼(SCM)に何等限定されるものではなく、本体部46を構成する鋳物金属よりも硬度の低い公知の各種の材質が、適宜に用いられ得る。そのような緩衝筒体52を構成する材質として、好ましくは、炭素鋼(普通鋼)、合金鋼(特殊鋼)、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、クロム鋼、マンガン鋼等の鋼材質を挙げることが出来る。
【0055】
なお、ローラカッター10においては、その全体的な強度や耐久性を向上させるために、隣接する部材同士、即ち、回転部本体16とカッターコーン18、カッターコーン18とリングスペーサ20、リングスペーサ20と固定リング22の境界部分等を溶接して、接合するようにしてもよい。
【0056】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。