【文献】
吉田 昭仁,GPSを用いた建物の変位応答測定および健全性モニタリング,日本建築学会構造系論文集,日本,2003年 9月,68巻、571号 ,P.39-44,[平成30年5月31日検索],URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/68/571/68_KJ00004089307/_article/-char/ja/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造物の上層階に設置された1台のGNSS受信機と、該GNSS受信機により計測された絶対座標、該絶対座標の変位に基づき前記構造物の絶対変位曲線を作成し、該絶対変位曲線と前記構造物の任意次数個の固有振動数の地震時変動を考慮して拡張された拡張伝達関数に基づき前記構造物の基礎部の絶対変位を演算し、該絶対変位と前記絶対変位曲線に基づき前記構造物の相対変位を演算し、該相対変位の振幅量と前記構造物の振動形状に基づき各階層毎の最大層間変位を演算し、最大層間変位を前記構造物の階高で除して各階層毎の最大層間変形角を演算し、層間変形角曲線を作成するプログラムが格納された記憶部と、最大層間変位及び最大層間変形角、又は前記層間変形角曲線の少なくとも一方を基に前記構造物の安全性の診断を行なう判断部を有する制御装置と、表示部とを具備し、前記制御装置は、前記絶対座標の変位、前記プログラムを基に各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角、前記層間変形角曲線を演算し、前記判断部が最大層間変位及び最大層間変形角、又は前記層間変形角曲線の少なくとも一方に基づき評価した前記構造物の診断結果を前記表示部に表示させることを特徴とする構造物の安全性診断システム。
前記表示部には診断結果画面が表示され、該診断結果画面は評価結果グラフ表示部を有し、該評価結果グラフ表示部には安全領域、危険領域が区分けして表示され、前記層間変形角曲線が安全領域から危険領域のどの範囲に存在するかを示す請求項1の構造物の安全性診断システム。
前記診断結果画面は、前記判断部による診断結果を文字により表示する評価結果表示部と、前記診断結果を色にて表示する総合評価表示部とを更に有する請求項3の構造物の安全性診断システム。
前記判断部による前記構造物の診断が行なわれた後、更に所定時間経過後に前記GNSS受信機が該GNSS受信機の設置位置の絶対座標を計測し、前記制御装置は基準絶対座標と、所定時間経過後の前記設置位置の絶対座標から該設置位置の経時的な変位を演算し、該経時的な変位に基づき、前記判断部は前記構造物の安全性を診断する請求項1〜請求項4のうちいずれかの構造物の安全性診断システム。
前記GNSS受信機は、測定位置に設置され、衛星からの信号を受信する1つのGNSS受信部と、該GNSS受信部より出力される受信信号を所定時間間隔で取得し、隣接する2つの時刻で前記GNSS受信部からの受信信号を取得し、2つの受信信号の搬送位相波の時間差分を演算し、演算結果に基づき測定位置の偏差を求め、該偏差を積分して前記測定位置の振動を求める様構成した演算処理装置とを具備する請求項1〜請求項5のうちいずれかの構造物の安全性診断システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機により計測した構造物の変位に基づき、該構造物の安全性を診断する構造物の安全性診断システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、構造物の上層階に設置された1台のGNSS受信機と、該GNSS受信機により計測された絶対座標、該絶対座標の変位に基づき前記構造物の絶対変位曲線を作成し、該絶対変位曲線に基づき各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角を演算し、層間変形角曲線を作成するプログラムが格納された記憶部、及び最大層間変位及び最大層間変形角を基に前記構造物の安全性の診断を行なう判断部を有する制御装置と、表示部とを具備し、前記制御装置は、前記絶対座標の変位、前記プログラムを基に各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角、前記層間変形角曲線を演算し、前記判断部が最大層間変位及び最大層間変形角、又は前記層間変形角曲線の少なくとも一方に基づき評価した前記構造物の診断結果を前記表示部に表示させる構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記表示部には診断結果画面が表示され、該診断結果画面は評価結果グラフ表示部を有し、該評価結果グラフ表示部には安全領域、危険領域が区分けして表示され、前記層間変形角曲線が安全領域から危険領域のどの範囲に存在するかを示す構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記診断結果画面は、前記構造物の各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角を表示する数値表示部を更に有する構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記診断結果画面は、前記判断部による診断結果を文字により表示する評価結果表示部と、前記診断結果を色にて表示する総合評価表示部とを更に有する構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0014】
又本発明は、前記判断部による前記構造物の診断が行なわれた後、更に所定時間経過後に前記GNSS受信機が該GNSS受信機の設置位置の絶対座標を計測し、前記制御装置は基準絶対座標と、所定時間経過後の前記設置位置の絶対座標から該設置位置の経時的な変位を演算し、該経時的な変位に基づき、前記判断部は前記構造物の安全性を診断する構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0015】
又本発明は、前記構造物の所定位置に更に少なくとも1台GNSS受信機を設置し、前記制御装置は各GNSS受信機の計測結果に基づき前記構造物の変形状態を演算する構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0016】
又本発明は、前記GNSS受信機が、測定位置に設置され、衛星からの信号を受信する1つのGNSS受信部と、該GNSS受信部より出力される受信信号を所定時間間隔で取得し、隣接する2つの時刻で前記GNSS受信部からの受信信号を取得し、2つの受信信号からドップラー変動の時間差分を演算し、演算結果に基づき測定位置の偏差を求め、該偏差を積分して前記測定位置の振動を求める様構成した演算処理装置とを具備する構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0017】
又本発明は、前記時間間隔は、衛星から発信される信号が10msから更新される時間間隔の1/2の範囲で選択され、更に被測定体の予想振動周期の1/10以下に設定される構造物の安全性診断システムに係るものである。
【0018】
更に又本発明は、前記絶対座標の変位は、前記GNSS受信機により計測された絶対座標の初期値に、前記偏差の総和を加算したものである構造物の安全性診断システムに係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、構造物の上層階に設置された1台のGNSS受信機と、該GNSS受信機により計測された絶対座標、該絶対座標の変位に基づき前記構造物の絶対変位曲線を作成し、該絶対変位曲線に基づき各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角を演算し、層間変形角曲線を作成するプログラムが格納された記憶部、及び最大層間変位及び最大層間変形角を基に前記構造物の安全性の診断を行なう判断部を有する制御装置と、表示部とを具備し、前記制御装置は、前記絶対座標の変位、前記プログラムを基に各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角、前記層間変形角曲線を演算し、前記判断部が最大層間変位及び最大層間変形角、又は前記層間変形角曲線の少なくとも一方に基づき評価した前記構造物の診断結果を前記表示部に表示させるので、前記構造物屋上の変位を積分することなく実測値で求めることができ、該構造物の診断を高精度で行なうことができると共に、1台の前記GNSS受信機を用いた場合には、該GNSS受信機同士を同期させる為の機構を必要とせず、システムの簡易化、コストの低減を図ることができる。
【0020】
又本発明によれば、前記表示部には診断結果画面が表示され、該診断結果画面は評価結果グラフ表示部を有し、該評価結果グラフ表示部には安全領域、危険領域が区分けして表示され、前記層間変形角曲線が安全領域から危険領域のどの範囲に存在するかを示すので、前記構造物の状態が直ちに把握できる。
【0021】
又本発明によれば、前記診断結果画面は、前記構造物の各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角を表示する数値表示部を更に有するので、各階層毎の最大層間変位及び最大層間変形角の詳細な数値を確認することができる。
【0022】
又本発明によれば、前記診断結果画面は、前記判断部による診断結果を文字により表示する評価結果表示部と、前記診断結果を色にて表示する総合評価表示部とを更に有するので、前記構造物の状態が直ちに把握できると共に、その後の対処法等を容易に把握することができる。
【0023】
又本発明によれば、前記判断部による前記構造物の診断が行なわれた後、更に所定時間経過後に前記GNSS受信機が該GNSS受信機の設置位置の絶対座標を計測し、前記制御装置は基準絶対座標と、所定時間経過後の前記設置位置の絶対座標から該設置位置の経時的な変位を演算し、該経時的な変位に基づき、前記判断部は前記構造物の安全性を診断するので、該構造物の余効変動や残留変位を含めた該構造物の診断を行なうことができ、該構造物の安全性の診断精度をより向上させることができる。
【0024】
又本発明によれば、前記構造物の所定位置に更に少なくとも1台GNSS受信機を設置し、前記制御装置は各GNSS受信機の計測結果に基づき前記構造物の変形状態を演算するので、前記構造物の捩れ、振動の態様、該構造物自体の変位量等の変形状態を求めることができる。
【0025】
更に又本発明によれば、前記GNSS受信機が、測定位置に設置され、衛星からの信号を受信する1つのGNSS受信部と、該GNSS受信部より出力される受信信号を所定時間間隔で取得し、隣接する2つの時刻で前記GNSS受信部からの受信信号を取得し、2つの受信信号からドップラー変動の時間差分を演算し、演算結果に基づき測定位置の偏差を求め、該偏差を積分して前記測定位置の振動を求める様構成した演算処理装置とを具備するので、高精度で、而も誤差要因を排除した構造物の安全性の診断を行うことができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0028】
先ず、
図1、
図2に於いて、本発明の実施例に係る構造物の安全性診断システムの概略について説明する。
【0029】
図1中、1はビル等の構造物であり、2は該構造物1の上層階の所定位置(好ましくは屋上階の既知の位置)に設けられたGNSS受信機を示している。該GNSS受信機2のGNSS受信部が複数の衛星からの信号を受信した際に、得られる各衛星のドップラー変動を利用し、その変動値から物体の変位を検出し、更に検出した変位に基づき振動を検出している。
【0030】
前記GNSS受信機2は、GNSSケーブル3を介してPC等の制御装置4に接続されている。又、該制御装置4は、前記構造物1の1階等所定の位置に配置されたモニタ等の表示部5及びキーボードやマウス等の操作部6に電気的に接続されると共に、通信手段、例えばLAN7を介して通信部8に接続されており、前記制御装置4は前記通信部8を介して外部ネットワークと通信可能となっている。尚、前記GNSS受信機2については、受信機能を有するGNSS受信部(後述)を分離して設置してもよい。
【0031】
又、
図2に示す様に、前記制御装置4は、CPU等の制御演算部9と、HDD等の記憶部11と、判断部12とを有している。
【0032】
前記記憶部11には、前記GNSS受信機2により計測された、地震等が発生する前の変位していない状態の前記GNSS受信機2の設置位置の絶対座標(基準絶対座標)、及び前記構造物1の安全性を診断する為の変位に対する閾値が格納されている。又、前記記憶部11には、前記基準絶対座標と変位後の前記設置位置の絶対座標を基に前記構造物1の前記設置位置に於ける変位を演算する変位演算プログラム、前記構造物1の構造、前記設置位置の変位に基づき、構造計算により前記構造物1の前記設置位置の変位から前記構造物1の絶対変位曲線13(
図3(A)参照)を作成する絶対変位曲線作成プログラム、該絶対変位曲線13から各階層毎の最大変位を演算する変位演算プログラム、各階層毎の最大変位から各階層間の最大層間変位を演算する層間変位演算プログラム、最大層間変位から各階層間の最大層間変形角を演算し、層間変形角曲線14(
図3(B)参照)を作成する層間変形角演算プログラム、得られた最大層間変形角に基づき、前記構造物1の健全性を判断する健全性判断プログラム、既に得られている各階層の最大変位を2階微分して求めた絶対加速度を基に震度を演算する震度演算プログラム、後述する前記判断部12の判断結果等を前記表示部5に表示する為の表示プログラム等のプログラムが格納されている。
【0033】
前記判断部12は、前記制御演算部9により演算された最大層間変位、最大層間変形角、及び健全性判断プログラムを基に、前記構造物1の状態、例えば該構造物1が安全であるか、精密検査が必要であるか、危険であるかを判断し、前記構造物1の安全性を評価する様になっている。尚、簡便な安全性の判断としては、各層間の最大層間変形角の内、最も大きい最大層間変形角、即ち最大層間変形角の最大値が、所定の閾値を超えた場合を危険と判断してもよい。
【0034】
次に、
図3(A)、
図3(B)に於いて、前記構造物の安全性診断システムの作用について説明する。
【0035】
地震発生後、前記操作部6により診断開始の指示が入力されると、前記制御演算部9は、所定の時間間隔、例えば20Hz以上で高精度にて前記GNSS受信機2からの受信信号に基づき前記構造物1屋上の前記GNSS受信機2の設置位置の絶対座標を計測する。
又、前記制御演算部9は、計測された絶対座標を前記記憶部11に格納すると共に、計測された絶対座標と予め該記憶部11に格納された地震発生前の前記設置位置の絶対座標とを比較し、該設置位置の変位を演算する。
【0036】
ここで、上層階の観測データのみから前記構造物1の性能を評価する場合、基礎入力動を適切に予測し、上層階での観測データから除去する必要がある。この場合、基礎部に対する上層階の振幅比及び位相差情報を含む伝達関数、或は構造物の設計モデルを用いて逆算的に基礎部の入力動を求める手法を用いることが想定される。伝達関数は簡便に求まる利点がある反面、構造物の固有振動数を一意的に決定する必要がある。然し乍ら、構造物の固有振動数は地震中に随時変動する特性を有しており、構造物の固有振動数を一意的に決定した場合、誤差要因が非常に大きくなり、最終的な評価結果の精度に悪影響を及ぼす。又、構造物の設計モデルを用いる場合、最終的な評価結果の精度はモデル化精度に左右され、精度改善の為モデル自体を改善する必要がある為、本実施例の構造物の安全性診断システムの様に、自動的に最終評価迄を導くシステムには馴染まない。
【0037】
そこで、本実施例では、比較的簡便であり、自動化に適した伝達関数を拡張した拡張伝達関数を採用した。拡張伝達関数は、
図4に示される様に、構造物の固有振動数を一意的に決定する必要がない様、上層階での常時微動記録並びに地震時記録の周波数分析結果を基に伝達関数の共振点幅を拡大し、構造物の固有振動数の地震中での変動に依存しない、即ち地震中の各時刻での固有振動数に対して自動的に適切な伝達関数値が適用される様工夫されたものである。
【0038】
前記制御演算部9は、前記GNSS受信機2の設置位置(変位計測点)での前記絶対変位曲線13を作成する。又、前記制御演算部9は、前記絶対変位曲線13と前記構造物1の任意次数個の固有振動数の地震時変動を考慮して拡張された拡張伝達関数に基づき、前記構造物1の基礎部の絶対変位を演算し、該絶対変位と前記絶対変位曲線13から前記構造物1の相対変位を演算する。
【0039】
更に、前記制御演算部9は、前記相対変位の各次モードの振幅量と多次元関数で仮定された前記構造物1の各次モードでの振動形状とを掛合わせ、各階層毎の最大層間変位を演算する。或は、前記制御演算部9は、前記構造物1の設計図面を基に計算された質量と層剛性に対して固有値解析を適用して求めた弾性のモード形状に、各階層の層剛性を設計図面に準拠した場合(係数α=1)、及び設計図面のα(α>1或はα<1)倍に増減した場合の複数ケースのモード形状を掛合わせ、各階層毎の最大変位を演算し、各階層毎の最大層間変位を演算する。
【0040】
尚、所定の階層の最大変位をDi 、該所定の階層の上方に隣接する階層の最大変位をDi+1とした場合、Di ,Di+1 間の最大層間変位δi は、以下の式で表すことができる。
【0042】
各階層の隣接する階層に対する最大層間変位が求められると、前記制御演算部9は、求めた最大層間変位を前記構造物1の階高で除し、各階層間の最大層間変形角を演算する。
ここで、各階層間の高さをhi とした場合、Di ,Di+1 間の最大層間変形角は、以下の式で表すことができる。
【0044】
又、前記制御演算部9は、求められた最大層間変形角から、
図3(B)に示される様な、前記層間変形角曲線14を作成すると共に、この時の各階層毎の震度階級を求める。
【0045】
該層間変形角曲線14を作成した後、前記判断部12は健全性判断プログラムに基づき、前記記憶部11に予め格納された閾値と、最大層間変位の最大値、最大層間変形角の最大値とを比較し、前記構造物1の安全性についての評価を行なう。
【0046】
最後に、前記制御演算部9が、前記判断部12による評価結果等を有する診断結果画面15(
図5参照)を前記表示部5に表示させることで、本実施例に係る構造物の安全性診断システムによる前記構造物1の安全性診断が終了する。
【0047】
図5は、前記表示部5に表示された前記診断結果画面15の一例を示している。
【0048】
該診断結果画面15は、前記層間変形角曲線14を基に診断された前記構造物1の状態を示す評価結果グラフ表示部16、各階層毎の震度階級、最大層間変形角を表示する数値表示部18、前記判断部12による評価結果を文字にて表示する評価結果表示部19、前記判断部12による評価結果を色にて表示する総合評価表示部20とを有している。
【0049】
前記評価結果グラフ表示部16は、横軸に層間変形角を取り、左端部を安全領域17a、右端部を危険領域17c、中間部を注意領域17bとしたグラフ17に前記層間変形角曲線14を表示させたものである。前記評価結果グラフ表示部16は、前記層間変形角曲線14と前記安全領域17a、前記注意領域17b、前記危険領域17cとの関係から、前記構造物1のどの階層が現在どの様な状態にあるのかが容易に確認できる様になっている。更に、前記層間変形角曲線14の一部でも前記危険領域17cに掛っている場合は、前記構造物1は危険な状態にあると判断される。尚、前記評価結果グラフ表示部16は、3つの領域17a〜17cが所定の幅を持つ様設定されているが、前記安全領域17aと前記危険領域17cの2領域としてもよいし、前記注意領域17bを分割して4以上の領域としてもよい。
【0050】
又、前記数値表示部18は、前記制御演算部9により演算された、各階層毎の震度階級、最大層間変形角が表示される様になっており、詳細な数値を確認することができる。又、前記判断部12による閾値との比較により、精密検査が必要と判断された階層、危険であると判断された階層が色等により識別可能(図示ではハッチング)となっている。
【0051】
前記評価結果表示部19は、診断を行なった前記構造物1の状態が安全から危険のどの範囲にあるか、今後該構造物1をどの様にすればよいのか等のメッセージが表示される様になっている。例えば、該構造物1の状態が安全範囲にあり、修復等が不要である場合には、
図5に示される様に、「評価結果:安全範囲」、「このまま継続利用可能です」とメッセージが表示され、前記構造物1に対する対処が容易に判断できる様になっている。
【0052】
前記総合評価表示部20は、安全であれば青、精密検査が必要であれば黄色、危険であれば赤等、前記判断部12による評価結果を適宜選択した色にて表示する様になっており、評価結果が一目で分る様になっている。尚、前記総合評価表示部20をブザー等の発音手段とし、判断結果に応じた警告音を発する様にしてもよい。更に、前記総合評価表示部20は色表示すると共に警告音を発する様にしてもよい。
【0053】
図5中の前記診断結果画面15では、前記評価結果グラフ表示部16、前記数値表示部18、前記評価結果表示部19、前記総合評価表示部20の4つの項目が表示されているが、前記層間変形角曲線14に基づき評価した前記評価結果グラフ表示部16と、震度階級及び最大層間変形角に基づき評価した前記数値表示部18のいずれか一方のみを表示してもよい。又、前記診断結果画面15に前記絶対変位曲線13等他の項目を表示してもよい。
【0054】
又、
図6に示される様に、最大層間変形角を上限値で表した層間変形角曲線14a、最大変形角を下限値で表した層間変形角曲線14bを作成し、層間変形角の上限値或は下限値により、前記構造物1の安全性を診断してもよい。
【0055】
上述の様に、本実施例では、前記GNSS受信機2により、地震発生前と地震発生後の前記構造物1の屋上の設置位置の絶対座標を直接計測することができ、経時的に測定結果が変化することもなく、精度の劣化が防止され、高精度な変位を求めることができる。更に、例えば10Hz以上の間隔で絶対座標を計測した場合、10Hzは構造物の低次の固有振動数成分を表現するのに充分高周波であり、時間の経過に伴う変位を求めれば前記構造物1が振動しているかどうかを検知することができ、地震発生直後の変位、地震後の経時的な変化も測定できる。尚、計測間隔は、対象物の低次の固有振動数と充分離れていればよく、10Hzは1次固有振動数1Hzの建築構造物の場合の1例である。
【0056】
従って、精度の高い最大層間変位、最大層間変形角を求めることができ、前記構造物1の安全性診断の精度を向上させることができる。
【0057】
又、本実施例の構造物の安全性診断システムに使用される前記GNSS受信機2は1台のみであり、GNSS受信機同士を同期させる為の機構等を必要としないので、システムの簡易化、コストの低減を図ることができる。
【0058】
又、本実施例では、前記GNSS受信機2により、地震発生前の前記構造物1屋上の設置位置に於ける絶対座標と地震発生後の該設置位置の絶対座標とを直接計測できるので、2つの絶対座標の比較により、従来の加速度センサでは不可能であった前記構造物1の残留変位を計測することができる。更に、地震発生後の経時的な変化を計測することができる。
【0059】
又、前記構造物1の安全性診断後、前記表示部5に前記評価結果グラフ表示部16、前記数値表示部18、前記評価結果表示部19、前記総合評価表示部20を有する前記診断結果画面15を表示させるので、前記構造物1の状態が直ちに把握できると共に、危険な階層やその後の対処法等を容易に把握することができる。
【0060】
又、前記制御装置4は、前記通信部8を介して外部ネットワークと通信可能となっているので、前記操作部6を直接操作できない場合であっても、外部より前記制御装置4を遠隔操作し、前記構造物1に対する安全性の診断を行なうことができる。又、各階の診断結果を基に、天井、設備機器、ロッカー、間仕切り及び各種配管等の転倒、破損等の状態に関する警告を発することも可能である。
【0061】
尚、本実施例では、地震発生前の前記構造物1屋上に設置した前記GNSS受信機2の設置位置の絶対座標と、地震発生後の該設置位置の絶対座標とを比較し、該構造物1の地震発生後の最大層間変位、最大層間変形角を各階層毎に求め、該構造物1の安全性を診断しているが、変位後の前記設置位置の絶対座標を保存し、更に所定時間、例えば1時間或は2時間単位で経過した後の該設置位置の絶対座標を計測し変位後の絶対座標と、所定時間経過後の絶対座標とを比較することで、経時的な変化があるかどうかを判断する様にしてもよい。ここで、地震中の最大層間変形角の評価の目安としては、例えばRC造で安全領域と注意領域との境界部を1/200に、注意領域と危険領域との境界部を1/75とし、S造では同様に1/150、1/50程度の値とする。又、残留変形評価の目安としては、10mm程度の値を採用するが、構造物の高さ等により適宜設定変更されるものである。
【0062】
地震発生後の前記構造物1屋上に於ける前記GNSS受信機2の設置位置の絶対座標と、所定時間経過後の該設置位置の絶対座標とを比較し、最大層間変位、最大層間変形角を求めることで、地震が治まった後に進行する前記構造物1の余効変動を検出することができる。
【0063】
更に、変位前の前記設置位置の絶対座標(基準絶対座標)と、所定時間経過後の該設置位置の絶対座標とを比較し、最大層間変位、最大層間変形角を求め、前記判断部12に評価を行なわせることで、前記構造物1の余効変動や残留変位を含めた該構造物1の診断を行なうことができ、該構造物1の安全性の診断精度をより向上させることができる。
【0064】
尚、本実施例では、前記記憶部11には、地震発生前の前記設置位置の絶対座標が格納され、該設置位置の絶対座標と地震発生後に前記操作部6の指示により計測された前記設置位置の絶対座標とを比較し、該構造物1の安全性診断を行なっているが、前記GNSS受信機2により常時絶対座標を計測し、前記操作部6の指示により地震発生前の絶対座標と地震発生後の絶対座標とを選択する様にしてもよい。
【0065】
又、本実施例では、地震による該構造物1の変位に対する安全性の診断について説明したが、強風等による前記構造物1の変位に対する安全性や居住快適性の診断についても、本実施例の構造物の安全性診断システムが適用可能であるのは言う迄もない。
【0066】
次に、
図7(A)〜
図7(C)に於いて、本発明の応用例について説明する。尚、
図7(A)〜
図7(C)中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
応用例では、前記構造物1の上層階の所定位置(好ましくは屋上階の既知の位置)に第1GNSS受信機31を設けると共に、第2GNSS受信機32を更に設けている。
【0068】
図7(A)に示す第1の応用例では、該第2GNSS受信機32を上層階、即ち前記第1GNSS受信機31と同一階層に設け、それぞれの受信結果に基づきそれぞれの設置点の位置変位及び振動を演算する。前記第1GNSS受信機31と前記第2GNSS受信機32とを同一階層に設けることで、前記構造物1の各階層毎の層間変形角が演算できると共に、前記第1GNSS受信機31、前記第2GNSS受信機32から求められる変位差、変位の方向差から前記構造物1に生じた捩れを演算することができる。
【0069】
図7(B)に示す第2の応用例では、前記第2GNSS受信機32を中層階、即ち前記第1GNSS受信機31とは別階層に設けている。前記第1GNSS受信機31と前記第2GNSS受信機32とを別階層に設けることで、層間変形角の演算制度を高められ、更に前記構造物1に生じる変位、振動の態様を演算することができる。
【0070】
図7(C)に示す第3の応用例では、前記第2GNSS受信機32を第1階層に設けている。該GNSS受信機32を第1階層に設けることで、地表の変位を除く前記構造物1自体の変位量を得ることができる。
【0071】
更に他の応用例として、第1GNSS受信機31の他に2以上の第2GNSS受信機32を設定位置に設け、複数の設置位置の変位、振動を求めて安全性診断に適用してもよい。
【0072】
GNSS受信機を用いて、GNSS受信機の設置位置の振動、変位を求める方法について説明する。
【0073】
上記した様に、本発明ではGNSS受信機からの信号を所定時間間隔で取得しているが、所定時間間隔で取得した信号に基づき、測定対象に合致した振動情報(振動周期、振動波形)を測定することができる。従って、GNSS受信機に基づき更に高精度に前記構造物1の変位を求めることができ、又地震時、強風等の前記構造物1の振動を測定することができる。
【0074】
図8は前記GNSS受信機2が用いられた振動検出装置を示しており、
図8中では該GNSS受信機2は、GNSS受信部21と演算処理装置22によって示されている。以下、
図8により、本実施例に係る振動検出装置を詳細に説明する。
【0075】
前記GNSS受信部21は複数のGNSS衛星からの電波を受信し、各GNSS衛星毎の受信信号を出力する様に構成され、測定点に1つ設けられる。前記演算処理装置22は、例えばPCが用いられる。又、前記演算処理装置22で演算した結果、例えば振動波形、振動周波数等は表示部23に表示される。
【0076】
更に、前記演算処理装置22の概略構成を説明する。
【0077】
該演算処理装置22は、主にタイミング制御部25、信号取込み部26、演算部(CPU)27、記憶部28を具備している。
【0078】
前記タイミング制御部25は、前記GNSS受信部21が受信するGNSS衛星からの信号の取込み時期を制御し、或は同期制御用のタイミング信号を発する。例えば、前記タイミング制御部25は、前記信号取込み部26に対し、設定された時間間隔Δtで前記受信信号を取込む為のタイミング信号を発する。
【0079】
前記信号取込み部26は、前記GNSS受信部21から入力される受信信号を、前記タイミング制御部25からのタイミング信号に従って取込み、更に受信信号を増幅、A/D変換する等の信号処理を行うと共に、受信信号から位置情報の信号、時刻情報の信号等に分離する。
【0080】
前記演算部27は、前記信号取込み部26からの信号に基づき、GNSS衛星の高度を演算し、或は基準GNSS衛星を設定し、更に、前記GNSS受信部21の座標位置を演算し、更に、前記GNSS受信部21の座標位置の時間変位を演算し、更に演算結果を基に振動波形、振動周波数等を演算する。
【0081】
前記記憶部28は、プログラム格納部28a、データ格納部28bを有し、前記プログラム格納部28aには受信信号からGNSS衛星の位置、高度を演算するプログラム、或は更に前記GNSS受信部21の位置を演算する測位プログラム、所定時間毎に測位プログラムで演算し得られた位置の時間的偏差を求め、更に時間的偏差を積分して、振動波形、振動周波数を演算する振動検出プログラム、前記演算部27で演算された結果、例えば振動波形等を前記表示部23に表示する為のプログラム等のプログラムが格納されている。
【0082】
更に、前記データ格納部28bには、前記信号取込み部26から出力される受信信号、前記演算部27で時間間隔Δtで演算された結果等のデータが、前記タイミング制御部25からの同期信号に対応して格納されている。又、前記データ格納部28bには、前記演算部27で演算された振動波形等の振動検出結果も同様に格納される。
【0083】
以下、前記振動検出装置の作用について説明する。
【0084】
1つの点でGNSS衛星を観測すると、その間測量は以下の様な未知数の和として表される。
【0085】
【数1】
ここで、
Φ(t) :時刻tの搬送波位相[cycle]
ρ(t) :時刻tのGNSS衛星までの距離[m]
Trop(t) :時刻tの対流圏遅延量[m]
Iono(t) :時刻tの電離層遅延量[m]
clock(t)sat :時刻tのGNSS衛星クロックオフセット[s]
clock(t)rcv :時刻tの受信機クロックオフセット[s]
W(t) :wind−up[cycle]
n(t) :観測ノイズ[cycle]
f :搬送波周波数[Hz]
c :光速[m/s]
N :アンビギュイティ[cycle]
又、式中、satはGNSS衛星を示す添字、rcvは受信機を示す添字である。
【0086】
然し乍ら、隣合う観測時間(時間間隔Δt)が短い場合、上記式の多くの未知数は殆ど変化しない。
【0087】
又、GNSS衛星クロックの変動量及び受信機クロックの変動量は、数〜数十ナノ秒(ns)程度となる。この変動量を長さに換算すると、数百mに相当する。
【0088】
更に、GNSS衛星クロックオフセットは、航法暦により与えられており、これが正しいと仮定すると、ノイズ以外の殆どのオフセット量を消去することができる。一方、受信機クロックオフセットは、その様な情報がないので、正確に予測することが難しい。その為、特定のGNSS衛星を基準GNSS衛星として、その他のGNSS衛星との観測値の差分を取ることで、受信機クロック誤差を消去する。下記式2では、1番GNSS衛星にして、2番GNSS衛星との差分を取ったものとしている。これを3番GNSS衛星以降にも、順次適用し、受信GNSS衛星一個の式を作成できる。
【0089】
【数2】
ただし
ΔΦsat(1-2):衛星(1)−衛星(2)の搬送波位相の差分[cycle]
Δρsat(1-2):衛星(1)−衛星(2)の距離差分[m]
Δclocksat(1-2):衛星(1)−衛星(2)の衛星クロックオフセット差分[m]
ΔTropsat(1-2):衛星(1)−衛星(2)の対流圏遅延量の差分[m]
ΔIonosat(1-2):衛星(1)−衛星(2)の電離層遅延量の差分[m]
【0090】
上記処理を他の時間(例えばt2)の観測値でも行い、各測定時間間の差分を取得する。ここで、対流圏遅延、電離層遅延及びアンビギュイティ、GNSS衛星の見かけ上の位相変化から成るWindup効果は、短い時間で略同量と仮定できる為、下記式3では消去される。又、クロックオフセットは、同じ航法暦を使用している場合、同一の多項式により推定可能である。
【0092】
ここで、GNSS衛星iとGNSS受信部21との距離をρiとすると、下記の様に表せる。
【0093】
【数4】
ここで、
Xsat(i):GNSS衛星iのX座標、Xrcv :GNSS受信部21のX座標、
Ysat(i):GNSS衛星iのY座標、Yrcv :GNSS受信部21のY座標、
Zsat(i):GNSS衛星iのZ座標、Zrcv :GNSS受信部21のZ座標
【0094】
式4を式3に適用すると、GNSS衛星の組合わせが3つ以上あれば、時刻t1と時刻t2との間に変化した受信機移動座標の解法可能となる。
【0095】
この解法を行う条件として、基準GNSS衛星は、異なる時間間(t1,t2)でも同一のGNSS衛星であること、基準GNSS衛星の他に観測されている共通のGNSS衛星が3つ以上必要であることが要求される。
【0096】
更に、2つの異なる時間に受信された各GNSS衛星のデータの間にサイクルスリップがないこと、GNSS受信部の電源断により、位相カウンタがリセットされたことがないことが条件とされる。
【0097】
尚、サイクルスリップがあった場合、位相カウンタがリセットされた場合等では、位相変動量の連続性を確保する処理(整数値バイアスの推定)を行い、或は位相の断絶部分のデータを排除すればよい。
【0098】
上記解法により得られるデータは、基準となる観測時間での位置とその後の観測時間での位置の差分量である。従って、実際の移動量は、それぞれの差分量を積分することで得られる。
【0099】
ここで、前記GNSS受信部21から取込む受信信号の取得時間間隔Δtについて、最少時間間隔としては、実用上10ms(100Hz)程度である。
【0100】
又、最大時間間隔としては、以下の制限を受ける。GNSS衛星から発せられる電波は、2時間おきに最新のものに更新される。本実施例に於ける解法では、計算上のパラメータが同一であることが必要であり、更に少なくとも2点必要である。この為、2時間内に少なくとも2点のデータの取得が必要となり、最大時間間隔は1時間となる。
【0101】
従って、設定される時間間隔は、10msから衛星からの信号が更新される時間間隔の1/2の範囲であり、更に被測定体の予想される振動周期の1/10程度に設定される。
【0103】
STEP:01 測定を開始し、前記GNSS受信部21が時刻t1で、複数のGNSS衛星から電波を受信し、受信信号として前記GNSS受信部21から取得する。更に、Δt後の時刻t2での複数のGNSS衛星から受信した受信信号を前記GNSS受信部21から取得する。
【0104】
STEP:02 時刻t1、時刻t2での受信信号よりそれぞれのGNSS衛星の位置を計算する。
【0105】
STEP:03 時刻t1でのそれぞれのGNSS衛星の高度角を計算し、高度角の最も大きいGNSS衛星を基準GNSS衛星とする。
【0106】
STEP:04 時刻t1で受信された受信信号について基準GNSS衛星とその他のGNSS衛星の受信信号の差分を作成する。
【0107】
STEP:05 時刻t2で受信された受信信号について基準GNSS衛星とその他のGNSS衛星の受信信号の差分を作成する。
【0108】
STEP:06 時刻t1、時刻t2での各GNSS衛星と受信位置(測定点)との距離を、受信信号と同様のGNSS衛星の組合わせで計算する。
【0109】
STEP:07 STEP:06で得られたデータ(GNSS衛星と測定点迄の距離)に基づき、時刻t1を基準とした時刻t2での測定点を測位(座標(x,y,z)測定)する。
【0110】
STEP:08 時刻t1を基準とした時刻t2での座標から、偏差Δx、Δy、Δzを求め、移動量(Δx、Δy、Δz)を全体移動量に加算する(積分する)。
【0111】
STEP:09 時刻t2の受信信号を保存し、時刻t3でのGNSS衛星からの電波を受信し、受信信号として取得する。時刻t2の受信信号、時刻t3の受信信号について、STEP:02〜STEP:08の処理を実行する。
【0112】
所定時間間隔で、継続的にGNSS衛星からデータを取得し、隣接する時間毎に、偏差Δx、Δy、Δzを求め積分を実行することで、継続した振動測定が可能となる。
【0113】
又、上記した様に、10msから衛星からの信号が更新される時間間隔の1/2の範囲で、データの取得時間間隔を被測定体の振動状況に対応して設定できる。従って、被測定体の振動状況に対応した最適な振動測定が実施可能である。
【0114】
実験で得られた観測データを
図10に示す。
【0115】
実験の条件としては、前記GNSS受信部21が設置されている振動検知対象物を、±5mmの振幅で、且つ1Hzで振動させ、前記GNSS受信部21の受信信号を0.05秒間間隔で取込む様に設定している。
【0116】
図10では、略±5mmの振幅で、規則正しく振動している状態が観察できる。尚、
図10に於いて横軸はGNSSタイム、縦軸の単位はmである。
【0117】
更に、周期性を確認する為、観測データをFFTによる周波数分解を行った。その結果は、
図11に示されている。
【0118】
図11より、実験で設定した1Hzの位置にパワースペクトルが現れており、本実施例で測定した振動が、実験で設定した条件を反映していることが確認された。
【0119】
本実施例では、GNSS受信部21によりGNSS衛星からの信号を所定時間間隔で受信し、前記GNSS受信部21が設置されている点(測定点)の時間的変位を求め、時間的変位を積分することで振動を測定している。
【0120】
又、時間的な変位(偏差)は、GNSS受信部21により測定される絶対座標の差であり、而も近接した時間での測定値の差であるので、時間の経過に基づく誤差は極めて小さい。更にGNSS受信部21で測定された測定値に誤差要因が含まれていた場合でも、差分を取ることで、誤差要因が相殺され、極めて精度の高い偏差(Δx、Δy、Δz)が得られる。
【0121】
更に、偏差分を加算することで、GNSS受信部21の設置位置の時間的な変位が得られる。又、変位に基づき、振幅、振動波形、振動周波数等の振動に関する情報が得られる。
【0122】
更に、GNSS受信部21の設置位置の変位は、振動を除去した位置であり、振動波形の中心を示す座標として判断される。
【0123】
又、振動が停止した時の設置位置は、前記GNSS受信部21の設置位置の初期座標に前記偏差の総和を加えたものとなる。上記した様に、偏差を求める過程で誤差要因が相殺されるので、前記GNSS受信部21の設置位置は高い精度で測定される。
【0124】
更に、本実施例に係る振動検出装置が構造物の安全性診断システムに適用されることで、高精度で、信頼性の高い構造物の安全性の診断ができる。