(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム成分(C)が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム、及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の空気入りタイヤは、セルロース繊維に疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)を付加してエステル化した変性セルロース繊維(A)、軟化点が135℃以下である分散用高分子(B)、及びゴム成分(C)を含有する変性セルロース繊維含有ゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する。
【0018】
まず、インナーライナーを作製するための変性セルロース繊維含有ゴム組成物について説明する。
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物は、セルロース繊維に疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)を付加してエステル化した変性セルロース繊維(A)、軟化点が135℃以下である分散用高分子(B)、及びゴム成分(C)を含有する。
【0019】
本発明で用いる変性セルロース繊維(A)は、疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)(以降、単に「環状多塩基酸無水物(a)」や、「酸無水物(a)」とも称する)をセルロース繊維へ付加して得られる。
【0020】
前記変性セルロース繊維(A)を得るために用いることが出来るセルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートなどに含まれる植物由来の繊維、前記植物由来の繊維から得られるパルプ、マーセル化を施したセルロース繊維、レーヨンやセロファン、リヨセル等の再生セルロース繊維、酸無水物変性セルロースなどが挙げられる。これらの中でも、好ましいセルロース繊維原料としては木材が挙げられ、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシアなどが挙げられる。そして、これらを原料として得られるパルプや紙、あるいは古紙を解繊したものがセルロース繊維として好適に用いられる。セルロース繊維は、1種単独で用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。
【0021】
前記パルプとしては、例えば、前記植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してパルプ化することで得られるケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
【0022】
前記セルロース繊維は、疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)との反応性や置換度、ゴムに対する相溶性などに大きな影響を与えず、所望の特性を有するゴム組成物を得るのに差支えない範囲であれば、水酸基のエステル化やカルボキシル基などの官能基により一部水酸基が置換されたものを用いても構わない。また、疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)との反応を阻害しないよう、予めセルロース繊維に含まれる水をトルエンやN−メチルピロリドンなどの溶媒で置換しておくことが好ましい。
【0023】
本発明で用いる疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)は、環状の多塩基酸無水物の主鎖および/または側鎖に疎水性基を有し、炭素数が15以上のものであれば特に限定されないが、20以上が好ましい。炭素数が15未満であると、変性セルロース繊維(A)のゴムに対する相溶性を良好なものとすることができず、その結果、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができない。また、前記疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)における炭素数の上限としては、特に限定されないが、例えば、1500が好ましく、200がより好ましく、30が更に好ましい。炭素数が1500を超えると、得られる変性セルロース繊維(A)の分散用高分子(B)やゴム成分(C)との混練が行い難く、変性セルロース繊維(A)の分散が不十分となり、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。
【0024】
前記環状多塩基酸無水物(a)は、環状の多塩基酸無水物の主鎖および/または側鎖に、疎水性基を有する。
【0025】
前記環状の多塩基酸無水物としては、多塩基酸の同一分子内で、又は二個以上の多塩基酸間で、脱水縮合が起こり、環状構造が形成された多塩基酸無水物であれば特に限定されない。なかでも、多塩基酸の同一分子内で脱水縮合が起こり、環状構造が形成された多塩基酸無水物が好ましい。
【0026】
前記多塩基酸としては、アコニット酸、トリメリット酸等の三塩基酸;コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等の二塩基酸等が挙げられる。なかでも、二塩基酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のジカルボン酸がより好ましく、コハク酸、マレイン酸が更に好ましい。
【0027】
前記環状の多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の炭素数4〜10(好ましくは4〜6)の環状カルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、多塩基酸無水物自身の単独重合性に乏しく、疎水性基との反応のし易さの観点から、無水コハク酸、無水マレイン酸が好適に用いられる。
【0028】
前記環状多塩基酸無水物(a)が有する疎水性基としては、疎水性を有する限り特に限定されないが、例えば、炭化水素基、石油系樹脂、石炭系樹脂等が挙げられる。
前記炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、環状多塩基酸無水物(a)の疎水性の観点から直鎖状であることが好ましい。
前記炭化水素基の炭素数は、好ましくは11以上、より好ましくは15以上である。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1500以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは30以下である。該炭化水素基の炭素数が上記範囲内であると環状多塩基酸無水物(a)に適度な疎水性を付与できるため、本発明の効果がより好適に得られる。
【0029】
前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。なかでも、環状多塩基酸無水物(a)に適度な疎水性を付与できるという理由から、アルケニル基がより好ましい。
【0030】
前記アルケニル基としては、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。なかでも、環状多塩基酸無水物(a)に適度な疎水性を付与できるという理由から、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基が好ましい。
【0031】
一方、環状多塩基酸無水物(a)が有する疎水性基が石油系樹脂である場合とは、環状多塩基酸無水物(a)が酸無水基含有石油系樹脂である場合を意味する。また、環状多塩基酸無水物(a)が有する疎水性基が石炭系樹脂である場合とは、環状多塩基酸無水物(a)が酸無水基含有石炭系樹脂である場合を意味する。石油系樹脂、酸無水基含有石油系樹脂、石炭系樹脂、酸無水基含有石炭系樹脂については、後述する。
【0032】
前記疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)としては、例えば、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、などの炭化水素基を有する炭素数が15以上の環状カルボン酸無水物;酸無水基含有石油系樹脂;酸無水基含有石炭系樹脂等が挙げられる。
なお、用いる疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)の種類としては、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に用いられるゴム成分(C)の種類に応じて適宜好適なものを選択すればよいが、環状多塩基酸無水物(a)が、酸無水基含有石油系樹脂及び酸無水基含有石炭系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つであり、更には、酸無水基含有石油系樹脂であることがより好ましい。
【0033】
前記酸無水基含有石油系樹脂は、環状の多塩基酸無水物を石油系樹脂にグラフトして得られる酸無水環を有する石油系樹脂であって炭素数が15以上のものであり、公知のグラフト反応により得られる。また、前記酸無水基含有石炭系樹脂は、環状の多塩基酸無水物を石炭系樹脂にグラフトして得られる酸無水環を有する石炭系樹脂であって炭素数が15以上のものであり、同様に公知のグラフト反応により得られる。
例えば、石油系樹脂又は石炭系樹脂と環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)とを、有機過酸化物を用いてグラフトさせ、精製して得ることができる。グラフト反応に際しては、環状の多塩基酸無水物との反応が起きない有機溶媒を用いても良い。反応前の石油系樹脂又は石炭系樹脂に対する反応精製後の酸価の変化から、酸無水基含有石油系樹脂又は酸無水基含有石炭系樹脂であることを確認できる。
【0034】
前記石油系樹脂としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びこれらの水素化物などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、C5C9系石油樹脂が特に好ましい。
【0035】
前記石炭系樹脂としては、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、及びこれらの水素化物などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、前記酸無水基含有石油系樹脂又は酸無水基含有石炭系樹脂を得るために用いられる環状の多塩基酸無水物としては、石油系樹脂又は石炭系樹脂にグラフトさせて酸無水環を有する石油系樹脂又は石炭系樹脂が得られる限り特に制限されず、グラフト反応を進行させるため、炭素−炭素不飽和結合を有するものであればよいが、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の炭素数4〜10(好ましくは4〜6)の炭素−炭素不飽和結合含有環状カルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、石油系樹脂、石炭系樹脂とのグラフト反応性の観点から、無水マレイン酸が好適に用いられる。
【0037】
更に、前記有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイドなどを用いることができ、中でも、ジアルキルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドが好適に用いられる。また、前記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン等の飽和脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロへプタン、メチルシクロヘプタン等の飽和脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のエチレン性の二重結合を含まない芳香族炭化水素類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのジアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチルなどのアルキルアルキレートなどを用いることができ、中でも、アルキルアルキレート、アルキレングリコールアルキルエーテルアルキレート、ジアルキレングリコールアルキルエーテルアルキレートが好適に用いられる。
【0038】
前記酸無水基含有石油系樹脂、酸無水基含有石炭系樹脂の分子量としては特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算重量平均分子量で400〜20000が好ましく、より好ましくは500〜9000、更に好ましくは600〜6000である。重量平均分子量が400未満であると、変性セルロース繊維(A)のゴムに対する相溶性を良好なものとすることができず、その結果、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。また、重量平均分子量が20000を超えると、通常樹脂の粘度は高くなるため、得られる変性セルロース繊維(A)の分散用高分子(B)やゴム成分(C)との混練が行い難く、変性セルロース繊維(A)の分散が不十分となり、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。
【0039】
前記変性セルロース繊維(A)は、疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)をセルロース繊維に付加してエステル化すること(変性反応)により得られるが、当該エステル化反応の方法としては特に限定されず、エステル化反応を行う方法として通常行われる方法により行うことができ、例えば次のいずれかの方法で行うことができる。得られた変性セルロース繊維(A)は、通常、濾過、水洗等洗浄して溶媒や触媒などを除去して変性セルロース繊維含有ゴム組成物の製造に使用することができる。
(I)予め溶媒置換されたセルロース繊維を分散させた分散液中に、疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)を逐次あるいは一括で添加し、反応させる。
(II)溶融した疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)とセルロース繊維を混合し、反応させる。
【0040】
前記酸無水物(a)のセルロース繊維に対する付加率は、付加効率とゴム親和性を考慮すると5〜150質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。
なお、酸無水物(a)のセルロース繊維に対する付加率は、後述する実施例において行われる算出方法により算出することができる。
【0041】
本発明で用いる分散用高分子(B)は、JIS K2207に準拠した環球式試験における軟化点が135℃以下である。軟化点が135℃を超えると、変性セルロース繊維含有ゴム組成物を調製する際のマトリクスとなるゴム成分(C)への変性セルロース繊維(A)の混練が行い難く、分散が不十分となり、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができない。また、軟化点が40℃未満の場合、ゴム組成物自身の軟化点が低下し、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。前記分散用高分子(B)の軟化点としては、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。一方、該軟化点としては、分散性の観点から、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。
【0042】
前記分散用高分子(B)の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算重量平均分子量で400〜20000が好ましく、より好ましくは500〜9000、更に好ましくは600〜6000である。重量平均分子量が400未満であると、ゴム組成物の可塑化や成形加工時の気泡の発生の原因となり、その結果、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。また、重量平均分子量が20000を超えると、通常樹脂の粘度は高くなるため、分散用高分子(B)の組成によっては、変性セルロース繊維(A)やゴム成分(C)との混練が行い難く、変性セルロース繊維(A)の分散が不十分となり、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。
【0043】
前記分散用高分子(B)としては、前記軟化点を有する高分子であれば特に限定されず、例えば、石油系樹脂、石炭系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられるが、中でも、石油系樹脂及び石炭系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。変性セルロース繊維(A)とゴムとを混合する際に、分散用高分子として石油系樹脂及び石炭系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である特定の樹脂を用いることにより、ゴム中でのセルロース繊維の分散性をより改善することができ、結果、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとをより好適に両立させることが可能となる。特に好ましくは、石油系樹脂である。
【0044】
前記石油系樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を(グラフト)付加した変性物が挙げられる。中でも、C9系石油樹脂が好ましい。
【0045】
前記石炭系樹脂としては、例えば、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ環状の多塩基酸無水物(例えば、無水マレイン酸)を(グラフト)付加した変性物が挙げられる。
【0046】
前記テルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びこれらの水素化物、及びこれらへ無水マレイン酸を付加した変性物が挙げられる。
【0047】
前記ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンや、前記ロジンを原料とした水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、(メタ)アクリル酸変性ロジン、アルコールと縮合したエステル化ロジン、フェノール変性ロジンが挙げられる。
【0048】
これらの中でも、分散用高分子(B)としては特に石油系樹脂が好ましく、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物としては、相溶性の観点から、変性セルロース繊維(A)として酸無水基含有石油系樹脂により変性した変性セルロース繊維を、分散用高分子(B)として石油系樹脂を含むものが最も好ましい。
【0049】
本発明で用いるゴム成分(C)としては、特に制限されず、ゴム工業において用いられる一般的なゴムを使用することができるが、例えば、天然ゴム(NR)、改質天然ゴムや、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴム、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、ブチルゴム(IIR)などのブチル系ゴムといった合成ゴム等が挙げられる。なお、当該合成ゴムは変性された変性合成ゴムであってもよい。また、前記改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴムなどを例示できる。これらゴム成分は1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
すなわち、前記ゴム成分(C)が、天然ゴム、改質天然ゴム、合成ゴム、及び変性合成ゴムからなる群より選択される少なくとも一種であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0050】
前記ゴム成分(C)としては、良好な耐空気透過性が得られるという点から、天然ゴムとブチル系ゴムとを含むことが好ましい。
【0051】
前記天然ゴムとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0052】
ゴム成分(C)100質量%中の天然ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、優れた低燃費性及びゴム強度が得られないおそれがある。また、該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0053】
ブチル系ゴムとしては、例えば、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらブチル系ゴムは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、低発熱性の点から、Cl−IIRなどのXIIRを用いることが好ましい。
【0054】
ゴム成分(C)100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。50質量%未満では、優れた耐空気透過性が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。99質量%を超えると、良好な低燃費性が得られないおそれがある。
【0055】
また、ゴム成分(C)としては、エポキシ化天然ゴム(ENR)を配合することも好ましい。
【0056】
ENRとしては、市販のものを用いてもよいし、NRをエポキシ化したものを用いてもよい。NRをエポキシ化する方法としては、特に限定されず、例えば、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げることができる。過酸法としては、例えば天然ゴムのエマルジョンに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸をエポキシ化剤として反応させる方法を挙げることができる。
【0057】
ENRのエポキシ化率は1〜85モル%が好ましい。エポキシ化率が1モル%未満では、ゴム組成物の改質効果が小さい傾向がある。また、エポキシ化率が85モル%を超えると、ゴム組成物中のポリマーがゲル化してしまう傾向がある。
ここで、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム中の炭素間二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合を意味し、例えば滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析などにより求められる。
【0058】
ENRを配合する場合、ゴム成分(C)100質量%中のENRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。10質量%未満であると、ゴム組成物中で充填剤を分散させる効果が小さくなる傾向があり、99質量%を超えると、良好な加工性及び破断強度が得られないおそれがある。
【0059】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、前記変性セルロース繊維(A)の含有量は、前記ゴム成分(C)100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、変性セルロース繊維(A)の含有量が、前記ゴム成分(C)100質量部に対して0.01質量部未満であると、本発明の効果を十分に発揮できないおそれがある。他方、前記ゴム成分(C)100質量部に対して30質量部を超えて配合した場合、ゴム組成物中での変性セルロース繊維(A)の分散性が極端に低下し、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、変性セルロース繊維(A)の含有量は、前記ゴム成分(C)100質量部に対して、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましい。他方、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が最も好ましい。
【0060】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、前記分散用高分子(B)の含有量は、前記ゴム成分(C)100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、分散用高分子(B)の含有量が、前記ゴム成分(C)100質量部に対して0.01質量部未満であると、本発明の効果を十分に発揮できないおそれがある。他方、前記ゴム成分(C)100質量部に対して30質量部を超えて配合した場合、ゴム組成物中での分散用高分子(B)の割合が過度に大きくなり、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとを両立させることができないおそれがある。本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、分散用高分子(B)の含有量は、前記ゴム成分(C)100質量部に対して、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、3質量部以上が特に好ましい。他方、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が最も好ましい。
【0061】
また、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物中の、変性セルロース繊維(A)に対する分散用高分子(B)の含有割合は、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)との合計含有量100質量%に対して30〜70質量%であることが好ましい。変性セルロース繊維(A)に対する分散用高分子(B)の含有割合がこのような範囲であることにより、ゴム中でのセルロース繊維の分散性をより改善することができ、結果、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとをより好適に両立させることが可能となる。該変性セルロース繊維(A)に対する分散用高分子(B)の含有割合は、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)との合計含有量100質量%に対して35〜65質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることが更に好ましい。
【0062】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物は、変性セルロース繊維(A)と、分散用高分子(B)と、ゴム成分(C)と、必要に応じて後述するその他の配合剤とを、例えば、ゴム用混練機等を用いて従来公知の方法、条件で混練することにより得られるが、特には、ゴム成分(C)やその他の配合剤と混練する前に、予め変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練しておき、得られる混練物(樹脂組成物)とゴム成分(C)やその他の配合剤とを混練するのが好ましい。このように、事前に変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練して樹脂組成物を調製することで、変性セルロース繊維(A)をより微細化することができ、結果、ゴム中へのセルロース繊維の分散性がより向上し、ゴム組成物において優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロスとをより高いレベルで両立させることが可能となり、更には加工性をより向上させることができる場合がある。すなわち、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物が、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練して混練物(樹脂組成物)を得、その後、該混練物とゴム成分(C)とを混練して得られるものであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、変性セルロース繊維(A)、分散用高分子(B)、及びゴム成分(C)を含有する変性セルロース繊維含有ゴム組成物を製造する方法であって、前記変性セルロース繊維(A)は、セルロース繊維に疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)を付加してエステル化して得られ、前記分散用高分子(B)は、軟化点が135℃以下であり、前記製造方法は、前記変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とゴム成分(C)とを混練する工程を含むことを特徴とする変性セルロース繊維含有ゴム組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。そして更には、前記製造方法が、前記変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練して混練物を得る工程、及び、得られた混練物とゴム成分(C)とを混練して変性セルロース繊維含有ゴム組成物を得る工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0063】
なお、上述したように、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物は、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練して混練物(樹脂組成物)を得、その後、該混練物とゴム成分(C)とを混練して得られるものであることが好ましいが、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に含まれる変性セルロース繊維(A)100質量%に対して上記樹脂組成物由来の変性セルロース繊維(A)の割合が40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。一方、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に含まれる分散用高分子(B)100質量%に対して上記樹脂組成物由来の分散用高分子(B)の割合が40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0064】
上述のように、予め変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練する場合の、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練する工程は、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とを混練するものであれば特に制限されず、通常行われる混練方法により行うことができるが、例えば、混練機内で、変性セルロース繊維(A)が分散用高分子(B)中に分散し、強いせん断力を受けながら撹拌混合され、変性セルロース繊維(A)が微細化される工程であることが好ましい。前記混練工程で使用することのできる混練機としては、2本ロールミル、3本ロールミル、単軸押出混練機、2軸押出混練機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等が挙げられる。1種単独または2種以上を組み合わせて使用できるが、これらに限定されない。変性セルロース繊維(A)の微細化を促進させるためには、2軸押出混練機、バンバリーミキサー、加圧ニーダーを使用することが好ましい。
なお、前記変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)との混練工程における混練温度、混練時間等の混練条件は、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とが十分混練され、変性セルロース繊維(A)が微細化できるよう適宜設定すればよい。
【0065】
また、前記変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)との混練工程においては、変性セルロース繊維(A)及び分散用高分子(B)に加えて、変性セルロース繊維(A)の微細化促進を阻害しない範囲で、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に配合できるその他の配合剤の一部や、ステアリン酸等の滑剤、酸化防止剤などを配合してもよいが、該混練工程により得られる混練物(樹脂組成物)100質量%中、変性セルロース繊維(A)及び分散用高分子(B)の合計の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。他方、上限は特に制限されず、100質量%であってもよい。
【0066】
本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、前記滑剤を配合することで、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)との混練物が混練機や金型から剥離し易くなり、成型性や作業性が向上する場合がある。前記滑剤としては、特に制限されず、例えば、パラフィンワックスやポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの脂肪族アミド系滑剤などを用いることができる。例えば、変性セルロース繊維(A)、分散用高分子(B)、滑剤、及びその他配合剤からなる樹脂組成物のように、樹脂組成物に滑剤を配合した場合の、上記樹脂組成物の合計を100質量%としたときの該樹脂組成物に対する滑剤配合率は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。他方、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が特に好ましい。
【0067】
本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、前記酸化防止剤を配合することで、変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)との混練工程において、変性セルロース繊維の熱劣化が緩和される場合がある。前記酸化防止剤としては、特に制限されず、例えば、AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60等のアデカスタブAOシリーズ((株)ADEKA製)などのフェノール系酸化防止剤などを用いることができる。例えば、変性セルロース繊維(A)、分散用高分子(B)、酸化防止剤、及びその他配合剤からなる樹脂組成物のように、樹脂組成物に酸化防止剤を配合した場合の、上記樹脂組成物の合計を100質量%としたときの該樹脂組成物に対する酸化防止剤配合率は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。他方、10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0068】
その他、本発明の効果を損なわない範囲であれば、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物は前記変性セルロース繊維(A)と分散用高分子(B)とゴム成分(C)とを含む限りその他の成分を含んでいてもよく、例えば、前記分散用高分子(B)に該当しない135℃より高い軟化点を有する樹脂を前記分散用高分子(B)と混合して用いることもできる。そのような樹脂を前記分散用高分子(B)と混合して用いる場合、その配合量は、該樹脂と分散用高分子(B)の全量に対して、50質量%以下であることが好ましい。
【0069】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物には、変性セルロース繊維(A)、分散用高分子(B)、及びゴム成分(C)以外に必要に応じて、従来ゴム工業で使用されるその他の配合剤、例えば、カーボンブラック、シリカ等の補強剤、オイル、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤、硬化レジン、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを配合することができる。
【0070】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に配合することができるカーボンブラックとしては、特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは10m
2/g以上、より好ましくは20m
2/g以上、更に好ましくは23m
2/g以上である。また該N
2SAは、好ましくは250m
2/g以下、より好ましくは100m
2/g以下、更に好ましくは50m
2/g以下、特に好ましくは35m
2/g以下である。10m
2/g未満であると、充分な接着性やゴム強度が得られないおそれがあり、250m
2/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性が悪化し、また低燃費性も悪化する傾向がある。
【0072】
上記カーボンブラックの含有量は、ゴム成分(C)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。5質量部未満であると、充分な耐摩耗性や粘着性、ゴム強度が得られないおそれがあり、100質量部を超えると、分散性や加工性が悪化する傾向がある。
【0073】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物は、白色充填剤を含んでいてもよい。該白色充填剤としては、ゴム工業で一般的に使用されているもの、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタンなどを使用でき、低燃費性の観点から、シリカが好ましい。
【0074】
上記シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0075】
上記シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、40m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上がより好ましい。40m
2/g未満では、加硫後の破壊強度が低下する傾向がある。また、シリカのN
2SAは、300m
2/g以下が好ましく、250m
2/g以下がより好ましい。300m
2/gを超えると、低発熱性、ゴムの加工性が低下する傾向がある。
なお、本発明において、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0076】
上記白色充填剤(特に、シリカ)の含有量は、ゴム成分(C)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、良好な低燃費性が得られる。
【0077】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物がシリカを含む場合、シランカップリング剤を更に配合することが好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されず、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
上記シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。0.5質量部未満であると、シリカを良好に分散させることが難しくなるおそれがある。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えても、シリカの分散を向上させる効果が得られず、コストが不必要に増大する傾向がある。また、スコーチタイムが短くなり、混練りや押し出しでの加工性が低下する傾向がある。
【0079】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に配合することができる老化防止剤としては、ジフェニルアミン系(p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミンなど)、p−フェニレンジアミン系(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなど)などが挙げられる。
【0080】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物に配合することができる加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤などを挙げることができ、その使用量は、ゴム成分(C)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
【0081】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物には、加硫剤として硫黄を好適に配合することができる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。硫黄の含有量は、ゴム成分(C)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上である。1質量部未満では、効果が少ないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。6質量部を超えると、硬化劣化抑制効果が十分に得られないおそれがある。
【0082】
本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどのゴム用混練機で上記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0083】
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する。
【0084】
インナーライナーとは、タイヤ内腔面をなすように形成される部材であり、この部材により、空気透過量を低減して、タイヤ内圧を保持することができる。具体的には、特開2008−291091号公報の
図1、特開2007−160980号公報の
図1〜2などに示される部材である。
【0085】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、本発明における変性セルロース繊維含有ゴム組成物を、未加硫の段階でインナーライナーの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0086】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0087】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0088】
これらの実施例の一部で用いられた物性値測定法は、以下のとおりである。
(1)変性反応進行の確認
変性反応の進行はPerkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光分析装置「Spectrum one」を用いて観察した。具体的には1650〜1750cm
−1に生じるエステル結合のカルボニル炭素と酸素の伸縮振動に由来するピーク強度が変性反応の進行に伴い増強することから、定性的に確認した。
(2)酸無水物のセルロース繊維に対する付加率の測定
付加率は下記式(I)の通り、セルロース繊維の変性前後の質量変化から算出した。付加率を評価するサンプルは十分な量の溶剤で洗浄した上で測定に供した。洗浄溶剤には酸無水物の良溶媒を適宜選択して用いた。
Wp=(W−Ws)×100/Ws・・・(I)
Wp:酸無水物のセルロース繊維に対する付加率(質量%)
W:変性したセルロース繊維(変性セルロース繊維)の乾燥質量(g)
Ws:変性前のセルロース繊維の乾燥質量(g)
(3)固形分の測定
固形分の測定には赤外線水分計((株)ケット科学研究所製:「FD−620」)を用いた。
(4)酸価の測定
酸無水物の酸価は、以下の手順を用いて測定した。
酸無水物を0.5g秤量し、50mlのテトラヒドロフランに溶解させ、フェノールフタレインの1%エタノール溶液を10滴加えて酸無水物溶液を得た。得られた酸無水物溶液を撹拌しながら0.5規定の水酸化カリウムのエタノール溶液を滴下し、系内を着色させた。水酸化カリウム溶液を滴下しなくとも30秒間色が変化しなくなる時点を終点とし、終点に至るまでに加えた水酸化カリウム溶液の質量から下記式(II)を用いて酸価(mgKOH/g)を算出した。
酸価=Wk×56.1・・・(II)
Wk:終点に至るまでに加えた0.5規定の水酸化カリウム溶液の質量(g)
【0089】
[変性セルロース繊維(A−1)の製造]
容積2000mlの容器へ水を含んだ針葉樹晒クラフトパルプ(以下、NBKPと記載する)250.00g(固形分50.00g)とN-メチルピロリドン200.00gを仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を70℃とし、酸無水物(a)としてヘキサデセニルコハク酸無水物を39.75gと、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.53g投入して2時間反応させた。反応物をエタノール、酢酸、水で順次洗浄し、エタノールで溶媒置換した後に乾燥させて変性セルロース繊維A−1を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはエタノールを用いた。変性セルロース繊維A−1における、セルロース繊維に対する酸無水物(a)の付加率は59.6質量%であった。
【0090】
[酸無水基含有石油系樹脂(a−1)の合成]
容積3000mlのセパラブルフラスコにペトロタック70(東ソー(株)製、C5C9系石油樹脂:重量平均分子量1300、軟化点70℃、臭素価45Br
2g/100g)1200.00gを投入し、160℃に加熱して溶融状態とした。系内を160℃に保ち、窒素置換を行った後、無水マレイン酸221.00gとt−ブチルパーオキサイド6.00gを3時間かけて12回に分けて投入した。投入終了から2時間後に系内を180℃とし、減圧したまま2時間保持することにより未反応の無水マレイン酸を留去する精製操作を行って酸価98、軟化点96℃、重量平均分子量5800の酸無水基含有石油系樹脂a−1を得た。
【0091】
[変性セルロース繊維(A−2)の製造]
容積2000mlの容器へ水を含んだNBKP250.00g(固形分50.00g)とN−メチルピロリドン200.00gを仕込み、水分を留去して溶媒置換NBKPを得た。系内を75℃とし、酸無水物(a)として酸無水基含有石油系樹脂a−1を50.00g秤量し、エステル化触媒として炭酸カリウムを8.53gと共に投入して3時間反応させた。反応物を酢酸、水、エタノールで順次洗浄し、乾燥させて変性セルロース繊維A−2を得た。付加率を評価するサンプルの洗浄溶剤にはテトラヒドロフランを用いた。変性セルロース繊維A−2における、セルロース繊維に対する酸無水基含有石油系樹脂a−1の付加率は36質量%であった。
【0092】
[変性セルロース繊維含有樹脂組成物の製造]
(製造例1)
分散用高分子(B)としてクイントンR100(日本ゼオン(株)製、C5系石油樹脂:重量平均分子量2250、軟化点96℃)、変性セルロース繊維A−1、滑剤としてステアリン酸(日油(株)製のビーズステアリン酸つばき)、酸化防止剤としてAO−60((株)ADEKA製、フェノール系酸化防止剤)を使用し、後述の表1に示す割合に従って、二軸混練機((株)テクノベル製「KZW」、スクリュー径:15mm、L/D:45)へ投入し、溶融混練して変性セルロース繊維含有樹脂組成物X−1を得た。
【0093】
(製造例2)
分散用高分子(B)としてペトコールLX(東ソー(株)製、C9系石油樹脂:重量平均分子量1400、軟化点98℃)を使用したほかは、製造例1と同様にして、変性セルロース繊維含有樹脂組成物X−2を得た。
【0094】
(製造例3)
分散用高分子(B)としてペトコールLX(東ソー(株)製、C9系石油樹脂:重量平均分子量1400、軟化点98℃)及び酸無水基含有石油系樹脂a−1(酸価98、軟化点96℃、重量平均分子量5800)、変性セルロース繊維A−2、滑剤としてステアリン酸(日油(株)製のビーズステアリン酸つばき)、酸化防止剤としてAO−60((株)ADEKA製、フェノール系酸化防止剤)を使用し、後述の表1に示す割合に従って、二軸混練機((株)テクノベル製「KZW」、スクリュー径:15mm、L/D:45)へ投入し、溶融混練して変性セルロース繊維含有樹脂組成物X−3を得た。
【0095】
(製造例4)
分散用高分子(B)を使用せず、後述の表1に示す割合で配合したほかは、製造例1と同様にして、変性セルロース繊維含有樹脂組成物X−4を得た。
【0096】
(製造例5)
クイントンR100のみからなる樹脂組成物を樹脂組成物X−5とした。
【0097】
(製造例6)
ペトコールLXのみからなる樹脂組成物を樹脂組成物X−6とした。
【0098】
前記樹脂組成物X−1〜X−6の配合を下記表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1中、変性セルロース繊維を用いた例における「内、セルロース分」は、変性セルロース繊維中のセルロース繊維分を示し、樹脂組成物100質量%に対する含有量(質量%)で表している。また、「内、変性剤成分」は、変性セルロース繊維中の環状多塩基酸無水物(a)に由来する量を示し、樹脂組成物100質量%に対する含有量(質量%)で表している。
【0101】
表1中の製品名及び略号は以下のとおりである。
クイントンR100:日本ゼオン(株)製、C5系石油樹脂、重量平均分子量2250、軟化点96℃
ペトコールLX:東ソー(株)製、C9系石油樹脂、重量平均分子量1400、軟化点98℃
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
AO−60:(株)ADEKA製、フェノール系酸化防止剤
【0102】
<インナーライナー>
以下に、実施例、比較例で用いた各種薬品について説明する。
X−1〜X−6:製造例1〜6で得られた樹脂組成物X−1〜X−6
天然ゴム:TSR20
ブチル系ゴム:エクソンモービル社製のエクソンクロロブチル1066(塩素化ブチルゴム)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシーストV(N660、N
2SA:27m
2/g)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)(6PPD)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミ硫黄(オイル分:10%)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド[TBBS])
【0103】
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表2に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りし、混練り物を得た。次に得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
(耐空気透過性)
得られた加硫ゴム組成物からなるゴム試験片(直径90mmおよび厚さ1mm)を作製し、ASTM D−1434−75Mにしたがって、空気透過係数(cc・cm/cm
2・sec/cmHg)をそれぞれ算出した。そして、下記計算式により比較例1の空気透過係数を基準(100)としてそれぞれ指数表示した(耐空気透過性指数)。指数が大きいほど、空気を透過しにくく、耐空気透過性に優れることを示す。
(耐空気透過性指数)=(比較例1の空気透過係数)/(各配合の空気透過係数)×100
【0105】
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム引っ張り特性の求め方」に準じて、加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、加硫ゴム組成物の破断時伸び(引張伸び;EB〔%〕)及び破断時の引張強度(引張破断強度;TB〔MPa〕)を測定し、下記計算式により指数表示した(破断強度指数)。破断強度指数は大きいほど破断強度に優れ、耐久性に優れる。
(破断強度指数)=(各配合のEB×TB)/(比較例1のEB×TB)×100
【0106】
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で、加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定し、下記計算式により指数表示した(低燃費性指数)。低燃費性指数は大きいほど転がり抵抗性が低く、燃費性能(低燃費性)に優れる。
(低燃費性指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0107】
(加工性:ムーニー粘度の測定)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃でムーニー粘度を測定し、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML
1+4)/(各配合のML
1+4)×100
【0108】
【表2】
【0109】
表2中、変性セルロース繊維量(質量部)は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する変性セルロース繊維の含有量(質量部)を表している。
【0110】
表2より、セルロース繊維に疎水性基を有する炭素数が15以上の環状多塩基酸無水物(a)を付加してエステル化した変性セルロース繊維(A)、軟化点が135℃以下である分散用高分子(B)、及びゴム成分(C)を含む変性セルロース繊維含有ゴム組成物を用いた実施例1〜5では、ゴム中でのセルロース繊維の分散性が改善されるために、耐空気透過性の向上が見られ、、破断強度や低燃費性、加工性は良くなるまたは同等の結果であった。すなわち、優れた耐空気透過性及び破断特性と低いエネルギーロス(転がり抵抗特性)とを両立することができることが確認された。このことから、そのような変性セルロース繊維含有ゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する空気入りタイヤが耐空気透過性、転がり抵抗特性及び耐久性に優れることが分かる。