(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1本または引き揃えられた複数本の補強コードがゴム被覆されてなるゴムストリップを、部材の長手方向に対し傾斜させて、部材の幅方向端部で折返しつつ隙間なく巻回して形成されてなるタイヤ用補強部材であって、該ゴムストリップが、傾斜方向の異なる2層の補強層を実質的に形成するタイヤ用補強部材において、
前記ゴムストリップの巻き終わり端部に最も近い折返し部で、該ゴムストリップが、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップの下側を通ってから折り返されてなることを特徴とするタイヤ用補強部材。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のタイヤ用補強部材の一例を示す説明図を示す。図示するように、本発明のタイヤ用補強部材1は、1本または引き揃えられた複数本の補強コードがゴム被覆されてなるゴムストリップ2を、部材の長手方向に対し傾斜させて、部材の幅方向端部で折返しつつ隙間なく巻回して形成されてなる。本発明のタイヤ用補強部材1においては、ゴムストリップ2が、傾斜方向の異なる2層の補強層を実質的に形成している。
【0013】
図2に、ゴムストリップ2の最後の1周を巻回する前の状態のタイヤ用補強部材1を示す説明図を示す。
図2中の点線は、ゴムストリップ2の最後の1周が巻回される位置を示している。また、
図1中の斜線部は、ゴムストリップ2の最後の1周の巻回部分を示している。
図1,
図2に示すように、本発明のタイヤ用補強部材1においては、ゴムストリップ2の最後の1周が、ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eに最も近い折返し部Tで、ゴムストリップ2が、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップ2Aの下側を通ってから折り返されて、巻回されている。これにより、折返し部を起点とする故障の発生を抑制して、耐久性を向上できる理由は、以下の通りである。
【0014】
図3に、ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eに最も近い折返し部Tで、ゴムストリップ2が、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップ2Aの下側を通らずに折り返されてなる、従来のタイヤ用補強部材100を示す説明図を示す。この場合、ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eに最も近い折返し部Tで、ゴムストリップ2が、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップ2A、実質的には、巻き始め端部に最も近い最初に折り返された巻回済みゴムストリップ2Aの上に積層される。このため、斜線部で示す最後に折り返されたゴムストリップ2の巻回方向後方側の幅方向縁部2sに埋設された、太線で示す部分の補強コードが、折返し部Tにおいて同じ面内で曲げられることになり、すなわち、折返し部Tにおいて部材の長手方向に沿うコード部分を有することになる。これにより、この補強部材をタイヤに適用した際に、タイヤ内において内圧や転動により補強部材の幅方向縁部に生ずるタイヤ周方向引張歪により、上記補強コードがコード剛性を発揮することで、この補強コードに歪が集中して、繰り返し入力により早期に補強コードが破断することで、タイヤが破壊するものと考えられる。なお、ゴムストリップ2が引き揃えられた複数本の補強コードからなる場合、上記ゴムストリップ2の巻回方向後方側の幅方向縁部2sに埋設された補強コード以外の補強コードはすべて、折返し部Tにおいて折り返されて、すなわち、部材の厚み方向にも曲げられるため、部材の長手方向に沿うコード部分を有しない。そのため、これらの補強コードについては、部材の幅方向縁部に周方向引張歪が生じても、補強コード間のゴムが伸びることで、補強コードには歪が生じない。
【0015】
これに対し、本発明の補強部材1においては、ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eに最も近い折返し部Tで、ゴムストリップ2が、巻回済みゴムストリップ2Aの下側を通ってから折り返されているので、ゴムストリップ2内のすべての補強コードが、折返し部Tにおいて折り返されて、部材の厚み方向にも曲げられるので、部材の長手方向に沿うコード部分が存在しない。このため、この補強部材をタイヤに適用した際にも、歪の集中が生ずることはないので、早期の補強コードの破断に起因するタイヤの破壊を防止することができる。
【0016】
本発明の補強部材1は、ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eに最も近い折返し部Tで、ゴムストリップ2が、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップ2Aの下側を通ってから折り返されているものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができ、それ以外の構成については特に制限はない。
【0017】
本発明の補強部材1においては、ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eが、部材の幅方向において、補強部材1の幅方向の端部から部材の幅の1/8〜1/4の位置にあることが好ましい。ゴムストリップ2の巻き終わり端部2eが、補強部材1の幅方向の端部付近や、補強部材1の幅方向の中央部付近に存在すると、前者は転動時の接地面で、後者は内圧時に、径方向に大きくなるため、好ましくない。
【0018】
本発明の補強部材1において、ゴムストリップ2に用いる補強コードとしては、芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラー」)や、ポリケトン(PK)繊維、炭素繊維等の有機繊維コードが挙げられる。このうち炭素繊維コードとしては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等からなるコードが挙げられる。なお、有機繊維コードには、接着剤処理を施してゴムとの接着性を向上させることが好ましい。この接着剤処理は、常法に従って行うことができる。
【0019】
本発明の補強部材1を構成するゴムストリップ2を、引き揃えられた複数本の補強コードがゴム被覆されてなるものとする場合の補強コードの本数としては、例えば、2〜20本、好適には5〜10本とすることができる。また、本発明の補強部材1における補強コードの打込み数は、一般的には10〜120本/50mmとすることができるが、この範囲に限定されるものではない。さらに、ゴムストリップ2の傾斜角度は、部材の長手方向に対し、±10°〜60°とすることができ、好適には±15°〜45°とする。
【0020】
本発明の補強部材1は、乗用車用、トラック・バス用、建設車両用、二輪車用、航空機用、農業用等の種々のタイヤの補強部材として好適に用いることができる。また、タイヤとしては、空気入りタイヤ以外に限定されず、ソリッドタイヤや非空気入りタイヤの補強部材としても用いることができる。なお、本発明の補強部材1の適用部位については特に制限はない。例えば、好適には、トレッド部の大半を覆うベルトである。本発明の補強部材1をベルトに適用することで、タイヤの軽量化を図りつつ、タイヤ耐久性を向上することができる。
【0021】
本発明の補強部材1は、ベルト以外にも、例えば、トレッドの一部の局所的な補強にのみに使用してもよい。例えば、トレッド端部近傍、赤道面近傍、溝底近傍、他の傾斜ベルト層や周方向コード層を含む場合にはその端部といった局所的な補強にのみ使用することも可能である。なお、本発明の補強部材を単独で使用する他に、複数の補強部材をタイヤ幅方向に並べて用いてもよく、タイヤ幅方向にずらしながら折り返して周方向に巻き付けてトレッド部を覆う構成としてもよい。
【0022】
補強コードの被覆に用いるゴム組成物としては、特に制限はない。例えば、コーティングゴムに用いられるゴム組成物のゴムとしては、天然ゴムの他、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等の合成ゴム等の公知のゴムの全てを用いることができる。ゴム成分は1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。金属コードとの接着特性およびゴム組成物の破壊特性の観点から、ゴム成分としては、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも一方よりなるか、50質量%以上の天然ゴムを含み残部が合成ゴムであるのが好ましい。
【0023】
上記ゴム組成物には、カーボンブラックやシリカ等の充填剤、アロマオイル等の軟化剤、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメチレンメチルメラミン等のメトキシメチル化メラミン等のメチレン供与体、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。また、上記ゴム組成物の調製方法には特に制限はなく、例えば、バンバリーミキサーやロール等を用いて、ゴム成分に、上記化合物または混合物、硫黄、有機酸コバルト塩および各種配合剤を練り込んで調製すればよい。
【0024】
次に、本発明のタイヤについて説明する。
本発明のタイヤは、本発明の補強部材1が用いられてなるものであり、乗用車用、トラック・バス用、建設車両用、二輪車用、航空機用、農業用のタイヤが挙げられる。好適には、乗用車用、トラック・バス用および建設車両用のタイヤである。また、本発明のタイヤは、空気入りタイヤ以外に限定されず、ソリッドタイヤや非空気入りタイヤの補強部材としても用いることができる。
【0025】
本発明の補強部材1の適用部位については特に制限はなく、上述のとおり、例えば、トレッド部の大半を覆うベルトとして好適である。本発明の補強部材をベルトとして用いることで、タイヤの軽量化を図りつつ、タイヤ耐久性を向上することができる。これ以外にも、例えば、トレッドの一部の局所的な補強にのみ本発明の補強部材1を使用してもよく、例えば、トレッド端部近傍、赤道面近傍、溝底近傍、他の傾斜ベルト層や周方向コード層を含む場合にはその端部といった局所的な補強にのみ使用することも可能である。なお、補強部材1を単独で使用する他に、複数の補強部材1をタイヤ幅方向に並べてもよく、タイヤ幅方向にずらしながら折り返して周方向に巻き付けてトレッド部を覆う構成としてもよい。
【0026】
図4は、乗用車用タイヤの一構成例を示すタイヤ幅方向断面図である。図示する乗用車用タイヤ10は、接地部を形成するトレッド部11と、このトレッド部11の両側部に連続してタイヤ半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部12と、各サイドウォール部12の内周側に連続するビード部13と、を備えている。トレッド部11、サイドウォール部12およびビード部13は、一方のビード部13から他方のビード部13にわたってトロイド状に延びる一枚のカーカスプライからなるカーカス14により補強されている。なお、図示する乗用車用タイヤ10においては、一対のビード部13にはそれぞれビードコア15が埋設され、カーカス14は、このビードコア15の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されている。
【0027】
本発明の乗用車用タイヤ10においては、カーカス14は従来構造を含めて種々の構成を採用することができ、ラジアル構造、バイアス構造のいずれであってもよい。カーカス14としては、有機繊維コード層からなるカーカスプライを1〜2層とすることが好ましい。また、タイヤ径方向におけるカーカス14の最大幅位置は、例えば、ビード部13側に近づけてもよく、トレッド部11側に近づけてもよい。例えば、カーカス14の最大幅位置は、ビードベース部からタイヤ径方向外側に、タイヤ高さ対比で50%〜90%の範囲に設けることができる。また、カーカス14は、図示するように、1対のビードコア15間を途切れずに延びる構造が一般的であり好ましいが、ビードコア15から延びてトレッド部11付近で途切れるカーカスプライ片を一対用いて形成することもできる(図示せず)。
【0028】
また、カーカス14の折り返し部は、さまざまな構造を採用することができる。例えば、カーカス14の折り返し端をビードフィラー16の上端よりもタイヤ径方向内側に位置させることができ、また、カーカス14の折り返し端をビードフィラー16の上端やタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側まで延ばしてもよく、この場合、ベルト17のタイヤ幅方向端よりもタイヤ幅方向内側まで伸ばすこともできる。さらに、カーカスプライが複数層の場合には、カーカス14の折り返し端のタイヤ径方向位置を異ならせることもできる。また、カーカス14の折り返し部を存在させずに、複数のビードコア部材で挟み込んだ構造としてもよく、ビードコア15に巻きつけた構造を採用することもできる。なお、カーカス14の打ち込み数としては、一般的には10〜80本/50mmの範囲であるが、これに限定されるものではない。
【0029】
図示する乗用車用タイヤ10においては、カーカス14のクラウン領域のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層17a、17bからなるベルト17が配設されている。本発明においては、2層のベルト層17a、17bからなるベルト17に代えて、補強部材1を配設することができる。
図5に、本発明の乗用車用タイヤの一構成例を示すタイヤ幅方向部分断面図を示す。すなわち、本発明のタイヤにおいては、2層のベルト層17a、17bに代えて、本発明の補強部材1における2層の補強層が、タイヤ周方向に対し所定の角度をなすコード層が層間で互いに交錯する交錯ベルト層となる。
【0030】
本発明の乗用車用タイヤ10においては、本発明の補強部材1からなるベルト層以外にも、さらに、他のベルト層(図示せず)を備えていてもよい。他のベルト層は、補強コードのゴム引き層からなり、タイヤ周方向に対し所定の角度をなす傾斜ベルトとすることができる。他のベルト層は、補強部材1のタイヤ径方向外側に配置しても、内側に配置してもよい。傾斜ベルト層の補強コードとしては、例えば、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も一般的であるが、有機繊維コードを用いてもよい。スチールコードは鉄を主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むスチールフィラメントからなるものを用いることができる。
【0031】
スチールコードとしては、複数のフィラメントを撚り合せたコード以外にも、スチールモノフィラメントコードを用いてもよい。なお、スチールコードの撚り構造も種々の設計が可能であり、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するスチールコード同士の距離も様々なものが使用できる。また、異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを採用することもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。なお、他のベルト層の補強コードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10°以上とすることが好ましい。また、他のベルト層を設ける場合、最も幅の大きい最大幅傾斜ベルト層の幅は、トレッド幅の90%〜115%とするのが好ましく、特に100%〜105%が好ましい。
【0032】
また、本発明の乗用車用タイヤ10においては、本発明の補強部材1および他のベルト層のタイヤ径方向外側に、周方向コード層(図示せず)を設けてもよい。
【0033】
また、本発明の乗用車用タイヤにおいては、本発明の補強部材1のタイヤ径方向外側にベルト補強層18を設けてもよい。ベルト補強層18としては、補強部材1の全幅以上にわたって配置されるキャップ層18aや、補強部材1の両端部を覆う領域に配置されるレイヤー層18bが挙げられる。キャップ層18aおよびレイヤー層18aはそれぞれ単独で設けてもよく、併用してもよい。または、2層以上のキャップ層や2層以上のレイヤー層の組み合わせであってもよい。
【0034】
キャップ層18aおよびレイヤー層18bの補強コードとしては、種々の材質が採用可能であり、代表的な例としては、レーヨン、ナイロン、ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ガラス繊維、炭素繊維、スチール等が挙げられる。軽量化の点から、有機繊維コードが特に好ましい。補強コードはモノフィラメントコードや、複数のフィラメントを撚り合せたコード、さらには異なる材質のフィラメントを撚り合せたハイブリットコードを採用することもできる。また、補強コードには、破断強度を高めるために波状のコードを用いてもよい。同様に破断強度を高めるために、例えば、破断時の伸びが4.5〜5.5%のハイエロンゲーションコードを用いてもよい。
【0035】
本発明の乗用車用タイヤ10にキャップ層18aを設ける場合、キャップ層18aの幅は、傾斜ベルト層よりも幅広であってもよく、幅狭であってもよい。例えば、傾斜ベルト層のうち幅の最も大きい最大幅傾斜ベルト層の90%〜110%の幅とすることができる。キャップ層およびレイヤー層の打ち込み数は、一般的には20〜80本/50mmの範囲であるが、この範囲に限定されるものではない。例えば、キャップ層18aにおいては、また、タイヤ幅方向に剛性・材質・層数・打ち込み密度等の分布を持たせることもでき、例えば、タイヤ幅方向端部のみ層数を増やすこともでき、一方でセンター部のみ層数を増やすこともできる。
【0036】
キャップ層18aおよびレイヤー層18bは、スパイラル層として構成することが製造の観点から特に有利である。この場合、平面内において互いに平行に配列された複数本のコアワイヤを、上記平行配列を維持したままラッピングワイヤによって束ねた、ストリップ状のコードによって形成してもよい。
【0037】
本発明の乗用車用タイヤ10においては、トレッド部11の形状としては、狭幅大径サイズの乗用車用タイヤの場合には、タイヤ幅方向断面にて、タイヤ赤道面CLにおけるトレッド表面上の点Pを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm1とし、接地端Eを通りタイヤ幅方向に平行な直線をm2として、直線m1と直線m2とのタイヤ径方向の距離を落ち高LCRとし、タイヤのトレッド幅をTWとするとき、比LCR/TWを0.045以下とすることが好ましい。LCR/TWを上記の範囲とすることにより、タイヤのクラウン部がフラット化(平坦化)し、接地面積が増大して、路面からの入力(圧力)を緩和して、タイヤ径方向の撓み率を低減し、タイヤの耐久性および耐磨耗性を向上させることができる。また、トレッド端部がなめらかであることが好ましい。
【0038】
また、トレッドパターンとしては、フルラグパターン、リブ状陸部主体のパターン、ブロックパターン、非対称パターンでもよく、回転方向指定であってもよい。
【0039】
フルラグパターンとしては、赤道面近傍から接地端までタイヤ幅方向に延びる幅方向溝を有するパターンとしてもよく、この場合に周方向溝を含まなくてもよい。このような横溝が主体のパターンは、特に雪上性能を効果的に発揮することができる。
【0040】
リブ状陸部主体パターンは、一本以上の周方向溝もしくは周方向溝とトレッド端部によりタイヤ幅方向を区画された、リブ状陸部を主体とするパターンである。ここで、リブ状陸部とはタイヤ幅方向に横断する横溝を有さずにタイヤ周方向に延びる陸部をいうが、リブ状陸部はサイプやリブ状陸部内で終端する横溝を有していてもよい。ラジアルタイヤは特に高内圧使用下において高接地圧となるため、周方向剪断剛性を増加させることによりウェット路面上での接地性が向上するためと考えられる。リブ状陸部を主体とするパターンの例としては、赤道面を中心とするトレッド幅の80%の領域においてリブ状陸部のみからなるトレッドパターン、すなわち、横溝を有さないパターンとすることができる。このようなパターンは、この領域における排水性能が特にウェット性能への寄与が大きい。
【0041】
ブロックパターンは、周方向溝と幅方向溝によって区画されたブロック陸部を有するパターンであり、ブロックパターンのタイヤは、基本的な氷上性能および雪上性能に優れている。
【0042】
非対称パターンは、赤道面を境として左右のトレッドパターンが非対称のパターンである。例えば、装着方向指定のタイヤの場合には、赤道面を境とした車両装着方向内側と車両装着方向外側のタイヤ半部においてネガティブ率に差を設けたものでもよく、赤道面を境とした車両装着方向内側と車両装着方向外側のタイヤ半部において、周方向溝の数が異なる構成のものであってもよい。
【0043】
トレッドゴムとしては、特に制限はなく、従来から用いられているゴムを用いることができ、発泡ゴムを用いてもよい。また、トレッドゴムはタイヤ径方向に異なる複数のゴム層で形成されていてもよく、例えば、いわゆるキャップ・ベース構造であってもよい。複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚みの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。
【0044】
さらに、トレッドゴムはタイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていてもよく、いわゆる、分割トレッド構造でもよい。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の長さの比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向溝近傍のみ、トレッド端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。
【0045】
本発明の乗用車用タイヤ10においては、サイドウォール部12の構成についても既知の構造を採用することができる。例えば、タイヤ最大幅位置は、ビードベース部からタイヤ径方向外側に、タイヤ高さ対比で50%〜90%の範囲に設けることができる。また、リムガードを有する構造としてもよい。本発明の乗用車用タイヤ10においては、リムフランジと接触する凹部13aが形成されていることが好ましい。
【0046】
また、ビードコア15は、円形や多角形状など、さまざまな構造を採用することができる。なお、上述のとおり、ビード部13としては、カーカス14をビードコア15に巻きつける構造のほか、カーカス14を複数のビードコア部材で挟みこむ構造としてもよい。図示する乗用車用タイヤ10においては、ビードコア15のタイヤ半径方向外側に、ビードフィラー16が配置されているが、本発明の乗用車用タイヤ10においては、ビードフィラー16は設けなくてもよい。
【0047】
本発明の乗用車用タイヤにおいては、図示はしないが、タイヤの最内層には通常インナーライナーが配置されていてもよい。インナーライナーは、ブチルゴムを主体としたゴム層のほか、樹脂を主成分とするフィルム層によって形成することができる。また、図示はしないが、タイヤ内面には、空洞共鳴音を低減するために、多孔質部材を配置したり、静電植毛加工を行うこともできる。さらに、タイヤ内面には、パンク時の空気の漏れを防ぐためのシーラント部材を備えることもできる。
【0048】
乗用車用タイヤ10は、特に用途は限定されない。サマー用、オールシーズン用、冬用といった用途のタイヤに適用することができる。また、サイドウォール部12に三日月型の補強ゴム層を有するサイド補強型ランフラットタイヤや、スタッドタイヤといった特殊な構造の乗用車用タイヤに使用することも可能である。
【0049】
次に、本発明のトラック・バス用タイヤについて説明する。
図6は、トラック・バス用タイヤの一構成例を示すタイヤ幅方向断面図である。図示するトラック・バスタイヤ20においては、接地部を形成するトレッド部21と、このトレッド部21の両側部に連続してタイヤ半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部22と、各サイドウォール部22の内周側に連続するビード部23と、を備えている。トレッド部21、サイドウォール部22およびビード部23は、一方のビード部23から他方のビード部23にわたってトロイド状に延びる一枚のカーカスプライからなるカーカス24により補強されている。なお、図示するトラック・バス用タイヤ20においては、一対のビード部23にはそれぞれビードコア25が埋設され、カーカス24は、このビードコア25の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されている。
【0050】
本発明のトラック・バス用タイヤ20においては、カーカス24は従来構造を含めて種々の構成を採用することができ、ラジアル構造、バイアス構造のいずれであってもよい。カーカス24としては、スチールコード層からなるカーカスプライを1〜2層とすることが好ましい。また、例えば、タイヤ径方向におけるカーカス最大幅位置は、ビード部23側に近づけてもよく、トレッド部21側に近づけてもよい。例えば、カーカス24の最大幅位置は、ビードベース部からタイヤ径方向外側に、タイヤ高さ対比で50%〜90%の範囲に設けることができる。また、カーカス24は、図示するように、1対のビードコア25間を途切れずに延びる構造が一般的であり好ましいが、ビードコア25から延びてトレッド部21付近で途切れるカーカス片を一対用いて形成することもできる。
【0051】
また、カーカス24の折り返し部は、さまざまな構造を採用することができる。例えば、カーカス24の折り返し端をビードフィラー26の上端よりもタイヤ径方向内側に位置させることができ、また、カーカス折り返し端をビードフィラー26の上端やタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側まで延ばしてもよく、この場合、ベルト27のタイヤ幅方向端よりもタイヤ幅方向内側まで延ばすこともできる。さらに、カーカスプライが複数層の場合には、カーカス24の折り返し端のタイヤ径方向位置を異ならせることもできる。また、カーカス24の折り返し部を存在させずに、複数のビードコア部材で挟み込んだ構造としてもよく、ビードコア26に巻きつけた構造を採用することもできる。なお、カーカス24の打ち込み数としては、一般的には10〜60本/50mmの範囲であるが、これに限定されるものではない。
【0052】
図示するトラック・バス用タイヤ20においては、カーカス24のクラウン領域のタイヤ径方向外側に、4層のベルト層27a〜27dからなるベルト27が配設されている。本発明においては、4層のベルト層27a〜27dのうちタイヤ径方向内側に位置する第1ベルト層27aおよび第2ベルト層27b、または、中間層の第2ベルト層27bおよび第3ベルト層27cに代えて、補強部材1を配設することができる。
図7に、本発明のトラック・バス用タイヤの一構成例を示すタイヤ幅方向部分断面図を示す。
【0053】
本発明のトラック・バス用タイヤ20においては、本発明の補強部材からなるベルト層以外にも、図示するように、さらに、他のベルト層(図示例では第3ベルト層および第4ベルト層)を備えていてもよい。他のベルト層は、補強コードのゴム引き層からなり、タイヤ周方向に対し所定の角度をなす傾斜ベルトとすることができる。傾斜ベルト層の補強コードとしては、例えば、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も一般的であるが、有機繊維コードを用いてもよい。スチールコードは鉄を主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むスチールフィラメントからなるものを用いることができる。
【0054】
スチールコードとしては、複数のフィラメントを撚り合せたコード以外にも、スチールモノフィラメントコードを用いてもよい。なお、スチールコードの撚り構造も種々の設計が可能であり、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するスチールコード同士の距離も様々なものが使用できる。また、異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを採用することもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。なお、他のベルト層の補強コードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10°以上とすることが好ましい。また、他のベルト層を設ける場合、最も幅の大きい最大幅傾斜ベルト層の幅は、トレッド幅の65%〜100%とすることが好ましく、特に70%〜95%が好ましい。なお、ベルト27端部のタイヤ径方向内側には、ベルトアンダークッションゴム29を設けることが好ましい。これにより、ベルト27端部の歪・温度を低減して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0055】
また、本発明のトラック・バス用タイヤ20においては、本発明の補強部材1および他のベルト層のタイヤ径方向外側に、周方向コード層(図示せず)を設けてもよい。
【0056】
本発明のトラック・バス用タイヤ20においては、サイドウォール部22の構成についても既知の構造を採用することができる。例えば、タイヤ最大幅位置は、ビードベース部からタイヤ径方向外側に、タイヤ高さ対比で50%〜90%の範囲に設けることができる。本発明のトラック・バス用タイヤ20においては、乗用車用タイヤとは異なり、リムフランジと接触する凹部が形成されずに、タイヤ幅方向に凸となる滑らかな曲線として形成されていることが好ましい。
【0057】
また、ビードコア25は、円形や多角形状など、さまざまな構造を採用することができる。なお、上述のとおり、ビード部22としては、カーカス24をビードコア25に巻きつける構造のほか、カーカス24を複数のビードコア部材で挟みこむ構造としてもよい。図示するトラック・バス用タイヤ20においては、ビードコア25のタイヤ半径方向外側にビードフィラー26が配置されているが、このビードフィラー26は、タイヤ径方向に分かれた複数のゴム部材から構成されていてもよい。
【0058】
本発明のトラック・バス用タイヤ20においては、トレッドパターンとしては、リブ状陸部主体のパターン、ブロックパターン、非対称パターンでもよく、回転方向指定であってもよい。
【0059】
リブ状陸部主体パターンは、一本以上の周方向溝もしくは周方向溝とトレッド端部によりタイヤ幅方向を区画された、リブ状陸部を主体とするパターンである。ここでリブ状陸部とはタイヤ幅方向に横断する横溝を有さずにタイヤ周方向に延びる陸部をいうが、リブ状陸部はサイプやリブ状陸部内で終端する横溝を有していてもよい。ラジアルタイヤは特に高内圧使用下において高接地圧となるため、周方向剪断剛性を増加させることによりウェット路面上での接地性が向上するためと考えられる。リブ状陸部を主体とするパターンの例としては、赤道面を中心とするトレッド幅の80%の領域においてリブ状陸部のみからなるトレッドパターン、すなわち、横溝を有さないパターンとすることができる。このようなパターンは、この領域における排水性能が特にウェット性能への寄与が大きい。
【0060】
ブロックパターンは、周方向溝と幅方向溝によって区画されたブロック陸部を有するパターンであり、ブロックパターンのタイヤは、基本的な氷上性能および雪上性能に優れている。
【0061】
非対称パターンは、赤道面を境として左右のトレッドパターンが非対称のパターンである。例えば、装着方向指定のタイヤの場合には、赤道面を境とした車両装着方向内側と車両装着方向外側のタイヤ半部においてネガティブ率に差を設けたものでもよく、赤道面を境とした車両装着方向内側と車両装着方向外側のタイヤ半部において、周方向溝の数が異なる構成のものであってもよい。
【0062】
トレッドゴムとしては、特に制限はなく、従来から用いられているゴムを用いることができる。また、トレッドゴムはタイヤ径方向に異なる複数のゴム層で形成されていてもよく、例えば、いわゆるキャップ・ベース構造であってもよい。複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚みの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。
【0063】
さらに、トレッドゴムはタイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていてもよく、いわゆる、分割トレッド構造でもよい。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の長さの比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向溝近傍のみ、トレッド端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。また、トレッド部は、タイヤ幅方向の端部に角部21aが形成されていることが好ましい。
【0064】
次に、本発明の建設車両用タイヤについて説明する。
図8は、建設車両用タイヤの一構成例を示すタイヤ幅方向断面図である。図示する建設車両用タイヤ30においては、接地部を形成するトレッド部31と、このトレッド部31の両側部に連続してタイヤ半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部32と、各サイドウォール部32の内周側に連続するビード部33と、を備えている。トレッド部31、サイドウォール部32およびビード部33は、一方のビード部33から他方のビード部33にわたってトロイド状に延びる一枚のカーカスプライからなるカーカス34により補強されている。なお、図示する建設車両タイヤ30においては、一対のビード部33にはそれぞれビードコア35が埋設され、カーカス34は、このビードコア35の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されている。
【0065】
本発明の建設車両用タイヤにおいては、カーカス34は従来構造を含めて種々の構成を採用することができ、ラジアル構造、バイアス構造のいずれであってもよい。カーカス34としては、スチールコード層からなるカーカスプライを1〜2層とすることが好ましい。また、例えば、タイヤ径方向におけるカーカス最大幅位置は、ビード部33側に近づけてもよく、トレッド部31側に近づけてもよい。例えば、カーカス34の最大幅位置は、ビードベース部からタイヤ径方向外側に、タイヤ高さ対比で50%〜90%の範囲に設けることができる。また、カーカス34は、図示するように、1対のビードコア35間を途切れずに延びる構造が一般的であり好ましいが、ビードコア35から延びてトレッド部31付近で途切れるカーカス片を一対用いて形成することもできる。
【0066】
また、カーカス34の折り返し部は、さまざまな構造を採用することができる。例えば、カーカス34の折り返し端をビードフィラー36の上端よりもタイヤ径方向内側に位置させることができ、また、カーカス34の折り返し端をビードフィラー36の上端やタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側まで伸ばしてもよく、この場合、ベルト37のタイヤ幅方向端よりもタイヤ幅方向内側まで伸ばすこともできる。さらに、カーカスプライが複数層の場合には、カーカス34の折り返し端のタイヤ径方向位置を異ならせることもできる。また、カーカス34の折り返し部を存在させずに、複数のビードコア部材で挟み込んだ構造としてもよく、ビードコア35に巻きつけた構造を採用することもできる。なお、カーカス34の打ち込み数としては、一般的には10〜60本/50mmの範囲であるが、これに限定されるものではない。
【0067】
図示する建設車両用タイヤ30においては、カーカス34のクラウン領域のタイヤ径方向外側に、6層のベルト層37a〜37fからなるベルト37が配設されている。一般に、建設車両用タイヤは、4層または6層のベルト層からなり、6層のベルト層からなる場合は、第1ベルト層37aと第2ベルト層37bとが内側交錯ベルト群を、第3ベルト層37cと第4ベルト層37dとが中間交錯ベルト層群を、第5ベルト層37eと第6ベルト層37fとが外側交錯ベルト層群を、それぞれ形成している。本発明の建設車両用タイヤにおいては、内側交錯ベルト層群、中間交錯ベルト層群および外側交錯ベルト層群のうち少なくとも1つが、本発明の補強部材で置き換えられた構造を有している。なお、トレッド幅方向において、内側交錯ベルト群の幅は、トレッド踏面の幅の25%以上70%以下、中間交錯ベルト群の幅は、トレッド踏面の幅の55%以上90%以下、外側交錯ベルト群の幅は、トレッド踏面の幅の60%以上110%以下とすることができる。また、トレッド面視において、カーカスコードに対する内側交錯ベルト群のベルトコードの傾斜角度は70°以上85°以下、カーカスコードに対する中間交錯ベルト群のベルトコードの傾斜角度は50°以上75°以下、カーカスコードに対する外側交錯ベルト群のベルトコードの傾斜角度は50°以上85°以下とすることができる。
【0068】
図9に、本発明の建設車両用タイヤの一構成例を示すタイヤ幅方向部分断面図を示す。図示する建設車両用タイヤ30においては、内側交錯ベルト群を構成する第1ベルト層37aおよび第2ベルト層37bに代えて、本発明の補強部材1が配設されている。すなわち、本発明の補強部材1が、タイヤ周方向に対し所定の角度をなすコード層が層間で互いに交錯する交錯ベルトとなる。図示例においては、内側交錯ベルト層群を本発明の補強材1と置き換えているが、本発明の建設車両用体タイヤはこれに限られるものではない。中間交錯ベルト層群を本発明の補強部材1に替えてもよく、外側交錯ベルト層群を本発明の補強部材1に替えてもよい。なお、4層のベルト層からなる建設車両用タイヤの場合は、第1ベルト層および第2ベルト層を本発明の補強部材と置き換えるか、第3ベルト層および第4ベルト層を本発明の補強部材と置き換えればよい。
【0069】
本発明の建設車両用タイヤ30においては、本発明の補強部材1からなるベルト層以外にも、図示するように、さらに、他のベルト層(第4〜6ベルト層)を備えていてもよい。他のベルト層は、補強コードのゴム引き層からなり、タイヤ周方向に対し所定の角度をなす傾斜ベルトとすることができる。傾斜ベルト層の補強コードとしては、例えば、金属コード、特にスチールコードを用いるのが最も一般的であるが、有機繊維コードを用いてもよい。スチールコードは鉄を主成分とし、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、銅、クロムなど種々の微量含有物を含むスチールフィラメントからなるものを用いることができる。
【0070】
スチールコードとしては、複数のフィラメントを撚り合せたコード以外にも、スチールモノフィラメントコードを用いてもよい。なお、スチールコードの撚り構造も種々の設計が可能であり、断面構造、撚りピッチ、撚り方向、隣接するスチールコード同士の距離も様々なものが使用できる。また、異なる材質のフィラメントを撚り合せたコードを採用することもでき、断面構造としても特に限定されず、単撚り、層撚り、複撚りなど様々な撚り構造を取ることができる。なお、他のベルト層の補強コードの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して0°以上とすることが好ましい。また、他のベルト層を設ける場合、最も幅の大きい最大幅傾斜ベルト層の幅は、トレッド幅の65%〜100%とするのが好ましく、特に70%〜95%が好ましい。なお、ベルト37端部のタイヤ径方向内側には、ベルトアンダークッションゴム39を設けることが好ましい。これにより、ベルト37端部の歪・温度を低減して、タイヤ耐久性を向上させることができる。
【0071】
本発明の建設車両用タイヤ30においては、サイドウォール部32の構成についても既知の構造を採用することができる。例えば、タイヤ最大幅位置は、ビードベース部からタイヤ径方向外側に、タイヤ高さ対比で50%〜90%の範囲に設けることができる。本発明の建設車両用タイヤ30においては、リムフランジと接触する凹部が形成されていることが好ましい。
【0072】
また、ビードコア35は、円形や多角形状など、さまざまな構造を採用することができる。なお、上述のとおり、ビード部33としては、カーカス34をビードコア35に巻きつける構造のほか、カーカス34を複数のビードコア部材で挟みこむ構造としてもよい。図示する建設車両用タイヤ30においては、ビードコア35のタイヤ半径方向外側にビードフィラー36が配置されているが、このビードフィラー36は、タイヤ径方向に分かれた複数のゴム部材から構成されていてもよい。
【0073】
本発明の建設車両用タイヤ30においては、トレッドパターンとしては、ラグパターン、ブロックパターン、非対称パターンでもよく、回転方向指定であってもよい。
【0074】
ラグパターンとしては、赤道面近傍から接地端までタイヤ幅方向に延びる幅方向溝を有するパターンとしてもよく、この場合に周方向溝を含まなくてもよい。
【0075】
ブロックパターンは、周方向溝と幅方向溝によって区画されたブロック陸部を有するパターンである。特に建設車両用タイヤの場合には、耐久性の観点からブロックを大きくすることが好ましく、例えば、ブロックのタイヤ幅方向に測った幅はトレッド幅の25%以上50%以下とすることが好ましい。
【0076】
非対称パターンは、赤道面を境として左右のトレッドパターンが非対称のパターンである。例えば、装着方向指定のタイヤの場合には、赤道面を境とした車両装着方向内側と車両装着方向外側のタイヤ半部においてネガティブ率に差を設けたものでもよく、赤道面を境とした車両装着方向内側と車両装着方向外側のタイヤ半部において、周方向溝の数が異なる構成のものであってもよい。
【0077】
トレッドゴムとしては、特に制限はなく、従来から用いられているゴムを用いることができる。また、トレッドゴムはタイヤ径方向に異なる複数のゴム層で形成されていてもよく、例えば、いわゆるキャップ・ベース構造であってもよい。複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ径方向の厚みの比率は、タイヤ幅方向に変化していてもよく、また周方向溝底のみ等をその周辺と異なるゴム層とすることもできる。
【0078】
さらに、トレッドゴムはタイヤ幅方向に異なる複数のゴム層で形成されていてもよく、いわゆる、分割トレッド構造でもよい。上記の複数のゴム層としては正接損失、モジュラス、硬度、ガラス転移温度、材質等が異なっているものを使用することができる。また、複数のゴム層のタイヤ幅方向の長さの比率は、タイヤ径方向に変化していてもよく、また周方向溝近傍のみ、トレッド端近傍のみ、ショルダー陸部のみ、センター陸部のみといった限定された一部の領域のみをその周囲とは異なるゴム層とすることもできる。
【0079】
建設車両用タイヤ30においては、トレッド部31のゴムゲージは耐久性の観点から厚い方が好ましく、タイヤ外径の1.5%以上4%以下が好ましく、より好ましくは2%以上3%以下である。また、トレッド部31の接地面に対する溝面積の割合(ネガティブ率)は、20%以下が好ましい。これは、建設車両用タイヤ30は、低速かつ乾燥地域での使用が主体であるため、排水性のためネガティブ率を大きくする必要が無いためである。建設車両用タイヤのタイヤサイズとしては、例えば、リム径が20インチ以上、特に大型とされるものはリム径が40インチ以上のものである。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1)
引き揃えられた6本の補強コード(カーボンファイバー,コード径4000dtex/3)がゴム被覆されてなるゴムストリップ(打込み数38本/50mm)を、部材の長手方向に対し±20°の方向に傾斜させて、部材の幅方向端部で折返しつつ隙間なく巻回することで、傾斜方向の異なる2層の補強層を有する幅100mmのタイヤ用補強部材を作製した。この補強部材においては、
図1に示すように、ゴムストリップの巻き終わり端部に最も近い折返し部で、ゴムストリップが、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップの下側を通ってから折り返されていた。
【0081】
また、得られた補強部材を、カーカスのクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置して、タイヤサイズ155/65R13の乗用車用空気入りタイヤを作製した。
【0082】
(比較例1)
図3に示すように、ゴムストリップの巻き終わり端部に最も近い折返し部で、ゴムストリップを、先行して巻回された傾斜方向の異なる巻回済みゴムストリップの下側を通らせずに、そのまま折り返した以外は実施例1と同様にして、タイヤ用補強部材を作製した。また、得られた補強部材を、カーカスのクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置して、実施例1と同様にして、乗用車用空気入りタイヤを作製した。
【0083】
(比較例2)
上記補強部材に代えて、スチールコード(1×3×0.33mmφ)のゴム引き層からなる2層の交錯する傾斜ベルト(打込み数34本/50mm,幅100mm)を配設した以外は実施例1と同様にして、乗用車用空気入りタイヤを作製した。
【0084】
<引張疲労試験>
得られた各補強部材について、引張疲労試験を行った。測定は、引張疲労試験機で行い、作製した補強部材の長手方向の長さ600mmに対し、最小2%、最大3.3%の歪を繰り返し負荷して、補強コードの破断が生ずるまでの回数を測定した。得られた結果は、比較例1を100とする指数で示した。この値が大きいほど、引張疲労性に優れることを示す。その結果を、下記の表1に示す。
【0085】
<軽量性>
得られた各タイヤの重量を測定して、比較例2を100とする指数で示した。この値が小さいほど、軽量であることを示す。その結果を、下記の表1に示す。
【0086】
<タイヤ耐久試験>
得られた各タイヤを適用リムに組み、規定内圧を充填し、規定荷重を負荷した時速60km/hで5万km走行させた。走行後に、タイヤを解剖して補強部材における補強コードの破断の有無を確認した。その結果を、下記の表1に示す。
【0087】
なお、ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation)STANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等に規定されたリムをいい、「規定内圧」とは、タイヤを適用リムに装着し、適用サイズのタイヤにおけるJATMA等の規格のタイヤ最大負荷能力に対応する内圧(最高空気圧)をいい、「規定荷重」とは、上記規格で、タイヤに負荷することが許容される最大の質量をいう。
【0088】
【表1】
【0089】
上記表中に示すように、本発明に係る実施例1においては、補強部材としての耐久性に優れるとともに、タイヤに適用した際の軽量性と耐久性とが良好に両立されていることが確かめられた。