特許第6423610号(P6423610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6423610-ゴム組成物および空気入りタイヤ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6423610
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20181105BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20181105BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20181105BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/22
   C08K5/54
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-83784(P2014-83784)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-203079(P2015-203079A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年12月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】三島 遼
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−248450(JP,A)
【文献】 特表2008−537973(JP,A)
【文献】 特開平08−059894(JP,A)
【文献】 特開平08−059893(JP,A)
【文献】 特開2008−169292(JP,A)
【文献】 特表2005−513231(JP,A)
【文献】 特開2007−169317(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/132461(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103483647(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103483646(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102702583(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102417617(CN,A)
【文献】 特開2007−217543(JP,A)
【文献】 特開2006−176579(JP,A)
【文献】 特開2006−219530(JP,A)
【文献】 特開2006−219529(JP,A)
【文献】 特開2015−044918(JP,A)
【文献】 特開平11−217004(JP,A)
【文献】 特開2005−075888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、
酸化マグネシウム
シランカップリング剤と、
フェノール樹脂と、
を含有するゴム組成物(シリカを含むゴム組成物を除く)を、トレッドゴムに使用したことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物における、前記シランカップリング剤の総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜15質量部である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物における、前記フェノール樹脂の配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜100質量部である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加速性能およびブレーキ性能などの運動性能が高い空気入りタイヤの必要性が高まっている。このような高性能の空気入りタイヤを得るためには、ドライグリップ性能などのグリップ性能を高めることが有効な手法の一つである。
【0003】
従来、高グリップ性能を得るために、ある種の樹脂を添加することによりゴム−路面間の凝着を高めてグリップ性能を向上させる方法などが知られている。
一般的に、グリップ性能が高い樹脂ほど、製造工程中に存在する金属ミキサーおよび金属ロールとの密着性が高くなり、工場作業性を阻害する傾向があった。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1では、ゴム組成物に特定の樹脂および金属塩を配合することで、破壊特性や耐摩耗性などのタイヤの諸性能や工場作業性を損なうことなく、従来のものと比較してグリップ性能を大幅に改良することができるタイヤを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者が検討したところ、以下のことが判明した。
すなわち、(i)ゴム組成物中のゴム成分は非極性であり、一方、金属塩が極性であるため、金属塩がゴム中に分散しにくく、金属塩がゴムから分離しやすい。(ii)さらに、金属塩がゴムと分離しようとするため、金属塩の一部がゴム表面に露出することがある。そして、(iii)金属塩の一部がトレッドゴムのジョイント部分に露出すると、金属塩の露出した部分は、ゴム同士が接着しにくくなる。
【0007】
このため、本発明者は、特定の樹脂および金属塩を含むゴム組成物をトレッドゴムなどのゴム部材に使用した空気入りタイヤにおいて、ゴムの剥離抗力(ゴムのタック性)を高めることによって、当該ゴム組成物を使用したゴムのジョイント部分全体の接着力をより高められることを見出した。
【0008】
本発明は、空気入りタイヤの高グリップ性能および高剥離抗力を同時に得ることができるゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、高グリップ性能および高剥離抗力を同時に備えた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分と、下記一般式(I)で表わされる少なくとも1種の化合物と、シランカップリング剤と、を含有することを特徴とする。
MX (I)
(式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムおよびマンガンから選択される金属のカチオンであり、Xは、当該カチオンのカウンターイオンである。)
この構成によれば、空気入りタイヤの高グリップ性能および高剥離抗力を同時に得ることができるゴム組成物を提供することができる。
【0010】
本発明に係るゴム組成物は、前記シランカップリング剤が、下記一般式(II)で表わされるシランカップリング剤であることが好ましい。
xRyRzSi−R−S−CO−R (II)
(式中、Rは、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−、RN−、および−(OSiR(OSiR)から選択される基であり;RおよびRは、それぞれ、独立して炭素原子数が1〜18個の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、およびアリール基から選択される基であり、nは0〜10であり;
は、水素原子、ならびに炭素原子数が1〜18個の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基およびアリール基から選択される原子または基であり;
は、−[O(RO)0.5−で表される基であり、Rは、炭素原子数が1〜18個の、アルキレン基およびシクロアルキレン基から選択される基であり、mは、1〜4であり;
x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1であり;
は、炭素原子数が1〜18個の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基およびアラルキレン基から選択される基であり;
は、炭素原子数が1〜18個の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基から選択される基である。)
これにより、ゴム練りの作業性(工場作業性)を損なわずに、より高い剥離抗力を得ることができる。
【0011】
本発明に係るゴム組成物は、前記シランカップリング剤の総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましい。
これにより、高グリップ性能および高剥離抗力を得やすい。
【0012】
本発明に係るゴム組成物は、さらに、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂および変性されたこれらの樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂Rを含有することが好ましい。
これにより、グリップ性能をより向上させることができる。
【0013】
本発明に係るゴム組成物は、前記変性された、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂およびジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂が、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル結合(−COO−)、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基、ニトリル基、スルホン基、チオール基およびスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物により変性された樹脂であることが好ましい。
これにより、グリップ性能をより向上させることができる。
【0014】
本発明に係るゴム組成物は、前記樹脂Rの総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましい。
これにより、高グリップ性能および高剥離抗力を得やすく、また、低温領域でのグリップ性能および工場作業性も良好となる。
【0015】
本発明に係るゴム組成物は、前記一般式(I)で表わされる化合物が、酸化マグネシウムであることが好ましい。
これにより、グリップ性能をさらに向上させることができる。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドゴムに使用したことを特徴とする。
これにより、高グリップ性能および高剥離抗力を同時に備えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空気入りタイヤの高グリップ性能および高剥離抗力を同時に得ることができるゴム組成物を提供することができる。
本発明によれば、高グリップ性能および高剥離抗力を同時に備えた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分と、下記一般式(I)で表わされる少なくとも1種の化合物と、シランカップリング剤と、を含有することを特徴とする。
MX (I)
(式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムおよびマンガンから選択される金属のカチオンであり、Xは、当該カチオンのカウンターイオンである。)
以下、本発明に係るゴム組成物の各成分について順に例示説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0020】
<ゴム成分>
ゴム成分としては、特に限定されず、従来公知のタイヤ用ゴム組成物に用いられているゴム成分を用いることができる。
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム;スチレンブタジエンゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム(合成イソプレン);ブチルゴム;クロロブチル、ブロモブチルなどのハロゲン化ブチルゴム;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
ゴム成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<一般式(I)で表わされる化合物>
本発明において、上記一般式(I)で表わされる化合物は、グリップ性能の向上に寄与する成分である。
式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、鉄、銅、スズ、チタン、バナジウムおよびマンガンから選択される金属のカチオンである。
Xは、当該カチオンのカウンターイオンであり、例えば、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、水酸基、炭酸、硫酸、ステアリン酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがリチウムの場合、例えば、塩化リチウム、安息香酸リチウム、ぎ酸リチウム、クエン酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、シュウ酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、水素化リチウム、ステアリン酸リチウム、炭酸リチウム、ドデシル硫酸リチウム、乳酸リチウム、ピルビン酸リチウム、フッ化リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、四ホウ酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、ヨウ化リチウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがナトリウムの場合、例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アジ化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩素酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ぎ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、臭化ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがカリウムの場合、例えば、亜硝酸カリウム、亜硫酸カリウム、安息香酸カリウム、塩化カリウム、塩素酸カリウム、オレイン酸カリウム、ぎ酸カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、ケイ酸カリウム、コハク酸カリウム、酢酸カリウム、臭化カリウム、シュウ酸カリウム、臭素酸カリウム、硝酸カリウム、水酸化カリウム、水素化カリウム、ステアリン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、フッ化カリウム、ホウ酸カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがルビジウムの場合、例えば、塩化ルビジウム、硝酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸ルビジウム、ヨウ化ルビジウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがセシウムの場合、例えば、アジ化セシウム、塩化セシウム、硝酸セシウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化セシウム、硝酸セシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがベリリウムの場合、例えば、酸化ベリリウム、塩化ベリリウム、硫酸ベリリウム、硝酸ベリリウム、硫化ベリリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがマグネシウムの場合、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸水素マグネシウム、硫酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、安息香酸マグネシウム、クロム酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、硝酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、硫化マグネシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがカルシウムの場合、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、クエン酸カルシウム、ぎ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ホスフィン酸カルシウム、乳酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、過酸化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、珪酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、硫化カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがストロンチウムの場合、例えば、酢酸ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、ぎ酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硫化ストロンチウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがバリウムの場合、酢酸バリウム、アルミン酸バリウム、ホウ酸バリウム、フッ化バリウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、クロム酸バリウム、リン酸バリウム、リン酸水素バリウム、水酸化バリウム、乳酸バリウム、モリブデン酸バリウム、硝酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、過酸化バリウム、ステアリン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム、チオシアン酸バリウム、チオ硫酸バリウム、チタン酸バリウム、硫化バリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがラジウムの場合、例えば、酸化ラジウム、水酸化ラジウム、フッ化ラジウム、塩化ラジウム、臭化ラジウム、ヨウ化ラジウム、炭酸ラジウム、硫酸ラジウム、硫化ラジウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがアルミニウムの場合、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、フッ化アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mが鉄の場合、例えば、酸化鉄、水酸化鉄、フッ化鉄、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、乳酸鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、硫化鉄、酢酸鉄などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mが銅の場合、例えば、酸化銅、水酸化銅、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅、フッ化銅、臭化銅、ヨウ化銅、炭酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、シュウ酸銅、リン酸銅、硝酸銅、ステアリン酸銅などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがスズの場合、例えば、酸化スズ、水酸化スズ、フッ化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、シュウ酸スズなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがチタンの場合、例えば、酸化チタン、塩化チタン、硫酸チタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがバナジウムの場合、例えば、酸化バナジウム、硫酸バナジウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
一般式(I)で表わされる化合物としては、Mがマンガンの場合、例えば、酸化マンガン、硫酸マンガン、臭化マンガン、酢酸マンガン、安息香酸マンガン、炭酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明に係るゴム組成物の一実施形態では、前記一般式(I)で表わされる化合物のMが、グリップ性能の観点から、マグネシウムまたはカルシウムであることが好ましい。
本発明に係るゴム組成物の別の実施形態では、前記一般式(I)で表わされる化合物が、グリップ性能の観点から、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係るゴム組成物の別の実施形態では、前記一般式(I)で表わされる化合物が、酸化マグネシウムであることがより好ましい。これにより、グリップ性能をさらに向上させることができる。
【0041】
一般式(I)で表わされる化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
一般式(I)で表わされる化合物の総配合量は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、例えば、ゴム成分100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。0.01質量部以上とすることにより、グリップ性能を向上する十分な効果を得やすい。また、コストパフォーマンスの観点から、20質量部以下が好ましい。
【0043】
<シランカップリング剤>
本発明において、シランカップリング剤は、剥離抗力の向上に寄与する成分である。
理論に拘束されることを望むものではないが、シランカップリング剤によって高剥離抗力が得られる理由としては、シランカップリング剤が前記一般式(I)で表わされる化合物の表面を覆い、当該化合物をゴムの表面に露出させないないし露出を抑制することで、ゴムのタック性が維持されるためと推測される。
【0044】
本発明に係るゴム組成物は、前記シランカップリング剤が、下記一般式(II)で表されるシランカップリング剤であることが好ましい。
xRyRzSi−R−S−CO−R (II)
(式中、Rは、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−、RN−、および−(OSiR(OSiR)から選択される基であり;RおよびRは、それぞれ、独立して炭素原子数が1〜18個の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、およびアリール基から選択される基であり、nは0〜10であり;
は、水素原子、ならびに炭素原子数が1〜18個の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基およびアリール基から選択される原子または基であり;
は、−[O(RO)0.5−で表される基であり、Rは、炭素原子数が1〜18個の、アルキレン基およびシクロアルキレン基から選択される基であり、mは、1〜4であり;
x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1であり;
は、炭素原子数が1〜18個の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基およびアラルキレン基から選択される基であり;
は、炭素原子数が1〜18個の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基から選択される基である。)
これにより、ゴム練りの作業性を損なわずに、ゴムのタック性を維持し、より高い剥離抗力を得ることができる。
【0045】
前記RおよびRにおいて、アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。当該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
前記RおよびRにおいて、シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
前記RおよびRにおいて、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタニル基などが挙げられる。
前記RおよびRにおいて、シクロアルケニル基としては、シクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基などが挙げられる。
前記RおよびRにおいて、アリール基としては、フェニル基、トリル基などが挙げられる。
【0046】
前記Rにおいて、各基は、上記RおよびRにおけるそれらの基と同様である。
【0047】
前記Rにおいて、アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。当該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基などが挙げられる。
前記Rにおいて、シクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキシレン基などが挙げられる。
【0048】
前記Rにおいて、−[O(RO)0.5−基としては、例えば、1,2−エタンジオキシ基、1,3−プロパンジオキシ基、1,4−ブタンジオキシ基、1,5−ペンタンジオキシ基、1,6−ヘキサンジオキシ基などが挙げられる。
【0049】
前記Rにおいて、アルキレン基およびシクロアルキレン基は、上記Rにおけるそれらの基と同様である。
前記Rにおいて、シクロアルキルアルキレン基としては、例えば、シクロヘキシルメチレン基などが挙げられる。
前記Rにおいて、アルケニレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。当該アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基などが挙げられる。
前記Rにおいて、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基などが挙げられる。
前記Rにおいて、アラルキレン基としては、例えば、キシリレン基などが挙げられる。
【0050】
前記Rにおいて、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基は、上記RおよびRにおけるそれらの基と同様である。
前記Rにおいて、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0051】
前記一般式(II)で表されるシランカップリング剤は、例えば、特表2001−505225号公報に記載の方法で合成することができる。
また、当該シランカップリング剤として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名ABC−856などの市販品を用いてもよい。
【0052】
シランカップリング剤の総配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましい。1質量部以上であることにより、高グリップ性能および高剥離抗力を得やすい。コストパフォーマンスの観点から、15質量部以下が好ましい。
【0053】
<その他の成分>
本発明に係るゴム組成物には、上述したゴム成分、一般式(I)で表わされる化合物、およびシランカップリング剤の他に、グリップ性能を向上させるために、後述する樹脂Rを配合してもよい。
また、さらに、本発明に係るゴム組成物には、空気入りタイヤ用ゴム組成物において用いられている従来公知の、オイル、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤などの成分を添加してもよい。
以下、グリップ性能の向上に有効な樹脂Rについて説明する。
【0054】
<樹脂R>
本発明に係るゴム組成物は、さらに、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系樹脂および変性されたこれらの樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂Rを含有することが好ましい。これにより、グリップ性能を向上させやすい。
【0055】
フェノール樹脂としては、ノボラックタイプ、レゾールタイプなどの任意のフェノール樹脂を用いることができる。
フェノール樹脂のモノマーの具体例としては、これらに限定されないが、フェノールの他、クレゾールなどのアルキルフェノール、レゾールなどが挙げられる。これらのモノマーと共重合させるモノマーの具体例としては、これらに限定されないが、ホルムアルデヒド、アセチレン、エチレンなどが挙げられる。
フェノール樹脂としては、炭素原子数が2〜9であるアルキル基を有するフェノールと、他の有機化合物とを重合させた樹脂であって、当該樹脂の重合度が10以下であるものを好適に用いることができる。フェノール樹脂としては、p−t−ブチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂およびp−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂が好ましく、p−t−ブチルフェノール・アセチレン樹脂がより好ましい。
【0056】
テルペンフェノール樹脂としては、例えば、α−ピネンフェノール樹脂、ジペンテンフェノール樹脂、テルペンビスフェノール樹脂、またはこれらを水素添加したものなどを用いることができる。
テルペンフェノール樹脂としては、この他、ヤスハラケミカル株式会社製の商品名YSポリスターT145、商品名YSポリスターT160などの市販品を用いてもよい。
【0057】
C5系石油樹脂は、ナフサの熱分解によって得られるC5留分の樹脂である。
C5留分としては、例えば、オレフィン系炭化水素、ジオレフィン系炭化水素などが挙げられる。
C5留分のオレフィン系炭化水素としては、例えば、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテンなどが挙げられる。
C5留分のジオレフィン系炭化水素としては、例えば、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンなどが挙げられる。
C5系石油樹脂としては、この他、ストラクトール社製の商品名ストラクトールTS30、三井化学株式会社製の商品名TX−500などの市販品を用いてもよい。
【0058】
C9系石油樹脂は、ナフサの熱分解によって得られるC9留分の樹脂である。
C9留分としては、例えば、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、γ−メチルスチレンなどのスチレン同族体;インデン、クマロンなどのインデン同族体などが挙げられる。
C9系石油樹脂としては、この他、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名日石ネオポリマーなどが挙げられる。
【0059】
C5/C9共重合系樹脂としては、前記C5留分とC9留分との共重合体が挙げられる。
【0060】
DCPD系樹脂としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名Quintone(登録商標)1105などのQuintone(登録商標)1000シリーズなどが挙げられる。
【0061】
上述したフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂、DCPD系樹脂は、変性された樹脂であってもよい。
本発明に係るゴム組成物は、前記変性された、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5/C9共重合系樹脂およびDCPD系樹脂が、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル結合(−COO−)、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基、ニトリル基、スルホン基、チオール基およびスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物により変性された樹脂であることが好ましい。これにより、グリップ性能を向上させやすい。
【0062】
本発明に係るゴム組成物では、前記変性された樹脂は、フェノール変性、マレイン酸変性およびカルボン酸変性のうち少なくとも1つにより変性された樹脂であってもよい。
【0063】
本発明に係るゴム組成物では、変性されたフェノール樹脂として、ロジン変性および/またはカシュー変性された樹脂が挙げられる。
【0064】
本発明に係るゴム組成物は、前記樹脂Rの総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましい。0.1質量部以上であることにより、高グリップ性能および高剥離抗力を得やすい。100質量部以下であることにより、低温領域(走行時の高温領域以外の温度領域、例えば、−30℃〜室温(25℃))でのグリップ性能および工場作業性も良好となる。
【0065】
また、本発明に係るゴム組成物には、前記樹脂Rの代わりに、前記一般式(I)で表わされる化合物と、前記樹脂Rとの反応物を配合してもよい。当該反応物は、例えば、下記の方法により得ることができる。
まず、樹脂Rをトルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ベンゼンなどの有機溶媒に溶解させた後、前記一般式(I)で表わされる化合物を添加し、数分〜数日間、撹拌する。その後、ろ過を行い、ろ液から溶媒を除去することにより、前記反応物を得ることができる。
また、軟化点以上の温度まで昇温した樹脂R、または溶融状態の樹脂Rに、前記一般式(I)で表わされる化合物を混合して反応させることにより、前記反応物を得ることもできる。昇温手法としては、例えば、加圧式ニーダーで樹脂を練る方法が挙げられる。
【0066】
本発明に係るゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練機を用いて前述の各成分を混練することによって調製することができる。
【0067】
<ゴム組成物の用途>
本発明に係るゴム組成物は、空気入りタイヤの高グリップ性能および高剥離抗力を同時に得ることができるため、トレッド、カーカス、サイドウォール、ビードなどのタイヤ部材に用いることができ、特にトレッドゴムとしてトレッドに好適に用いることができる。
例えば、本発明に係るゴム組成物をトレッドゴムに用いた場合、タイヤ製造時の、トレッドゴムをタイヤの転がり方向に沿って巻いた際の、最後のトレッドゴムのジョイント部分の接着抗力に優れる。
【0068】
(空気入りタイヤ)
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドゴムに使用したことを特徴とする。これにより、高グリップ性能および高剥離抗力を同時に得ることができる。
【0069】
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示す断面図である。この空気入りタイヤの一例では、1対のビード部1およびこのビード部1の半径方向外側にそれぞれ連なる1対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2間に跨がるトレッド部3とからなる。そして、ビード部1のビードコア4間にはトロイド状に延びるカーカスプライからなるカーカス5が配置され、このカーカス5のトレッド部3の半径方向外側に3枚のベルト層を有するベルト6が配置されることによって、タイヤの骨格を形成している。
【0070】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッドゴムに使用し、常法に従い加硫することにより製造することができる。加硫温度は、例えば、100〜190℃とすることができる。加硫時間は、例えば、5〜80分とすることができる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0072】
表1および表2中の*1〜*12の各成分の詳細は以下のとおりである。
*1 スチレン−ブタジエンゴム(SBR):旭化成株式会社製の商品名タフデン(登録商標)4350(S−SBR、結合スチレン含有率39%、ビニル結合量38%、ゴム成分100質量部に対して50質量部のアロマチックオイルで油展)
*2 一般式(I)で表わされる化合物:関東化学株式会社より購入の試薬
*3 シランカップリング剤:信越化学工業株式会社製の商品名ABC−856
*4 樹脂A(樹脂R):ブチルフェノールアセチレン縮合物樹脂、BASF社製の商品名コレシン
*5 樹脂B(樹脂R):ノボラック型アルキルフェノール樹脂、日立化成工業株式会社製の商品名ヒタノール1502
*6 樹脂C(樹脂R):芳香族系石油樹脂、未変性タイプ、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名日石ネオポリマーL90
*7 樹脂D(樹脂R):C9系石油樹脂、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名日石ネオポリマーE130
*8 カーボンブラック:SAF(NSA:150m/g)
*9 プロセスオイル:JX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名A/O MIX
*10 老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*11 加硫促進剤A:N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
*12 加硫促進剤B:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド
【0073】
(実施例1〜9、参考例10〜15および比較例1〜3)
以下の表1および表2に示す配合処方のゴム組成物をバンバリーミキサーにて混錬した。そして得られたゴム組成物からなるトレッドゴムを備える空気入りタイヤを作製した。
作製した空気入りタイヤについて、以下に示すように、実車ドライグリップ、剥離抗力および工場作業性を評価した。その結果を表1および表2に併せて示す。
【0074】
(実車ドライグリップ性能)
作製した各タイヤを最高時速300km/hで走行可能な高性能車両に装備し、ドライ路面にて、サーキットで走行させ、走行初期(計測1周目)グリップと計測12周目の走行末期グリップにおけるテストドライバーのフィーリングを下記の基準で評価した。下記基準の数値が正の値で大きい程、ドライグリップ性能が良好であることを示す。
[評価基準]
+3:非常に良い
+2:良い
+1:やや良い
0:普通
−1:やや悪い
−2:悪い
【0075】
(剥離抗力)
ゴム組成物をJIS K6301の方法に準拠して145℃、45分の条件で加硫し、100℃の雰囲気下でピーク接着抗力を測定した。評価は、比較例1(コントロール)のピーク接着抗力を100として指数にて表示した。数値が大きいほど剥離抗力が大きいことを示す。
【0076】
(工場作業性)
未加硫のゴム組成物を80℃のロールに1分以上巻きつけて、ロールナイフで切った。その時に、ロールに密着した量を計量し、以下の基準で評価した。
○:ロールに密着した量が10質量%未満であった。
△:ロールに密着した量が10質量%以上であった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分と、一般式(I)で表わされる化合物と、シランカップリング剤と、を含有することにより、空気入りタイヤの高グリップ性能および高剥離抗力を同時に得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るゴム組成物は、タイヤ部材(特に、タイヤのトレッドゴム)の製造において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 ビードコア
5 カーカス
6 ベルト

図1