(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走行制御部は、前記補正値導出部が補正値を導出するまで、前記自律相対速度を用いて先行車両への自律追従制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
前記自車両走行情報に基づいて前記自車両の走行軌跡を自車両走行軌跡として導出するとともに、前記先行車両走行情報に基づいて前記先行車両の走行軌跡を先行車両走行軌跡として導出する走行軌跡導出部と、
前記自律センサ部の検出領域から前記先行車両が外れ該先行車両の特定が解除された場合に、前記自車両走行軌跡および前記先行車両走行軌跡を比較し、前記自車両が該先行車両に追跡しているかを判定する追跡判定部と、
を備え、
前記走行制御部は、
前記追跡判定部により前記自車両が前記先行車両を追跡していると判定された場合、前記車車間追従制御により該自車両の走行状態を制御し、該追跡判定部により該自車両が該先行車両を追跡していないと判定された場合、追従制御を不実行とする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(車両制御装置100)
図1は、車両制御装置100の概略的な構成を示した機能ブロック図である。車両制御装置100は、自律センサ部102および車両制御部104を含んで構成される。
【0015】
(自律センサ部102)
自律センサ部102は、CPU(Central Control Unit)、プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)、ワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)を含むマイクロコンピュータでなり、自車両1の前方の道路環境を撮像した画像データを取得し、当該画像データに基づく画像内における色情報や位置情報に基づいて先行車両等の立体物を特定するとともに、立体物までの距離を導出する。また、自律センサ部102は、画像処理部110、先行車両特定部112および自律車間距離導出部114として機能する。
【0016】
画像処理部110は、自車両1の前方の検出領域における道路環境を撮像した画像データを、例えば1/60秒のフレーム毎(60fps)に撮像装置10から連続して取得し、画像データの更新を契機として画像処理を遂行する。ここで、撮像装置10は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を2つ含み、自車両1の進行方向側において2つの撮像素子それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。また、撮像装置10は、カラー画像、すなわち、画素単位で3つの色相(赤:R、緑:G、青:B)の輝度を取得することができる。ここでは、撮像装置10で撮像されたカラー画像を輝度画像と呼び、後述する距離画像と区別する。
【0017】
図2は、輝度画像210と距離画像212を説明するための説明図である。画像処理部110は、撮像装置10の2つの撮像素子それぞれから画像データを取得すると、所謂パターンマッチングを用いて視差(視差情報)を導き出す。具体的に、
図2(a)に示した一方の画像データに基づく輝度画像210から任意に抽出したブロック(例えば水平4画素×垂直4画素の配列)に対応するブロックを、他方の画像データに基づく輝度画像210から検索する。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示す。画像処理部110は、このようにして導出された視差情報(後述する車間距離に相当)を画像データに対応付け、
図2(b)に示す距離画像212を生成する。このような距離画像212における各ブロックには、そのブロックの視差が関連付けられている。ここでは、説明の便宜上、距離画像212では視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0018】
図1に戻って説明すると、先行車両特定部112は、画像処理部110から輝度画像210と距離画像212とを取得し、輝度画像210に基づく輝度および距離画像212に基づく三次元の位置情報を用いて検出領域214における対象部位(画素やブロック)がいずれの立体物に対応するかを特定する。このとき、先行車両特定部112は、距離画像212における、検出領域214内のブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて、水平距離、高さおよび相対距離を含む三次元の位置情報に変換する。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、立体物の視差からその立体物の撮像装置10に対する相対距離を導出する方法である。このとき、先行車両特定部112は、対象部位の相対距離と、対象部位と同相対距離にある道路表面上の点と対象部位との距離画像212上の検出距離とに基づいて、対象部位の道路表面からの高さを導出する。
【0019】
そして、先行車両特定部112は、任意の対象部位を基点として、その対象部位と、水平距離の差分および高さの差分(さらに相対距離の差分を含めてもよい)が所定範囲内にある、同一の立体物に対応するとみなされた対象部位をグループ化する。ここで、所定範囲は実空間上の距離で表され、任意の値(例えば、1.0m等)に設定することができる。また、先行車両特定部112は、グループ化により新たに追加された対象部位に関しても、その対象部位を基点として、水平距離の差分および高さの差分が所定範囲内にある、立体物が等しい対象部位をグループ化する。結果的に、対象部位同士の距離が所定範囲内であれば、それら全ての対象部位がグループ化されることとなる。
【0020】
そして、先行車両特定部112は、自車両1前方の所定車間距離内に位置する立体物の形状、高さおよび大きさ、ならびに、立体物におけるテールランプやウインカの相対位置等に基づいて、車両の有無を特定する。
【0021】
続いて、先行車両特定部112は、自車両1前方の道路環境にある車両のうち、自車両1と同方向に進行している車両それぞれに異なるIDを付す。そして、そのIDによってそれぞれの車両を追尾する。次に、先行車両特定部112は、輝度画像210から特定される走行帯を参照し、例えば、自車両1と同一の走行帯に車両がある場合、その車両を先行車両として特定する。また、自律車間距離導出部114は、先行車両特定部112により特定された先行車両としてグループ化された1または複数の対象部位の相対距離の平均値を、自車両1および先行車両間の車間距離(以下、自律車間距離とも呼ぶ)として導出する。そして、自律車間距離導出部114は、自車両1および先行車両の走行に関する自律走行情報として自律車間距離を車両制御部104に送信する。
【0022】
(車両制御部104)
車両制御部104は、CPU、ROM、RAMを含むマイクロコンピュータで構成され、自車両走行情報取得部120、自律相対速度導出部122、車車間相対速度導出部124、走行制御部126、補正率導出部128、アンチロスト判定部130、アンチロスト車間距離導出部132、アンチロスト復帰判定部134、走行軌跡導出部136、追跡判定部138として機能する。
【0023】
また、車両制御部104は、車車間通信部12と接続されている。車車間通信部12は、先行車両と無線により通信を行い、車両の走行に関する情報を送受信する。つまり、車車間通信部12は、自車両1の走行に関する情報(以下、自車両走行情報とも呼ぶ)を先行車両に送信するとともに、先行車両で生成された、先行車両の走行に関する情報(以下、先行車両走行情報とも呼ぶ)を先行車両から受信、取得し、車両制御部104に送出する。ここで、本実施の形態において車両に関する情報には、車両自体の速度、加速度、ヨーレート、舵角およびウインカの指示方向の情報が含まれる。
【0024】
自車両走行情報取得部120は、自車両1の速度を検出する速度センサ14、自車両1の加速度を検出する加速度センサ16、自車両1に設けられたハンドルの舵角を検出するハンドルセンサ18、自車両1のヨーレートを検出するヨーレートセンサ20、自車両1のウインカの指示方向を検出するウインカセンサ22それぞれと接続されている。そして、自車両走行情報取得部120は、速度センサ14で検出された自車両1の速度、加速度センサ16で検出された自車両1の加速度、ハンドルセンサ18で検出された自車両1の舵角、ヨーレートセンサ20で検出された自車両1のヨーレート、および、ウインカセンサ22で検出された自車両1のウインカの指示方向を、まとめて自車両走行情報として取得する。
【0025】
自律相対速度導出部122は、自律センサ部102の先行車両特定部112により先行車両が特定されている場合に、自律車間距離の差分を計測時間間隔で除算することにより、自車両1および先行車両間の相対速度を自律相対速度として導出する。
【0026】
車車間相対速度導出部124は、車車間通信部12が先行車両と通信可能な場合(先行車両走行情報を受信可能な場合)、自車両走行情報に示される自車両1の速度と、車車間走行情報に示される先行車両の速度情報との差分により、自車両1および先行車両間の相対速度を車車間相対速度として導出する。
【0027】
走行制御部126は、運転者の操作部に対する操作に応じて、運転の支援を行う走行制御(ACC(Adaptive Cruise Control))を行い、運転者により指示された所定の速度に自車両1を維持させる。そして、走行制御部126は、走行制御を行っている間に、自律センサ部102により先行車両が特定されると、先行車両と所定の車間距離を維持しつつ、自車両1を先行車両に追従させる追従制御を行う。つまり、走行制御部126は、走行制御中、先行車両がない場合には運転者により指示された速度に自車両1を維持させ、先行車両がある場合には自車両1を先行車両に追従させる。以下、先行車両に追従する追従制御について詳述する。
【0028】
走行制御部126は、先行車両特定部112により先行車両が特定されると、自律追従制御を行う。自律追従制御では、走行制御部126は、自車両走行情報に示される自車両1の速度に応じた目標車間距離を設定する。そして、走行制御部126は、自車両1および先行車両間の車間距離が設定した目標車間距離となるように、自律走行情報に示される自律車間距離、および、自律相対速度導出部122により導出された自律相対速度に基づいて、自車両1のエンジンやブレーキを制御し、自車両1を加速、減速させる。このようにして、自車両1を先行車両に追従させる。
【0029】
ところで、速度センサ14により検出される自車両1の速度、および、先行車両により生成された車車間走行情報に示される先行車両の速度は、例えばタイヤの回転数にタイヤ径を乗算することにより間接的に導出されるため、タイヤの磨耗等によりタイヤ径が変形すると、導出された車速が実際の車速と異なってしまう。そして、自車両1および先行車両の一方または双方の速度が正確でないと、詳しくは後述する、車車間相対速度導出部124により導出される車車間相対速度に基づいて自車両1を先行車両に追従させる車車間追従制御(自律車車間追従制御、アンチロスト車車間追従制御)を行う際に、自車両1を正確に先行車両に追従させることができなくなるおそれがある。
【0030】
そこで、補正率導出部128は、自律追従制御中であって、自律センサ部102により先行車両が特定されており(自律車間距離が取得されており)、かつ、車車間通信部12により車車間走行情報が取得されている場合に、車車間相対速度を補正する補正値としての補正率(%)を導出する。
【0031】
具体的には、補正率導出部128は、自車両走行情報取得部120により取得された自車両1の加速度と、車車間通信部12により取得された車車間走行情報に示される先行車両の加速度とが予め設定された変動範囲内(例えば−0.05G〜0.05G)であるか判定する。
【0032】
そして、補正率導出部128は、自車両1および先行車両の加速度が予め設定された変動範囲内(例えば−0.05G〜0.05G)で、かつ、自車両走行情報に示される自車両1の速度が運転者の設定した速度未満である場合、自車両1および先行車両の速度変化が微量であり、定常走行状態であると判断する。
【0033】
そして、補正率導出部128は、定常走行状態であると判断すると、車車間相対速度導出部124により導出される車車間相対速度と、自律相対速度導出部122により導出される自律相対速度とを比較する。その結果、車車間相対速度と自律相対速度との相対速度差が所定値以上である場合には、補正率導出部128は、車車間相対速度導出部124により導出された車車間相対速度が、自律相対速度導出部122により導出された自律相対速度と同一の値となるような補正率を導出する。
【0034】
なお、車車間相対速度と自律相対速度との相対速度差が所定値未満である場合には、補正率導出部128は、補正率を0と導出する。また、本実施形態では、同一の先行車両に対して一度補正率を導出すると補正を完了させるが、自律追従制御中に所定の時間間隔で補正率を導出し、更新させるようにしてもよい。
【0035】
補正率導出部128により車車間相対速度の補正が完了した後、先行車両特定部112により先行車両が特定されており、かつ、車車間通信部12により先行車両走行情報が取得可能な場合には、走行制御部126は、自律車車間追従制御を行う。
【0036】
自律車車間追従制御では、走行制御部126は、自車両1および先行車両間の車間距離が設定した目標車間距離となるように、自律走行情報に示される自律車間距離、補正車車間相対速度、および、車車間通信部12で取得した先行車両の加速度に基づいて、自車両1のエンジンやブレーキを制御して加速、減速させ、自車両1を先行車両に追従させる。
【0037】
このように、補正率導出部128は、自律走行情報(自律相対速度)および先行車両走行情報(車車間相対速度)が取得可能な場合に、車車間相対速度を自律相対速度に合わせるような補正率を導出する。これにより、走行制御部126は、少なくとも補正率が導出されたことを条件として車車間追従制御(自律車車間追従制御、アンチロスト車車間追従制御)を行うことで、補正車車間相対速度に基づいて自車両1を先行車両に追従させることができるので、精度よく追従制御を行うことができる。
【0038】
図3は、自律センサ部102により先行車両の特定が解除される場面を示す図である。ところで、
図3に示すように、撮像装置10は自車両1の前方の所定範囲の検出領域214を撮像する。したがって、
図3(a)に示すように、追従制御中に先行車両220が交差点で右折または左折(
図3(a)中では右折)した場合、検出領域214から先行車両220が外れて画像データに先行車両220が写らなくなり、自律センサ部102により先行車両220が特定できなくなってしまう。また、
図3(b)に示すように、カーブを走行中に、検出領域214から先行車両220が外れて画像データに先行車両220が写らなくなると、自律センサ部102により先行車両220が特定できなくなってしまう。これらのような場合には、自律車間距離に基づく上記の自律追従制御、および、自律車車間追従制御を行うことができない。
【0039】
一方で、自車両1および先行車両が交差点において同一方向に右折または左折する場合、交差点を右折または左折した後には再び右折または左折する前に追従していた同一の先行車両を自車両1が追従することが考えられる。また、自車両1および先行車両が同じカーブを走行する場合、先行車両特定部112では先行車両が特定されていないものの、自車両1は同一の先行車両を追跡して走行することが考えられる。
【0040】
そこで、走行制御部126は、自律センサ部102の先行車両特定部112により先行車両の特定が解除された場合であって、自車両1および先行車両が同一方向に走行すると判断された場合、アンチロスト車車間追従制御を行う(追従制御を継続する)。なお、ここで、自車両1および先行車両が同一方向に走行するとは、自車両1および先行車両が完全に同一方向を走行する場合のみならず、自車両1および先行車両の走行方向の差が所定の角度範囲に含まれており、自車両1が先行車両を追跡していると判断される場合も含む。
【0041】
まず、アンチロスト判定部130は、先行車両特定部112により先行車両の特定が解除されると、自車両走行情報に示されるウインカの指示方向と、先行車両走行情報に示されるウインカの指示方向とが同一の指示方向であるかを判定する。この判定により、交差点において自車両1と先行車両とが同一方向に右折または左折するかを判定する。
【0042】
また、アンチロスト判定部130は、先行車両走行情報に示される舵角およびヨーレートに基づいて、先行車両が一定の半径未満のカーブを走行しているか判定する。この判定により、先行車両がカーブを走行しているかを判定する。
【0043】
そして、走行制御部126は、交差点において自車両1と先行車両とが同一方向に右折または左折すると判定され、または、先行車両がカーブを走行していると判定されると、自車両1と先行車両とが同一方向に走行していると判断し、その時点からアンチロスト車車間追従制御を行う。
【0044】
アンチロスト車車間追従制御中、アンチロスト車間距離導出部132は、車車間相対速度導出部124により導出された車車間相対速度に補正率を乗算した補正車車間相対速度を計測時間間隔で積分し、計測時間間隔あたりの変化車間距離を導出する。そして、アンチロスト車間距離導出部132は、先行車両特定部112により先行車両の特定が解除された時点での自車両1および先行車両間の車間距離を基準として、変化車間距離を加算することで、自車両1および先行車両間の車間距離をアンチロスト車間距離として導出する。
【0045】
そして、走行制御部126は、自車両1および先行車両間の車間距離が設定した目標車間距離となるように、アンチロスト車間距離導出部132により導出されたアンチロスト車間距離と、車車間相対速度導出部124により導出された車車間相対速度に補正率を乗算した補正車車間相対速度とに基づいて、自車両1のエンジンやブレーキを制御し、自車両1を加速、減速させる。このようにして、走行制御部126は、先行車両に追従するアンチロスト車車間追従制御を行う。
【0046】
一方、アンチロスト判定部130は、交差点において自車両1と先行車両とが同一方向に右折または左折しないと判定され、かつ、先行車両がカーブを走行していないと判定されると、自車両1および先行車両が同一方向に走行していないと判断する。このとき、走行制御部126は、自車両1を先行車両に追従させる追従制御を解除(不実行)する。
【0047】
このように、自律センサ部102で先行車両を特定できなくなった場合(自律走行情報が取得できなくなった場合)に、自車両1および先行車両が同一方向に走行するか否かを判定し、自車両1および先行車両が同一方向に走行していると判断した場合には、自律車車間追従制御に代えて、アンチロスト車車間追従制御により自車両1の走行状態を制御することで、継続して先行車両に対する追従制御を行うことができる。
【0048】
アンチロスト復帰判定部134は、走行制御部126がアンチロスト車車間追従制御を行っている間に、先行車両特定部112により再び先行車両が特定されると、アンチロスト車間距離導出部132により導出されるアンチロスト車間距離と、自律走行情報に示される自律車間距離との差が、予め設定された所定の範囲内であるか判定する。そして、アンチロスト復帰判定部134は、アンチロスト車間距離と自律車間距離との差が所定の範囲内であれば、自律車車間追従制御中に先行車両特定部112で特定されていた先行車両と、アンチロスト車車間追従制御中に先行車両特定部112により再び特定された先行車両とが同一であると判断する。
【0049】
そして、自律車車間追従制御中に先行車両特定部112で特定されていた先行車両と、アンチロスト車車間追従制御中に先行車両特定部112により再び特定された先行車両とが同一であると判断されると、走行制御部126は、再び自律車車間追従制御を開始する。
【0050】
一方、自律車車間追従制御中に先行車両特定部112で特定されていた先行車両と、アンチロスト車車間追従制御中に先行車両特定部112により再び特定された先行車両とが同一でないと判断されると、走行制御部126は、新たに特定された自車両1を先行車両に追従させる自律追従制御を開始する。なお、新たに特定された自車両1を先行車両に追従させる自律制御が開始された場合には、補正率導出部128は、補正率を導出し直す。
【0051】
また、走行軌跡導出部136は、アンチロスト車車間追従制御中、自車両走行情報に示される車速およびヨーレートに基づいて、自車両1の走行軌跡を導出する。また、走行軌跡導出部136は、アンチロスト車車間追従制御中、先行車両走行情報に示されるヨーレートと、車車間相対速度導出部124により導出された車車間相対速度に補正率を乗算した補正車車間相対速度とに基づいて、先行車両の走行軌跡を導出する。
【0052】
追跡判定部138は、走行軌跡導出部136により導出された自車両1の走行軌跡と、先行車両の走行軌跡とを比較し、先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が逸脱しているかを判定する。なお、ここでは、例えば、先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が横方向(幅方向)に1車線分以上離れた場合に、逸脱していると判定する。
【0053】
そして、追跡判定部138により先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が逸脱していない、つまり、自車両1が先行車両を追跡していると判定されると、走行制御部126は、先行車両の追従制御(アンチロスト車車間追従制御)を継続する。
【0054】
一方、追跡判定部138により先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が逸脱している、つまり、自車両1が先行車両を追跡していないと判定されると、走行制御部126は、先行車両の追従制御(アンチロスト車車間追従制御)を解除(不実行)する。
【0055】
このように、走行軌跡導出部136は、自車両走行情報に示される車速およびヨーレートに基づいて、自車両1の走行軌跡を導出し、また、先行車両走行情報に示されるヨーレートと、補正車車間相対速度とに基づいて、先行車両の走行軌跡を導出する。そして、追跡判定部138は、自車両1および先行車両の走行軌跡に基づいて、自車両1が先行車両を追跡しているかを判定するので、数メートル程度の誤差を有するGPS情報に基づく追跡判定よりも精度よく追跡判定を行うことができる。
【0056】
(走行制御処理)
図4は、走行制御処理の全体的な流れを示したフローチャートである。この走行制御処理は、繰り返し実行される処理(ループ処理)である。
図4に示すように、走行制御部126は、先行車両特定部112により先行車両が特定されているか否かを判定する(S100)。その結果、先行車両特定部112により先行車両が特定されていなければ(S100におけるNO)、走行制御部126は、運転者により指定された速度に自車両1を制御し(S102)、当該走行制御処理を終了する。
【0057】
一方、先行車両特定部112により先行車両が特定されていれば(S100におけるYES)、走行制御部126は、自車両1を先行車両に追従させる追従制御処理を行い(S200)、当該走行制御処理を終了する。なお、追従制御処理(S200)について、詳しくは後述する。
【0058】
(追従制御処理)
図5は、追従制御処理の流れを示したフローチャートである。
図5に示すように、走行制御部126は、車車間通信部12により先行車両と車車間通信が可能であり、先行車両走行情報が取得できているか否かを判定する(S202)。その結果、車車間通信部12により先行車両と車車間通信が可能であり、先行車両走行情報が取得できていれば(S202におけるYES)、走行制御部126は、補正率の導出が完了したことを示す補正率導出フラグがオンしているか否かを判定する(S204)。その結果、補正率導出フラグがオンしていなければ(S204におけるNO)、補正率導出部128は、自律相対速度に対する車車間相対速度の補正率を導出する補正率導出処理を行う(S300)。なお、補正率導出フラグは、追従制御が解除され(S226)、または、先行車両が切り替わったと判断された際(S218におけるYES)にオフされる。
【0059】
補正率導出処理(S300)後、走行制御部126は、自律車間距離および自律相対速度に基づいて自律追従制御を行い(S206)、当該追従制御処理を終了する。なお、補正率導出処理(S300)について、詳しくは後述する。
【0060】
また、車車間通信部12により先行車両と車車間通信ができず、先行車両走行情報が取得できない場合も(S202におけるNO)、走行制御部126は、自律車間距離および自律相対速度に基づいて自律追従制御を行い(S206)、当該追従制御処理を終了する。
【0061】
一方、補正率導出フラグがオンしていれば(S204におけるYES)、走行制御部126は、車間距離を導出する車間距離導出処理を行う(S400)。なお、車間距離導出処理(S400)について、詳しくは後述する。
【0062】
車間距離導出処理(S400)が行われると、走行制御部126は、アンチロスト車車間追従制御中であるか否かを判定する(S208)。その結果、アンチロスト車車間追従制御中でなければ(S208におけるNO)、すなわち、自律車車間追従制御中であれば、アンチロスト判定部130は、先行車両特定部112により先行車両の特定が解除されたか否かを判定する(S210)。その結果、先行車両特定部112により先行車両の特定が解除されていなければ(S210におけるNO)、走行制御部126は、自律車間距離および補正車車間相対速度に基づく自律車車間追従制御を行い(S212)、当該追従制御処理を終了する。
【0063】
一方、先行車両特定部112により先行車両の特定が解除されていれば(S210におけるYES)、アンチロスト判定部130は、自車両1および先行車両が同一方向に走行するか否かを判定するアンチロスト判定処理を行う(S500)。なお、アンチロスト判定処理(S500)について、詳しくは後述する。
【0064】
その後、アンチロスト判定部130は、アンチロスト判定処理(S500)において、自車両1および先行車両が同一方向に走行していることを示すアンチロストフラグがオンされたか否かを判定する(S214)。その結果、アンチロストフラグがオンされていれば(S214におけるYES)、走行制御部126は、アンチロストフラグをオフにし、アンチロスト車間距離および補正車車間相対速度に基づいてアンチロスト車車間追従制御を行い(S216)、当該追従制御処理を終了する。一方、アンチロストフラグがオンされていなければ(S214におけるNO)、走行制御部126は、追従制御を解除(不実行)し(S226)、当該追従制御処理を終了する。
【0065】
また、アンチロスト車車間追従制御中であれば(S208におけるYES)、アンチロスト復帰判定部134は、自律追従制御、自律車車間追従制御、または、アンチロスト車車間追従制御のいずれかに追従制御を復帰(維持)させるためのアンチロスト復帰処理を行う(S600)。なお、アンチロスト復帰処理(S600)について、詳しくは後述する。
【0066】
その後、アンチロスト復帰判定部134は、アンチロスト復帰処理(S600)において自律追従制御に移行させるための自律フラグがオンされたか否かを判定する(S218)。その結果、自律フラグがオンされていれば(S218におけるYES)、走行制御部126は、自律フラグをオフにし、自律追従制御を行い(S206)、当該追従制御処理を終了する。
【0067】
一方、自律フラグがオンされていなければ(S218におけるNO)、アンチロスト復帰判定部134は、アンチロスト復帰処理(S600)において自律車車間追従制御に移行させるための自律車車間フラグがオンされたか否かを判定する(S220)。その結果、自律車車間フラグがオンされていれば(S220におけるYES)、走行制御部126は、自律車車間フラグをオフにし、自律車車間追従制御を行い(S212)、当該追従制御処理を終了する。
【0068】
一方、自律車車間フラグがオンされていなければ(S220におけるNO)、走行軌跡導出部136は、自車両走行情報に示される車速およびヨーレートに基づいて、自車両1の走行軌跡を導出するとともに、先行車両走行情報に示されるヨーレートと、補正車車間相対速度とに基づいて、先行車両の走行軌跡を導出する(走行軌跡導出処理:S222)。
【0069】
その後、追跡判定部138は、導出された自車両1の走行軌跡と、先行車両の走行軌跡とを比較し、先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が逸脱しているか否かを判定する(S224)。その結果、先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が逸脱していれば(S224におけるYES)、走行制御部126は、追従制御を解除(不実行)し(S226)、当該追従制御処理を終了する。一方、先行車両の走行軌跡に対して自車両1の走行軌跡が逸脱していなければ(S224におけるNO)、走行制御部126は、アンチロスト車車間追従制御を継続し(S216)、当該追従制御処理を終了する。
【0070】
(補正率導出処理)
図6は、補正率導出処理の流れを示したフローチャートである。
図6に示すように、補正率導出部128は、自律追従制御中であるか否かを判定する(S302)。その結果、自律追従制御中でなければ(S302におけるNO)、当該補正率導出処理を終了する。
【0071】
一方、自律追従制御中であれば(S302におけるYES)、補正率導出部128は、自車両1の速度が運転者の設定した速度未満で、かつ、自車両1および先行車両の加速度が変動範囲内の定常走行状態であるか否かを判定する(S304)。その結果、定常走行状態でなければ(S304におけるNO)、当該補正率導出処理を終了する。
【0072】
一方、定常走行状態であれば(S304におけるYES)、補正率導出部128は、車車間相対速度と自律相対速度との相対速度差が所定値以上であるか否かを判定する(S306)。その結果、車車間相対速度と自律相対速度との相対速度差が所定値以上であれば(S306におけるYES)、補正率導出部128は、車車間相対速度が自律相対速度と同一の値となるような補正率を導出する(S308)。その後、補正率導出部128は、補正率導出フラグをオンにし(S310)、当該補正率導出処理を終了する。
【0073】
一方、車車間相対速度と自律相対速度との相対速度差が所定値以上でなければ(S306におけるNO)、補正率導出部128は、補正率を0とした後、補正率導出フラグをオンにし(S310)、当該補正率導出処理を終了する。
【0074】
(車間距離導出処理)
図7は、車間距離導出処理の流れを示したフローチャートである。
図7に示すように、走行制御部126は、先行車両特定部112により先行車両が特定されているか否かを判定する(S402)。その結果、先行車両が特定されていれば(S402におけるYES)、自車両走行情報取得部120は、自律車間距離導出部114により導出された自律車間距離を示す自車両走行情報を取得し(S404)、当該車間距離導出処理を終了する。なお、ここで取得された自車両走行情報は、自律車車間追従制御(S212)において用いられる。
【0075】
一方、先行車両が特定されていなければ(S402におけるNO)、アンチロスト車間距離導出部132は、補正車車間相対速度を単位時間で積分して変化車間距離を導出する。その後、アンチロスト車間距離導出部132は、先行車両特定部112により先行車両の特定が解除された時点での自車両1および先行車両間の車間距離を基準として、変化車間距離を加算することで、自車両1および先行車両間の車間距離をアンチロスト車間距離として導出し(S406)、当該車間距離導出処理を終了する。なお、ここで取得されたアンチロスト車間距離は、アンチロスト車車間追従制御(S216)において用いられる。
【0076】
(アンチロスト判定処理)
図8は、アンチロスト判定処理の流れを示したフローチャートである。
図8に示すように、アンチロスト判定部130は、自車両走行情報に示されるウインカの指示方向と、先行車両走行情報に示されるウインカの指示方向とに基づいて、交差点において自車両1および先行車両が同一方向に右折または左折するか否かを判定する(S502)。その結果、交差点において自車両1および先行車両が同一方向に右折または左折すれば(S502におけるYES)、アンチロスト判定部130は、アンチロストフラグをオンにし(S504)、当該アンチロスト判定処理を終了する。
【0077】
一方、交差点において自車両1および先行車両が同一方向に右折または左折しなければ(S502におけるNO)、アンチロスト判定部130は、先行車両走行情報に示される舵角およびヨーレートに基づいて、先行車両が一定の半径未満のカーブを走行中であるか否かを判定する(S506)。その結果、先行車両がカーブを走行していれば(S506におけるYES)、アンチロスト判定部130は、アンチロストフラグをオンにし(S504)、当該アンチロスト判定処理を終了する。一方、先行車両がカーブを走行していなければ(S506におけるNO)、アンチロスト判定部130は、当該アンチロスト判定処理を終了する。
【0078】
(アンチロスト復帰処理)
図9は、アンチロスト復帰処理の流れを示したフローチャートである。
図9に示すように、アンチロスト復帰判定部134は、先行車両特定部112により再び先行車両が特定されたか否かを判定する(S602)。その結果、先行車両が特定されていなければ(S602におけるNO)、アンチロスト復帰判定部134は、当該アンチロスト復帰処理を終了する。
【0079】
一方、先行車両が特定されていれば(S602におけるYES)、アンチロスト復帰判定部134は、S406で導出されたアンチロスト車間距離と、自律車間距離導出部114により導出される自律車間距離とが、予め設定された所定の範囲内であり、先行車両の特定が解除された前後で同一の先行車両を特定しているか判定する同一性判定を行う(S604)。そして、アンチロスト復帰判定部134は、同一性判定(S604)において、先行車両の特定が解除された前後で同一の先行車両を特定しているか否かを判定する(S606)。
【0080】
その結果、アンチロスト復帰判定部134は、先行車両の特定が解除された前後で同一の先行車両を特定していれば(S606におけるYES)、自律車車間フラグをオンにし(S608)、先行車両の特定が解除された前後で同一の先行車両を特定していなければ(S606におけるNO)、自律フラグをオンにし(S610)、当該アンチロスト復帰処理を終了する。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
なお、上記の実施形態において、自律車間距離導出部114により自律車間距離が導出されており(先行車両特定部112により先行車両が特定されており)、かつ、補正率導出部128により補正率が導出されている場合には、自律車間距離および補正車車間相対速度に基づく自律車車間追従制御が行われるようにした。しかしながら、このような場合には、自律車間距離および自律相対速度に基づく自律追従制御が行われてもよい。
【0083】
なお、本明細書の走行制御処理の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。