特許第6423731号(P6423731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6423731
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20181105BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H01L23/36 M
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-25146(P2015-25146)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-149431(P2016-149431A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西部 祐司
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】臼井 正則
(72)【発明者】
【氏名】桑原 誠
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 忠史
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148094(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093808(WO,A1)
【文献】 特開2011−258755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
冷却器と、
前記発熱体と前記冷却器の間に設けられている伝熱部材と、を備え、
前記伝熱部材は、
熱伝導等方性の中間層と、
前記中間層の前記発熱体側の面に接しており、熱伝導異方性の複数の第1シートが積層して構成されており、前記複数の第1シートの積層方向が前記発熱体と前記冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている第1シート層と、
前記中間層の前記冷却器側の面に接しており、熱伝導異方性の複数の第2シートが積層して構成されており、前記複数の第2シートの積層方向が前記発熱体と前記冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている第2シート層と、を有し、
前記複数の第1シートの積層方向と前記複数の第2シートの積層方向が、平行となるように配置されており、
前記第1シートと前記第2シートが、グラファイトである、半導体モジュール。
【請求項2】
前記中間層の材料が、セラミックである、請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記伝熱部材は、
前記第1シート層を介して前記中間層に対向するように設けられており、熱伝導異方性の複数の第3シートが積層して構成されており、前記複数の第3シートの積層方向が前記発熱体と前記冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている第3シート層と、
前記第2シート層を介して前記中間層に対向するように設けられており、熱伝導異方性の複数の第4シートが積層して構成されており、前記複数の第4シートの積層方向が前記発熱体と前記冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている第4シート層と、をさらに有し、
前記複数の第3シートの積層方向と前記複数の第4シートの積層方向が、平行となるように配置されており、
前記複数の第1シートの積層方向と前記複数の第3シートの積層方向が、交差するように配置されており、
前記複数の第2シートの積層方向と前記複数の第4シートの積層方向が、交差するように配置されている、請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第3シートと前記第4シートが、グラファイトである、請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記伝熱部材は、
前記第1シート層と前記第3シート層の間に設けられており、双方に接しており、熱伝導等方性の第1接合層と、
前記第2シート層と前記第4シート層の間に設けられており、双方に接しており、熱伝導等方性の第2接合層と、をさらに有する、請求項3又は4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1接合層及び前記第2接合層の材料が、金属である、請求項5に記載の半導体モジュール。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体チップの熱を冷却器まで伝熱する伝熱部材を備える半導体モジュールを開示する。伝熱部材は、中間層を介して接合されている1組のシート部材を有する。シート部材の各々は、熱伝導異方性の複数のシートが積層して構成されている。シート部材を構成するシートは、そのシート面の面内方向に高い熱伝導率を有する。シート部材では、複数のシートの積層方向が半導体チップと冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置される。これにより、シート部材を構成するシートのシート面が半導体チップと冷却器を結ぶ方向に対して平行となるので、伝熱部材は、半導体チップの熱を効率的に冷却器まで伝熱することができる。
【0003】
特許文献1の伝熱部材では、中間層を介して接合されている1組のシート部材において、一方のシート部材を構成する複数のシートの積層方向と他方のシート部材を構成する複数のシートの積層方向が直交するように配置される。これにより、伝熱部材を全体で観測したときに、伝熱部材を伝熱する熱は、半導体チップと冷却器を結ぶ方向に対して直交する面内にも広がることができるので、半導体チップの熱が効率的に冷却器まで伝熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−258755号公報(特に、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱伝導異方性のシートは、線膨張率にも異方性を有する。例えば、シートがグラファイトの場合、シート面の面内方向の線膨張係数が、厚み方向(シート面に直交する方向)の線膨張係数よりも小さい。このため、特許文献1の伝熱部材では、中間層を介して接合されている1組のシート部材において、一方のシート部材の線熱膨張係数が大きい方向と他方のシート部材の線熱膨張係数が大きい方向が非平行となる。換言すると、一方のシート部材の線熱膨張係数が大きい方向と他方のシート部材の線熱膨張係数が小さい方向が平行となる。このため、特許文献1の伝熱部材では、一方の伝熱部材が他方の伝熱部材を機械的に拘束し、高い熱応力が加わる。これにより、伝熱部材が湾曲するように熱変形する。このような湾曲が発生すると、伝熱部材が他部材と接する接合面に空間が形成され、伝熱効率が大幅に低下する。本明細書で開示する技術は、伝熱部材が湾曲するように熱変形することを抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する半導体モジュールの一実施形態は、発熱体、冷却器、及び、発熱体と冷却器の間に設けられている伝熱部材を備える。伝熱部材は、中間層、第1シート層及び第2シート層を備える。中間層は、熱伝導等方性である。第1シート層は、中間層の発熱体側の面に接しており、熱伝導異方性の複数の第1シートが積層して構成されている。第1シート層では、複数の第1シートの積層方向が、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている。第2シート層は、中間層の冷却器側の面に接しており、熱伝導異方性の複数の第2シートが積層して構成されている。第2シート層では、複数の第2シートの積層方向が、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている。複数の第1シートの積層方向と複数の第2シートの積層方向が、平行となるように配置されている。
【0007】
本明細書で開示する半導体モジュールの伝熱部材では、中間層を介して隣り合う第1シート層及び第2シート層において、第1シート層を構成する複数の第1シートの積層方向と第2シート層を構成する複数の第2シートの積層方向が、平行となるように配置されている。このため、第1シート層の線膨張係数の大きい方向と第2シート層の線膨張係数の大きい方向が平行となる。これにより、第1シート層と第2シート層が相互に機械的に拘束することが抑えられ、熱応力が緩和され、伝熱部材が湾曲するように熱変形することが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の半導体モジュールの要部断面図を模式的に示す。
図2】実施例の伝熱部材の斜視図を模式的に示す。
図3】実施例の伝熱部材の分解斜視図を模式的に示す。
図4】変形例の半導体モジュールの要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0010】
本明細書で開示する半導体モジュールの一実施形態は、発熱体、冷却器、及び、発熱体と冷却器の間に設けられている伝熱部材を備えていてもよい。発熱体の種類は、熱を発熱する限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、発熱体は、電子素子であってもよい。典型的には、発熱体は、パワー半導体素子であり、その一例としてIGBT、MOSFET、ダイオードが例示される。冷却器の種類は、冷媒との間で熱交換可能に構成されている限りにおいて、特に限定されるものではない。伝熱部材は、中間層、第1シート層及び第2シート層を有していてもよい。中間層の材料は、熱伝導等方性の特性を有する限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、中間層の材料は、セラミック又は金属であってもよい。セラミックとしては、窒化シリコン、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムが例示される。金属としては、銅及びアルミニウムが例示される。なお、中間層の材料は、セラミックであるのが望ましい。この場合、伝熱部材が絶縁基板として機能することができる。第1シート層は、中間層の発熱体側の面に接しており、熱伝導異方性の複数の第1シートが積層して構成されている。第1シートは、シート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向)の熱伝導率よりも高い材料である。例えば、第1シートの材料としては、グラファイト、グラフェン、炭素繊維に金属を含浸させた複合材及び金属含浸グラファイト複合材が例示される。第1シート層では、複数の第1シートの積層方向が、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている。第2シート層は、中間層の冷却器側の面に接しており、熱伝導異方性の複数の第2シートが積層して構成されている。第2シートも、シート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向)の熱伝導率よりも高い材料である。例えば、第2シートの材料としては、グラファイト、グラフェン、炭素繊維に金属を含浸させた複合材及び金属含浸グラファイト複合材が例示される。第1シートと第2シートは、同一の材料であるのが望ましい。第2シート層では、複数の第2シートの積層方向が、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている。複数の第1シートの積層方向と複数の第2シートの積層方向が、平行となるように配置されている。
【0011】
本明細書で開示する伝熱部材は、第3シート層及び第4シート層をさらに有していてもよい。第3シート層は、第1シート層を介して中間層に対向するように設けられており、熱伝導異方性の複数の第3シートが積層して構成されている。第3シートは、シート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向)の熱伝導率よりも高い材料である。例えば、第3シートの材料としては、グラファイト、グラフェン、炭素繊維に金属を含浸させた複合材及び金属含浸グラファイト複合材が例示される。第3シート層では、複数の第3シートの積層方向が、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている。第4シート層は、第2シート層を介して中間層に対向するように設けられており、熱伝導異方性の複数の第4シートが積層して構成されている。第4シートも、シート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向)の熱伝導率よりも高い材料である。例えば、第4シートの材料としては、グラファイト、グラフェン、炭素繊維に金属を含浸させた複合材及び金属含浸グラファイト複合材が例示される。第3シートと第4シートは、同一の材料であるのが望ましい。第4シート層では、複数の第4シートの積層方向が、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交するように配置されている。複数の第3シートの積層方向と複数の第4シートの積層方向が、平行となるように配置されている。複数の第1シートの積層方向と複数の第3シートの積層方向が、交差するように配置されている。なお、複数の第1シートの積層方向と複数の第3シートの積層方向が、直交するように配置されているのが望ましい。複数の第2シートの積層方向と複数の第4シートの積層方向が、交差するように配置されている。なお、複数の第2シートの積層方向と複数の第4シートの積層方向が、直交するように配置されているのが望ましい。この形態の半導体モジュールによると、伝熱部材を全体で観測したときに、伝熱部材を伝熱する熱は、発熱体と冷却器を結ぶ方向に対して直交する面内にも広がることができるので、発熱体の熱が効率的に冷却器まで伝熱される。
【0012】
本明細書で開示する伝熱部材は、第1接合層及び第2接合層をさらに有していてもよい。第1接合層は、第1シート層と第3シート層の間に設けられており、双方に接する。第2接合層は、第2シート層と第4シート層の間に設けられており、双方に接する。第1接合層及び第2接合層の材料は、熱伝導等方性の特性を有する限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、第1接合層及び第2接合層は、セラミック又は金属であってもよい。セラミックとしては、窒化シリコン、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムが例示される。金属としては、銅及びアルミニウムが例示される。第1接合層と第2接合層は、同一の材料であるのが望ましい。
【実施例1】
【0013】
図1に示されるように、半導体モジュール10は、両面冷却型の半導体モジュールであり、一対の半導体チップ20,30、一対の金属ブロック24,34、複数の伝熱部材22,26,32,36、複数の電極板28,42,44、一対の絶縁層52,54及び一対の冷却器62,64を備える。一対の冷却器62,64が、一対の半導体チップ20,30、一対の金属ブロック24,34、複数の伝熱部材22,26,32,36及び一対の絶縁層52,54を加圧して密着するように構成されている。半導体モジュール10は、3相インバータの下側アームを構成する3つの半導体素子の1つとして用いられる。
【0014】
半導体チップ20は、IGBTである。半導体チップ20の下面のコレクタ電極は、はんだを介して伝熱部材22の上面に接合されている。伝熱部材22の下面は、絶縁層52を介して冷却器62に密着する。絶縁層52の上下面には、グリースが塗布されている。伝熱部材22は、半導体チップ20と冷却器62の間に設けられており、半導体チップ20の熱を冷却器62に伝熱する。半導体チップ20の上面のエミッタ電極は、はんだにより金属ブロック24の下面に接合されている。金属ブロック24の材料には、銅が用いられている。金属ブロック24の上面は、はんだを介して伝熱部材26の下面に接合されている。伝熱部材26の上面は、絶縁層54を介して冷却器64に密着する。絶縁層54の上下面には、グリースが塗布されている。伝熱部材26は、半導体チップ20と冷却器64の間に設けられており、半導体チップ20の熱を冷却器64に伝熱する。また、半導体チップ20の上面のゲート電極は、ワイヤーを介して制御電極板28に電気的に接続されている。
【0015】
半導体チップ30は、ダイオードである。半導体チップ30の下面のカソード電極は、はんだを介して伝熱部材32の上面に接合されている。伝熱部材32の下面は、絶縁層52を介して冷却器62に密着する。伝熱部材32は、半導体チップ30と冷却器62の間に設けられており、半導体チップ30の熱を冷却器62に伝熱する。半導体チップ30の上面のアノード電極は、はんだを介して金属ブロック34の下面に接合されている。金属ブロック34の材料には、銅が用いられている。金属ブロック34の上面は、はんだを介して伝熱部材36の下面に接合されている。伝熱部材36の上面は、絶縁層54を介して冷却器64に密着する。伝熱部材36は、半導体チップ30と冷却器64の間に設けられており、半導体チップ30の熱を冷却器64に伝熱する。
【0016】
伝熱部材22と伝熱部材32は、実際には、1つの伝熱部材として一体で構成されている。伝熱部材22と伝熱部材32の上面には、後述するように、金属層が露出しており、その金属層が出力電極板42に電気的に接続されている。即ち、半導体チップ20の下面のコレクタ電極と半導体チップ30の下面のカソード電極は、伝熱部材22,32を介して出力電極板42に電気的に接続されている。
【0017】
伝熱部材26と伝熱部材36も、実際には、1つの伝熱部材として一体で構成されている。伝熱部材26と伝熱部材36の下面には、金属層が露出しており、その金属層が入力電極板44に電気的に接続されている。即ち、半導体チップ20の上面のエミッタ電極と半導体チップ30の上面のアノード電極は、金属ブロック24、34及び伝熱部材26,36を介して入力電極板44に電気的に接続されている。
【0018】
一対の半導体チップ20,30、一対の金属ブロック24,34及び複数の伝熱部材22,26,32,36は、絶縁樹脂56に覆われている。電極板28,42,44の一部は、絶縁樹脂56から露出する。
【0019】
伝熱部材22,26,32,36は、同一の構成を有する。以下では、図2及び図3を参照して、伝熱部材22について詳細に説明し、他の伝熱部材26,32,36についての説明を省略する。
【0020】
図2及び図3に示されるように、伝熱部材22は、中間層70、複数のグラファイト層71,72,73,74及び複数の金属層81,82,83,84を有する。複数のグラファイト層71,72,73,74は、第1グラファイト層71、第2グラファイト層72、第3グラファイト層73及び第4グラファイト層74を含む。グラファイト層71,72,73,74は、特許請求の範囲に記載のシート層の一例である。複数の金属層81,82,83,84は、第1金属層81、第2金属層82、第3金属層83及び第4金属層84を含む。第1金属層81及び第2金属層82は、特許請求の範囲に記載の接合層の一例である。
【0021】
中間層70は、伝熱部材22の積層方向(z軸方向)の中心に配置されている。中間層70の材料には、熱伝導等方性の金属が用いられており、この例では銅が用いられている。
【0022】
第1グラファイト層71は、中間層70の半導体チップ20側の面に接合する。第1グラファイト層71は、複数の配向性グラファイトシートがx軸方向に積層した積層体として構成されている。第1グラファイト層71を構成する配向性グラファイトシートは、yz面に平行なシート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向であり、x軸方向)の熱伝導率よりも高く、熱伝導異方性を有する。第1グラファイト層71を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)は、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して直交するように配置されている。換言すると、第1グラファイト層71を構成する配向性グラファイトシートのシート面(yz面)が、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して平行となるように配置されている。
【0023】
第2グラファイト層72は、中間層70の冷却器62側の面に接合する。第2グラファイト層72は、複数の配向性グラファイトシートがx軸方向に積層した積層体として構成されている。第2グラファイト層72を構成する配向性グラファイトシートは、yz面に平行なシート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向であり、x軸方向)の熱伝導率よりも高く、熱伝導異方性を有する。第2グラファイト層72を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)は、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して直交するように配置されている。換言すると、第2グラファイト層72を構成する配向性グラファイトシートのシート面(yz面)が、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して平行となるように配置されている。
【0024】
第3グラファイト層73は、第1金属層81及び第1グラファイト層71を介して中間層70に対向するように配置されている。第3グラファイト層73は、複数の配向性グラファイトシートがy軸方向に積層した積層体として構成されている。第3グラファイト層73を構成する配向性グラファイトシートは、xz面に平行なシート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向であり、y軸方向)の熱伝導率よりも高く、熱伝導異方性を有する。第3グラファイト層73を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)は、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して直交するように配置されている。換言すると、第3グラファイト層73を構成する配向性グラファイトシートのシート面(xz面)が、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して平行となるように配置されている。さらに、第3グラファイト層73を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)が、第1グラファイト層71を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)に対して直交するように配置されている。
【0025】
第4グラファイト層74は、第2金属層82及び第2グラファイト層72を介して中間層70に対向するように配置されている。第4グラファイト層74は、複数の配向性グラファイトシートがy軸方向に積層した積層体として構成されている。第4グラファイト層74を構成する配向性グラファイトシートは、xz面に平行なシート面の面内方向の熱伝導率が厚み方向(シート面に直交する方向であり、y軸方向)の熱伝導率よりも高く、熱伝導異方性を有する。第4グラファイト層74を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)は、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して直交するように配置されている。換言すると、第4グラファイト層74を構成する配向性グラファイトシートのシート面(xz面)が、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向(z軸方向)に対して平行となるように配置されている。さらに、第4グラファイト層74を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)が、第2グラファイト層72を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)に対して直交するように配置されている。
【0026】
複数の金属層81,82,83,84の材料には、熱伝導等方性の金属が用いられており、この例では銅が用いられている。第1金属層81は、第1グラファイト層71と第3グラファイト層73の間に配置されており、第1グラファイト層71と第3グラファイト層73を接合する。第2金属層82は、第2グラファイト層72と第4グラファイト層74の間に配置されており、第2グラファイト層72と第4グラファイト層74を接合する。第3金属層83は、第3グラファイト層73に接合するとともに、はんだを介して半導体チップ20に接合する。第4金属層84は、第4グラファイト層74に接合するとともに、絶縁層52を介して冷却器62に密着する。これら金属層81,82,83,84は、接合層として用いられる。特に、第1金属層81及び第2金属層82は、グラファイト層間を強固に接合するとともに、グラファイト層間の伝熱効率を向上させる。
【0027】
伝熱部材22は、中間層70に対して上下対称な形態を有する。即ち、第1グラファイト層71と第2グラファイト層72が中間層70に対して対称な形態を有するように構成されており、第1金属層81と第2金属層82が中間層70に対して対称な形態を有するように構成されており、第3グラファイト層73と第4グラファイト層74が中間層70に対して対称な形態を有するように構成されており、第3金属層83と第4金属層84が中間層70に対して対称な形態を有するように構成されている。このため、第1グラファイト層71を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)と第2グラファイト層72を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)が平行であり、第3グラファイト層73を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)と第4グラファイト層74を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)が平行である。
【0028】
配向性グラファイトシートは、シート面の面内方向の線膨張係数が約1ppm/Kであり、厚み方向(シート面に直交する方向)の線膨張係数が約25ppm/Kである。このため、第1グラファイト層71及び第2グラファイト層72は、x軸方向に大きな線膨張係数を有する。しかしながら、第1グラファイト層71と第2グラファイト層72は、中間層70に対して対称な形態を有するように構成されているので、これらのx軸方向の線膨張係数は同一である。このため、第1グラファイト層71と第2グラファイト層72が相互に機械的に拘束することが抑えられるので、熱応力が緩和される。また、第3グラファイト層73及び第4グラファイト層74は、y軸方向に大きな線膨張係数を有する。しかしながら、第3グラファイト層73及び第4グラファイト層74は、中間層70に対して対称な形態を有するように構成されているので、これらのy軸方向の線膨張係数は同一である。このため、第3グラファイト層73及び第4グラファイト層74が相互に機械的に拘束することが抑えられるので、熱応力が緩和される。この結果、伝熱部材22は、湾曲するように熱変形することが抑えられる。
【0029】
上記したように、伝熱部材22では、複数のグラファイト層71,72,73,74のシート面が、半導体チップ20と冷却器62を結ぶ方向に対して平行となるように配置されている。さらに、中間層70及び複数の金属層81,82,83,84は熱伝導等方性である。このため、伝熱部材22は、半導体チップ20の熱を効率的に冷却器62に伝熱することができる。
【0030】
さらに、伝熱部材22では、第1グラファイト層71を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)と第3グラファイト層73を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)が直交するように配置されており、第2グラファイト層72を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(x軸方向)と第4グラファイト層74を構成する複数の配向性グラファイトシートの積層方向(y軸方向)が直交するように配置されている。これにより、伝熱部材22を全体で観測したときに、伝熱部材22を伝熱する熱は、xy面内にも広がることができるので、半導体チップ20の熱が効率的に冷却器62まで伝熱される。
【0031】
また、伝熱部材22では、中間層70が絶縁体のセラミックで形成されていてもよい。中間層70の材料が絶縁体であると、伝熱部材22が絶縁基板としても機能することができる。このような伝熱部材22(他の伝熱部材26,32,36も同様)が用いられると、図4に示されるように、伝熱部材22,26,32,36と冷却器62,64の間の絶縁層52,54(図1参照)が不要となる。上記したように、このような絶縁層52,54が不要となるので、絶縁層52,54の上下面に塗布されているグリースも不要となる。このため、中間層70が絶縁体のセラミックで形成されている伝熱部材22,26,32,36を用いると、グリースレスの半導体モジュール10を構築することができる。この結果、半導体モジュール10は、極めて高い冷却能を有することができる。
【0032】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
10:半導体モジュール
20,30:半導体チップ
22,26,32,36:伝熱部材
24,34:金属ブロック
28,42,44:電極板
56:絶縁樹脂
62,64:冷却器
70:中間層
71:第1グラファイト層
72:第2グラファイト層
73:第3グラファイト層
74:第4グラファイト層
81,82,83,84:金属層
図1
図2
図3
図4