特許第6423770号(P6423770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6423770
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】受皿装置及び硬貨釣銭機
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
   G07D1/00 341D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-182086(P2015-182086)
(22)【出願日】2015年9月15日
(65)【公開番号】特開2017-58861(P2017-58861A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 卓
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−064581(JP,A)
【文献】 米国特許第08013600(US,B1)
【文献】 実開昭61−185172(JP,U)
【文献】 特開2012−160122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D1/00−3/16
G07D9/00−9/06
G07F5/00−9/10
G07G1/00
G01V3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と当該底部を囲う側壁部とを有し、当該側壁部の一部に前記底部から貯留物を取り出すための通路が設けられた受皿と、
前記底部の裏面に対峙して設けられた基板と、当該基板の面上において、コの字型又はU字型の線状の空芯の周りに渦巻き状の配線パターンが形成されてなるスパイラルコイルと、を有するセンサ素子と、
を備え、
前記スパイラルコイルは、前記空芯の凹部を前記通路に向けて配置される受皿装置。
【請求項2】
硬貨を保管する保管部から指定金種及び指定枚数の硬貨を取り出し、当該硬貨を釣銭として排出する硬貨釣銭機であって、
底部と当該底部を囲う側壁部とを有し、当該側壁部の一部に前記底部に貯留した前記釣銭を取り出すための通路が設けられた受皿と、
前記底部の裏面に対峙して設けられた基板と、当該基板の面上において、コの字型又はU字型の線状の空芯の周りに渦巻き状の配線パターンが形成されてなるスパイラルコイルと、を有するセンサ素子と、
を備え、
前記スパイラルコイルは、前記空芯の凹部を前記通路に向けて配置される硬貨釣銭機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受皿装置及び硬貨釣銭機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬貨の入金や出金を行うための装置として硬貨釣銭機が用いられている。係る硬貨釣銭機では、投入口から硬貨を受け付け、その硬貨を選別する等して金種別に硬貨を保管するための収納庫に保管する。また、硬貨釣銭機は、入金額に対して釣銭が発生した場合に、収納庫に保管されている硬貨の中から指定金種及び指定枚数の硬貨を繰り出し、その硬貨を受皿に排出する。また、受皿には、磁気センサ等のセンサ素子が設けられている。そして、このセンサ素子の検知結果を用いることで、硬貨の取り忘れがないか残留検知が行われている。
【0003】
ところで、上記した磁気センサでは、センサ素子としてコイルが用いられることが一般的である。このようなセンサ素子として、従来、スパイラル状の平面コイル(以下、スパイラルコイル)を用いたものが提案されている。係るスパイラルコイルは、中央に円や矩形状の空芯を有し、当該空芯の周りに渦巻き(スパイラル)状の配線パターンを形成したものが一般的に用いられる。
【0004】
しかしながら、スパイラルコイルを用いた従来のセンサ素子では、その構成上、スパイラルコイルの中央(空芯)付近と比較し、外周付近で検知レベルが低下することが分かっている。そのため、従来のセンサ素子では、スパイラルコイルの外周付近において硬貨を検知できない可能性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、硬貨の検知範囲を拡大させることが可能な受皿装置及び硬貨釣銭機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の受皿装置は、底部と当該底部を囲う側壁部とを有し、当該側壁部の一部に前記底部から貯留物を取り出すための通路が設けられた受皿と、前記底部の裏面に対峙して設けられた基板と、当該基板の面上において、コの字型又はU字型の線状の空芯の周りに渦巻き状の配線パターンが形成されてなるスパイラルコイルと、を有するセンサ素子と、を備え、前記スパイラルコイルは、前記空芯の凹部を前記通路に向けて配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る硬貨釣銭機の一例を示す外観斜視図である。
図2図2は、図1に示した受皿の平面図である。
図3図3は、図2に示した受皿のK−K’線における縦割り断面図である。
図4図4は、実施形態に係るセンサ素子の一例を示す平面図である。
図5図5は、従来構成のセンサ素子の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、センサ素子、受皿装置及び硬貨釣銭機の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、硬貨釣銭機1の一例を示す外観斜視図である。硬貨釣銭機1は、本体ユニット1aと、本体ユニット1aを引出可能に収納するハウジングケース1bとにより構成される。なお、図1では、本体ユニット1aがハウジングケース1bに収納された状態を示している。
【0010】
本体ユニット1aは、正面側に、受皿10と、硬貨投入部20と、硬貨排出口30と、操作表示部40とを備える。また、本体ユニット1aは、内部に、金種判別センサ、プロセッサ等で構成される制御部、硬貨搬送機構、硬貨選別部、硬貨収納部、繰出機構、払出搬送機構等を備える(何れも図示せず)。
【0011】
硬貨投入部20は、硬貨投入口20a、リジェクト部20b、不図示の投入口センサ等を備える。ユーザが硬貨投入口20aに硬貨を投入すると、硬貨投入口20aの入口付近に設けた投入口センサで入金を検出する、この硬貨は、硬貨投入口20aの底に設けた硬貨搬入機構の入金ベルトに乗り、本体ユニット1a内部の奥に搬送される。入金ベルト上の硬貨は、搬送経路途中の金種判別センサで金種及び贋硬貨を検知する。ここで検知された贋硬貨はリジェクト部20bに排出される。
【0012】
入金ベルトに載置された正貨は、その後、硬貨搬送機構により硬貨選別部へ搬送される。硬貨選別部では、硬貨を金種別に選別し、金種ごとの落下用の穴から硬貨を硬貨収納部に金種別に落下させる。この落下の際に、計数センサで金種別の硬貨の枚数を計算する。
【0013】
繰出機構は、硬貨収納部から指定枚数の硬貨をシャッタの開閉操作等により繰り出し、硬貨搬送機構の払出用のベルトに乗せる。この繰り出しの際に検出ベルトで硬貨の枚数を計数する。また、材質センサで硬貨の金種を判別する。払出用のベルトに乗せられた硬貨は、払出搬出機構により、本体ユニット1a内部の奥から手前に搬送され、硬貨排出口30から受皿10へ排出される。そして、本体ユニット1a内部の制御部は、受皿10の下部に設けられた後述するセンサ素子50(図3参照)の検知結果に基づき、受皿10に硬貨が残留しているか否かを検出する。
【0014】
操作表示部40は、表示器及び各種の操作キーを備える。操作表示部40や、各種センサ、シャッタを駆動するソレノイド、各搬送機構のベルト駆動モータ等は、本体ユニット1a内部の制御部と電気的に接続され、制御部により制御されている。
【0015】
なお、本体ユニット1a内部の機構や、各部の制御の仕組みについては、公知の技術を適用することが可能である。例えば、金種毎の横並びの排出用ベルトにより各金種の硬貨を搬送し、硬貨排出口30において、各排出用ベルトの端部から各金種の硬貨を横並びで排出する機構を採用してもよい。この機構では、硬貨排出口30から排出された各金種の硬貨は受皿10に流れ落ちる。
【0016】
次に、受皿10に係る構成について説明する。図2は、図1に示した受皿10の平面図である。また、図3は、図2に示した受皿10のK−K’線における縦割り断面図である。なお、図2においては、受皿10の下側が、図3においては、受皿10の右側が硬貨釣銭機1の正面側となる。
【0017】
受皿10は、本体上部が開口している。そして、その開口部11の底面11Aに、硬貨を受け止め且つその硬貨を貯留する構造を有する。その構造を、理解し易いように二つの構造体(第1貯留部12及び第2貯留部13)に分けて説明する。
【0018】
第1貯留部12は、受皿10で貯留することのできる最大枚数の硬貨のうちの所定枚数の硬貨を貯留するための構造を有する。第1貯留部12は、第1貯留部12の底を形成する底部12aと、底部12aの外周縁の一部に立設する側壁部12b、12c、12dと、底部12aの残りの外周縁と滑らかに繋がり、利用者により硬貨の取り出しが行われる硬貨取出部12eとからなる。
【0019】
また、硬貨取出部12eは、更に、集中取出部12e−1と、硬貨ガイド部12e−2と、傾斜部12e−3とからなる。集中取出部12e−1は、底部12aに溜まった硬貨を利用者が指で手元に引き寄せて手の中に収める際の硬貨の主な通路となる部分である。硬貨ガイド部12e−2は、集中取出部12e−1上の硬貨の移動をガイドする部分である。傾斜部12e−3は、集中取出部12e−1の外側にある硬貨を、集中取出部12e−1又は底部12aに流れ落とす部分である。
【0020】
底部12aは、開口部11の底面11Aにおいて最も低い面を形成する部分である。硬貨は、開口部11の底面11Aの後述する構造により、底部12aに集まるようになっている。利用者は、底部12aに溜まった硬貨を集中取出部12e−1を通じて取り出す。
【0021】
集中取出部12e−1は、滑らかな弧を描く曲面部からなる。この曲面部は、硬貨を取り出す向きとなる。底部12aから開口部11の縁(この場合、一組の硬貨ガイド部12e−2の間に位置する、開口部11の縁)11a又はその近傍にかけて、滑らかな弧を描く形状をとる。集中取出部12e−1と底部12aは表面が滑らかに繋がっている。したがって、集中取出部12e−1は、表面が底部12aの表面から滑らかに弧を描くように立ち上がった構造をとる。なお、集中取出部12e−1の幅(図2に示すM1)は、硬貨釣銭機1に使用する金種のうち、最大の硬貨が通過する程度の幅とすることが好ましい。
【0022】
硬貨ガイド部12e−2は、集中取出部12e−1の端部L1、L2にそれぞれ設けた、硬貨の移動経路を手元方向にガイドするための壁となる構造体である。この一組の壁は、それぞれ、矢印Pで示す硬貨の取出口(縁11aの部分)の方向に沿って延在し、硬貨の移動を集中取出部12e−1内に支持する。
【0023】
本実施形態では、集中取出部12e−1と傾斜部12e−3の境目に段差を設け、その段差部121eを硬貨ガイド部12e−2としての壁に利用する。この場合、集中取出部12e−1と傾斜部12e−3の位置関係は、集中取出部12e−1の方が傾斜部12e−3よりも受皿10の本体内部側に下がった位置になるようにする。これにより集中取出部12e−1から傾斜部12e−3に向けて、それらの境目で垂直に立ち上がった面或いは傾斜面からなる段差部121eが形成される。この段差部121eは、硬貨の移動を集中取出部12e−1内に制限し、集中取出部12e−1から傾斜部12e−3への硬貨の移動を妨げる働きをする。なお、段差部121eの高低差は、集中取出部12e−1に平置きされた状態で移動する硬貨が段差部121eを容易に乗り越えない程度の高さとすることが好ましい。また、段差部121eの傾斜角は、垂直に近い角度であることが好ましい。
【0024】
傾斜部12e−3は、開口部11の縁11bから底部12aにかけての傾斜面を形成する。縁11bは、硬貨取出部12eに位置する開口部11の縁であり、縁11aを除く部分を指す。当該傾斜面は、左右の側壁部12b、12cの面や、後述する第2貯留部13の傾斜部13a、13bに構成される面と、滑らかな曲面で繋がっている。また、当該傾斜面は、集中取出部12e−1の面と、硬貨ガイド部12e−2としての段差部121eを介して繋がっている。
【0025】
第2貯留部13は、硬貨排出口30から排出された硬貨を受け止めて、その硬貨を第1貯留部12に流し込むための構造を有する。更に、その構造は、第1貯留部12で貯留し切れない硬貨を貯留する機能も兼ねる。
【0026】
第2貯留部13は、開口部11の縁11cから第1貯留部12の上部にかけての傾斜部13a、13b、13cを有する。縁11cは、縁11a、11bと合わせて開口部11の縁部全体を構成する。
【0027】
傾斜部13aの傾斜面は、側壁部12bよりも緩やかな傾斜面を一部に有する。また、傾斜部13aと側壁部12bの上端部と傾斜部12e−3の一部とは面で滑らかに繋がる。同様に、傾斜部13bの傾斜面は、側壁部12cよりも緩やかな傾斜面を一部に有する。また、傾斜部13bと側壁部12cの上端部と傾斜部12e−3の一部とは面で滑らかに繋がる。
【0028】
傾斜部13cは、硬貨排出口30の下方に設けられており、硬貨排出口30から排出された硬貨が最初に滑り落ちる傾斜面を有する。傾斜部13cは、側壁部12dの上端部に接続されている。
【0029】
第2貯留部13は、傾斜部13a、13b、13c、及び硬貨取出部12eの上部が第1貯留部12の上部に設けられてなるものであり、それらが囲む面により、所定量の硬貨を貯留するための空間を形成する。
【0030】
ここで、第1貯留部12と第2貯留部13の境界部(第1貯留部12の側壁部12b又は側壁部12cの上端部)における開口面積(開口部の水平面内の面積)は、次の通りとすることが好ましい。上記開口面積を、開口部11の縁部全体に囲まれる部分の開口面積(水平面内に投影したときの面積)よりも小さく設定し、底部12aの面積(水平面内に投影したときの面積)よりも大きく設定する。
【0031】
また、図3に示すように、底部12aの裏面側には、受皿10に貯留(残留)した硬貨を検知するためのセンサ素子50が設けられている。本実施形態の受皿装置は、これら受皿10とセンサ素子50との構成に対応する。以下、センサ素子50について説明する。
【0032】
図4は、センサ素子50の一例を示す平面図である。図4に示すように、センサ素子50は、基板51と、当該基板51の面上に形成されたスパイラルコイル(平面コイル)52とを備える。
【0033】
スパイラルコイル52は、その内部に線状の空芯53を有する。この空芯53は、屈曲した部位(屈曲部)を有し、直線及び曲線の両方又は何れか一方を組み合わせた形状で形成される。図4では、空芯53の形状をコの字型とした例を示している。そして、スパイラルコイル52は、この空芯53の周りに渦巻き(スパイラル)状の配線パターンが布線されることで形成されている。なお、空芯53の形状は、コの字型に限らず、例えば、U字型、V字型、S字型等としてもよいし、これらの形状を連ねたメアンダ形状としてもよい。
【0034】
また、スパイラルコイル52は、基板51の面上において、所定の大きさの領域A1内に亘って形成される。ここで、空芯53は、領域A1の形状に基づいた軌道上に設置することが好ましい。例えば、図4では、空芯53の全てを、領域A1の中心と外周との中間位置に沿って設けた例を示しており、この空芯53の周りにスパイラルコイル52が領域A1に亘って形成されている。なお、図4では、空芯53の全てを中間位置に沿わせる構成としたが、これに限らず、空芯53の一部を中間位置に沿わせる構成としてもよい。また、空芯53の設置位置は、図4の例に限らないものとするが、領域A1内の特定の部位に偏在しないよう、領域A1内で引き回すことが好ましい。また、領域A1の外形等に基づき、領域A1内に亘って配線パターンを引き回すことが可能な軌道上に空芯53を設置することがより好ましい。
【0035】
上記した受皿10の構成において、センサ素子50は、スパイラルコイル52が底部12aの裏面側に対峙するよう設置される。また、この場合、スパイラルコイル52の大きさ、つまり領域A1の大きさは、少なくとも底部12aを覆うことが可能な大きさとすることが好ましい。なお、スパイラルコイル52の巻数、巻方向、間隔、空芯53の幅、長さ、断面形状、屈曲形状等は特に問わず、使用される環境に応じて適宜設計することが好ましい。
【0036】
スパイラルコイル52の端子52a、52bには、図示しないLC発信回路や整流回路、制御部等のデバイスが接続される。センサ素子50(スパイラルコイル52)は、これらのデバイスとともに、受皿10に残留した硬貨を検知する残留検知センサを構成する。具体的に、残留検知センサでは、駆動電力(交流電流)をスパイラルコイル52に印加することで、スパイラルコイル52に磁力線(磁束)を発生させる。このとき、硬貨が受皿10(底部12a)上に存在すると、スパイラルコイル52では、電磁誘導(渦電流損失)作用によりインダクタンスやインピーダンスが変化する。残留検知センサでは、この変化を、交流電流の変化等から検知することで、受皿10に残留する硬貨の有無を検知する。
【0037】
ところで、従来構成のセンサ素子で用いられるスパイラルコイルは、中央に円や矩形状の空芯を有し、当該空芯の周りに渦巻き状の配線パターンを布設したものが一般的である。ここで、図5は、従来構成のセンサ素子の一例を示す平面図である。このセンサ素子100では、基板101の面上に形成されたスパイラルコイル102を示している。スパイラルコイル102は、中央に矩形状の空芯103を有し、この空芯103の周りに渦巻き状に布設された配線パターンで形成される。また、スパイラルコイル102の端子102a、102bには、上述した構成のデバイスが接続され、同様の手法により残留検知が行われる。
【0038】
しかしながら、図5に示したような従来構成のスパイラルコイル102では、空芯103の周辺で磁束量(磁束密度)が高く、外周に行くほど磁束量が低くなることが分かっている。つまり、スパイラルコイル102の中央付近と比較し、外周付近では硬貨の検知レベルが低くなる。そのため、従来構成のスパイラルコイル102を用いて硬貨検知センサを構成すると、スパイラルコイル102の外周付近で硬貨を検知できない可能性がある。
【0039】
一方、本実施形態のスパイラルコイル52では、空芯53が屈曲部を有した線状で形成されているため、当該空芯53を領域A1内に遍在させることができる。これにより、空芯53に沿った周辺領域で磁束量を高くすることができる。また、空芯53の上部に硬貨が重なって存在する確率も増えるため、硬貨の有無をより確実に検知することができる。したがって、本実施形態のセンサ素子50(スパイラルコイル52)を用いることで、従来構成のセンサ素子100(スパイラルコイル102)と比較し、硬貨を検知することが可能な範囲(検知範囲)を拡大することができる。
【0040】
なお、図4に示したスパイラルコイル52の場合、配線パターンの折り返し位置の外周付近(切欠部52c)では、空芯53がないため他の部位と比較し磁束量が低くなる。そのため、切欠部52cの配置位置(方向)については、センサ素子50の使用環境に応じて定めることが好ましい。例えば、受皿10では、集中取出部12e−1の面に沿って、縁11aの位置する取出口方向に硬貨が取り出される。そのため、取りこぼした硬貨は、底部12aの奥側(側壁部12d側)に残留する傾向がある。このような場合、切欠部52cを底部12aの集中取出部12e−1側に向けてセンサ素子50を設置することで、残留した硬貨をより効率的に検知することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0042】
例えば、上記実施形態では、センサ素子50及び受皿装置を、硬貨釣銭機1に適用した例を説明したが、適用先となる装置はこれに限らないものとする。例えば、スーパーマーケット等の店舗で用いられるセルフチェックアウト装置の硬貨排出部分に、上記したセンサ素子50及び受皿装置を適用してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、図2、3で説明した構造の受皿10を用いたが、硬貨等の金属を受け止め且つその金属を貯留可能な受皿であれば、その構造は特に問わないものとする。
【符号の説明】
【0044】
1 硬貨釣銭機
10 受皿
12a 底部
20 硬貨投入部
30 硬貨排出口
40 操作表示部
50 センサ素子
51 基板
52 スパイラルコイル
52a、52b 端子
52c 切欠部
53 空芯
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開平5−225427号公報
図1
図2
図3
図4
図5