(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非プロトン性溶媒(A11)が、エーテル、アミド、ラクトン、ニトリル、カーボネート、スルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
有機酸(C1)が、炭素数1〜15であるカルボン酸(C11)、炭素数1〜15であるモノアルキルリン酸エステル、および炭素数2〜30であるジアルキルリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
無機酸(C2)が、リン酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化ヒソ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記化合物(E1)、上記化合物(E2)および上記化合物(E3)を総称して化合物(E)と記載するものとする。
本発明の電解液において、電解液に電圧が印加されたときに、電解液中に含有される水の電気分解により、陰極側でOH
-が発生し、陽極側でH
+が発生する。H
+は化合物(E)と反応しアンモニウムカチオンとなる。該アンモニウムカチオンがOH
-を中和するため、アルカリ抑制効果を発現するものと思われる。そのため、高温−高湿下でコンデンサを使用しても、化合物(E)の作用により封口体のアルカリ劣化が起こりにくく、封止部からの電解液の漏液を抑制することが出来る。アルキル置換アミジン基を有する化合物の4級化物の一種である上記一般式(1)で表される陽イオン成分を有する化合物(B)と化合物(E)を組み合わせたとき、高温−高湿下でも信頼性の高いコンデンサ用電解液となる。
【0008】
<溶媒(A)>
本発明の電解液を構成する溶媒(A)としては、極性溶媒であることが好ましく、25℃での比誘電率が5〜150である極性溶媒(A1)であることがより好ましく、(A1)のなかでも非プロトン性溶媒(A11)であることがさらに好ましい。
溶媒(A)としては、(1)アルコール、(2)エーテル、(3)アミド、(4)オキサゾリジノン、(5)ラクトン、(6)ニトリル、(7)カーボネート、(8)スルホンおよび(9)その他の有機溶媒が含まれる。
溶媒(A1)としては、(1)アルコール、(3)アミド、(4)オキサゾリジノン、(5)ラクトン、(6)ニトリル、(7)カーボネート、(8)スルホンが含まれる。
溶媒(A11)としては、(3)アミド、(4)オキサゾリジノン、(5)ラクトン、(6)ニトリル、(7)カーボネート、(8)スルホンが含まれる。
【0009】
(1)アルコール
1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミノアルコール、フルフリルアルコールなど)、2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、3価アルコール(グリセリンなど)、4価以上のアルコール(ヘキシトールなど)など。
本発明でプロトン性溶媒(A2)とは上記アルコールを言うものとする。
【0010】
(2)エーテル
モノエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランなど)、ジエーテル(エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなど)、トリエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)。
【0011】
(3)アミド
ホルムアミド(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなど)、アセトアミド(N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなど)、プロピオンアミド(N,N−ジメチルプロピオンアミドなど)、ピロリドン(N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなど)、ヘキサメチルホスホリルアミドなど。
【0012】
(4)オキサゾリジノン
N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノンなど。
【0013】
(5)ラクトン
γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなど。
【0014】
(6)ニトリル
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ベンゾニトリルなど。
【0015】
(7)カーボネート
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど。
【0016】
(8)スルホン
スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなど。
【0017】
(9)その他の有機溶媒
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、芳香族溶媒(トルエン、キシレンなど)、パラフィン溶媒(ノルマルパラフィン、イソパラフィンなど)など。
【0018】
溶媒(A)は、一種または二種以上を併用してもよい。これらのうち、アルコール、エーテル、アミド、ラクトン、ニトリル、カーボネートおよびスルホンが好ましく、さらに好ましくはγ−ブチロラクトン、スルホランであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトンである。
【0019】
また本発明の電解液に用いる溶媒は、非プロトン性溶媒(A11)とプロトン性溶媒(A2)を混合してもよい。(A2)の含有量は(A11)の重量に基づいて0〜100重量%(以下wt%と記載することがある。)である。混合する(A2)として好ましいものは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0020】
<電解質(D)>
本発明の電解液中に含有される電解質(D)は、上記一般式(1)で示されるイミダゾリニウムカチオン(D
C)とアニオン(D
A)からなる塩である。
一般式(1)中、R
1〜R
3は炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4〜R
7は炭素数1〜3のアルキル基または水素原子である。炭素数1〜3のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられる。
【0021】
イミダゾリニウムカチオン(D
C)の具体例としては、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0022】
上記の中で、電気化学的安定性の観点等から、好ましくは1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムである。
【0023】
アニオン(D
A)としては、酸(C)のアニオンが挙げられる。
酸(C)としては、電解液に通常用いられる種々の有機酸および/または無機酸が挙げられる。
有機酸、無機酸としては、例えば下記の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)カルボン酸類
・炭素数2〜15の2〜4価のポリカルボン酸:脂肪族ポリカルボン酸[飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、ス
べリン酸、アゼライン酸、セバチン酸など)、不飽和ポリカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など)]、芳香族ポリカルボン酸[フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など]、S含有ポリカルボン酸[チオジブロピオン酸など]。
・炭素数2〜20のオキシカルボン酸:脂肪族オキシカルボン酸[グリコール酸、乳酸、酒
石酸、ひまし油脂肪酸など]、芳香族オキシカルボン酸[サリチル酸、マンデル酸など]。
・炭素数1〜30のモノカルボン酸:脂肪族モノカルボン酸[飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、
ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸など)、不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸など)]、芳香族モノカルボン酸[安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸など]。
【0024】
(2)フェノール類
・1価フェノール(フェノール類、ナフトール類を含む):フェノール、アルキル(炭素数1〜15)フェノール類(クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、n−もしくはイソプロピルフェノール、イソドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノールなど)、メトキシフェノール類(オイゲノール、グアヤコールなど)、α−ナフトール、β−ナフトールなど。
・多価フェノール:カテコール、レゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど。
【0025】
(3)アルキル基の炭素数1〜15のモノおよびジアルキルリン酸エステル
・モノおよびジメチルリン酸エステル、モノおよびジエチルリン酸エステル、モノおよびジイソプロピルリン酸エステル、モノおよびジブチルリン酸エステル、モノおよびジ−(2−エチルヘキシル)リン酸エステル、モノおよびジイソデシルリン酸エステルなど。
【0026】
(4)スルホン酸
・アルキル(炭素数1〜15)ベンゼンスルホン酸(p−トルエンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸など)、スルホサリチル酸、メタンスルホン酸、三フッ化メタンスルホン酸など。
【0027】
(5)無機酸
・リン酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化ヒソ酸など。
【0028】
(6)その他
・三フッ化メタンスルホニルイミドなどのイミドアニオン、三フッ化メタンスルホニルメチドなどのメチドアニオン。
【0029】
これらの中で、(1)炭素数1〜15であるカルボン酸(C11)、(3)炭素数1〜15であるモノアルキルリン酸エステル、および炭素数2〜30であるジアルキルリン酸エステルおよび(5)無機酸(C2)が好ましく、さらには、フタル酸、マレイン酸、モノおよびジエチルリン酸エステル、モノおよびジイソプロピルリン酸エステル、モノおよびジブチルリン酸エステル、リン酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化ヒソ酸が好ましい。もっとも好ましくは、フタル酸およびマレイン酸である。
【0030】
電解質(D)としては、以下のものが挙げられる。
1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・マレイン酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・マレイン酸アニオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・リン酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・リン酸アニオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジエチルリン酸エステル酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・ジエチルリン酸エステル酸アニオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジイソプロピルリン酸エステル酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・ジイソプロピルリン酸エステル酸アニオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジブチルリン酸エステル酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・ジブチルリン酸エステル酸アニオン。
これらのうち、電気化学的安定性の観点等から、以下のものが好ましい。
1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・マレイン酸アニオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・マレイン酸アニオン。
【0031】
電解質(D)の合成法としては、2級および3級環状アミジンをアルキルハライド、ジアルキル硫酸などで4級化した後に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機酸塩とアニオン交換する方法、炭酸ジエステルで4級化して炭酸塩とし有機酸でアニオン交換する方法(特開平8−67672)、2置換ジアミンのアミド化合物と有機酸を反応させる方法(特開平11−322720)等が知られている。
【0032】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、電解質(D)を主電解質として含有する。ここで主電解質として含有するとは、本発明の電解コンデンサ用電解液中に含有される電解質の50wt%以上は電解質(D)であることを示すものとする。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、(D)以外に電解質(F)を含有していてもよい。(F)の含有量は本発明の電解コンデンサ用電解液中に含有される電解質の50wt%未満である。電解質(F)としては3級アンモニウム塩が挙げられる。具体的にはトリエチルアミン・フタル酸塩、エチルジメチルアミン・フタル酸塩、ジエチルメチルアミン・フタル酸塩、トリエチルアミン・マレイン酸塩、エチルジメチルアミン・マレイン酸塩、ジエチルメチルアミン・マレイン酸塩などが挙げられる。
【0033】
<化合物(E)>
本発明の電解液を構成する化合物(E)は、上記一般式(2)で示される化合物(E1)、上記一般式(3)で示される化合物(E2)および上記一般式(4)で示される化合物(E3)であらわされるが、具体的には以下のものがあげられる。化合物(E)は、一種または二種以上を併用してもよい。
【0034】
(1)上記一般式(2)で示される化合物(E1)
1−エチル−2,3,4−トリメチルイミダゾリジン−2−オール、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリジン−2−オール、1−エチル−2−メトキシ−2,3,4−トリメチルイミダゾリジン、2−メトキシ−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリジン等。
(2)上記一般式(3)で示される化合物(E2)
1−エチル−3,4−ジメチルー2−メチレンイミダゾリジン、1−プロピル−3,4−ジメチル−2−メチレンイミダゾリジン、3−エチル−1,4−ジメチル−2−メチレンイミダゾリジン、1,3,4−トリメチル−2−メチレンイミダゾリジン等。
(3)上記一般式(4)で示される化合物(E3)
1,2,3−トリメチル−4−メチレンイミダゾリジン、1−エチル−2,3−ジメチル−4−メチレンイミダゾリジン等。
【0035】
これらの中で、1−エチル−3,4−ジメチルー2−メチレンイミダゾリジン、1,3,4−トリメチル−2−メチレンイミダゾリジン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリジン−2−オール、2−メトキシ−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリジン、1,2,3−トリメチル−4−メチレンイミダゾリジンが好ましい。
【0036】
化合物(E)の含有量[化合物(E1)、(E2)および(E3)の合計含有量]は、溶媒(A)および電解質(D)の合計重量に対して3wt%以下である。さらに、好ましくは、0.001〜3wt%であり、より好ましくは0.005〜2wt%であり、さらに好ましくは0.01〜1wt%であり、特に好ましくは0.01〜0.5wt%である。
3wt%をこえれば本発明の電解液の電気伝導度が悪くなる。
化合物(E)は、化合物(E1)、化合物(E2)および化合物(E3)から構成されるが、これらの中から一種または二種以上を併用してもよい。
【0037】
化合物(E)の含有量は、ガスクロマトグラフィー(機器:例えばGC−17A(株式会社島津製作所製)、カラム温度:60〜250℃まで10℃/min、検出器FID、カラム:例えばDBWAX(Agilent Technologies社製、30m)により定量することができる。
【0038】
本発明の電解液には必要により、水を添加しても良い。その添加量は、耐熱性の観点から、電解液の重量に基づいて10wt%以下である。
【0039】
本発明の電解液には必要により、電解液に通常用いられる種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、リン酸誘導体(例えば、リン酸、リン酸エステルなど)、ホウ酸誘導体(例えば、ホウ酸、ホウ酸と多糖類〔マンニット、ソルビットなど〕との錯化合物、ホウ酸と多価アルコール〔エチレングリコール、グリセリンなど〕との錯化合物など)、ニトロ化合物(例えば、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノールなど)などを挙げることができ、その添加量は、電解質(D)の電気伝導度と溶媒(A)への溶解度の観点から電解液の重量に基づいて10wt%以下である。
【0040】
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液の製造方法としては、溶媒(A)に電解質(D)を加え、攪拌する事で均一化させた後、化合物(E)を添加し、攪拌混合する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
次に本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を表す。
【0042】
<製造例1>
酢酸エチル(0.1mol)と1,2−ジアミノプロパン(0.1mol)を仕込み、温度140〜180℃、圧力0〜0.1MPaに6時間保持し、アミド化反応を行った。次いで温度110〜150℃で減圧蒸留を行い、2,4−ジメチルイミダゾリンを得た。次にジメチルカーボネート(0.2mol)のメタノール溶液(74wt%)と上記で得た2,4−ジメチルイミダゾリン(0.1mol)を混ぜて、120℃で15時間攪拌することで、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・メチルカーボネート塩のメタノール溶液を得た。
【0043】
フタル酸(0.1mol)を、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・メチルカーボネート塩(0.1mol)のメタノール溶液に加え、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンのメタノール溶液を得た。上記溶液を1.0kPa以下の減
圧、50℃で、メタノールの留出がなくなるまで加熱してメタノールを留去した後、温度を50℃から100℃に上昇させて30分加熱してモノメチルカーボネート(HOCO
2CH
3)、メタノール及び二酸化炭素(メタノール及び二酸化炭素は、モノメチルカーボネートの熱分解により僅かに生成する。以下、これらを副生物と略する。)を留去することで、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンを得た。得られた1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンをメタノールとイソプロパノールを使用して再結晶し、不純物を除去した電解質(D−1){1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン}を得た。
【0044】
<製造例2>
フタル酸(0.1mol)の代わりにマレイン酸(0.1mol)を使用すること以外は、製造例1と同様に製造して電解質(D−2){1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・マレイン酸アニオン}を得た。
【0045】
<製造例3>
炭酸ジエチル(0.1mol)と2−メチルイミダゾリン(四国化成製、0.1mol)を仕込み、温度100〜150℃で10時間攪拌することで、1−エチル−2−メチルイミダゾリンを得た。次にジメチルカーボネート(0.1mol)のメタノール溶液(74wt%)と上記で得た1−エチル−2−メチルイミダゾリン(0.1mol)を混ぜて、120℃で15時間攪拌することで、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・メチルカーボネート塩のメタノール溶液を得た。
【0046】
フタル酸(0.1mol)を、上記で得た1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・メチルカーボネート塩(0.1mol)のメタノール溶液に加え、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンのメタノール溶液を得た。上記溶液を1.0kPa以下の減
圧、50℃で、メタノールの留出がなくなるまで加熱してメタノールを留去した後、温度を50℃から100℃に上昇させて30分加熱してモノメチルカーボネート(HOCO
2CH
3)、副生物を留去することで、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンを得た。得られた1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオンをメタノールとイソプロパノールを使用して再結晶し、不純物を除去した電解質(D−3){1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム・フタル酸アニオン}を得た。
【0047】
<製造例4>
リン酸トリエチル(0.1mol)にジエチルアミン(0.2mol)を添加し、125℃、40時間加熱し、ジエチルリン酸エステルモノアニオン・ジエチルアミンカチオン塩を作成する。その後、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・メチルカーボネート塩(0.1mol)のメタノール溶液に加え、塩交換反応を行い、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジエチルリン酸エステルモノアニオンのメタノール溶液を得た。上記溶液を1.0kPa以下の減
圧、135℃で、メタノール、ジエチルアミンなどのアミン類の留出がなくなるまで加熱して、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジエチルリン酸エステルモノアニオンを得た。得られた1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジエチルリン酸エステルモノアニオンをメタノールとイソプロパノールを使用して再結晶し、不純物を除去した電解質(D−4){1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・ジエチルリン酸エステルモノアニオン}を得た。
【0048】
<製造例5>
酢酸エチル(0.1mol)と1,2−ジアミノプロパン(0.1mol)を仕込み、温度140〜180℃、圧力0〜0.1MPaに6時間保持し、アミド化反応を行った。次いで温度110〜150℃で減圧蒸留を行い、2,4−ジメチルイミダゾリンを得た。得られた2,4−ジメチルイミダゾリンに、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(以下、THFと記載)30mlおよびn−ブチルリチウム0.1molを加え、25℃で1時間攪拌した。その後、ヨウ化メチル0.2molを加え、15℃で1時間攪拌した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィーにて精製し、1,3,4−トリメチル−2−メチレンイミダゾリジン(E2−1)を得た。
【0049】
<製造例6>
ヨウ化メチルの代わりにヨウ化エチルを用いること以外は製造例5と同様にして、1−エチル−3,4−ジメチル−2−メチレンイミダゾリジン(E2−2)を得た。
【0050】
<製造例7>
酢酸水銀(II)(0.1mol)に、水100mlとTHF100mlを加え、製造例5で得られた(E2−1)(0.1mol)を加えて室温で10分間攪拌した。この溶液に3M水酸化ナトリウム水溶液50mlと、3M水酸化ナトリウム水溶液50mlにNaBH
4(0.1mol)を加えた溶液を順に加える。ただちに水銀が遊離してくるのでこれを沈殿させ、食塩50gを加えて水
溶液を飽和させた。THF層を分取し、ロータリーエバポレーターにてTHFを留去することにより、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリジン−2−オール(E1−3)を得た。
【0051】
<製造例8>
製造例7で得られた(E1−3)(0.1mol)をジオキサン100mlに溶かし、65℃で攪拌下、粉砕した水酸化カリウム20gを加えた。次に、硫酸ジメチル(0.1mol)をゆっくりと滴下した。65℃で2時間攪拌した後、固体をろ別し、ろ液を蒸留することで2−メトキシ−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリジン(E1−4)を得た。
【0052】
<製造例9>
水酸化カリウム3.0molを水200mlに加えた溶液に1,2−ジアミノ−3−ブロモプロパン(1.0mol)を加えた。温度を85〜95℃に保ちながら撹拌した。反応混合物を50℃まで冷却し、濃塩酸125mlを加え下層を分離し、塩化カルシウムで乾燥した。塩化カルシウムをろ別し、液体を蒸留することで1,2−ジアミノ−2−プロペンを得た。
アセトアルデヒド(0.1mol)をクロロホルム50mlに溶解した溶液を、1,2−ジアミノ−2−プロペン(1.0mol)に0℃でゆっくりと加えた。一晩静置した後、クロロホルムをロータリーエバポレーターにて留去し、残留物をヘキサンで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターにて留去することにより、2−メチル−4−メチレンイミダゾリジンを得た。
2−メチル−4−メチレンイミダゾリジン(0.1mol)をTHF30mlに溶解させ、ヨウ化メチル(0.2mol)を加え、15℃で1時間撹拌した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィーにて精製し、1,2,3−トリメチル−4−メチレンイミダゾリジン(E3−5)を得た。
【0053】
<電解液の調製>
上記製造例1〜4で得られた電解質(D−1)〜(D−4)、上記製造例5〜9で得られた化合物(E2−1)、(E2−2)、(E1−3)、(E1−4)、および(E3−5)、γ−ブチロラクトン(三菱化学社製)およびスルホラン(住友精化製)、を表1に示す配合量で混合溶解させて実施例1〜42、比較例1〜7の電解液を調製した。
化合物(E)の含有量は下記の測定条件で測定した測定値である。化合物(E)の含有量は、溶媒(A)および電解質(D)の合計重量に対する(E)の含有量である。
【0054】
化合物(E)の定量
以下の測定条件で行った。
機器:島津製作所製GC−17A、
カラム:Agilent Technologies社製キャピラリーカラム DBWAX(LENGTH:30m、ID:0.53mm)、
検出器:FID、
キャリアガス:ヘリウム、
気化室温度:300℃、
検出器温度:300℃、
カラム温度:初期温度60℃から10℃/分の速度で250℃まで昇温、
注入量:1μlである。
検量線は化合物(E)を用いて作成した。
【0055】
<電解液の評価>
本発明の実施例1〜42と比較例1〜7の電解液について、液漏れ性、電気伝導度および電気伝導度の変化率を測定し、結果を表1〜3に示した。
【0056】
液漏れ性
電解液を使用して巻き取り形のアルミニウム電解コンデンサ(定格電圧6.3V−静電容量220μF、サイズ;φ6.5mm×L4.5mm)を作製した。封口ゴムには過酸化物加硫のブチルゴムを使用した。作製したアルミ電解コンデンサは、定格電圧を引加し、3000時間後の封口体の様子を観察した。温度、相対湿度の条件は以下の3通り実施した。条件A;(温度105℃、相対湿度85%)、条件B;(温度130℃、相対湿度85%)、条件C;(温度140℃、相対湿度85%)
【0057】
電気伝導度
東亜ディーケーケー株式会社製電導度計CM−40Sを用い、30℃での耐熱試験前の電解液の電気伝導度を測定した。
【0058】
電気伝導度の変化率
密閉SUS(ステンレス製)容器中で130℃、1000時間の耐熱試験を実施した後の、下記の式で表される電気伝導度の変化率を測定した。
電気伝導度の変化率(%)=100×([耐熱試験前の電気伝導度]−[耐熱試験後の電気伝導度])/[耐熱試験前の電気伝導度]
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
実施例1〜6と比較例1、実施例7〜12と比較例2、実施例13〜18と比較例3、実施例19〜24と比較例4、実施例25〜30と比較例5、実施例31〜36と比較例6、実施例37〜42と比較例7をそれぞれ比べると、液漏れ性については実施例は比較例とほとんど同程度の高い液漏れ性を有しており、電気伝導度と電気伝導度の変化率についてはいずれも実施例が優れていることがわかった。