(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取り付け部は、一対の前記ヘッドレストステー間に渡って取り付けられ、前記音響マイクは、前記一対のヘッドレストステーの間の中間部に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の集音装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら以下に説明する。
[第1の実施の形態]
図1及び
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るヘッドレスト装置10を示す斜視図である。
図1では、後述するクッション芯材12の図示が省略されている。
図2では、後述するクッション13の前面の図示が省略されている。
ヘッドレスト装置10は、車室内に配置される乗員用のシートに設けられるものである。上記車室としては、例えば、自動車、電車、飛行機及び船舶等の車室が挙げられるが、本第1の実施の形態では、自動車の前部座席であって運転者が着座するシートに設けられるヘッドレスト装置10を例に挙げて説明する。自動車としては、通常の四輪車の他、例えば、側面のドアを備えていない小型の電気自動車が挙げられる。
シート(不図示)は、運転者(着座者)が着座する座面部(不図示)と、座面部の後端から僅かに後ろに傾斜した姿勢で上方に延在する背当て部(不図示)と、この背当て部の上端に取り付けられるヘッドレスト装置10とを備える。
【0011】
ヘッドレスト装置10は、音響スピーカー50及び音響マイク51を備えるとともに、近距離無線通信によりヘッドレスト装置10を携帯端末等の他の機器(不図示)と連携可能とする通信部(不図示)を備える。上記他の機器としては、例えば、携帯電話、スマートフォン及びタブレット端末等が挙げられる。上記近距離無線通信としては、例えば、Bluetooth(近距離無線通信規格:登録商標)が挙げられる。なお、ヘッドレスト装置10と上記他の機器とは、近距離無線通信に限らず、例えば有線によって接続することも可能である。
ヘッドレスト装置10は、上記他の機器と連携した状態では、他の機器から読み出されたコンテンツの音声データや、車両を目的地まで誘導するための誘導音声データなどを、音響スピーカー50から音声出力する。また、着座者は、ヘッドレスト装置10が上記他の機器と連携した状態では、音響マイク51で集音された音声をボイスコマンドとして他の機器を操作したり、音響マイク51を介してハンズフリーで通話したりすることができる。
【0012】
ヘッドレスト装置10は、ヘッドレスト装置10の骨組みとしてのフレーム11と、フレーム11に連結されるヘッドレスト本体としてのクッション芯材12(芯材)と、クッション芯材12の周囲を覆うように設けられ、着座者の頭部を受けるクッション13とを備える。本第1の実施の形態では、ヘッドレスト本体は、クッション芯材12であるが、ヘッドレスト本体は、最外層のクッション13によって覆われるものであれば良く、クッション芯材12に加えて他の部材を含んでいても良い。
【0013】
図3は、クッション芯材12及びフレーム11を分解した斜視図である。
フレーム11は、左右方向に並んで上下方向に延在する一対のメインフレーム15,15と、メインフレーム15,15の上端部を左右に連結する上部クロスメンバ16と、上部クロスメンバ16の下方でメインフレーム15,15を左右に連結する下部クロスメンバ17とを備える。フレーム11は、金属製である。
メインフレーム15,15は、パイプ状に形成されており、上記背当て部と略平行に上方へ延びるステー部18,18(取り付けステー)と、ステー部18,18の上端で前方へ屈曲してやや前傾した姿勢で上方に延びる内部フレーム部19,19とを備える。
内部フレーム部19,19は、クッション13の内側でヘッドレスト装置10の内部に位置する。ステー部18,18は、上記背当て部の上面に形成された取り付け孔部(不図示)に挿入されてシートに固定される。ヘッドレスト装置10は、取り付け孔部へのステー部18,18の挿入深さを調節することで、着座者の体格等に合わせて取り付けの高さ位置を変更可能に構成されている。
【0014】
クッション芯材12は、後面が開口した略箱型の前側ケース30と、前面が開口した略箱型の後側ケース31とを互いの開口で合わせることで、密閉された箱状に形成されている。クッション芯材12は、上下方向及び左右方向に長く、前後方向に短い略直方体形状に形成されている。前側ケース30及び後側ケース31は、樹脂成型品である。
前側ケース30及び後側ケース31は、開口の周縁部に合わせ面32,33をそれぞれ有する。詳細には、前側ケース30の合わせ面32に形成された溝部32aに後側ケース31の合わせ面33が嵌まることで、合わせ面32,33は閉じられる。合わせ面32,33の間には、枠状のパッキン(不図示)が介装されることで密閉性が向上されている。また、合わせ面32,33は、例えば、超音波溶着によって接合して密閉されても良い。
【0015】
上部クロスメンバ16及び下部クロスメンバ17の前面には、固定孔部20が複数設けられ、固定孔部20には、前側ケース30をフレーム11に固定する前側ケース固定ボルト21(
図5)が締結される。上部クロスメンバ16及び下部クロスメンバ17の後面には、固定孔部22が複数設けられ、固定孔部22には、前側ケース30をフレーム11に固定する後側ケース固定ボルト23(
図4)が締結される。
前側ケース30は、前側ケース固定ボルト21が挿通される固定部34を複数備える。後側ケース31は、後側ケース固定ボルト23が挿通される固定部35を複数備える。詳細には、固定部34,35は、クッション芯材12の内側へ窪む有底円筒状に形成されており、前側ケース固定ボルト21及び後側ケース固定ボルト23はこの円筒形状の底部に挿通される。
【0016】
前側ケース30及び後側ケース31は、フレーム11を前後から挟むとともに、合わせ面32,33同士が嵌まるように配置され、外側から設けられる前側ケース固定ボルト21及び後側ケース固定ボルト23によってフレーム11に固定される。すなわち、フレーム11の上部は、中空に形成されたクッション芯材12の内部に位置する。
クッション芯材12は、ステー部18,18が下方へ貫通するステー用貫通孔36,36を下部に備える。ステー用貫通孔36,36とステー部18,18との間には、シール部材(不図示)が設けられ、クッション芯材12内部の密閉性が確保される。
【0017】
図4は、ヘッドレスト装置10の縦断面図である。
図5は、ヘッドレスト装置10の縦断面図である。
図6は、ヘッドレスト装置10の横断面図である。ここで、
図4及び
図6では、音響スピーカー50を通る位置の断面が示されている。
図5では、ヘッドレスト装置10の幅方向の中央の断面が示されている。
図3〜
図6を参照し、前側ケース30は、後側ケース31側へ略水平に延びる仕切り板部37を内部の下部に備える。後側ケース31は、仕切り板部37の後端が嵌まる係合部38を内部の下部に備える。
【0018】
クッション芯材12の内部の空間は、仕切り板部37によって、下部の収納部39と、収納部39の上方のエンクロージャー部40(中空部)とに仕切られている。エンクロージャー部40は、収納部39よりも広い空間を有する。
クッション芯材12は、着座者の後頭部Hに面する前面12a(一部の面)と、後面12bと、天面12cと、下面12dと、右側面12eと、左側面12fとを備える。
【0019】
クッション芯材12には、左右一対の音響スピーカー50,50と、音響マイク51と、サブウーハー52とが設けられる。詳細には、音響スピーカー50,50、音響マイク51及びサブウーハー52は、前面12aにおいてエンクロージャー部40の前面である音響機器取り付け面41に取り付けられる。
また、クッション芯材12には、音響スピーカー50,50、音響マイク51及びサブウーハー52を制御する制御部53と、音響スピーカー50、音響マイク51、サブウーハー52及び制御部53に電力を供給する充電式のバッテリー54とを備える。制御部53及びバッテリー54は、収納部39に収納される。前記通信部は、制御部53に含まれている。
クッション芯材12の左側面12fには、制御部53及びバッテリー54への外部からの接続端子や電源スイッチ等が配置されるインターフェース部55が設けられている。
ヘッドレスト装置10は、バッテリー54を備えるとともにシートの背当て部に対して別体で着脱自在に設けられており、単独で動作可能である。
【0020】
図7は、音響スピーカー50の正面図である。
各音響スピーカー50は、略長方形形状の枠部56と、枠部56に支持される振動板57と、ボイスコイル及びマグネット等からなり振動板57を駆動する駆動部(不図示)とを備える。
振動板57は、左右方向よりも上下方向に長細い長円状(レーストラック状)に形成されている。詳細には、振動板57の外形は、互いに平行に直線状に上下に延びる左右の側縁57a,57aと、左右の側縁57a,57a間を上端及び下端でそれぞれ繋ぐ半円状の円弧部57b,57bとを備える。
【0021】
図2及び
図6に示すように、音響機器取り付け面41は、着座者の後頭部Hを受ける耐衝撃面であり、ヘッドレスト装置10の幅方向の中央で平面視において略平坦に形成される受け面部58と、受け面部58の左右の側方でエンクロージャー部40の内側へ一段窪んだスピーカー収納凹部59,59とを備える。スピーカー収納凹部59,59の底面59aは、ヘッドレスト装置10の幅方向の外側ほど深さが深くなるように傾斜しているとともに、音響スピーカー50,50が嵌まる開口部を備える。音響スピーカー50,50は、傾斜した底面59aに枠部56を介して取り付けられることで、外向きに傾斜して配置される。音響スピーカー50,50の音S1は、スピーカー収納凹部59,59の前面の開口から前方に出力される。
【0022】
図6に示すように、音響スピーカー50,50は、後頭部Hの左右の側方に位置するように、音響機器取り付け面41の左右の縁部に配置されとともに、その長手方向が上下方向を指向するように配置される。また、音響スピーカー50,50は、略水平に音声を出力できるように振動板57を前方に向けて配置されるとともに、出力した音声が前方側ほど左右の外側に広がるように、外向きに傾斜して配置される。
このように、上下に細長い音響スピーカー50,50をヘッドレスト装置10に設けたため、振動板57の全体としての大きさを保ちながらヘッドレスト装置10の横幅を小さくできる。このため、音質を確保できるとともに、着座者が後方を確認する際に、ヘッドレスト装置10が邪魔にならず、後方の視認性が良い。また、ヘッドレスト装置10は、音響スピーカー50,50を有していても横幅が大きくならないため、汎用性が高く、様々な車種に適応可能である。
【0023】
また、音響スピーカー50,50は、上下に細長いため、
図4及び
図6に示すように、音響スピーカー50,50の音S1は、左右方向には狭い範囲で出力され、上下方向には広い範囲で出力される。すなわち、音響スピーカー50,50の音S1の指向性は、左右方向では狭く、上下方向では、左右方向よりも広い。
これにより、上下方向に広い範囲に音S1を出力でき、着座者の頭部の高さ位置や、ヘッドレスト装置10の上下の調整位置に影響されずに、着座者に常に音質の高い音を提供できる。また、左右方向に音S1が広がり難いため、着座者に対してパーソナルな音響空間を提供でき、着座者の隣のシート側にヘッドレスト装置10の出力する音が届くことを抑制できる。
【0024】
さらに、音響スピーカー50,50は、出力した音S1が前方側ほど左右の外側に広がるように、外向きに傾斜して配置されているため、音響スピーカー50,50の左右の間隔を小さくしてヘッドレスト装置10を小型化した構成であっても、音が着座者の耳に届くように音を左右に広がらせることができ、良好なステレオ感を着座者に感じさせることができる。
【0025】
また、本第1の実施の形態では、クッション芯材12で音響スピーカー50,50を支持することで、密閉された中空のクッション芯材12のエンクロージャー部40を、低音を増強させるエンクロージャーとして使用している。このため、専用のエンクロージャーを設ける必要がなく、構造を簡略化できる。また、比較的大きな内部空間を有するクッション芯材12をエンクロージャーとして使用するため、音質が良い。
さらに、パイプ状のメインフレーム15,15を、エンクロージャー部40と外部空間とを連通させる低音ダクトとして用いることができる。この場合、例えば、エンクロージャー部40内で開口するメインフレーム15,15の上端と、外部空間で開口するメインフレーム15,15の下端の開口とを介して、エンクロージャー部40の内外に空気を流通させることができる。これにより、専用のダクトを設けることなく、音質を向上できる。
【0026】
図3及び
図5に示すように、音響機器取り付け面41は、サブウーハー52が取り付けられるウーハー取り付け面60を下部に備える。詳細には、ウーハー取り付け面60は、スピーカー収納凹部59,59の下方においてクッション芯材12の幅方向の中央に設けられており、前下方を向くように傾斜している。サブウーハー52は、ウーハー取り付け面60に取り付けられることで前下方を向き、前下方に音S2を出力する。サブウーハー52の振動板は、制御部53により制御される駆動部(不図示)によって駆動される。このように、サブウーハー52を下向きに設けることで、着座者の体の下の部分に音を伝達でき、着座者に低音を感じ易くさせることができるという効果が得られる。
【0027】
図2、
図3及び
図5に示すように、音響機器取り付け面41の受け面部58は、エンクロージャー部40の内側へ向かって窪む集音部61を備える。集音部61は、音響スピーカー50,50の間でヘッドレスト装置10の幅方向の中央部に配置されるとともに、サブウーハー52の上方でヘッドレスト装置10の上下方向の中央部に配置され、後頭部Hの後方に位置する。集音部61は、後端側ほど先細る略円錐状に形成されており、集音部61の略円錐形状の軸線(不図示)は、前方へ略水平に延びている。集音部61の前面には、集音部61内に音を取り込む集音開口部61aが形成されている。なお、集音部61は集音可能な形状であれば良く、略円錐形状に限定されるものではない。集音部61は、例えば、略角錐状または略円錐台形状等の形状であっても良い。
【0028】
音響マイク51は、集音部61内に配置される。詳細には、音響マイク51は、円柱状に形成されており、その軸線Lが集音部61の軸線に略一致するように集音部61の中央に配置される。このように、集音部61内に音響マイク51を設けることで、音を効率良く音響マイク51に集音できるため、着座者が前方に向かって発した音声であっても音響マイク51で確実に受音できる。
音響マイク51は、ヘッドレスト装置10の上下の中央部で後頭部Hの表面に最も近接した位置に配置されている。着座者の音声は、口や鼻孔だけではなく、頭の表面の振動によっても空中に放射されるため、本第1の実施の形態のように、音響マイク51を頭部に近接配置することで、着座者の音声を効率良く音響マイク51で集音できる。
また、ヘッドレストに骨伝導式のマイクを内蔵した従来の構成では、少なくともヘッドレストに頭を付けた状態でないと十分に集音することができず、車両においては、通常、着座者はヘッドレストに頭を付けたまま運転等をすることは稀であるため、集音が困難であった。しかし、本第1の実施の形態では、ヘッドレスト装置10に頭を付けなくとも音響マイク51で集音でき、使い勝手が良い。
また、着座者の音声は、着座者から直接的に音響マイク51に集音されるだけではなく、周囲のフロントガラス等の物体によって反射することによっても音響マイク51に集音される。音は、前方に開口する集音開口部61aから集音されるため、側方や後方からの音が音響マイク51に集音されることを抑制でき、着座者の音声を正確に受音できる。すなわち、集音部61は、前方からの音声を優先的に集音する集音機構を構成する。
【0029】
また、音響マイク51は、集音部61内で奥まった位置に配置されており、音響マイク51の前端51aは、受け面部58の表面よりも後方に位置している。このため、後頭部Hが音響マイク51に触れることを防止できる。
音響マイク51及び音響スピーカー50,50は、技術基準、具体的には、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(2005.11.09)別添30(座席及び座席取付装置の技術基準)」を満たすように考慮されている。
【0030】
本第1の実施の形態では、音響スピーカー50,50、サブウーハー52及び音響マイク51は、上記保安基準の内部突起要件及びR(曲率半径)要件に適合するように配置されている。詳細には、音響マイク51は、集音部61内で、奥まった位置に配置されることで、測定用の直径165mmの球体(ヘッドフォーム)が音響マイク51に接触し難く、また、接触した場合でも接触部分がR要件に適合するように配置されている。
【0031】
また、音響スピーカー50,50はスピーカー収納凹部59,59内で奥まった位置に配置され、サブウーハー52も音響機器取り付け面41から奥まった位置に配置されることで、上記直径165mmのヘッドフォームが音響スピーカー50,50及びサブウーハー52に接触し難く、また、接触した場合でも接触部分がR要件に適合するように配置されている。
【0032】
また、本第1の実施の形態では、音響マイク51がクッション13の内側に設けられているため、車内に流入する風が音響マイク51に直接触れることがない。このため、音響マイク51が風切り音を集音することを防止でき、音響マイク51に入力されるノイズを低減できる。
また、音響マイク51をクッション芯材12に設けたため、音響マイク51と制御部53とを繋ぐ配線をヘッドレスト装置10内に設けることができ、配線の煩わしさを無くすことができる。また、音響マイク51をヘッドレスト装置10に内蔵したため、音響マイク51が着座者の邪魔にならない。
【0033】
また、音響マイク51を音響スピーカー50,50の間に配置し、音響スピーカー50,50を外向きに配置したため、音響スピーカー50,50の音S1が音響マイク51に直接的に受音されることを防止でき、音響マイク51が音S1に影響されることを防止できる。
さらに、サブウーハー52は、音響マイク51の下方で前下方に音S2を出力するため、音S2が直接的に音響マイク51に受音されることを防止でき、音響マイク51が音S2に影響されることを防止できる。また、サブウーハー52は、後頭部Hの後方側から前下方に音S2を出力するため、音S2は、主として、頭部よりも体積の大きい着座者の胴体部を介して着座者に伝達される。このため、着座者に低音を感じ易くさせることができ、迫力のある低音を提供できる。
【0034】
また、サブウーハー52は、音響スピーカー50,50と同様に、密閉された中空のクッション芯材12のエンクロージャー部40によって支持されており、低音を増強させるエンクロージャーとしてエンクロージャー部40を使用している。このため、専用のエンクロージャーを設ける必要がなく、構造を簡略化できる。また、比較的大きな内部空間を有するクッション芯材12をエンクロージャーとして使用するため、音質が良い。
すなわち、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52は、クッション芯材12のエンクロージャー部40をエンクロージャーとして共用している。ここで、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52を同一のエンクロージャー部40に設けた場合、相互に干渉して音質に影響が出ることが考えられるが、ヘッドレスト装置10は、頭部に近接して設けられるものであり、音の出力が比較的小さくて済むため、上記干渉の影響は小さなものとなる。
【0035】
さらに、前側ケース固定ボルト21が挿通される固定部34(
図2)は、音響マイク51の上方において音響スピーカー50,50の間、及び、音響スピーカー50,50の下方においてサブウーハー52の左右側方にそれぞれ設けられている。このため、音響スピーカー50,50、音響マイク51及びサブウーハー52をバランス良く配置しながら、前側ケース30を強固に固定できる位置に設けられた固定部34によって前側ケース30を固定でき、クッション芯材12の密閉性を確保できる。
【0036】
図4〜
図6に示すように、クッション13は、クッション芯材12の前面12aを覆う前面クッション部62と、クッション芯材12の残りの面を覆う後部側クッション部63とを備える。
後部側クッション部63は、残りの面である後面12b、右側面12e、左側面12f、下面12dの後部及び天面12cの後部を覆う。前面クッション部62は、前面12aの全体、下面12dの前部及び天面12cの前部を覆う。前面クッション部62と後部側クッション部63とは、縁部で繋ぎ合わされて袋状に形成されており、被せられるようにしてクッション芯材12に装着される。
【0037】
後部側クッション部63は、音を高効率で減衰する素材で構成される減衰層63aと、遮音性の高い素材で構成される遮音層63bとの2層を備える。
減衰層63aは、例えば、ウレタン等の吸音性能が高く、且つ、クッション性が高い樹脂で構成される。ウレタンは、例えば、多孔質構造を備える連続気泡体のものを用いることで、高い吸音性が得られる。
【0038】
遮音層63bは、縫製可能であり、且つ、振動(音)の減衰性及び遮音性が高い軟質樹脂材料により構成される。遮音層63bは、例えば、エラストマーにより構成され、一例としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーから構成される。
減衰層63aは、クッション芯材12の後面12bに密着する内層であり、遮音層63bは、外側に露出する外層である。減衰層63aの外面と遮音層63bの内面とは、密着して接合されており、減衰層63aと遮音層63bとは一体化されている。減衰層63aは遮音層63bよりも厚く形成されている。
すなわち、後部側クッション部63は、ヘッドレストとしてのクッション性を備えるとともに、音を効率良く減衰及び遮音できる素材から構成されている。
【0039】
前面クッション部62は、繊維体を編んで立体的な網状に構成した立体網状クッション体であり、いわゆる繊維パッドである。上記繊維体としては、例えば、ポリプロピレンの繊維体や、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの混紡繊維体が上げられる。詳細には、前面クッション部62は、上記立体網状クッション体からなる前面クッション部本体62aと、前面クッション部本体62aの表面を覆う前面パッド部62bとを備える。前面パッド部62bは、前面クッション部本体62aよりも網目が粗な立体網状クッション体により構成されている。
前面クッション部62は、高いクッション性を備えるとともに、立体網状構造により、高い通音性及び通気性を備える。すなわち、前面クッション部62は、ヘッドレストとしてのクッション性を備えるとともに、音を効率良く通音できる素材から構成されている。
【0040】
音響スピーカー50,50及びサブウーハー52から前方に出力される音S1,S2は、高い通音性を備えた前面クッション部62を通って前方に出力される。他方、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52から後方に出力される音は、後部側クッション部63によってヘッドレスト装置10内で減衰及び遮断され、後方の外側にはほとんど出力されない。詳細には、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52から後方に出力される音は、まず、減衰層63aで減衰されて弱められ、その後、遮音層63bで減衰及び遮音されるため、後方に漏れ出す音を効果的に遮音できる。これにより、通音性の高い前面クッション部62を通して前方に音を供給できるとともに、後方に漏れる音を後部側クッション部63によって小さくできるため、着座者にパーソナルな音響空間を提供できる。
【0041】
また、前面クッション部62は、略前面が通音性の良い素材で構成されており、クッションの一部に通音孔等を設けた構成に比して、前面クッション部62が音に与える影響を小さくできる。このため、ヘッドレスト装置10の音質が良い。また、上記通音孔等を設けた構成では、頭部で通音孔が塞がれてしまうことが考えられ、この場合、音質が劣化する。これに対し、本第1の実施の形態では、前面クッション部62の略前面が通音性の良い素材で構成されており、頭部によって前面クッション部62の全体が塞がれてしまうことがないため、良い音質が得られる。ここで、前面クッション部62における通音性の良い素材で構成される部分は、正面視において頭部を前面クッション部62側に投影した投影部の領域よりも広い領域に亘って設けられることが望ましい。すなわち、前面クッション部62における通音性の良い素材で構成される部分は、頭部がヘッドレスト装置10に当接した状態で、正面視において頭部で隠れない範囲まで設けられることが望ましい。
さらに、着座者の音声は、通音性の高い前面クッション部62を通って音響マイク51に入力されるため、音声が前面クッション部62によって減衰されることを抑制でき、音響マイク51に正しく音声を入力できる。
また、後方や側方からヘッドレスト装置10に入力される音を後部側クッション部63によって低減できるため、音響マイク51は前方からの音を正しく受音できる。
【0042】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、クッション芯材12による密閉構造とし、このクッション芯材12に音響スピーカー50,50が配置されているため、クッション芯材12を音響スピーカー50,50のエンクロージャー部40として使用できる。このため、簡単な構造でヘッドレスト装置10に音響スピーカー50,50を設けることができる。
【0043】
また、音響スピーカー50,50が左右に狭く、上下方向に長く形成されているため、音響スピーカー50,50の音の上下方向の指向性を広くできる、このため、ヘッドレスト装置10の上下の位置や、聴取者の高さ位置に関わらず、高い音質を提供できる。また、ヘッドレスト装置10を左右にコンパクトに形成できる。
また、一つのクッション芯材12を複数の音響スピーカー50,50のエンクロージャー部40として用いることができ、構造を簡単にできる。
【0044】
さらに、左右の音響スピーカー50,50が左右方向外向きに配置されており、音S1が左右の外側に広がるため、ヘッドレスト装置10を左右にコンパクト化した構成であっても、良好なステレオ感を得ることができる。
また、クッション芯材12がサブウーハー52を含み、サブウーハー52がクッション芯材12の垂直方向下方に向けて配置されているため、主として着座者の頭部よりも下の部分にサブウーハー52の音を伝達でき、着座者に低音を感じ易くさせることができる。
【0045】
また、クッション芯材12にシートへの一対のステー部18,18が連結されているため、ステー部18,18を利用してクッション芯材12の支持剛性を向上できる。
また、クッション芯材12の中空部に低音ダクトとしてのメインフレーム15,15が連結されている構成としても良い。
この場合、クッション芯材12の中空部に低音ダクトとしてのメインフレーム15,15が連結されているため、低音ダクトのサイズ等の設定を調節することで、所望のスピーカー特性を得られる。
さらに、クッション芯材12に耐衝撃面としての音響機器取り付け面41を形成し、音響機器取り付け面41のスピーカー収納凹部59,59に開口を形成し、この開口の内側に音響スピーカー50,50を配置し、音響スピーカー50,50が、道路運送車両の保安基準の細目に定めるヘッドフォームを用いた試験に適合する形態で配置されているため、簡単な構造でヘッドレスト装置10に音響スピーカー50,50を設けることができるとともに、保安基準も満たすことができる。
【0046】
また、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、クッション芯材12に耐衝撃面としての音響機器取り付け面41を形成し、音響機器取り付け面41に集音開口部61aを形成し、集音開口部61aの内側に音響マイク51を配置した。これにより、集音開口部61aを介して音響マイク51で効率良く集音できるとともに、集音開口部61aの内側に音響マイク51を配置することで、頭部が音響マイク51に強く接触して大きな衝撃が生じてしまうことを防止でき、衝撃の規格も満たすことができる。
また、音響マイク51が、道路運送車両の保安基準の細目に定めるヘッドフォームを用いた試験に適合する形態で配置されているため、集音開口部61aを介して音響マイク51で効率良く集音できるとともに、所定の保安基準も満たすことができる。
【0047】
また、クッション芯材12の集音開口部61aと音響マイク51との間に集音部61を配置したため、集音部61によって音響マイク51に効率良く集音できる。
また、集音機構を略円錐型の集音部61で構成するため、音響マイク51に効率良く集音できる。
さらに、集音開口部61aをクッション芯材12の前面に形成したため、前方からの音を音響マイク51に効率良く集音できる。
また、音響マイク51の周囲に複数の音響スピーカー50,50を配置し、音響スピーカー50,50を音響マイク51に対し外向きに配置したため、音響スピーカー50,50の音S1が音響マイク51に集音されることを抑制できる。
また、音響マイク51の前方を、音を通しやすい素材で構成される前面クッション部62で覆ったため、効率良く音響マイク51に集音できる。
【0048】
また、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、クッション芯材12に音響スピーカー50,50を配置し、クッション芯材12の一部の面である前面12aを、音を通しやすい素材で構成される前面クッション部62で覆い、残りの面を、音を減衰する素材で構成される減衰層63a、および振動の減衰性と遮音性の高い素材である遮音層63bの二層で覆った。これにより、前面クッション部62を通してクッション芯材12の前面12aから音を出力でき、残りの面から出力される音を、減衰層63a、および遮音層63bの二層で低減させることができる。このため、使用目的に応じて、クッション芯材12の前面12aの向く方向へ音を出力することができる。
【0049】
また、減衰層63aが内層で、遮音層63bが外層であるため、減衰層63aで減衰された音を、遮音層63bで遮音でき、上記残りの面から出力される音を効率良く低減させることができる。
また、減衰層63aおよび遮音層63bが密着しているため、遮音層63bで減衰層63aの動きを規制でき、遮音層63bの振動(音)の減衰性を向上できる。
さらに、上記一部の面がクッション芯材12の前面略全域であるため、他の方向には音を漏らさずに前方に音を出力でき、着座者に対してパーソナルな音響空間を提供できる。
【0050】
また、音を通しやすい素材が繊維パッドであるため、前面12aから出る音を良く通すことができるとともに、前面12a側で良好なクッション性を得られる。
さらに、減衰層63aがウレタン系の素材であるため、残りの面から出る音を効果的に減衰できる。
また、遮音層63bがエラストマー系の素材であるため、残りの面から出る音を効果的に減衰及び遮音できる。
【0051】
なお、上記第1の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記第1の実施の形態に限定されるものではない。
上記第1の実施の形態では、ヘッドレスト装置10は、シートの背当て部に対して別体で着脱自在に設けられているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ヘッドレスト装置10は、背当て部に一体的に設けられていても良い。
また、上記第1の実施の形態では、サブウーハー52は駆動部により振動板が駆動されるものとして説明したが、これに限らず、例えば、駆動部を有さずに、音響スピーカー50,50等に共振して音を出力するパッシブラジエーターであっても良い。
【0052】
また、上記第1の実施の形態では、クッション芯材12の一部の面である前面12aを、音を通しやすい素材で構成される前面クッション部62で覆い、残りの面を、減衰層63a、及び遮音層63bの二層で覆うものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、クッション芯材12の右側面12e及び左側面12fの少なくともいずれかを一部の面として音を通しやすい素材で覆うとともに、側方に音を出力可能なように音響スピーカーを設け、クッション芯材12の残りの面を減衰層及び遮音層の2層で覆う構成としても良い。この場合、例えば、車両の周囲の状況に基づいて、側方に車両や歩行者等が存在することが感知された際、ヘッドレスト装置における対応する側面から音を出して車両等の存在を報知することができる。また、クッション芯材12の天面12cを一部の面として音を通しやすい素材で覆うとともに、上方に音を出力可能なように音響スピーカーを設け、クッション芯材12の残りの面を減衰層及び遮音層の2層で覆う構成としても良い。
【0053】
[第2の実施の形態]
以下、
図8〜
図10を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の音響マイク51に替えて、複数の音響マイク251,251が左右一対で設けられる点が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0054】
図8は、第2の実施の形態におけるヘッドレスト装置210の正面図である。ここで、
図8では、クッション13の図示が省略されている。
ヘッドレスト装置210は、フレーム11、クッション芯材12、音響スピーカー50,50、サブウーハー52、及び、左右一対の音響マイク251,251を備える。
音響マイク251,251は、横方向(ヘッドレスト装置210の横幅方向)に直線的に一対並べて配置されている。各音響マイク251,251は、互いの間に所定の間隔をあけて配置される。音響マイク251,251は、ヘッドレスト装置210の横幅方向の中心線Cを基準に左右に略均等に振り分けて配置される。
音響マイク251,251は、空中を伝播する音波を振動板で受けて電気信号に変換する非接触型の音響マイクである。これに対し、上記第1の実施の形態で従来例として説明した骨伝導式のマイクは、音源となる物体に接触して集音する接触型の音響マイクである。
【0055】
クッション芯材12の音響機器取り付け面41は、エンクロージャー部40の内側へ向かって窪む穴状の集音部261,261を左右一対備える。集音部261,261内には、音響マイク251,251がそれぞれ収容される。集音部261,261は、音響スピーカー50,50の間でヘッドレスト装置10の幅方向の中央部に配置されるとともに、サブウーハー52の上方でヘッドレスト装置10の上下方向の中央部に配置され、着座者の後頭部Hの後方に位置する。集音部261,261は、後端側ほど先細る略円錐状に形成されており、集音部261,261の略円錐形状の軸線(不図示)は、前方へ略水平に延びている。集音部261,261の前面には、集音部261,261内に音を取り込む集音開口部261a,261aが形成されている。なお、集音部261,261は集音可能な形状であれば良く、略円錐形状に限定されるものではない。集音部261,261は、例えば、略角錐状または略円錐台形状等の形状であっても良い。
【0056】
図9は、シート200に着座した着座者の音声を音響マイク251,251で集音している状態を示す模式図である。
着座者は、シート200の背当て部201に背中をもたれかかるようにして着座し、ヘッドレスト装置210は、ステー部18,18が背当て部201の上面の取り付け孔部(不図示)に挿入されることで背当て部201に固定される。ヘッドレスト装置210は、上記取り付け孔部へのステー部18,18の挿入深さを調節することで、着座者の体格等に合わせて取り付けの高さ位置を変更可能に構成されている。
【0057】
着座者が音声を発すると、この音声は、音声V1として口Mから前方に出力されるとともに、声帯VCを備える首部Nからも出力され、首部Nから出力される音声の一部である音声V2は、後方へ発せられて音響マイク251,251に集音される。
従来、着座者の音声を非接触型の集音マイクで集音する場合、着座者の口から出力される音声を効率良く集音するために、集音マイクは着座者の前方に設けられることが一般的である。しかし、着座者の前方に集音マイクを配置する場合、車両であれば、エアバッグが集音マイクの配置の邪魔になったり、また、集音マイクが着座者から離れたダッシュボード等の位置に配置されることで集音のノイズが大きくなったりするという問題がある。
本願の発明者らは、着座者の後頭部Hや首部Nから後方に出力される音声V2が、集音マイクで集音するのに十分な大きさであることを見出し、ヘッドレスト装置210に非接触型の音響マイク251,251を設けることで、効率良く集音できるという顕著な効果を得た。
【0058】
また、音響マイク251,251は非接触型であるため、集音部261,261の形状を必要に応じて調整することで、音響マイク251,251の集音特性を、着座者の音声を集音し易い特性にすることができる。すなわち、集音部261,261の窪みの深さ及び斜面の形状や、集音部261,261の軸線の角度等を変更することで、集音部261,261の集音特性を、後頭部Hや首部Nから効率良く音声を集音可能な指向性を有するものとすることができる。このような指向性は、接触型の音響マイクでは得ることができない。
また、ヘッドレスト装置210は着座者の体格に適合するように上下の位置を調整されるため、音響マイク251,251の位置も自動的にその着座者に適した位置に位置することになる。このため、着座者の体格によらず常に効率良く音響マイク251,251で集音できる。
【0059】
図10は、音響マイク251,251の横方向の指向性を示す上面図である。
音響マイク251,251は、横方向に並べて配置されるため、横方向に指向性を有する集音特性を有し、
図10に示すように、一定の範囲で集音点Pを横方向に変更できる。
この集音特性は、例えば、制御部53が音響マイク251,251にそれぞれ到達する音声の時間のズレから音声の方向を検出し、特定の方向の音声を強調するように処理することで得られる。音響マイク251,251は、いわゆるビームフォーミングマイクである。音響マイク251,251の集音点Pは、例えば、各着座者の声帯VCの位置に合わせて設定される。
このように、音響マイク251,251を横方向に並べて配置することで、着座者によって異なる声帯VC等の位置に合わせて集音点Pを設定でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
また、音響マイク251,251を横方向に並べて配置するため、横方向の集音特性によって、着座者の側方のガラス側及び側方の同乗者や車両の外側から来るノイズを低減でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
また、音響マイク251,251及び集音部261,261は、上記第1の実施の形態で説明した保安基準を満たすように形成されている。
【0060】
[第3の実施の形態]
以下、
図11及び
図12を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態の音響マイク51に替えて、複数の音響マイク351,351が上下一対で設けられる点が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0061】
図11は、第3の実施の形態におけるヘッドレスト装置310の正面図である。ここで、
図11では、クッション13の図示が省略されている。
ヘッドレスト装置310は、フレーム11、クッション芯材12、音響スピーカー50,50、サブウーハー52、及び、左右一対の音響マイク351,351を備える。
音響マイク351,351は、縦方向(ヘッドレスト装置310の上下方向)に直線的に一対並べて配置されている。各音響マイク351,351は、互いの間に所定の間隔をあけて配置される。音響マイク351,351は、ヘッドレスト装置310の横幅方向の中心線C上に略一致する位置に配置される。
音響マイク351,351は、空中を伝播する音波を振動板で受けて電気信号に変換する非接触型の音響マイクである。
【0062】
クッション芯材12の音響機器取り付け面41は、エンクロージャー部40の内側へ向かって窪む穴状の集音部361,361を左右一対備える。集音部361,361内には、音響マイク351,351がそれぞれ収容される。集音部361,361は、音響スピーカー50,50の間でヘッドレスト装置10の幅方向の中央部に配置されるとともに、サブウーハー52の上方でヘッドレスト装置10の左右方向の中央部に配置され、着座者の後頭部Hの後方に位置する。集音部361,361は、後端側ほど先細る略円錐状に形成されており、集音部361,361の略円錐形状の軸線(不図示)は、前方へ略水平に延びている。集音部361,361の前面には、集音部361,361内に音を取り込む集音開口部361a,361aが形成されている。なお、集音部361,361は集音可能な形状であれば良く、略円錐形状に限定されるものではない。集音部361,361は、例えば、略角錐状または略円錐台形状等の形状であっても良い。
【0063】
ヘッドレスト装置310は、
図9においてヘッドレスト装置210に置き換えて背当て部201に取付けられる。
本第3の実施の形態によれば、ヘッドレスト装置310に音響マイク351,351を設けたため、着座者の後頭部Hや首部Nから後方に出力される音声V2を集音でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
また、音響マイク351,351は非接触型であるため、集音部361,361の形状を必要に応じて調整することで、音響マイク351,351の集音特性を、着座者の音声を集音し易い特性にすることができる。すなわち、集音部361,361の窪みの深さ及び斜面の形状や、集音部361,361の軸線の角度等を変更することで、集音部361,361の集音特性を、後頭部Hや首部Nから効率良く音声を集音可能な指向性を有するものとすることができる。
【0064】
図12は、音響マイク351,351の縦方向の指向性を示す上面図である。
音響マイク351,351は、縦方向(上下方向)に並べて配置されるため、縦方向に指向性を有する集音特性を有し、
図12に示すように、一定の範囲で集音点Pを横方向に変更できる。
この集音特性は、例えば、制御部53が音響マイク351,351にそれぞれ到達する音声の時間のズレから音声の方向を検出し、特定の方向の音声を強調するように処理することで得られる。
このように、音響マイク351,351を縦方向に並べて配置することで、着座者によって異なる声帯VC等の位置に合わせて集音点Pを設定でき、着座者の音声を効率良く集音できる。すなわち、例えば、ヘッドレスト装置310の上下の高さが変更不能な構造であっても集音点Pを上下に調整することで、着座者の音声を効率良く集音でき、また、ヘッドレスト装置310の上下の高さが変更可能な構成では、集音点Pの上下の調整幅をさらに大きく確保できる。
また、音響マイク351,351及び集音部361,361は、上記第1の実施の形態で説明した保安基準を満たすように形成されている。
【0065】
[変形例]
ここで、
図13を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態の変形例について説明する。この変形例において、上記第3の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
この変形例は、アプリケーションマイク371,371を備える点が、上記第3の実施の形態と異なる。
【0066】
図13は、第3の実施の形態の変形例を示すヘッドレスト装置370の正面図である。である。
ヘッドレスト装置370は、マイクで集音した音の逆相の音を出力して音を打ち消すことでノイズを低減するアクティブノイズキャンセリング機能、及び、マイクで集音した音に基づいてスピーカーの音の歪を小さくするように補正するモーションフィードバック機能を備える。
アプリケーションマイク371,371は、ヘッドレスト装置370の下部の左右の側部に左右一対で設けられる。アプリケーションマイク371,371は、音響機器取り付け面41の下部においてサブウーハー52の左右にそれぞれ配置される。また、アプリケーションマイク371,371は、音響スピーカー50,50の下方で、音響スピーカー50,50の外側方に配置される。
制御部53は、アプリケーションマイク371,371から集音した音に基づいて音響スピーカー50,50及びサブウーハー52を駆動し、アクティブノイズキャンセリング機能及びモーションフィードバック機能を実行する。
【0067】
この変形例では、アプリケーションマイク371,371がヘッドレスト装置370の前面の側部で着座者の耳に近い位置に設けられおり、耳の近傍のノイズをキャンセルできるため、効果的にノイズをキャンセルできる。また、アプリケーションマイク371,371が音響スピーカー50,50の近傍に設けられているため、音響スピーカー50,50の音の歪を精度よく集音でき、効果的にモーションフィードバック機能を実行することができる。
すなわち、音響マイク351,351をヘッドレスト装置370の幅方向の中央に設けることで着座者の音声を効果的に集音でき、ヘッドレスト装置370の幅方向の側部にアプリケーションマイク371,371を設けることで、アクティブノイズキャンセリング機能及びモーションフィードバック機能を効果的に発揮させることができる。
【0068】
[第4の実施の形態]
以下、
図14〜
図16を参照して、本発明を適用した第4の実施の形態について説明する。
図14は、本発明の第4の実施の形態に係る集音装置410をヘッドレスト401に取り付けた状態を示す斜視図である。
図15は、シート400に着座した着座者の音声を集音装置410で集音している状態を示す模式図である。
図16は、集音装置410を前方側から見た斜視図である。
【0069】
集音装置410は、車室内に配置される乗員用のシートに設けられるものである。上記車室としては、例えば、自動車、電車、飛行機及び船舶等の車室が挙げられるが、本第4の実施の形態では、自動車の前部座席であって運転者が着座するシート400に集音装置410を取り付けた場合を例に挙げて説明する。
シート400は、運転者(着座者)が着座する座面部(不図示)と、この座面部の後端から僅かに後ろに傾斜した姿勢で上方に延在する背当て部402と、背当て部402の上端に取り付けられるヘッドレスト401とを備える。
【0070】
集音装置410は、近距離無線通信により携帯端末等の他の機器(不図示)と連携可能とする通信部(不図示)を備える。上記他の機器としては、例えば、携帯電話、スマートフォン及びタブレット端末等が挙げられる。上記近距離無線通信としては、例えば、Bluetooth(近距離無線通信規格:登録商標)が挙げられる。なお、ヘッドレスト装置10と上記他の機器とは、近距離無線通信に限らず、例えば有線によって接続することも可能である。
着座者は、集音装置410が上記他の機器と連携した状態では、集音装置410で集音された音声をボイスコマンドとして他の機器を操作したり、集音装置410を介してハンズフリーで通話したりすることができる。
【0071】
背当て部402は、ヘッドレスト401が接続される左右一対のヘッドレスト接続穴部403,403を上面402aに備える。
ヘッドレスト401は、着座者の頭部を受けるブロック状のヘッドレストクッション404と、ヘッドレストクッション404の下面から下方に延びる左右一対のヘッドレストステー405,405とを備える。ヘッドレストステー405,405は、例えば、鉄等の金属製のパイプ材である。
ヘッドレストステー405,405は、ヘッドレストクッション404の下面における左右の端の近傍に配置されており、互いに左右方向に所定距離だけ離間した状態で略平行に下方へ延びる。
【0072】
ヘッドレスト401はヘッドレストステー405,405が上方からヘッドレスト接続穴部403,403に挿入されることで背当て部402に接続される。着座者は、ヘッドレスト401を上下にスライドさせて任意の位置でヘッドレストステー405,405をヘッドレスト接続穴部403,403の係合部(不図示)に係合させることで、ヘッドレスト401の上下の位置を体格や好み等に合わせて調整可能である。
【0073】
集音装置410は、ヘッドレストステー405,405に取付けられるブロック状の取り付け部411と、取り付け部411に設けられる非接触型の音響マイク412とを備える。
取り付け部411は、左右のヘッドレストステー405,405に跨って設けられる筐体406と、筐体406に設けられる左右一対の固定部としての磁石407,407とを備える。
筐体406は、上下方向よりも左右方向に長く形成されている。筐体406は、音響マイク412が設けられる中央部406aと、中央部406aから左右側方にそれぞれ延出する側部406b,406bとを備える。
【0074】
筐体406の中央部406aの前面は、側部406b,406bの前面よりも着座者側(前方側)に膨出しており、中央部406aの前面には、後方側に窪む穴状の集音部408が形成されている。集音部408は、後端側ほど先細る略円錐状に形成されているとともに、集音部408の前面には、集音部408内に音を取り込む集音開口部408aが形成されている。音響マイク412は、集音部408内に配置される。なお、集音部408は集音可能な形状であれば良く、略円錐形状に限定されるものではない。集音部408は、略錐形状に凹んでいれば良く、例えば、略角錐状または略円錐台形状等の形状であっても良い。
音響マイク412は、空中を伝播する音波を振動板で受けて電気信号に変換する非接触型の音響マイクである。これに対し、上記第1の実施の形態で従来例として説明した骨伝導式のマイクは、音源となる物体に接触して集音する接触型の音響マイクである。
【0075】
筐体406の側部406b,406bの前面には、磁石407,407が前方に露出して設けられている。磁石407,407は、ヘッドレスト401の前面視において、ヘッドレストステー405,405に重なる位置に配置されている。
集音装置410は、ヘッドレスト401の後方側からヘッドレストステー405,405にセットされ、磁石407,407の前面がヘッドレストステー405,405の後面に磁力でくっつくことでヘッドレストステー405,405に取り付けられる。
集音装置410は、ヘッドレストステー405,405に取り付けられた状態では、左右のヘッドレストステー405,405の間の中央部に位置するとともに、上下方向では、ヘッドレストクッション404の下面と背当て部402の上面402aとの間に位置する。
【0076】
図15に示すように、着座者が音声を発すると、この音声は、音声V1として口Mから前方に出力されるとともに、声帯VCを備える首部Nからも出力され、首部Nから出力される音声の一部である音声V2は、後方へ発せられて音響マイク412に集音される。
本第4の実施の形態によれば、ヘッドレストステー405,405の間に音響マイク412を設けたため、着座者の後頭部Hや首部Nから後方に出力される音声V2を集音でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
また、音響マイク412がヘッドレストステー405,405に取り付けられるため、音響マイク412が乗員の前方のエアバッグの配置の邪魔になることを防止できる。また、音響マイク412が後頭部Hや首部Nに近いため、音響マイクが着座者から遠い位置にあることに起因するノイズを低減できる。
また、音響マイク412は非接触型であるため、集音部408の形状を必要に応じて調整することで、音響マイク412の集音特性を、着座者の音声を集音し易い特性にすることができる。すなわち、集音部408の窪みの深さ及び斜面の形状や、集音部408の錐形状の軸線の角度等を変更することで、集音部408の集音特性を、後頭部Hや首部Nから効率良く音声を集音可能な指向性を有するものとすることができる。
さらに、集音装置410がヘッドレストステー405,405の後面側に取り付けられるため、シート400が設置された車等に減速の加速度が作用したとしても、シート400はヘッドレストステー405,405の間を通って着座者側に移動することができない。このため、減速の加速度が発生した場合であっても、集音装置410が着座者の邪魔になることを防止できる。
【0077】
以上説明したように、本発明を適用した第4の実施の形態によれば、集音装置410は、シート400のヘッドレスト401を背当て部402に接続するヘッドレストステー405,405に取り付けられる取り付け部411と、取り付け部411に支持される非接触型の音響マイク412とを備える。このため、取り付け部411を介して集音装置410をシート400のヘッドレストステー405,405に取り付けることで、着座者の後頭部Hや首部Nから出力される音声を音響マイク412によって非接触で集音でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
さらに、取り付け部411は、着座者側に開口する集音部408を備え、音響マイク412は、集音部408内に配置されるため、着座者の音声を集音部408によって音響マイク412に効率良く集音できる。
また、集音部408は、略錐形状に形成されているため、効率良く集音できる。
また、取り付け部411は、一対のヘッドレストステー405,405間に渡って取り付けられ、音響マイク412は、ヘッドレストステー405,405の間の中間部に配置されるため、音響マイク412を着座者の後頭部Hや首部Nの近くに配置でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
さらに、集音装置410は、ヘッドレストクッション404ではなくヘッドレストステー405,405の後面側に取り付けられるため、上記第1の実施の形態で説明した衝撃の規格に影響しない。
【0078】
[第5の実施の形態]
以下、
図17を参照して、本発明を適用した第5の実施の形態について説明する。この第5の実施の形態において、上記第4の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第5の実施の形態は、上記第4の実施の形態の音響マイク412に替えて、複数の音響マイク512,512が左右一対で設けられる点が、上記第4の実施の形態と異なる。
【0079】
図17は、第5の実施の形態における集音装置510の斜視図である。
集音装置510は、取り付け部411及び音響マイク512,512を備える。取り付け部411の筐体406は、音響マイク512,512が設けられる中央部506aと、中央部506aから左右側方にそれぞれ延出する側部406b,406bとを備える。
音響マイク512,512は、横方向(ヘッドレスト401の横幅方向)に直線的に一対並べて配置されている。各音響マイク512,512は、互いの間に所定の間隔をあけて配置される。音響マイク512,512は、ヘッドレスト401の横幅方向の中心線(不図示)を基準に左右に略均等に振り分けて配置される。
音響マイク512,512は、空中を伝播する音波を振動板で受けて電気信号に変換する非接触型の音響マイクである。
【0080】
筐体406の中央部506aの前面は、後方側に窪む穴状の集音部508,508を左右一対備える。集音部508,508は、後端側ほど先細る略錐形状に形成されているとともに、集音部508,508の前面には、集音部508,508内に音を取り込む集音開口部508a,508aが形成されている。集音部508,508内には、音響マイク512,512がそれぞれ収容される。
【0081】
本第5の実施の形態では、音響マイク512,512は、横方向に並べて配置されるため、横方向に指向性を有する集音特性を有し、上記第2の実施の形態と同様の原理により、一定の範囲で集音点P(
図10参照)を横方向に変更できる。
このように、音響マイク512,512を横方向に並べて配置することで、着座者によって異なる声帯VC等の位置に合わせて集音点Pを設定でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
また、音響マイク512,512を横方向に並べて配置するため、横方向の集音特性によって、着座者の側方のガラス側及び側方の同乗者や車両の外側から来るノイズを低減でき、着座者の音声を効率良く集音できる。
【0082】
[第6の実施の形態]
以下、
図18を参照して、本発明を適用した第6の実施の形態について説明する。この第6の実施の形態において、上記第4の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
本第6の実施の形態は、上記第4の実施の形態の音響マイク412に替えて、複数の音響マイク612,612が上下一対で設けられる点が、上記第4の実施の形態と異なる。
【0083】
図18は、第6の実施の形態における集音装置610の斜視図である。
集音装置610は、取り付け部411及び音響マイク612,612を備える。取り付け部411の筐体406は、音響マイク612,612が設けられる中央部606aと、中央部606aから左右側方にそれぞれ延出する側部406b,406bとを備える。
音響マイク612,612は、縦方向(ヘッドレスト401の上下方向)に直線的に一対並べて配置されている。各音響マイク612,612は、互いの間に所定の間隔をあけて配置される。音響マイク612,612は、ヘッドレスト401の横幅方向の中心線(不図示)上に略一致する位置に配置される。
音響マイク512,512は、空中を伝播する音波を振動板で受けて電気信号に変換する非接触型の音響マイクである。
【0084】
筐体406の中央部606aの前面は、後方側に窪む穴状の集音部608,608を上下一対備える。集音部608,608は、後端側ほど先細る略錐形状に形成されているとともに、集音部608,608の前面には、集音部608,608内に音を取り込む集音開口部608a,608aが形成されている。集音部608,608内には、音響マイク612,612がそれぞれ収容される。
【0085】
本第6の実施の形態では、音響マイク612,612は、縦方向(上下方向)に並べて配置されるため、縦方向に指向性を有する集音特性を有し、上記第3の実施の形態と同様の原理により、一定の範囲で集音点P(
図12参照)を縦方向に変更できる。
このように、音響マイク612,612を縦方向に並べて配置することで、着座者によって異なる声帯VC等の位置に合わせて集音点Pを設定でき、着座者の音声を効率良く集音できる。すなわち、例えば、設置スペースの制約等により集音装置610の位置を上下に調整し難い場合であっても集音点Pを上下に調整することで、着座者の音声を効率良く集音でき、また、集音装置610の上下の高さが変更可能な構成では、集音点Pの上下の調整幅をさらに大きく確保できる。
【0086】
なお、上記第4〜第6の実施の形態では、集音装置410,510,610は、磁石407,407によってヘッドレストステー405,405に取り付けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、集音装置は、ヘッドレストステー405,405にボルト等によって締結して取り付けされても良い。