(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る摺動部材100の構成を示す断面模式図である。
図1に示すように、摺動部材100は、金属母材110が酸化皮膜120に覆われた構成である。酸化皮膜120中には、複数の硬質粒子130が分散されている。複数の硬質粒子130のうちの一部は、酸化皮膜120の表面に露出している。なお、各図では、酸化皮膜120の厚み、及び硬質粒子130の粒径を実際よりも大きく示している。
【0022】
金属母材110は、陽極酸化処理またはプラズマ電解酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120を生成することのできる材料である。金属母材110としては、たとえば、アルミニウム合金、マグネシウム、チタン合金の中から選択される。
【0023】
硬質粒子130は、酸化皮膜120よりも高い硬度(ビッカース硬さHv)を有する。硬質粒子130としては、たとえば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、炭化珪素(SiC)、ダイヤモンドの中から選択される。酸化アルミニウム、いわゆるアルミナには、ビッカース硬さHv1800〜2000程度のものが採用される。炭化珪素には、ビッカース硬さHv2200〜2400程度のものが採用される。ダイヤモンドには、ビッカース硬さHv10000程度のものが採用される。
【0024】
本実施形態における摺動部材100の製造方法について説明する。
図2は、摺動部材100の製造手順を示すフローチャートである。
図2に示すように、摺動部材100の製造方法は、分散工程S110と、酸化皮膜生成工程S120と、露出工程S130と、を備える。
【0025】
以下では、金属母材110にビッカース硬さHv100程度のアルミニウム合金を採用し、陽極酸化処理により酸化皮膜120を生成する例について説明する。なお、硬質粒子130の材料には、アルミニウム合金の表面に生成される酸化皮膜120の硬さ(たとえば、ビッカース硬さHv500程度)よりも硬い材料が選択される。
【0026】
−分散工程−
図3は、分散工程S110を説明する図であり、
図3(a)は硬質粒子130が金属母材110に分散される前の状態を示し、
図3(b)は硬質粒子130が金属母材110に分散された後の状態を示している。
図3に示すように、分散工程S110は、遊離砥粒加工により、砥粒(遊離砥粒)130Aを金属母材110に衝突させて破砕し、硬質粒子130として金属母材110の表面層に分散させる。本実施形態では、遊離砥粒加工の一つであるショットブラスト(投射加工)により、複数の硬質粒子130を金属母材110の表面層に分散させる。
【0027】
図3(a)に示すように、投射室内のテーブル190の上に金属母材110を配置し、投射装置の投射口(不図示)から砥粒(投射材)130Aを金属母材110に向けて投射する。
【0028】
砥粒130Aは、金属母材110に衝突することにより、細かく破砕され、
図3(b)に示すように、硬質粒子130として金属母材110の表面層に分散される。金属母材110の硬度(たとえば、ビッカース硬さHv100程度)は、硬質粒子130の硬度(たとえば、ビッカース硬さHv1000以上)に比べて低い。このため、硬質粒子130は金属母材110の表面層、すなわち表面から所定深さ(たとえば、5〜10μm程度)までの範囲において埋め込まれる。なお、複数の硬質粒子130の一部は、金属母材110の表面から外方に突出している。分散工程S110が完了すると、金属母材110に複数の硬質粒子130が分散された状態の素材(以下、中間素材100Aと記す)が完成する。
【0029】
なお、硬質粒子130の粒径が大きすぎると、後述の酸化皮膜生成工程S120での酸化皮膜120の成長が妨げられる。このため、分散工程S110においては、金属母材110の表面層に埋め込まれる硬質粒子130の粒径が、たとえば、5μm未満程度、好ましくは3μm以下となるように、砥粒130Aの大きさ、投射速度、投射角度及び投射量等のブラスト条件を設定する。
【0030】
−酸化皮膜生成工程−
図4は、酸化皮膜生成工程S120を説明する図であり、
図4(a)は酸化皮膜120Aを生成する前の状態を示し、
図4(b)は酸化皮膜120Aを生成した後の状態を示している。
図4に示すように、酸化皮膜生成工程S120は、分散工程S110の後に、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成する工程である。本実施形態では、所定の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の厚みの酸化皮膜120Aを生成する。酸化皮膜120Aの厚みは、5μm以上とされ、金属母材110の表面層に分散された硬質粒子130が酸化皮膜120Aに取り込まれるように調整する。
【0031】
陽極酸化処理では、金属母材110の表面が溶かされて酸化アルミニウムが生成される。このため、酸化皮膜120Aは、金属母材110の内側にも成長する。ここで、
図4(a)に示すように、陽極酸化処理を行う前の金属母材110の表面の位置を基準位置10と定義する。
図4(b)に示すように、酸化皮膜120Aは、基準位置10(図中、破線参照)から下側(処理前の金属母材内側)の層(以下、内側成長層と記す)121と、基準位置10から上側(処理前の金属母材外側)の層(以下、外側成長層と記す)122とに区分できる。
【0032】
酸化皮膜120Aが成長すると、金属母材110の表面層に埋め込まれていた複数の硬質粒子130が酸化皮膜120Aに取り込まれる。本実施形態では、金属母材110に埋設される硬質粒子130の全てが酸化皮膜120Aに取り込まれるように、陽極酸化処理の条件が設定される。このようにして生成された酸化皮膜120Aでは、内側成長層121には、複数の硬質粒子130が存在している。これに対して、外側成長層122には、硬質粒子130がほとんど存在していない。
【0033】
−露出工程−
図5は、露出工程S130を説明する図であり、
図5(a)は、金属母材110を覆う酸化皮膜120Aの表面が研磨される前の状態を示し、
図5(b)は、金属母材110を覆う酸化皮膜120の表面が研磨された後の状態を示している。
図5に示すように、露出工程S130は、酸化皮膜生成工程S120の後に行われる工程であり、酸化皮膜120Aの一部を除去し、酸化皮膜120の表面に、複数の硬質粒子130のうちの一部を露出させる工程である。本実施形態では、機械研磨により酸化皮膜120Aの表面から所定の深さまでを機械的に除去する。機械研磨の例としては、ラッピング加工、ホーニング加工、ポリッシング加工等がある。
【0034】
露出工程S130において酸化皮膜120Aを除去する厚み(深さ)は、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み以上である。つまり、露出工程S130では、少なくとも外側成長層122が除去され、内側成長層121が露出する。換言すれば、露出工程S130により得られる摺動部材100の厚みT2(
図5(b)参照)が、中間素材100Aにおける金属母材110の厚みT1(
図4(a)参照)以下となるように(T2≦T1)、除去する厚みが設定される。これにより、酸化皮膜120内に分散される複数の硬質粒子130の一部が露出されることになる。
【0035】
露出工程S130により酸化皮膜120Aの一部が除去された後の酸化皮膜120の厚みは、酸化皮膜120中に分散される硬質粒子130の粒径よりも大きい寸法に設定される。酸化皮膜120の厚みは、たとえば、5μm以上30μm以下に設定される。
【0036】
図5(b)に示すように、硬質粒子130の粒径が、酸化皮膜120の厚みよりも小さいので、単一の硬質粒子130が、酸化皮膜120の表面と、酸化皮膜120と金属母材110の界面の両者に跨ることがない。つまり、単一の硬質粒子130は、酸化皮膜120中に完全に包含されるか、または、一部が酸化皮膜120の表面から露出するように、酸化皮膜120中に分散している。
【0037】
以上により、金属母材110を覆う酸化皮膜120の表面が摺動面となる摺動部材100が完成する。なお、本実施形態では、酸化皮膜120の表面と、表面に露出する硬質粒子130の露出面とが面一となるように機械研磨が行われる。摺動面は、十点平均粗さRzが1μm以下となるように仕上げが行われる。
【0038】
上述したように、本実施形態に係る酸化皮膜生成工程S120では、金属母材110に埋設される硬質粒子130の全てが酸化皮膜120に取り込まれるように、陽極酸化処理が行われる。このため、完成した摺動部材100において、硬質粒子130は、酸化皮膜120のみに含まれ、金属母材110には含まれていない。別の言い方をすれば、酸化皮膜120中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合は、金属母材110中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合(0%)よりも大きい。
【0039】
このようにして完成した摺動部材100は、たとえば、図示しないピストン式の油圧ポンプや油圧モータのバルブプレートやシリンダブロック等の油圧機器の摺動部材として使用される。
【0040】
上述した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
【0041】
(1)摺動部材100の製造方法は、金属母材110の表面層に、酸化皮膜120よりも硬度の高い複数の硬質粒子130を分散させる分散工程S110と、分散工程S110の後に、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成する酸化皮膜生成工程S120と、酸化皮膜120Aの一部を除去し、酸化皮膜120の表面に、複数の硬質粒子130のうちの一部を露出させる露出工程S130と、を備える。
【0042】
これにより、酸化皮膜120よりも硬度の高い複数の硬質粒子130が、酸化皮膜120中に分散され、複数の硬質粒子130のうちの一部が、酸化皮膜120の表面に露出した摺動部材100が得られる。分散工程S110において、硬質粒子130は金属母材110の表面層に分散されるので、酸化皮膜120中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合は、金属母材110中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合よりも大きくなる。本実施形態によれば、酸化皮膜120と、酸化皮膜120に分散された硬質粒子130とによって、当該摺動部材100に摺動する相手部材からの荷重を支持することができるので、酸化皮膜120の摩耗の進行を防止できる。その結果、摺動部材100の耐摩耗性を向上できる。
【0043】
(2)露出工程S130において、酸化皮膜120Aを除去する厚みは、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み以上とされる。これにより、硬質粒子130をより多く露出させることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0044】
(3)中間素材100Aにおいて、複数の硬質粒子130の一部が、金属母材110の表面から外方に突出している。このため、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み以上の厚みを除去することにより、すなわち、少なくとも外側成長層122を全て除去することにより、確実に酸化皮膜120内に分散される複数の硬質粒子130の一部を露出させることができる。このため、本実施形態によれば、酸化皮膜120の表面に複数の硬質粒子130のうちの一部が露出するように、酸化皮膜120Aの一部を除去する作業における寸法管理が容易であり、作業効率を向上できる。
【0045】
(4)分散工程S110は、遊離砥粒加工により、砥粒130Aを金属母材110に衝突させて破砕し、硬質粒子130として金属母材110の表面層に分散させる。これにより、固定砥粒加工に比べて、効果的に複数の硬質粒子130を金属母材110に分散させることができ、作業効率がよい。
【0046】
(5)金属母材110は、陽極酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成することのできる材料である。したがって、酸化皮膜生成工程S120において、陽極酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成することができる。これにより、複数の硬質粒子130を酸化皮膜120Aに取り込むように、所定の厚みの酸化皮膜120Aを容易に生成できる。
【0047】
(6)陽極酸化処理では、中間素材100Aの表面層が溶解し、生成された酸化皮膜120Aが中間素材100Aに入り込む状態となるので、めっき処理等に比べて剥がれ難い膜を生成できる。
【0048】
(7)本実施形態では、分散工程S110において、金属母材110の表面層にのみ、酸化皮膜120よりも硬度の高い複数の硬質粒子130を分散させるので、金属母材110を溶融して硬質粒子130を金属母材110の全体に分散させる場合に比べて、作業工程を短縮できる。
【0049】
(8)摺動部材100は、酸化皮膜120のみに硬質粒子130が含まれ、金属母材110には硬質粒子130が含まれていない。このため、金属母材110の材料特性が変化することを防止できる。
【0050】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0051】
(変形例1)
上記実施形態では、陽極酸化処理により金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成する例を代表して、摺動部材100の製造手順について詳しく説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、プラズマ電解酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成してもよい。この場合、酸化皮膜120Aは、たとえば、5μm以上200μm以下とすることができる。なお、プラズマ電解酸化処理により生成される酸化皮膜120Aは、たとえば、ビッカース硬さHv2000程度となる。このため、硬質粒子130の材料には、酸化皮膜120Aよりも硬い炭化珪素またはダイヤモンドを採用する。プラズマ電解酸化処理においても、上述した陽極酸化処理で得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
(変形例2)
上記実施形態では、露出工程S130において酸化皮膜120Aを除去する厚みが、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み以上である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。露出工程S130において酸化皮膜120Aを除去する厚みは、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み未満としてもよい。この場合、摺動部材100の厚みT2(
図5(b)参照)は、中間素材100Aにおける金属母材110の厚みT1(
図4(a)参照)よりも大きくなる(T2>T1)。少なくとも、酸化皮膜120の表面に、複数の硬質粒子130のうちの一部が露出するように、酸化皮膜120Aの一部を除去することにより、摺動部材100の耐摩耗性を向上できる。さらに、本変形例では、上記実施形態に比べて酸化皮膜120の厚みが大きいので、摺動部材100の寿命を向上することができる。
【0053】
(変形例3)
上記実施形態では、露出工程S130において、硬質粒子130の露出面と、酸化皮膜120の表面とが面一となるように機械研磨を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
図6に示すように、硬質粒子130の一部が、酸化皮膜120から外方に突出するように、酸化皮膜120Aの一部を除去してもよい。積極的に硬質粒子130の一部を酸化皮膜120から突出させることにより、主に突出する複数の硬質粒子130によって当該摺動部材100に摺動する相手部材からの荷重を支持することができるので、酸化皮膜120の摩耗の進行をより効果的に防止できる。つまり、摺動部材100の耐摩耗性をさらに向上できる。
【0054】
(変形例4)
上記実施形態では、遊離砥粒加工の一例として、ショットブラスト(投射加工)について説明したが、本発明はこれに限定されない。遊離砥粒加工の一つである湿式ラッピング加工により、金属母材110の表面層に硬質粒子130を埋め込むようにしてもよい。
【0055】
(変形例5)
上記実施形態では、分散工程S110において、遊離砥粒加工により、硬質粒子130を金属母材110の表面層に分散させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。砥粒が固定された砥石を使用した固定砥粒加工により、砥粒を硬質粒子130として金属母材110の表面層に分散させてもよい。この場合、砥石のドレッシングを適度に行うことにより、硬質粒子130を金属母材110の表面に効果的に分散させることができる。固定砥粒加工では、適切なタイミングで、適切な方法でドレッシングを行う必要があるのに対し、遊離砥粒加工ではドレッシング作業が無いため、固定砥粒加工に比べて、硬質粒子130を分散させるための作業効率が高い。
【0056】
(変形例6)
上記実施形態では、硬質粒子130として、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、炭化珪素(SiC)、ダイヤモンドを例示したが、本発明はこれに限定されない。ビッカース硬さが、酸化皮膜120よりも高い種々の硬質粒子130を採用でき、目安としては、ビッカース硬さHv1000以上の硬質粒子130を採用することが好ましい。
【0057】
(変形例7)
上記実施形態では、露出工程S130において、機械研磨により酸化皮膜120Aの一部を除去し、酸化皮膜120の表面に、複数の硬質粒子130のうちの一部を露出させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。化学エッチング等、酸化皮膜120Aの一部を化学的に溶解して、複数の硬質粒子130のうちの一部を露出させるようにしてもよい。
【0058】
(変形例8)
上述した実施形態では、金属母材110中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合が0%である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。金属母材110中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合が10%程度であってもよい。少なくとも、酸化皮膜120中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合は、金属母材110中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合よりも大きければよい。
【0059】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0060】
摺動部材100の製造方法は、金属母材110を覆う酸化皮膜120の表面が摺動面となる摺動部材100の製造方法であって、金属母材110の表面層に、酸化皮膜120よりも硬度の高い複数の硬質粒子130を分散させる分散工程S110と、分散工程S110の後に、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成する酸化皮膜生成工程S120と、酸化皮膜120Aの一部を除去し、酸化皮膜120の表面に、複数の硬質粒子130のうちの一部を露出させる露出工程S130と、を備える。
【0061】
この構成では、酸化皮膜120と、酸化皮膜120に分散された硬質粒子130とによって、当該摺動部材100に摺動する相手部材からの荷重を支持することができるので、酸化皮膜120の摩耗の進行を防止できる。その結果、摺動部材100の耐摩耗性を向上できる。
【0062】
摺動部材100の製造方法は、露出工程S130において、酸化皮膜120Aを除去する厚みが、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み以上である。
【0063】
この構成では、酸化皮膜生成工程S120により増加した厚み以上の酸化皮膜120Aを除去することにより、硬質粒子130をより多く露出させることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0064】
摺動部材100の製造方法は、分散工程S110において、遊離砥粒加工により、砥粒130Aを硬質粒子130として金属母材110の表面層に分散させる。
【0065】
この構成では、固定砥粒加工に比べて、効果的に複数の硬質粒子130を金属母材110に分散させることができ、作業効率がよい。
【0066】
摺動部材100の製造方法は、酸化皮膜生成工程S120において、陽極酸化処理またはプラズマ電解酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成する。
【0067】
この構成では、複数の硬質粒子130を酸化皮膜120Aに取り込むように、所定の厚みの酸化皮膜120Aを容易に生成できる。
【0068】
摺動部材100は、金属母材110を覆う酸化皮膜120の表面が摺動面となる摺動部材100であって、酸化皮膜120よりも硬度の高い複数の硬質粒子130が、酸化皮膜120中に分散され、複数の硬質粒子130のうちの一部が、酸化皮膜120の表面に露出し、酸化皮膜120中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合は、金属母材110中の単位体積に占める硬質粒子130の体積の割合よりも大きい。
【0069】
この構成では、酸化皮膜120と、酸化皮膜120に分散された硬質粒子130とによって、当該摺動部材100に摺動する相手部材からの荷重を支持することができるので、酸化皮膜120の摩耗の進行を防止できる。その結果、摺動部材100の耐摩耗性を向上できる。
【0070】
摺動部材100は、硬質粒子130が、酸化皮膜120のみに含まれ、金属母材110には含まれていない。
【0071】
この構成では、金属母材110の材料特性が変化することを防止できる。
【0072】
摺動部材100は、金属母材110が、陽極酸化処理またはプラズマ電解酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成することのできる材料である。陽極酸化処理またはプラズマ電解酸化処理により、金属母材110の表面に酸化皮膜120Aを生成することができるので、複数の硬質粒子130を酸化皮膜120Aに取り込むように、所定の厚みの酸化皮膜120Aを容易に生成できる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。