特許第6423914号(P6423914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6423914
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】クラッドモードストリッパ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
   G02B6/44 306
   G02B6/44 316
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-89537(P2017-89537)
(22)【出願日】2017年4月28日
【審査請求日】2017年11月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮吉
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−163955(JP,A)
【文献】 特開2008−268747(JP,A)
【文献】 特開2007−227713(JP,A)
【文献】 特開2012−014173(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0087694(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/001734(WO,A1)
【文献】 特開2014−126687(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0202419(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0086160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/54
H01S 3/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの被覆除去区間を覆い、該光ファイバの該被覆除去区間における最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する樹脂体と、
不透明材料により構成された補強部材と、を備え、
上記樹脂体の表面は、上記補強部材との界面を構成する第1領域と上記第1領域に対向する第2領域とを含み、上記第1領域又は上記第2領域には、上記光ファイバから上記樹脂体に入射したクラッドモード光が上記第2領域に入射する際の入射角又は平均入射角を小さくするための入射角低減構造が形成されている、
ことを特徴とするクラッドモードストリッパ。
【請求項2】
上記入射角低減構造は、上記第1領域に形成され、当該入射角低減構造にて散乱された上記クラッドモード光が上記第2領域に入射する際の平均入射角を小さくする粗面である、
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項3】
上記粗面は、上記クラッドモード光を平均伝搬角が大きくなるように散乱する、
ことを特徴とする請求項2に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項4】
上記樹脂体を伝搬する上記クラッドモード光の波長をλとして、上記粗面の平均粗さRaは、λ/2よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項5】
上記入射角低減構造は、上記第1領域に形成され、当該入射角低減構造にて反射された上記クラッドモード光が上記第2領域に入射する際の入射角を小さくする平面プリズムである、
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項6】
上記平面プリズムは、上記クラッドモード光を伝搬角が大きくなるように反射する、
ことを特徴とする請求項5に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項7】
上記入射角低減構造は、上記第2領域に形成され、上記クラッドモード光が当該入射角低減構造に入射する際の入射角を小さくする平面プリズムである、
ことを特徴とする請求項1に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項8】
上記第2領域は、ARコートされている、
ことを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項9】
光ファイバの被覆除去区間を覆い、該光ファイバの該被覆除去区間における最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する樹脂体と、
上記樹脂体を支持し、上記樹脂体と屈折率の整合した透明部材とを備え、
上記透明部材の表面において上記透明部材と上記樹脂体との界面と対向する領域には、
粗面が形成されており、当該粗面は、上記光ファイバから上記樹脂体を介して上記透明部材に入射したクラッドモード光を平均伝搬角が大きくなるように散乱する、
ことを特徴とするクラッドモードストリッパ。
【請求項10】
上記透明部材を伝搬する上記クラッドモード光の波長をλとして、上記粗面の平均粗さRaは、λ/2よりも大きい、
ことを特徴とする請求項に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項11】
上記樹脂体と上記透明部材との屈折率差は、2%以下である、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項12】
上記樹脂体の表面において当該樹脂体と上記透明部材との界面と対向する領域は、粗面化されているか、又は、ARコートされている、
ことを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項13】
上記樹脂体の表面であって、上記樹脂体と上記最外殻構造との界面に対向する表面には、上記光ファイバから上記樹脂体に入射したクラッドモード光が該表面に入射する際の入射角又は平均入射角を小さくするための入射角低減構造が形成されている、
ことを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項14】
上記入射角低減構造は、平面プリズムである、
ことを特徴とする請求項13に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項15】
上記入射角低減構造は、粗面である、
ことを特徴とする請求項13に記載のクラッドモードストリッパ。
【請求項16】
光ファイバの被覆除去区間を覆い、該光ファイバの該被覆除去区間における最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する樹脂体を備え、
上記樹脂体の表面であって、上記樹脂体と上記最外殻構造との界面に対向する表面には、上記光ファイバから上記樹脂体に入射したクラッドモード光が該表面に入射する際の入射角を小さくするための平面プリズムが形成されており、
上記平面プリズムは、上記光ファイバの光軸に沿って交互に並んだ傾斜面と垂直面とにより構成されており、上記傾斜面は、上記光ファイバの入射端側を向いており、上記垂直面は、上記光ファイバの出射端側を向いている、
ことを特徴とするクラッドモードストリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバからクラッドモード光を除去するためのクラッドモードストリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料などを加工(切断、溶接、切削など)する材料加工の分野では、ブレードやドリルなどを用いた機械加工に代わる加工方法として、レーザ光を用いたレーザ加工が普及しつつある。また、レーザ加工に用いるレーザ装置としては、ファイバレーザが注目を集めている。よりハイパワーなレーザ光を要する加工には、複数のファイバレーザと、各ファイバレーザにて生成されたレーザ光を合成するコンバイナとを備えたファイバレーザシステムが用いられる。
【0003】
ファイバレーザは、ミラー又はハーフミラーとして機能するファイバブラッググレーティングが両端に接続されたポンプゲインファイバを共振器とするレーザ装置である。ポンプゲインファイバとしては、通常、コアにYbなどの希土類元素が添加されたダブルクラッドファイバが用いられる。共振器にて生成された信号光は、ハーフミラーとして機能するファイバブラッググレーティングに接続されたデリバリファイバを用いて、加工対象物へと導かれる。デリバリファイバとしても、通常、ダブルクラッドファイバが用いられる。
【0004】
ファイバレーザにおいては、共振器にて生成されたレーザ光の光路がポンプゲインファイバ、ファイバブラッググレーティング、及びデリバリファイバにより構成される。上記の光路には、少なくとも、ポンプゲインファイバとファイバブラッググレーティングとの接続点、及び、ファイバブラッググレーティングとデリバリファイバとの接続点が含まれる。上記の光路を構成する光ファイバの接続点においてコアの不整合(コア径の相違やコアの軸ずれなど)があると、後段の光ファイバのクラッドにクラッドモード光が励振される。例えば、ファイバブラッググレーティングとデリバリファイバとの接続点においてコアの不整合があると、デリバリファイバのクラッドにクラッドモード光が励振される。また、上記の光路を構成する光ファイバに側圧や曲げなどの外乱が加えられた場合にも、コアを導波されるレーザ光の高次モード成分がクラッドに漏出して、クラッドモード光が励振される。ファイバレーザシステムにおいては、コンバイナ、及び、コンバイナと上記の光路を構成する光ファイバとの接続点もクラッドモード光の発生源となる。
【0005】
上記の光路を構成する光ファイバのクラッドを導波するクラッドモード光は、その光ファイバ、又は、その光ファイバよりも後段の光ファイバの被覆を発熱させたり、デリバリファイバの出射端に接続された加工ヘッドの構成部品を発熱させたりする。すなわち、上記の光路を構成する光ファイバのクラッドを導波するクラッドモード光は、ファイバレーザ又はファイバレーザシステムの信頼性を低下させる要因になる。このため、上記の光路を構成する光ファイバには、クラッドモード光を除去するためのクラッドモードストリッパが設けられる。
【0006】
図12は、従来のクラッドモードストリッパ10の構成を示す縦断面図である。クラッドモードストリッパ10は、被覆除去区間Iにおいて露出した光ファイバ5の内側クラッド52を覆う高屈折率樹脂体101により構成されている。高屈折率樹脂体101は、光ファイバ5の内側クラッド52の屈折率以上の屈折率を有する透光性樹脂からなる。このため、光ファイバ5の内側クラッド52に閉じ込められたクラッドモード光を、被覆除去区間Iにおいて高屈折率樹脂体101へと漏出させることができる。
【0007】
特許文献1には、放熱機構又は冷却機構を設けたクラッドモードストリッパが開示されている。特許文献2には、屈折率が光の伝搬方向に沿って次第に高くなる高屈折率樹脂体を備えたクラッドモードストリッパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−316705号(公開日:1989年12月21日)
【特許文献2】国際公開第2013/001734号(国際公開日:2013年1月3日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のクラッドモードストリッパにおいては、被覆除去区間において光ファイバから漏出したクラッドモード光の一部が高屈折率樹脂体の表面において繰り返し反射されながら高屈折率樹脂体の内部を伝搬することがある。高屈折率樹脂体の内部を伝搬するクラッドモード光は、高屈折率樹脂体を発熱させ、高屈折率樹脂体を劣化させる場合がある。
【0010】
例えば、出力が1kWのファイバレーザにおいて、コアを導波されるレーザ光の1%がクラッドモード光になる場合、クラッドモードパワーは10Wに達する。10Wのクラッドモードが長さ数mm〜数cmの高屈折率樹脂体において熱に変換された場合、高屈折率樹脂体を劣化させるに足る温度上昇が生じ得る。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも高屈折率樹脂体の発熱が生じ難いクラッドモードストリッパを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るクラッドモードストリッパは、光ファイバの被覆除去区間を覆い、該光ファイバの該被覆除去区間における最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する樹脂体を備え、上記樹脂体の表面には、上記光ファイバから上記樹脂体に入射したクラッドモード光が該表面に入射する際の入射角又は平均入射角を小さくする ための入射角低減構造が形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記入射角低減構造は、当該入射角低減構造にて散乱された上記クラッドモード光が上記表面において当該入射角低減構造に対向する領域に入射する際の平均入射角を小さくする粗面である、ことが好ましい。
【0014】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記粗面は、上記クラッドモード光を平均伝搬角が大きくなるように散乱する、ことが好ましい。
【0015】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記粗面の平均粗さRaは、上記樹脂体を伝搬する上記クラッドモード光の波長をλとして、λ/2よりも大きい、ことが好ましい。
【0016】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記入射角低減構造は、当該入射角低減構造にて反射された上記クラッドモード光が上記表面において当該入射角低減構造に対向する領域に入射する際の入射角を小さくする平面プリズムである、ことが好ましい。
【0017】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記平面プリズムは、上記クラッドモード光を伝搬角が大きくなるように反射する、ことが好ましい。
【0018】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記入射角低減構造は、上記クラッドモード光が当該入射角低減構造に入射する際の入射角を小さくする平面プリズムである、ことが好ましい。
【0019】
本発明に係るクラッドモードストリッパは、上記樹脂体を支持し、上記樹脂体と屈折率の整合した透明部材を更に備え、上記透明部材の表面において上記透明部材と上記樹脂体との界面と対向する領域には、粗面が形成されており、当該粗面は、上記光ファイバから上記樹脂体を介して上記透明部材に入射したクラッドモード光を平均伝搬角が大きくなるように散乱する、ことが好ましい。
【0020】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記透明部材を伝搬する上記クラッドモード光の波長をλとして、上記粗面の平均粗さRaは、λ/2よりも大きい、ことが好ましい。
【0021】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記樹脂体と上記透明部材との屈折率差は、2%以下である、ことが好ましい。
【0022】
本発明に係るクラッドモードストリッパにおいて、上記樹脂体の表面において当該樹脂体と上記透明部材との界面と対向する領域は、粗面化されているか、又は、ARコートされている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来よりも高屈折率樹脂体の発熱が生じ難いクラッドモードストリッパを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係るクラッドモードストリッパの構成を示す縦断面図及び横断面図である。
図2図1に示すクラッドモードストリッパの第1の変形例を示す縦断面図である。
図3図1に示すクラッドモードストリッパの第2の変形例を示す縦断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るクラッドモードストリッパの構成を示す縦断面図及び横断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るクラッドモードストリッパの構成を示す縦断面図及び横断面図である。
図6図5に示すクラッドモードストリッパの第1の変形例を示す縦断面図である。
図7図5に示すクラッドモードストリッパの第2の変形例を示す縦断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係るクラッドモードストリッパの構成を示す縦断面図及び横断面図である。
図9図8に示すクラッドモードストリッパの第1の変形例を示す縦断面図である。
図10図8に示すクラッドモードストリッパの第2の変形例を示す縦断面図である。
図11図8に示すクラッドモードストリッパの第3の変形例を示す縦断面図である。
図12】従来のクラッドモードストリッパの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るクラッドモードストリッパ1の構成について、図1を参照して説明する。図1において、(a)は、クラッドモードストリッパ1の縦断面図であり、(b)は、クラッドモードストリッパ1の横断面図である。
【0026】
クラッドモードストリッパ1は、光ファイバ5の被覆除去区間Iを覆う高屈折率樹脂体11、及び、高屈折率樹脂体11を支持する補強部材12を備えている。補強部材12は、例えば、上面にV字溝121が形成された直方体状の部材である。この補強部材12は、不透明材料、例えば、アルミナにより構成されている。アルミナは、熱伝導性が良く、線膨張係数が小さく、加工性が良いため、補強部材12の材料として好適である。高屈折率樹脂体11は、例えば、補強部材12のV字溝121に注入された樹脂を硬化させたものである。この高屈折率樹脂体11は、被覆除去区間Iにおける光ファイバ5の最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する透光性樹脂により構成されている。
【0027】
光ファイバ5は、例えば、ガラス製のコア51、コア51の側面を覆うガラス製の内側クラッド52、内側クラッド52の外側面を覆う樹脂製の外側クラッド53、及び、外側クラッド53の外側面を覆う樹脂製の被覆54により構成される。被覆除去区間Iにおいては、外側クラッド53及び被覆54が除去されており、内側クラッド52が最外殻構造となる。高屈折率樹脂体11は、内側クラッド52よりも屈折率の高い樹脂により構成され、被覆除去区間Iにおいて内側クラッド52の外側面を覆う。
【0028】
クラッドモードストリッパ1の特徴は、補強部材12との界面を構成する高屈折率樹脂体11の表面に、傾斜面111aと垂直面111bとが光ファイバ5の光軸に沿って交互に並ぶ平面プリズム(フレネルプリズム)111pが形成されている点である。傾斜面111aは、光の入射側を向いており、例えば、光ファイバ5の光軸と45°を成す。一方、垂直面111bは、光の出射側を向いており、例えば、光ファイバ5の光軸と90°を成す。以下、高屈折率樹脂体11の表面において、高屈折率樹脂体11と補強部材12との界面を構成する領域を第1領域111とし、高屈折率樹脂体11と空気との界面を構成する領域を第2領域112とする。高屈折率樹脂体11の表面において、平面プリズム111pが形成された領域は、第1領域111に含まれ、第2領域112と対向する。
【0029】
高屈折率樹脂体11においては、上記のように平面プリズム111pが形成された第1領域111が、光ファイバ5から高屈折率樹脂体11に入射したクラッドモード光を、その伝搬角(クラッドモード光の光軸と光ファイバ5の光軸との成す角(鋭角))が大きくなるように反射する。その結果、高屈折率樹脂体11においては、第1領域111にて反射されたクラッドモード光が第2領域112に入射する際の入射角(クラッドモード光の光軸と第2領域112の法線とが入射点において成す角(鋭角))が、第1領域111が平面プリズム化されていない場合よりも小さくなる。すなわち、第1領域111に形成された平面プリズム111pは、クラッドモード光が第2領域112に入射する際の入射角を小さくするための入射角低減構造として機能する。
【0030】
このため、高屈折率樹脂体11においては、第1領域111にて反射されたクラッドモード光に対する第2領域112の反射率が、第1領域111が平面プリズム化されていない場合よりも小さくなる。その結果、高屈折率樹脂体11の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体11の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が、第1領域111が平面プリズム化されていない場合よりも短くなる。したがって、高屈折率樹脂体11の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体11の発熱及び劣化を有効に抑制することができる。
【0031】
以下、本実施形態に係るクラッドモードストリッパ1の変形例について、図2図3を参照して説明する。
【0032】
第1の変形例に係るクラッドモードストリッパ1Aについて、図2を参照して説明する。図2は、クラッドモードストリッパ1Aの縦断面図である。クラッドモードストリッパ1(図1参照)と本変形例に係るクラッドモードストリッパ1Aとの相違点は、以下のとおりである。
【0033】
相違点:クラッドモードストリッパ1の高屈折率樹脂体11の表面においては、第2領域112が露出しているのに対して、クラッドモードストリッパ1Aの高屈折率樹脂体11の表面においては、第2領域112に反射防止膜としてAR(Anti Reflection)コート113が施されている。ARコート113の材料としては、低屈折率のものが望ましく、例えば、フッ素系樹脂又やフッ化マグネシウムなどが挙げられる。
【0034】
クラッドモードストリッパ1Aの高屈折率樹脂体11においては、第2領域112にARコート113が施されているため、第1領域111にて反射されたクラッドモード光に対する第2領域112の反射率が更に低下する。また、第1領域111が平面プリズム化されていることにより、ARコート113へのクラッドモード光の入射角が小さくなり、ARコート113の反射防止性能が発揮され易くなる。その結果、高屈折率樹脂体11の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体11の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が更に短くなる。したがって、高屈折率樹脂体11の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体11の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0035】
次に、第2の変形例に係るクラッドモードストリッパ1Bについて、図3を参照して説明する。図3は、クラッドモードストリッパ1Bの縦断面図である。クラッドモードストリッパ1(図1参照)と本変形例に係るクラッドモードストリッパ1Bとの相違点は、以下のとおりである。
【0036】
相違点:クラッドモードストリッパ1においては、補強部材12が不透明材料(例えば、アルミナ)により構成されているのに対して、クラッドモードストリッパ1Bにおいては、補強部材12が透明材料(例えば、石英又は窒化アルミニウム)により構成されている。
【0037】
補強部材12を透明材料により構成することによって、高屈折率樹脂体11に入射したクラッドモード光に対する第1領域111の反射率が、補強部材12に入射する光の分だけ低下する。例えば、高屈折率樹脂体11と補強部材12との屈折率差が4%の場合、高屈折率樹脂体11を伝搬角2°で伝播し、第1領域111に入射角88°で入射するクラッドモード光に対する第1領域111の反射率は60%程度になる。そして、第1領域111が平面プリズム化されていることにより、クラッドモード光が補強部材12に入射する際の入射角が、第1領域111が平面プリズム化されていない場合よりも小さくなる。このため、第1領域111にて反射されずに補強部材12に入射するクラッドモード光の割合が増え、第1領域111にて反射されて高屈折領域11に戻る光の割合が減る。その結果、高屈折率樹脂体11の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体11の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が更に短くなる。したがって、高屈折率樹脂体11の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体11の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0038】
なお、高屈折率樹脂体の表面に形成される入射角低減構造は、補強部材との界面を構成する領域に、補強部材の表面形状の反映として、受動的又は他律的に形成された表面構造であってもよいし、補強部材との界面を構成しない領域に、能動的又は自律的に形成された表面構造であってもよい。前述した第1の実施形態は、高屈折率樹脂体11の表面に受動的又は他律的に形成された平面プリズム111pを、入射角低減構造として用いる例である。一方、後述する第2の実施形態は、高屈折率樹脂体21の表面に能動的又は自律的に形成された平面プリズム212pを入射角低減構造として用いる例である(図4参照)。また、後述する第3の実施形態は、高屈折率樹脂体31の表面に受動的又は他律的に形成された粗面311qを入射角低減構造として用いる例である(図5参照)。
【0039】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るクラッドモードストリッパ2の構成について、図4を参照して説明する。図4において、(a)は、クラッドモードストリッパ2の縦断面図であり、(b)は、クラッドモードストリッパ2の横断面図である。
【0040】
クラッドモードストリッパ2は、光ファイバ5の被覆除去区間Iを覆う高屈折率樹脂体21、及び、高屈折率樹脂体21を支持する補強部材22を備えている。補強部材22は、例えば、上面にV字溝221が形成された直方体状の部材である。この補強部材22は、不透明材料、例えば、アルミナにより構成されている。高屈折率樹脂体21は、例えば、補強部材22のV字溝221に注入された樹脂を硬化させたものである。この高屈折率樹脂体21は、被覆除去区間Iにおける光ファイバ5の最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する透光性樹脂により構成されている。
【0041】
光ファイバ5は、例えば、ガラス製のコア51、コア51の側面を覆うガラス製の内側クラッド52、内側クラッド52の外側面を覆う樹脂製の外側クラッド53、及び、外側クラッド53の外側面を覆う樹脂製の被覆54により構成される。被覆除去区間Iにおいては、外側クラッド53及び被覆54が除去されており、内側クラッド52が最外殻構造となる。高屈折率樹脂体21は、内側クラッド52よりも屈折率の高い樹脂により構成され、被覆除去区間Iにおいて内側クラッド52の外側面を覆う。
【0042】
クラッドモードストリッパ2の特徴は、空気との界面を構成する高屈折率樹脂体21の表面に、垂直面212aと傾斜面212bとが光ファイバ5の光軸に沿って交互に並ぶ平面プリズム(フレネルプリズム)212pが形成されている点である。垂直面212aは、光の入射側を向いており、例えば、光ファイバ5の光軸と90°を成す。一方、傾斜面212bは、光の出射側を向いており、光ファイバ5の光軸と45°を成す。以下、高屈折率樹脂体21の表面において、高屈折率樹脂体21と補強部材22との界面を構成する領域を第1領域211とし、高屈折率樹脂体11と空気との界面を構成する領域を第2領域212とする。高屈折率樹脂体21の表面において、平面プリズム212pが形成された領域は、第2領域212に含まれ、第1領域211と対向する。
【0043】
高屈折率樹脂体21においては、第2領域212に平面プリズム212pが形成されているため、第1領域211にて反射されたクラッドモード光が第2領域212に入射する際の入射角が小さくなる。すなわち、第2領域212に形成された平面プリズム212pは、クラッドモード光が第2領域212に入射する際の入射角を小さくするための入射角低減構造として機能する。
【0044】
このため、高屈折率樹脂体21においては、第1領域211にて反射されたクラッドモード光に対する第2領域212の反射率が、第2領域212が平面プリズム化されていない場合よりも小さくなる。その結果、高屈折率樹脂体21の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体21の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が、第2領域212が平面プリズム化されていない場合よりも短くなる。したがって、高屈折率樹脂体21の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体21の発熱及び劣化を有効に抑制することができる。
【0045】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係るクラッドモードストリッパ3の構成について、図5を参照して説明する。図5において、(a)は、クラッドモードストリッパ3の縦断面図であり、(b)は、クラッドモードストリッパ3の横断面図である。
【0046】
クラッドモードストリッパ3は、光ファイバ5の被覆除去区間Iを覆う高屈折率樹脂体31、及び、高屈折率樹脂体31を支持する補強部材32を備えている。補強部材32は、例えば、上面にV字溝321が形成された直方体状の部材である。この補強部材32は、不透明材料、例えば、アルミナにより構成されている。高屈折率樹脂体31は、例えば、補強部材32のV字溝321に注入された樹脂を硬化させたものである。この高屈折率樹脂体31は、被覆除去区間Iにおける光ファイバ5の最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する透光性樹脂により構成されている。
【0047】
光ファイバ5は、例えば、ガラス製のコア51、コア51の側面を覆うガラス製の内側クラッド52、内側クラッド52の外側面を覆う樹脂製の外側クラッド53、及び、外側クラッド53の外側面を覆う樹脂製の被覆54により構成される。被覆除去区間Iにおいては、外側クラッド53及び被覆54が除去されており、内側クラッド52が最外殻構造となる。高屈折率樹脂体31は、内側クラッド52よりも屈折率の高い樹脂により構成され、被覆除去区間Iにおいて内側クラッド52の外側面を覆う。
【0048】
クラッドモードストリッパ3の特徴は、補強部材32との界面を構成する高屈折率樹脂体31の表面に、平均粗さ(例えば、算術平均粗さ)Raがλ/2よりも大きい粗面311qが形成されている点にある。ここで、λは、高屈折率樹脂体31内を伝搬するクラッドモード光の波長を表す。また、ある表面のある領域における平均粗さRaとは、その表面の理想表面からの偏差の絶対値をその領域に亘って平均したものを指す。以下、高屈折率樹脂体31の表面において、高屈折率樹脂体31と補強部材32との界面を構成する領域を第1領域311とし、高屈折率樹脂体31と空気との界面を構成する領域を第2領域312とする。高屈折率樹脂体31の表面において、粗面311qが形成された領域は、第1領域311に含まれ、第2領域312と対向する。
【0049】
高屈折率樹脂体31においては、上記のように粗面311qが形成された第1領域311が、光ファイバ5から高屈折率樹脂体31に入射したクラッドモード光を、平均伝搬角(クラッドモード光が第1領域311に入射した際に発生する散乱光の伝搬角の分布の平均値)が大きくなるように散乱する。なぜなら、平均粗さRaがλ/2よりも大きい粗面311qに散乱された光の強度分布はランベルト則に従い、粗面311qの法線方向に散乱される光の強度が他の方向に散乱される光の強度よりも大きくなるからである。ここで、ある面にて散乱された光の強度分布がランベルト則に従うとは、その面に入射する光の入射角に依らず、その面の法線方向に散乱される光の強度をI0、その面の法線方向との成す角がφとなる方向に散乱される光の強度をIφとして、Iφ=I0・cosφが満たされることを指す。特に、クラッドモード光のように、第1領域311への入射角が小さい光では、平均伝搬角が大きくなる効果が顕著となる。その結果、高屈折率樹脂体31においては、第1領域311にて散乱されたクラッドモード光が第2領域312に入射する際の平均入射角(第1領域311にて散乱されたクラッドモード光が第2領域312に入射する際の入射角の分布の平均値)が、第1領域311が粗面化されていない場合よりも小さくなる。すなわち、第1領域311に形成された粗面311qは、クラッドモード光が第2領域312に入射する際の平均入射角を小さくするための入射角低減構造として機能する。
【0050】
このため、高屈折率樹脂体31においては、第1領域311にて散乱されたクラッドモード光に対する第2領域312の平均反射率が、第1領域311が粗面化されていない場合よりも小さくなる。その結果、高屈折率樹脂体31の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体31の内部を伝搬するクラッドモード光の平均伝搬距離が、第1領域311が粗面化されていない場合よりも短くなる。したがって、高屈折率樹脂体31の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体31の発熱及び劣化を有効に抑制することができる。
【0051】
以下、本実施形態に係るクラッドモードストリッパ3の変形例について、図6図7を参照して説明する。
【0052】
第1の変形例に係るクラッドモードストリッパ3Aについて、図6を参照して説明する。図6は、クラッドモードストリッパ3Aの縦断面図である。クラッドモードストリッパ3(図5参照)と本変形例に係るクラッドモードストリッパ3Aとの相違点は、以下のとおりである。
【0053】
相違点:クラッドモードストリッパ3の高屈折率樹脂体31の表面においては、第2領域312が露出しているのに対して、クラッドモードストリッパ3Aの高屈折率樹脂体31の表面においては、第2領域312にARコート313が施されている。
【0054】
クラッドモードストリッパ3Aの高屈折率樹脂体31においては、第2領域312にARコートが施されているため、第1領域311にて反射されたクラッドモード光に対する第2領域312の反射率が更に低下する。また、第1領域311が粗面化されていることにより、ARコート313へのクラッドモード光の入射角が小さくなり、ARコート313の反射防止性能が発揮され易くなる。その結果、高屈折率樹脂体31の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体31の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が更に短くなる。したがって、高屈折率樹脂体31の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体31の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0055】
次に、第2の変形例に係るクラッドモードストリッパ3Bについて、図7を参照して説明する。図7は、クラッドモードストリッパ3Bの縦断面図である。クラッドモードストリッパ3(図5参照)と本変形例に係るクラッドモードストリッパ3Bとの相違点は、以下のとおりである。
【0056】
相違点:クラッドモードストリッパ3においては、補強部材32が不透明材料(例えば、アルミナ)により構成されているのに対して、クラッドモードストリッパ3Bにおいては、補強部材32が透明材料(例えば、石英や窒化アルミニウムなど)により構成されている。
【0057】
補強部材32を透明材料により構成することによって、高屈折率樹脂体31に入射したクラッドモード光に対する第1領域311の後方散乱率(高屈折率樹脂体31側に散乱されるクラッドモード光の割合)が低下する。本変形例における第1領域311のように、高屈折率樹脂体31と補強部材32との界面が粗面化されている場合、後方散乱率は、通常、50%以下となる。補強部材32と高屈折率樹脂31との間には、通常、屈折率差が存在する。このため、第1領域311が粗面化されていない場合には、大きい入射角で第1領域311に入射したクラッドモード光の大半が反射する。例えば、高屈折率樹脂体31と補強部材32との屈折率差が4%の場合、高屈折率樹脂体31を伝搬角2°で伝播し、第1領域311に入射角88°で入射するクラッドモード光に対する第1領域111の反射率は60%程度になる。高屈折率樹脂体31と補強部材32との屈折率差が大きくなると、クラッドモード光に対する第1領域111の反射率は更に高くなる。第1領域311を粗面化することによって、第1領域311に入射角88°で入射するクラッドモード光については、高屈折率樹脂体31と補強部材32との屈折率差を4%以下にするのと同等以上に、クラッドモード光の高屈折率樹脂体31への後方散乱による戻り光の量を低減できる。その結果、高屈折率樹脂体31の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体31の内部を伝搬するクラッドモード光の光量が更に減る。したがって、高屈折率樹脂体31の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体31の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0058】
〔第4の実施形態〕
本発明の第4の実施形態に係るクラッドモードストリッパ4の構成について、図8を参照して説明する。図8において、(a)は、クラッドモードストリッパ4の縦断面図であり、(b)は、クラッドモードストリッパ4の横断面図である。
【0059】
クラッドモードストリッパ4は、光ファイバ5の被覆除去区間Iを覆う高屈折率樹脂体41、高屈折率樹脂体41を支持する2つの透明補強部材42〜43を備えている。第1の透明補強部材42は、例えば、上面にV字溝421が形成された直方体状の部材である。第1の透明補強部材42は、屈折率が高屈折率樹脂体41と整合する透明材料、例えば、石英などにより構成されている。高屈折率樹脂体41は、例えば、透明補強部材42のV字溝421に注入された樹脂を硬化させたものである。この高屈折率樹脂体41は、被覆除去区間Iにおける光ファイバ5の最外殻構造の屈折率以上の屈折率を有する透光性樹脂により構成されている。第2の透明補強部材43は、例えば、直方体状の部材である。第2の透明補強部材43は、屈折率が高屈折率樹脂体41と整合する透明材料、例えば、石英などにより構成されている。第2の透明補強部材43は、その下面が第1の透明補強部材42の上面と当接するように第1の透明補強部材42に接合され、第1の透明補強部材42の上面に形成されたV字溝421を閉塞する蓋として機能する。
【0060】
光ファイバ5は、例えば、ガラス製のコア51、コア51の側面を覆うガラス製の内側クラッド52、内側クラッド52の外側面を覆う樹脂製の外側クラッド53、及び、外側クラッド53の外側面を覆う樹脂製の被覆54により構成される。被覆除去区間Iにおいては、外側クラッド53及び被覆54が除去されており、内側クラッド52が最外殻構造となる。高屈折率樹脂体41は、内側クラッド52よりも屈折率の高い樹脂により構成され、被覆除去区間Iにおいて内側クラッド52の外側面を覆う。
【0061】
クラッドモードストリッパ4の第1の特徴は、第1の透明補強部材42及び第2の透明補強部材43の屈折率が高屈折率樹脂体41と整合している点である。このため、光ファイバ5から高屈折率樹脂体41に入射したクラッドモード光の大部分は、高屈折率樹脂体41と第1の透明補強部材42との界面を透過して第1の透明補強部材42に入射するか、又は、高屈折率樹脂体41と第2の透明補強部材43との界面を透過して第2の透明補強部材43に入射する。例えば、高屈折率樹脂体41と第1の透明補強部材42及び第2の透明補強部材43との屈折率差が2%以下である場合、高屈折率樹脂体41を伝搬角2°で伝播し、入射角88°で透明補強部材43に入射するクラッドモード光の半分以上が、高屈折率樹脂体41と第1の透明補強部材42との界面を透過して第1の透明補強部材42に入射するか、又は、高屈折率樹脂体41と第2の透明補強部材43との界面を透過して第2の透明補強部材43に入射する。したがって、高屈折率樹脂体41と第1の透明補強部材42との界面及び高屈折率樹脂体41と第2の透明補強部材43との界面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が、第1の透明補強部材42及び第2の透明補強部材43の屈折率が高屈折率樹脂体41と整合していない場合よりも短くなる。したがって、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体41の発熱及び劣化を有効に抑制することができる。
【0062】
クラッドモードストリッパ4の第2の特徴は、第1の透明補強部材42の表面において高屈折率樹脂体41との界面と対向する領域421、及び、第2の透明補強部材43の表面において高屈折率樹脂体41との界面と対向する領域431が粗面化されている点である。このため、高屈折率樹脂体41との界面を透過して第1の透明補強部材42及び第2の透明補強部材43に入射したクラッドモード光の大部分は、透明補強部材42の領域421及び第2の透明補強部材43の領域431にて散乱される。すなわち、高屈折率樹脂体41との界面を透過して第1の透明補強部材42及び第2の透明補強部材43に入射したクラッドモード光の大部分は、高屈折率樹脂体41への再入射を抑制され、クラッドモードストリッパ4の外部に放出される。また、後方散乱で高屈折率樹脂体41に再入射する光についても、散乱により伝搬角の平均が大きくなることで、高屈折率樹脂41の界面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬する伝搬距離が短くなる。領域421,431の界面が粗面化されていない場合には、透明補強部材42,43と空気の屈折率差が非常に大きいことから、クラッドモード光のように伝搬角の小さい光は大半が鏡面反射してしまい、伝搬角が小さいまま高屈折率樹脂体41に再入射することとなる。
【0063】
以下、本実施形態に係るクラッドモードストリッパ4の変形例について、図9図11を参照して説明する。
【0064】
第1の変形例に係るクラッドモードストリッパ4Aについて、図9を参照して説明する。図9は、クラッドモードストリッパ4Aの縦断面図である。
【0065】
クラッドモードストリッパ4Aは、クラッドモードストリッパ4(図8参照)において、第2の透明補強部材43を省略すると共に、高屈折率樹脂体41の表面において第1の透明補強部材42との界面と対向する領域411を粗面化したものである。入射したクラッドモード光の大部分は、領域411にて散乱される。すなわち、高屈折率樹脂体41と空気との界面である領域411に入射したクラッドモード光の大部分は、高屈折率樹脂体41への再入射を抑制され、クラッドモードストリッパ4の外部に放出される。領域411に形成された粗面は、クラッドモード光が高屈折樹脂体41と透明補強部材42の界面、及び、当該領域411と対向する領域421に入射する際の平均入射角を小さくするための入射角低減構造として機能する。
【0066】
このため、高屈折率樹脂体41から透明補強部材42に入射したクラッドモード光の大部分は、領域421において反射されるのでなく透過する。また、領域421も粗面化されていることにより、クラッドモード光のうち入射角度の大きい成分についても、反射されるのでなく散乱される。その結果、高屈折率樹脂体41の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が更に短くなる。したがって、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体41の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0067】
次に、第2の変形例に係るクラッドモードストリッパ4Bについて、図10を参照して説明する。図10は、クラッドモードストリッパ4Bの縦断面図である。
【0068】
クラッドモードストリッパ4Bは、クラッドモードストリッパ4(図8参照)において、第2の透明補強部材43を省略すると共に、高屈折率樹脂体41の表面において第1の透明補強部材42との界面と対向する領域411にARコートを施したものである。
【0069】
このため、高屈折率樹脂体41において領域411に入射したクラッドモード光の大部分は、反射されるのでなく透過される。また、領域421が光散乱面であることにより、ARコートへのクラッドモード光の入射角が小さくなり、ARコートの反射防止性能が発揮され易くなる。その結果、高屈折率樹脂体41の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が更に短くなる。したがって、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体41の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0070】
次に、第3の変形例に係るクラッドモードストリッパ4Cについて、図11を参照して説明する。図11は、クラッドモードストリッパ4Cの縦断面図である。
【0071】
クラッドモードストリッパ4Cは、クラッドモードストリッパ4B(図10参照)において、高屈折率樹脂体41の表面において透明補強部材42との境界面を構成する領域412を平面プリズム化したものである。領域412に形成された平面プリズムは、クラッドモード光が当該領域412に入射する際の平均入射角を小さくするための入射角低減構造として機能する。
【0072】
このため、高屈折率樹脂体41において透明補強部材42との界面にクラッドモード光が入射する際の反射率が低下する。また、領域412にて反射されたクラッドモード光の伝搬角が大きくなる。その結果、高屈折率樹脂体41の表面で繰り返し反射されながら、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光の伝搬距離が更に短くなる。したがって、高屈折率樹脂体41の内部を伝搬するクラッドモード光に起因する高屈折率樹脂体41の発熱及び劣化を更に有効に抑制することができる。
【0073】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、上述した各実施形態及び各変形例に示した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態などについても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1、1A、1B クラッドモードストリッパ
11 高屈折率樹脂体
12 補強部材
2 クラッドモードストリッパ
21 高屈折率樹脂体
22 補強部材
3、3A、3B クラッドモードストリッパ
31 高屈折率樹脂体
32 補強部材
4、4A、4B、4C クラッドモードストリッパ
41 高屈折率樹脂体
42、43 透明補強部材
5 光ファイバ
【要約】
【課題】従来よりも高屈折率樹脂体の発熱が生じ難いクラッドモードストリッパを実現する。
【解決手段】クラッドモードストリッパ(1)は、光ファイバ(5)の被覆除去区間(I)を覆い、光ファイバ(5)の内側クラッド(52)よりも屈折率の高い高屈折率樹脂体(11)を備えている。高屈折率樹脂体(11)の表面には、光ファイバ(5)から高屈折率樹脂体(11)に入射したクラッドモード光が該表面に入射する際の入射角又は平均入射角を小さくための構造として、平面プリズムが形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
図6
図7
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図10
図11
図12