【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、これは、請求項1の特徴的な特徴によって実現される。
【0009】
湾曲した環状バレルを使用するこの構成では、高精度のシリンジ・ポンプと小型の形状を組み合わせる。バレルの軸線に沿った動き全体にわたってバレルとピストンとの間で最適の嵌合を実現するために、ピストンの駆動ロッドは、バレルの内壁の表面によって案内及び支持され、好ましくは可撓性であり、したがってバレルの内側湾曲に対して自己適応性を有する。バレルは、優先的に弧が180°未満になるような湾曲を有しており、高精度の投与のために標準的なプラスチック技術で製造できるバレルの最適の長さ/直径比には、150°〜160°が最も好ましい。さらに、デバイスの個々の構成要素の改善及びこれらの構成要素の協働により、全体的な寸法の所望の低減及び機械動作の簡略化が実現される。本発明によれば、現在のデバイスに伴う主な問題は、本明細書で以下に開示する特徴を有する注入又は分析流体取出しデバイスによって解決される。
【0010】
患者の皮膚又は静脈内若しくは腹腔内ポートを通じて患者内へ注入流体を導入する当該注入デバイスは、環状チューブの一区分の形状のバレルと、バレル内へしっかりと嵌合し、駆動及び制御手段によってバレル全体を通過させることができるピストンとを有するシリンジ型ポンプを備える。ピストンは、バレルの内壁によって案内及び支持され、好ましくは可撓性であり、そのためバレルの湾曲に対して自己適応性を有する駆動ロッドによって動かされ、バレルの弧とピストンの剛性の駆動ロッドの弧との間の嵌合が完全でないために固着が生じる危険はない。さらに、この構成は、ピストンを押すロッドがバレルの遠位内面によって案内されることによる流体の送達と、ピストンを押すロッドがバレルの近位内面によって案内されることによる流体の抜出しとの両方に適応させることができる。デバイスは、患者の皮膚又は静脈内ポートに接触するための接触表面を有する。通常、皮膚への接触表面は接着剤で被覆されており、シリンジ・ポンプは、患者の皮膚又はポートの隔壁を貫通して患者内へ注入流体を導入し、又は分析流体を取り出すように構成及び寸法設定された先端部を有するカニューレに連結される。
【0011】
好ましい実施例では、本発明のデバイスは、ケーシング及びシリンジ・ポンプに対して固定して位置決めされたカニューレを有する。患者の皮膚内へのカニューレの挿入機構は、皮膚に接着する可撓性の接触表面を備えることが好ましい。
【0012】
本明細書では、以下の定義で記載の用語を定義する。
【0013】
皮膚上で一時的に着用するための接着性の接触表面は、強い接着特性、伸縮性、及び最小のアレルゲン性を有する材料から作られる。この接着層はデバイスの底部上に固定され、表面全体を覆い、又は少なくとも表面の中心部分を覆って、表面の可撓性に干渉しないように自由なリムを残す。優先的には、皮膚に固定される接着層の表面は、デバイスの可撓性の底部に固定される表面より著しく大きく、可撓性の底部に固定されないリムを残す。これはたとえば、デバイスの底部の表面を越えて延びる接着層によって、又は優先的に、デバイスの可撓性表面の表面に類似し若しくはほんのわずかに大きい皮膚への接着性表面の形状を使用するが、外側の環状区間がデバイスの底部に固定されないように、皮膚への接着性表面をデバイスの可撓性表面に固定することによって実現することができる。そのような設計は、硬質の底部を有する医療用デバイスに関するEP0825882に記載されている。
【0014】
分析流体とは、血液、間質液、又は半透性膜を通じて間質液に接触する透析液である。
【0015】
被検体とは、その濃度を使用して個人の健康、臓器機能、代謝状態、又は薬物代謝能力を診断できる任意の内因性又は外因性の物質を意味する。内因性物質の例には、グルコース、ラクテート(lactate)、酸素、クレアチニンなどがある。外因性物質の例には、薬物、そのような薬物の代謝物、診断物質(たとえば、イニュリン(inulin))などがある。
【0016】
可撓性表面の構成要素は、優先的に円形又は楕円形の底面と可撓性の底部とを有するケーシングから構成される。この底板は、たとえば円錐又は切妻形(位置1)のような突出部分を有する凸状形状に変形できるように構築される。この底部のさらなる特徴は、凸状形状から平坦な形状(位置2)に素早く動くことができることであり、これは、接着性表面によって取り付けられた皮膚をカニューレ又は診断プローブの先端部に引き寄せることによって、この運動が注入カニューレ又は診断プローブの挿入可能部分を挿入するための駆動エネルギーを提供できるのに十分な速度及び力で行われる。そのような可撓性表面は、ヒンジ領域がばねとして作用するように表面を適当に区分化することによって、及び/又はたとえば圧縮応力のかかった形状から動いて平坦な弛緩した形状をとるのに必要な可逆性の伸縮性を有する弾性材料を使用することによって実現することができる。
【0017】
2つの画定された位置で注入カニューレ又は診断プローブの挿入可能部分に対して可撓性表面を位置決めする手段は、表面全体に対して連係した形で、圧縮応力のかかった凸状の形状への可撓性表面の変形を実施でき、またこの位置から急速に解放して平坦な弛緩した形状をとることができる要素からなる。これは、可撓性表面から突出して摺動ボルト機構を押し込むいくつかのピン状要素によって優先的に実現することができるが、ねじ、傾斜面、レバーなどを使用する他の構造も可能である。
【0018】
可撓性表面を有するそのような構成要素は、適したプラスチックの射出成型によって製造することができるが、鋼鉄、複合又はセラミック材料などのような他の材料を使用することによって製造することもできる。この要素の底部は、注入カニューレ又は診断プローブの挿入可能部分に対する開口として、孔又はスリットの形状の開口を有する。注入カニューレ又は診断プローブの挿入可能部分は、位置1では全体的に覆われ、位置2では底部から突出するように、この底部に対して軸線方向に位置決めされる。
【0019】
注入流体の送達は、体内への液体の比較的速い注入(ボーラス)と、比較的遅い導入(点滴又は滴注ともいう)との両方を包含する。
【0020】
診断プローブとは、被検体の濃度を判定するための機能要素であり、それだけに制限されるものではないが、任意の分析流体取出し及びオンライン分析又はサンプリング・システムを意味する。微小透析システムの場合、透析膜が、間質液と膜の反対側を通る透析液との間の境界面を形成する。好ましい実施例では、微小透析プローブが外側及び内側バレルからなり、挿入可能な先端部で透析膜によって覆われる。内側バレルは、透析液を送達するポンプに接続され、外側バレルは、分析又はサンプリング・システムに接続される。
【0021】
駆動及び制御手段には、それだけに限定されるものではないが、内部又は外部信号に従って環状シリンジ・ポンプのピストンを動かすこと、デバイスの正しい機能を開始、制御、及び調査すること、診断要素を送出及び制御してセンサ信号を被検体測定値に変換すること、被検体測定値をオンライン又はバッチで記憶、表示、及び伝送すること、外部の制御デバイスと優先的には無線で対話すること、並びにデバイスが適正に機能していない場合又は被検体測定値が事前定義された範囲内にない場合に警告信号を与えることのように、デバイスのすべての必要な機能に対するすべての必要な機械、電子機器、及びソフトウェア要素が含まれる。
【0022】
ピストンの駆動ロッドは、環状バレルの実際の湾曲及び軸線方向の位置に適応するのに十分な径方向及び軸線方向の可撓性を提供するが、バレル内でピストンの高精度の運動を可能にするのに十分な接線方向の剛性を作用させる構造を有する。優先的には、駆動ロッドは可撓性であり、その所与の形状は環状バレルの弧に密接に対応し、わずかな径方向の力でバレルの内面の実際の形状へのほとんど完全な適応を実現するのに適したプラスチック材料が製造に使用される。環状バレルの実際の湾曲及び軸線方向の位置に駆動ロッドを適応させることで、バレルの軸線と剛性の駆動ロッドとの間の嵌合が完全でないために好ましくない閉塞が生じる可能性を回避する。
【0023】
可撓性の駆動ロッドは通常、中間平面内でバレル壁の内面との低摩擦の接触を可能にする接触ブレースと、駆動手段の歯車に係合するのこぎり状のラックとを有する。ブレースとバレル壁の内面との間の低摩擦の接触は、適した形状及び材料によって実現される。
【0024】
ブレースは、駆動ロッドの一体部分とすることができ、又は駆動ロッドに取り付けて、摺動特性が改善された異なる材料の使用を可能にすることができ、また、駆動ロッドの必要な径方向及び軸線方向の可撓性を実現するために、ブレースは、たとえば区分化された構造を有することができる。
【0025】
別の好ましい構造は、バレル壁の内面への摺動接触を転がり接触に置き換える。そのような構造はたとえば、ヒンジ領域で十分な可撓性を有する区分によって接続された複数のロールを有することができ、バレルの湾曲に適応するようにロールの軸線を保持することができる。
【0026】
接触ブレースはすべての径方向の力成分を吸収し、それによって、実質的な封止の変形を招き、その結果、バレルの軸線と剛性の駆動ロッドとの間の嵌合が完全でないために、締まりの問題及びスティックスリップ現象並びにピストンの閉塞を生じさせる可能性のあるこれらの力から、ピストン封止を保護する。
【0027】
通常、駆動ロッドの一方の端部では、バレルの横断面の形状であるがわずかに小さい直径を有する末端部が堅く取り付けられ、ブレースによってバレルの横断面に対して直交するように調心される面を形成し、駆動ロッドからの駆動力をピストンに伝達して、バレルの軸線に対して接線方向に封止する。封止、たとえばO又はXリングを有するピストンがこの末端部と溶融し、又はこの末端部に可動式に取り付けられ、バレル内でピストンの中心の自己位置決めを可能にする。これは、駆動ロッドの末端部とピストンとの間の低摩擦の摺動表面によって、又は境界面を転がるボールによって実現することができ、バレルの軸線に沿ってバレルの内径が変化することに起因して起こりうる問題を減じる。
【0028】
機能パッケージは、解放可能な結合機構によってデバイスの硬質部分を保持するように設計され、湿度などの規定の環境内で保管中に診断プローブの活性表面を保護するための取外し可能なキャップを有し、無菌状態の維持を可能にする。機能パッケージはまた、リム要素を有し、キャップの取外し後に皮膚を押すことによって接着層のリムの正しい取付けを可能にする。さらに、機能パッケージは、早すぎる意図しない動作からデバイスの解放/開始機構を保護し、解放/開始機構は、デバイスを皮膚に取り付けて機能パッケージを取り外した後のみに作動させることができる。
【0029】
静脈内ポートは、静脈内へ配置されたカテーテルを備え、カテーテルは、カテーテルの外端部に接続要素、好ましくは隔壁を有する。
【0030】
サンプリング手段とは、それだけに限定されるものではないが生化学、免疫学、HPLC、又はLC/MS/MS方法によって、デバイスの外部から被検体の判定用の分析流体のサンプルを収集する機能要素である。サンプルは、異なる時点に得たサンプルの混合を最小まで低減させることに注意して、分離されたレセプタクル内、又は連続する空洞、たとえばバレル又はチューブ内に収集することができる。これはたとえば、空気又は不混和性流体の区分を分析流体内へ導入して、連続する空洞内に分離されたサンプルを得ることによって実現することができる。
【0031】
摺動ボルト機構は、円形又は線形の運動を受けると連続していくつかの固定された位置に適応し、閉じた状態又は開いた状態を呈する要素、たとえば固体表面又は孔からなる。摺動機構の運動は、手動で、或いは、たとえば解放要素によって作動するばねによって、たとえばボタン若しくはハンドルを押したり解放したりすることによって、又は回転運動によって駆動される。皮膚に取り付けられる可撓性表面を有する構成要素を用いて、流体送達カニューレ及び案内針内の可撓性センサを皮膚内へ並行して挿入するために、摺動ボルト機構を容易な操作で格納位置(位置1)から次の位置(位置2)へ動かすことで、圧縮応力のかかった形状からの可撓性表面を急速に解放して平坦な弛緩した形状をとらせて、流体送達カニューレ及びセンサ案内針を皮膚内へ挿入する。次に、位置2における摺動ボルト機構の一時的な閉塞が解放され、次の位置(位置3)へ摺動ボルト機構を動かすことができ、それによって案内針を部分的に後退させる。
【0032】
以下では、本発明の好ましい実施例について、添付の図面を参照して説明する。