特許第6423942号(P6423942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6423942-マイクロキャリア撹拌培養装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6423942
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】マイクロキャリア撹拌培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/06 20060101AFI20181105BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20181105BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   C12M3/06
   C12M1/00 D
   C12M1/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-215671(P2017-215671)
(22)【出願日】2017年11月8日
【審査請求日】2017年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹化学機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−174376(JP,A)
【文献】 特開2016−36274(JP,A)
【文献】 特開2016−21908(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/077964(WO,A1)
【文献】 PHARM TECH JAPAN,2015年,Vol.31, No.14,p.25-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00−3/10
C12M 1/00−1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャリアと培養物と培地とが容れられる培養容器と、
該培養容器に設けられた、該培養容器内を一方のゾーンと他方のゾーンとに仕切る、前記マイクロキャリアを通過せず、前記培養物と培地とを通過させるろ過膜と、
前記培養容器内に設けられた、前記ろ過膜を貫通して往復動する駆動軸と、
前記一方のゾーン内の該駆動軸部分に固定された一方の撹拌翼と、
前記他方のゾーン内の該駆動軸部分に固定された他方の撹拌翼と、
前記一方のゾーン内の内容物を、前記培養容器外に排出する排出手段と、
前記他方のゾーン内に、培養物や培地やマイクロキャリアなどの内容物を供給する供給手段とよりなることを特徴とするマイクロキャリア撹拌培養装置。
【請求項2】
マイクロキャリアと培養物と培地とが容れられる培養容器と、
該培養容器に設けられた、該培養容器内を下部ゾーンと上部ゾーンとに仕切る、前記マイクロキャリアを通過せず、前記培養物と培地とを通過させるろ過膜と、
前記培養容器内に設けられた、前記ろ過膜を貫通して上下方向に往復動する駆動軸と、
前記下部ゾーン内の該駆動軸部分に固定された下段翼と、
前記上部ゾーン内の該駆動軸部分に固定された上段翼と、
前記下部ゾーン内の内容物を、前記培養容器外に排出する排出手段と、
前記上部ゾーン内に、培養物や培地やマイクロキャリアなどの内容物を供給する供給手段とよりなることを特徴とするマイクロキャリア撹拌培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、マイクロキャリアを用いて細胞等を培養するための撹拌培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
培養容器内で、表面や内部に細胞等が付着して増殖することが可能な培養面を持つ、例えば、100〜300μm程度の大きさの微粒子担体(マイクロキャリア)を用いて、iPS細胞や動植物の細胞や菌体等の培養物を効率よく培養する培養装置がある。
【0003】
該培養容器内で培養された細胞等の培養物の培養容器外への抜出は、従来においては、培養容器に、排出管と、排出ポンプとを設けると共に、該排出管に、前記マイクロキャリアは通過せず、細胞等の培養物及び培養液等の培地のみを通過するろ過膜(フィルタ)を設けた培養装置を用いて、前記排出ポンプにより前記排出管内を負圧にして(または、培養容器内を加圧して)、前記培養容器内の内容物を前記排出管に導入すると共に、前記ろ過膜により、マイクロキャリア以外の培養物及び培地のみを該培養容器外に抜出するようにしている。
【0004】
培養容器の排出管にろ過膜を設けた培養装置としては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−172956号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の培養装置においては、前記排出管に設けたろ過膜の目詰まり防止のために、定期的に、前記排出管の逆洗(逆流)のための操作が別途必要であった。
【0007】
本発明は、前記の欠点を無くすようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成すべく、本発明のマイクロキャリア撹拌培養装置は、マイクロキャリアと培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器に設けられた、該培養容器内を一方のゾーンと他方のゾーンとに仕切る、前記マイクロキャリアを通過せず、前記培養物と培地とを通過させるろ過膜と、前記培養容器内に設けられた、前記ろ過膜を貫通して往復動する駆動軸と、前記一方のゾーン内の該駆動軸部分に固定された一方の撹拌翼と、前記他方のゾーン内の該駆動軸部分に固定された他方の撹拌翼と、前記一方のゾーン内の内容物を、前記培養容器外に排出する排出手段と、前記他方のゾーン内に、培養物や培地やマイクロキャリアなどの内容物を供給する供給手段とよりなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のマイクロキャリア撹拌培養装置は、マイクロキャリアと培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器に設けられた、該培養容器内を下部ゾーンと上部ゾーンとに仕切る、前記マイクロキャリアを通過せず、前記培養物と培地とを通過させるろ過膜と、前記培養容器内に設けられた、前記ろ過膜を貫通して上下方向に往復動する駆動軸と、前記下部ゾーン内の該駆動軸部分に固定された下段翼と、前記上部ゾーン内の該駆動軸部分に固定された上段翼と、前記下部ゾーン内の内容物を、前記培養容器外に排出する排出手段と、前記上部ゾーン内に、培養物や培地やマイクロキャリアなどの内容物を供給する供給手段とよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細胞等のみを抜出できると共に、別途、ろ過膜の逆洗操作を不要とすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1の撹拌培養装置の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を図1によって説明する。
【0014】
1は、本発明のマイクロキャリア撹拌培養装置を示し、2は、該撹拌培養装置1の、例えば、縦型の培養容器であり、該培養容器2には、例えば、iPS細胞や動植物の細胞や菌体等の培養物と、培養液等の培地と、表面や内部に細胞等が付着して増殖することが可能な培養面を持つ微粒子担体(マイクロキャリア3)が容れられる。
【0015】
4は、ろ過膜(フィルター)を示し、該ろ過膜4は、前記培養容器2の上下方向における中間部の内周面に、例えば、水平状に、該培養容器2内の上下を仕切るように固定され、該ろ過膜4により、前記培養容器2内は、下側の下部ゾーン5(下部空間部)と、上側の上部ゾーン6(上部空間部)とが形成されるようになる。
【0016】
なお、前記ろ過膜4の孔のサイズ(メッシュサイズ)は、細胞等の培養物と培地は通過できるが、用いられるマイクロキャリア4が通過しない大きさ、即ち、マイクロキャリア径よりも小さく設定される。
【0017】
また、前記ろ過膜4は、水平状に設ける以外に、例えば、前記培養容器2を上下に仕切れれば、傾斜していてもよい。即ち、駆動軸の往復方向において仕切れるようであればよい。
【0018】
7は、駆動軸を示し、該駆動軸7は、前記培養容器2の天井部2aの中央の開口部8を貫通すると共に、前記ろ過膜4に形成された貫通孔4aを貫通して、前記培養容器2内に垂設して挿入されている。
【0019】
なお、前記駆動軸7は、前記開口部8に設けられた駆動軸シール部又はスラスト軸受部などの支持部9により、上下動可能に支持されて、該駆動軸7の上端部において、前記天井部2aの上方に設けた往復駆動装置10に連結し、該往復駆動装置10の駆動により上下動されるようになる。
【0020】
また、前記駆動軸7は、前記貫通孔4a内を上下にスライド自在に設けられると共に、該貫通孔4aと前記撹拌軸7との間は、前記撹拌容器2内に容れられたマイクロキャリア4が通過できない間隔に形成される。
【0021】
11は、下段翼を示し、該下段翼11は、例えば、円形の平板状に形成され、前記培養容器2内の前記下部ゾーン5に位置する前記駆動軸部分、例えば、下端に、面が直交(交叉)して固定される。
【0022】
なお、前記下段翼11は、前記駆動軸7に1段以外に、2段以上設けられてもよく、また、該駆動軸7に該下段翼11を固定する位置は、前記駆動軸7が上下動しても、前記ろ過膜4に当たらなければ、下端ではなく、中間部分であっても良く、特に制限はない。
【0023】
また、該下段翼11は、円形以外に、例えば、楕円形、長円形、矩形、十字型、そして、円錐型など3次元形状も含めて様々な形状がある。また、該撹拌翼の一部又は全部を、任意の場所で傾斜させた折り曲げ構造としてもよい。
【0024】
12は、上段翼を示し、該上段翼12は、例えば、円形の平板状に形成され、前記培養容器2内の前記上部ゾーン6に位置する前記駆動軸部分、例えば、前記駆動軸7の上部部分に、面が直交(交叉)して固定される。
【0025】
なお、前記上段翼12は、前記駆動軸7に1段以外に、2段以上設けられてもよく、また、該駆動軸7に該上段翼12を固定する位置は、前記駆動軸7が上下動しても、前記ろ過膜4に当たらなければ、上部でなく、中間部分であっても良く、特に制限はない。
【0026】
また、該上段翼12は、円形以外に、例えば、楕円形、長円形、矩形、十字型、そして、円錐型など3次元形状も含めて様々な形状がある。また、該撹拌翼の一部又は全部を、任意の場所で傾斜させた折り曲げ構造としてもよい。
【0027】
なお、前記下段翼11や前記上段翼12には、様々な形状や構造のものが含まれ、本実施例の翼11、12においては、該翼11、12の翼面を前記駆動軸4の軸方向に対して垂直になるよう固定しているが、該翼11、12の翼面の全部又は一部が任意の方向を向くように、垂直面に対して角度をつけて、前記駆動軸4に固定したり、また、該翼11、12の全部又は一部を該駆動軸4の軸周りに角度をつけて(即ち、駆動軸4から外方に放射状に延びる線に対して軸周り方向に傾斜させて)、前記駆動軸4に固定したものも含む。
【0028】
13は、前記上部ゾーン6内に、培養物や培地やマイクロキャリアなどの内容物を供給する供給手段としての供給管を示し、該供給管13は、例えば、前記培養容器2の天井部2aを貫通して、その先端部が、該培養容器2内の前記上部ゾーン6内に位置するように設けられる。
【0029】
また、該供給管13には、開閉弁(図示せず)と、マイクロキャリアを含む培地や培養物等を、前記培養容器2の前記上部ゾーン6内に供給するための供給管側ポンプ部(図示せず)とが設けられ、必要に応じて、前記開閉弁が開となり、前記供給管側ポンプ部により、前記培養容器2の前記上部ゾーン6内に、前記供給管13を通じて、マイクロキャリアを含む培地や培養物が供給されるようになる。
【0030】
なお、前記供給管13から前記培養容器2内に、マイクロキャリアを除いた培地のみを供給するようにしてもよい。
【0031】
14は、前記下部ゾーン5内の内容物を、前記培養容器外に排出する排出手段としての排出管を示し、該排出管14は、例えば、前記培養容器2の天井部2aを貫通すると共に、前記ろ過膜4を貫通して、その先端部が、前記培養容器2内の前記下部ゾーン5に位置するように設けられる。
【0032】
また、該排出管14には、開閉弁(図示せず)と、前記培養容器2の前記下部ゾーン5内の内容物を培養容器外に排出するための排出管側ポンプ部(図示せず)とが設けられ、必要に応じて、前記開閉弁が開となり、前記排出管側ポンプ部により、前記培養容器2の前記下部ゾーン5内の内容物を、前記排出管14を通じて、培養容器外に抜出するようになる。
【0033】
次に、本発明のマイクロキャリアを用いた撹拌培養装置の作動及びその効果について説明する。
【0034】
本発明の撹拌培養装置1においては、まず、前記供給管13の開閉弁を開として、前記供給管側ポンプ部により、前記供給管13から、前記培養容器2内に、マイクロキャリア、細胞及び培地を含む内容物(被撹拌物)を、前記培養容器2の所望の高さまで(所望の量)容れるようにする。
【0035】
これにより、細胞等の培養物及び培地は、前記ろ過膜4を通過することができるので、前記下部ゾーン5及び前記上部ゾーン6内に容れられて、また、マイクロキャリア4のみは、前記ろ過膜4を通過しないので、前記上部ゾーン5にのみ容れられるようになる。
【0036】
そして、前記供給管13の開閉弁を閉じると共に、前記供給管側ポンプを停止し、前記駆動軸7を、前記往復駆動装置10により上下に往復動させることにより、前記下段翼11及び前記上段翼12が上下方向に往復動して、前記下部ゾーン5及び前記上部ゾーン6内の内容物(被撹拌物)が撹拌されると共に、培養されるようになる。
【0037】
この際、前記マイクロキャリア3は、前記ろ過膜4を通過しないので、前記上部ゾーン6内でのみ撹拌され、また、前記細胞等の培養物及び培地は、前記ろ過膜4を通過できるので、前記上部ゾーン5及び前記下部ゾーン6内で撹拌されるようになる。
【0038】
また、前記ろ過膜4が前記マイクロキャリア3により目詰まりしても、前記上段翼及び下段翼の上方への移動により、前記ろ過膜4には、上方に向かう流れが生じ、前記ろ過膜4の表面に付着したマイクロキャリア3が離れ、目詰まりが抑制されるようになる。
【0039】
即ち、前記培養容器2内は、前記下段翼11及び前記上段翼12により、撹拌されると同時に、前記ろ過膜4には、逆洗作用が生じ、目詰まりが抑制されるようになる。
【0040】
なお、前記下部ゾーン5内の内容物を抜出しない時には、前記排出管側ポンプを停止すると共に、前記排出管14の開閉弁は閉口している。
【0041】
そして、所望の時間経過後に、前記排出管14の開閉弁を開とすると共に、前記排出管側ポンプ部を駆動して、前記下部ゾーン5内の内容物を排出すれば、細胞及び培地のみを抜出できるようになる。
【0042】
なお、前記下部ゾーン5内の内容物を抜出する際は、前記往復駆動装置10を停止するようにしてもよい。
【0043】
また、前記培養容器2内の内容物の排出と同時に、前記供給部13から、培地や培養物やマイクロキャリアを前記培養容器2内に供給するようにしてもよい。
【0044】
本発明によれば、マイクロキャリアを除いた細胞を培養容器外に抜出できるようになる。
【0045】
また、前記下段翼及び上段翼の往復動により、撹拌とろ過膜の逆洗を同時に行うことができ、従来のように、別途、ろ過膜の目詰まりを防止するための逆洗操作を行わなくてもよいようになる。
【0046】
なお、前記実施例においては、駆動軸を垂設し、上下方向に駆動軸7を移動する例を示したが、例えば、駆動軸を横設し、横方向に移動するなど、駆動軸4を任意の方向に向け、該任意の方向に往復移動するようにしてもよい。
【0047】
そして、駆動軸が横方向において移動する場合には、前記培養容器内に固定されるろ過膜は、該培養容器を、左側ゾーンと右側ゾーンとに横方向において仕切るように固定され、また、駆動軸が任意の方向において移動する場合には、培養容器内に固定されるろ過膜は、該培養容器を、一方のゾーンと他方のゾーンとに該方向において仕切るように固定されるようになる。
【0048】
そして、例えば、下段翼や左側翼などの一方の撹拌翼が、前記一方のゾーンに位置する駆動軸部分に固定され、また、上下段翼や右側翼などの他方の撹拌翼が、前記他方のゾーンに位置する駆動軸部分に固定されるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の撹拌培養装置は、医療品関係、食品関係等における培養装置に利用される。
【符号の説明】
【0050】
1 撹拌培養装置
2 培養容器
2a 天井部
3 マイクロキャリア
4 ろ過膜
4a 貫通孔
5 下部ゾーン
6 上部ゾーン
7 駆動軸
8 開口部
9 支持部
10 往復駆動装置
11 下段翼
12 上段翼
13 供給管
14 排出管
【要約】
【課題】ろ過膜の逆洗を別途行うことを不要としたマイクロキャリアを用いた撹拌培養装置。
【解決手段】本発明のマイクロキャリア撹拌培養装置は、マイクロキャリアと培養物と培地とが容れられる培養容器と、該培養容器に設けられた、該培養容器内を一方のゾーンと他方のゾーンとに仕切る、前記マイクロキャリアを通過せず、前記培養物と培地とを通過させるろ過膜と、前記培養容器内に設けられた、前記ろ過膜を貫通して往復動する駆動軸と、前記一方のゾーン内の該駆動軸部分に固定された一方の撹拌翼と、前記他方のゾーン内の該駆動軸部分に固定された他方の撹拌翼と、前記一方のゾーン内の内容物を、前記培養容器外に排出する排出手段と、前記他方のゾーン内に、培養物や培地やマイクロキャリアなどの内容物を供給する供給手段とよりなることを特徴とする。
【選択図】図1
図1