【実施例1】
【0059】
本発明の実施例について
図5〜
図8を用いて説明する。ここでは、画素部とその周辺に設
けられる駆動回路を同時に作製する方法について説明する。但し、説明を簡単にするため
に、駆動回路に関しては、シフトレジスタ回路、バッファ回路等の基本回路であるCMO
S回路と、サンプリング回路を形成するnチャネル型TFTとを図示することとする。
【0060】
図5(A)において、基板501には、ガラス基板や石英基板を使用することが望まし
い。その他にもシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成した
ものを基板としても良い。耐熱性が許せばプラスチック基板を用いることも可能である。
【0061】
そして、基板501のTFTが形成される表面には、珪素(シリコン)を含む絶縁膜(
本明細書中では酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜の総称を指
す)からなる下地膜502をプラズマCVD法やスパッタ法で100〜400nmの厚さ
に形成する。
【0062】
なお、本明細書中において窒化酸化シリコン膜とはSiOxNyで表される絶縁膜であり
、珪素、酸素、窒素を所定の割合で含む絶縁膜を指す。本実施例では、下地膜502とし
て、窒素を20〜50atomic%(典型的には20〜30atomic%)で含む100nm厚の
窒化酸化シリコン膜と、窒素を1〜20atomic%(典型的には5〜10atomic%)で含む
200nm厚の窒化酸化シリコン膜との積層膜を用いる。なお、厚さはこの値に限定する
必要はない。また、窒化酸化シリコン膜に含まれる窒素と酸素の含有比(atomic%比)は
3:1〜1:3(典型的には1:1)とすればよい。また、窒化酸化シリコン膜は、Si
H
4とN
2OとNH
3を原料ガスとして作製すればよい。
【0063】
なお、この下地膜502は基板からの不純物汚染を防ぐために設けられるものであり、
石英基板を用いた場合には必ずしも設けなくても良い。
【0064】
次に下地膜502の上に30〜120nm(好ましくは50〜70nm)の厚さの、非
晶質構造を含む半導体膜(本実施例では非晶質シリコン膜(図示せず)
)を公知の成膜法で形成する。なお、非晶質構造を含む半導体膜としては、非晶質半導体
膜、微結晶半導体膜があり、さらに非晶質シリコンゲルマニウム膜などの非晶質構造を含
む化合物半導体膜も含まれる。また、上記膜厚で形成しておけば、最終的にTFTが完成
した時点の活性層の膜厚は10〜100nm(好ましくは30〜50nm)となる。
【0065】
そして、特開平7−130652号公報(USP5,643,826号に対応)に記載
された技術に従って、結晶構造を含む半導体膜(本実施例では結晶質シリコン膜)503
を形成する。同公報記載の技術は、非晶質シリコン膜の結晶化に際して、結晶化を助長す
る触媒元素(ニッケル、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、パラジウム、鉄、銅から選ば
れた一種または複数種の元素、代表的にはニッケル)を用いる結晶化手段である。
【0066】
具体的には、非晶質シリコン膜表面に触媒元素を保持させた状態で加熱処理を行い、非
晶質シリコン膜を結晶質シリコン膜に変化させるものである。本実施例では同公報の実施
例1に記載された技術を用いるが、実施例2に記載された技術を用いても良い。なお、結
晶質シリコン膜には、いわゆる単結晶シリコン膜も多結晶シリコン膜も含まれるが、本実
施例で形成される結晶質シリコン膜は結晶粒界を有するシリコン膜である。(
図5(A)
)
【0067】
非晶質シリコン膜は含有水素量にもよるが、好ましくは400〜550℃で数時間加熱
して脱水素処理を行い、含有水素量を5atom%以下として、結晶化の工程を行うことが望
ましい。また、非晶質シリコン膜をスパッタ法や蒸着法などの他の作製方法で形成しても
良いが、膜中に含まれる酸素、窒素などの不純物元素を十分低減させておくことが望まし
い。
【0068】
ここでは、下地膜と非晶質シリコン膜とは、同じ成膜法で形成することが可能であるの
で両者を連続形成しても良い。下地膜を形成後、一旦大気雰囲気にさらされないようにす
ることで表面の汚染を防ぐことが可能となり、作製されるTFTの特性バラツキを低減さ
せることができる。
【0069】
次に、結晶質シリコン膜503に対してレーザー光源から発する光(レーザー光)を照
射(以下、レーザーアニールという)して結晶性の改善された結晶質シリコン膜504を
形成する。レーザー光としては、パルス発振型または連続発振型のエキシマレーザー光が
望ましいが、連続発振型のアルゴンレーザー光でも良い。また、レーザー光のビーム形状
は線状であっても矩形状であっても構わない。(
図5(B))
【0070】
また、レーザー光の代わりにランプから発する光(以下、ランプ光という)を照射(以
下、ランプアニールという)しても良い。ランプ光としては、ハロゲンランプ、赤外ラン
プ等から発するランプ光を用いることができる。
【0071】
なお、このようにレーザー光またはランプ光により熱処理(アニール)を施す工程を光
アニール工程という。光アニール工程は短時間で高温熱処理が行えるため、ガラス基板等
の耐熱性の低い基板を用いる場合にも効果的な熱処理工程を高いスループットで行うこと
ができる。勿論、目的はアニールであるので電熱炉を用いたファーネスアニール(熱アニ
ールともいう)で代用することもできる。
【0072】
本実施例では、パルス発振型エキシマレーザー光を線状に加工してレーザーアニール工
程を行う。レーザーアニール条件は、励起ガスとしてXeClガスを用い、処理温度を室
温、パルス発振周波数を30Hzとし、レーザーエネルギー密度を250〜500mJ/cm
2
(代表的には350〜400mJ/cm
2)とする。
【0073】
上記条件で行われたレーザーアニール工程は、熱結晶化後に残存した非晶質領域を完全
に結晶化すると共に、既に結晶化された結晶質領域の欠陥等を低減する効果を有する。そ
のため、本工程は光アニールにより半導体膜の結晶性を改善する工程、または半導体膜の
結晶化を助長する工程と呼ぶこともできる。このような効果はランプアニールの条件を最
適化することによっても得ることが可能である。本明細書中ではこのような条件を第1ア
ニール条件と呼ぶことにする。
【0074】
次に、結晶質シリコン膜504をパターニングして島状の半導体膜(以下、活性層とい
う)505〜508を形成する。なお、このとき同時に、今後のパターニング時の位置合
わせに用いるアライメントマーカーを、結晶質シリコン膜を用いて形成する。本実施例の
場合、活性層の形成と同時にアライメントマーカーを形成することができるため、アライ
メントマーカーを別途形成する手間(マスク数の増加)を防ぐことができる。
【0075】
次に、活性層505〜508上に後の不純物添加時のために保護膜509を形成する。
保護膜509は100〜200nm(好ましくは130〜170nm)
の厚さの窒化酸化シリコン膜または酸化シリコン膜を用いる。この保護膜509は不純物
添加時に結晶質シリコン膜が直接プラズマに曝されないようにするためと、微妙な濃度制
御を可能にするための意味がある。(
図5(C))
【0076】
そして、その上にレジストマスク510を形成し、保護膜509を介してp型を付与す
る不純物元素(以下、p型不純物元素という)を添加する。p型不純物元素としては、代
表的には13族に属する元素、典型的にはボロンまたはガリウムを用いることができる。
この工程(チャネルドープ工程という)はTFTのしきい値電圧を制御するための工程で
ある。なお、ここではジボラン(B
2H
6)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンド
ープ法でボロンを添加する。勿論、質量分離を行うイオンインプランテーション法を用い
ても良い。
【0077】
こうして1×10
15〜1×10
18atoms/cm
3(代表的には5×10
16〜5×10
17atoms
/cm
3)の濃度でp型不純物元素(本実施例ではボロン)が添加された活性層511〜51
3が形成される。この活性層511〜513は後のnチャネル型TFTの活性層となる。
但し、本明細書中で記載する濃度は全てSIMS(質量二次イオン分析)による測定値で
ある。
【0078】
なお、本明細書中では少なくとも上記濃度範囲でp型不純物元素を含む不純物領域(但
し、1×10
16atoms/cm
3の濃度でn型を付与する不純物元素、典型的にはリン又は砒素
が添加された領域を除く)をp型不純物領域(b)と定義する。(
図5(D))
【0079】
次に、レジストマスク510を除去し、新たにレジストマスク514a〜514dを形成
する。そして、n型を付与する不純物元素(以下、n型不純物元素という)を添加してn
型を呈する不純物領域515〜517を形成する。なお、n型不純物元素としては、代表
的には15族に属する元素、典型的にはリンまたは砒素を用いることができる。(
図5(
E))
【0080】
この低濃度不純物領域515〜517は、後にCMOS回路およびサンプリング回路の
nチャネル型TFTにおいて、LDD領域として機能させるための不純物領域である。な
お、ここで形成された不純物領域にはn型不純物元素が2×10
16〜5×10
19atoms/cm
3(代表的には5×10
17〜5×10
18atoms/cm
3)の濃度で含まれている。本明細書中で
は上記濃度範囲でn型不純物元素を含む不純物領域をn型不純物領域(b)と定義する。
【0081】
なお、ここではフォスフィン(PH
3)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンド
ープ法でリンを1×10
18atoms/cm
3の濃度で添加する。勿論、質量分離を行うイオンイ
ンプランテーション法を用いても良い。この工程では、保護膜509を介して結晶質シリ
コン膜にリンを添加する。
【0082】
次に、レジストマスク514a〜514d及び保護膜509を除去し、再びレーザー光の
照射工程を行う。ここでもレーザー光としては、パルス発振型または連続発振型のエキシ
マレーザー光が望ましいが、連続発振型のアルゴンレーザー光でも良い。また、レーザー
光のビーム形状は線状であっても矩形状であっても構わない。但し、添加された不純物元
素の活性化が目的であるので、結晶質シリコン膜が溶融しない程度のエネルギーで照射す
ることが好ましい。また、保護膜509をつけたままレーザーアニール工程を行うことも
可能である。(
図5(F)
)
【0083】
本実施例では、パルス発振型エキシマレーザー光を線状に加工してレーザーアニール工
程を行う。レーザーアニール条件は、励起ガスとしてKrFガスを用い、処理温度を室温
、パルス発振周波数を30Hzとし、レーザーエネルギー密度を100〜300mJ/cm
2(
代表的には150〜250mJ/cm
2)とする。
【0084】
上記条件で行われた光アニール工程は、添加されたn型またはp型を付与する不純物元
素を活性化すると共に、不純物元素の添加時に非晶質化した半導体膜を再結晶化する効果
を有する。なお、上記条件は半導体膜を溶融させることなく原子配列の整合性をとり、且
つ、不純物元素を活性化することが好ましい。また、本工程は光アニールによりn型また
はp型を付与する不純物元素を活性化する工程、半導体膜を再結晶化する工程、またはそ
れらを同時に行う工程と呼ぶこともできる。このような効果はランプアニールの条件を最
適化することによっても得ることが可能である。本明細書中ではこのような条件を第2ア
ニール条件と呼ぶことにする。
【0085】
この工程によりn型不純物領域(b)515〜517の境界部、即ち、n型不純物領域
(b)の周囲に存在する真性な領域(p型不純物領域(b)も実質的に真性とみなす)と
の接合部が明確になる。このことは、後にTFTが完成した時点において、LDD領域と
チャネル形成領域とが非常に良好な接合部を形成しうることを意味する。
【0086】
なお、このレーザー光による不純物元素の活性化に際して、電熱炉を用いた熱処理によ
る活性化を併用しても構わない。熱処理による活性化を行う場合は、基板の耐熱性を考慮
して450〜650℃(好ましくは500〜550℃)の熱処理を行えば良い。
【0087】
次に、活性層505、511〜513を覆ってゲート絶縁膜518を形成する。ゲート
絶縁膜518は、10〜200nm、好ましくは50〜150nmの厚さに形成すれば良
い。本実施例では、プラズマCVD法でN
2OとSiH
4を原料とした窒化酸化シリコン膜
を115nmの厚さに形成する。(
図6(A))
【0088】
次に、ゲート配線となる導電膜を形成する。なお、ゲート配線は単層の導電膜で形成し
ても良いが、必要に応じて二層、三層といった積層膜とすることが好ましい。本実施例で
は、第1導電膜519と第2導電膜520とでなる積層膜を形成する。(
図6(B))
【0089】
ここで第1導電膜519、第2導電膜520としては、タンタル(Ta)、チタン(T
i)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、シ
リコン(Si)から選ばれた元素を含む金属膜、または前記元素を主成分とする金属化合
物膜(代表的には窒化タンタル膜、窒化タングステン膜、窒化チタン膜)、または前記元
素を組み合わせた合金膜(代表的にはMo−W合金膜、Mo−Ta合金膜、タングステン
シリサイド膜)、若しくはそれらの薄膜を積層した積層膜を用いることができる。
【0090】
なお、第1導電膜519は10〜50nm(好ましくは20〜30nm)とし、第2導
電膜520は200〜400nm(好ましくは250〜350nm)とすれば良い。本実
施例では、第1導電膜519として、50nm厚の窒化タンタル(TaN)膜を、第2導
電膜520として、350nm厚のタンタル(Ta)
膜を用いる。
【0091】
このほか、窒化タングステン膜とタングステン膜との積層膜、窒化タンタル膜のみの単
層膜、タングステンシリサイド膜も好適である。また、第1導電膜519の下にシリコン
膜を2〜20nm程度の厚さで形成する構造(ポリサイド構造)とすると、シリコン膜上
に形成された導電膜の密着性を向上させると同時に、導電膜の酸化を抑制することができ
る。
【0092】
また、本実施例のように第2導電膜520として金属膜を用いた場合、その表面をアン
モニアガスまたは窒素ガスを用いたプラズマ雰囲気に曝すことで窒化することも有効であ
る。こうすることで、金属膜表面の酸化を抑制することが可能である。
【0093】
次に、第1導電膜519と第2導電膜520とを一括でエッチングして400nm厚の
ゲート配線(ゲート電極とも言える)521〜524a、524bを形成する。この時、駆
動回路に形成されるゲート配線522、523はn型不純物領域(b)515〜517の
一部とゲート絶縁膜を介して重なるように形成する。
なお、ゲート配線524a、524bは断面では二つに見えるが、実際は連続的に繋がった
一つのパターンから形成されている。(
図6(C))
【0094】
次に、ゲート配線521〜524をマスクとして自己整合的にn型不純物元素(本実施
例ではリン)を添加する。こうして形成された不純物領域525〜530には前記n型不
純物領域(b)の1/2〜1/10(代表的には1/3〜1/4)の濃度(但し、前述の
チャネルドープ工程で添加されたボロン濃度よりも5〜10倍高い濃度、代表的には1×
10
16〜5×10
18atoms/cm
3、典型的には3×10
17〜3×10
18atoms/cm
3、)でリン
が添加されるように調節する。なお、本明細書中では上記濃度範囲でn型不純物元素を含
む不純物領域をn型不純物領域(c)と定義する。(
図6(D))
【0095】
なお、n型不純物領域(c)527〜530には既にチャネルドープ工程で1×10
15
〜1×10
18atoms/cm
3の濃度のボロンが添加されているが、この工程ではp型不純物領
域(b)に含まれるボロンの5〜10倍の濃度でリンが添加されるので、ボロンの影響は
無視して良い。
【0096】
但し、厳密にはn型不純物領域(b)515〜517のうちゲート配線に重なった部分
のリン濃度が2×10
16〜5×10
19atoms/cm
3のままであるのに対し、ゲート配線に重
ならない部分はそれに1×10
16〜5×10
18atoms/cm
3の濃度のリンが加わっており、
若干高い濃度でリンを含むことになる。
【0097】
次に、ゲート配線521〜524をマスクとして自己整合的にゲート絶縁膜518をエ
ッチングする。エッチングはドライエッチング法を用い、エッチングガスとしてはCHF
3ガスを用いれば良い。但し、エッチングガスはこれに限定する必要はない。こうしてゲ
ート配線下にゲート絶縁膜531〜534a、534bが形成される。(
図6(E))
【0098】
このように活性層を露呈させることによって、次に不純物元素の添加工程を行う際に加
速電圧を低くすることができる。そのため、また必要なドーズ量が少なくて済むのでスル
ープットが向上する。勿論、ゲート絶縁膜をエッチングしないで残し、スルードーピング
によって不純物領域を形成しても良い。
【0099】
次に、ゲート配線を覆う形でレジストマスク535a〜535dを形成し、n型不純物元
素(本実施例ではリン)を添加して高濃度にリンを含む不純物領域536〜544を形成
する。ここでも、フォスフィン(PH
3)を用いたイオンドープ法(勿論、イオンインプ
ランテーション法でも良い)で行い、この領域のリンの濃度は1×10
20〜1×10
21at
oms/cm
3(代表的には2×10
20〜5×10
21atoms/cm
3)とする。(
図6(F))
【0100】
なお、本明細書中では上記濃度範囲でn型不純物元素を含む不純物領域をn型不純物領
域(a)と定義する。また、不純物領域536〜544が形成された領域には既に前工程
で添加されたリンまたはボロンが含まれるが、十分に高い濃度でリンが添加されることに
なるので、前工程で添加されたリンまたはボロンの影響は考えなくて良い。従って、本明
細書中では不純物領域536〜544はn型不純物領域(a)と言い換えても構わない。
【0101】
次に、レジストマスク535a〜535dを除去し、新たにレジストマスク545を形成
する。そして、p型不純物元素(本実施例ではボロン)を添加し、高濃度にボロンを含む
不純物領域546、547を形成する。ここではジボラン(B
2H
6)を用いたイオンドー
プ法(勿論、イオンインプランテーション法でも良い)により3×10
20〜3×10
21at
oms/cm
3(代表的には5×10
20〜1×10
21atoms/cm
3)濃度でボロンを添加する。なお
、本明細書中では上記濃度範囲でp型不純物元素を含む不純物領域をp型不純物領域(a
)と定義する。(
図7(A))
【0102】
なお、不純物領域546、547の一部(前述のn型不純物領域(a)536、537
)には既に1×10
20〜1×10
21atoms/cm
3の濃度でリンが添加されているが、ここで
添加されるボロンはその少なくとも3倍以上の濃度で添加される。そのため、予め形成さ
れていたn型の不純物領域は完全にP型に反転し、P型の不純物領域として機能する。従
って、本明細書中では不純物領域546、547をp型不純物領域(a)と言い換えても
構わない。
【0103】
次に、レジストマスク545を除去した後、第1層間絶縁膜548を形成する。第1層
間絶縁膜548としては、珪素を含む絶縁膜、具体的には窒化シリコン膜、酸化シリコン
膜、窒化酸化シリコン膜またはそれらを組み合わせた積層膜で形成すれば良い。また、膜
厚は50〜400nm(好ましくは100〜200nm)とすれば良い。
【0104】
本実施例では、プラズマCVD法でSiH
4、N
2O、NH
3を原料ガスとし、200n
m厚の窒化酸化シリコン膜(但し窒素濃度が25〜50atomic%)を用いる。この第1層
間絶縁膜548は次に行われる熱処理工程(活性化工程)において、ゲート配線521〜
524a、524bが酸化されて抵抗値が増加するのを防ぐ効果を有する。
【0105】
その後、それぞれの濃度で添加されたn型またはp型不純物元素を活性化するために熱
処理工程を行う。この工程はファーネスアニール法、レーザーアニール法、またはラピッ
ドサーマルアニール法(RTA法)で行うことができる。ここではファーネスアニール法
で活性化工程を行う。この熱処理工程は、窒素雰囲気中において300〜650℃、好ま
しくは400〜550℃、ここでは550℃、4時間の熱処理を行う。(
図7(B))
【0106】
この時、本実施例において非晶質シリコン膜の結晶化に用いた触媒元素(本実施例では
ニッケル)が、矢印で示す方向に移動して、前述の
図6(F)の工程で形成された高濃度
にリンを含む領域に捕獲(ゲッタリング)される。これはリンによる金属元素のゲッタリ
ング効果に起因する現象であり、この結果、後のチャネル形成領域549〜553は前記
触媒元素の濃度が1×10
17atoms/cm
3以下となる。但し、ニッケルの場合、1×10
17a
toms/cm
3以下はSIMSの測定下限となるため、現状の技術では測定不能である。
【0107】
また、逆に触媒元素のゲッタリングサイトとなった領域(
図6(F)の工程で不純物領
域536〜544が形成された領域)は高濃度に触媒元素が偏析して5×10
18atoms/cm
3以上(代表的には1×10
19〜5×10
20atoms/cm
3)濃度で存在するようになる。しか
し、このゲッタリングサイトとなった領域はソース領域またはドレイン領域として機能す
れば良いので、ニッケルの有無は問題とはならないと考えられる。
【0108】
次に、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処
理を行い、活性層を水素化する工程を行う。この工程は熱的に励起された水素により半導
体層のダングリングボンドを終端する工程である。水素化の他の手段として、プラズマ水
素化(プラズマにより励起された水素を用いる)を行っても良い。
【0109】
活性化工程を終えたら、第1層間絶縁膜548の上に500nm〜1.5μm厚の第2
層間絶縁膜554を形成する。本実施例では第2層間絶縁膜554として800nm厚の
酸化シリコン膜をプラズマCVD法により形成する。こうして第1層間絶縁膜(窒化酸化
シリコン膜)548と第2層間絶縁膜(酸化シリコン膜)554との積層膜でなる1μm
厚の層間絶縁膜を形成する。
【0110】
なお、第2層間絶縁膜554として、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミド
アミド、BCB(ベンゾシクロブテン)等の有機樹脂絶縁膜を用いることも可能である。
【0111】
その後、それぞれのTFTのソース領域またはドレイン領域に達するコンタクトホール
が形成され、ソース配線555〜558と、ドレイン配線559〜562を形成する。な
お、図示されていないがCMOS回路を形成するためにドレイン配線559、560は同
一配線で形成されている。また、本実施例ではこの電極を、Ti膜を100nm、Tiを
含むアルミニウム膜300nm、Ti膜150nmをスパッタ法で連続して形成した3層
構造の積層膜とする。
【0112】
次に、パッシベーション膜563として、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、または窒
化酸化シリコン膜で50〜500nm(代表的には200〜300nm)の厚さで形成す
る。(
図7(C))
【0113】
この時、膜の形成に先立ってH
2、NH
3等水素を含むガスを用いてプラズマ処理を行い
、成膜後に熱処理を行うことは有効である。この前処理により励起された水素が第1、第
2層間絶縁膜中に供給される。、この状態で熱処理を行うことで、パッシベーション膜5
63の膜質を改善するとともに、第1、第2層間絶縁膜中に添加された水素が下層側に拡
散するため、効果的に活性層を水素化することができる。
【0114】
また、パッシベーション膜563を形成した後に、さらに水素化工程を行っても良い。
例えば、3〜100%の水素を含む雰囲気中で、300〜450℃で1〜12時間の熱処
理を行うと良く、あるいはプラズマ水素化法を用いても同様の効果が得られた。
【0115】
なお、ここで後に画素電極とドレイン配線を接続するためのコンタクトホールを形成す
る位置において、パッシベーション膜563に開口部を形成しておいても良い。
【0116】
その後、
図7(D)に示すように、樹脂材料(又は有機材料ともいう)でなる絶縁膜(
以下、樹脂絶縁膜という)でなる第3層間絶縁膜(本明細書中では平坦化膜と呼ぶ場合も
ある)564を約1〜3μm(典型的には1.5〜2μm)の厚さに形成する。
【0117】
樹脂材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、BCB(
ベンゾシクロブテン)、シクロテン等を使用することができる。樹脂絶縁膜を用いること
の利点は、極めて平坦性に優れる点、比誘電率が低い点などが上げられる。なお上述した
以外の樹脂絶縁膜や有機系SiO化合物などを用いることもできる。また、平坦性さえ高け
れば無機材料でなる絶縁膜を用いることも可能である。
【0118】
なお、ここでは、基板に塗布後、熱で重合するタイプのアクリル膜を用いるが、光照射
により重合するタイプを用いても良い。勿論、ポジ型またはネガ型の感光性材料であって
も良い。
【0119】
また、第3層間絶縁膜564の一部の層として、顔料等で着色した樹脂膜を設け、カラ
ーフィルターとして用いることも可能である。
【0120】
次に、画素部において、樹脂材料でなる第3層間絶縁膜(平坦化膜)564上に遮蔽膜
565を形成する。なお、本明細書中において遮蔽膜とは、光若しくは電磁波を遮断する
性質を有する導電膜を指す。
【0121】
遮蔽膜565はアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)から選ばれ
た元素でなる金属膜または前記いずれかの元素を主成分(本明細書中では50重量%以上
で含む場合に主成分とみなす)とする金属膜で100〜300nmの厚さに形成する。本
実施例では1wt%のチタンを含有させたアルミニウム膜を125nmの厚さに形成する。な
お、本明細書中ではこの遮蔽膜を第「1導電膜」と呼ぶ場合がある。
【0122】
なお、本実施例では遮蔽膜565を形成する前に酸化シリコン膜を5〜50nm(典型
的には20〜30nm)の厚さに形成している。そして、その上に遮蔽膜565を形成し
、遮蔽膜565をマスクとして上記絶縁膜のエッチング処理を行い、566で示される酸
化シリコン膜が形成される。
【0123】
この酸化シリコン膜566は第3層間絶縁膜564と遮蔽膜565の密着性を高めるた
めに設けるが、遮蔽膜が存在する以外の領域では、後に第3層間絶縁膜にコンタクトホー
ルを形成する際の障害になるため除去することが望ましい。なお、第3層間絶縁膜564
の表面にCF
4ガスを用いたプラズマ処理を施すことによっても、表面改質により膜上に
形成する遮蔽膜の密着性を向上させることができる。
【0124】
また、このチタンを含有させたアルミニウム膜を用いて、遮蔽膜だけでなく他の接続配
線を形成することも可能である。例えば、駆動回路内で回路間をつなぐ接続配線を形成で
きる。但し、その場合は遮蔽膜または接続配線を形成する材料を成膜する前に、予め第3
層間絶縁膜にコンタクトホールを形成しておく必要がある。
【0125】
次に、遮蔽膜565の表面に公知の陽極酸化法又はプラズマ酸化法(本実施例では陽極
酸化法)により20〜100nm(好ましくは30〜50nm)の厚さの酸化物を形成す
る。本実施例では遮蔽膜565としてアルミニウムを主成分とする膜を用い、陽極酸化法
を用いるため、陽極酸化物567として酸化アルミニウム膜(アルミナ膜)が形成される
。この陽極酸化物567が本実施例の保持容量の誘電体となる。
【0126】
また、ここでは陽極酸化法を用いて遮蔽膜表面のみに絶縁物を設ける構成としたが、他
の絶縁物(絶縁膜)をプラズマCVD法、熱CVD法またはスパッタ法などの気相法によ
って形成しても良い。その場合も膜厚は20〜100nm(好ましくは30〜50nm)
とすることが好ましい。
【0127】
次に、第3層間絶縁膜564、パッシベーション膜563にドレイン配線562に達す
るコンタクトホールを形成し、画素電極569を形成する。なお、画素電極570、57
1はそれぞれ隣接する別の画素の画素電極である。本実施例では画素電極569〜571
として透明導電膜を用い、具体的には酸化インジウム・スズ(ITO)膜を110nmの
厚さにスパッタ法で形成する。なお、本明細書中では画素電極を「第2導電膜」と呼ぶ場
合がある。
【0128】
なお、反射型の液晶表示装置とする場合には画素電極の材料として金属膜を用いれば良
い。
【0129】
また、この時、画素電極569と遮蔽膜565とが陽極酸化物567を介して重なり、
保持容量(キャハ゜シタンス・ストレーシ゛又はコンデンサ)572を形成する。なお、
保持容量572しか符号を付していないが、遮蔽膜と画素電極とが重なる領域は全て保持
容量として機能する。
【0130】
また、保持容量の誘電体として比誘電率が7〜9と高いアルミナ膜を用いたため、必要
な容量を形成するための面積を少なくすることを可能としている。さらに、本実施例のよ
うに画素TFT上に形成される遮蔽膜を保持容量の一方の電極とすることで、アクティブ
マトリクス型液晶表示装置の画像表示部の開口率を向上させることができる。
【0131】
また、この場合、遮蔽膜565をフローティング状態(電気的に孤立した状態)か固定
電位、好ましくはコモン電位(データとして送られる画像信号の中間電位)に設定してお
くことが望ましい。
【0132】
上記工程を経て、画素TFTおよび画素電極を形成したアクティブマトリクス基板(第
1の基板)を形成した。
【0133】
次に、アクティブマトリクス基板(第1の基板)から、アクティブマトリクス型液晶表
示装置を作製する工程を説明する。まず、画素TFTおよび画素電極を形成した第1の基
板上に配向膜573を成膜した。また、対向基板(第2の基板)574には、透明導電膜
575と、配向膜576とを形成する。なお、第2の基板には必要に応じてカラーフィル
ターや遮蔽膜を形成しても良い。本実施例では配向膜としてポリイミド膜を用いる。配向
膜573をロールコーターにより塗布した後、200℃で90分加熱した。なお、配向膜
573を形成する前に第1の基板を洗浄することが好ましい。その後、布を装着したロー
ラーで配向膜表面を擦り、液晶分子がある一定のプレチルト角(6°〜10°、好ましく
は7°〜8°)を持って配向するようにラビング配向処理を行った。
【0134】
次いで、配向膜573上にスペーサ材料層として感光性アクリル樹脂(NN700:J
SR製)を900rpmでスピンコートし4.7μmの膜厚とした。その後、ホットプレ
ートを用いて80℃、3分間加熱した。加熱後の感光性アクリル樹脂膜の厚さは、4.0
μmとした。
【0135】
こうして形成されたスペーサ材料層に露光用マスクを介して柱状スペーサのパターン(
サイズ:6μm四方)を露光した後、現像した。現像条件は、現像液として、CD−70
0(TMAH 0.14%)を用い、液温を18±1℃、現像時間は60秒とした。次い
で、クリーンオーブンを用いて180℃、1分間加熱した。
【0136】
このようにして、第1の基板上に柱状のスペーサ568を形成した。(
図8(A))ま
た、柱状のスペーサ568は、その形成位置を自由に設計することができるので、画像表
示領域を有効に活用することができる。なお、現像液によりプレチルト角は、4°〜5°
に変化した。
【0137】
本実施例の画素構造を上面から見た図を
図12に示す。
図12に示すように本実施例で
は、画素TFTと画素電極62とが電気的に接続するコンタクト部65の上に柱状スペー
サ63を設ける。また、
図12において、565は遮蔽膜であり、その上には図示されて
いない酸化物567を介して画素電極62が設けられている。このとき、遮蔽膜565、
酸化物567及び画素電極62で保持容量64a〜64cが形成される。本実施例の構造と
することで、コンタクト部に形成される段差(層間絶縁膜564の膜厚分)を埋め込むこ
とが可能となり、段差に起因する液晶分子の配向不良を防止することができる。
【0138】
このように、本実施例では、TFTと画素電極とのコンタクト部に柱状スペーサを形成
した例を示したが、柱状のスペーサ568は、遮蔽膜やソース配線上など画像表示領域と
して用いない領域に形成すれば特に限定されない。本実施例においては、1mm
2あたり
約100個の割合で規則正しく画素部に配置した。本実施例の柱状スペーサの断面におけ
るSEM観察写真図が、
図17(A)である。また、外観を示すSEM観察写真図が、図
1(A)である。
図2(A)には配置された模式図を示し、
図2(B)および
図2(C)
には、
図1(A)に相当する倍率の異なるSEM観察写真を示した。
【0139】
この柱状スペーサの形状は、テーパー部がほとんどなく、頭頂部に平坦な面を有し、高
さH=4μm、幅L1=6μm、曲率半径は1μm以下であった。また、柱状スペーサの
側面中央における接平面と基板面との角度αは、85°〜95°となっており、ほぼ垂直
であった。このような形状とすることで、光漏れを低減することができる。
【0140】
そして、画素部と、駆動回路が形成されたアクティブマトリクス基板と対向基板とを、
公知のセル組み工程によってシール材579を介して貼りあわせる。本実施例では、フィ
ラー580を含むシール材を用いて基板間隔を一定に保った。
また、本実施例では弾力性に富んだ樹脂材料でなる柱状スペーサ568を用いているため
、貼り合わせ工程でかかる圧力を吸収(緩和)することができる。また、本実施例のスペ
ーサは素子に対する接触面積がビーズ状スペーサのそれより大きいため、特定部分に過剰
な圧力がかかるようなことがない。
【0141】
その後、両基板の間に液晶578を注入し、封止剤(図示せず)によって完全に封止す
る。液晶には公知の液晶材料を用いれば良い。このようにして
図8(B)に示すアクティ
ブマトリクス型液晶表示装置が完成する。
【0142】
なお、
図8(B)においては、駆動回路にはpチャネル型TFT701、nチャネル型T
FT702、703が形成され、画素部にはnチャネル型TFTでなる画素TFT704
が形成される。
【0143】
なお、本実施例の工程順序は適宜変更しても構わない。どのような順序としても、最終
的に形成されるTFTの構造が
図8(B)のような構造であればアクティブマトリクス基
板の基本的な機能は変化せず、本発明の効果を損なうものではない。
【0144】
駆動回路のpチャネル型TFT701には、チャネル形成領域601、ソース領域60
2、ドレイン領域603がそれぞれp型不純物領域(a)で形成される。但し、実際には
ソース領域またはドレイン領域の一部に1×10
20〜1×10
21atoms/cm
3の濃度でリン
を含む領域が存在する。また、その領域には
図7(B)の工程でゲッタリングされた触媒
元素が5×10
18atoms/cm
3以上(代表的には1×10
19〜5×10
20atoms/cm
3)濃度で
存在する。
【0145】
また、nチャネル型TFT702には、チャネル形成領域604、ソース領域605、
ドレイン領域606、そしてチャネル形成領域の片側(ドレイン領域側)に、ゲート絶縁
膜を介してゲート配線と重なったLDD領域(本明細書中ではこのような領域をLov領域
という。なお、ovはoverlapの意味で付した。)607が形成される。この時、Lov領域
607は2×10
16〜5×10
19atoms/cm
3の濃度でリンを含み、且つ、ゲート配線と全
部重なるように形成される。
【0146】
また、nチャネル型TFT703には、チャネル形成領域608、ソース領域609、
ドレイン領域610、そしてチャネル形成領域の両側にLDD領域611、612が形成
された。なお、この構造ではLDD領域611、612の一部がゲート配線と重なるよう
に配置されたために、ゲート絶縁膜を介してゲート配線と重なったLDD領域(Lov領域
)とゲート絶縁膜を介してゲート配線と重ならないLDD領域(本明細書中ではこのよう
な領域をLoff領域という。なお、offはoffsetの意味で付した。)が形成されている。
【0147】
ここで
図9に示す断面図は
図8(B)に示したnチャネル型TFT703を
図7(B)
の工程まで作製した状態を示す拡大図である。ここに示すように、LDD領域611はさ
らにLov領域611a、Loff領域611bに、LDD領域612はさらにLov領域612a
、Loff領域612bに区別できる。また、前述のLov領域611a、612aには2×10
16〜5×10
19atoms/cm
3の濃度でリンが含まれるが、Loff領域611b、612bはその
1〜2倍(代表的には1.2〜1.5倍)の濃度でリンが含まれる。
【0148】
また、画素TFT704には、チャネル形成領域613、614、ソース領域615、
ドレイン領域616、Loff領域617〜620、Loff領域618、619に接したn型
不純物領域(a)621が形成される。この時、ソース領域615、ドレイン領域616
はそれぞれn型不純物領域(a)で形成され、Loff領域617〜620はn型不純物領
域(c)で形成される。
【0149】
本実施例によれば、画素部および駆動回路が求める性能に応じて回路または素子を形成
するTFTの構造を最適化し、半導体装置の動作性能および信頼性を向上させることがで
きる。具体的には、nチャネル型TFTは回路仕様に応じてLDD領域の配置を異ならせ
、Lov領域またはLoff領域を使い分けることによって、同一基板上に高速動作またはホ
ットキャリア対策を重視したTFT構造と低オフ電流動作を重視したTFT構造とを実現
しうる。
【0150】
例えば、アクティブマトリクス型液晶表示装置の場合、nチャネル型TFT702は高
速動作を重視するシフトレジスタ回路、信号分割回路、レベルシフタ回路、バッファ回路
などの駆動回路に適している。即ち、チャネル形成領域の片側(ドレイン領域側)のみに
Lov領域を配置することで、できるだけ抵抗成分を低減させつつホットキャリア注入によ
る劣化に強い動作を達成しうる。これは上記回路の場合、ソース領域とドレイン領域の機
能が変わらず、キャリア(電子)の移動する方向が一定だからである。但し、必要に応じ
てチャネル形成領域の両側にLov領域を配置することもできる。
【0151】
また、nチャネル型TFT703はホットキャリア対策と低オフ電流動作の双方を重視
するサンプリング回路(サンプル及びホールド回路)に適している。即ち、Lov領域を配
置することでホットキャリア対策とし、さらにLoff領域を配置することで低オフ電流動
作を達成しうる。また、サンプリング回路はソース領域とドレイン領域の機能が反転して
キャリアの移動方向が180°変わるため、ゲート配線を中心に線対称となるような構造
としなければならない。なお、場合によってはLov領域のみとすることもありうる。
【0152】
また、nチャネル型TFT704は低オフ電流動作を重視した画素部、サンプリング回
路(サンプルホールド回路)に適している。即ち、オフ電流値を増加させる要因となりう
るLov領域を配置せず、Loff領域のみを配置することで低オフ電流動作を達成しうる。
また、駆動回路のLDD領域よりも低い濃度のLDD領域をLoff領域として用いること
で、多少オン電流値が低下するが徹底的にオフ電流値を低減することができる。さらに、
n型不純物領域(a)621はオフ電流値を低減する上で非常に有効である。
【0153】
また、nチャネル型TFT702のLov領域607の長さ(幅)は0.1〜3.0μm
、代表的には0.2〜1.5μmとすれば良い。また、nチャネル型TFT703のLov
領域611a、612aの長さ(幅)は0.1〜3.0μm、代表的には0.2〜1.5μ
m、Loff領域611b、612bの長さ(幅)は1.0〜3.5μm、代表的には1.5
〜2.0μmとすれば良い。また、画素TFT704に設けられるLoff領域617〜6
20の長さ(幅)は0.5〜3.5μm、代表的には2.0〜2.5μmとすれば良い。
【0154】
また、上記アクティブマトリクス型液晶表示装置の構成を、
図10の斜視図を用いて説
明する。アクティブマトリクス基板(第1の基板)は、ガラス基板801上に形成された
、画素部802と、ゲート側駆動回路803と、ソース側駆動回路804で構成される。
画素部の画素TFT805(
図8(B)の画素TFT704に相当する)はnチャネル型
TFTであり、画素電極806及び保持容量807(
図8(A)の保持容量572に相当
する)に接続される。
【0155】
また、周辺に設けられる駆動回路はCMOS回路を基本として構成されている。ゲート
側駆動回路803と、ソース側駆動回路804はそれぞれゲート配線808とソース配線
809で画素部802に接続されている。また、FPC810が接続された外部入出力端
子811には駆動回路まで信号を伝達するための入出力配線(接続配線)812、813
が設けられている。また、814は対向基板(第2の基板)である。
【0156】
なお、本明細書中では
図10に示した半導体装置をアクティブマトリクス型液晶表示装
置と呼んでいるが、
図10に示すようにFPCまで取り付けられた液晶パネルのことを一
般的には液晶モジュールという。従って、本実施例でいうアクティブマトリクス型液晶表
示装置を液晶モジュールと呼んでも差し支えない。
【0157】
また、上記液晶表示装置の回路構成の一例を
図11に示す。本実施例の液晶表示装置は
、ソース側駆動回路901、ゲート側駆動回路(A)907、ゲート側駆動回路(B)9
11、プリチャージ回路912、画素部906を有している。
なお、本明細書中において、駆動回路とはソース側駆動回路およびゲート側駆動回路を含
めた総称である。
【0158】
ソース側駆動回路901は、シフトレジスタ回路902、レベルシフタ回路903、バ
ッファ回路904、サンプリング回路905を備えている。また、ゲート側駆動回路(A
)907は、シフトレジスタ回路908、レベルシフタ回路909、バッファ回路910
を備えている。ゲート側駆動回路(B)911も同様な構成である。
【0159】
ここでシフトレジスタ回路902、908は駆動電圧が5〜16V(代表的には10V
)であり、回路を形成するCMOS回路に使われるnチャネル型TFTは
図8(B)の7
02で示される構造が適している。
【0160】
また、レベルシフタ回路903、909、バッファ回路904、910は、駆動電圧は
14〜16Vと高くなるが、シフトレジスタ回路と同様に、
図8(B)
のnチャネル型TFT702を含むCMOS回路が適している。なお、ゲート配線をダブ
ルゲート構造、トリプルゲート構造といったマルチゲート構造とすることは、各回路の信
頼性を向上させる上で有効である。
【0161】
また、サンプリング回路905は駆動電圧が14〜16Vであるが、ソース領域とドレ
イン領域が反転する上、オフ電流値を低減する必要があるので、
図8(B)のnチャネル
型TFT703を含むCMOS回路が適している。なお、
図8(B)ではnチャネル型T
FTしか図示されていないが、実際にサンプリング回路を形成する時はnチャネル型TF
Tとpチャネル型TFTとを組み合わせて形成することになる。
【0162】
また、画素部906は駆動電圧が14〜16Vであり、サンプリング回路905よりも
さらにオフ電流値が低いことを要求するので、オフ電流の増加を招くLov領域を配置しな
い構造とすることが望ましく、
図8(B)のnチャネル型TFT704を画素TFTとし
て用いることが望ましい。