(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子機器のデジタルによる製造は、世界的動向である。デジタルによる製造は、製造工程の数を減らすことによってプロセスの複雑さを単純化するだけではなく、製作プロセス中に生成する化学廃棄物を最小限にする。例えば、現在、インクジェットに基づくデジタル印刷は、PCB産業でシルク印刷用インクを堆積させるために用いられている。
【0003】
ソルダーマスクレジスト(多くは緑色材料であるが、なんらかの色がついていてもよい)は、ほとんどの現行の印刷回路基板(「PCB」)に使用される。ソルダーマスクをパターン形成するための従来の方法の1つは、フォトリソグラフィーによる方法である。このプロセスには、いくつかの欠点がある。第1に、フォトリソグラフィーは、多段階プロセスであるため、PCB製造の総費用の主な原因である。第2に、フォトリソグラフィー材料は、露出していない材料を現像し(洗い流し)、望ましいパターンを生成することができるように、主な要素に改質を必要とする。この改質により、最終的な硬化したソルダーマスクの耐化学薬品性および物理的耐性が悪化する。第3に、フォトリソグラフィーの第1の工程は、PCB基板の非選択的なコーティングまたはブランケットコーティングである。コーティングプロセス中に、PCB中のビアホールは、部分的または完全にソルダーマスクで満たされることが多い。ビアホールの高いアスペクト比から、ソルダーマスクを除去することは非常に困難な作業である。
【0004】
ソルダーマスクレジストを堆積させるために、スクリーン印刷方法も開発されてきた。スクリーン印刷は、孔の詰まりの問題を克服することはできるが、スクリーン印刷は、解像度が低く、レジストレーションが悪いソルダーマスクが得られることが多い。それに加え、スクリーン印刷は、一般的に、比較的平坦な基材表面を必要とする。表面にリリーフ構造を有するプリント基板は、その上にソルダーマスクをスクリーン印刷することは困難であるか、または不可能である。
【0005】
ソルダーマスクのデジタル印刷は、PCB産業に大きな影響を与え、上述の1つ以上の問題を克服するのに役立つだろう。ソルダーマスクを堆積させるために、このようなデジタル印刷技術の1つであるインクジェット印刷が試されている。しかし、インクジェット印刷技術は、非常に低い粘度のインクに限定されている(例えば、20cp未満)。一方、高性能ポリマーから構成されるソルダーマスク組成物は、非常に高い粘度を有する(例えば、10,000cpを超える)。ソルダーマスク材料を吐出可能な粘度まで希釈すると、ソルダーマスクとして機能し得ないピンホールを有する非常に薄い層が得られることがある。この理由のために、インクジェット技術を用いてソルダーマスクを堆積させようとする企ては、成功が限定されている。
【0006】
当該技術分野で既知の別のデジタル印刷方法は、エアロゾル印刷である。従来のエアロゾルプリンタ20を
図2に示す。エアロゾルプリンタ20は、アトマイザ22を備えており、その中に、噴霧される所定量の供給源流24を入れることができる。アトマイザ22は、供給源流の液滴を含むエアロゾルを作成することができ、経路26を通って入る気体流に乗って運ばれる(本明細書で噴霧ガス流と呼ばれる)。エアロゾルは、バーチャルインパクタ28を通り、バーチャルインパクタ28は、過剰なガスを除去し、それによって、エアロゾルの密度を高めるように作用することができる。次いで、密度を高めたエアロゾルを堆積ヘッド30に流す。経路32を通って流れるシースガスを使用し、ノズル34からエアロゾル流を望ましい基材に吐出する前に、エアロゾルを密なビームに集中させることができる。基材に対するノズルの位置は、望ましい堆積パターンを選択的に堆積させるようにデジタルによって制御することができる。エアロゾルプリンタ20を用いてデジタル印刷する一般的なプロセスは、当該技術分野でよく知られている。しかし、本開示の発明者らは、エアロゾル印刷方法によってソルダーレジストを堆積させるための従来のプロセスを知らない。
【0007】
さらに、高性能ポリマーから構成されるソルダーマスク組成物は、エアロゾル印刷プロセスには適していない非常に高い粘度を有する(例えば、10,000cpを超える)。さらに、ソルダーマスク材料をエアロゾル印刷のための受け入れ可能な粘度まで希釈することは、簡単ではない。このことは、部分的に、関与する比較的高い温度、希釈によって引き起こされるレジストの品質低下の可能性に起因する。
【0008】
レジスト材料は、PCB製造におけるソルダーマスク以外の多種多様な用途で使用される。例えば、他の技術としては、集積回路および3D電子機器の製造を含む。従って、デジタル印刷方法を用いて堆積させることが可能なレジスト組成物は、レジストマスク製造分野で望ましい進化であろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
厳格な構造の正確さ、詳細および縮尺を維持するのではなく、図面のいくつかの詳細を単純化し、実施形態を理解しやすくするように描かれることを注記すべきである。
【0015】
本教示の実施形態を詳細に参照し、その例は、添付の図面に示される。図面において、図面全体で同じ部品を指すために同じ参照番号が使用される。以下の記載では、記載の一部を形成する添付の図面を参照し、本教示を実施し得る具体的で例示的な実施形態を示すことによって示される。従って、以下の記載は単なる例示である。
【0016】
本開示の一実施形態は、
図1に示すように、ソルダーマスクをデジタル印刷する方法に関する。
図1のブロック2を参照すると、この方法は、(1)樹脂および(2)ソルダーマスクレジスト組成物の合計重量に対して少なくとも20重量%の量の溶媒を含むソルダーマスクインク組成物を提供することを含む。ブロック4を参照すると、エアロゾル流は、噴霧ガスを用い、空気アトマイザを用いてソルダーマスクインク組成物から作成される。ブロック6および8を参照すると、エアロゾル流は、ノズルを通過して進み、基材に対するノズルの位置を変えつつ、シースガスを用い、エアロゾル流を基材の上に集め、ソルダーマスクパターンを選択的に堆積させ、次いで、ソルダーマスクパターンを硬化させる。
【0017】
一実施形態において、ソルダーマスクインク組成物は、剪断速度10s
−1での粘度が1000cp未満であり、剪断速度495s
−1の粘度が30cpより大きく、両方とも25℃の温度で測定される。一実施形態において、ソルダーマスクインク組成物は、温度25℃、剪断速度10s
−1での粘度が800cp未満であり、剪断速度495s
−1での粘度が50cpより大きい。従って、従来のスクリーンインクとは対照的に、この組成物の実施形態は、温度25℃、剪断速度10s
−1での粘度が1000cp未満、例えば、800cp未満、または500cp未満である。インクジェットインクとは対照的に、本発明のインク組成物は、温度25℃、剪断速度495s
−1での粘度が30cpより大きく、例えば、50cpより大きく、または100cpより大きい。一実施形態において、インク組成物は、剪断速度約10〜約495s
−1、温度25℃での粘度が約100〜約200cpの範囲である。この相対的に低い粘度によって、ソルダーマスクインク組成物は、エアロゾルプリンタで使用するのに適切なものとなる。
【0018】
本出願のソルダーマスクインク組成物は、レジストマスクを作成するのに適した任意のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。一実施形態において、希釈していないエポキシ樹脂は、粘度が、10,000cpより大きく、例えば、15,000cp〜25,000cpであってもよい。一実施形態において、エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂(Novolak樹脂としても知られる)、アクリル酸で修飾されたエポキシ、およびフェノール、アミンおよび酸無水物からなる群から選択される1つ以上の架橋部を有する脂環式またはヘテロ環に由来するエポキシからなる群から選択される。これらのエポキシ樹脂の例は、当該技術分野でよく知られている。
【0019】
一実施形態において、エポキシ樹脂は、市販のレジスト、例えば、ソルダーマスクペーストである。市販のソルダーマスクペーストの一例は、TAIYO S−222NAであり、ビスフェノールAエポキシ樹脂を含み、Taiyo America Inc.から入手可能である。このような従来の配合物は、その粘度が高すぎるため、エアロゾル印刷に直接使用することはできない。本出願の新規エアロゾル印刷可能な配合物は、適切なレオロジーを達成するために、適切な界面活性剤添加剤とともに相溶性の溶媒を用いて商業的なソルダーマスク配合物を希釈することによって得ることができる。
【0020】
他の実施形態において、吐出可能なエアロゾルソルダーマスク組成物は、出発物質として市販のソルダーマスク配合物を用いるのではなく、エポキシ樹脂、顔料、溶媒、界面活性剤、接着促進剤および他の添加剤から直接配合されてもよい。
【0021】
任意の適切な量のエポキシ樹脂を、濡れた希釈レジスト組成物に使用すると、硬化後に適切な特徴を有する最終的なレジストマスクが得られるだろう。適切なエポキシ樹脂の量の例は、ソルダーマスクインク組成物の合計重量に対し、約50重量%〜約80重量%、例えば、約60重量%または65重量%から約75重量%までの範囲である。
【0022】
ソルダーマスクインク組成物の溶媒および任意要素の界面活性剤は、比較的少量の溶媒および界面活性剤を使用しつつ、エポキシ樹脂のインクレオロジーを調節するのに効果的なように選択される。比較的少量の溶媒および界面活性剤を使用し、望ましい粘度を達成する能力によって、比較的高い固体含有量を可能にし、最終的な硬化したレジストの特性に対する希釈の影響を小さくすることができる。例えば、本出願の溶媒および界面活性剤は、溶媒および界面活性剤を用いずに調製された同じソルダーマスク配合物と比較したとき、最終的な硬化したソルダーマスクの化学特性および物理特性にほとんど悪影響を与えないか、まったく悪影響を与えないことが示された。
【0023】
ソルダーマスクインク組成物に使用される溶媒は、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルまたはジプロピレングリコールモノアルキルエーテルであってもよい。一実施形態において、溶媒は、以下の式
【0025】
を有するジエチレングリコールモノアルキルエーテルであり、式中、R
1は、C
3〜C
6アルキル基である。例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルは、ブチルカルビトールであってもよい。他の適切な溶媒としては、例えば、アルコキシベンゼン、例えば、アニソール;C
5〜C
8アルコール、例えば、ペンタノールまたはヘキサノール、およびC
2〜C
4アルカンジオール、例えば、エチレングリコールが挙げられる。一実施形態において、溶媒は、本明細書に記載するように、適切な沸点および/または蒸気圧を有するアルコールである。
【0026】
溶媒は、エアロゾルジェット印刷のためにエポキシ樹脂の粘度を十分に下げ、さらに、受け入れ可能な特徴を有するパターン形成されたソルダーマスクを生成することができるのに適切な量で使用することができる。例えば、溶媒の量は、ソルダーマスクインク組成物の合計重量に対し、少なくとも20重量%であってもよい。他の例において、溶媒の量は、ソルダーマスクインク組成物の合計重量に対し、約25重量%〜約50重量%、例えば、約30重量%から約40重量%または45重量%までの範囲であってもよい。
【0027】
溶媒は、エアロゾルプリンタを操作する温度より高い沸点を有するように選択することができる。一実施形態において、沸点は、大気圧で少なくとも110℃、例えば、少なくとも135℃、140℃、180℃、または少なくとも205℃である。
【0028】
溶媒は、選択されたプリンタ操作温度で使用される特定のエアロゾルプリンタに適した蒸気圧を有するように選択することができる。一実施形態において、蒸気圧は、20℃で15mmHg未満、例えば、10mmHg未満、または5mmHg未満、または1mmHg未満、または0.5mmHg未満である。
【0029】
溶媒で希釈した樹脂が、平滑ではなく、またはディウェッティングまたは凝集を示す膜を生成する場合、任意要素の非イオン系界面活性剤を使用してもよい。非イオン系界面活性剤の例としては、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート);ポリグリセロールポリリシノレート、オクタデカン酸[2−[(2R,3S,4R)−3,4−ジヒドロキシ−2−テトラヒドロフラニル]−2−ヒドロキシエチル]エステル、オクタデカン酸[(2R,3S,4R)−2−[1,2−ビス(1−オキソオクタデカオキシ)エチル]−4−ヒドロキシ−3−テトラヒドロフラニル]エステル、C
8〜C
22長鎖アルコール、例えば、1−オクタデカノール、セチルステアリルアルコール、ヘキサデカン−1−オールおよびcis−9−オクタデセン−1−オール;置換基が、ポリエトキシエタノール基を含んで(例えば、オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを生成して)もよいか、またはオクチルフェノールを用いて非イオン系界面活性剤を生成する任意の他の置換基を含んでいてもよい、置換または非置換のオクチルフェノール;ポリエチレングリコールモノイソヘキサデシルエーテル;ドデカン酸2,3−ジヒドロキシプロピルエステル;グルコシド、例えば、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシドおよびデシルグルコシド;脂肪酸アミド、例えば、ココアミドジエタノールアミンおよびココアミドモノエタノールアミン;および親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素の親油性基または親水性基を有する非イオン系界面活性剤、例えば、Nonoxynol−9およびTriton X−100が挙げられる。
【0030】
一実施形態において、非イオン系界面活性剤は、ポリアルキレングリコールである。例えば、非イオン系界面活性剤は、少なくとも1つのポリエチレングリコールブロックおよび少なくとも1つのポリプロピレングリコールブロックを含むブロックコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール−ブロック−ポリプロピレングリコール−ブロック−ポリエチレングリコール、またはポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖によって切断されるポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央の疎水性鎖から構成されるトリブロックコポリマーであってもよい。市販の非イオン系界面活性剤の例は、Aldrichから入手可能なSYNPERONIC F108である。
【0031】
受け入れ可能な特徴を有するパターン形成されたレジストを与える任意の適切な量で、非イオン系界面活性剤を使用してもよい。例えば、非イオン系界面活性剤の量は、ソルダーマスクインク組成物の合計重量に対し、少なくとも0.01重量%であってもよい。他の例において、非イオン系界面活性剤の量は、ソルダーマスクインク組成物の合計重量に対し、約0.05重量%〜約5重量%、例えば、約0.5重量%〜約3重量%の範囲であってもよい。
【0032】
レジストに使用するのに適した任意の他の成分も、場合により、本開示の組成物に含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、着色剤、クレイ、シリカ、金属酸化物粒子および接着促進剤が挙げられる。他の成分は、エアロゾルを生成することができ、最終的な硬化した特性に望ましくない副作用をほとんど有さないか、またはまったく有さない必要がある。特に、他の成分は、粒子の形態で存在する場合、粒径が、3ミクロン未満である(1ミクロン未満または500nmを含む)。当業者は、使用可能な他の成分を容易に決定することができるだろう。
【0033】
図1のブロック4を再び参照すると、エアロゾルプリンタを用い、本開示のレジスト組成物からエアロゾル流を作成する。任意の適切なエアロゾルプリンタを使用してもよい。従来のエアロゾルプリンタ20の一例は、
図2に示され、上の背景の章に記載される。
【0034】
本出願の方法において、本明細書に記載する組成物を、エアロゾルプリンタ20の供給源流24として使用してもよい。エアロゾル形態のソルダーレジストは、基材に対するノズルの位置を変えつつ、ノズル34を通過して基板へ向かい、ソルダーレジストマスクパターンを選択的に堆積させる。
【0035】
ノズル34は、堆積するマスクパターンを製造するために適切な任意の寸法を有していてもよい。一実施形態において、ノズル34は、大きさが約100ミクロン〜約10mm、例えば、約500ミクロン〜約5mm、または約750ミクロンから約2mmまたは3mmまでである。当該技術分野で十分に理解されるように、ノズルが円形の開口部である場合には、この数字は、開口部の直径を指し、ノズルが卵形である場合には、この数字は、卵型の長い方の軸を指す。
【0036】
経路26を介してアトマイザ22に入る噴霧ガスの流速は、ソルダーレジストの望ましい噴霧を与え、エアロゾル流を生じるのに適切な任意の流速であってもよい。例となる噴霧ガスの流速は、約900SCCM〜約1400SCCM、例えば、約1000SCCM〜約1300SCCMまたは約1100SCCM〜約1200SCCMの範囲である。経路32を介してノズル34に入るシースガスは、ガスを集めるために望ましい任意の流速を有していてもよい。例となる流速は、約200SCCM〜約1300SCCM、例えば、約500SCCM〜約1000SCCM、または約600SCCM〜約900SCCMの範囲である。
【0037】
一実施形態において、噴霧ガスの流速は、シースガスの流速より大きい。例えば、噴霧ガスの流速は、シースガスの流速より約50SCCM〜約200SCCM大きく、例えば、約100SCCM大きく、または約150SCCM大きくてもよい。
【0038】
エアロゾル流は、任意の適切な量のソルダーマスクレジストを含んでいてもよい。一実施形態において、エアロゾル流は、少なくとも2.0mg/分、例えば、2.2mg/分または2.5mg/分以上の乾燥重量のソルダーマスクレジストを含む。
【0039】
レジストマスクを塗布する基材は、例えば、半導体、金属、ポリマー、セラミックまたはガラス基材のような任意の適切な基材であってもよい。一実施形態において、基材は、銅および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む印刷回路基板用基材である。
【0040】
図3は、導電性トレース40(例えば、銅トレースであってもよい)を含む印刷回路基板用基材42の一部の一例を示す。レジストマスクパターン44は、本明細書に記載するエアロゾル印刷方法によって、導電性トレース40の上に堆積する。基材42に対するノズル34の位置を制御することによって、レジストパターンを、基材の望ましい部分の上に選択的に堆積させ、基材の他の部分(例えば、ビアホール46の中)には堆積させないようにすることができる。一実施形態において、ノズル34の相対的な位置は、例えば、基材またはノズルの片方または両方をお互いに対して動かすデジタル制御器を用いることによって、基材に対してデジタルによって調節することができる。
【0041】
ソルダーマスクインク組成物が堆積した後、得られたレジストマスクパターンを硬化させる。硬化は、任意の適切な方法によって達成することができる。当該技術分野で既知の適切な方法の例としては、UV硬化および/または熱硬化の技術が挙げられる。
【0042】
本開示のエアロゾルジェット印刷方法によって作られる、得られたソルダーマスクパターンは、フォトリソグラフィー技術またはスクリーン印刷技術のいずれかによって作られるソルダーマスクパターンと区別することができる。特に、エアロゾルジェット印刷によって作られるソルダーマスクパターンは、エッジシャープネスE
sharpが1より大きく、ここで、E
sharpは、L/Dと定義され;両方とも
図8に示すように、Lは、エッジ湾曲部の横方向の長さであると定義され、Dは、マスクパターンの厚みであると定義される。Dは、任意の適切な量、例えば、約5〜約30ミクロン、例えば、約10〜約25ミクロンであってもよい。Lは、例えば、約5〜約30ミクロン、例えば、約10〜約25ミクロンの範囲であってもよい。一実施形態において、エアロゾル印刷されたレジストマスクのE
sharpは、約1.2〜約3、例えば、約1.5から約2または2.5までの範囲であってもよい。一方、フォトリソグラフィーパターン形成技術およびスクリーン印刷技術によって作られるマスクパターンのE
sharpは、1未満の値を有し、フォトリソグラフィーの場合には、特に、1よりかなり小さい。
【0043】
エアロゾル印刷を用いるレジストマスクの堆積は、以下の1つ以上の利点を有するだろう。(1)処理工程を顕著に単純化し/減らすことができるデジタルプロセスであるため、製造費用が安くなる。(2)望ましい領域にレジストをデジタルによって塗布し、材料の無駄を減らし、ビアホールの詰まりを避けることができる。(3)エアロゾル印刷は、高解像度(例えば、10ミクロン)で印刷するために示され、従って、高密度レジストマスク(例えば、ソルダーマスク)を製造するための有望な方法である。(4)エアロゾル印刷は、インクジェット印刷と比較したとき、もっと高いインク粘度(1000cpまで)を取り扱うことができる。(5)エアロゾル印刷は、3D表面または3Dトポグラフィー構造を有する表面に印刷するための非常に良好な方法として示されている。
【0044】
エアロゾル印刷の有望な利点が与えられると、本出願の組成物は、レジストマスク、例えば、印刷回路基板(「PCB」)製造に使用されるソルダーマスクおよび/または他の用途、例えば、将来的に3D電子機器を印刷するための用途に使用される他のエポキシ由来のレジストを製造するのに有用であろう。
【実施例】
【0045】
実施例1−界面活性剤を含まない組成物
ビスフェノールAエポキシ樹脂に由来する一般的に使用される緑色ソルダーマスクを以下の実施例で使用した。市販のソルダーマスクレジスト(Taiyo S−222NA)は、Taiyo America Inc.から購入された。ソルダーマスクレジストは、ビスフェノールAに由来するエポキシを主な成分として含んでいた。ビスフェノールA成分は、以下の式2として示され、nは、繰り返し単位の数を示し、約2〜約500、例えば、約50、100、200、300または約400の範囲であってもよい。
【0046】
【化2】
【0047】
市販のソルダーレジストは、25℃、低い剪断速度10 1/sで粘度が16785cpであり、高い剪断粘度485 1/sで粘度が8850cpである。この粘度は、エアロゾルジェット印刷には高すぎた。目標は、適切な添加剤を用いることによって、25℃、低い剪断速度10 1/sで1000cp未満の粘度を達成するように市販のフォルダーマスクを再び配合することであった。
【0048】
数種類の溶媒をスクリーニングした後、ブチルカルビトールは、市販のペーストと相溶性であることがわかり、希釈のための溶媒として使用した。ブチルカルビトールは、高い沸点および低い蒸気圧を有し、その結果、エアロゾル印刷に適切である。
図4は、溶媒添加量の関数として、低い剪断速度および高い剪断速度の両方での粘度(25℃で)を示す。目標粘度である1000cp未満を達成するために、25〜35重量%の溶媒を加えた。さらなる試験のために、30重量%の溶媒添加を選択した。
【0049】
30重量%のブチルカルビトール溶媒をビスフェノールAエポキシ樹脂に添加した後、得られた低粘度配合物を銅張FR−4基材にコーティングし、膜生成特性を試験した。FR−4は、難燃性(自己消火性)であるエポキシ樹脂バインダーを含む編まれた繊維ガラス布から構成されるコンポジット材料を含むよく知られたグレードの基材である。
図5Aは、30重量%のブチルカルビトールを含み、界面活性剤を含まない配合物でコーティングされた配合物を示す。スロットダイコーティング方法を用い、膜をコーティングした。残念なことに、膜は、平滑ではなく、ディウェッティングおよび凝集を示した。
【0050】
実施例2−アニオン系界面活性剤を含む組成物
これらの課題を克服するために、異なる界面活性剤を添加剤として試験した。
図5Bおよび5Cは、それぞれ、異なるアニオン系界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(「SDBS」)(1重量%)およびドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)(1重量%)から作られるコーティングを示し、それぞれを、30重量%のブチルカルビトール溶媒と69重量%の上のビスフェノールAエポキシ樹脂の混合物に加えた。
図5Aの膜を堆積させるために用いられるのと同じコーティング方法によって、膜を堆積させた。アニオン系界面活性剤の添加は、膜の性質に悪影響を与え、顕著なディウェッティング現象を示した。
【0051】
実施例3−非イオン系界面活性剤を含む組成物
非イオン系界面活性剤、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)を実施例2のアニオン系界面活性剤の代わりに使用した。ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)の市販の供給源の一例は、SYNPERONIC F 108であり、Aldrichから入手可能である。
図5Dは、0.5重量%のSYNPERONIC F108、30重量%のブチルカルビトール溶媒および69.5重量%の上のビスフェノールAエポキシ樹脂を用いた結果を示す。
図5Eは、1重量%のSYNPERONIC F108、30重量%のブチルカルビトール溶媒および69重量%の上のビスフェノールAエポキシ樹脂を用いた結果を示す。
図5Dおよび5Eに示される結果によって示されるように、銅表面の上に優れた濡れ特性を有する平滑な膜を両方の配合物から得た。
【0052】
実施例4−再び配合されたソルダーマスク材料の耐引っ掻き性、接着性および耐溶媒性の試験
1.0重量%のSYNPERONIC F108界面活性剤を含む実施例3の配合物は、溶媒および界面活性剤が最終的な硬化したソルダーマスクに悪影響を与えるか否かを観察するために選択された。この配合物で銅基材をコーティングし、市販の配合物について推奨されるように、140℃で35分間硬化させた。
【0053】
硬化した後、膜に、耐引っ掻き性、鉛筆高度および耐溶媒性の試験を行った。耐引っ掻き性、鉛筆硬度および耐溶媒性を、ソルダーマスク供給業者の試験要求であるIPC−SM−840C Class Hに従って試験した。ASTM Test Method D 3359、method BおよびDIN Standard No.53151に記載されるように、標準的なクロスカット接着試験を用い、接着性試験を行った。
図6に示すように、接着試験中に、材料はテープに移動せず、このことは、5Bの接着(優れた接着)および優れた耐引っ掻き性を示す。高度試験の結果は、6Hの鉛筆硬度を示した。
【0054】
再び配合されたソルダーマスクは、すべての必要な耐溶媒性試験を合格した。耐溶媒性試験の結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
接着性試験、耐引っ掻き性、硬度試験および耐溶媒性の結果は、溶媒および界面活性剤を添加せずに製造された市販のソルダーマスクについて達成された結果と実質的に同じであり、このことは、溶媒および界面活性剤の添加は、硬化したソルダーマスクに悪影響をほとんど与えないか、またはまったく与えないことを示す。
【0057】
実施例5−再び配合されたソルダーマスク材料のエアロゾル印刷
1.0重量%のSynperonic F108界面活性剤を含む実施例3の上述の配合物を、空気アトマイザを取り付けたエアロゾルプリンタを用い、約50℃で印刷した。1mmノズルを使用し、噴霧ガスを1000〜1300SCCMに設定し、排気は、900〜1200SCCMであり、シースガスは、200〜600SCCMであった。このような印刷条件でエアロゾルを作成した。
【0058】
エアロゾルの流速は、1個のノズルについて、約2〜約2.6mg/分の乾燥ソルダーマスク材料であるように試験した。乾燥ソルダーマスク材料について1.5g/cm
3の密度を推定し、この重量に基づく流速は、約1.3〜1.7×10
−3cm
3/分の体積に基づく流速であり、これは、他のエアロゾルインクに匹敵するか、もっと高い(例えば、銀ナノ粒子インクは、重量に基づく流速が8〜12mg/分であり、これは、0.8〜1.2×10
−3cm
3/分の体積に基づく流速に対応する)。
【0059】
インクを、印刷回路基板に使用する典型的な基材であるポリエチレンテレフタレート(PET)および銅張FR−4基材の両方に印刷した。
図7Aは、1mmノズルを用い、PET基材に異なる速度で印刷されたソルダーマスクの線を示す。速度は、上側から下側まで、0.5、1.0、5、10および20mm/sを表示する。
図7Bは、1mmノズルを用い、銅張FR−4基材に印刷されたソルダーマスクの線を示す。
図7Bにおいて、一番上の線についての速度は、1mm/sであり、一番下の線についての速度は、2mm/sである。両方の基材で均一な線が得られたことがわかるだろう。上述のコーティングによって示されるように、印刷された線は、優れた接着性、鉛筆硬度、耐引っ掻き性および耐化学薬品性を示した。この特定の実施例の試験について、5mm/sの印刷速度が、最良の線の縁部の平滑性および望ましい厚みを与えることがわかった。
【0060】
図7Cおよび7Dは、それぞれ、PET基材および銅張FR−4基材に両方とも5mm/sで印刷されたソルダーマスクの線の光学画像を示す。平滑な縁部を有する十分に輪郭が規定された線が得られた。その厚みは、10〜15ミクロンであると測定され、線の幅は、ノズルの大きさの約半分である。厚み、線の幅および線の縁部のプロフィールを、異なるノズルを使用し、所望な場合、印刷条件を調節することによって調整することができることを注記すべきである。
【0061】
上の実施例は、エアロゾル印刷を使用し、25℃、剪断速度10 1/sでの粘度が1000cp未満の本開示のレジスト配合物からレジストマスクを印刷することができることを示す。レジスト配合物は、エポキシ樹脂を、例えば、ブチルカルビトール溶媒および非イオン系界面活性剤で希釈することによって得ることができた。これらの再び配合されたソルダーマスク配合物は、エアロゾルジェットプリンタで良好な印刷能を示し、印刷されたマスクは、市販のものと同じ接着性、鉛筆硬度、耐引っ掻き性および耐化学薬品性を示した。