特許第6424310号(P6424310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6424310電力ケーブル充填具及び、電力ケーブル充電具を備える電力ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6424310
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】電力ケーブル充填具及び、電力ケーブル充電具を備える電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20181112BHJP
   H01B 7/14 20060101ALI20181112BHJP
   H01B 9/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   H01B7/18 E
   H01B7/14
   H01B9/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-564384(P2016-564384)
(86)(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公表番号】特表2017-507468(P2017-507468A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2014057109
(87)【国際公開番号】WO2015110182
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2014/051145
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517180578
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ ゲーエムべーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レオン−グアレーナ, アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】テュルベリ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, リーサ
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−073519(JP,A)
【文献】 実開昭63−012110(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0122844(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0205137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/14
H01B 7/18
H01B 9/00
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブル(23)の第1の心(25a)及び第2の心(25b)を支える電力ケーブル充填具(1)であって、
第1の直径を有する第1の円(9)の一部を規定する第1の弧状壁(3)を備え、
さらに、前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する第2の円(11a、11b)の一部をそれぞれ規定する第2の弧状壁(5)及び第3の弧状壁(7)を備え、前記第1の弧状壁(3)は、前記第2の弧状壁(5)の第1の端部(5a)と接続している第1の端部(3a)及び前記第3の弧状壁(7)の第1の端部(7a)と接続している第2の端部(3b)を有し、前記第2の弧状壁(5)は第2の端部(5b)を有し、前記第3の弧状壁(7)は第2の端部(7b)を有し、前記第2の弧状壁(5)の第2の端部(5b)と前記第3の弧状壁(7)の第2の端部(7b)が互いに隣接してスリット(13)を規定し、
前記第1の弧状壁(3)と前記第2の弧状壁(5)と前記第3の弧状壁(7)とに囲まれてチャンバが形成され、
前記第1の弧状壁(3)と前記第2の弧状壁(5)の間には、前記チャンバ内の第1の仕切り壁(17a)が延伸し、
前記第1の弧状壁(3)と前記第3の弧状壁(7)の間には、前記チャンバ内の第2の仕切り壁(17b)が延伸し、
前記第1の仕切り壁(17a)は、前記第1の弧状壁(3)から前記第2の弧状壁(5)までの全長にわたって第1の半径方向(19a)に延伸し、前記第2の仕切り壁(17b)は前記第1の弧状壁(3)から前記第3の弧状壁(7)までの全長にわたって第2の半径方向(19b)に延伸し、第1の半径方向(19a)及び第2の半径方向(19b)が、前記第1の弧状壁(3)の半径に対して規定されている、
電力ケーブル充填具(1)。
【請求項2】
前記第1の仕切り壁(17a)及び前記第2の仕切り壁(17b)が、前記スリット(13)から等距離に配置されている、請求項1に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項3】
前記第1の弧状壁(3)の前記第1の端部(3a)の先端(3c)から、前記第2の弧状壁(5)によって規定される前記第2の円(11a)上の点(21)であって、前記第1の円(9)が前記第2の弧状壁(5)によって規定される前記第2の円(11a)に接する点までの距離(d)は、前記第2の弧状壁(5)の半径の0.6倍未満である、請求項1または2に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項4】
前記第1の弧状壁(3)の前記第2の端部の先端から、前記第3の弧状壁(7)によって規定される前記第2の円(11b)上の点であって、前記第1の円(9)が前記第3の弧状壁(7)によって規定される前記第2の円(11b)に接する点までの距離は、前記第3の弧状壁(7)の半径の0.6倍未満である、請求項1から3の何れか一項に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項5】
前記チャンバ内に、前記第1の弧状壁(3)と前記第2の弧状壁(5)との間を延伸する第3の仕切り壁(17c)を備える、請求項1から4の何れか一項に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項6】
前記第3の仕切り壁(17c)は、前記第1の弧状壁(3)から前記第2の弧状壁(5)までの全長にわたって第3の半径方向(19c)に延伸し、前記第3の半径方向(19c)は、前記第1の弧状壁(3)の半径に対して規定される、請求項5に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項7】
前記チャンバ内に、前記第1の弧状壁(3)と前記第3の弧状壁(7)との間を延伸する第4の仕切り壁(17d)を備える、請求項1から6の何れか一項に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項8】
前記第4の仕切り壁(17d)は、前記第1の弧状壁(3)から前記第3の弧状壁(7)までの全長にわたって第4の半径方向(19d)に延伸し、前記第4の半径方向(19d)は、前記第1の弧状壁(3)の半径に対して規定される、請求項7に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項9】
前記第3の仕切り壁(17c)と前記第4の仕切り壁(17d)とは、前記スリット(13)から等距離に配置されており、前記第1の仕切り壁(17a)、前記第2の仕切り壁(17b)、前記第3の仕切り壁(17c)及び前記第4の仕切り壁(17d)は、前記チャンバ内で均等に配置されている、少なくとも請求項5に従属する請求項7または少なくとも請求項5に従属する請求項8に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項10】
前記第2の弧状壁(5)の前記第2の端部(5b)が、前記第3の弧状壁(7)の前記第2の端部(7b)を支える、請求項1から9の何れか一項に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項11】
前記電力ケーブル充填具(1)がその長さ全体にわたって一定の断面幾何学配置を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項12】
中密度ポリエチレンを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の電力ケーブル充填具(1)。
【請求項13】
外鞘(27)、
外鞘(27)内に配置された第1の心(25a)、第2の心(25b)、及び第3の心(25c)、並びに
請求項1から12のいずれか一項に記載の3つの電力ケーブル充填具(1)を備える電力ケーブル(23)であって、
第1の電力ケーブル充填具(1)は前記外鞘(27)と前記第1の心(25a)及び第2の心(25b)との間に配置され、第2の電力ケーブル充填具(1)は前記外鞘(27)と前記第2の心(25b)及び前記第3の心(25c)との間に配置され、第3の電力ケーブル充填具(1)は前記外鞘(27)と前記第1の心(25a)及び前記第3の心(25c)との間に配置される、電力ケーブル(23)。
【請求項14】
前記電力ケーブル(23)が海底電力ケーブルである、請求項13に記載の電力ケーブル(23)。
【請求項15】
前記電力ケーブル(23)が高圧電力ケーブルである、請求項13または14に記載の電力ケーブル(23)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して電力ケーブルに関する。特に、電力ケーブルの第1の心及び第2の心を支える電力ケーブル充填具、及びこうした電力ケーブル充填具を備える電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
3心の高電圧ケーブルについては、従来から、組立中にプラスチックの充填材が心同士の間に取り入れられている。充填材は、心同士の間に適切にフィットし、ケーブル全体の断面図が概して円形となるように設計されている。通常、充填材は、主として電力ケーブルの丸さを保ち、光ファイバーを保持するように設計される。
【0003】
充填材の例が、文献SE 530277 C2に開示されている。この文献では、互いに撚り合わされて、共通の外鞘内に配置される3つの心を含む電力ケーブルが開示されている。電力ケーブルには充填材要素も備えられていて、各充填材要素は、それぞれ2つの心と外鞘との間の各スペースに配置されている。充填材要素は、中空の輪郭体で構成される。
【0004】
海底電力ケーブルについては、特殊船で電力ケーブルを輸送したうえで、敷設する。電力ケーブルは、輸送中、船上の大型ドラムに巻き取られていてよい。電力ケーブルは、敷設する際に、ドラムから引き出し、一旦、タワーに給送したうえで、そこから海中に降下させる。海中への電力ケーブル降下速度を制御するため、タワーに設けた張力調整装置から、電力ケーブルに対して半径方向に圧力を加えるようになっている。電力ケーブルに加わる半径方向の圧力は、海底まで延びる電力ケーブルの総重量を支えることから、相当な大きさとなる。
【0005】
文献SE 530277 C2の電力ケーブルは、非常な深海、即ち1500メートル以深に敷設する場合、敷設の間に、張力調整装置からの大きな径方向圧力によって充填材の壁が崩壊する可能性がある。過度の局所的接触力が充填材端部に掛かる結果、ファイバーに損傷が発生し、心にも大きな局所的変形が起こり得る。また、心の絶縁材に不規則な変形が生じると、心断面のまわりの電場分布が変わる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
以上を考慮して、非常な深海での敷設に伴う張力調整装置からの大きな径方向の力にも耐えられる電力ケーブル充填具を提供することが、本開示の目的である。
【0007】
したがって、本開示の第1の態様に係る電力ケーブル充填具は、電力ケーブルの第1の心及び第2の心を支える電力ケーブル充填具であって、第1の直径を有する第1の円の一部を規定する第1の弧状壁を備えるとともに、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する第2の円の一部をそれぞれ規定する第2の弧状壁及び第3の弧状壁を備える。ここに、第1の弧状壁は、第2の弧状壁の第1の端部と接続している第1の端部及び第3の弧状壁の第1の端部と接続している第2の端部を有し、第2の弧状壁は第2の端部を有し、第3の弧状壁は第2の端部を有し、第2の弧状壁の第2の端部と第3の弧状壁の第2の端部が互いに隣接してスリットを規定し、第1の弧状壁と第2の弧状壁と第3の弧状壁との間にチャンバが形成される。そして、第1の弧状壁と第2の弧状壁の間には、チャンバの第1の仕切り壁が延伸し、第1の弧状壁と第3の弧状壁の間には、チャンバ内の第2の仕切り壁が延伸する。また、第1の仕切り壁は第1の弧状壁から第2の弧状壁までの全長にわたって第1の半径方向に延伸し、第2の仕切り壁は第1の弧状壁から第3の弧状壁までの全長にわたって第2の半径方向に延伸し、第1の半径方向及び第2の半径方向が、第1の弧状壁の半径に対して規定されている。
【0008】
チャンバ内で半径方向に延伸する第1の仕切り壁及び第2の仕切り壁を設けることによって、電力ケーブル充填具、とりわけ仕切り壁が、電力ケーブル充填具を備える電力ケーブルを、かつては可能でなかった水中の深さにまで降ろすことに伴う、半径方向の圧力に耐えることが可能になる。
【0009】
一実施形態によると、第1の仕切り壁と第2の仕切り壁とは、スリットから等距離に配置されている。したがって、第1の仕切り壁及び第2の仕切り壁の間で均等な力の配分が達成され得る。
【0010】
一実施形態によると、第1の弧状壁の第1の端部の先端から、第2の弧状壁によって規定される第2の円上の点であって、第1の円が第2の弧状壁によって規定される第2の円に接する点までの距離は、第2の弧状壁の半径の0.6倍未満である。この規模の横延伸を有する第1の弧状壁を設けることによって、電力ケーブル充填具の端部と電力ケーブルの心との間の局所的な変形は低減され得る。なぜならば、このエリアにおいて力がより均等に分配されるようになるからである。
【0011】
一実施形態によると、第1の弧状壁の第2の端部の先端から、第3の弧状壁によって規定される第2の円上の点であって、第1の円が第3の弧状壁によって規定される第2の円に接する点までの距離は、第2の弧状壁の半径の0.6倍未満である。
【0012】
一実施形態では、第1の弧状壁と第2の弧状壁との間に延伸する、チャンバ内の第3の仕切り壁が含まれる。
【0013】
一実施形態によると、第3の仕切り壁は、第1の弧状壁から第2の弧状壁までの全長にわたって第3の半径方向に延伸する。第3の半径方向は、第1の弧状壁の半径に対して規定されている。
【0014】
一実施形態には、第1の弧状壁と第3の弧状壁との間に延伸する、チャンバ内の第4の仕切り壁が含まれる。
【0015】
さらなる仕切り壁を設けることによって、電力ケーブル充填具の機械的強度は、特に半径方向の力に関して、更に増強され得る。
【0016】
一実施形態によると、第4の仕切り壁は、第1の弧状壁から第3の弧状壁までの全長にわたって第4の半径方向に延伸する。第4の半径方向は、第1の弧状壁の半径に対して規定されている。
【0017】
一実施形態によると、第3の仕切り壁と第4の仕切り壁とは、スリットから等距離に配置されており、第1の仕切り壁、第2の仕切り壁、第3の仕切り壁及び第4の仕切り壁は、チャンバ内で均等に配置されている。
【0018】
一実施形態によると、第2の弧状壁の第2の端部は、第3の弧状壁の第2の端部を支える。非常に細いスリットを有することによって、電力ケーブル充填具は、2つの隣接する心の間でさらに延伸することが可能になる。これによって、第2の弧状壁及び第3の弧状壁は、より大きな表面積を有し、2つのケーブル心の間の局所的変形が低減し得るように、2つの隣接する心の間で力を受けて分配することが可能になる。
【0019】
一実施形態によると、電力ケーブル充填具は、その長さ全体にわたって一定の断面幾何学配置を有する。
【0020】
一実施形態には、中密度ポリエチレンが含まれる。
【0021】
本開示の第2の態様によると、外鞘、外鞘内に配置された第1の心、第2の心、及び第3の心、並びに本書記載の第1の態様による3つの電力ケーブル充填具であって、第1の電力ケーブル充填具は外鞘と第1の心と第2の心との間に配置され、第2の電力ケーブル充填具は外鞘と第2の心と第3の心との間に配置され、第3の電力ケーブルは外鞘と第1の心と第3の心との間に配置された、3つの電力ケーブル充填具を備える電力ケーブルが提供される。
【0022】
一実施形態によると、電力ケーブルは、海底電力ケーブルである。
【0023】
一実施形態によると、電力ケーブルは、高圧電力ケーブルである。
【0024】
全体として、特許請求項で使用されるすべての用語は、本明細書において明示的に規定されない限り、当技術分野における通常の意味にしたがって解釈されるものである。本明細書において明示的に規定されない限り、「1つの/この(素子、装置、構成要素、手段など)」の呼称は、当該素子、装置、構成要素、手段などのうちの少なくとも1つ例を指すものとして広義に解釈される。
【0025】
下記の添付図面を参照し、例示的に、本発明の概念の具体的実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】電力ケーブル充填具の一例の断面図である。
図2a】電力ケーブル充填具の一例の断面図である。
図2b図2aの電力ケーブル充填具の側部の詳細図である。
図2c図2aの電力ケーブル充填具の第1の弧状壁及び第2の弧状壁の、隣接する各第2の端部の詳細図である。
図3図1に示す型の幾つかの電力ケーブル充填具を備える電力ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の例示的な実施形態が示された添付図面を参照しつつ、本発明の概念がより完全に記載される。しかしながら本発明の概念は多くの異なる形態で実施されることができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、これらの実施形態はむしろ、本開示が包括的で完全となるように例示目的で提供されており、当業者に本発明の概念の範囲を十分に伝えるためのものである。類似の番号は、記載全体を通して類似の要素を指す。
【0028】
図1は、電力ケーブル充填具1の一例の断面図を示す。典型的な変形例においては、電力ケーブル充填具1の断面幾何学配置は、長さ方向に全長にわたって一定である。電力ケーブル充填具1は、3つの互いに隣接して配置された心を有する電力ケーブル内で、2つの心と電力ケーブルの外鞘との間に形成されたスペース内に配置されるように適合される。
【0029】
電力ケーブル充填具1は、第1の弧状壁3、第2の弧状壁5及び第3の弧状壁7を備える。第1の弧状壁3、第2の弧状壁5及び第3の弧状壁7は、電力ケーブル充填具1の外表面を規定する。
【0030】
第1の弧状壁3は、第1の直径を有する第1の円9の一部を規定する。第2の弧状壁5及び第3の弧状壁7は、各第2の円11a、11bの一部をそれぞれ規定する。これら第2の円11a、11bのそれぞれは、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する。これらの円は全て純粋に想像上のものであり、弧状壁3、5及び7の曲率の大きさ及び形状を規定できるようにするためにのみ討議されるということは、言及されてよい。
【0031】
第1の弧状壁3は、第1の弧状壁3の外側端を規定する第1の端部3aを有する。第1の弧状壁3は、第1の弧状壁3の反対側の外側端を規定する第2の端部3bを有する。第2の弧状壁5は、第1の端部5a及び第2の端部5bを有する。第3の弧状壁7は、第1の端部7a及び第2の端部7bを有する。
【0032】
第1の弧状壁3の第1の端部3aは、第2の弧状壁5の第1の端部5aと接続している。第1の弧状壁3の第2の端部3bは、第3の弧状壁7の第1の端部7aと接続している。第2の弧状壁5の第2の端部5bは、第3の弧状壁7の第2の端部7bと隣接して配置されている。第2の弧状壁5の第2の端部5b及び第3の弧状壁7の第2の端部7bは、スリット13を規定する。これによって、第1の弧状壁3、第2の弧状壁5及び第3の弧状壁7は、チャンバの外壁を規定する。当該チャンバは、以下に記載される仕切り壁によって、複数のより小さいチャンバ15a〜15eに細分化される。スリット13が中央チャンバ15aと電力ケーブル充填具1の外側とを接続する経路を形成しているため、中央チャンバ15aは、オープンである。
【0033】
中央チャンバ15a内に光ファイバーをはめ込むためにスリット13を広げることを可能にするため、電力ケーブル充填具1は可撓性を有する。したがって、電力ケーブル充填具1には、例えば中濃度ポリエチレンまたは、高度な機械的強度も併せ持つ任意の他の好適な可撓性材料が含まれ得る。
【0034】
一実施形態によると、第2の弧状壁5の第2の端部5bは、第3の弧状壁7の第2の端部7bを支える。代替的に、第2の弧状壁の第2の端部及び第3の弧状壁の第2の端部は、互いに隣接して、だが例えば0.5〜3mmまたはそれよりも大きくてよいスペースを空けて、配置され得る。
【0035】
電力ケーブル充填具1は、第1の弧状壁3と第2の弧状壁5との間に延伸する第1の仕切り壁17a、及び第1の弧状壁3と第3の弧状壁7との間に延伸する第2の仕切り壁17bをさらに備える。
【0036】
第1の仕切り壁17aは、第1の弧状壁3と第2の弧状壁5との間の全長にわたって、第1の半径方向19aに延伸する。したがって、第1の仕切り壁17aは真っ直ぐである。第2の仕切り壁17bは、第1の弧状壁3と第3の弧状壁7との間の全長にわたって、第2の半径方向19bに延伸する。したがって、第2の仕切り壁17bは真っ直ぐである。
【0037】
第1の半径方向19a及び第2の半径方向19bは、第1の弧状壁3の半径に対して規定される。したがって、第1の仕切り壁17a及び第2の仕切り壁17bは、第1の円9の中心に向かって延伸している。具体的には、第1の仕切り壁17a及び第2の仕切り壁17bは、それぞれ第1の円9の中心で交わる面を規定する。
【0038】
第1の仕切り壁17a及び第2の仕切り壁17bは、好ましくは、スリット13からそれぞれの側に等距離に配置される。
【0039】
図1に示す例によると、電力ケーブル充填具1は、第3の仕切り壁17c及び第4の仕切り壁17dを備える。第3の仕切り壁17cは、第1の弧状壁3と第2の弧状壁5との間に延伸し、第4の仕切り壁17dは、第1の弧状壁3と第3の弧状壁7との間に延伸する。
【0040】
第3の仕切り壁17cは、第1の弧状壁3と第3の弧状壁5との間の全長にわたって、第3の半径方向19cに延伸する。したがって、第3の仕切り壁17cは真っ直ぐである。第4の仕切り壁17dは、第1の弧状壁3と第3の弧状壁7との間の全長にわたって、第4の半径方向19dに延伸する。したがって、第4の仕切り壁17dは真っ直ぐである。
【0041】
第1の半径方向19c及び第4の半径方向19dは、第1の弧状壁3の半径に対して規定される。したがって、第3の仕切り壁17c及び第4の仕切り壁17dは、第1の円9の中心に向かって延伸している。具体的には、第3の仕切り壁17c及び第4の仕切り壁17dは、それぞれ第1の円9の中心で交わる面を規定する。
【0042】
電力ケーブル充填具1の変形例が、4よりも少ない仕切り壁、即ち2つの仕切り壁、即ち第1の仕切り壁及び第2の仕切り壁、または4よりも多い仕切り壁を備え得ることは、留意されるべきである。スリットの両側に同数の仕切り壁があるように、仕切り壁がスリットに対して均等に配置されていることが望ましい。
【0043】
図2bは、図2aに示す電力ケーブル充填具1の詳細Aを示す。具体的には、第1の弧状壁3の第1の端部3aが示されている。第2の端部3bの構造は第1の端部3aと同一であり、したがってここには記載しない。第1の弧状壁3の、第1の端部3aと第2の端部3bとの横延長の総量は、図2a〜bを参照して特徴づけられる。第1の段部3aの先端3cに示されるように、第1の端部3a及び第2の端部3bは、それぞれ先端を有する。第1の円9と、第2の弧状壁5によって規定される第2の円11とが平行である点21、即ち第1の円9が第2の弧状壁5によって規定される第2の円11に接する点が、存在する。先端3cから点21までの距離dは、第2の円11の半径rの0.6倍未満であり、好ましくは第2の円11aの半径r、即ち第2の弧状壁5の半径の0.57倍、である。言い換えれば、第1の円9に関する、先端3cと点21との間の円弧角αは、15°未満であるべきである。円弧角は可能な限り小さくあるべきで、理想的には0°であるが、製造上の観点から、電力ケーブル充填装置1の長さ方向の全長にわたってこうした鋭利な先端を製造することは、現状では現実的ではない。上記のように、第2の端部3bについてもまた類似的に、同じことが該当する。このことは、両側部、即ち第1の端部3a及び第2の端部3bが、先行技術よりもさらに延伸し、各心のより多くの部分に対して支えていることを意味する。これによって、第1の端部3aと電力ケーブルの心との間の局所的変形と、第2の端部3bと電力ケーブルの心との間の局所的変形が、低減され得る。
【0044】
第1の端部3aと第2の端部3bとの横延伸を特徴づける代替的な方法は、第1の端部3aから第2の端部3bの先端までの第1の弧状壁3の延伸が、円弧角度120°のときの第1の円9の弧の長さの少なくとも75%、であるべきというものである。言い換えれば、第1の弧状壁3は、その両先端の間に、第1の円9に対して少なくとも90°である角度に相当する延伸部を有する。したがって、第1の円9の中心と交差し、第1の端部3aの先端と接する第1の線と、第1の円9の中心と交差し、第2の端部3bの先端と接する第2の線との間の角度は、少なくとも90°である。
【0045】
図2cは、図2aに示す電力ケーブル充填具1の詳細Bを示す。詳細Bには、第3の弧状壁7の第2の端部7bに隣接する、第2の弧状壁5の第2の端部5bが含まれている。第2の端部5b、7bのそれぞれは、各先端5c及び7cを有する。先端5c、7cから、第2の弧状壁5によって規定される第2の円11aと第3の弧状壁7によって規定される第2の円11bとが合流し互いに接する地点である地点12までの距離lは、好ましくは、2つの第2の円11a、11bのどちらかの半径rの0.6倍未満である。好ましくは、距離lは、半径rの0.57倍未満である。後者は、第2の円11a、11bに関して、第2の円11a、11bに関連する弧状壁5、7の先端5c、7cと、地点12との間の角γが、30°未満であることを意味している。さらに、第2の円11aによって規定される、例えば第1の弧状壁3の先端3cと、第2の弧状壁5の第2の端部5bの先端5cとの間の角度βは、90°よりも大きいべきである。これはもちろん、第1の弧状壁3のもう1つの先端と、第3の弧状壁7の第2の端部7bの先端7cとの間の対応する角度にもまた、当てはまる。もちろん、第2の端部5b、7bが、地点12まで完全に延伸し、先端5c及び7cが地点12に位置していることが理想的であるが、製造上の観点から、電力ケーブル充填装置1の全体にわたってこうした第2の端部5b及び7bを製造することは、現状ではない。
【0046】
図3は、複数の心25a、25b、25cを備える電力ケーブル23の例の断面図を示す。電力ケーブル23は外鞘27、防護層29、電力ケーブル充填具1、並びに、第1の心25a、第2の心25b、及び第3の心25cを有する。各電力ケーブル充填具1は、2つの心25a〜25cと外鞘27との間に配置されている。電力ケーブル23の変形例によると、さらなる防護層29があってもよく、または電力ケーブルに防護層がなくてもよい。
【0047】
心25a〜25cは、電力ケーブル23の長さにわたって撚り合わされている。電力ケーブル充填装置1は、心25a〜25cが撚り合わされているため、長さ方向に延伸するにつれてねじれている。外鞘27及び防護層29は、心25a〜25c及び電力ケーブル充填具1を包み込んでいる。
【0048】
電力ケーブル23は、例えば海底電力ケーブルであり得、具体的には高電圧海底電力ケーブルであり得る。本書で示される電力ケーブル充填具及び電力ケーブルは、海底での電力輸送、または海底での電力分配といった、海中での用途で使用され得るというこが想定されている。当該電力ケーブル及び電力ケーブル充填具は、もちろんより浅い深度においてもまた使用可能であるが、特に、非常な深海での使用に好適である。
【0049】
本発明の概念を、主として幾つかの実施形態を参照して上述した。しかしながら、当業者に容易に理解できるように、上記で開示した以外の実施形態もまた、添付の特許請求の範囲で規定する本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
図1
図2a
図2b
図2c
図3