(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動手段が印加する駆動力の周波数を揺動板の共振周波数に一致させると、小さな駆動電力で揺動板を大きく動作させることができる。このような共振駆動において、揺動板を高速で動作させるためには、駆動手段が印加する駆動力の周波数を高くするとともに、それに合わせて揺動板の共振周波数を高くしておく必要がある。また、MEMS装置の耐久性を確保するためには、ねじり梁の強度を確保しておく必要がある。その上で、揺動板以外の部分のサイズを小さくするためには、ねじり梁の長さを可能な限り短くすることが好ましい。
【0005】
揺動板の共振周波数を高く維持しつつ、ねじり梁の長さを短くするためには、ねじり梁の本数を多くすることが有効である。複数のねじり梁からなるねじり梁群で揺動板を支持する構成とする場合、揺動軸から遠い位置に配置されるねじり梁にはねじり変形に起因して大きな引張応力が作用するため、それぞれのねじり梁を可能な限り揺動軸から近い位置に配置することが好ましい。しかしながら、それぞれのねじり梁の支持部および/または揺動板との接続部に応力集中を緩和するためのフィレット形状を形成すると、隣接するねじり梁同士の間隔を狭めて配置することができず、外側のねじり梁を揺動軸から遠い位置に配置せざるを得なくなる。
図10に、枠状の支持部80と、矩形平板状の揺動板82を、ねじり梁群84a,84bで接続した構成を模式的に示す。
図10に示す構成では、ねじり梁群84a,84bの支持部80および揺動板82との接続部において、それぞれのねじり梁の両側面に応力集中を緩和するためのフィレット形状が形成されており、隣接するねじり梁同士の間隔を狭めて配置することができず、外側のねじり梁を揺動軸Cから遠い位置に配置せざるを得ない。ねじり梁群によって揺動板と支持部の間を接続するMEMS装置において、それぞれのねじり梁を可能な限り揺動軸に近い位置に配置することが可能な技術が期待されている。
【0006】
本明細書では、上記課題を解決する技術を開示する。本明細書では、ねじり梁群によって揺動板と支持部の間を接続するMEMS装置において、それぞれのねじり梁を可能な限り揺動軸に近い位置に配置することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示するMEMS装置は、支持部と、揺動板と、揺動板が支持部に対して揺動軸周りに揺動可能となるように、揺動板と支持部の間を接続するねじり梁群を備えている。そのMEMS装置では、ねじり梁群のうちの少なくとも1つのねじり梁が、揺動軸から離れて配置されており、支持部および/または揺動板との接続部において、支持部および/または揺動板に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸までの距離が増加していく形状に形成されている。
【0008】
上記のMEMS装置では、揺動軸から離れて配置された少なくとも1つのねじり梁が、支持部および/または揺動板との接続部において、支持部および/または揺動板に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸までの距離が増加していく形状に形成されている。このような構成とすることによって、そのねじり梁の支持部および/または揺動板との接続部において応力集中を緩和するために必要とされる断面積を確保しつつ、そのねじり梁から見て揺動軸に近い側で隣接するねじり梁との間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁を揺動軸に近い位置に配置して、ねじり梁に作用する引張応力を低減することができる。
【0009】
上記のMEMS装置は、ねじり梁群が、揺動軸から離れて配置されており、揺動軸に沿って直線状に伸びる直線ねじり梁と、直線ねじり梁よりも揺動軸から遠い位置に配置された屈曲ねじり梁を備えており、直線ねじり梁は、支持部および/または揺動板との接続部において、支持部および/または揺動板に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸までの距離が増加していく形状に形成されており、屈曲ねじり梁は、支持部および/または揺動板との接続部と、支持部および/または揺動板との接続部よりも揺動軸に近い位置に配置された部分を有する形状に形成されているように構成することができる。
【0010】
ねじり梁群がねじり変形する際には、揺動軸から遠い位置に配置されたねじり梁には、大きな引張応力が作用する。上記のMEMS装置では、大きな引張応力が作用する揺動軸から遠い位置には、屈曲ねじり梁を配置しており、それほど大きな引張応力が作用しない揺動軸から近い位置には、直線ねじり梁を配置している。ねじり梁を屈曲した形状とした場合、ねじり梁を直線状の形状とした場合にくらべて、ねじり変形した時の引張応力が緩和される。上記のMEMS装置によれば、ねじり変形により大きな引張応力が作用する揺動軸から遠い位置に屈曲ねじり梁を配置することで、ねじり変形に対する強度を確保することができる。
【0011】
なお、ねじり梁を屈曲した形状とした場合、ねじり梁を直線状の形状とした場合にくらべて、揺動板の支持部に対する並進運動に対する剛性が低下するという問題がある。上記のMEMS装置では、屈曲ねじり梁とは別に直線ねじり梁を配置していることで、揺動板の支持部に対する並進運動に対する剛性を確保することができる。
【0012】
上記のMEMS装置は、直線ねじり梁が、揺動軸を挟んで対称となるように配置されており、屈曲ねじり梁が、揺動軸を挟んで対称となるように配置されているように構成することができる。
【0013】
上記のMEMS装置によれば、ねじり梁群の剛性を揺動軸に関して対称とすることができる。
【0014】
上記のMEMS装置は、屈曲ねじり梁が、支持部から揺動軸に沿って直線状に伸びる支持側接続部と、支持側接続部から揺動軸に向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸に沿う方向に緩やかに湾曲する支持側湾曲部と、揺動板から揺動軸に沿って直線状に伸びる揺動側接続部と、揺動側接続部から揺動軸に向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸に沿う方向に緩やかに湾曲する揺動側湾曲部と、揺動軸に沿って伸びており、支持側湾曲部と揺動側湾曲部を接続する中央部を備える形状に形成されているように構成することができる。
【0015】
揺動軸から離れた位置に配置された梁は、揺動するにつれて支持部側の付け根と揺動板側の付け根の間の距離が離れるため、揺動軸に沿った方向に引張変形する。上記構成のMEMS装置によれば、屈曲ねじり梁の中でねじれに寄与する中央部を揺動軸に近づけることができる。これにより、揺動時の引張変形を抑制することが可能となる。また、屈曲ねじり梁の中で揺動軸に垂直となる部分をもつ湾曲部は、梁がねじれた際の引張応力に応じて、揺動軸に沿った方向に変形することが可能である。湾曲部が長いほど、揺動軸に沿った方向のばね定数が小さくなるため、ねじれ以外の変形によって屈曲ねじり梁に発生する引張応力を抑制できる。揺動軸に垂直となっているため、湾曲部を長くしても、梁の揺動軸に沿った方向の長さを変える必要がない。よって、上記のMEMS装置は、屈曲ねじり梁の揺動軸に沿った方向の長さを長くすることなく、ねじり変形の際に発生する引張応力を低減することができる。また、支持側湾曲部および揺動側湾曲部における応力集中を緩和することができる。
【0016】
上記のMEMS装置は、屈曲ねじり梁の断面形状が、直線ねじり梁の断面形状に比べて、幅が細くなっているように構成することができる。
【0017】
屈曲ねじり梁では、ねじりモーメントを分担する部分は、揺動軸に沿った直線形状の中央部である。屈曲ねじり梁は、湾曲部や接続部を有しているため、中央部の長さは直線ねじり梁の長さよりも短い。このため、直線ねじり梁に比べて、ねじりばね定数が高く、ねじりモーメントの分担割合が高くなって、大きなせん断応力が作用する。上記のように、屈曲ねじり梁を直線ねじり梁よりも細く形成する(すなわち、ねじりばね定数を低く形成する)ことで、ねじりモーメントの分担割合を平準化し、屈曲ねじり梁に作用するせん断応力を低減することができる。
【0018】
上記のMEMS装置は、揺動軸から遠い位置に配置されているねじり梁が、揺動軸から近い位置に配置されているねじり梁に比べて、梁長さが長くなっているように構成することができる。
【0019】
揺動板が揺動する際に生じるねじり変形は、揺動軸から近い位置に配置されているねじり梁に比べて、揺動軸から遠い位置に配置されているねじり梁において、大きなものとなる。上記のMEMS装置では、揺動軸から離れた位置に配置されているねじり梁は、揺動軸に近い位置に配置されているねじり梁に比べて、梁長さが長く形成されている。このような構成とすることによって、揺動軸から離れた位置に配置されているねじり梁に大きな引張応力が作用することを防ぐことができる。屈曲ねじり梁の場合は、揺動軸から離れた屈曲ねじり梁ほど、湾曲部の長さを長くする構成にすることが望ましい。湾曲部は、揺動軸に垂直であり、湾曲部を長くしても、梁の揺動軸に沿った方向の長さを変える必要がない。湾曲部を長くしても、梁の揺動軸に平行な方向の長さは増大しない。このため、応力が緩和可能で、かつ、揺動軸に沿った方向の長さの短い、小型のMEMS装置を実現できる。
【0020】
上記のMEMS装置は、揺動軸から遠い位置に配置されているねじり梁の断面形状が、揺動軸から近い位置に配置されているねじり梁の断面形状に比べて、幅が細くなっているように構成することができる。
【0021】
揺動板の揺動によるねじり梁群のねじり変形においては、揺動軸から遠い位置に配置されたねじり梁は、揺動軸から近い位置に配置されたねじり梁に比べて、ねじりばね定数が高く、ねじりモーメントの分担割合が高くなって、大きなせん断応力が作用する。上記のMEMS装置によれば、揺動軸から遠い位置に配置されたねじり梁を揺動軸から近い位置に配置されたねじり梁よりも細く形成する(すなわち、ねじりばね定数を低く形成する)ことで、ねじりモーメントの分担割合を平準化し、揺動軸から遠い位置に配置されたねじり梁に作用するせん断応力を低減することができる。
【0022】
上記のMEMS装置は、揺動軸から遠い位置に配置されているねじり梁の断面形状が、揺動軸から近い位置に配置されているねじり梁の断面形状に比べて、支持部および/または揺動板との接続部において、断面積が大きくなっているように構成することができる。
【0023】
揺動板が揺動する際に、揺動軸から離れた位置に配置された梁は、揺動するにつれて支持部側の付け根と揺動板側の付け根の間の距離が離れるため、揺動軸に沿った方向に引張変形する。この引張変形量は、揺動軸から遠い位置に配置されたねじり梁ほど大きくなる。このため、揺動軸から遠い位置に配置されているねじり梁には、ねじり変形に起因してより大きな引張応力が作用する。上記のMEMS装置では、揺動軸から遠い位置に配置されているねじり梁の断面形状を、支持部および/または揺動板との接続部において、断面積が大きくなるようにしている。このような構成とすることによって、ねじり変形に起因して大きな引張応力が作用するねじり梁の強度を確保することができる。
【0024】
上記のMEMS装置は、揺動板に固定された永久磁石と、永久磁石を挟むように配置された一対の電磁石を用いて、支持部に対して揺動板を揺動させるように構成することができる。
【0025】
上記のMEMS装置によれば、揺動板に対する電流の供給が不要であるため、支持部から揺動板へのねじり梁群を介した電気配線が不要となる。このような構成とすることで、ねじり梁群を構成するねじり梁の断面を、より小さく形成することができる。その結果、より短い長さのねじり梁群を用いることが可能となり、小型のMEMS装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書が開示するMEMS装置によれば、揺動板の共振周波数を高く維持しつつ、かつ、揺動板以外の部分のサイズを小さくすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(
参考例1)
図1および
図2は、本
参考例のMEMS装置2を示している。MEMS装置2は、支持フレーム4と、揺動板6と、ミラー8と、ねじり梁群10a,10bと、永久磁石12と、電磁石14a,14bを備えている。
【0029】
支持フレーム4と、揺動板6と、ねじり梁群10a,10bは、単結晶シリコンからなるシリコンウェハを選択的にエッチングすることによって形成されている。支持フレーム4と、揺動板6と、ねじり梁群10a,10bは、継ぎ目無く一体的に形成されている。
【0030】
支持フレーム4は、矩形の枠形状に形成されている。
【0031】
揺動板6は、矩形の平板形状に形成されている。揺動板6は、支持フレーム4の内側に配置されている。揺動板6は、ねじり梁群10a,10bを介して、支持フレーム4に対して揺動軸C周りに揺動可能に支持されている。なお、本
参考例では、揺動軸Cに沿う方向をX軸とし、揺動板6に直交する方向をZ軸とし、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸としている。
【0032】
ミラー8は、揺動板6の表面にAL等の金属を蒸着することによって形成されている。ミラー8は、MEMS装置2の上面側から入射する光を反射する。揺動板6が揺動軸C周りに揺動すると、ミラー8の反射角度が変化する。すなわち、MEMS装置2は、光偏向装置として動作することができる。
【0033】
ねじり梁群10a,10bは、X軸方向の両側から(すなわち揺動軸Cに沿う方向の両側から)揺動板6を支持している。ねじり梁群10aは、揺動板6の揺動軸Cに沿った一方の端部(
図1の左側の端部)を支持している。ねじり梁群10bは、揺動板6の揺動軸Cに沿った他方の端部(
図1の右側の端部)を支持している。揺動板6が揺動する際には、ねじり梁群10a,10bがそれぞれねじり変形する。
【0034】
ねじり梁群10aは、2つのねじり梁16a,18aを備えている。ねじり梁16a,18aは、何れも矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁16a,18aは、同一平面内(XY平面内)で、揺動軸Cに沿って、互いに平行に配置されている。ねじり梁16a,18aは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁16a,18aは、いずれも揺動軸Cから離れて配置されている。
【0035】
ねじり梁16aの支持フレーム4との接続部20aでは、ねじり梁16aの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁16aの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4の側面と接続する形状に形成されている。また、ねじり梁18aの支持フレーム4との接続部22aでは、ねじり梁18aの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁18aの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、ねじり梁16a,18aは、支持フレーム4との接続部20a,22aにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。
【0036】
ねじり梁16aの揺動板6との接続部24aでは、ねじり梁16aの揺動軸Cに近い側の側面は揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁16aの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。また、ねじり梁18aの揺動板6との接続部26aでは、ねじり梁18aの揺動軸Cに近い側の側面は揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁18aの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、ねじり梁16a,18aは、揺動板6との接続部26a,28aにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。
【0037】
ねじり梁群10bは、2つのねじり梁16b,18bを備えている。ねじり梁16b,18bは、何れも矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁16b,18bは、同一平面内(XY平面内)で、揺動軸Cに沿って、互いに平行に配置されている。ねじり梁16b,18bは、MEMS装置2を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。ねじり梁16b,18bは、いずれも揺動軸Cから離れて配置されている。
【0038】
ねじり梁16bの支持フレーム4との接続部20bでは、ねじり梁16bの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁16bの揺動軸Cから遠い側の側面は応力集中を緩和するための凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4の側面と接続する形状に形成されている。また、ねじり梁18bの支持フレーム4との接続部22bでは、ねじり梁18bの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁18bの揺動軸Cから遠い側の側面は応力集中を緩和するための凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、ねじり梁16b,18bは、支持フレーム4との接続部20b,22bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。
【0039】
ねじり梁16bの揺動板6との接続部24bでは、ねじり梁16bの揺動軸Cに近い側の側面は揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁16bの揺動軸Cから遠い側の側面は応力集中を緩和するための凹型のフィレット形状を介して揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。また、ねじり梁18bの揺動板6との接続部26bでは、ねじり梁18bの揺動軸Cに近い側の側面は揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁18bの揺動軸Cから遠い側の側面は応力集中を緩和するための凹型のフィレット形状を介して揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、ねじり梁16b,18bは、揺動板6との接続部26b,28bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。
【0040】
永久磁石12は、ネオジム磁石(Nd
2Fe
14B)や、サマリウムコバルト磁石(SmCo
5(1−5系)、Sm
2Co
17(2−17系)等)や、フェライト磁石等からなる永久磁石である。永久磁石12は、揺動板6の裏面中央部に形成された窪みに固定されている。
図1に示すように、MEMS装置2を上方から平面視したときに、永久磁石12は、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。
図2に示すように、永久磁石12は、極性の向きが揺動板6に直交する姿勢で、揺動板6に固定されている。本
参考例では、永久磁石12のN極が揺動板6に近い側に配置され、S極が揺動板6から遠い側に配置されている。
【0041】
電磁石14a,14bは、鉄心の周りにコイルを捲回して形成されている。電磁石14a,14bは、Y軸方向に関して、支持フレーム4の外側から、揺動板6の永久磁石12を挟みこむように配置されている。
【0042】
例えば、電磁石14aがN極となり、電磁石14bがS極となるように、電磁石14a,14bに電流を流すと、揺動板6の永久磁石12には、電磁石14bから電磁石14aに向かう方向の磁場が作用する。これにより、永久磁石12には、S極を電磁石14aに近づけ、N極を電磁石14bに近づける方向のトルクが作用する。このトルクによって、揺動板6は、電磁石14a側の端部が上昇し、電磁石14b側の端部が下降する方向に揺動する。これにより、ミラー8の反射角度が変化する。
【0043】
逆に、電磁石14aがS極となり、電磁石14bがN極となるように、電磁石14a,14bに電流を流すと、揺動板6の永久磁石12には、電磁石14aから電磁石14bに向かう方向の磁場が作用する。これにより、永久磁石12には、S極を電磁石14bに近づけ、N極を電磁石14aに近づける方向のトルクが作用する。このトルクによって、揺動板6は、電磁石14b側の端部が上昇し、電磁石14a側の端部が下降する方向に揺動する。これにより、ミラー8の反射角度が変化する。
【0044】
本
参考例では、永久磁石12と電磁石14a,14bの間に作用する磁力を用いて、揺動板6を揺動させている。このような構成とすることで、揺動板6に対する電流の供給が不要となり、支持フレーム4から揺動板6へのねじり梁群10a,10bを介した電気配線が不要となる。このような構成とすることで、ねじり梁群10a,10bのねじり梁16a,18a,16b,18bの断面を、より小さく形成することができる。
【0045】
揺動板6が揺動する際には、ねじり梁群10a,10bには、ねじり変形が生じる。この際に、揺動軸Cから離れて配置されているねじり梁16a,16b,18a,18bには、ねじり変形に起因する引張応力が作用する。この引張応力は、ねじり梁16a,16b,18a,18bが揺動軸Cから離れて配置されているほど、大きなものとなる。
【0046】
本
参考例のMEMS装置2では、ねじり梁16a,16bが、支持フレーム4との接続部20a,20bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されており、揺動板6との接続部24a,24bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることによって、ねじり梁16a,16bの支持フレーム4および/または揺動板6との接続部20a,20b,24a,24bにおいて応力集中を緩和するために必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁16a,16bから見て揺動軸Cに近い側で隣接するねじり梁18a,18bとの間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁16a,16bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁16a,16bに作用する引張応力を低減することができる。
【0047】
同様に、本
参考例のMEMS装置2では、ねじり梁18a,18bが、支持フレーム4との接続部22a,22bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されており、揺動板6との接続部26a,26bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることによって、ねじり梁18a,18bの支持フレーム4および/または揺動板6との接続部22a,22b,26a,26bにおいて応力集中を緩和するために必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁18a,18bから見て揺動軸Cに近い側で隣接するねじり梁16a,16bとの間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁18a,18bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁18a,18bに作用する引張応力を低減することができる。
【0048】
なお、上記の
参考例においては、ねじり梁16a,18a,16b,18bの支持フレーム4および/または揺動板6との接続部20a,22a,24a,26a,20b,22b,24b,26bにおいて、ねじり梁16a,18a,16b,18bの揺動軸Cに近い側の側面にはフィレットが形成されていない形態について説明した。これとは異なり、ねじり梁16a,18a,16b,18bの揺動軸Cに近い側の側面に、揺動軸Cから遠い側の側面に形成されたフィレットよりも小さいフィレットが形成されていてもよい。このような構成とする場合でも、ねじり梁16a,16b,18a,18bの支持フレーム4および/または揺動板6との接続部20a,20b,22a,22b,24a,24b,26a,26bにおいて応力集中を緩和するために必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁16a,18a,16b,18bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁16a,18a,16b,18bに作用する引張応力を低減することができる。
【0049】
上記の
参考例においては、ねじり梁群10a,10bがそれぞれ2つのねじり梁16a,18a,16b,18bから構成されている場合について説明したが、ねじり梁群10a,10bを構成するねじり梁の本数は、これに限られるものではない。
【0050】
例えば、
図3に示すように、ねじり梁群10aが3つのねじり梁16a,18a,28aから構成されていてもよく、ねじり梁群10bが3つのねじり梁16b,18b,28bから構成されていてもよい。
図3に示す例では、ねじり梁28a,28bはねじり梁16a,18a,16b,18bと同様に、矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁28aは、ねじり梁16a,18aの間に、ねじり梁16a,18aに対して平行に配置されている。ねじり梁28bは、ねじり梁16b,18bの間に、ねじり梁16b,18bに対して平行に配置されている。MEMS装置2を上方から平面視したときに、ねじり梁28a,28bは、揺動軸Cと重なる位置に配置されている。ねじり梁28a,28bは、一様な断面形状で支持フレーム4および揺動板6に接続している。すなわち、ねじり梁28a,28bの支持フレーム4との接続部30a,30bおよび揺動板6との接続部32a,32bには、応力集中を緩和するためのフィレット形状が形成されていない。
【0051】
図3に示す構成では、ねじり梁群10a,10bをそれぞれ3つのねじり梁16a,18a,28a,16b,18b,28bから構成しているため、
図1に示す構成に比べて、支持フレーム4に対する揺動板6の並進運動に対する剛性を高めることができる。
【0052】
また、
図3に示す構成では、
図1に示す構成と同様に、ねじり梁16a,16bが、支持フレーム4との接続部20a,20bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されており、揺動板6との接続部24a,24bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることによって、ねじり梁16a,16bにおいて応力集中を緩和するために支持フレーム4および/または揺動板6との接続部20a,20b,24a,24bで必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁16a,16bから見て揺動軸Cに近い側で隣接するねじり梁28a,28bとの間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁16a,16bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁16a,16bに作用する引張応力を低減することができる。
【0053】
同様に、
図3に示す構成では、
図1に示す構成と同様に、ねじり梁18a,18bが、支持フレーム4との接続部22a,22bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されており、揺動板6との接続部26a,26bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることによって、ねじり梁18a,18bにおいて応力集中を緩和するために支持フレーム4および/または揺動板6との接続部22a,22b,26a,26bで必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁18a,18bから見て揺動軸Cに近い側で隣接するねじり梁28a,28bとの間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁18a,18bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁18a,18bに作用する引張応力を低減することができる。
【0054】
あるいは、
図4に示すように、ねじり梁群10aが4つのねじり梁16a,18a,34a,36aから構成されていてもよく、ねじり梁群10bが4つのねじり梁16b,18b,34b,36bから構成されていてもよい。
図4に示す例では、ねじり梁34a,36aはねじり梁16a,18aと同様に、矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁34aは、ねじり梁16aから見て揺動軸Cから遠い側でねじり梁16aに隣接するように配置されており、ねじり梁36aは、ねじり梁18aから見て揺動軸Cから遠い側でねじり梁18aに隣接するように配置されている。ねじり梁34a,36aは、ねじり梁16a,18aに対して平行に配置されている。ねじり梁34a,36aはいずれも、揺動軸Cから離れて配置されている。ねじり梁34b,36bはねじり梁16b,18bと同様に、矩形断面を有しており、直線状に伸びている。ねじり梁34bは、ねじり梁16bから見て揺動軸Cから遠い側でねじり梁16bに隣接するように配置されており、ねじり梁36bは、ねじり梁18bから見て揺動軸Cから遠い側でねじり梁18bに隣接するように配置されている。ねじり梁34b,36bは、ねじり梁16b,18bに対して平行に配置されている。ねじり梁34b,36bはいずれも、揺動軸Cから離れて配置されている。
【0055】
ねじり梁34a,34b,36a,36bの支持フレーム4との接続部38a,38b,40a,40bでは、ねじり梁34a,34b,36a,36bの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁34a,34b,36a,36bの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、ねじり梁34a,34b,36a,36bは、支持フレーム4との接続部38a,38b,40a,40bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。なお、ねじり梁34a,34b,36a,36bの支持フレーム4との接続部38a,38b,40a,40bにおいて形成されているフィレット形状は、ねじり梁16a,16b,18a,18bの支持フレーム4との接続部20a,20b,22a,22bにおいて形成されているフィレット形状よりも大きい。
【0056】
ねじり梁34a,34b,36a,36bの揺動板6との接続部42a,42b,44a,44bでは、ねじり梁34a,34b,36a,36bの揺動軸Cに近い側の側面は揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、ねじり梁34a,34b,36a,36bの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、ねじり梁34a,34b,36a,36bは、揺動板6との接続部42a,42b,44a,44bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。なお、ねじり梁34a,34b,36a,36bの揺動板6との接続部42a,42b,44a,44bにおいて形成されているフィレット形状は、ねじり梁16a,16b,18a,18bの揺動板6との接続部24a,24b,26a,26bにおいて形成されているフィレット形状よりも大きい。
【0057】
図4に示す構成では、ねじり梁群10a,10bをそれぞれ4つのねじり梁16a,18a,34a,36a,16b,18b,34b,36bから構成しているため、
図1に示す構成に比べて、支持フレーム4に対する揺動板6の並進運動に対する剛性を高めることができる。
【0058】
図4に示す構成では、ねじり梁34a,34bが、支持フレーム4との接続部38a,38bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されており、揺動板6との接続部42a,42bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることによって、ねじり梁34a,34bにおいて応力集中を緩和するために支持フレーム4および/または揺動板6との接続部38a,38b,42a,42bで必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁34a,34bから見て揺動軸Cに近い側で隣接するねじり梁16a,16bとの間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁34a,34bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁34a,34bに作用する引張応力を低減することができる。
【0059】
同様に、
図4に示す構成では、ねじり梁36a,36bが、支持フレーム4との接続部40a,40bにおいて、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されており、揺動板6との接続部44a,44bにおいて、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることによって、ねじり梁36a,36bにおいて応力集中を緩和するために支持フレーム4および/または揺動板6との接続部40a,40b,44a,44bで必要とされる断面積を確保しつつ、ねじり梁36a,36bから見て揺動軸Cに近い側で隣接するねじり梁18a,18bとの間の間隔を狭めて配置することができる。これにより、ねじり梁36a,36bを揺動軸Cに近い位置に配置して、ねじり梁36a,36bに作用する引張応力を低減することができる。
【0060】
揺動板6が揺動する際に生じるねじり変形は、揺動軸Cから近い位置に配置されているねじり梁16a,16b,18a,18bに比べて、揺動軸Cから遠い位置に配置されているねじり梁34a,34b,36a,36bにおいて、大きなものとなる。このため、揺動軸Cから遠い位置に配置されているねじり梁34a,34b,36a,36bには、ねじり変形に起因してより大きな引張応力が作用する。
図4に示す構成では、ねじり梁34a,34b,36a,36の支持フレーム4との接続部38a,38b,40a,40bおよび揺動板6との接続部42a,42b,44a,44bに形成されるフィレット形状を、ねじり梁16a,16b,18a,18bの支持フレーム4との接続部20a,20b,22a,22bおよび揺動板6との接続部24a,24b,26a,26bに形成されるフィレット形状よりも大きく形成している。このような構成とすることによって、ねじり変形に起因して大きな引張応力が作用するねじり梁34a,34b,36a,36bの強度を確保することができる。
【0061】
あるいは、
図5に示すように、ねじり梁群10aが5つのねじり梁16a,18a,28a,34a,36aから構成されていてもよく、ねじり梁群10bが5つのねじり梁16b,18b,28b,34b,36bから構成されていてもよい。
【0062】
図5に示す構成では、ねじり梁群10a,10bをそれぞれ5つのねじり梁16a,18a,28a,34a,36a,16b,18b,28b,34b,36bから構成しているため、
図1に示す構成に比べて、支持フレーム4に対する揺動板6の並進運動に対する剛性を高めることができる。
【0063】
(実施例
1)
図6は本実施例のMEMS装置52を示している。MEMS装置52は、
参考例1のMEMS装置2とほぼ同様の構成を備えている。以下では、
参考例1のMEMS装置2と同様の構成要素については、同一の参照符号を付して、説明を省略する。
【0064】
MEMS装置52では、ねじり梁群54a,54bを介して、揺動板6が支持フレーム4に対して揺動軸C軸周りに揺動可能に支持されている。ねじり梁群54a,54bは、X軸方向の両側から(すなわち揺動軸Cに沿う方向の両側から)揺動板6を支持している。ねじり梁群54aは、揺動板6の揺動軸Cに沿った一方の端部(
図6の左側の端部)を支持している。ねじり梁群54bは、揺動板6の揺動軸Cに沿った他方の端部(
図6の右側の端部)を支持している。揺動板6が揺動する際には、ねじり梁群54a,54bがそれぞれねじり変形する。
【0065】
ねじり梁群54aは、2つの直線ねじり梁56a,58aと、6つの屈曲ねじり梁60a,62a,64a,66a,68a,70aを備えている。ねじり梁群54bは、2つの直線ねじり梁56b,58bと、6つの屈曲ねじり梁60b,62b,64b,66b,68b,70bを備えている。直線ねじり梁56a,56b,58a,58bと、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bは、何れも同じ矩形断面を有しており、同一平面内(XY平面内)に配置されている。
【0066】
直線ねじり梁56a,58aは、直線状に伸びており、揺動軸Cに沿って、互いに平行に配置されている。直線ねじり梁56a,58aは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。直線ねじり梁56a,58aは、いずれも揺動軸Cから離れて配置されている。直線ねじり梁56b,58bは、直線状に伸びており、揺動軸Cに沿って、互いに平行に配置されている。直線ねじり梁56b,58bは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。直線ねじり梁56b,58bは、いずれも揺動軸Cから離れて配置されている。
【0067】
直線ねじり梁56a,56b,58a,58bの支持フレーム4との接続部および揺動板6との接続部では、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bの揺動軸Cに近い側の側面は支持フレーム4または揺動板6の側面と直交する形状に形成されており、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bの揺動軸Cから遠い側の側面は凹型のフィレット形状を介して支持フレーム4または揺動板6の側面と接続する形状に形成されている。言い換えると、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bは、支持フレーム4との接続部において、支持フレーム4に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。また、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bは、揺動板6との接続部において、揺動板6に近づくにつれて、断面積が増加し、かつ断面の中心から揺動軸Cまでの距離が増加する形状に形成されている。このような構成とすることで、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bにおいて応力集中を緩和するために支持フレーム4および/または揺動板6との接続部で必要とされる断面積を確保しつつ、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bを揺動軸Cに近い位置に配置して、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bに作用する引張応力を低減することができる。
【0068】
屈曲ねじり梁60a,60b,66a,66bは、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bから見て揺動軸Cから遠い側で、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bに隣接して配置されている。屈曲ねじり梁60a,66aは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。屈曲ねじり梁60b,66bは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。屈曲ねじり梁62a,62b,68a,68bは、屈曲ねじり梁60a,60b,66a,66bから見て揺動軸Cから遠い側で、屈曲ねじり梁60a,60b,66a,66bに隣接して配置されている。屈曲ねじり梁62a,68aは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。屈曲ねじり梁62b,68bは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。屈曲ねじり梁64a,64b,70a,70bは、屈曲ねじり梁62a,62b,68a,68bから見て揺動軸Cから遠い側で、屈曲ねじり梁62a,62b,68a,68bに隣接して配置されている。屈曲ねじり梁64a,70aは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。屈曲ねじり梁64b,70bは、MEMS装置52を上方から平面視したときに、揺動軸Cを挟んで対称な位置に配置されている。
【0069】
屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bは、いずれも、支持フレーム4から揺動軸Cに沿って直線状に伸びる支持側接続部と、支持側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲する支持側湾曲部と、揺動板6から揺動軸Cに沿って直線状に伸びる揺動側接続部と、揺動側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲する揺動側湾曲部と、揺動軸Cに沿って伸びており、支持側湾曲部と揺動側湾曲部を接続する中央部を備えている。屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bの支持側湾曲部と揺動側湾曲部は、ねじり変形の際に発生する引張応力を緩和する応力緩和部として機能する。このような構成とすることで、ねじり梁群54a,54bのねじり剛性を一定に保ちつつ、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bの強度を向上することができる。大きく駆動しても破断しない、信頼性の高いねじり梁群54a,54bを実現することができる。また、ねじり剛性が揺動板6の傾き角に依存しないため、共振周波数を傾き角に依らず一定にすることができる。従って、所望の共振周波数を維持しつつ、大きく動作可能なMEMS装置を実現することができる。
【0070】
また、本実施例のMEMS装置52では、ねじり梁群54a,54bの中央(すなわち、揺動軸Cに近い位置)に、直線状に形成された直線ねじり梁56a,56b,58a,58bが配置されている。このような構成とすることによって、揺動板6の並進運動に対する剛性を確保することができる。
【0071】
本実施例のMEMS装置52では、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bにおいて、支持側接続部が支持フレーム4から揺動軸Cに沿って直線状に伸びており、支持側湾曲部が支持側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲している。このような構成とすることによって、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bの揺動軸Cに沿った方向の長さを長くすることなく、湾曲部の揺動軸Cに直角に伸びた部分を長くすることができる。この部分が長いほど、揺動軸Cに沿った方向に変形しやすくなるため、ねじり変形に伴う引張応力を緩和することが可能である。その結果、多くのねじり梁を有するMEMS装置を実現できるため、ねじり梁の剛性を維持しつつ、揺動板以外の部分のサイズを小さくすることが可能である。また、本実施例のMEMS装置52では、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bにおいて、支持側湾曲部が、支持側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲している。このような構成とすることによって、支持側湾曲部における応力集中を緩和することができる。
【0072】
本実施例のMEMS装置52では、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bにおいて、揺動側接続部が揺動板6から揺動軸Cに沿って直線状に伸びており、揺動側湾曲部が揺動側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲している。このような構成とすることによって、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bの揺動軸Cに沿った方向の長さを長くすることなく、湾曲部の揺動軸Cに直角に伸びた部分を長くすることができる。この部分が長いほど、揺動軸Cに沿った方向に変形しやすくなるため、ねじり変形に伴う引張応力を緩和することが可能である。その結果、多くのねじり梁を有するMEMS装置を実現できるため、ねじり梁の剛性を維持しつつ、揺動板以外の部分のサイズを小さくすることが可能である。また、本実施例のMEMS装置52では、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bにおいて、揺動側湾曲部が、揺動側接続部から揺動軸Cに向けてほぼ直角に屈曲した後、揺動軸Cに沿う方向に緩やかに湾曲している。このような構成とすることによって、揺動側湾曲部における応力集中を緩和することができる。
【0073】
また、接続部は、太くしておくことが望ましい。接続部が太いほど、湾曲部よりもばね定数が高くなるため、接続部は変形しにくくなる。変形量が少なくなるため、接続部での応力発生を抑制できる。なお、上記の実施例では、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bの支持フレーム4との接続部および揺動板6との接続部には応力緩和のためのフィレットが形成されているものの、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bの支持側接続部と揺動側接続部には応力緩和のためのフィレットが形成されていない。これは、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bにおいては、応力緩和部として機能する支持側湾曲部と揺動側湾曲部が形成されているため、支持側接続部と揺動側接続部にそれほど大きな応力集中が発生しないためである。このような構成とすることで、隣接する屈曲ねじり梁間の間隔を狭めて配置することができ、支持フレーム4および揺動板6の限られたスペースに配置可能な屈曲ねじり梁の本数を多くすることができる。なお、上記とは異なり、屈曲ねじり梁の支持側接続部や揺動側接続部にも、応力集中を緩和するためのフィレットを形成してもよい。
【0074】
揺動板6が揺動する際に生じるねじり変形は、揺動軸Cから近い位置に配置されているねじり梁(例えば屈曲ねじり梁60a,60b,64a,64b)に比べて、揺動軸Cから遠い位置に配置されているねじり梁(例えば屈曲ねじり梁64a,64b,70a,70b)において、大きなものとなる。これに対応して、本実施例のMEMS装置52では、揺動軸Cから離れた位置に配置されているねじり梁(例えば屈曲ねじり梁64a,64b,70a,70b)は、揺動軸Cに近い位置に配置されているねじり梁(例えば屈曲ねじり梁60a,60b,66a,66b)に比べて、梁長さが長く形成されている。このような構成にすることで、湾曲部の揺動軸Cに沿った方向のばね定数を小さくすることができる。揺動時に揺動軸Cに沿った方向の変形量が多くなっても、湾曲部のばね定数が小さくなるため、湾曲部に発生する応力を低減できる。その結果、揺動軸Cから離れた位置に配置されているねじり梁に、大きな引張応力が作用することを防ぐことができる。
【0075】
上記の実施例においては、ねじり梁群54a,54bがそれぞれ2つの直線ねじり梁56a,58a,56b,58bを備えている場合について説明したが、ねじり梁群54a,54bが備える直線ねじり梁の本数は、これに限られるものではない。
【0076】
例えば、
図7に示すように、ねじり梁群54a,54bがそれぞれ1つの直線ねじり梁72a,72bを備えるように構成してもよい。あるいは、
図8に示すように、ねじり梁群54a,54bがそれぞれ3つの直線ねじり梁56a,58a,72a,56b,58b,72bを備えるように構成してもよい。
【0077】
また、上記の実施例においては、ねじり梁群54a,54bを構成する直線ねじり梁56a,56b,58a,58bと、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bが、いずれも同じ断面形状を有する場合について説明したが、それぞれのねじり梁の断面形状を異なるものとしてもよい。例えば、
図9に示すように、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bを最も幅広な断面形状で形成し、屈曲ねじり梁60a,60b,66a,66bを直線ねじり梁56a,56b,58a,58bよりも幅が細い断面形状で形成し、屈曲ねじり梁62a,62b,68a,68bを屈曲ねじり梁60a,60b,66a,66bよりも幅が細い断面形状で形成し、屈曲ねじり梁64a,64b,70a,70bを屈曲ねじり梁62a,62b,68a,68bよりも幅が細い断面形状で形成してもよい。
【0078】
揺動板6の揺動によるねじり梁群54a,54bのねじり変形においては、揺動軸Cから遠い位置に配置されたねじり梁は、揺動軸Cから近い位置に配置されたねじり梁に比べて、ねじりばね定数が高く、ねじりモーメントの分担割合が高くなって、大きなせん断応力が作用する。上記のように、揺動軸Cから遠い位置に配置されたねじり梁を揺動軸Cから近い位置に配置されたねじり梁よりも細く形成する(すなわち、ねじりばね定数を低く形成する)ことで、ねじりモーメントの分担割合を平準化し、揺動軸Cから遠い位置に配置されたねじり梁に作用するせん断応力を低減することができる。
【0079】
また、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bでは、ねじり変形においてねじりモーメントを分担する中央部の梁長さが短いため、直線ねじり梁56a,56b,58a,58bに比べて、ねじりばね定数が高く、ねじりモーメントの分担割合が高くなって、大きなせん断応力が作用する。上記のように、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bを直線ねじり梁56a,56b,58a,58bよりも細く形成する(すなわち、ねじりばね定数を低く形成する)ことで、ねじりモーメントの分担割合を平準化し、屈曲ねじり梁60a,60b,62a,62b,64a,64b,66a,66b,68a,68b,70a,70bに作用するせん断応力を低減することができる。
【0080】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0081】
上記の実施例では、何れも1つの揺動軸C(X軸)の周りに揺動板6を揺動させる構成について説明したが、例えば支持フレーム4の外側を囲う第2の支持フレームを用意し、Y軸に沿って配置された第2のねじり梁群によって支持フレーム4と第2の支持フレームを接続して、2つの揺動軸周りに揺動板6を揺動させる構成としてもよい。この場合、永久磁石12をX軸の両側から挟むように配置された一対の電磁石を別途用意することで、揺動板6を2軸周りに揺動させることができる。
【0082】
ねじり梁群の個々のねじり梁の断面形状に関して、断面の長辺がZ方向に沿うように、すなわち断面の幅に比べて断面の高さの方が大きな形状に形成することが望ましい。このような構成とすることで、すべてのねじり梁を揺動軸Cに近づけることができ、MEMS装置が動作したときに揺動軸Cから離れた位置にあるねじり梁に作用する引張応力を低減することができる。また、すべてのねじり梁を揺動軸Cに近づけることで、ねじり剛性に及ぼす傾き角の影響を抑制し、共振周波数を傾き角に依らず一定とすることができる。これによって、所望の共振周波数を維持しつつ、大きく動作可能なMEMS装置を実現することができる。
【0083】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。