(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オーバーコート層は、溶剤性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、アルキルチタネート、カルボジイミド基含有樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂及びポリオール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載のバリア性積層体。
成分(I)は、高圧法低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、及び、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物とオレフィンとの多元共重合体、からなる群から選ばれる1種または2種以上からなることを特徴とする請求項1または2に記載のバリア性積層体。
さらに、前記エチレン系樹脂組成物からなる第2の樹脂層(B2)を少なくとも備え、第2の樹脂層(B2)は、押出ラミネート法により、前記基材フィルムの第1の樹脂層(B1)が設けられた面上とは反対側の面上に、前記エチレン系樹脂組成物を直接積層することにより形成される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【背景技術】
【0002】
液体包装用の紙容器としては、基本的に、紙を基材とし少なくとも一方の面にポリエチレン樹脂層(以下、「PE層」という。)を設け、例えば、PE層/紙/PE層等の積層構造を有する材料を用いる。これは、高い剛性を有する紙基材にヒートシール性を有するポリエチレン樹脂層を積層させることで、箱型の密封容器を形成できるようにしたもので、牛乳容器や清涼飲料水容器として広く利用されている。
【0003】
また、無菌充填や常温流通に対応するため、液体包装用の紙容器には、酸素や水蒸気等のガスに対するバリア性が要求される。そこで、通常、バリア性を付与するため、バリア性に優れるアルミニウム等の金属箔や、アルニミウム酸化物、ケイ素酸化物等の無機酸化物から形成される蒸着層を、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル樹脂等の基材フィルムの少なくとも一方の面に積層させたバリア性フィルムが用いられる。バリア性を有する紙容器の材料構成としては、例えば、PE層/紙/PE層/アルミニウム箔/PE層や、PE層/紙/PE層/金属酸化物からなる蒸着層を有する基材フィルム/PE層等がよく用いられる。
【0004】
しかしながら、無機酸化物の蒸着層を有するバリア性フィルムは、蒸着層が硬いため、クラックやピンホールなどが発生し、バリア性が損なわれることがある。そこで、近年、として、上記無機酸化物の蒸着層にクラック等が発生することを防止し、バリア性を向上させたり、蒸着層を保護するためのオーバーコート層(トップコート層)をさらに積層し、バリア性をより向上させたバリア性フィルムが提案されている(特許文献1〜3等参照)。
【0005】
紙容器の製造の際、上記バリア性フィルムをバリア性層として、上記PE層/紙/PE層等と積層する方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法などが適宜選択される。ドライラミネート法においては、イソシアネート系の接着剤を有機溶剤に溶かして溶液状にしたものを一方の基材上に塗工し、乾燥機で溶剤を蒸発させた後に他方の基材をニップロールで貼合する。この方法は、層間の接着性は増加するが、接着剤を多量に使用することによる製造コストの増大や、有機溶剤を使用することによる安全性の低下及び環境面での問題、最終製品への匂いの残留などの問題がある。
【0006】
一方、押出ラミネート法においては、PEと紙とを接着させる場合は接着剤を必要としないが、バリア性を有するフィルムとPEとを接着させる場合は、イソシアネート系やウレタン系のアンカーコート(以下、「AC」という。)剤などの接着剤を予めバリア性フィルム上に塗工しておき、その塗工面上にPEを溶融押出する方法が一般的である。しかし、この方法では、ドライラミネート法と同様に、製造コストの増大、有機溶剤の使用によるによる安全性及び環境性の低下、最終製品への匂いの残留などの問題があるとともに、加工速度を高速化しようとした場合に、液飛び等が発生するため、高速化が難しいなどの課題がある。
【0007】
これらの問題を解決するため、溶剤系のAC剤を用いずに、水溶性AC剤を用いる方法が提案されている。また、AC剤を使用しない方法として、酸無水基、カルボキシル基などの極性基などの極性基をポリオレフィンに導入する方法(特許文献4、5等)や、ガスバリヤー性層と隣接してエポキシ含有樹脂組成物層を積層した積層からなるガスバリヤー性紙容器(特許文献6等)も提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態は、例示に過ぎず、本発明は、当業者の知識に基いて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0022】
1.バリア性積層体
(第1実施形態)
図1は、本発明のバリア性積層体の第1実施形態を示す図である。
バリア性積層体1は、基材フィルム10と、蒸着層20と、オーバーコート層30とをこの順に備えるバリア性層(A)及び第1の樹脂層(B1)を備える。また、第1の樹脂層(B)が、前記オーバーコート層30上に、前記エチレン系樹脂組成物を押出ラミネートして形成される。バリア性積層体1は、AC剤を用いなくとも、バリア性層(A)との接着性に優れた第1の樹脂層(B1)を備え、第1の樹脂層(B1)を介して、他の層との接着性にも優れるため、バリア性層(A)以外の層を積層してなる液体を含む食品包装用の紙容器やカップ、袋、紙容器、紙カップ等をシールした際の合わせ目を保護するテープ等の原料として好適に用いることができる。
なお、図示しないが、バリア性層(A)は、少なくとも基材フィルム10と、蒸着層20と、オーバーコート層30をこの順に備えていればよく、蒸着層20やオーバーコート層30を複数層有していてもよい。
以下、各層について説明する。
【0023】
(1)基材フィルム
基材フィルム10は、バリア性を有する蒸着層20を形成するための基材となる樹脂からなるフィルムであり、強度、透明性及び成形性に優れる。基材フィルム10としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリプロプレンなど、又はこれら延伸物などの樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、透明性、強度及びコストなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂又はナイロンなどのポリアミド樹脂からなるフィルムであることが好ましい。基材フィルム10の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは、5〜50μm、特に好ましくは10〜40μm程度の範囲内である。
【0024】
(2)蒸着層
蒸着層20は、無機化合物を基材フィルム10の一方の面に蒸着して形成される層であり、バリア性を有する。該無機化合物としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。該金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などが例示でき、該金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素などが例示できる。これらの中でも、ガスバリア性能、加工コスト、透明性の観点から、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などが好ましい。
蒸着方法としては、特に限定されず、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理気相成長法(PVD法)や化学気相成長法(CVD法)等の従来公知の方法を用いることができる。また、蒸着層20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは50〜5000Å、より好ましくは300〜2000Å程度の範囲である。
【0025】
(3)オーバーコート層
オーバーコート層30は、蒸着層20上に形成される層であり、蒸着層20との接着性を有し、バリア性のさらなる向上やラミネートなどの後加工時に蒸着層20を保護する機能を有する。オーバーコート層を形成する成分としては、特に限定されず、従来公知の成分を用いることができる。例えば、溶剤性または水溶性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、アルキルチタネート、カルボジイミド基含有樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂及びポリオール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。また、これらの共重合体や、混合物などを含んでもよい。
【0026】
オーバーコート層30を形成する成分としては、共重合ポリエステル、特に酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸とからなり、ジオール成分がエチレングリコールとネオペンチルグリコールとからなるポリエステルを含むこともできる。
また、ウレタン結合またはウレア結合を有する有機高分子及びウレタン結合とウレア結合の双方を有する有機高分子を含むこともできる。
【0027】
また、オーバーコート層30を形成する成分としては、1種以上の金属アルコキシド、あるいは、その加水分解物の少なくともいずれかと、水溶性高分子とを含む水溶液、または、水とアルコールの混合溶液を主剤としたものを用いることもできる。
金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシランやトリイソプロポキシアルミニウムなどが用いられる。また、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0028】
また、オーバーコート層30は、−OR
1基(R
1はアクリロイル基、メタクリロイル基又はビニル基を示す)と−OR
2基(R
2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す)とをそれぞれ1個以上有する複官能性化合物を含む組成物の硬化被膜により形成されてもよい。さらに、前記組成物は、上述の複官能性化合物以外に、活性エネルギー線の照射により重合して硬化被膜を形成する常用のモノマーやオリゴマー、ポリマー等を含んでいてもよい。例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のモノマーやオリゴマーを含有させることができる。
【0029】
さらに、オーバーコート層30は、添加剤として、無機微粉末などを含んでもよい。また、シランカップリング剤や、シリカ、コロイダルシリカ、スメクタイトなどの粘土鉱物、セラミック系無機粒子、有機チタネートなどの無機成分を含むことができる。また4級アンモニウム塩などの界面活性剤や、3級アミンなどのアミン樹脂などを含むこともできる。
【0030】
また、オーバーコート層30に形成に用いるコーティング液の溶剤としては、特に限定されるものではないが、水、またはアルコール、水とアルコールの混合液やトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶剤が例示できる。
また、オーバーコート層30の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜50μmより好ましくは0.01〜30μm程度の範囲である。
【0031】
(4)バリア性層
上述したように、バリア性層(A)は、基材フィルム10と、蒸着層20と、オーバーコート層30をこの順に備え、ガスバリア機能を有する層である。バリア性層(A)としては、特に限定されないが、一般的には、厚みを10μmにした場合の酸素透過率が10g/(m
2・day・atm)以下、厚みを10μmにした場合の水蒸気透過率が10g/(m
2/day)以下である層などをいう。また、図示しないが、バリア性層(A)は、さらにバリア性を補強したり、各層間の接着強度を向上させたりする観点から、基材フィルム10、蒸着層20及びオーバーコート層30以外の他の層を有していてもよく、また、各層が1層または2層以上から形成されていてもよい。
バリア性層としては、市販のバリア性フィルムを用いることもでき、凸版印刷株式会社 GLフィルム、三菱樹脂株式会社 テックバリア(登録商標)TX−R、東レフィルム加工株式会社 バリアロックス(登録商標)1011HG−CR等が挙げられる。
【0032】
(5)第1の樹脂層
第1の樹脂層(B1)は、下記の成分(I)100重量部に対して、成分(II)を0.001〜5重量部含むエチレン系樹脂組成物からなり、前記オーバーコート層上に、前記エチレン系樹脂組成物を直接押出ラミネートして形成される。
成分(I):下記(イ)〜(ロ)の要件を満たすエチレン系重合体。
(イ)メルトフローレート(MFR)が1〜40g/10分である。
(ロ)密度が0.870〜0.970g/cm
3である。
成分(II):エポキシ化植物油。
【0033】
(i)成分(I):ポリエチレン系樹脂
成分(I)は、ポリエチレン系樹脂であり、高圧法低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体及びエポキシ基と反応する官能基を有する化合物とオレフィンとの多元共重合体からなる群から選ばれる1種または2種以上からなることが好ましい。
【0034】
(高圧法低密度ポリエチレン)
成分(I)に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)は、高圧ラジカル重合法で製造される長鎖分岐構造を有する低密度ポリエチレンであり、溶融弾性が高く、押出ラミネート加工性時のネックインとドローダウンのバランスに優れ、加工性を改良する作用がある。
【0035】
成分(I)としては、HPLDを単独で用いることができるが、包装体とした時の加工性、ヒ−トシール強度および耐圧強度、ピンホール強度、引裂き性、打抜き性の観点から、成分(I)中のHPLDの含有量は、適宜調整することが可能である。ラミネート加工時のネックインとドローダウンのバランスとしては、好ましくは1〜100重量%、より好ましくは2〜100重量%、さらに好ましくは3〜100重量%である。
【0036】
(エチレン−α−オレフィン共重合体)
成分(I)に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体を構成する炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられ、少なくとも一種以上を用いたコポリマー及びターポリマーが例示される。また、エチレンと共重合体するα−オレフィンの含有量は、合計で30モル%以下、好ましくは3〜20モル%以下である。
エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いて製造することができるが、通常、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒と呼ばれる触媒を用いて、エチレンと炭素数3〜16のα−オレフィンとを共重合させることによって得られる。また、公知の方法により長鎖分岐を付与することで、ラミネート加工時のドローダウンとネックインのバランスが向上させることができる。これらは一般に低圧・中圧・高圧法のいずれでも製造することができ、気相法、溶液法、スラリー法のいずれの方法でも製造される。
【0037】
成分(I)中のエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量としては、接着性及びコスト、ヒ−トシール強度および耐圧強度、ピンホール強度、引裂き性、耐熱性、ラミネート加工時の加工性の観点から、好ましくは1〜100重量%であり、2〜100量%が好ましく、5〜100重量%が特に好ましい。上記範囲でエチレン−α−オレフィン共重合体を含むことにより、更に基材との接着性、材料強度を向上させることができる。
【0038】
(エポキシ基と反応する官能基を有する化合物とオレフィンとの多元共重合体)
成分(I)には、エポキシ基と反応する官能基を有する化合物とエチレンを含むオレフィンとの多元共重合体(グラフトポリマーを除く)を含むことができる。
ここで、エポキシ基と反応する官能基としては、カルボキシル基またはその誘導体、アミノ基、フェノール基、水酸基、チオール基などが挙げられる。中でも反応性と安定性のバランスから、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1つの基を分子内に有する化合物が好ましく用いられる。エポキシ基と反応する官能基の導入方法としては、主として共重合法が挙げられる。
【0039】
エポキシ基と反応する官能基を有する化合物とオレフィンとの多元共重合体(グラフトポリマーを除く)としては、例えば、エポキシ基と反応する官能基を有し、かつ、エチレンと反応可能な化合物とエチレンとの多元共重合体が挙げられる。共重合に用いる化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム等のα,β−不飽和カルボン酸金属塩、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示できるがこの限りではない。更にこれらの不飽和化合物に加えて(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルアルコールエステル等を共重合させて用いることもできる。これらの化合物は、エチレンとの共重合体において2種以上を混合して用いることができ、これらの化合物とエチレンとの共重合体は、2種以上を併用することもできる。
【0040】
成分(I)中のエポキシ基と反応する官能基を有する化合物とオレフィンとの多元共重合体(グラフトポリマーを除く)の含有量としては、接着性及びコストの観点から、好ましくは0〜30重量%であり、2〜25量%が好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。上記範囲で該多元共重合体を含むことにより、更に基材との接着性を向上させることができる。これは、エポキシ基と反応可能な官能基とエポキシ化植物油との間で反応が起こり、樹脂成分にグラフトされるエポキシ化合物が増加するためである。
【0041】
(メルトフローレート)
成分(I)のMFR(190℃、21.18N荷重)は、1〜40g/10分であり、好ましくは、2〜35g/10分、さらに好ましくは3〜30g/10分である。MFRが1g/10分よりも低い場合は、押出ラミネート加工時の高速加工性に劣り、MFRが40g/10分を超える場合は、押出ラミネート加工時の溶融膜が不安定となったり、ネックインが大きくなるため、好ましくない。なお、MFRは、JIS−K7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される値である。
【0042】
(密度)
成分(I)の密度は、0.870〜0.970g/cm
3であり、好ましくは、0.875〜0.965g/cm
3、さらに好ましくは0.880〜0.960g/cm
3である。密度が0.870g/cm
3より低い場合は、押出ラミネート加工時の滑り性や離ロール性が悪化し、0.970g/cm
3より高い場合は、接着性が悪化する。なお、密度は、JIS−K7112に準拠して測定される値である。
【0043】
(ii)成分(II):エポキシ化植物油
成分(II)は、エポキシ化植物油である。ここで、エポキシ化植物油とは天然植物油
の不飽和二重結合を過酸などを用いてエポキシ化したものであり、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などを挙げることができる。これらのエポキシ化植物油は、例えば株式会社ADEKA製、O−130P(エポキシ化大豆油)、O−180A(エポキシ化亜麻仁油)等として市販されている。なお、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されて
いない、またはエポキシ化が不十分な油分の存在は本発明における作用効果を何ら妨げるものではない。
【0044】
ところで本発明において用いられるエポキシ化植物油は、ポリ塩化ビニル等のポリマーの安定剤あるいは可塑剤として用いられ、あるいは、カルボン酸基、カルボン酸誘導体基を分子内に含むような樹脂に添加して架橋剤として用いる技術が開示されている(特開昭60−112815号公報)。しかし、本発明者等はこれらの用途で使用されていたエポキシ化植物油を、極性を有しないエチレン系重合体にブレンドして組成物化し、成形時において酸化させることにより、バリア性フィルム(基材フィルム10/蒸着層20/オーバーコート層30)に対して極めて強力な接着性向上の効果が得られることを見い出したもので、この作用効果は予想もされないことであった。この接着性向上の理由は、必ずしも明らかではないが、エチレン系樹脂組成物の溶融成形時に押出機内あるいはTダイ等から押出された際に空気と触れる中で、エチレン系重合体が空気酸化され、この酸化の過程でエポキシ化植物油との反応が起こり、まずエポキシ化植物油がエチレン系重合体にグラフトされ、このグラフトされたエポキシ化植物油の分子内に残っている未反応のエポキシ基がバリア性フィルム表面(オーバーコート層)の官能基と反応するためと推測される。
【0045】
(iii)エチレン系樹脂組成物
第1の樹脂層(B1)を構成するエチレン系樹脂組成物は、成分(I)及び成分(II)からなり、成分(I)100重量部に対して、成分(II)は、0.01〜5重量部含有され、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.01〜1重量部である。成分(II)の含有量が0.01重量部未満では基材との接着強度が不十分であり、5重量部を超えると積層体がベタツキによるブロッキングを起こしたり、臭いを発する等の問題が発生するおそれがあるので好ましくない。
【0046】
また、前記エチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、従来公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、顔料、各種の無機・有機充填剤などが添加されてもよい。
【0047】
前記エチレン系樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、成分(I)、成分(II)及び必要に応じて各種の添加剤を、ヘンシェルキミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて混練する方法を用いることができる。混練のの温度は、通常、樹脂の融点以上〜350℃であり、約120〜300℃が好ましい。
【0048】
(iv)押出ラミネート法
第1の樹脂層(B1)は、押出ラミネート法により、オーバーコート層30上に前記エチレン系樹脂組成物を加熱溶融した状態で、直接積層することにより形成される。これにより、ドライラミネート用接着剤あるいは押出ラミネート用AC剤を使用せずに積層させ、かつ、AC剤を使用した場合と同様に第1の樹脂層(B1)とオーバーコート層30を強固に接着することができる。
【0049】
押出ラミネート法は、Tダイより押し出した溶融樹脂膜を基材上に連続的に形成・圧着する方法であり、成形と接着とを同時に行う加工法である。第1の樹脂層(B1)を押出ラミネート法により形成する際の成形温度は、特に限定されないが、一般には200〜380℃であり、220〜370℃が好ましく、240〜350℃が特に好ましい。押出ラミネート成形時の成形温度が200℃未満では、十分な接着強度が得られず、一方、380℃超では、成形性が悪化し、また、紙基材やPE層(シーラント層)を同時に積層する場合には、得られた紙容器の臭気やヒートシール性等の製品物性が悪化する。
また、必要に応じて、第1の樹脂層(B1)表面には、オゾン処理、酸素処理、バリア性層(A)のオーバーコート表面には、コロナ処理、フレーム処理、紫外線処理、電子線処理、低温プラズマ処理等を併用してもよい。
【0050】
(第2実施形態)
図2は、本発明のバリア性積層体の第2実施形態を示す図である。
バリア性積層体1’は、基材フィルム10と、蒸着層20と、オーバーコート層30とをこの順に備えたバリア性層(A)、第1の樹脂層(B1)及び第2の樹脂層(B2)を備え、第2の樹脂層(B2)が、基材フィルム10の第1の樹脂層(B1)の積層された面とは反対の面上に、前記エチレン系樹脂組成物を押出ラミネートして形成される。
バリア性積層体1’は、上述した第1の樹脂層(B1)に加え、さらに、AC剤を用いなくとも、基材フィルム10との接着性に優れた第2の樹脂層(B2)を備える。
【0051】
第2の樹脂層(B2)を構成する成分及び製造方法は、前述した第1の樹脂層(B1)と同様である。また、第1の樹脂層(B1)と第2の樹脂層(B2)を構成する成分の配合割合や厚さ等は、必要に応じて、適宜調製することができ、同一でも異なっていてもよい。
【0052】
このようなバリア性積層体1’の構成によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、第1及び第2の樹脂層(B1、B2)は、ヒートシール性にも優れるため、バリア性積層体1’は、直接、紙容器、紙カップ等をシールした際の合わせ目を保護するテープとして好適に用いることができる。
また、図示しないが、バリア性積層体1’は、さらに、外側に、ヒートシール層を積層することができ、該ヒートシール層としては、特に限定されず、例えば、LDPE等のポリエチレン樹脂から形成されるPE層や他のオレフィンから形成されるオレフィン層などを積層することができる。
【0053】
(第3実施形態)
図3は、本発明のバリア性積層体の第3実施形態を示す図である。
バリア性積層体1’’は、基材フィルム10と、無機化合物からなる蒸着層20と、オーバーコート層30とをこの順に備えたバリア性層(A)、第1の樹脂層(B1)、第2の樹脂層(B2)及び紙基材層40を備える。
紙基材層40は、第1の樹脂層(B1)上に積層され、紙基材層40上には、さらに、印刷層60及びPE層50を備える。このような構成によれば、上記第1及び2実施形態と同様の効果が得られるとともに、特に食品や医薬包装用紙容器や紙カップの材料として好適に用いることができる。
また、バリア性積層体1’’は、紙基材層40の外側に印刷層60を備えるため、包装容器として意匠性に優れた紙容器が得られるうえ、必要な表示を印刷することができる。また、最外層であるPE層50によって、印刷層60が保護されるとともに、紙基材層40に水分が浸透するのが防止されるので、液体用紙容器を構成するのに好適である。
さらに、バリア性積層体1’’の両面でヒートシール性が得られるため、容器の形成加工性に優れる。
【0054】
バリア性積層体1’’を構成する紙基材層40としては、特に限定されないが、10g/m
2〜500g/m
2の紙材が好適に用いられる。例えば液体容器を構成する場合など、容器としての剛性が要求される場合には、一般に100g/m
2〜500g/m
2の紙材が好適に用いられる。また乾燥食品や医薬品包装用の容器を構成する場合など、易カット性が要求される場合は坪量10g/m
2〜150g/m
2のものが好適に用いられる。紙材の表面には接着性を向上させるためにコロナ処理、フレーム処理、低温プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理など各種の前処理が施されていてもよい。この中では比較的簡便で効果の高いコロナ処理が好適に用いられる。
【0055】
紙基材層40と第1の樹脂層(B1)及びバリア性層(A)の積層方法としては、特に限定されず、各種の方法により積層することができるが、紙基材層40、第1の樹脂層(B1)及びバリア性層(A)を同時に積層する方法が好適に用いられる。
【0056】
バリア性積層体1’’を構成するPE層50としては、印刷層60を保護する機能が達成されるならば、特に限定されず、従来公知のポリエチレン樹脂から形成される層を用いることができる。また、図示しないが、PE層50に代えて、プロピレン系重合体、EVA、E(M)A、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、E(M)AAまたはその金属塩等から形成される層を積層することもできる。また、紙基材層上に、さらに、金属を蒸着させた蒸着層を有するフィルム基材層を積層させ、その上に印刷層を積層することにより、金属光沢を有する意匠性に優れた紙容器を得ることもできる。
【0057】
(その他の実施形態)
また、図示しないが、その他の実施形態として、各積層体の少なくとも一方の外層にシーラント層として、PE層やその他のオレフィン層などを適宜備えることができる。なお、本発明に係るバリア性積層体を用いて、容器等を製造する際には、バリヤ性層(A)の蒸着層20、オーバーコート層30は、基材フィルム10よりも容器外側に配されてもよく、また、基材フィルム層1よりも容器内側に配してもよい。また、バリア性層(A)を構成する各層は、一層または複数層で構成されていてもよい。
【0058】
2.容器又は袋
本発明に係る容器の形態については特に制限はなく、例えば軟包装向けの容器として
図4に示すような3方シールによる袋、あるいは4方シールによる袋の形態で好適に用いられる。図中符号70はヒートシール部を示す。このような形態の容器は例えば乾燥食品や粉体、顆粒状の医薬品の包装用の容器として好ましく用いることができる。また液体食品用紙容器としては
図5に示すような角型の容器の形態が好適である。このような形状の容器は例えばミネラルウォーター、ジュース、果汁、清酒、焼酎等の飲料やその他の液体の包装用の容器として好ましく用いることができる。
【0059】
本発明に係る容器又は袋の一実施形態として、
図3に示すバリア性積層体(上側を容器外側、下側を容器内側とする。)を用いてなる紙容器または袋によれば、酸素、水蒸気等が透過可能な紙基材層40および第1の樹脂層(B1)の内側にバリア性層(A)が配されているので、容器内部に酸素、水蒸気等が透過するのが防止され、良好なガスバリヤー性が得られる。また容器の最内層として第2の樹脂層(B2)(またはPE層)が配されているので良好なヒートシール性が得られる。また、バリア性層(A)のオーバーコート層30上には、これと接着性を有する第1の樹脂層(B1)が積層され、第1の樹脂層(B1)上にはこれと接着性を有する紙基材層40上にはが積層されているので、各層間の接着性に優れているとともに、ドライラミネート用接着剤や押出ラミネート用AC剤を用いることなしに製造することができる。したがって、製造時に有機溶剤を使用しないので作業環境上好ましく、加工性にも優れる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において使用した測定方法、評価方法及び材料は、以下の通りである。
【0061】
1.測定方法、評価方法
(1)MFR:JIS−K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して行った。
(2)密度
ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件において16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、タテ×ヨコ2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃でJIS−K7112に準拠して測定した。
(3)接着強度
得られた積層体を、流れ方向に15mm幅の短冊状に切出し、ガスバリヤー性層とエポキシ含有樹脂組成物層との層間の界面で剥離し、被検体数5、剥離速度300mm/分、T剥離試験での剥離強度をもって接着強度とした。バリア性層(A)に対して第1の樹脂層(B1)を引っ張って剥離しながらこの層が切れた場合はチャートの最高点の数値をもって接着強度とし、表1には「基材切れ」と記載した。
【0062】
2.材料
(1)バリア性層(A)
酸化アルミニウム蒸着PETとして、東レフィルム加工株式社製 バリアロックス(登録商標)1011HG−CR(オーバーコート層有り、厚さ12μm)及び1011HG(オーバーコート層無し、厚さ12μm)を用いた。
(2)成分(I)
下記の(A−1)及び(A−2)を用いた。
(A−1):高圧法低密度ポリエチレン(MFR7g/10分、密度0.918g/cm
3)
(A−2):エチレン−α−オレフィン共重合体(コモノマーの種類:1−ヘキセン、MFR11g/10min、密度0.911g/cm
3)80重量%及び高圧低密度ポリエチレン(MFR5g/10min、密度0.918g/cm
3)20重量%を含むエチレン樹脂(MFR9g/10分、密度0.912g/cm
3)
(3)成分(II)
エポキシ化大豆油 O−130P(株式会社ADEKA社製)
【0063】
3.実施例及び比較例
表1に示す配合割合で、成分(I)100重量%に対して、成分(II)を配合し、φ30mmの二軸押出機を用いて混練、ペレット化して、エチレン系樹脂組成物を製造した。上記組成物ペレットを、φ90mm径の押出機を有する押出ラミネート成形機(モダンマシナリー社製)を使用し、Tダイからニップロールまでの距離120mm、ラミネート速度100m/分、押出樹脂温度325℃で被覆厚みが20μmとなるように調製し、バリア性層(酸化アルミニウム蒸着PET)を基材とし、サンド基材として直鎖状低密度ポリエチレン(LLD)フィルム(30μm)を押出サンドラミネート加工を行い積層体(実施例:LLDフィルム/第1の樹脂層/オーバーコート層/蒸着層/PET、比較例:LLDフィルム/第1の樹脂層/蒸着層/PET)を製造した。この時、必要に応じて所定の放電密度でコロナ放電処理(ピラー社製、条件60W・min/m
2)を行った。
加工後の積層フィルムを40℃のオーブンにて48時間のエージングを行った後、流れ方向に15mm幅の短冊状に切出し、評価用の積層体を得た。実施例1〜4、比較例1〜2の各成分の配合割合及び評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(評価)
本発明のバリア性積層体を用いた実施例1〜4は、接着強度に優れる。また、特に、エチレン−α−オレフィンと高圧法低密度ポリエチレンとを含む成分(I)を用いた実施例3、4では、より接着強度に優れる。
一方、成分(II)のエポキシ化植物油を含まない比較例1では、接着強度が十分でなく、また、オーバーコート層を有さない酸化アルミニウム蒸着PET(バリア性層)に第1の樹脂層(B2)を積層した比較例2では、接着強度が著しく劣る。