【実施例1】
【0010】
[システム構成]
最初に、実施例1に係る発注量決定装置を用いて発注を行うシステムの一例を説明する。
図1は、システム構成の一例を説明する図である。
図1に示すように、システム1は、発注量決定装置10と、受注システム11と有する。発注量決定装置10と受注システム11は、ネットワーク12を介して通信可能に接続され、各種の情報を交換することが可能とされている。かかるネットワーク12の一態様としては、有線または無線を問わず、携帯電話などの移動体通信、インターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を採用できる。
【0011】
受注システム11は、商品の発注や在庫を管理するためのシステムである。例えば、受注システム11は、1台または複数第のサーバコンピュータ上で動作するシステムである。受注システム11は、商品の販売価格や原価などが設定されたマスタデータを記憶する。受注システム11は、店舗のPOS(Point of sale)システム等から商品の売り上げ情報や商品の納品情報がアップロードされる。受注システム11は、アップロードされた商品の売り上げ情報や商品の納品情報を基づき、現在の商品の在庫量を管理する。また、受注システム11は、商品の発注に関する処理を行う。例えば、受注システム11は、商品毎の発注量を示した発注データを受け付け、商品の取り扱い元に発注データを送信する。
【0012】
発注量決定装置10は、商品の発注量を決定する装置である。発注量決定装置10は、所定の発注期間についての発注対象の商品の最適な発注量を求め、発注期間の発注計画を出力する。本実施例では、発注対象の期間を本日、明日、明後日の3日間として、発注量決定装置10が、それぞれの日に1回ずつ3回分の発注量を示した発注計画を出力する場合について説明する。発注量決定装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータなどのコンピュータなどである。発注量決定装置10は、1台のコンピュータとして実装してもよく、また、複数台のコンピュータにより実装してもよい。なお、本実施例では、発注量決定装置10を1台のコンピュータとした場合を例として説明する。
【0013】
[発注量決定装置の構成]
実施例1に係る発注量決定装置10について説明する。
図2は、発注量決定装置の全体構成を示す図である。
図2の例に示すように、発注量決定装置10は、通信I/F(インタフェース)部20と、入力部21と、表示部22と、記憶部23と、制御部24とを有する。なお、発注量決定装置10は、上記の機器以外の他の機器を有してもよい。
【0014】
通信I/F部20は、他の装置との間で通信制御を行うインタフェースである。通信I/F部20としては、LANカードなどのネットワークインタフェースカードを採用できる。
【0015】
通信I/F部20は、ネットワーク12を介して他の装置と各種情報を送受信する。例えば、通信I/F部20は、受注システム11と各種情報を送受信が可能とされており、受注システム11と発注対象の商品に関する各種情報を送受信する。
【0016】
入力部21は、各種の情報を入力する入力デバイスである。入力部21としては、マウスやキーボードなどの操作の入力を受け付ける入力デバイスが挙げられる。入力部21は、各種の情報の入力を受付ける。例えば、入力部21は、発注量の決定に関する各種の操作の入力を受け付ける。入力部21は、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作内容を示す操作情報を制御部24に入力する。
【0017】
表示部22は、各種情報を表示する表示デバイスである。表示部22としては、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などの表示デバイスが挙げられる。表示部22は、各種情報を表示する。例えば、表示部22は、発注に関する各種の条件や、決定された発注量を表示する画面など各種の画面を表示する。例えば、表示部22は、後述する発注予測画面を表示する。
【0018】
記憶部23は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部23は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)などのデータを書き換え可能な半導体メモリであってもよい。
【0019】
記憶部23は、制御部24で実行されるOS(Operating System)や各種プログラムを記憶する。例えば、記憶部23は、発注量の決定に用いる各種のプログラムを記憶する。さらに、記憶部23は、制御部24で実行されるプログラムで用いられる各種データを記憶する。例えば、記憶部23は、商品情報30と、需要実績情報31と、需要予測情報32を記憶する。
【0020】
商品情報30は、発注対象の商品に関する各種の情報を記憶したデータである。商品情報30には、発注対象の商品の現在の在庫量や、1つ当たりの利益など、発注量の決定に用いる各種の情報が記憶される。
【0021】
需要実績情報31は、発注対象の商品に関する過去の需要に関する情報を記憶したデータである。例えば、需要実績情報31には、発注対象の商品の過去の需要量が記憶される。
【0022】
需要予測情報32は、発注対象の商品に関する予測される需要に関する情報を記憶したデータである。例えば、需要予測情報32には、商品の予測される需要量毎に、当該需要量の需要が発生する発生確率が記憶される。
【0023】
制御部24は、発注量決定装置10を制御するデバイスである。制御部24としては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路を採用できる。制御部24は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部24は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば、制御部24は、収集部40と、受付部41と、予測部42と、算出部43と、出力部44とを有する。
【0024】
収集部40は、各種の収集を行う。例えば、収集部40は、発注対象の商品に関する各種の情報を収集する。例えば、収集部40は、受注システム11から発注対象の商品の販売価格や、原価、現在の在庫量を収集する。収集部40は、発注対象の商品の販売価格から原価を減算して、発注対象の商品の1つ当たりの利益を求める。収集部40は、発注対象の商品の現在の在庫量や、1つ当たりの利益を商品情報30に記憶させる。また、収集部40は、受注システム11から発注対象の商品の過去の需要量を収集し、発注対象の商品の過去の需要量を需要実績情報31に記憶させる。なお、本実施例では、商品情報30および需要実績情報31は、収集部40が受注システム11から情報を収集して格納するが、これに限定されるものではない。商品情報30および需要実績情報31は、別なシステムや管理者が格納してもよい。
【0025】
受付部41は、発注に関する各種の条件の受付を行う。例えば、受付部41は、発注に関する各種の条件として、利益に関する条件を受け付ける。例えば、受付部41は、後述する発注予測画面を表示させ、発注予測画面から利益に関する条件の入力を受け付ける。また、例えば、受付部41は、発注に関する各種の条件として、発注量を求める際の各種の制約条件を受け付ける。例えば、受付部41は、発注予測画面から制約条件の入力を受け付ける。
【0026】
図3は、発注予測画面の一例を示す図である。発注予測画面50は、発注に関して複数のモードから条件選択が可能とされており、モードを選択するラジオボタン51a、51b、51c、51dが設けられている。ラジオボタン51aは、指定された確率以上で確保できる利益を最大とする発注量を求める第1の発注モードを指定するボタンである。ラジオボタン51bは、指定された利益以上を確保できる確率を最大とする発注量を求める第2の発注モードを指定するボタンである。ラジオボタン51cは、指定された確率で指定された利益を確保しつつ、指定された確率以上で確保できる利益を最大とする発注量を求める第3の発注モードを指定するボタンである。ラジオボタン51dは、指定された確率で指定された利益を確保しつつ、指定された利益以上を確保できる確率を最大とする発注量を求める第4の発注モードを指定するボタンである。
【0027】
発注予測画面50には、各発注モードでの利益に関する条件を指定する入力領域が設けられている。例えば、発注予測画面50には、第1の発注モードにおいて、利益に関する条件として、確保する利益を最大化する確率を指定する入力領域52が設けられている。また、発注予測画面50は、第2の発注モードにおいて、利益に関する条件として、確保を望む利益を指定する入力領域53が設けられている。また、発注予測画面50は、第3の発注モードにおいて、利益に関する条件として、確保すべき利益を指定する入力領域54aと、利益を確保すべき確率を指定する入力領域54bと、利益を最大化する確率を指定する入力領域54cとが設けられている。また、発注予測画面50は、第4の発注モードにおいて、利益に関する条件として、確保すべき利益を指定する入力領域55aと、利益を確保すべき確率を指定する入力領域55bと、確保を望む利益を指定する入力領域55cとが設けられている。
【0028】
また、発注予測画面50には、発注量を求める際の各種の制約条件を指定する入力領域が設けられている。例えば、発注予測画面50には、制約条件として、それぞれの発注タイミングでの最大発注量を指定する入力領域56と、最大在庫量を指定する入力領域57とが設けられている。また、発注予測画面50には、制約条件として、商品が在庫切れになる欠品の発生確率を指定する入力領域58とが設けられている。
【0029】
また、発注予測画面50には、実行ボタン59が設けられている。発注者は、発注予測画面50で発注モードを選択し、選択した発注モードに応じた利益に関する条件を指定し、制約条件を指定して実行ボタン59を指定する。これにより、発注量決定装置10は、商品の最適な発注量の算出を行い、最適な発注計画を決定する。
【0030】
発注予測画面50には、発注対象の期間の決定された発注計画の発注量を表示する発注量表示領域60が設けられている。本実施例では、発注対象の期間を本日、明日、明後日とし、発注計画としてそれぞれの日に1回ずつ3回分の発注量を決定する。
図3の例では、本日と、明日と、明後日の3回分の発注量が発注量表示領域60に表示される。また、発注予測画面50には、決定された発注計画での利益の確率分布を表示する確率分布表示領域61が設けられている。
【0031】
図2に戻り、予測部42は、各種の予測を行う。例えば、予測部42は、需要実績情報31に記憶された発注対象の商品の過去の需要の履歴に基づき、発注対象の期間の需要を予測する。例えば、予測部42は、ARIMAモデル(autoregressive integrated moving average model)などによる時系列分析を行って、発注対象の商品の需要を予測する。なお、需要の予測の手法は、これに限定されず、何れの手法であってもよい。例えば、サポートベクタマシンなどにより過去の需要を学習して需要量を予測してもよい。
【0032】
図4は、需要の予測結果の一例を示す図である。需要の予測結果は、それぞれの需要量に対する発生確率として得られる。
図4には、需要量に対する発生確率のグラフが示されている。
図4のグラフの横軸は、商品の需要量である。
図4のグラフの縦軸は、需要量の発生確率である。
図4の例では、商品の需要の確率分布は正規分布となっている。個々に販売される商品の需要量は、整数である。このため、予測部42は、連続型の分布のモデルの場合、離散化し、整数の需要量毎に、需要が発生する確率を求めて需要予測情報32に記憶させる。例えば、予測部42は、
図4に示すように、需要量dの前後0.5の区間の確率分布の面積Sに対応する確率を需要量dの需要が発生する発生確率として、需要予測情報32に記憶させる。なお、予測部42は、需要の確率分布において、所定の有意確率区間外を切り捨てるようにしてもよい。例えば、
図4に示すように、予測部42は、上側確率P
u+下側確率P
Lが1−有意確率となる区間外を切り捨て、区間内の各需要量について発生確率を需要予測情報32に記憶させてもよい。この有意確率は、外部から設定可能としてもよい。例えば、発注予測画面50に有意確率を指定する入力領域を設けて、発注者が有意確率を設定可能としてもよい。
【0033】
予測部42は、発注対象の商品の発注対象の期間について、予測区間ごとに順に、直前までの予測区間に予測された各需要量の需要が発生しているものとして、それぞれケース分けして需要量を予測する。本実施例では、本日、明日、明後日の3回分の予測区間について需要を予測する。予測部42は、それぞれのケースで予測される需要量毎に、当該需要量の需要の発生確率を需要予測情報32に記憶させる。
【0034】
図5は、需要予測情報に記憶される予測区間ごとの予測される需要量、発生確率を模式的に示した図である。1ステップ目の予測区間については、予測された需要量と発生確率が記憶される。
図5の例では、1ステップ目の予測区間の需要量d
1〜d
kと発生確率p
1〜p
kが記憶される。また、2ステップ目の予測区間については、1ステップ目の予測区間の需要量のそれぞれでケース分けされて予測された需要量と発生確率が記憶される。例えば、1ステップ目の予測区間の需要量d
1として予測された需要量d
1,1〜d
1,mと発生確率p
1,1〜p
1,mが記憶される。3ステップ目の予測区間については、2ステップ目までの予測区間の需要量のそれぞれでケース分けされて予測された需要量と発生確率が記憶される。例えば、1ステップ目の予測区間の需要量d
1とし、2ステップ目の予測区間の需要量d
1,1として予測された需要量d
1,1,1〜d
1,1,xと発生確率p
1,1,1〜p
1,1,xが記憶される。なお、本実施例では、予測部42が商品の過去の需要量から、予測区間の需要を予測する場合について説明したが、これに限定されるものではない。需要予測情報32は、別なシステムでの予測結果を記憶してもよく、管理者が設定してもよい。また、予測部42は、発注対象の期間と同一の直前の期間の需要量や過去の同一時期の需要量など過去の需要量をそのまま、あるいは、補正して、予測結果として需要予測情報32に記憶させてもよい。
【0035】
算出部43は、各種の算出を行う。例えば、算出部43は、需要予測情報32に記憶された商品の需要予測に基づき、複数の期間それぞれの商品の発注量を示す複数の発注計画の其々について、利益の確率分布を算出する。例えば、算出部43は、発注対象の期間の予測区間ごとに、制約条件を満たす発注量を初期の発注計画として定める。例えば、算出部43は、最大発注量が指定されている場合、予測区間ごとに、最大発注量以下でランダムに発注量を定める。なお、初期の発注計画の定め方は、これに限定されるものではない。初期の発注計画は、予め固定で定められもよく、発注者が設定してもよく、直前に発注された発注計画や過去の同一時期に発注された発注計画など過去の発注計画を用いていてもよい。この場合、過去の発注計画は、収集部40により、受注システム11から収集する。
【0036】
また、算出部43は、需要予測情報32に記憶された商品の需要予測に基づき、予測区間ごとの商品の需要を組み合わせ、組み合わせた各予測区間の需要の発生確率を乗算して各予測区間の需要の組み合わせ毎の発生確率を求める。
【0037】
図6は、各予測区間の需要を組み合わせた発生確率の一例を示した図である。例えば、
図6には、1ステップ目の予測区間の需要量d
1と、2ステップ目の予測区間の需要量d
1,1と、3ステップ目の予測区間の需要量d
1,1,1とを組み合わせた経路が示されている。この場合、算出部43は、発生確率p
1と、発生確率p
1,1と、発生確率p
1,1,1と乗算して、需要量d
1、d
1,1、d
1,1,1の経路の発生確率を求める。
【0038】
算出部43は、各予測区間の需要を組み合わせた経路毎に、発注計画の発注が行われた場合の利益を算出する。例えば、前の予測区間に発注した商品が次の予測区間に納品される場合、予測区間k+1の在庫量y[k+1]は、以下から求まる。
【0039】
y[k+1]=y[k]+u[k]−D[k]・・・(1)
【0040】
y[k]は、予測区間kの在庫量である。
u[k]は、予測区間kの発注量である。
D[k]は、予測区間kの需要量である。
【0041】
例えば、明日の在庫量は、現在の在庫量に本日の発注量を加算し、本日の需要量を減算した値となる。算出部43は、式(1)を用いて、各予測区間の在庫量を順に算出する。
【0042】
ところで、商品の在庫量から需要量D[k]を減算した場合、需要量D[k]が在庫量より多いと、在庫量は、マイナスとなる場合がある。しかし、商品の在庫量がゼロになると欠品状態となって売る商品がないため、商品の在庫量はゼロ未満にならない。
【0043】
そこで、算出部43は、以下の式(2)により予測区間k+1の在庫量を補正する。予測区間k+1の補正された在庫量をyp[k+1]とする。
【0044】
yp[k+1]=max(y[k+1],0) ・・・(2)
【0045】
式(2)では、予測区間k+1の在庫量y[k+1]がゼロ以下の場合、予測区間k+1の補正された在庫量yp[k+1]がゼロとなる。
【0046】
利益の計算を単純化するため、商品は、各予測区間で在庫量までしか販売できないものとした場合、予測区間k+1での販売量V[k+1]は、以下の式(3)となる。
【0047】
V[k+1]=min(yp[k+1],D[k+1]) ・・・(3)
【0048】
式(3)では、在庫量yp[k+1]と、需要量D[k+1]のうち小さい方が販売量V[k+1]となる。
【0049】
1つの商品当たりの利益mとした場合、予測区間k+1での利益p[k+1]は、以下の式(4)となる。
【0050】
p[k+1]=m×V[k+1] ・・・(4)
【0051】
なお、利益を算出の手法は、上述の手法に限定されるものではなく、様々な手法を用いることができる。例えば、在庫の保管コストや、発注コストなどの様々なコストなどを様々なコストを考慮して利益を算出してもよい。また、在庫量は、リードタイムなどを考慮して算出してもよい。
【0052】
算出部43は、需要を組み合わせた経路毎に、発注計画の発注が行われた場合の各予測区間の利益を加算して、全ての経路についてそれぞれの利益を算出する。算出部43は、全ての経路の利益を互いに比較し、利益が同じになる経路について、経路の発生確率を足し合わせ、利益と当該利益の発生確率の対応を求める。算出部43は、利益の順に、利益の発生確率をソートして、利益順に、利益と当該利益の発生確率の対応付けた利益の確率分布を算出する。
【0053】
出力部44は、各種の出力を行う。例えば、出力部44は、算出された利益の確率分布と、受け付けた利益に関する条件と、に基づき、発注計画の何れかを出力する。例えば、出力部44は、利益の確率分布のそれぞれの利益について、当該利益以下の発生確率を足し合わせて、利益と、利益以下の累積の発生確率の対応関係を求める。
【0054】
図7は、利益と累積の発生確率の対応関係の一例を示す図である。
図7には、利益と累積の発生確率の対応関係のグラフが示されている。
図7のグラフの横軸は、利益である。
図7のグラフの縦軸は、累積の発生確率である。このグラフは、利益と当該利益が確保される確率の対応関係を示す。
【0055】
出力部44は、それぞれの発注計画について、当該発注計画での利益と、利益以下の累積の発生確率の対応関係を用いて、発注計画が利益に関する条件を満たすか否かを判定する。
【0056】
例えば、出力部44は、第1の発注モードが指定されている場合、発注計画について、当該発注計画での利益と当該利益が確保される確率の対応関係から、指定された確率で確保される利益を求める。
【0057】
図8は、確保される利益を求める方法を説明する図である。
図8には、
図7に示した利益と累積の発生確率の対応関係のグラフが示されている。例えば、
図3に示した発注予測画面50でラジオボタン51aが選択され、入力領域52に確率aが指定されたものとする。この場合、出力部44は、
図8に示すグラフにおいて、累積の発生確率が1−aに対応する利益bを求める。ここで、本実施例では、利益と累積の発生確率の対応関係のグラフは、利益について、当該利益以下の発生確率を足し合わせている。このため、グラフは、累積の発生確率の最大値が1となり、1との差分1−aに対応する利益bが、確率aで確保される利益を表すこととなる。
【0058】
一方、例えば、出力部44は、第2の発注モードが指定されている場合、発注計画について、当該発注計画での利益と当該利益が確保される確率の対応関係から、指定された利益が確保される確率を求める。
【0059】
図9は、利益が確保される確率を求める方法を説明する図である。
図9には、
図7に示した利益と累積の発生確率の対応関係のグラフが示されている。例えば、
図3に示した発注予測画面50でラジオボタン51bが選択され、入力領域53に利益cが指定されたものとする。この場合、出力部44は、
図9に示すグラフにおいて、利益cに対応する累積の発生確率dを求める。ここで、利益と累積の発生確率の対応関係のグラフは、利益について、当該利益以下の発生確率を足し合わせている。このため、発生確率dが小さいほど、利益cが確保される確率が高いこととなる。
【0060】
一方、例えば、出力部44は、第3の発注モードが指定されている場合、発注計画について、当該発注計画での利益と当該利益が確保される確率の対応関係から、指定された利益を確保可能な確率、および、指定された確率で確保される利益を求める。
【0061】
図10は、指定された利益を確保可能な確率、および、指定された確率で確保される利益を求める方法を説明する図である。
図10には、
図7に示した利益と累積の発生確率の対応関係のグラフが示されている。例えば、
図3に示した発注予測画面50でラジオボタン51cが選択され、入力領域54aに利益fが指定され、入力領域54bに確率eが指定され、入力領域54cに確率gが指定されたものとする。この場合、出力部44は、
図10に示すグラフにおいて、累積の発生確率が1−eに対応する利益hを求める。この利益hが利益fより大きい場合、確率eで利益f以上が確保可能なこととなる。また、出力部44は、
図10に示すグラフにおいて、累積の発生確率が1−gに対応する利益kを求める。利益kが確率gで確保される利益となる。
【0062】
一方、例えば、出力部44は、第4の発注モードが指定されている場合、発注計画について、当該発注計画での利益と当該利益が確保される確率の対応関係から、指定された利益を確保可能な確率、および、指定された利益が確保される確率を求める。
【0063】
図11は、指定された利益を確保可能な確率、および、指定された利益が確保される確率を求める方法を説明する図である。
図11には、
図7に示した利益と累積の発生確率の対応関係のグラフが示されている。例えば、
図3に示した発注予測画面50でラジオボタン51dが選択され、入力領域55aに利益mが指定され、入力領域55bに確率lが指定され、入力領域55cに利益nが指定されたものとする。この場合、出力部44は、
図11に示すグラフにおいて、累積の発生確率が1−lに対応する利益pを求める。この利益pが利益mより大きい場合、確率lで利益m以上が確保可能なこととなる。また、出力部44は、
図11に示すグラフにおいて、利益nに対応する累積の発生確率qを求める。この発生確率qが小さいほど、利益nが確保される確率が高いこととなる。
【0064】
出力部44は、発注計画を変更して、算出部43により利益の確率分布を算出させることを繰り返す。出力部44は、発注計画毎に、指定された制約条件を満たすか否かを判定する。例えば、出力部44は、制約条件として、
図3に示した発注予測画面50の入力領域56に最大発注量が指定された場合、発注計画の各予測区間の発注量が最大発注量以下であるか判定する。また、出力部44は、制約条件として、
図3に示した発注予測画面50の入力領域57に最大在庫量が指定された場合、発注計画の各予測区間の在庫量が最大在庫量以下であるか判定する。また、出力部44は、制約条件として、
図3に示した発注予測画面50の入力領域58に欠品の発生確率が指定された場合、発注計画での欠品の発生確率を算出し、発注計画での欠品の発生確率が指定された欠品の発生確率であるか判定する。この欠品の発生確率は、次のように算出する。例えば、出力部44は、発注計画の発注した場合に、
図6に示した各予測区間の需要を組み合わせた経路毎に、在庫がマイナスとなる欠品が発生するか判定し、全ての経路数に対する欠品が発生した経路の割合から欠品の発生確率を算出する。
【0065】
出力部44は、制約条件を満たす発注計画の算出された利益の確率分布から、変更した発注計画での利益と、利益以下の累積の発生確率の対応関係を求め、指定された発注モードに応じた利益に関する条件を満たすか否かを判定する。出力部44は、利益に関する条件を満たす発注計画がある場合、利益に関する条件を満たす発注計画のなかから確保される確率が最大の発注計画を出力する。例えば、出力部44は、最適化アルゴリズムを用いて、指定された制約条件を設定して、発注計画の各予測区間の発注量を指定された発注モードに応じて最適化することにより、指定された発注モードに応じた最適な発注計画を計算する。この最適化アルゴリズムとしては、GA(genetic algorithm),PSO(Particle Swarm Optimization)などが挙げられる。これにより、第1の発注モードでは、
図8に示すように、確保する利益を最大化する確率aが指定された場合、累積の発生確率1−aの利益bがより大きい発注計画が最適な発注計画として求まる。第2の発注モードでは、
図9に示すように、確保を望む利益cが指定された場合、利益cの発生確率dがより小さい発注計画が最適な発注計画として求まる。第3の発注モードでは、
図10に示すように、確保すべき利益fと、当該利益を確保すべき確率eと、利益を最大化する確率gが指定された場合、累積の発生確率1−eの利益hが利益fより大きく、累積の発生確率1−gの利益kがより大きい発注計画が最適な発注計画として求まる。第4の発注モードでは、
図11に示すように、確保すべき利益mと、当該利益を確保すべき確率lと、確保を望む利益nが指定された場合、累積の発生確率1−lの利益pが利益mより大きく、利益nの発生確率qがより小さい発注計画が最適な発注計画として求まる。
【0066】
出力部44は、利益に関する条件を満たす最適な発注計画が算出された場合、算出された最適な発注計画を出力する。例えば、出力部44は、発注予測画面50の発注量表示領域60に最適な発注計画の各予測区間の発注量を出力する。本実施例では、出力部44は、
図3に示すように、発注量表示領域60に本日、明日、明後日の3回分の予測区間の発注量を表示させる。また、出力部44は、
図3に示すように、出力した最適な発注計画での利益の確率分布を確率分布表示領域61に表示させる。
【0067】
一方、出力部44は、利益に関する条件を満たす発注計画が無い場合、条件を満たす発注計画が無い旨のエラーを出力する。なお、出力部44は、算出された最適な発注計画の発注データを受注システム11へ出力して、自動的な発注を行うようにしてもよい。
【0068】
[処理の流れ]
次に、発注量決定装置10が発注量を決定する発注量決定処理の流れについて説明する。
図12は、発注量決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。この発注量決定処理は、所定のタイミング、例えば、発注予測画面50で条件が指定されて実行ボタン59が選択されたタイミングで実行される。
【0069】
図12に示すように、収集部40は、発注対象の商品に関する各種の情報を収集して記憶部23に格納する(S10)。例えば、収集部40は、受注システム11から発注対象の商品の販売価格や、原価、現在の在庫量を収集し、収集した現在の在庫量や、販売価格から原価を減算した1つ当たりの利益を商品情報30に格納する。また、収集部40は、受注システム11から発注対象の商品の過去の需要量を収集し、発注対象の商品の過去の需要量を需要実績情報31に格納する。
【0070】
予測部42は、発注対象の期間の予測区間ごとの発注対象の商品の需要を予測し、予測される需要量毎に、当該需要量の需要の発生確率を需要予測情報32に格納する(S11)。
【0071】
算出部43は、需要予測情報32に記憶された商品の需要予測に基づき、予測区間ごとの商品の需要を組み合わせた経路毎の発生確率を算出し、発注計画の発注が行われた場合の利益の確率分布を算出する(S12)。この発注計画は、最初の処理の場合、初期の発注計画を用い、以降、変更された発注計画を用いる。
【0072】
出力部44は、利益の確率分布から利益と当該利益が確保される確率の対応関係を求め、当該対応関係を用いて、発注計画が利益に関する条件を満たすか否かを判定する(S13)。利益に関する条件を満たす場合(S13肯定)、出力部44は、最適な発注計画の候補として、発注計画を一時記憶し(S14)、後述のS15へ移行する。一方、利益に関する条件を満たさない場合(S13否定)、後述のS15へ移行する。
【0073】
出力部44は、所定の終了条件を満たしたか否かを判定する(S15)。例えば、出力部44は、GA,PSOなどの最適化アルゴリズムの終了条件を満たしたか否か判定する。この終了条件は、発注計画を変更した回数としてもよい。また、終了条件は、ある発注計画の発注量の周辺で、各予測区間の発注量をそれぞれ増減させた結果、何れも利益の低下したこと条件としてもよい。また、終了条件は、複数の条件を組み合わせてもよい。終了条件を満たした場合(S15肯定)、出力部44は、一時記憶した発注計画があるか否かを判定する(S16)。一時記憶した発注計画がある場合(S16肯定)、出力部44は、一時記憶した発注計画のなかから、確保される利益が最大の発注計画を出力し(S17)、処理を終了する。
【0074】
一方、一時記憶した発注計画がない場合(S16否定)、出力部44は、条件を満たす発注計画が無い旨のエラーを出力し(S18)、処理を終了する。
【0075】
終了条件を満たさない場合(S15否定)、出力部44は、発注計画を変更する(S19)。例えば、出力部44は、最適化アルゴリズムに従い、発注計画の発注量を変更する。その後、上述のS12へ移行し、変更された発注計画での利益の確率分布の算出を行う。
【0076】
[効果]
上述してきたように、本実施例に係る発注量決定装置10は、利益に関する条件を受け付ける。発注量決定装置10は、商品の需要予測に基づき、複数の期間それぞれの前記商品の発注量を示す複数の発注計画の其々について、利益の確率分布を算出する。発注量決定装置10は、算出した利益の確率分布と、受け付けた利益に関する条件と、に基づき、発注計画の何れかを出力する。このように、発注量決定装置10は、利益に関する条件を受け付けるため、発注者が発注戦略に応じた利益に関する条件を指定できる。発注量決定装置10は、受け付けた利益に関する条件に応じて、発注計画を出力する。これにより、発注量決定装置10は、発注者の指定条件に応じた発注量計画出力することができる。
【0077】
また、本実施例に係る発注量決定装置10は、複数の期間のそれぞれで予測される商品の需要を組み合わせる。発注量決定装置10は、組み合わせた各期間の需要の発生確率を乗算して複数の期間の需要の組み合わせ毎の発生確率を求める。発注量決定装置10は、発注計画毎に、各需要の組み合わせにおける利益と当該需要の組み合わせの発生確率から利益の確率分布を算出する。発注量決定装置10は、発注計画毎に、利益の確率分布から利益と当該利益が確保される確率の対応関係を求める。発注量決定装置10は、対応関係において利益に関する条件を満たす発注計画を出力する。このように、発注量決定装置10は、利益の確率分布を算出し、利益の確率分布から利益と当該利益が確保される確率の対応関係を求めことにより、利益の条件をより高い確率で満たす発注計画を求めることができる。
【0078】
また、本実施例に係る発注量決定装置10は、利益に関する条件として、確保する利益を最大化する確率の指定を受け付ける。発注量決定装置10は、発注計画毎に、指定された確率で確保される利益を求め、確保される利益が最大の発注計画を出力する。これにより、発注量決定装置10は、発注者の指定する確率で確保される利益が最大の発注計画を求めることができる。
【0079】
また、本実施例に係る発注量決定装置10は、利益に関する条件として、確保を望む利益の指定を受け付ける。発注量決定装置10は、発注計画毎に、指定された利益が確保される確率を求め、確保される確率が最大の発注計画を出力する。これにより、発注量決定装置10は、発注者の指定する利益が確保される確率が最大の発注計画を求めることができる。
【0080】
また、本実施例に係る発注量決定装置10は、利益に関する条件として、確保すべき利益と、当該利益を確保すべき第1確率と、利益を最大化する第2確率の指定を受け付ける。発注量決定装置10は、発注計画毎に、指定された利益を確保可能な確率、および、指定された第2確率で確保される利益を求める。発注量決定装置10は、確保可能な確率が第1確率を満たす発注計画のなかから、確保される利益が最大の発注計画を出力する。これにより、発注量決定装置10は、発注者の指定する利益と、当該利益を確保すべき第1確率とを満たしつつ、発注者の指定する第2確率で確保される利益が最大の発注計画を求めることができる。
【0081】
また、本実施例に係る発注量決定装置10は、利益に関する条件として、確保すべき第1利益と、当該利益を確保すべき確率と、確保を望む第2利益の指定を受け付ける。発注量決定装置10は、発注計画毎に、指定された第1利益を確保可能な確率、および、指定された第2利益が確保される確率を求める。発注量決定装置10は、確保可能な確率が指定された確率を満たす発注計画のなかから、確保される確率が最大の発注計画を出力する。これにより、発注量決定装置10は、発注者の指定する第1利益と、当該利益を確保すべき確率とを満たしつつ、発注者の指定する第2利益が確保される確率が最大の発注計画を求めることができる。