特許第6424662号(P6424662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6424662
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】ドアトリム
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20181112BHJP
【FI】
   B60R13/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-25238(P2015-25238)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147575(P2016-147575A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 鍾翔
(72)【発明者】
【氏名】塩田 尊
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−269576(JP,A)
【文献】 特開2013−159122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0346799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1の方向及び第2の方向に沿って延在する板状をなし、前記第1の方向に沿って屈曲するとともに前記第2の方向に沿って略ストレート状をなすようにして車室内側に膨出する膨出部を有するトリムボードと、
前記膨出部に倣う形で、前記トリムボードの車室内側の板面を覆う表皮材と、
前記第2の方向における前記膨出部の端部を塞ぐ壁状をなし、前記表皮材の端末を介在させつつ前記トリムボードに対して組み付けられた壁状部材と、を備え
前記膨出部は、前記第2の方向における前記端部において、前記第2の方向に向けて開口した開口部を有し、
前記壁状部材は、その外形が前記開口部の開口縁部に倣う形状とされ、
前記表皮材は、前記第2の方向における前記端末が前記開口縁部に至るまで延在し、
前記壁状部材が、前記開口部に前記第2の方向から組み付けられることで、前記壁状部材と前記開口部の開口縁部との間で、前記表皮材の前記端末を挟持しているドアトリム。
【請求項2】
前記壁状部材には、前記トリムボードに対して係止される係止部が複数設けられ、
複数の前記係止部は、前記膨出部における前記端部に沿って分散配置されている請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
前記トリムボードは、前記第1の方向を車両上下方向と一致させるとともに前記第2の方向を車両前後方向と一致させる姿勢で配されるとともに、車両上側に配設されるアッパーボードと、前記アッパーボードの車両下方に配設されるロアボードと、に分割構成され、
前記膨出部は、前記アッパーボードにおける少なくとも車両前側に形成され、
前記壁状部材は、前記アッパーボードの車両前方に位置して配されている請求項1または請求項2に記載のドアトリム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアトリムとして、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載のドアトリムでは、樹脂芯材が、その縁部に形成されたコーナー部と、コーナー部の一方側において樹脂芯材の縁部から立ち上がった第1の縦壁と、コーナー部の他方側において樹脂芯材の縁部から立ち上がった第2の縦壁とを備える立体形状をなし、表皮材が、樹脂芯材の第1の縦壁に対応して設けた第1の縦壁表皮部と、樹脂芯材の第2の縦壁に対応して設けた第2の縦壁表皮部と、を少なくとも備えて樹脂芯材の表面に貼り付けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−151592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、樹脂芯材(トリムボード)がその断面が閉じた形状をなす立体形状とされ、表皮材を樹脂芯材の立体形状に対応した形状に成形する場合には、表皮材を成形する上での制約から、樹脂芯材の形状が制限される場合がある。例えば、樹脂芯材に車室内側に膨出するような立体形状が設けられる場合には、表皮材に皺が発生したり、表皮材が予め当該立体形状に倣って真空成形される際において当該表皮材に破れやグロスが発生したりする虞があり、そのような事態を回避するために膨出部の膨出高さを制限せざるを得なかった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ドアトリムの意匠の自由度を向上して、意匠性に優れたドアトリムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のドアトリムは、互いに直交する第1の方向及び第2の方向に沿って延在する板状をなし、前記第1の方向に沿って屈曲するとともに前記第2の方向に沿って略ストレート状をなすようにして車室内側に膨出する膨出部を有するトリムボードと、前記膨出部に倣う形で、前記トリムボードの車室内側の板面を覆う表皮材と、前記第2の方向における前記膨出部の端部を塞ぐ壁状をなし、前記表皮材の端末を介在させつつ前記トリムボードに対して組み付けられた壁状部材と、を備える。
【0007】
本発明によれば、壁状部材が表皮材の端末を介在しつつトリムボードに対して組み付けられる構成であるから、膨出部の膨出高さを高くすることができ、意匠性に優れたドアトリムを実現することができる。具体的には、仮に、表皮材がトリムボードの車室内側の板面とともに膨出部の端側の壁面も覆う構成では、膨出部の膨出高さが高い場合に、表皮材が膨出部と壁面とで形成される立体形状に倣う形とされることで当該表皮材に皺が発生したり、表皮材が予め当該立体形状に倣って真空成形される際において当該表皮材に破れやグロスが発生したりする虞がある。一方、本発明では、表皮材が壁状部材の壁面を覆うことがないから、膨出部の膨出高さによらず、表皮材に皺が発生することを抑制することができるとともに、予め真空成形される際において表皮材に破れやグロスが発生することを抑制することができる。このため、表皮材を成形する上での制約から、トリムボードの膨出部の膨出高さが制限される事態の発生を抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記壁状部材には、前記トリムボードに対して係止される係止部が複数設けられ、複数の前記係止部は、前記膨出部における前記端部に沿って分散配置されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、壁状部材をトリムボードに対して係止することで、表皮材の端末を膨出部の端部に沿って押さえることができ、表皮材に皺やブカツキが生じることを抑制することができる。
【0010】
上記構成において、前記トリムボードは、前記第1の方向を車両上下方向と一致させるとともに前記第2の方向を車両前後方向と一致させる姿勢で配されるとともに、車両上側に配設されるアッパーボードと、前記アッパーボードの車両下方に配設されるロアボードと、に分割構成され、前記膨出部は、前記アッパーボードにおける少なくとも車両前側に形成され、前記壁状部材は、前記アッパーボードの車両前方に位置して配されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ドアトリムにおいて、搭乗者の目につきやすい車両上側かつ前側に膨出部を有する斬新な意匠が実現可能とされるとともに、表皮材で覆われない壁状部材については、搭乗者から視認され難いトリムボードの車両前方に配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドアトリムの意匠の自由度を向上して、意匠性に優れたドアトリムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るドアトリムを車室内側から示す平面図
図2図1のドアトリムを車室内側かつ車両前方から視た拡大斜視図
図3】ドアトリムの断面図(図2のIII−III線で切断した断面図)
図4】壁状部材を裏面側から視た平面図
図5】アッパーボードと表皮材と壁状部材とを示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図1ないし図5によって説明する。本実施形態では、ドアトリム10の一例としてサイドトリムを例示する。なお、図1における左側を車両前方とし、右側を車両後方として説明する。また、図2に示す、UP、IN、FRの矢印の方向は、それぞれ車両上方、車室内側、車両前方の方向を示す。
【0015】
ドアトリム10は、図示しないドアインナパネル(車両パネル)と対向配置され、ドアインナパネルに対してその車室内側に取り付けられることで車両用ドアを構成する。なお、この車両用ドアは、搭乗者が着座する座席側方に位置して、車両のサイドドアとして使用されるものである。
【0016】
ドアトリム10は、図1及び図2に示すように、主面10Aが、平面視にて、ドアインナパネルとほぼ同じ大きさの略方形状をなし、主面10Aの周囲4辺(周端)から、それぞれ裏面側(車室外側)に上面10B、側面10C、下面が立ち上がる構成とされている。ドアトリム10のうち、主面10A及び上面10Bは、特に搭乗者から視認されやすい意匠面とされる。また、ドアトリム10のうち、車両前方の側面10Cは、車両用ドアを閉めた状態では、ドア開口の開口縁部と対向する形で配されて搭乗者から視認されにくいものの、車両用ドアを開けた状態において、ドア開口の開口縁部との間に形成される隙間から視認される意匠面とされる。
【0017】
ドアトリム10は、図2に示すように、車両上下方向(特許請求の範囲に記載の第1の方向に相当)及び車両前後方向(特許請求の範囲に記載の第2の方向に相当)に沿って延びる板状をなすトリムボード11と、トリムボード11(後述するアッパーボード20)の表面(車室内側の板面)20Aを覆う表皮材40と、表皮材40の端末45を介在させつつトリムボード11(アッパーボード20)に対して組み付けられた壁状部材50と、を備えている。なお、図1及び図2において、アッパーボード20は表皮材40に隠れた状態でその外形が示されているため、アッパーボード20に係る構成については、点線の引出し線にてその符号を示している。
【0018】
トリムボード11は、例えば、合成樹脂材料、あるいは合成樹脂材料と天然繊維(ケナフなど)を混合した材料等を板状に成形することで構成されている。そして、トリムボード11には、図1に示すように、その一部が車室内側に向かって膨出する形でアームレスト13が形成されるとともに、インサイドハンドル用開口14、スピーカグリル15、ドアポケット16等が設けられている。
【0019】
トリムボード11は、図1に示すように、車両上側に配設されるアッパーボード20と、アッパーボード20の車両下方に配設されるロアボード18と、に分割構成されている。アッパーボード20は、ドアトリムアッパー17の主体をなし、表皮材40や壁状部材50とともにこれを構成する。アッパーボード20には、その車両下側に取付孔27Aを有するロアボード取付部27(図3参照)が設けられており、ロアボード18に設けられた取付突部(不図示)が取付孔27Aに係止されることで、アッパーボード20とロアボード18が組み付けられている。なお、ロアボード18は、ドアトリム10のうちドアトリムアッパー17を除く大部分を構成しており、メインボードとも呼ばれる部材である。
【0020】
トリムボード11は、図2および図5に示すように、車両上下方向に沿って屈曲するとともに車両前後方向に沿って略ストレート状をなすようにして車室内側に膨出する膨出部25を有している。言い換えれば、トリムボード11には、車両前後方向に沿って延びる吹き流し形状(半割管状)をなす膨出部25が形成されている。具体的には、トリムボード11を構成するアッパーボード20は、その車両前側の端部(膨出部25の端部25A)が車室内側に向かって突出する略V字状をなし(図5参照)、その突出高さが車両後方に向かうにつれて低くなるようにして形成されている。つまり、膨出部25は、アッパーボード20における少なくとも車両前側に形成されている。本願において、「略ストレート状」とは、後述する表皮材40を成形する上での制約を受けない程度に緩やかに屈曲する形を含む形状を指すものとする。また、「屈曲する」とは、2つの平面が交差する態様で折れ曲がること、及び曲面状に折れ曲がることを含むものとする。
【0021】
詳細には、アッパーボード20は、図2および図5に示すように、車両上下方向に沿って立設されるとともに、その表面20Aに表皮材40が積層されてドアトリム10の主面10Aを構成するボード側主面部21と、ボード側主面部21の上端から車室外側に向かって立ち上がるとともに、その表面20Aに表皮材40が積層されてドアトリム10の上面10Bを構成するボード側上面部23とを備えている。ボード側主面部21は、車両前側の部分が、車両上方に向かうにつれて車両内方に湾曲しつつ立ち上がる形状とされている。そして、膨出部25は、車両上下方向についてボード側主面部21とボード側上面部23とが交差する態様で(角部を形成する態様で)屈曲する形とされるとともに(図3参照)、車両前後方向についてボード側主面部及びボード側上面部の各々が略ストレート状に延びる形とされている。さらに、膨出部25は、車両前方においてボード側主面部21とボード側上面部23とで囲まれる立体形状が、車室内側に向かうにつれて断面積が小さくなる錘状をなすような形とされている。なお、膨出部25は、当該立体形状において、ボード側主面部21の前端とボード側上面部23の前端とが接続されない開いた形状とされている。上述したような構成により、ドアトリム10は、膨出部25の膨出高さが目を引く、斬新な意匠を呈する。
【0022】
アッパーボード20には、図5に示すように、膨出部25の車両前方、つまり、ボード側主面部21とボード側上面部23とが接続されずに開いている部分に、壁状部材50を取り付けるための壁状部材取付部31が設けられている。なお、壁状部材取付部31の各構成、及びアッパーボード20に対して壁状部材50を組み付ける態様については後に説明する。
【0023】
表皮材40は、図5に示すように、膨出部25に倣う形をなし、アッパーボード20のボード側主面部21及びボード側上面部23の表面20Aに対して貼り付けられている。具体的には、表皮材40は、ボード側主面部21と対応する表皮材側主面部41と、ボード側上面部23と対応する表皮材側上面部43と、を有し、表皮材側主面部41の上端から車室外側に立ち上がるようにして表皮材側上面部43が連なる構成とされている。すなわち、表皮材40は、膨出部25の形状に対応して、車両上下方向に沿って屈曲するとともに、車両前後方向に沿って略ストレート状をなすように形成されている。シート状の部材を第1の方向に沿って屈曲させるとともにこれと直交する第2の方向に沿ってストレート状に形成する際には、シート状の部材の一部を重ね合わせたり、複数のシート状部材を組み合わせたりして形成する必要がなく、また、その一部を伸縮変形させて形成する必要もない。このため、表皮材40は、膨出部25に倣う形で成形されることで、皺や凹凸を生じ難く、またその一部を伸縮変形させることで部分的な変質等を生じ難い構成とされている。
【0024】
表皮材40は、アッパーボード20に貼り付けられる前に真空成形されることで、予めアッパーボード20の立体形状に対応した形に成形(賦形)される。表皮材40は、その材質等に応じて真空成形可能な形状が制限され、特に、断面が閉じた形状をなす立体形状に成形される場合にはその閉じ方向と交わる方向における高さが制限される。本実施形態では、表皮材40が車両前後方向に沿って略ストレート状とされることで、その断面が開いた形状をなす立体形状とされており、断面が閉じた形状をなす立体形状とされる場合に比べて、膨出部25の膨出高さを高くすることが可能となっている。
【0025】
そして、成形された表皮材40の裏面に、予め接着剤が塗布されたアッパーボード20を載置するようにして、表皮材30がトリムボード11の表面に貼り付けられる。なお、接着剤は、アッパーボード20の表面20Aではなく、表皮材30の裏面に塗布しておいてもよい。
【0026】
表皮材40は、図2及び図3に示すように、表皮材側主面部41及び表皮材側上面部43の外周に位置する端末45が、ドアトリム10の車室内側に露出しないように処理されている。具体的には、表皮材40の端末45のうち車両下側に位置する部分45Aは、その車室内側にロアボード18の上端部が重なるようにして端末処理がなされる。また、表皮材40の端末45のうち車両上側(車室外側)に位置する部分45Bは、ボード側上面部23の裏面側に巻き込まれるようにして端末処理がなされる。そして、表皮材40のうち車両前側に位置する部分45Cは、その車室内側(車両前側)に壁状部材50が重なるようにして端末処理がなされる。なお、図2においては、端末45の部分45Cは、壁状部材50で覆われているため、その外形を2点破線で示している。
【0027】
続いて、壁状部材50及びアッパーボード20の壁状部材取付部31の各構成、及びアッパーボード20に対して壁状部材50を組み付ける態様について説明する。
【0028】
壁状部材50は、図2に示すように、車両前後方向における膨出部25の端部25Aを塞ぐ壁状をなす。そして、壁状部材50は、その車室内側の壁面(後述する本体部51の表面51A)がドアトリム10の側面10Cを構成している。このような壁状部材50を備えることにより、ドアトリム10は、膨出部25の膨出高さが高い場合であっても、膨出部25の端部25Aとインナパネルとの間の隙間から車両用ドアの内部が見えたり、当該隙間を介して車両用ドアの内部に異物等が侵入したりする事態の発生が抑制されている。
【0029】
壁状部材50は、図4に示すように、板状をなす本体部51と、本体部51の裏面(車室外側の面)51Bに設けられ、アッパーボード20に係止される係止部52と備えている。本体部51は、その外形が膨出部25の車両前側の端部25Aで囲まれる形状とされるとともに、その表面(車室内側の面)51Aがフラット状の意匠面とされている。また、壁状部材50は、本体部51の裏面51Bから裏側に突出する位置決め突起53と、本体部51の外周端部のうち車室内側に配される部分、つまり、膨出部25の端部25Aに沿って延びるリブ54と、を備えている。
【0030】
係止部52は、本体部51の裏面51Bから裏側に突出する係止爪とされている。そして、複数の係止部52が、本体部51の外周端部のうち車室内側に配される部分に沿って、つまり、膨出部25の端部25Aに沿って分散配置されている。具体的には、係止部52は、アッパーボード20のボード側上面部23の前端に隣接する係止部52Aと、ボード側上面部23とボード側主面部21との間の角部に隣接する係止部52Bと、ボード側主面部21の前端に隣接する係止部52C,52Dとが、この順に配列されている。また、係止部52は、本体部51の略中央に係止部52Eが配置されている。
【0031】
壁状部材取付部31は、図5に示すように、全体としては、本体部51と対向する対向面32を有する面状をなす。そして、壁状部材取付部31には、対向面32に開口する形で、その開口縁に係止部52に係止される被係止部33と、位置決め突起53と嵌合する位置決め孔34とが設けられている。
【0032】
アッパーボード20に対して壁状部材50を組み付ける際には、まず、膨出部25の端部25A(車両前方、当該アッパーボード20の側方)側から近付くような組み付け軌跡に沿って、壁状部材50を表皮材40が貼り付けられたアッパーボード20に対して近付ける。そして、位置決め突起53を位置決め孔34に挿入しつつ、アッパーボード20の壁状部材取付部31に対して壁状部材50の位置を合わせる。さらに、壁状部材50を組み付け軌跡に沿って移動して、表皮材40の端末45をアッパーボード20の裏面20B側に巻き込むようにしつつ、係止部52を被係止部33に対して係止する。すると、表皮材40の端末45(部分45C)は、壁状部材50の側面51Cとアッパーボード20の裏面20Bとで挟持されるとともに、壁状部材50のリブ54によって壁状部材取付部31の対向面32側に向けて押さえられるようにして、壁状部材50とアッパーボード20の壁状部材取付部31との間に介在する状態となる(図2参照)。本実施形態では、壁状部材50をアッパーボード20の側方から近付ける態様で組み付けるから、表皮材40の端末45に対してその外方に向けて引っ張るようなテンションを掛けることができ、また、仮に、壁状部材がアッパーボードの裏面側(車室外側)側から膨出部の端部にスライドするようにして組み付けられる場合に比べて、表皮材40の端末45によれ等が発生し難く、表皮材40に皺等が生じることを抑制することができる。以上の態様で、アッパーボード20に対する壁状部材50の組み付けが完了する。
【0033】
続いて、本実施形態のドアトリム10における効果を説明する。本実施形態のドアトリム10は、車両上下方向及び車両前後方向に沿って延在する板状をなし、車両上下方向に沿って屈曲するとともに車両前後方向に沿って略ストレート状をなすようにして車室内側に膨出する膨出部25を有するトリムボード11と、膨出部25に倣う形で、トリムボード11の表面20Aを覆う表皮材40と、車両前後方向における膨出部25の端部25Aを塞ぐ壁状をなし、表皮材40の端末45を介在させつつトリムボード11に対して組み付けられた壁状部材50と、を備えている。
【0034】
本実施形態によれば、壁状部材50が表皮材40の端末45を介在しつつトリムボード11に対して組み付けられる構成であるから、膨出部25の膨出高さを高くすることができ、意匠性に優れたドアトリム10を実現することができる。具体的には、仮に、表皮材がトリムボードの車室内側の板面とともに膨出部の端側の壁面も覆う構成では、膨出部の膨出高さが高い場合に、表皮材が膨出部と壁面とで形成される立体形状に倣う形とされることで当該表皮材に皺が発生したり、表皮材が予め当該立体形状に倣って真空成形される際において当該表皮材に破れやグロスが発生したりする虞がある。一方、本実施形態では、表皮材40が壁状部材50の壁面を覆うことがないから、膨出部25の膨出高さによらず、表皮材40に皺が発生することを抑制することができるとともに、予め真空成形される際において表皮材40に破れやグロスが発生することを抑制することができる。このため、表皮材40を成形する上での制約から、トリムボード11の膨出部25の膨出高さが制限される事態の発生を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、壁状部材50には、トリムボード11に対して係止される係止部52が複数設けられ、複数の係止部52は、膨出部25における端部25Aに沿って分散配置されている。このため、壁状部材50をトリムボード11に対して係止することで、表皮材40の端末45を膨出部25の端部25Aに沿って押さえることができ、表皮材40に皺やブカツキが生じることを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、トリムボード11は、車両上側に配設されるアッパーボード20と、アッパーボード20の車両下方に配設されるロアボード18と、に分割構成され、膨出部25は、アッパーボード20における少なくとも車両前側に形成され、壁状部材50は、アッパーボード20の車両前方に位置して配されている。このため、ドアトリム10において、搭乗者の目につきやすい車両上側かつ前側に膨出部25を有する斬新な意匠が実現可能とされるとともに、表皮材40で覆われない壁状部材50については、搭乗者から視認され難いトリムボード11の車両前方に配置することができる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)上記実施形態においては、ドアトリムとして車両側方に配されるサイドドアを構成するサイドトリムを例示したが、これに限定されない。ドアトリムとしては、例えば、バックドアを構成するものであってもよい。
【0039】
(2)上記実施形態においては、第1の方向が車両上下方向と一致するとともに、第2の方向が車両前後方向と一致するものを例示したが、第1の方向及び第2の方向はこれに限定されず、適宜設定可能である。
【0040】
(3)上記実施形態では、壁状部材がアッパーボードの前方に配置される構成を例示したが、壁状部材の配置はこれに限られない。例えば、壁状部材は、トリムボード(アッパートリム)の車両後方に配置されていてもよい。また、上述した他の実施形態(2)において、第2の方向が車両上下方向と一致する構成の場合には、壁状部材がトリムボードの車両下方又は上方に配置されていてもよい。
【0041】
(4)上記実施形態においては、トリムボードが、アッパーボードとロアボードに分割構成されるものを例示したが、トリムボードの構成はこれに限定されない。例えば、トリムボードは、分割構成されない一の板状部材で構成されていてもよい。また、トリムボードは、車両前側部分と後側部分とに分割構成されるものや、ロアボードが更に分割構成されて3部材以上の板状部材で構成されるものであってもよい。
【0042】
(5)上記実施形態以外にも、膨出部の形状及び構成は適宜設定可能である。例えば、膨出部は、断面視略U字状や断面視にて方形(台形状等)の空間を囲む3辺で構成されるのものであってもよい。また、膨出部は、必ずしも角部を有する構成でなくてもよいが、例えば、断面視にて鋭角状をなす角部を少なくとも一つ有する構成においては、本願発明の構成とすることが特に好適である。さらに、膨出部は、ボード側主面部におけるインストルメントパネルと対向する位置に、インストルメントパネルの外形に倣う形で、車室外側に向けて緩やかに後退する凹部等を有する構成であってもよい。また、膨出部は、必ずしも車室外側に向けて開放された構成である必要はなく、上述したような表面形状をなす中実状の構成であっても、本願発明を適用可能である。
【0043】
(6)上記実施形態以外にも、膨出部の位置は適宜設定可能である。例えば、膨出部は、第2の方向についてその突出高さが略同じ高さとされ、アッパーボードの車両前側から後側に亘る位置に形成されるものであってもよい。
【0044】
(7)上記実施形態以外にも、係止部の係止態様、配置、及び配設数は適宜設定可能である。例えば、係止部は取付ボスとされ、アッパーボードに対して熱カシメされるものであってもよい。なお、係止部が係止爪として構成されることで、取付ボスとされる場合に比べて、壁状部材をアッパーボードに対して組み付ける作業の作業性を向上することができる。
【0045】
(8)上記実施形態では、表皮材の貼り付け方法として、真空成形によって、表皮材の形状を成形した後、トリムボードに接着する方法を例示したが、これに限定されない。例えば、表皮材を、手作業などでトリムボードの表面形状に合わせて折り曲げつつ、トリムボードの表面に貼り付けていく方法であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…ドアトリム、11…トリムボード、20…アッパーバード、20A…表面(車室内側の板面)、25…膨出部、25A…端部、40…表皮材、45…端末、50…壁状部材、52…係止部
図1
図2
図3
図4
図5