(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水平方向に沿った第1方向へ向かって、当該第1方向とは反対の第2方向へ向かう付勢力に抗して液体消費装置に挿入されることにより、当該液体消費装置に装着される液体カートリッジであって、
当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上記第1方向を向く前面と、
上記前面に配置されており、上記液体消費装置に設けられた液体供給管が挿入され得る液体供給部と、
上記液体供給部に設けられており、液体供給口が形成されており、当該液体供給口に上記液体供給管が挿入されることによって当該液体供給管の外周面に弾性変形しつつ接触するシール部と、
当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上方向を向く上面と、
上記上面に配置されており、上記液体消費装置に設けられたロック部に上記第2方向へ向かって接触するロック面と、
当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上記第2方向を向く後面と、を具備しており、
当該液体カートリッジは、上記液体消費装置に挿入された状態において、上記ロック面が上記第2方向へ向かって上記ロック部に当接した第1姿勢と、上記ロック面が上記ロック部よりも下方向に位置する第2姿勢との間で、上記液体供給管が挿入された上記液体供給口の中心を回動中心として回動可能であり、
上記第1姿勢において、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に対して上記第2方向へ移動することが規制され、
上記第2姿勢において、少なくとも上記後面のうち上記回動中心より下方となる部分を含む第1部分が、上記後面のうち当該第1部分より上方となる第2部分より上記第1方向に位置し、
上記液体カートリッジにかかる重力の大きさを重力Gとし、
上記第1姿勢における上記液体カートリッジを上記第2方向へ付勢する付勢力の大きさを付勢力Fとし、
上記第2姿勢における上記液体カートリッジの重心から上記回動中心までの上記第1方向に沿った距離を距離Lとし、
上記第2姿勢における上記液体カートリッジの上記第2部分の下端の、上記回動中心からの上記第1方向と直交する上方向に沿った距離を高さHとしたとき、
式:(付勢力F)×(高さH)>(重力G)×(距離L)を満たす液体カートリッジ。
上記第2姿勢における上記液体カートリッジの上記第1部分は、上記第1方向と直交する第1仮想平面に対して角度αで交わる平面であって、当該平面の下端において当該平面と直交する第2仮想平面へ向かって上記回動中心から延びる垂線の長さを長さNとしたとき、
式:(付勢力F)×cosα×(長さN)>(重力G)×(距離L)を満たす請求項1に記載の液体カートリッジ。
水平方向に沿った第1方向へ向かって、当該第1方向とは反対の第2方向へ向かう付勢力に抗して液体消費装置に挿入されることにより、当該液体消費装置に装着される液体カートリッジであって、
当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上記第1方向を向く前面と、
上記前面に配置されており、上記液体消費装置に設けられた液体供給管が挿入され得る液体供給部と、
上記液体供給部に設けられており、液体供給口が形成されており、当該液体供給口に上記液体供給管が挿入されることによって当該液体供給管の外周面に弾性変形しつつ接触するシール部と、
当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上方向を向く上面と、
上記上面に配置されており、上記液体消費装置に設けられたロック部に上記第2方向へ向かって接触するロック面と、
当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上記第2方向を向く後面と、を具備しており、
当該液体カートリッジは、上記液体消費装置に挿入された状態において、上記ロック面が上記第2方向へ向かって上記ロック部に当接した第1姿勢と、上記ロック面が上記ロック部よりも下方向に位置する第2姿勢との間で、上記液体供給管が挿入された上記液体供給口の中心を回動中心として回動可能であり、
上記第1姿勢において、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に対して上記第2方向へ移動することが規制され、
上記第2姿勢において、少なくとも上記後面のうち上記回動中心より下方となる部分を含む第1部分が、上記後面のうち当該第1部分より上方となる第2部分より上記第1方向に位置し、
当該液体カートリッジが上記第1姿勢である状態において、上記ロック面の上端は、上記回動中心を中心とし、かつ上記ロック部を通過する仮想円弧より外方に位置しており、上記ロック面の下端は、当該仮想円弧の内方に位置する液体カートリッジ。
当該液体カートリッジが上記第2姿勢である状態において上記液体供給部より下方に配置されており、上記第2方向へ向かう付勢力を受ける付勢受け部を更に有する請求項1から4のいずれかに記載の液体カートリッジ。
上記上面に設けられており、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入されて上記第1姿勢及び第2姿勢である状態において上記液体消費装置に設けられた接点と電気的に接続され得る電気的インターフェースを更に具備しており、
当該液体カートリッジが上記第2姿勢である状態において、上記回動中心と上記電気的インターフェースとは、上記第1方向に沿った方向における位置が重複している請求項1から6のいずれかに記載の液体カートリッジ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造では、印字装置86内において、インク容器12が、嵌合機構62と嵌合機構76とが嵌合しない姿勢から嵌合する姿勢へ回動されないと、インク容器12がバネ98,108に抗して位置決めされない。したがって、ユーザは、インク容器12の後面をバネ98,108の付勢力の方向と反対方向(Z軸に沿う方向、水平方向)へ押し込む力と、嵌合機構62が嵌合機構76と嵌合できるように、バネ98,108の付勢力の方向と交わる方向(Y軸に沿う方向、下方向)へインク容器12を回動する力と、をインク容器12に積極的に付与する必要がある。
【0006】
バネ98,108は、インク容器12の前面の下部分を付勢しているので、仮に、ユーザが、インク容器12の後面の上部分を押し込むと、そのユーザの力によって、インク容器12は、バネ98,108から付勢を受けている箇所付近を回動中心として上方向へ回動しようとする。したがって、ユーザは、嵌合機構62と嵌合機構76とを嵌合させるために、インク容器12を押し込んだ後、積極的に下方向へ回動させる必要がある。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザが、液体カートリッジを液体消費装置に押し込む力の方向を積極的に変えることを意識することなく、液体カートリッジが液体消費装置に容易に位置決めされる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、水平方向に沿った第1方向へ向かって、当該第1方向とは反対の第2方向へ向かう付勢力に抗して液体消費装置に挿入されることにより、当該液体消費装置に装着される液体カートリッジに関する。液体カートリッジは、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上記第1方向を向く前面と、上記前面に配置されており、上記液体消費装置に設けられた液体供給管が挿入され得る液体供給部と、上記液体供給部に設けられており、液体供給口が形成されており、当該液体供給口に上記液体供給管が挿入されることによって当該液体供給管の外周面に弾性変形しつつ接触するシール部と、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上方向を向く上面と、上記上面に配置されており、上記液体消費装置に設けられたロック部に上記第2方向へ向かって接触するロック面と、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入される状態において上記第2方向を向く後面と、を具備する。当該液体カートリッジは、上記液体消費装置に挿入された状態において、上記ロック面が上記第2方向へ向かって上記ロック部に当接した第1姿勢と、上記ロック面が上記ロック部よりも下方向に位置する第2姿勢との間で、上記液体供給管が挿入された上記液体供給口の中心を回動中心として回動可能である。上記第1姿勢において、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に対して上記第2方向へ移動することが規制される。上記第2姿勢において、少なくとも上記後面のうち上記回動中心より下方となる部分を含む第1部分が、上記後面のうち当該第1部分より上方となる第2部分より上記第1方向に位置する。
【0009】
第1部分が、第2部分より第1方向に位置するので、液体カートリッジが液体消費装置に挿入されるときに、ユーザは、第2方向へ向かって手前となる第2部分を押しやすく、第1部分が押され難くなる。第2部分を押されることによって液体消費装置に挿入された液体カートリッジには、回動中心を中心として第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが生じる。第1姿勢へ回動された液体カートリッジのロック面が第2方向へ向かってロック部に当接することにより、液体カートリッジが液体消費装置に対して第2方向へ移動することが規制される、すなわち、位置決めされる。
【0010】
(2) 好ましくは、上記後面の第2部分に、押すことを促す文字又は記号が記されている。
【0011】
これにより、ユーザは第2部分を押すことを容易に理解できる。
【0012】
(3) 好ましくは、上記液体カートリッジにかかる重力の大きさを重力Gとし、上記第1姿勢における上記液体カートリッジを上記第2方向へ付勢する付勢力の大きさを付勢力Fとし、上記第2姿勢における上記液体カートリッジの重心から上記回動中心までの上記第1方向に沿った距離を距離Lとし、上記第2姿勢における上記液体カートリッジの上記第2部分の下端の、上記回動中心からの上記第1方向と直交する上方向に沿った距離を高さHとしたとき、
式:(付勢力F)×(高さH)>(重力G)×(距離L)を満たす。
【0013】
これにより、第2部分が押されることによって、液体カートリッジに生じる第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが、液体カートリッジにかかる重力により液体カートリッジに生ずる第1姿勢から第2姿勢へ回動するモーメントより大きくなる。
【0014】
(4) 好ましくは、上記第2姿勢における上記液体カートリッジの上記第1部分は、上記第1方向と直交する第1仮想平面に対して角度αで交わる平面であって、当該平面の下端において当該平面と直交する第2仮想平面へ向かって上記回動中心から延びる垂線の長さを長さNとしたとき、
式:(付勢力F)×cosα×(長さN)>(重力G)×(距離L)を満たす。
【0015】
仮にユーザが第1部分を押したとしても、第1部分が押されることによって、液体カートリッジに生じる第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが、液体カートリッジにかかる重力により液体カートリッジに生ずる第1姿勢から第2姿勢へ回動するモーメントより大きくなる。
【0016】
(5) 好ましくは、当該液体カートリッジが上記第2姿勢である状態において上記液体供給部より下方に配置されており、上記第2方向へ向かう付勢力を受ける付勢受け部を更に有する。
【0017】
これにより、液体カートリッジが液体消費装置に挿入されたときに、第2方向へ向かう付勢力によって、液体カートリッジが第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが更に加わる。
【0018】
(6) 好ましくは、上記付勢受け部は、上記液体消費装置に設けられた付勢部材からの付勢力を受けるものである。
【0019】
(7) 好ましくは、上記上面に設けられており、当該液体カートリッジが上記液体消費装置に挿入されて上記第1姿勢及び第2姿勢である状態において上記液体消費装置に設けられた接点と電気的に接続され得る電気的インターフェースを更に具備しており、当該液体カートリッジが上記第2姿勢である状態において、上記回動中心と上記電気的インターフェースとは、上記第1方向に沿った方向における位置が重複している。
【0020】
これにより、電気的インターフェースが接点から受ける力が、液体カートリッジが回動中心を中心として回動されるモーメントとして作用し難くなる。
【0021】
(8) 好ましくは、上記上面において上記ロック面より上記第2方向に配置された操作面を更に具備する。
【0022】
操作面がロック面より回動中心から離れているので、液体カートリッジを液体消費装置に対して位置決めされた状態から解除する際に、ユーザが操作面を操作して、第1姿勢の液体カートリッジを第2姿勢に回動させることが容易である。
【0023】
(9) 好ましくは、当該液体カートリッジが上記第1姿勢である状態において、上記操作面は、上方向かつ上記第2方向を向く。
【0024】
これにより、液体カートリッジを液体消費装置に対して位置決めされた状態から解除する際に、ユーザが操作面を操作すると、液体カートリッジには下方向及び第1方向へ力が作用する。第1方向へ作用する力によって、ロック面がロック部から離れる。下方向へ作用する力によって、液体カートリッジが第1姿勢から第2姿勢へ回動する。
【0025】
(10) 好ましくは、当該液体カートリッジが上記第1姿勢である状態において、上記ロック面の上端は、上記回動中心を中心とし、かつ上記ロック部を通過する仮想円弧より外方に位置しており、上記ロック面の下端は、当該仮想円弧の内方に位置する。
【0026】
これにより、第2方向へ向かう付勢力によって、ロック部がロック面の下端へ向かって摺動する。その結果、ロック部とロック面とが当接した状態において、液体カートリッジが第1姿勢へ回動される。
【0027】
(11) 本発明に係る液体カートリッジは、液体貯留室と、前面と、上記前面との間に上記液体貯留室を挟んで配置されており少なくとも上部分及び下部分を有する後面と、上面と、上記上面との間に上記液体貯留室を挟んで配置された下面と、上記前面に配置された液体供給部と、上記液体供給部に設けられており、弾性を有し、液体供給口が形成されたシール部と、上記上面に配置されたロック面と、上記上面に配置された操作面と、を具備する。上記ロック面と上記前面との距離は、上記ロック面と上記後面との距離より大きく、上記ロック面と上記前面との距離は、上記操作面と上記前面との距離より小さく、上記上部分と上記下面との距離は、上記下部分と上記下面との距離より大きく、上記上部分と上記前面との距離は、上記下部分と上記前面との距離より大きく、上記下部分は、上記液体供給口の中心軸と上記下面との間に位置する部分を含む。
【0028】
これにより、液体カートリッジが液体消費装置に確実に位置決めされる。また、液体カートリッジが液体消費装置に対して位置決めされた状態から確実に解除される。
【0029】
(12) 好ましくは、上記下部分は、上記下面に近づくほど上記前面に近い。
【0030】
(13) 好ましくは、上記下部分は平面である。
【0031】
(14) 好ましくは、上記上面は、上記操作面より、上記上面から上記下面へ向かう方向に配置されたサブ上面を有しており、上記操作面及び上記サブ上面は上記後面から上記前面へ向かう方向に沿った方向における位置が重複しており、且つ上記操作面と上記サブ上面との間には空間が形成されている。
【0032】
前述された空間により、ユーザが操作面を認識し易い。
【0033】
(15) 好ましくは、上記操作面は、上記上面から上記下面へ向かう方向から当該液体カートリッジを視たときに視認可能であり、かつ、上記後面から上記前面へ向かう方向から当該液体カートリッジを視たときに視認可能である。
【0034】
液体カートリッジを液体消費装置に位置決めされた状態から解除するに必要な力が軽減される。
【0035】
(16) 好ましくは、上記操作面の少なくとも一部は、上記ロック面より、上記下面から上記上面へ向かう方向に突出している。
【0036】
操作面の突出した一部により、ロック面が保護される。
【0037】
(17) 好ましくは、上記操作面に、複数の突起が形成されている。
【0038】
(18) 好ましくは、上記複数の突起の各々は、突条である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ユーザが、液体カートリッジを液体消費装置に押し込む力の方向を積極的に変えることを意識することなく、液体カートリッジが液体消費装置に容易に位置決めされる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される方向が挿入方向(第1方向の一例)51と定義される。また、挿入方向51と反対方向であって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される方向が脱抜方向(第2方向の一例)52と定義される。本実施形態において、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向であるが、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向でなくてもよい。また、重力方向が下方向53と定義され、重力方向と反対方向が上方向54と定義される。また、挿入方向51及び下方向53と直交する方向が、右方向55及び左方向56と定義される。より具体的には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の装着位置まで挿入された状態、つまりインクカートリッジ30が装着姿勢(第1姿勢の一例)にある状態において、インクカートリッジ30を脱抜方向52に視た場合において、右に延びる方向が右方向55と定義され、左に延びる方向が左方向56と定義される。さらに、挿入方向51を前方向57と呼び、脱抜方向52を後方向58と呼ぶこともある。
【0042】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10(液体消費装置の一例)は、記録ヘッド21と、インク供給装置100と、記録ヘッド21及びインク供給装置100を接続するインクチューブ20とを備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110(装着部の一例)が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30(液体カートリッジの一例)が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面に開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から脱抜方向52に抜き出される。
【0043】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインク(液体の一例)が貯留されている。カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とは、インクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。具体的には、記録ヘッド21に設けられたヘッド制御基板21Aから各ノズル29に対応して設けられたピエゾ素子29Aに選択的に駆動電圧が印加される。これにより、ノズル29から選択的にインクが吐出される。
【0044】
プリンタ10は、給紙トレイ15と、給紙ローラ23と、搬送ローラ対25と、プラテン26と、排出ローラ対27と、排紙トレイ16と、を備えている。給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ給送された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対27によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0045】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21にインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、
図1においては、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態が示されている。つまり、インクカートリッジ30が装着姿勢(第1姿勢)である状態が示されている。
【0046】
[カートリッジ装着部110]
図2及び
図7に示されるように、カートリッジ装着部110は、ケース101と、インクニードル102と、センサ103と、4つの接点106と、スライダ107と、ロック部145とを備えている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。また、インクニードル102、センサ103、4つの接点106、スライダ107、及びロック部145は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応して、4つずつ設けられている。
【0047】
[ケース101]
カートリッジ装着部110の筐体を形成するケース101は、ケース101の内部空間の天部を確定している天面と、底部を確定している底面と、天部と底部とをつないでいる終面と、終面と挿入方向51及び脱抜方向52に対向する位置に設けられ、ユーザがプリンタ10を使用するときに対面する面であるプリンタ10のユーザインタフェース面に露出し得る開口112とを有する箱形状である。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。インクカートリッジ30は、天面及び底面に設けられたガイド溝109に、インクカートリッジ30の上端部及び下端部が挿入されることによって、
図7において挿入方向51及び脱抜方向52へ案内される。ケース101には、内部空間を縦方向に長い4つの空間に仕切り分ける3つのプレート104が設けられている。このプレート104によって仕切り分けられた各空間それぞれにインクカートリッジ30が収容される。
【0048】
[インクニードル102]
図1及び
図7に示されるように、インクニードル(液体供給管の一例)102は、管状の樹脂からなり、ケース101の終面の下部に設けられている。インクニードル102は、ケース101の終面において、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34に対応する位置に配置されている。インクニードル102は、ケース101の終面から脱抜方向52へ突出している。
【0049】
インクニードル102の周囲には、円筒形状のガイド部105が設けられている。ガイド部105は、ケース101の終面から脱抜方向52へ突出し、その突出端が開口している。インクニードル102は、ガイド部105の中心に配置されている。ガイド部105は、インクカートリッジのインク供給部34が内方に進入する形状である。
【0050】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51へ挿入される過程において、つまりインクカートリッジ30が装着位置に移動する過程において、インクカートリッジ30のインク供給部34がガイド部105に進入する(
図10参照)。さらにインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入されると、インクニードル102が、インク供給部34に形成されたインク供給口71に挿入される。これにより、インク供給部34内のインク供給バルブ70が開かれる。その結果、インクニードル102とインク供給部34とは連結される。そして、インクカートリッジ30の内部に形成された貯留室36に貯留されたインクは、インク供給部34の内部に形成された筒壁73の内部空間及びインクニードル102の内部空間を通じてインクニードル102に接続されたインクチューブ20に流出される。なお、インクニードル102の先端は、平坦であってもよく、尖っていてもよい。
【0051】
[スライダ107]
ケース101の下方のガイド溝109の下面であって、終面に近い位置に挿入方向51(又は脱抜方向52)に沿って延びる開口111が形成されている。開口111には、スライダ107が設けられている。スライダ107は、開口111を通じてガイド溝109の下面の下方から上方へ突出している。スライダ107は、ケース101の下方に設けられたガイドレール113に嵌合されており、ガイドレール113に沿って開口111内を挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能である。スライダ107とケース101との間には、ヒキバネ114が張り渡されている。ヒキバネ114は、スライダ107を引っ張ることにより脱抜方向52へ付勢している。したがって、スライダ107は、外力が付与されていない状態では、ガイドレール113の脱抜方向52の端に位置する。その位置から、挿入方向51への外力が付与されると、スライダ107は、開口111内をガイドレール113に沿って挿入方向51へ移動可能である。
【0052】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51へ挿入される過程において、つまりインクカートリッジ30が装着位置に移動する過程において、インクカートリッジ30の第2突出部86がガイド溝109に沿って挿入方向51へ進むことにより、スライダ107と当接する(
図8参照)。さらにインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入されると、第2突出部86に押し込まれることによって、スライダ107がヒキバネ114の付勢力に抗して挿入方向51へ移動する。スライダ107により、インクカートリッジ30は、脱抜方向52への付勢力を受ける。スライダ107及びヒキバネ114は付勢部材の一例である。
【0053】
[ロック部145]
図2及び
図7に示されるように、ロック部145が、ケース101の天面付近且つ開口112付近において、ケース101の左方向56及び右方向55に延出されている。ロック部145は、左方向56及び右方向55に沿って延びる棒状の部材である。ロック部145は、例えば、金属の円柱である。ロック部145の左方向56及び右方向55の両端は、ケース101の左方向56及び右方向55の両端を確定している壁に固定されている。したがって、ロック部145は、ケース101に対して回動等の相対移動をしない。ロック部145は、4つのインクカートリッジ30が収納可能な4つの空間に渡って左方向56及び右方向55に延びている。インクカートリッジ30が収容される各空間において、ロック部145の周囲には空間が存在する。したがって、ロック部145に対して、上方向54へ向かって、また、脱抜方向52へ向かってアクセスすることができる。
【0054】
ロック部145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着位置に保持するためのものである。インクカートリッジ30は、カートリッジ装着部110に挿入されて、装着姿勢に回動されることにより、ロック部145に係合され、また、ロック部145は、スライダ107がインクカートリッジ30を脱抜方向52へ押す力、及びインクカートリッジ30のコイルバネ78がインクカートリッジ30を脱抜方向52へ押す力に抗してインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に保持する。
【0055】
図2及び
図7に示されるように、ケース101の天面における終面付近には4つの接点106が設けられている。各図には詳細に示されていないが、4つの接点106は、左方向56及び右方向55に離れて配置されている。4つの接点106の配置は、後述されるインクカートリッジ30の4つの電極65の配置(
図3,4参照)に対応している。各接点106は、導電性及び弾性を有する部材で構成されており、上方向54へ弾性的に変形可能である。4つの接点106は、ケース101に収容可能な4つのインクカートリッジ30に対応して、4組が設けられている。なお、接点106の個数及び電極65の個数は任意である。
【0056】
各接点106は、電気回路を介して演算装置に電気的に接続されている。演算装置は、例えばCPU,ROM,RAMなどからなるものであり、プリンタ10の制御部として構成されていてもよい。接点106と対応する電極65とが電気的に導通されることによって、電圧Vcが電極65に印加されたり、電極65がアースされたり、電極65に電力が供給されたりする。接点106と対応する電極65との電気的に導通により、インクカートリッジ30のICに格納されたデータにアクセス可能となる。電気回路からの出力は演算装置に入力される。
【0057】
[ロッド125]
図2及び
図7に示されるように、ロッド125が、ケース101の終面におけるインクニードル102より上方に設けられている。ロッド125は、ケース101の終面から脱抜方向52へ突出されている。ロッド125は、円筒形状の上半分の如く、脱抜方向52と直交する断面形状が逆向きU字形状であって、その最上部分から上方へ脱抜方向52へ延びるリブが突出された形状である。ロッド125は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、つまりインクカートリッジ30が装着位置に位置する状態において、インクカートリッジ30のIC基板64の下方の凹部96へ挿入される。
【0058】
[センサ103]
図2及び
図7に示されるように、ケース101の天面には、センサ103が設けられている。センサ103は、発光部及び受光部を備える。発光部は、受光部よりも右方向55または左方向56に、受光部と間隔を空けて設けられている。カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の被検知部62は、発光部及び受光部の間に配置される。換言すれば、発光部及び受光部は、カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の被検知部62を挟んで対向配置されている。
【0059】
センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて異なる検知信号を出力する。例えば、センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ことを条件として、ローレベル信号(「信号レベルが閾値レベル未満の信号」を指す。)を出力する。一方、センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ことを条件として、ハイレベル信号(「信号レベルが閾値レベル以上の信号」を指す。)を出力する。
【0060】
[インクカートリッジ30]
図3〜
図6に示されるインクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留する貯留室(液体貯留室の一例)36である。貯留室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している後部カバー31及び前部カバー32に収納された内部フレーム35によって形成されているが、後部カバー31及び前部カバー32などによって形成されていてもよい。
【0061】
図3〜
図6及び
図15に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、インクカートリッジ30が装着姿勢(第1姿勢)にあるときの姿勢である。すなわち、インクカートリッジ30は、後述されるように、前面140と、後面41と、上面39,141と、下面42,142とを備えるが、
図3〜
図6に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、後面41から前面140に向かう方向が挿入方向51及び前方向57に一致し、前面140から後面41に向かう方向が脱抜方向52に一致し、上面39,141から下面42,142に向かう方向が下方向53に一致し、下面42,142から上面39,141に向かう方向が上方向54に一致する姿勢である。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されるときに、前面140は挿入方向51及び前方向57を向き、後面41は脱抜方向52を向き、下面42,142は下方向53を向き、上面39,141は、上方向54を向く。
【0062】
図3〜
図6に示されるように、インクカートリッジ30は、略直方体形状の後部カバー31と、前面140を構成する前部カバー32と、貯留室36を区画する内部フレーム35とで構成される。後部カバー31に前部カバー32が組み付けられて、インクカートリッジ30の外形が構成されている。内部フレーム35は、組み付けられた後部カバー31及び前部カバー32の内部に収納される。インクカートリッジ30は、全体として、右方向55及び左方向56に沿った寸法が細く、下方向53及び上方向54、並びに前方向57及び後方向58それぞれに沿った寸法が、右方向55及び左方向56に沿った寸法よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されるときに挿入方向51(前方向57)を向く前部カバー32の面が前面140であり、脱抜方向52(後方向58)を向く後部カバー31の面が後面41である。すなわち、後面41は、前部カバー32の前面140との間に貯留室36を挟んで配置されている。
【0063】
[後部カバー31]
図3及び
図4に示されるように、後部カバー31は、右方向55及び左右方向51において互いに隔てて配置された側面37、38と、上方向54を向く上面39、下方向53を向く下面42とが後面41から挿入方向51に延設されて構成されており、前方向57へ向かって開口された箱形である。後部カバー31の内部には、開口を通じて内部フレーム35が挿入される。すなわち、後部カバー31は、内部フレーム35の後部を覆っている。また、下面42は、内部フレーム35が挿入された状態において、上面39との間に貯留室36を挟んで配置されている。
【0064】
後面41は、上部分41U(第2部分の一例)と下部分41L(第1部分の一例)とを有する。上部分41Uは、下部分41Lよりも上方向54に位置する。下部分41Lは、上部分41Uよりも下方向53に位置する。下部分41Lは、上部分41Uよりも前方向57に位置する。上部分41U及び下部分41Lは、いずれも平面であり、相互に直交せずに交差している。下部分41Lは、下面42に近づくほど前面140に近くなるように下方向53及び上方向54に対して傾斜している。
図15(B)に示されているように、上部分41Uには、ユーザが押すことを促す「PUSH」などの文字、矢印などの記号、指で押すことを示した図などが記されたシートが貼られている。
【0065】
図3及び
図4に示されるように、後部カバー31の上面39には、凸部43が設けられている。凸部43は、上面39における右方向55及び左方向56の中央において前方向57及び後方向58に沿って延びている。凸部43において後方向58を向く面がロック面151である。ロック面151は、下方向53及び上方向54に沿って延びている。ロック面151は、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態において、ロック部145と脱抜方向52へ向かって接触し得る面である。ロック面151がロック部145と脱抜方向52へ向かって接触することにより、インクカートリッジ30がスライダ107を介して付勢されるヒキバネ114の付勢力及びコイルバネ78の付勢力に抗してカートリッジ装着部110に保持される。
【0066】
ロック面151における右方向55の端及び左方向56の端とそれぞれ連続してロック面151と交差する補強面152,153がそれぞれ延びている。補強面152,153は、ロック面を含み、下方向53及び上方向54と右方向55及び左方向56に沿って拡がる仮想平面に対して前方向57へ向かって鋭角をなすように延びている。補強面152,153により、凸部43の強度が補強され、ロック面151が破損するおそれが軽減される。また、補強面152,153は、ロック面151より後方向58へ延びていないので、ロック部145と接触することがない。従って、補強面152,153があっても、仮にロック面151がロック部145と摺動する場合があっても、摺動抵抗が増加しない。
【0067】
凸部43においてロック面151より前方向57には、水平面154がロック面151と連続して設けられている。水平面154は、右方向55及び左方向56と前方向57及び後方向58に沿って拡がる面である。水平面154より前方向57には、傾斜面155が水平面154と連続して設けられている。傾斜面155は、上方向54且つ前方向57を向いている。したがって、傾斜面155は、インクカートリッジ30を下方向53に視たときに視認可能であり、且つ、インクカートリッジ30を後方向58に視たときに視認可能である。水平面154を介してロック面151と傾斜面155とが連続しているので、ロック面151と傾斜面154との境界が尖った山形状とならない。傾斜面155及び水平面154により、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、ロック部145が傾斜面155及び水平面154に当接しながらロック面151より後方向58まで円滑に案内される。
【0068】
傾斜面155における右方向55の端及び左方向56の端とそれぞれ連続して傾斜面151と交差する補強面156,157がそれぞれ延びている。補強面156,157は、傾斜面155を含み、右方向55及び左方向56に沿って拡がる仮想平面に対して下方向54へ向かって鋭角をなすように延びている。補強面156,157により凸部43の強度が補強され、傾斜面155が破損するおそれが軽減される。また、補強面156,157は、傾斜面155より上方向54へ延びていないので、ロック部145と接触することがない。従って、補強面156,157があっても、傾斜面155がロック部145に摺動するときの摺動抵抗が増加しない。
【0069】
後部カバー31の上面39において、ロック面151より後方向58には、操作部90が設けられている。後部カバー31の上面39の後端には、上面39のその他の部分より下方向53に位置するサブ上面91が形成されている。サブ上面91の上方において空間を隔てて操作部90が配置されている。操作部90は、上面39のその他の部分とサブ上面91との境界付近から上方向54へ凸部43より上方まで突出し、さらに後方向58且つ下方向53へ斜め下方向に折れ曲がった平板形状である。操作部90とサブ上面91との間には、操作部90及びサブ上面91に連続しており、且つ後方向58へ延びるリブ94が設けられている。
図15に示されるように、右方向55及び左方向56に沿ったリブ94の寸法は、右方向55及び左方向56に沿った操作部90の寸法及びサブ上面91の寸法のそれぞれより小さい。
【0070】
操作部90において、上方向54且つ後方向58を向く面が操作面92である。操作面92とサブ上面91とは、前方向57及び後方向58に沿った方向における位置が重複している。換言すれば、インクカートリッジ30を下方向53に視たとき、操作面92とサブ上面91とは重複した位置にある。操作面92には、複数の突起、例えば、右方向55及び左方向56に沿って延出する複数の突条93が、前方向57及び後方向58に間隔を隔てて形成されている。複数の突起としての突条93により、ユーザが操作面92を認識しやすくなり、また、ユーザが操作面92を指で操作するときに、指が操作面92に対して滑りにくくなる。
【0071】
図15に示されるように、操作面92は、インクカートリッジ30を下方向53に視たときに視認可能であり、且つ、インクカートリッジ30を前方向57に視たときに視認可能である。換言すれば、操作面92は、上面39から下面42へ向かう方向からインクカートリッジ30を視たときに視認可能であり、かつ、後面41から前面140へ向かう方向からインクカートリッジ30を視たときに視認可能である。操作面92は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態からインクカートリッジ30を取り出すために、ユーザが操作するための面である。なお、操作部90は、後部カバー31と一体に成型されるなどして、後部カバー31に対して固定されており、後部カバー31に対して回動などの相対移動をしないように構成されている。したがって、操作面92にユーザから加えられる力は、方向を変えずに後部カバー31にそのまま伝達される。また、本実施形態では、操作部90は、内部フレーム35や貯留室36に対しても回動などの相対移動をしないように構成されている。
【0072】
[前部カバー32]
図3及び
図4に示されるように、前部カバー32は、右方向55及び左方向56において互いに隔てて配置された側面143、144と、下方向53及び上方向54において互いに隔てて配置された上面141及び下面142とが前面140から後方向58に延設されて構成されており、後方向58へ向かって開口された箱形である。前部カバー32の内部には、開口を通じて内部フレーム35が挿入される。すなわち、前部カバー32は、内部フレーム35のうちの後部カバー31によって覆われていない前部を覆っている。
【0073】
前部カバー32及び後部カバー31が組み付けられた状態、すなわちインクカートリッジ30が組み立てられた状態において、前部カバー32の上面141は、後部カバー31の上面39と共にインクカートリッジ30の上面を構成する。前部カバー32の下面142、後部カバー31の下面42と共にインクカートリッジ30の下面を構成する。詳細には、インクカートリッジ30が装着姿勢(第1姿勢)にあるときに、前部カバー32の下面142は前方向57及び後方向58に沿って延びており、後部カバー31の下面42は、下方向53且つ後方向58を向いて傾斜している。前部カバー32の側面143、144は後部カバー31の側面37、38と共にインクカートリッジ30の側面を構成する。また、インクカートリッジ30が組み立てられた状態において、インクカートリッジ30の前面を構成する前部カバー32の前面140と、インクカートリッジ30の後面を構成する後部カバー31の後面41とは、前方向57及び後方向58において互いに隔てて配置されている。なお、インクカートリッジ30の前面、後面、上面、下面、側面は、必ずしも1つの平面をなしている必要はない。すなわち、第1姿勢のインクカートリッジ30を後方向58に視たときに視認し得る面であり、且つ、第1姿勢のインクカートリッジ30の前方向57及び後方向58の中心よりも前方向57に位置する面が前面である。第1姿勢のインクカートリッジ30を前方向57に視たときに視認し得る面であり、且つ、第1姿勢のインクカートリッジ30の前方向57及び後方向58の中心よりも後方向58に位置する面が後面である。第1姿勢のインクカートリッジ30を下方向53に視たときに視認し得る面であり、且つ、第1姿勢のインクカートリッジ30の下方向53及び上方向54の中心よりも上方向54に位置する面が上面である。第1姿勢のインクカートリッジ30を上方向54に視たときに視認し得る面であり、且つ、第1姿勢のインクカートリッジ30の下方向53及び上方向54の中心よりも下方向53に位置する面が下面である。側面に関しても同様である。
【0074】
前部カバー32の前面140の上部分には、後方向58へ凹む凹部96が形成されている。凹部96には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態においてロッド125が進入する。したがって、凹部96の前方向57及び後方向58に直交する断面は、ロッド125の断面形状に対応する形状である。
【0075】
前部カバー32の前面140の下部分には、後方向58へ貫通する孔97が形成されている。孔97は、前部カバー32に内部フレーム35が挿入された状態において、内部フレーム35のインク供給部34を外部へ露出させるための孔になる。したがって、孔97は、内部フレーム35のインク供給部34に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
【0076】
前部カバー32の前面140には、第1突出部85及び第2突出部86が設けられている。第1突出部85は、前部カバー32の上端において前向き57に突出している。凹部96は、第1突出部85の先端に設けられている。第1突出部85の先端は前面140の一部をなす。
【0077】
第2突出部86は、前部カバー32の前面140の下端、すなわちインク供給部34より下方において、前面140から前向き57に突出している。第2突出部86の下面には、前方向57及び下方向53に開口する凹部87が形成されている。凹部87の一部は、前部カバー32の下面142より下方向53へ突出している。第2突出部86は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、凹部87にスライダ125が進入して当接する。第2突出部86が付勢受け部の一例である。
【0078】
前部カバー32の上面141には、下方向53に貫通する孔98が形成されている。孔98は、前部カバー32に内部フレーム35が挿入された状態において、内部フレーム35の被検知部62を外部へ露出させるための孔になる。したがって、孔98は、内部フレーム35の被検知部62に対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
【0079】
前部カバー32の上面141であって、第1突出部85の上方、すなわちインク供給部34の上方には、IC基板64が設けられている。IC基板64は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される途中において右方向55及び左方向56に沿って4つが並ぶ接点106(
図2参照)と導通し、かつインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態においても接点106と導通する。
【0080】
IC基板64には、IC(各図には現れていない)と、4つの電極65が搭載されている。4つの電極65は、右方向55及び左方向56に沿って並んでいる。ICは、半導体集積回路であり、インクカートリッジ30に関する情報、例えば、ロット番号や製造年月日、インク色などの情報を示すデータが読み出し可能に格納されている。
【0081】
各電極65はICと電気的に接続されている。各電極65は、それぞれが前方向57及び後方向58に沿って延出されており、4つの電極65は、右方向55及び左方向56に離間されて配置されている。各電極65は、IC基板64の上面に電気的にアクセス可能に露出されている。各電極65は、電気的インタフェースの一例である。
【0082】
[内部フレーム35]
各図には現れていないが、内部フレーム35は、右方向55及び左方向56一対の端面が開放された環状に構成されている。内部フレーム35において、開放された一対の面がフィルム(不図示)によって封止されることにより、その内部にインクを貯留可能な貯留室36が形成されている。貯留室36を区画する前面40は、内部フレーム35が前部カバー32に挿入された際に、前部カバー32の前面140の裏面に対向する面であり、インク供給部34が設けられている。
【0083】
[インク供給部34]
図6に示されるように、インク供給部34は、前面140の下部分において、内部フレーム35の前面40から前方向57に突出されている。インク供給部34は、円筒形状の外形をなしており、前部カバー32の前面140に設けられた孔97を通じて外側へ突出されている。インク供給部34は、内部空間を有する円筒形状の筒壁73と、筒壁73に取り付けられたシール部材76及びキャップ79とを備えている。
【0084】
筒壁73は、貯留室36の内部から外部に亘って延設されている。筒壁73の脱抜方向52の端部は、貯留室36において開口している。筒壁73の挿入方向51の端部は、インクカートリッジ30の外部に開口している。これにより、筒壁73は、内部空間を介して貯留室36及びインクカートリッジ30の外部と連通している。つまり、インク供給部34は、貯留室36に貯留されたインクを筒壁73の内部空間を通じてインクカートリッジ30の外部に供給する。筒壁73の挿入方向51の端には、シール部材76及びキャップ79が取り付けられている。
【0085】
筒壁73の内部空間には、弁体77及びコイルバネ78が収容されている。弁体77及びコイルバネ78は、インク供給部34の状態を、筒壁73の内部空間を通じて貯留室36からインクカートリッジ30の外部にインクが流出される状態(
図11参照)と、筒壁73の内部空間からインクカートリッジ30の外部にインクが流出されない状態(
図6参照)との間で選択的に切り換えるためのものである。
【0086】
弁体77は、前方向57及び後方向58に沿って移動することにより、シール部材76の中央に貫通されたインク供給口71を開閉する。コイルバネ78は弁体77を前方向57へ付勢している。したがって、外力が付与されていない状態において、弁体77は、シール部材76のインク供給口71を閉じている。
【0087】
シール部材76は、筒壁73の先端に配置されている。シール部材76は、中央に貫通孔が形成された円盤形状の部材である。シール部材76は、例えば、ゴムやエラストマのような弾性材料から形成されている。シール部材76の中央が前方向57及び後方向58に貫通されて筒状の内周面が形成され、その内周面によりインク供給口71が形成されている。インク供給口71の内径は、インクニードル102の外径より若干小さい。シール部材76は、筒壁73の外側に嵌め込まれたキャップ79によって、筒壁73の先端に液密に当接している。
【0088】
弁体77がインク供給口71を閉じている状態において、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されると、インク供給口71にインクニードル102が進入する。インクニードル102には、シール部材76を弾性変形しつつ、その外周面がインク供給口71を画定する内周面に液密に接触する。インクニードル102の先端がシール部材76を通過して筒壁73の内部空間へ進入すると、弁体77に当接する。さらにインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入されることにより、インクニードル102が弁体77をコイルバネ78の付勢力に抗して後方向58へ移動させる。これにより、貯留室36に貯留されているインクが筒壁73の内部空間を通じてインクニードル102の先端部分へ流通することが可能となる。各図には現れていないが、インクニードル102の先端部分に形成された貫通孔を通じて、筒壁73の内部空間からインクニードル102の内部空間へインクが流通する。これにより、貯留室36に貯留されたインクが、筒壁73の内部空間、インクニードル102を通じて外部へ流出可能となる。
【0089】
なお、インク供給部34において、インク供給口71を閉じる弁体77は必ずしも設けられなくてもよい。例えば、インク供給口71がフィルムなどで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インクニードル102がフィルムを突き破ることによりインク供給口71を通じてインクニードル102の先端部分が筒壁73の内部空間へ進入する構成であってもよい。また、インク供給口71は、シール部材76の弾性により閉じており、インクニードル102が挿入されたときのみに、インクニードル102に押し拡げられるように形成されていてもよい。
【0090】
[被検知部62]
図6に示されるように、内部フレーム35は、上面から上方向54へ突出する被検知部62を有している。被検知部62は、内部空間が貯留室36と連続する空間を有する凸部であり、右方向55及び左方向56へ向かって光を透過する透光性を有する。被検知部62は、前部カバー32の孔98を通じて外部へ露出されている。
【0091】
図6に示されるように、内部フレーム35の貯留室36内には、被検知部材59が配置されている。被検知部材59は、右方向55及び左方向56に沿って延びる回動軸61に支持されており、回動軸61周りに回動可能である。
【0092】
被検知部材59は、フロート63を有している。フロート63は、貯留室36に貯留されたインクより比重が小さい。したがって、貯留室36内において、フロート63はインク中に存在する状態において浮力を生じさせる。貯留室36がインクでほぼ満たされている状態では、フロート63の浮力によって、被検知部材59は、
図6における反時計回りに回動する。被検知部材59の一部は、被検知部62内に進入しており、被検知部材59が被検知部62の前方向57の端を確定する壁に当接することによって、被検知部材59の姿勢が維持される。この状態において、被検知部材59は、被検知部62を右方向55又は左方向56に進行するセンサ103の光を遮断等する。
【0093】
より詳細には、被検知部材59によって、センサ103の発光部から出力された光が被検知部62の右面及び左面の一方に到達したときに、被検知部62の右面及び左面の他方の面から出て受光部に到達する光の強度が所定の強度未満、例えば、ゼロとなる。被検知部材59は、光が右方向55もしくは左方向56に進むのを完全に遮断してもよいし、光を部分的に吸収してもよいし、光の進行方向を曲げてもよいし、光を全反射させてもよい。
【0094】
貯留室36においてインクが減り、被検知部材59が被検知部62を進行する光を遮断等するときの姿勢におけるフロート63の位置より、インクの液面が下降すると、フロート63がインクの液面と共に下降する。これにより、被検知部材59は、
図6における時計回りに回動する。この時計回りの回動によって、被検知部62内に進入していた被検知部材59の一部は、センサ103の発光部から受光部への光路から外れる。これにより、センサ103の受光部に到達する光の強度が所定の強度以上となる。
【0095】
[インクカートリッジ30におけるロック面151、操作面92の配置]
図5に示されるように、インクカートリッジ30において、ロック面151と前面140(より詳細には、前面140のうちの最前面)との距離D1は、ロック面151と後面41(より詳細には、後面41の上部分41U)との距離D2より大きい。ロック面151と前面140(より詳細には、前面140のうちの最前面)との距離D1は、操作面92と前面140(より詳細には、前面140のうちの最前面)との距離D3より小さい。後面41の上部分41Uの下端と下面42との距離D4は、後面41の下部分41Lの下端と下面42との距離D5(本実施形態ではゼロである。)より大きい。後面41の上部分41Uの最前位置と前面140(より詳細には、前面140のうちの最前面)との距離D6は、後面41の下部分41Lの最前位置と前面140(より詳細には、前面140のうちの最前面)との距離D7より大きい。後面41の下部分41Lの少なくとも一部は、シール部材76のインク供給口71の中心軸72と下面42との間に位置する。インク供給口71の中心軸72は、インク供給口71の中心を通り、且つ、インク供給口71がシール部材76を貫通する方向に沿って延びる軸である。
【0096】
[インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される動作]
以下、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程が説明される。
【0097】
図7に示されるように、カートリッジ装着部110に装着される前のインクカートリッジ30において、弁体77は、シール部材76のインク供給口71を閉じている。これにより、貯留室36からインクカートリッジ30の外部へのインクの流通は遮断されている。
【0098】
図7に示されるように、カートリッジ装着部110の開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿入される。後部カバー31の後面41の上部分41Uは下部分41Lよりも脱抜方向52に位置している、すなわち、ユーザの近くに位置しているので、ユーザは、上部分41Uを押しつつインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110に対して挿入向き51へ挿入する。また、前述されたように、上部分41Uには、「PUSH」などの文字、矢印などの記号、指で押すことを示した図などが記されたシートが貼られていることにより、ユーザは上部分41Uを押すように促される。インクカートリッジ30の下部分、すなわち前部カバー32及び後部カバー31のそれぞれ下部分は、ケース101の下方のガイド溝109に進入した状態となる。前部カバー32の下部分には、第2突出部86が設けられており、前部カバー32の下面142から下方向53へ突出する凹部87の一部がガイド溝109の下面と当接することにより、前部カバー32の前方部分が持ち上げられるようにして下面142が挿入方向51に対して傾斜する。つまり、ガイド溝109の下面には、前部カバー32の凹部87の一部と、下面142の後端付近の一部とが当接している。
【0099】
図8に示されるように、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30が挿入方向51へ更に挿入されると、前部カバー31の第2突出部86の凹部87がスライダ107と当接する。このとき、ユーザは、インクカートリッジ30の後部カバー31の後面41の上部分41Uを押している。これにより、第2突出部86の凹部87とスライド107との当接箇所を中心として、
図8における反時計回りにインクカートリッジ30が回動する。この回動によって、前部カバー32の下面142が下方のガイド溝109の下面から離れ、他方、インクカートリッジ30の上部分が上方のガイド溝109に当接する。
【0100】
図9に示されるように、スライダ107を脱抜方向52へ付勢するヒキバネ114の付勢力に抗して、インクカートリッジ30が挿入方向51へ更に挿入されると、インク供給部34のキャップ79がガイド部105に進入し始める。また、前部カバー32の凹部96がロッド125と対向して、ロッド125が凹部96に進入し始める。
【0101】
図10に示されるように、スライダ107を脱抜方向52へ付勢するヒキバネ114の付勢力に抗して、インクカートリッジ30が挿入方向51へ更に挿入されると、インク供給部34のキャップ79がガイド部105に進入し、かつインクニードル102がインク供給口71へ進入して、弁体77をコイルバネ78の付勢力に抗してシール部材76から離間させる。インクカートリッジ30には、スライダ107を介して付与されるヒキバネ114の付勢力に加え、コイルバネ78の付勢力が脱抜方向52へ付与される。
【0102】
また、ロッド125が前部カバー32の凹部96に進入して、前部カバー32を下方から支持する。接点106の下方にIC基板64が到達することにより、接点106を上方へ弾性変形させつつ各電極65が対応する接点106と電気的に接続される。このとき、IC基板64は接点106の弾性変形によって下方向53へ付勢されるが、ロッド125が前部カバー32を下方から支持していることにより、IC基板64の接点106に対する位置決めが正確になされる。なお、ロッド125は必ずしも前部カバー32を下方から支持しなくてもよい。
【0103】
また、後部カバー31の凸部43がロック部145へ到達し、傾斜面155がロック部145に対して摺動する。インクカートリッジ30には、後面41の上部分41Uをユーザが挿入方向51へ押すことにより、
図10における反時計回りに回転モーメントが加わっているが、傾斜面155とロック部145との当接により、この回転モーメントに反して、インクカートリッジ30は、インクニードル102が挿入されたシール部材76のインク供給口71の中心を回動中心として、換言すれば、インクニードル102における、インク供給口71を画定するシール部材76の内周面が接触している部分の中心を回動中心として
図10における時計回りに回動する。
図10に示されるインクカートリッジ30の姿勢が、第2姿勢と称される。
【0104】
インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときに、凸部43のロック面151は、ロック部145より下方に位置している。また、インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときに、前述された回動中心とIC基板64とは、挿入方向51に沿った方向における位置が重複している。したがって、接点106がIC基板64へ付与する付勢力は、インクカートリッジ30を回動するモーメントとして作用しないか、或いは極めて微小なモーメントでしかない。また、インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときに、後部カバー32の下面42は、下方のガイド溝109の下面に当接するか又は近づき、本実施形態では、後部カバー32の下面42は水平面となる。また、インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときに、後部カバー31の後面41の下部分41Lは、上部分41Uより挿入方向51に位置する。
【0105】
図11に示されるように、スライダ107を脱抜方向52へ付勢するヒキバネ114の付勢力及びコイルバネ78の付勢力に抗して、インクカートリッジ30が挿入方向51へ更に挿入されると、後部カバー31の凸部43の傾斜面155及び水平面154がロック部145よりケース101の終面に近い位置となる。インクカートリッジ30には、後面41の上部分41Uをユーザが挿入方向51へ押すことにより、
図11における反時計回りに回転モーメントが加わっているので、傾斜面155及び水平面154がロック部145と当接しなくなることにより、インクカートリッジ30は、インクニードル102が挿入されたシール部材76のインク供給口71の中心を回動中心として
図11における反時計回りに回動する。
図11に示されるインクカートリッジ30の姿勢が、第1姿勢と称される。
【0106】
インクカートリッジ30が第1姿勢にあるときに、ロック面151は、脱抜方向52へ向かってロック部145と向かい合う。また、インクカートリッジ30が第2姿勢から第1姿勢へ回動すると、後部カバー31がロック部145に当接する。この当接の衝撃によって、ユーザはインクカートリッジ30を挿入方向51へ押し込むことが完了したことを認識する。ユーザがインクカートリッジ30を挿入方向51へ押し込むことを止めると、インクカートリッジ30は、スライダを介してヒキバネ114から付勢される付勢力及びコイルバネ78の付勢力によって脱抜方向52へ移動する。インクカートリッジ30が第1姿勢にあるときに、ロック面151は脱抜方向52へ向かってロック部145と向かい合っているので、インクカートリッジ30が脱抜方向52へ若干移動すると、ロック面151がロック部145と当接する。これにより、インクカートリッジ30は第1姿勢に維持されて、脱抜方向52へ移動することが規制される。すなわち、インクカートリッジ30はカートリッジ装着部110内に位置決めされて装着が完了した状態となる。
【0107】
以下、カートリッジ装着部110においてインクカートリッジ30が第2姿勢から第1姿勢へ回動する動作がより詳細に説明される。
【0108】
図12に示されるように、インクカートリッジ30にかかる重力の大きさを重力Gとする。また、第1姿勢におけるインクカートリッジ30を脱抜方向52へ付勢するヒキバネ114及びコイルバネ78の付勢力の大きさを付勢力Fとする。また、第2姿勢におけるインクカートリッジ30の重心Mから回動中心Oまでの挿入方向51に沿った距離を距離Lとする。また、第2姿勢におけるインクカートリッジ30における後部カバー31の後面41の上部分41Uの下端の、回動中心Oからの挿入方向51と直交する上方向54に沿った距離を高さHとする。このとき、
式:(付勢力F)×(高さH)>(重力G)×(距離L)が満たされる。
上記式において、重力Gと距離Lの積は、
図12においてインクカートリッジ30を時計回りに回動するモーメントの大きさに相当する。
【0109】
ユーザが、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30を挿入方向51へ挿入するには、少なくとも付勢力Fより大きな力でインクカートリッジ30を挿入方向51へ押すことが必要である。つまり、ユーザがインクカートリッジ30を挿入方向51へ押す力を力Uとすると、(付勢力F)<(力U)となる。また、ユーザが、インクカートリッジ30を付勢力Fに抗して挿入方向51の一定の位置に保持するとき、付勢力Fと力Uとは等しい。したがって、ユーザが、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30を挿入するときには、インクカートリッジ30には、少なくとも付勢力Fと同等の力Uが挿入方向51へ付与されている。また、ユーザは、インクカートリッジ30において後部カバー31の後面41の上部分41Uを、すなわち上部分41Uの下端より上方を押している。ここで、インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときの後面41の上部分41Uが、挿入方向51と略直交しているとする。そうすると、インクカートリッジ30には、少なくとも付勢力Fと高さHとの積に相当する大きさを有する、
図12における反時計回りのモーメントが生じる。上記式が満たされているので、ユーザが、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30を挿入方向51へ挿入する過程において、インクカートリッジ30には、
図12における反時計回りのモーメントが生じている。また、インクカートリッジ30は、第2突出部86においてスライダ107を介してヒキバネ114の付勢力を受けているので、すなわち回動中心Oより下方においてヒキバネ114の付勢力を受けているので、ヒキバネ114の付勢力も、インクカートリッジ30を反時計回りに回動させるモーメントとして作用する。なお、仮にヒキバネ114の付勢力がなかったとしても、カートリッジ装着部110への挿入の際に、インクカートリッジ30に反時計回りのモーメントが生じることは言うまでもない。
【0110】
したがって、前述されたように、凸部43の傾斜面155がロック部145に対して摺動し終えて傾斜面155及び水平面154がロック部145から挿入方向51へ離れると、インクカートリッジ30は、
図12における反時計回りのモーメントによって、第2姿勢から第1姿勢へ姿勢変化することとなる。
【0111】
また、
図14に示されるように、インクカートリッジ30が第1姿勢であるとき、ロック面151の上端は、回動中心Oを中心とし、かつロック部145を通過する仮想円弧Cより外方に位置しており、ロック面151の下端は、仮想円弧Cの内方に位置する。また、インクカートリッジ30が第1姿勢であるとき、ロック面151の下端は、ロック面151の上端より仮想円弧Cのより内方に、すなわち回動中心Oに近い位置にある。したがって、脱抜方向52への付勢力によって、ロック部145がロック面151の下端へ向かって摺動する。その結果、ロック部145とロック面151とが当接した状態において、インクカートリッジ30が第1姿勢へ回動される。
【0112】
一方、仮に、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110へ挿入する過程において、ユーザが、後部カバー31の後面41の上部分41Uを押さずに下部分41Lを押したとする。
図13に示されるように、第2姿勢におけるインクカートリッジ30の下部分41Lは、挿入方向51と直交する第1仮想平面P1(
図13の紙面と直交している。)に対して角度αで交わる。また、下部分41Lの下端において下部分41Lと直交する第2仮想平面P2(
図13の紙面と直交している。)へ向かって回動中心Oから延びる垂線の長さを長さNとする。このとき、
式:(付勢力F)×cosα×(長さN)>(重力G)×(距離L)が満たされる。
前述と同様に、上記式において、重力Gと距離Lの積は、
図12においてインクカートリッジ30を時計回りに回動するモーメントの大きさに相当する。
【0113】
ユーザが、カートリッジ装着部110へインクカートリッジ30を挿入するときに、インクカートリッジ30の下部分41Lを、少なくとも付勢力Fと同等の力Uで挿入方向51へ押すと、インクカートリッジ30には、少なくとも付勢力Fのcosα成分と長さNとの積に相当する大きさを有する、
図13における反時計回りのモーメントが生じる。上記式が満たされているので、ユーザが、インクカートリッジ30の下部分41Lを挿入方向51へ押しても、インクカートリッジ30には、
図13における反時計回りのモーメントが生じる。
【0114】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜されるときには、ユーザは、操作面92を下方へ押す。
図15に示されるように、インクカートリッジ30が第1姿勢である状態において、操作面92は、下方向53へインクカートリッジ30を視たときに視認可能であり、かつ、前方向57(挿入方向51)へインクカートリッジ30を視たときに視認可能である。インクカートリッジ30が第1姿勢である状態において、操作面92は、上方向54かつ脱抜方向52を向いているので、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して位置決めされた状態から解除する際に、ユーザが操作面92を操作すると、インクカートリッジ30には下方向53及び挿入方向51へ力が作用する。挿入方向51へ作用する力によって、ロック面151がロック部145から離れる。下方向53へ作用する力によって、インクカートリッジ30が第1姿勢から第2姿勢へ回動する。したがって、ロック面151がロック部145と摺動しつつ、インクカートリッジ30が第1姿勢から第2姿勢へ回動する場合に比べて、インクカートリッジ30を第1姿勢から第2姿勢へ回動させるためにユーザが操作面92に付与する力が軽減される。
【0115】
インクカートリッジ30が第1姿勢から第2姿勢に回動することにより、ロック面151がロック部145よりも下方に位置する。そうすると、ヒキバネ114及びコイルバネ78の付勢力によって、インクカートリッジ30はカートリッジ装着部110を脱抜方向52へ移動する。インクカートリッジ30がスライダ107から離れると、インクカートリッジ30には脱抜方向52への付勢力が付与されないので、インクカートリッジ30に作用する慣性力が消失すると、インクカートリッジ30は脱抜方向52への移動を終える。そのとき、少なくともインクカートリッジ30の後部カバー31は、カートリッジ装着部110のケース101の開口102より外方に位置しているので、ユーザは後部カバー31を挟み持ってインクカートリッジ30をカートリッジ装着部110から取り出すことができる。
【0116】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係るインクカートリッジ30によれば、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されるときに、後部カバー31の後面41の下部分41Lが上部分41Uより挿入方向51に位置するので、ユーザは、脱抜方向52へ向かって手前となる上部分41Uを押しやすく、下部分41Lが押され難くなる。上部分41Uが押されることによってカートリッジ装着部110に挿入されたインクカートリッジ30からには、回動中心Oを中心として第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが生じる。第1姿勢へ回動されたインクカートリッジ30のロック面151が脱抜方向52へ向かってロック部145に当接することにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して脱抜方向52へ移動することが規制される、すなわち、位置決めされる。これにより、ユーザが、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110に押し込む力の方向を積極的に変えることを意識することなく、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に容易に位置決めされる。
【0117】
また、後面41の上部分41Uに、押すことを促す文字又は記号が記されているので、ユーザは上部分41Uを押すことを容易に理解できる。
【0118】
また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されるときに、
式:(付勢力F)×(高さH)>(重力G)×(距離L)が満たされているので、後部カバー31の後面41の上部分41Uが押されることによって、インクカートリッジ30に生じる第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが、インクカートリッジ30にかかる重力Gによりインクカートリッジ30に生ずる第1姿勢から第2姿勢へ回動するモーメントより大きくなる。
【0119】
また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されるときに、
式:(付勢力F)×cosα×(長さN)>(重力G)×(距離L)が満たされているので、仮にユーザが後部カバー31の後面41の下部分41Lを押したとしても、下部分41Lが押されることによって、インクカートリッジ30に生じる第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが、インクカートリッジ30にかかる重力Gによりインクカートリッジ30に生ずる第1姿勢から第2姿勢へ回動するモーメントより大きくなる。
【0120】
また、第2突出部86の凹部87が、インクカートリッジ30が第2姿勢である状態においてインク供給部34より下方に配置されており、凹部87がスライダ107を通じてヒキバネ114の付勢力を受けるので、インクカートリッジ30が第2姿勢から第1姿勢へ回動するモーメントが更に加わる。
【0121】
また、インクカートリッジ30が第2姿勢である状態において、回動中心OとIC基板64とは、挿入方向51に沿った方向における位置が重複しているので、IC基板64が接点106から受ける力が、インクカートリッジ30が回動中心Oを中心として回動されるモーメントとして作用し難くなる。
【0122】
また、インクカートリッジ30において、操作面92がロック面151より回動中心Oから離れているので、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して位置決めされた状態から解除する際に、ユーザが操作面92を操作して、第1姿勢のインクカートリッジ30を第2姿勢に回動させることが容易である。
【0123】
また、インクカートリッジ30が第1姿勢である状態において、操作面92は、上方向54かつ脱抜方向52を向いているので、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して位置決めされた状態から解除する際に、ユーザが操作面92を操作すると、インクカートリッジ30には下方向53及び挿入方向51へ力が作用する。挿入方向51へ作用する力によって、ロック面151がロック部145から離れる。下方向53へ作用する力によって、インクカートリッジ30が第1姿勢から第2姿勢へ回動する。ロック面151がロック部145と摺動しつつ、インクカートリッジ30が第1姿勢から第2姿勢へ回動される場合に比べて、インクカートリッジ30を第1姿勢から第2姿勢へ回動させるためにユーザが操作面92に付与する力が軽減される。
【0124】
また、インクカートリッジ30が第1姿勢である状態において、ロック面151の上端は、回動中心Oを中心とし、かつロック部145を通過する仮想円弧Cより外方に位置しており、ロック面151の下端は、仮想円弧Cの内方に位置するので、脱抜方向52へ向かう付勢力によって、ロック部145がロック面151の下端へ向かって摺動する。その結果、ロック部145とロック面151とが当接した状態において、インクカートリッジ30が第1姿勢へ回動される。
【0125】
また、後部カバー31において、操作面92及びサブ上面91は前方向57及び後方向58に沿った方向における位置が重複しており、且つ操作面92とサブ上面91との間には空間が形成されているので、ユーザが操作面92を認識し易い。
【0126】
また、操作面92の一部は、ロック面151より、上方向54へ突出しているので、インクカートリッジ30を上面39,141を下方向53に向けて落下させたとしても、操作面92の突出した一部により、ロック面151が保護される。
【0127】
[変形例]
前述された実施形態では、後部カバー31の後面41において、上部分41Uと下部分41Lとが連続しているが、上部分41U及び下部分41Lは必ずしも連続している必要はない。例えば、上部分41Uと下部分41Lとの間に前方向57に沿った成分を有する面が設けられていてもよい。また、上部分41U及び下部分41Lは、必ずしも平面である必要なく、例えば、曲面や球面などであってもよい。
【0128】
また、前述された実施形態では、インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときに、後面41の上部分41Uが挿入方向51と略直交しているが、上部分41Uが挿入方向51と直交していなくてもよい。また、後面41の上部分41Uと下部分41Lとは、必ずしも2つの異なる面として把握される必要はなく、例えば、1つの平面や曲面として構成されてもよい。なお、前述された実施形態のように、インクカートリッジ30が第2姿勢にあるときに、後面41の上部分41Uが挿入方向51と略直交していることにより、ユーザがインクカートリッジ30を付勢力Fに抗して挿入方向51へ押す力が小さくて済む。また、後部カバー31の内部空間の容積を大きくできるので、貯留室36の容積を大きくできる。また、後面41の上部分41Uと下部分41Lとが2つの異なる面として構成されていることにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されるときに、ユーザが上部分41Uを優先して押すことが期待できる。
【0129】
また、前述された実施形態では、カートリッジ装着部110にスライダ107及びヒキバネ114が設けられているが、これらは任意の構成である。例えば、カートリッジ装着部110にスライダ107及びヒキバネ114が設けられておらず、インク供給部34のコイルバネ78のみによって、カートリッジ装着部110に挿入されたインクカートリッジ30が脱抜方向52へ付勢されてもよい。
【0130】
また、前述された実施形態では、インクが液体の一例として説明されているが、例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って記録用紙などに吐出される前処理液が液体カートリッジに貯留されていてもよい。また、記録ヘッド21を洗浄するための水が液体カートリッジに貯留されていてもよい。