(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作内容決定手段は、前記操作物の状態変化の変位量に関連した物理量が所定の判定物理量閾値よりも大きい場合に、前記状態変化に応じて前記操作内容を決定するものであり、
前記判定物理量閾値は、前記ステアリングを中立の状態から前記出力禁止閾値に対応した状態まで変位させる場合の変位量に関連した物理量である禁止物理量閾値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両用情報処理装置。
前記出力許否指示手段は、前記回転角度が、前記出力禁止閾値以上となった後、前記出力可能閾値以下となり、前記出力可能閾値以下である状態が所定時間継続した場合に、前記操作信号出力手段による信号の出力を許可することを特徴とする請求項3に記載の車両用情報処理装置。
前記ステアリング物理量のひとつは、前記ステアリングが中立の状態から時計回りおよび反時計回りに回転した場合の回転角度であり、前記出力禁止閾値は45°であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両用情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を、図面を参照して説明する。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図に基づき説明する。
【0016】
本実施形態における車両用情報処理システム10は、
図1および
図2に示すように、表示部13と、カメラ14と、角速度センサ15と、操舵角センサ16と、速度センサ17と、車両用情報処理装置100を備えている。
【0017】
表示部13は、車両の運転者に各種情報を提示するためのものである。表示部13は、操作者の手指による接触操作および非接触操作により操作可能な表示面を有しており、インストルメントパネルの上部に表示面が配置されるように設置されている。表示部13を操作者の手指によって接触操作可能にする場合、たとえば接触操作に応じて操作可能なアイコンなどの操作対象が表示面上に表示される。本実施形態では、表示部13は、いわゆるインストルメントパネルディスプレイを例に挙げて以降説明するが、車両のフロントウィンドウ上を表示面として表示を行うヘッドアップディスプレイを適用することもできる。また、車両のインストルメントパネルに表示面が配置されたマルチインフォメーションディスプレイや、車両のインストルメントパネルの各種計器類付近に表示面が配置されたディスプレイなどを適用することもできる。なお、本実施形態においては、操作者の手指が、特許請求の範囲における「操作物」に相当する。
【0018】
カメラ14は、ステアリングハンドル11と指示計器18との間にカメラレンズが配置されるように固定されており、ステアリングハンドル付近での操作者の手指の動きや形状、を撮影可能となっている。カメラ14の近傍には図示しない赤外線照射装置が設けられている。赤外線照射装置から照射される赤外線によって、夜間でも操作者の手指の動きや形状を撮影できるようになっている。また、カメラ14は、撮影した操作者の手指の動きや形状を車両用情報処理装置100に信号として送信する。以下、操作者の手指の動きのことを「ジェスチャ」と呼ぶ。操作者の手指の動きは一次元的なものに限られず、二次元的や三次元的な動きも含むものとする。なお、カメラ14は、特許請求の範囲における「操作物検出装置」に相当する。
【0019】
角速度センサ15は、運転者により回転操作されるステアリングハンドル11の回転角速度を検知して、検知結果の信号を車両用情報処理装置100に出力する。なお、回転角速度が、特許請求の範囲における「角速度」に相当する。また、ステアリングハンドル11の回転角速度は、操舵角センサ16により検出される操舵角の時間変化を算出することにより検出されてもよい。
【0020】
操舵角センサ16は、運転者により回転操作されるステアリングハンドル11の操舵角を検出し、検出結果の信号を車両用情報処理装置100に出力する。なお、操舵角とは、ステアリングハンドル11が中立の状態から時計回りおよび反時計回りに傾いている角度をいい、特許請求の範囲における「回転角度」に相当する。また、角速度センサ15および操舵角センサ16は、特許請求の範囲における「ステアリング状態検出装置」に相当する。
【0021】
速度センサ17は、車両の速度を検出して、検出結果の信号を車両用情報処理装置100に出力する。
【0022】
車両用情報処理装置100は、操作者(たとえば運転者)による表示部13の接触操作もしくは非接触操作に応じて、車両に搭載されるナビゲーション装置、空調装置などの各種機器や、携帯電話などの被操作装置に対して操作入力を行う。
【0023】
車両用情報処理装置100は、
図2に示すように、操作物状態検知手段101、操作内容決定手段102、操作信号出力手段103、遅れ時間設定手段104、遅れ時間設定禁止手段105、信号出力禁止手段106、信号出力許可手段107を備える。
【0024】
操作物状態検知手段101は、カメラ14によって撮影された撮影画像から操作者の手指の動き、形状、姿勢、位置などを検知する。また、操作物状態検知手段101は、予め被操作装置の各種操作に対応した操作者の手指の動き等を記憶している。カメラ14によって撮影された操作者の手指の動き等が、記憶されている動き等に一致した場合、操作内容決定手段102に対して、一致した手指の動き等に関する情報を送信する。なお、操作者の手指の動き、形状の変化、姿勢の変化、位置変化の少なくとも一つが、特許請求の範囲における「操作物の状態変化」に相当する。
【0025】
操作内容決定手段102は、被操作装置の操作内容を決定する。具体的には、操作物状態検知手段101から受信した、手指の動き等に関する情報に基づいて、対応付けられている被操作装置の操作内容を決定する。
【0026】
たとえば操作者が手をステアリングハンドル11の把持部111に沿って動かす動きと空調装置の風量の増減が対応付けられている場合や、操作者が指を上下方向に動かす動きと音響装置の音量の増減が対応付けられている場合などが考えられる。
【0027】
操作信号出力手段103は、操作内容決定手段102によって決定された被操作装置の操作内容を被操作装置に実行させるための操作指令信号を各種被操作装置に出力する。具体的には、操作内容決定手段102から操作内容を決定したことを示す信号が出力され、かつ信号出力禁止手段106からの禁止信号が出力されていない場合に、各種被操作装置に対して操作指令信号を出力する。なお、操作指令信号が、特許請求の範囲における「操作内容に関する信号」に相当する。
【0028】
遅れ時間設定手段104は、操作内容決定手段102によって被操作装置の操作内容が決定されてから、操作信号出力手段103によって被操作装置に対して操作指令信号を出力するまでの遅れ時間Tを設定する。遅れ時間Tは、たとえばあらゆるステアリングハンドル11の操作態様における、以下の時間を平均した時間として設定される。すなわち、予め記憶されている操作者の手指の動き等が操作者の意図に反してなされてからステアリングハンドル11の操舵角が出力禁止閾値(たとえば45°)になるまでの時間の平均である。なお、遅れ時間Tは、予め記憶媒体に記憶されていてもよいし、その都度計算するようにしてもよい。
【0029】
遅れ時間設定禁止手段105は、信号出力許可手段107から信号出力禁止手段106に対して、後述する許可信号が出力されている間、遅れ時間設定手段104に対して、遅れ時間Tを設定することを禁止することを指示する設定禁止信号を出力する。
【0030】
遅れ時間設定手段104は、遅れ時間設定禁止手段105から設定禁止信号を受信すると、遅れ時間Tの設定を禁止する。
【0031】
信号出力禁止手段106は、以下の場合に、操作信号出力手段103に対して出力禁止信号を出力する。すなわち、操舵角センサ16によって検知されたステアリングハンドル11の操舵角が出力禁止閾値(たとえば45°)以上であり、かつステアリングハンドル11の回転角速度が所定数値範囲内である状態が所定時間継続していない場合である。また、操舵角が一度出力禁止閾値(たとえば45°)以上となった後、出力可能閾値(たとえば5°)以下である状態が所定時間継続するまで、出力禁止信号の出力を継続する。なお、本実施形態では、ステアリングハンドル11の操舵角および回転角速度が、特許請求の範囲における「ステアリング物理量」に相当する。
【0032】
ここで、出力禁止閾値となる操舵角の算出方法の一例を説明する。車両の走行している道路の道路曲率ηおよび車速Vを用いると、カーブ等を曲がるために必要な操舵角δFFは次の数1で表される。
【数1】
【0033】
Aとlは車両定数であり、それぞれスタビリティファクタとホイールベースである。なお、Aは以下の数2で算出される。
【数2】
【0034】
mは車両の質量、lfは車両重心点と前車軸間の距離、Kfは前輪一輪あたりのタイヤコーナリングパワー、lrは車両重心点と後車軸間の距離、Krは後輪一輪あたりのタイヤコーナリングパワーである。これら数1および数2を用いて、一定の半径の定常的な円運動(定常円旋回)をするときの操舵角が算出される。
【0035】
車速Vは速度センサ17によって検出される値である。また、道路曲率ηは予め車両用情報処理装置100内に記憶されていてもよいし、その都度計算されるようにしてもよい。出力禁止閾値となる操舵角は、予め記憶されているようにしてもよいし、その都度数1および数2を用いて計算するようにしてもよい。
【0036】
出力禁止閾値となる操舵角は、道路曲率ηおよび車速Vがそれぞれ大きくなるにしたがって大きくなる。出力禁止閾値は、予め記憶媒体等に記憶されていてもよいし、その都度計算されるようにしてもよい。
【0037】
出力禁止信号とは、被操作装置に対して各種操作を実行することを指示する操作指令信号を出力することを禁止する信号である。操作信号出力手段103は、出力禁止信号を信号出力禁止手段106から受信すると、被操作装置に対して操作指令信号を出力しない。つまり、出力禁止信号が操作信号出力手段103に対して出力されている間は、操作者の手指の動き等による被操作装置の操作が不可能となる。
【0038】
信号出力許可手段107は、以下の場合に、信号出力禁止手段106に対して操作信号出力手段103への出力禁止信号の出力を停止することを指示する信号を出力する。すなわち、角速度センサ15によって検知されたステアリングハンドル11の回転角速度が所定値以下となった場合、又は操舵角が出力可能閾値(たとえば5°)以下である状態が所定時間継続した場合である。したがって、その間は、操作信号出力手段103は、被操作装置に対して操作指令信号を出力することが可能となる。つまり、操作者の手指の動き等による被操作装置の操作が可能となる。なお、信号出力禁止手段106および信号出力許可手段107が、特許請求の範囲では「出力許否指示手段」に相当する。
【0039】
次に、車両用情報処理装置100における処理フローについて
図3に基づき説明する。なお、この処理は、コンピュータを備える車両用情報処理システム10が、あらかじめ用意されたプログラムを実行し、
図2に示す各種手段として機能することにより実現される。各種手段とは、操作物状態検知手段101、操作内容決定手段102、操作信号出力手段103、遅れ時間設定手段104、遅れ時間設定禁止手段105、信号出力禁止手段106、信号出力許可手段107である。また、このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができ、特許請求の範囲における「車両用情報処理プログラム」に相当する。
【0040】
まずS1において、カメラ14により撮影された撮影画像から操作者の手指の動き等が、予め記憶されている動き等と一致するか否かを判定する。一致しないと判定された場合(Noと判定された場合)、再度S1を繰り返す。一方で、一致すると判定された場合、操作物状態検知手段101は、操作内容決定手段102に対して、一致した手指の動き等に関する情報を送信し、S2に進む。
【0041】
S2では、操作内容決定手段102によって、一致した手指の動き等に対応付けられている被操作装置の操作内容を決定する。そして、操作内容決定手段102が、操作信号出力手段103に対して、操作内容を決定したことを示す信号を送信し、S3に進む。
【0042】
S3では、被操作装置へ操作指令信号を出力可能か否かが判定される。具体的には、信号出力禁止手段106から操作信号出力手段103に対して出力禁止信号が出力されているか否かが判定される。出力禁止信号が出力されていると判定された場合、つまり操作指令信号を出力不可能と判定された場合(Noと判定された場合)、
図3の処理フローは終了する。一方で、出力禁止信号が出力されていないと判定された場合、つまり操作指令信号を出力可能と判定された場合(Yesと判定された場合)、S4に進む。
【0043】
S4では、遅れ時間設定手段104によって、遅れ時間Tが設定されているか否かが判定される。遅れ時間Tが設定されていないと判定された場合、つまり遅れ時間設定禁止手段105によって遅れ時間Tの設定が禁止されている場合(Noと判定される場合)、S6に進み、操作信号出力手段103によって、被操作装置に対して操作指令信号が出力される。一方で、遅れ時間Tが設定されていると判定された場合、つまり遅れ時間設定禁止手段105から遅れ時間設定手段104に対して設定禁止信号が出力されている場合(Yesと判定された場合)、S5に進む。
【0044】
S5では、S2にて被操作装置の操作内容が決定されてから遅れ時間Tが経過したか否かが判定される。遅れ時間Tが経過していないと判定された場合(Noと判定された場合)、S3から処理を繰り返す。よって、遅れ時間Tが経過するまでに信号出力禁止手段106から操作信号出力手段103に対して出力禁止信号が出力された場合は、S3において操作指令信号の出力は不可能であると判定される。つまりNoと判定される。そのため、
図3の処理フローは終了されることとなる。
【0045】
一方で、S5において、遅れ時間Tが経過していると判定された場合(Yesと判定された場合)、S6に進み、操作信号出力手段103から被操作装置に対して、操作指令信号が出力される。そして、被操作装置は、操作指令信号に基づき操作されることとなる。
【0046】
次に、ステアリングハンドル11の操作態様の一例に基づいて、車両用情報処理装置の処理内容の一連の流れの一例を説明する(
図3〜
図9参照)。本実施形態では、
図4に示すような中立状態のステアリングハンドル11(直線道路を走行中の状態)を操舵角0°と定義し、操作者が、まず
図4の矢印方向にステアリングハンドル11を回転操作する場合を想定する。
【0047】
図5に示すように、操舵角θが出力禁止閾値(たとえば45°)以上の角度θ1となると、信号出力禁止手段106から操作信号出力手段103に対して出力禁止信号が出力され、被操作装置への操作指令信号の出力が禁止される。このあと、さらに
図5の矢印方向へステアリングハンドル11を回転させていく場合、操舵角θが出力禁止閾値(たとえば45°)以上であるため、出力禁止信号の出力が継続される。
【0048】
次に、
図6に示すように操舵角θが出力禁止閾値(たとえば45°)以上の角度θ2の状態のまま所定時間経過すると、信号出力許可手段107から信号出力禁止手段106に対して出力許可信号が出力される。操舵角θが所定角度の状態のまま所定時間経過している状況は、つまりステアリングハンドル11の回転角速度が零である状況である。また、回転角速度が完全に零でなくとも、多少のステアリングハンドル11の微動の場合には出力許可信号が出力されるように、回転角速度が零を中心とした所定数値範囲内にある場合に出力許可信号が出力されるようにしてもよい。
【0049】
そして、
図6の状態からこれまでと逆の方向にステアリングハンドル11を回転操作し始めると、再び信号出力禁止手段106から操作信号出力手段103に対して出力禁止信号が出力される。次に、そのまま同じ方向へステアリングハンドル11を回転操作していき、
図7に示すように、中立状態からの操舵角θが出力禁止閾値(たとえば45°)よりも小さい角度θ3となった場合について説明する。この場合であっても、θ3が所定の出力可能閾値(たとえば5°)より大きい場合には、信号出力禁止手段106による出力禁止信号の出力は継続している。
【0050】
次に、
図7の状態からさらに回転方向にステアリングハンドル11を回転操作し、
図8に示すように、操舵角θが出力可能閾値(たとえば5°)以下である状態のまま所定時間経過した場合について説明する。この場合には、信号出力許可手段107から信号出力禁止手段106に対して出力許可信号が出力される。
【0051】
次に、
図7の状態からそのまま同じ方向へステアリングハンドル11を回転操作していき、操舵角θが出力禁止閾値(たとえば45°)以上となるまで出力許可信号の出力は継続される。そして、
図9に示すように、操舵角θが出力禁止閾値(たとえば45°)以上の角度θ4となると、信号出力禁止手段106は操作信号出力手段103に対して出力禁止信号を出力することとなる。
【0052】
次に、本実施形態において得られる効果について説明する。
【0053】
(1)操作内容決定手段102によって操作者の手指の動き等に応じた被操作装置の操作内容が決定された場合であっても、ステアリングハンドル11の操舵角が所定の出力禁止閾値(たとえば45°)以上となる場合がある。この場合には、信号出力禁止手段106によって、操作指令信号の被操作装置への出力は禁止される。ここで、操舵角が所定の出力禁止閾値(たとえば45°)以上となる場合とはすなわち、操作者の意図は、運転に伴ってステアリングハンドル11を操作することにあると推測される。そのため、操作者が被操作装置の操作をする意図ではなく、ステアリングハンドル11の操作をする意図を有している場合に、手指の動き等に基づいて被操作装置が操作されることを防止することができる。
【0054】
また、遅れ時間設定手段104によって、被操作装置の操作内容が決定されてから、操作信号出力手段103によって操作指令信号が出力されるまでの所定の遅れ時間Tが設定される。そのため、操作者の意図に反して、ステアリングハンドル11の操作に伴って手指の動き等が検出され、その動き等に応じた被操作装置の操作内容が決定されてしまっても、即時に、被操作装置に対して操作指令信号が出力されることを防止できる。したがって、遅れ時間T内に、信号出力禁止手段106によって被操作装置への操作指令信号の出力が禁止されるようにすることができる。そして、操舵角が所定の出力禁止閾値(たとえば45°)以上となるまでの間に操作者の意図に反して被操作装置が操作されることを防止できる。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、被操作装置の誤操作防止のために従来技術のようなハンドサインが不要となるため、運転に煩わしさを与えることがない。したがって、本実施形態によれば、運転に煩わしさを与えることなく、操作者の意図に反して被操作装置が誤操作されることを防止できる車両用情報処理装置100を提供することができる。
【0056】
(2)特に、操作者の指の細かな動き等によるジェスチャが、被操作装置の各種操作に対応付けられている場合、操作者の手による大まかな動きによるジェスチャと比べて、ステアリングハンドル11のわずかな操作でも操作者の意図に反して検知されやすい。そのため、操作者の手の動き等によるジェスチャと比較して、操作者の指の動き等によるジェスチャの場合のほうが、遅れ時間Tの設定による誤操作防止の効果は大きい。
【0057】
(3)信号出力禁止手段106は、操舵角が、出力禁止閾値(たとえば45°)以上となってから出力禁止閾値よりも小さい所定の出力可能閾値(たとえば5°)以下となるまで、操作信号出力手段103による操作指令信号の出力の禁止を継続する。ここで、ステアリングハンドル11の操舵角が一度出力禁止閾値以上となってから出力可能閾値以下になるまでの間は、中立状態からステアリングハンドル11が比較的大きく傾いている。つまり、車両は旋回等している状態にあり、操作者は車両の運転のためにステアリングハンドル11を操作していると推測される。そのため、操舵角が出力禁止閾値以上となってから出力可能閾値以下になるまでの間において検出される手指等の動きは被操作装置を操作する意図に基づくものではないと推測される。したがって、操作信号出力手段103による操作指令信号の出力の禁止を継続することで、運転に煩わしさを与えることなく、操作者の意図に反して被操作装置が操作されることを防止することができる。
【0058】
(4)信号出力許可手段107は、ステアリングハンドル11の操舵角が、出力禁止閾値以上となった後、出力可能閾値以下となり、出力可能閾値以下である状態が所定時間継続した場合に、操作信号出力手段103による操作指令信号の出力を許可する。たとえば、以下のように走行している場合には、操舵角が出力禁止閾値以上となるまでステアリングハンドル11が回転した後、出力可能閾値以下となった場合であっても、比較的短時間のうちに逆の方向にステアリングハンドル11が操作されることになる。すなわち、所定距離の右カーブの後、所定距離の左カーブが続く走行路を車両が走行している場合である。この場合、一度ステアリングハンドル11の操舵角が出力可能閾値以下となってからも操作者は引き続き運転のためにステアリングハンドル11を操作する必要性が生じる。このような状況においては、より運転に煩わしさを与えないことが重要となるが、操舵角が出力可能閾値以下となった直後に信号出力許可手段107によって操作指令信号の出力を許可してしまうと、運転の煩わしさ低減の観点で好ましくない。
【0059】
ここで、ステアリングハンドル11の操舵角が出力可能閾値以下である状態が所定時間継続した場合は、比較的直線的な走行路を走行している場合が推測される。そのため、ステアリングハンドル11の操舵角が出力可能閾値以下である状態が所定時間継続した場合に、以下の効果が発揮される。すなわち、信号出力許可手段107によって、被操作装置に対する操作指令信号の出力を許可することで、運転に煩わしさを与えることなく、操作者の意図に反して被操作装置が操作されることを防止することができる。
【0060】
(5)信号出力許可手段107は、操舵角が出力禁止閾値以上であり、かつ回転角速度が所定値以下である状態が所定時間継続した場合に、操作信号出力手段103による操作指令信号の出力を許可する。操舵角が出力禁止閾値以上であり、かつ回転角速度が所定値以下である状態が所定時間継続している場合、つまり車両が同じRのカーブ等を旋回している状態が所定時間継続している場合がある。この場合には、操作者はステアリングハンドル11の操作を大きく変更する必要がない単調な運転状態が暫く続いていることとなる。このような状況下において手指の動き等に基づき決定された操作内容は、操作者の意図に基づくものであると推測される。そのため、このような状況下で信号出力許可手段107によって操作指令信号の出力を許可することにより、被操作装置の操作が可能となり、必要以上に被操作装置の操作を阻害することがなく、操作者の意図に応じた被操作装置の操作が可能となる。
【0061】
(6)信号出力許可手段107によって、操作信号出力手段103による操作指令信号の出力が許可されている場合に、遅れ時間設定禁止手段105は、遅れ時間設定手段104による遅れ時間Tの設定を禁止する。操作信号出力手段103による操作指令信号の出力が許可された場合、つまり操作者による被操作装置の操作が可能になった場合であっても、依然として、遅れ時間設定手段104によって遅れ時間Tが設定される場合がある。この場合、操作者は煩わしさを感じながら被操作装置の操作を強いられることになる。操作者が被操作装置を操作するために手指を所定の状態にし、操作内容決定手段102により対応した被操作装置の操作内容を決定したとしても、被操作装置が操作されるまでに遅れ時間分のタイムラグが発生してしまうためである。しかし、本実施形態のようにすることで、操作者は煩わしさを感じることなく被操作装置の操作をすることができる。
【0062】
(7)カメラ14は、ステアリングハンドル11と指示計器18との間にカメラレンズが配置されるように固定されている。そのため、ステアリングハンドル11を操作者が把持した状態で、ステアリングハンドル11の反操作者側で指を動かしてジェスチャした場合でも、確実にカメラ14によって撮影することができる。したがって、高精度に操作者の手指の動き等を検知することが可能となる。
【0063】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について
図10、
図11に基づいて説明する。なお、第1実施形態と重複する部分については説明を簡略化または省略する。
【0064】
本実施形態では、円環状のステアリングハンドル11に沿って操作者が手をスライド移動する動きが、被操作装置の各種操作に対応付けられて予め記憶されている。具体的には、操作者が手をスライド移動させた場合の変位量が所定の判定物理量閾値よりも大きいことを操作物状態検知手段101が検知した場合に、操作内容決定手段102は対応付けられた操作内容(たとえば空調温度の増減)を決定する。判定物理量閾値の具体例としては、たとえば移動距離、回転角度などに基づく閾値が挙げられる。
【0065】
また、第1実施形態にて説明した出力禁止閾値となるまでステアリングハンドル11が回転操作された場合の、操作者の手の変位量を禁止物理量閾値と定義すると、判定物理量閾値は禁止物理量閾値よりも大きな値として設定されている。
【0066】
つまり、操作者の手の変位量が判定物理量閾値に達し、かつステアリングハンドル11の操舵角が出力禁止閾値以上となっている場合がある。この場合には、操作者の手の動きによって対応付けられた被操作装置の操作内容が決定されるものの、信号出力禁止手段106によって出力禁止信号が出力されているので、操作信号出力手段103から被操作装置に対して操作指令信号が出力されない。
【0067】
一方で、操作者の手の変位量が禁止物理量閾値以上判定物理量閾値以下で、かつステアリングハンドル11の操舵角が出力禁止閾値以上となっている場合にも、同様に操作信号出力手段103から被操作装置に対して操作指令信号が出力されない。
【0068】
また、操作者の手の変位量が禁止物理量閾値以上判定物理量閾値以下で、かつステアリングハンドル11の操舵角が出力禁止閾値未満である場合は、予め記憶された操作者の手指の動き等と一致することはない。そのため、操作内容決定手段102から操作信号出力手段103に対して、操作内容を決定したことを示す信号は出力されない。したがって、操作信号出力手段103から被操作装置に対して操作指令信号が出力されない。
【0069】
次に、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0070】
本実施形態では、禁止物理量閾値よりも判定物理量閾値のほうが大きい。そのため、操作者が被操作装置を操作する意図をもたずにステアリングハンドル11を操作することに伴って手の動き等を変化させる場合には、操作者の手の変位量は、被操作装置の操作内容を決定する判定物理量閾値に達するよりも先に禁止物理量閾値に達する。したがって、操作者の意図に反して被操作装置が誤操作されることを防止できる。
【0071】
その他、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0072】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0073】
・ステアリングハンドル11を把持しているか否かを検知する把持センサ12をさらに備えるようにしてもよい。把持センサ12は、ステアリングハンドル11の把持部111に設けられ、圧力センサ、静電センサ、光センサ、温度センサなどを適用することができる。この場合、車両用情報処理装置100は、把持センサ12による検知結果に基づいてステアリングハンドル11がどのように把持されているかを判定する把持判定手段108を備えるようにすればよい。また、操作者の手が把持部111を把持している位置や、把持の強さ(圧力など)などに応じて、被操作装置への操作指令信号の出力の許否を判定するようにしてもよい。
【0074】
たとえば、操作者が所定の状態でステアリングハンドル11を把持していることを指標として、操作者がステアリングハンドル11を操作していると判断する場合がある。所定の状態とは、例えば両手でステアリングハンドル11を把持している状態である。この場合には、その間に検知された操作者の手指の動き等に基づく被操作装置の操作内容の決定は、操作者の意図に反していると推測される。また、操作者がステアリングハンドル11を操作しているため、運転に煩わしさを与えないようにする必要がある。
【0075】
そこで、たとえば操作者が両手でステアリングハンドル11を把持して
いると把持センサ12によって検出された場合には、信号出力禁止手段106から操作信号出力手段103に対して出力禁止信号を出力する。これにより、操作者が両手でステアリングハンドル11を把持して
いる場合には被操作装置の操作を禁止することができ、運転に煩わしさを与えることなく、操作者の意図に反して被操作装置が操作されることを防止することができる。なお、把持センサ12は、特許請求の範囲における「ステアリング把持検出装置」に相当する。
【0076】
・上記実施形態においては、被操作装置の操作に操作者の手指を用いたが、その他、ペンライトなどの物体を空中で操作することにより被操作装置が操作されてもよい。
【0077】
・速度センサ17によって検出された車速が所定値以上となった場合には、運転への煩わしさ低減の観点から、信号出力禁止手段106から操作信号出力手段103に対して出力禁止信号が出力されるようにしてもよい。
【0078】
・
図3に示すフローチャートでは、ステップS1による判定処理、およびステップS2による決定処理の後に、ステップS3において、操作指令信号を出力可能か否かの判定処理を実行している。これに対し、ステップS3の判定処理の後に、ステップS1の判定処理およびステップS2の決定処理を実行してもよい。これによれば、出力不可の場合にまでステップS1、S2の処理を実行することを回避でき、演算負荷の軽減を図ることができる。