(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記参照光走査部は、前記他方の光が分配された分配光の各々を前記複数の単位受光部の各々に対応させて出射する光出射部を複数含み、前記他方の光を分配し前記複数の単位受光部の各々に照射する前記参照光を生成する
請求項1に記載のレーザレーダ装置。
前記複数の単位受光部の各々は、前記受信光を入射する光入射部、前記光入射部からの前記受信光と前記参照光とを合波する光合波器、および前記光合波器で合波された光を受光する光検出素子を含んで構成された
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のレーザレーダ装置。
前記参照光走査部は、外部からの信号に応じて前記他方の光の位相をシフトさせる可変移相器、および前記可変移相器で位相がシフトされた光を出射する光出射部を含む単位参照光生成部を複数含む参照光生成部を備え、複数の前記可変移相器の各々の位相シフト量を制御することにより複数の前記光出射部から出射し合波された出射光の波面の方向を制御して前記出射光を前記複数の単位受光部のいずれに照射するか切り替えて走査する
請求項1に記載のレーザレーダ装置。
前記参照光生成部には複数の前記単位参照光生成部がアレイ状に配置されており、複数の前記可変移相器は、前記アレイの行ごとにまたは列ごとに定められた量だけ位相をシフトさせる
請求項6に記載のレーザレーダ装置。
光源と、前記光源の出射光を分岐した一方の光を走査し対象物に照射する送信光を生成する投光走査部と、前記光源の出射光を分岐した他方の光を走査し複数の単位受光部の各々に照射する参照光を生成する参照光走査部と、を備え、前記参照光走査部は、前記光源と前記複数の単位受光部との間に設けられた複数の光スイッチにより前記他方の光の導通、非導通を切り替えて走査し前記複数の単位受光部の各々に照射する前記参照光を生成するレーザレーダ装置の光受信方法であって、
前記送信光が前記対象物の各部位で各々反射した複数の受信光を複数の結像点として同一平面上に結像させ、
前記複数の結像点に配置された前記複数の単位受光部によって、前記複数の受信光の各々を前記参照光と混合して光ヘテロダイン検波する
レーザレーダ装置の光受信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されたような従来技術に係るレーザレーダ装置では、一般的に、投光光あるいは受光光をスキャンするための装置が必要となる。本発明において特に対象としている受光側についても、ミラーやプリズムなどでスキャンするのが一般的である。この場合、ミラーやプリズムは可動部品を含むため、信頼性上の問題を生じやすい。また、ミラーやプリズムを介した構成では、光学的な損失が発生し、受信感度の低下につながるという問題もある。
【0008】
特許文献2に開示された2次元光ヘテロダイン走査検出システムは、低コヒーレント光源を用いて空間的なビート信号を検出するものであり、2次元光検出器に発生する入射光量に応じた電荷を高速に読み取ることを課題としている。したがって、レーザレーダ装置において要求される特性のひとつである受信感度の向上に、直接資するものではない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高感度の計測が可能であり、かつ信頼性が高いレーザレーダ装置およびレーザレーダ装置の光受信方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のレーザレーダ装置は、光源と、前記光源の出射光を分岐した一方の光を走査し対象物に照射する送信光を生成する投光走査部と、前記送信光が前記対象物の各部位で各々反射した複数の受信光を複数の結像点として同一平面上に結像する結像部と、前記複数の結像点に配置されるとともに、前記複数の受信光の各々を参照光と混合して光ヘテロダイン検波する複数の単位受光部を含む受光部と、前記光源の出射光を分岐した他方の光を走査又は分配し前記複数の単位受光部の各々に照射する前記参照光を生成する参照光走査部と、を備え
、前記参照光走査部は、前記光源と前記複数の単位受光部との間に設けられた複数の光スイッチにより前記他方の光の導通、非導通を切り替えて走査し前記複数の単位受光部の各々に照射する前記参照光を生成するものである。
【0012】
また、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記複数の光スイッチが前記複数の単位受光部ごとに設けられたものである。
【0013】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記受光部には前記複数の単位受光部がアレイ状に配置されており、前記複数の光スイッチが前記アレイの行ごとにまたは列ごとに設けられたものである。
【0014】
また、請求項
4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記参照光走査部は、前記他方の光が分配された分配光の各々を前記複数の単位受光部の各々に対応させて出射する光出射部を複数含み、前記他方の光を分配し前記複数の単位受光部の各々に照射する前記参照光を生成するものである。
【0015】
また、請求項
5に記載の発明は、請求項1〜請求項
4のいずれか1項に記載の発明において、前記複数の単位受光部の各々は、前記受信光を入射する光入射部、前記光入射部からの前記受信光と前記参照光とを合波する光合波器、および前記光合波器で合波された光を受光する光検出素子を含んで構成されたものである。
【0016】
また、請求項
6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記参照光走査部は、外部からの信号に応じて前記他方の光の位相をシフトさせる可変移相器、および前記可変移相器で位相がシフトされた光を出射する光出射部を含む単位参照光生成部を複数含む参照光生成部を備え、複数の前記可変移相器の各々の位相シフト量を制御することにより複数の前記光出射部から出射し合波された出射光の波面の方向を制御して前記出射光を前記複数の単位受光部のいずれに照射するか切り替えて走査するものである。
【0017】
また、請求項
7に記載の発明は、請求項
6に記載の発明において、前記参照光生成部には複数の前記単位参照光生成部がアレイ状に配置されており、複数の前記可変移相器は、前記アレイの行ごとにまたは列ごとに定められた量だけ位相をシフトさせるものである。
【0018】
また、請求項
8に記載の発明は、請求項1〜請求項
7のいずれか1項に記載の発明において、前記受光部で光ヘテロダイン検波された信号に基づき前記複数の受信光ごとに前記受信光の振幅および位相の少なくとも一方を検出する検出部をさらに備えたものである。
【0019】
また、請求項
9に記載の発明は、請求項1〜請求項
8のいずれか1項に記載の発明において、前記結像部と前記受光部の組を複数有するものである。
【0020】
また、請求項
10に記載の発明は、請求項1〜請求項
9のいずれか1項に記載の発明において、前記複数の単位受光部の各々は、前記複数の受信光の各々に対応させて参照光と混合させ光ヘテロダイン検波するものである。
【0021】
また、請求項
11に記載の発明は、請求項1〜請求項
9のいずれか1項に記載の発明において、前記複数の単位受光部の各々は、前記複数の受信光の所定数の受信光ごとに参照光と混合して光ヘテロダイン検波するものである。
【0022】
一方、上記目的を達成するために、請求項
12に記載のレーザレーダ装置の光受信方法は、光源と、前記光源の出射光を分岐した一方の光を走査し対象物に照射する送信光を生成する投光走査部と、前記光源の出射光を分岐した他方の光を走査し複数の単位受光部の各々に照射する参照光を生成する参照光走査部と、を備え
、前記参照光走査部は、前記光源と前記複数の単位受光部との間に設けられた複数の光スイッチにより前記他方の光の導通、非導通を切り替えて走査し前記複数の単位受光部の各々に照射する前記参照光を生成するレーザレーダ装置の光受信方法であって、前記送信光が前記対象物の各部位で各々反射した複数の受信光を複数の結像点として同一平面上に結像させ、前記複数の結像点に配置された前記複数の単位受光部によって、前記複数の受信光の各々を前記参照光と混合して光ヘテロダイン検波するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高感度の計測が可能であり、かつ信頼性が高いレーザレーダ装置およびレーザレーダ装置の光受信方法を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明するが、まず、
図1を参照して、本発明に係るレーザレーダ装置10の基本的な構成について説明する。
【0026】
レーザレーダ装置10は、送信部100、受信部200、狭線幅光源12、および光分岐器220を備えている。送信部100は、参照光走査部102、変調器106、および投光走査部104を含んで構成されている。また、受信部200は、結像レンズ204、受光部202、プリアンプ206、および信号処理部208を含んで構成されている。
【0027】
狭線幅光源12は、一例としてCW光を発生するレーザであり、送信部100から出射される送信光Poutおよび光ヘテロダイン検波における参照光Prefを生成する光源である。
【0028】
送信部100は、対象物Oに向けて照射する送信光Poutを生成する。送信部100の変調器106は、狭線幅光源12の光出力を光分岐器220で分岐した一方の光を変調して投光走査部104に供給する。変調器106における変調は、対象物Oで反射(散乱)され、受信部200に入射する受信光Pinと送信光Poutとの相関をとるための変調であり、たとえば、擬似ランダムパターン(PN(Pseudorandom Numbers)パターン)を用いた変調、あるいは正弦波を用いた変調等が用いられる。送信部100の投光走査部104は、変調器106で変調された光を対象物Oに向けて照射するように走査する。
【0029】
受信部200は、送信部100から送信光Poutとして出射され、対象物Oで反射(散乱)した光を受信光Pinとして受信する。受信部200の結像レンズ204は、受信光Pinによる対象物Oの像を受光部202に結像する。受光部202は、各々フォトダイオード212を含む複数の単位受光部210(
図2等参照)をアレイ状に備えた受光素子であり、対象物Oの像は、該受光素子の面上に対象物Oの各部が対応するように結像される。そのような意味において、各々の単位受光部210(フォトダイオード212)の受光面を「結像点」、単位受光部210で構成された受光素子の面を「フォーカルプレーンアレイ」と称する場合がある。
【0030】
レーザレーダ装置10では、各々の単位受光部210(フォトダイオード212)に、対象物Oの各部に対応する受信光Pinとともに、参照光走査部102によって切替制御された参照光Prefが入射される。レーザレーダ装置10の参照光走査部102は、参照光Prefを複数の単位受光部210の各々に入射させるか否かを切替制御する。つまり、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10では、受信光Pinをスキャンするのではなく、フォーカルプレーンアレイ上に対象物Oの各部に対応する受信光Pinを結像させ、各結像点に対して参照光Prefを切替えながら(スキャンしながら)入射させる。
【0031】
レーザレーダ装置10では、単位受光部210の各々において(つまり、フォーカルプレーンアレイ上において)、受信光Pinと参照光Prefとを干渉させて中間周波数を発生させ、光ヘテロダイン検波を行う。すなわち、単位受光部210の各々から受信光Pinと参照光Prefとのビート信号が電気信号として出力される。受光部202から出力された電気信号は、プリアンプ206を介して信号処理部208に送られる。信号処理部208では、ビート信号に対して所定の演算処理を行い、対象物Oの各部に対応する受信光Pinの振幅および位相の少なくとも一方を検出する。検出された受信光Pinの振幅および位相の少なくとも一方の情報から、対象物Oまでの距離、あるいは対象物Oの移動速度等を算出する。
【0032】
このように、本発明に係るレーザレーダ装置10では、受信光Pinが極力直接(スキャナー等を介さずに)受光部202に入力されるように構成されている。そのため、レーザレーダ装置10では、対象物Oの各部で反射された受信光Pinを受光部202にフォーカルプレーンアレイとして結像させ、各結像点に対し、参照光Prefをスキャンし入射させている。受信光Pinの光強度が一般に微弱なのに対し、参照光Prefの光強度は、必要に応じて増大させることが可能であり、しかも常に一定にすることができる。このことにより、本発明に係るレーザレーダ装置10では、高感度の計測が可能となっている。
【0033】
なお、レーザレーダ装置10では参照光走査部102が、参照光Prefを単位受光部210の各々に順次入射するように(たとえば、行ごとに順番に入射するように)切替制御する(スキャンする)形態を例示して説明するが、これに限られず、どのような順序で入射するように切替制御してもよい。また、必ずしも単位受光部210の1個ずつに入射するように切替制御する必要もなく、複数個ずつに入射するように切替制御してもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、受信光Pinと参照光Prefとが変調等の性質において異なる信号であり、受信部において光ヘテロダイン検波する形態を例示して説明するが、これに限られず、受信光Pinと参照光Prefとを同じ性質の信号とし、ホモダイン検波する形態としてもよい。
【0035】
[第1の実施の形態]
図2ないし
図4を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10aについて説明する。
【0036】
まず、
図2を参照して、本実施の形態に係る受光部202aについて説明する。
図2(a)に示すように、受光部202aは、アレイ状に配置された複数の単位受光部210を備えている。受光部202aを構成する単位受光部210の個数は、一例として、50×50=2500個である。ただし、
図2(a)では、3×4=12個で例示している。
【0037】
図2(a)に示すように、光導波路222の一端から入射された参照光Prefは、
図2(b)に示す光スイッチ216によって導通、非導通を切替制御され、各単位受光部210に分配される。単位受光部210の各々のフォトダイオード212には、対象物Oの各部に対応する受信光Pinが入射される。本実施の形態に係る受光部202aで用いる光スイッチ216の形態は特に限定されず、熱光学スイッチ、機械的光スイッチ等、いずれの光スイッチを用いてもよい。
【0038】
図2(a)に示すように、本実施の形態では、単位受光部210ごとに光スイッチ216が設けられており、単位受光部210ごとに参照光Prefをフォトダイオード212に入射させるか否かを切り替えている。すなわち、本実施の形態では、複数の光スイッチ216が
図1に示す参照光走査部102を構成している。
【0039】
つぎに、
図2(c)を参照して、単位受光部210の詳細について説明する。本実施の形態に係る単位受光部210は、フォトダイオード212、グレーティングカプラ214、光スイッチ216、および光合波器218を備えている。
【0040】
グレーティングカプラ214は、光導波路面に周期的な屈折率変調(光導波路グレーティング)を設けて構成されており、受信光Pinを光導波路222に効率的に結合させる。また、逆に、光を光導波路222から効率的に放射させる場合にも用いる(
図12参照)。
【0041】
フォトダイオード212は、光合波器218で合波された対象物Oの各部に対応する受信光Pinと参照光Prefとを受光し、両者を重ね合わせ、光ヘテロダイン検波した電気信号を出力する。
光スイッチ216は、参照光Prefをフォトダイオード212に入射させるか否かを切り替える。
【0042】
つぎに、
図3を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10aについて説明する。レーザレーダ装置10aは、狭線幅光源12、送信部100、受信部200aを備えており、狭線幅光源12および送信部100は、
図1に示したものと同様のものである。
【0043】
本実施の形態に係る受信部200aは、同じ受光部202aと同じ結像レンズ204との組み合わせである結像受光部224を3系統有するように構成されている。図中A、B、Cは対象物O(
図3では、「実空間」と表記)の各部を示しており、各部A,B、Cから反射された光は、受信光Pinとして、各結像受光部224−1、224−2、224−3に入射する。
【0044】
受信部200aを3系統の結像受光部224で構成するのは、受信光Pinの光量を増大させるためであり、より好ましくは、結像レンズ204としてマイクロレンズアレイを用い、アレイ状に配列された結像受光部224を用いるとよい。結像受光部224の配列数については3系統に限定されず適宜な数としてよいが、たとえば7×7程度とすることができる。むろん、受信光Pinの光量を問題としない場合には、1個の結像受光部224を用いる形態としてもよい(たとえば、
図8参照)。
【0045】
図4に各結像受光部224の構成を示す。結像受光部は224の受光部202aは
図2に示したものであり、光スイッチ216によって、単位受光部210ごとに参照光Prefを入射させるか否かが切り替えられる。
【0046】
再び
図3を参照して、3つの結像受光部224から出力された受信電気信号は、単位受光部210の各々ごとに合成された後、単位受光部210の各々ごとに3つの信号処理部208(
図3では、「Aグループ」、「Bグループ」、「Cグループ」と表記)に入力される。
【0047】
信号処理部208における処理は、結像受光部224ごとに別々の受信回路240で処理する形態(
図3では、「TypeI」と表記)としてもよいし、各結像受光部224の出力をまとめてから単一の受信回路240aで処理する形態(
図3では、「TypeII」と表記)してもよい。
【0048】
以上詳述したように、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10aによれば、受信光Pinと混合する参照光Prefをスキャンして光ヘテロダイン検波しているので、高感度の計測が可能であり、かつ信頼性が高いレーザレーダ装置を実現することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
図5を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10について説明する。本実施の形態は、
図1に示すレーザレーダ装置10の受光部202として、受光部202bを採用した形態である。
【0050】
図5に示すように、受光部202bは、
図2(a)に示す受光部202aにおける単位受光部210の代わりに、単位受光部210から光スイッチ216を除いた単位受光部210aを用いている。
【0051】
図2(a)に示す受光部202aは、フォトダイオード212ごとに参照光Prefを入射させるか否か切り替える形態であったが、受光部202bでは、左端に配置された光スイッチ216によって、アレイ状のフォトダイオード212の行ごとに参照光Prefを入射させるか否かを切り替える形態である。すなわち、本実施の形態では、受光部202bの左端に配置された光スイッチ216が、
図1における参照光走査部102を構成している。なお、本実施の形態では、アレイ状のフォトダイオード212の行単位で切り替える形態を例示して説明するが、これに限られず、列単位で切り替える形態としてもよい。
【0052】
本実施の形態に係る受光部202bでは、プリアンプ206以降の電気回路で同一行のフォトダイオード212の信号を分離する必要があるが、光スイッチ216の数を削減することができる。
【0053】
[第3の実施の形態]
図6ないし
図8を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10bについて説明する。本実施の形態は、
図1に示すレーザレーダ装置10の受信部200として受信部200bを用いることにより、受光部202として受光部202cを採用した形態である。
【0054】
図6(a)に示すように、受光部202cは、
図5に示す受光部202bにおける単位受光部210aの代わりに、フォトダイオード(PD)とプリアンプとしてのTIA(Transimpedance Amplifier)とが集積化された単位受光部210bを用いている。受光部202cの左端に配置された光スイッチ216によって、アレイ状に配置された単位受光部210bの行単位で、参照光PrefをフォトダイオードPDに入射させるか否かを切り替える構成は、
図5に示す受光部202bと同様である。
【0055】
図7を参照して、単位受光部210bの具体的な構成について説明する。
図7(a)に示すように、単位受光部210bは、モノリシックに集積化されたフォトダイオード250およびTIA252を備えている。フォトダイオード250は、材料としてGe(ゲルマニウム)を用いたフォトダイオードであり、
図7(a)に示すように、受信光Pinは裏面(基板側)から入射させる。
図7(b)に示すように、参照光Prefは光導波路222を通して導き、光分岐器220で分岐した後、光導波路222の先端部に配置されたグレーティングカプラ254を介してフォトダイオード250の表面から入射させる。受信光Pinと参照光Prefとは、フォトダイオード250の光電変換部で混合され、光ヘテロダイン検波される。
【0056】
図7(c)を参照して、単位受光部210bの具体的な構成の一例について説明する。
フォトダイオード250は、Si(シリコン)の基板274上に形成された、P−Si領域262、P+Si領域260、Ge層258、N型Ge層256を含んで構成されている。ここで、P−Si領域は、低濃度にP型不純物がドープされたSiの領域を示し、P+Si領域は、高濃度にP型不純物がドープされたSiの領域を示している。
【0057】
一方、TIA252は、Si基板274上に形成されたN−Si領域266、N−Si領域266内に形成されたP−Si領域270およびN+Si領域264、P−Si領域270内に形成されたP+Si領域268およびN+Si領域272を含んで構成されている。
【0058】
フォトダイオード250およびTIA252の上部にはSiO2層276が形成されており、SiO2層276内には、光導波路222およびグレーティングカプラ254が形成されている。また、フォトダイオード250およびTIA252の各々には、たとえばAl(アルミニウム)等で形成された電極278が接続されている。
【0059】
図8は、受信部200b(受光部202c)を用いたレーザレーダ装置10bを示している。
図8に示す受光部202cは、
図6(a)に示す受光部202cを
図6(a)に示す白抜き矢印S方向から見た場合の断面図を示しており、紙面奥行方向に単位受光部210bが4個ずつ配置されている。光スイッチ216は、この4個ずつの単位で参照光Prefをフォトダイオード250に入射させるか否か切り替える。
【0060】
対象物Oの各部に対応する受信光Pinは、結像レンズ204に導かれて単位受光部210bのフォトダイオード250に入射する。光スイッチ216による切替制御に応じて受信光Pinと参照光Prefが混合され、光ヘテロダイン検波される。
【0061】
本実施の形態は、Geによるフォトダイオード250を採用しているので、特に、狭線幅光源12(送信光Pout、参照光Pref)に、長波長帯(たとえば、1.55μm)のレーザを用いる場合等に適した形態である。
【0062】
[第4の実施の形態]
図9を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10について説明する。本実施の形態は、
図8に示すレーザレーダ装置10bの受光部202cの単位受光部210bを単位受光部210cに置き換えた形態である。単位受光部210c以外の構成は
図8と同様なので説明を省略し、ここでは、単位受光部210cの構成について説明する。
【0063】
図9(a)に示すように、単位受光部210cは、
図7に示す単位受光部210bのフォトダイオード250をフォトダイオード250aに置き換えたものである。TIA252は、
図7に示すTIAと同様の構成である。
【0064】
図9(c)は、単位受光部210cの具体的な構成の一例を示している。単位受光部210cのフォトダイオード250aは、Si基板286上に形成されたN−Si領域282、N−Si領域282内に形成されたN+Si領域280およびP+Si領域284を含んで構成されている。
【0065】
フォトダイオード250aおよびTIA252上にはSiO2層288が形成されている。SiO2層288内には光導波路222が形成されており、光導波路222の先端部にはグレーティングカプラ254が形成されている。また、フォトダイオード250aおよびTIA252の各々には、たとえばAl(アルミニウム)等で形成された電極278が接続されている。
【0066】
参照光Prefは、光導波路222およびグレーティングカプラ254を介してフォトダイオード250aに入射させる。一方、受信光Pinは、フォトダイオード250aの表面から入射させる点が
図7に示す単位受光部210bとは異なる。
【0067】
本実施の形態は、Siによるフォトダイオード250aを採用しているので、特に、狭線幅光源12(送信光Pout、参照光Pref)に、可視光帯のレーザを用いる場合に適した形態である。
【0068】
[第5の実施の形態]
図10を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10cについて説明する。本実施の形態は、
図8に示すレーザレーダ装置10bの結像レンズ204を、広角レンズ204aおよび結像レンズ204bに置き換えた形態である。受光部202cは
図8に示すものと同じものなので説明を省略する。
【0069】
本実施の形態では、結像レンズの一部に広角レンズ204aを採用している。
図8に示すように、単一の結像レンズ204を用いた場合には、視野角(画角)に制限があり、広域の対象物Oからの受信光Pinを捕らえきれない場合がある。本実施の形態は、広角レンズ204aによって視野角を拡大しているので、広域の対象物Oからの反射光を捕らえるのに有効な形態である。
【0070】
[第6の実施の形態]
図11ないし
図13を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10dについて説明する。
図11に示すように、本実施の形態は、
図1に示す参照光走査部102として参照光生成部290を採用し、受信部200として受信部200dを採用した形態である。
【0071】
図12を参照して、本実施の形態に係る参照光生成部290の構成の一例について説明する。
図12(a)に示すように、参照光生成部290は、複数(
図12に示した例では、3×4=12個)の単位参照光生成部230を備えて構成されている。
図12(b)に示す光分岐器220で分岐された狭線幅光源12からの参照光Prefが、光導波路222で分配されて、単位参照光生成部230の各々に導かれる。なお、参照光生成部290に配置する単位参照光生成部230の数は12個に限られず、必要とされる参照光Prefの光強度等に応じて適宜な数だけ配置してよい。
【0072】
図12(c)に示すように、単位参照光生成部230は、グレーティングカプラ214および光移相器234を備えている。光移相器234は、参照光Prefの位相を変化させるためのものであり、本実施の形態では、単位参照光生成部230ごとに入射される参照光Prefの位相を変えられるように構成されている。グレーティングカプラ214は、光移相器234により位相を調整された参照光Prefを受光部202dに向けて放射させる。
【0073】
図13を参照して、本実施の形態に係る参照光生成部290の動作原理について説明する。
図13に示すように、本実施の形態に係る参照光生成部290では、単位参照光生成部230の列ごとに位相を変化させる。すなわち、
図13に示す例では、単位参照光生成部230−1と同じ列の単位参照光生成部230は、位相Δφ=0°に調整される。同様に、単位参照光生成部230−2と同じ列の単位参照光生成部230は、位相Δφ=10°に調整され、単位参照光生成部230−3と同じ列の単位参照光生成部230は、位相Δφ=20°に調整され、単位参照光生成部230−4と同じ列の単位参照光生成部230は、位相Δφ=30°に調整される。
【0074】
このように位相調整された参照光生成部290においては、
図13に示すように、単位参照光生成部230−1の列、230−2の列、230−3の列、および230−4の列の各々から出射される参照光Pref1、Pref2、Pref3、およびPref4は、時間差をもって伝搬される。この時間差をもった参照光Pref1、Pref2、Pref3、およびPref4によって形成された波面が、WP1、WP2、WP3、・・・のように伝搬していく。
【0075】
この波面WPが伝搬する方向Xは、各単位参照光生成部230の位相Δφを調整することにより自由に調整することが可能である。したがって、各単位参照光生成部230の位相Δφを調整して参照光Prefの出射方向Xを制御することにより、受光部202dの面上における参照光Prefの位置をスキャンし、対象物Oの各部に対応する受信光Pinと混合することが可能となる。
【0076】
本実施の形態に係るレーザレーダ装置10dでは、参照光Prefのスキャンを参照光生成部290で行うので、受光部202dでは参照光Prefのスキャンを行う必要がない。そのため、上記各実施の形態とは異なり、受光部202dに光スイッチを配置する必要がなく、受光部は202dは基本的にフォトダイオード212(あるいは、単位受光部210bまたは単位受光部210c)により構成される。したがって、受光部202をより簡易な構成とすることができる。
【0077】
なお、受光部202に含まれる単位受光部210の数が少なく、信号処理部208における演算処理上の負担が少ない等の場合には、必ずしも参照光Prefを切替制御してスキャン(走査)する必要はない。この場合には、光移相器234を設ける必要はなく、光導波路222で分配された参照光Prefをグレーティングカプラ214から出射させ、対応する単位受光部210に向けて放射させればよい。
【0078】
[第7の実施の形態]
図14を参照して、本実施の形態に係るレーザレーダ装置10eについて説明する。レーザレーダ装置10eは、
図11に示すレーザレーダ装置10dの受信部200dを受信部200eに置き換えることにより、受光部202dを受光部202eに置き換えたものである。したがって、参照光Prefのスキャンは、参照光生成部290によって行われる。
【0079】
受光部202eは、単位受光部210eを複数配列して構成されている。そして、1個の単位受光部210eのフォトダイオードには、対象物Oの各部に対応する受信光Pinのうちの複数の受信光Pinが入力される点が受光部202dと異なる。
【0080】
本実施の形態に係る受光部202eでは、プリアンプ206以降の電気回路で単位受光部210eのフォトダイオードに入射された複数の入力信号を分離する必要があるが、単位受光部210eの数を削減することができる。
【0081】
なお、1個の単位受光部210のフォトダイオードに、対象物Oの各部に対応する受信光Pinのうちの複数の受信光Pinを入力させる構成は、本実施の形態に限らず、上記各実施の形態に適用してもよい。
【0082】
[第8の実施の形態]
図15を参照して、本実施の形態に係る端末装置について説明する。本実施の形態は、上記各実施の形態に係るレーザレーダ装置を、端末装置の一例としてのタブレット端末装置およびウエアラブル端末装置に応用した形態である。
【0083】
上記各実施の形態に係るレーザレーダ装置は、対象物までの距離や対象物の性質等を高感度に計測することが可能であるが、この高感度計測という特徴を応用することにより、振動をマッピングする、すなわち、振動を可視化することも可能である。本実施の形態は、本発明に係るレーザレーダ装置を、そのような振動を可視化するための端末装置に応用した形態である。
【0084】
図15(a)は、本実施の形態に係るタブレット端末装置500を示している。
図15(a)に示すように、タブレット端末装置500は、センサ502、マイクロプロセッサ504、タッチセンサ506、表示部508、および音声再生・録音部510を備えている。
【0085】
センサ502は、上記各実施の形態にかかるレーザレーダ装置により構成された、たとえば20kHzまでの音、つまり人間の耳で知覚可能な音を検知するセンサである。タッチセンサ506および表示部508は、いわゆるタッチパネルを構成している。音声再生・録音部510は、検知した音を録音し、再生する。上記センサ502、タッチセンサ506、表示部508、および音声再生・録音部510の各々は、マイクロプロセッサ504に接続されている。
【0086】
以上のように構成された本実施の形態に係るタブレット端末装置500によれば、表示部508のタッチした位置の音を高感度に検知し、また、検知した音を録音、再生することが可能となる。
【0087】
図15(b)は、本実施の形態に係るウエアラブル端末装置550を示している。
図15(b)に示すように、ウエアラブル端末装置550は、センサ552、マイクロプロセッサ554、および音声再生・重畳表示部556を備えている。ウエアラブル端末装置550は、たとえば、眼鏡型のウエアラブル端末装置として構成されている。
【0088】
センサ552は、上記各実施の形態にかかるレーザレーダ装置により構成された、音、特に人間の耳で知覚できない音を検知するセンサである。音声再生・重畳表示部556は、検知した音を可視化し、ウエアラブル端末装置に備えられた表示部(図示省略)に対象物の映像とともに表示する。センサ552および音声再生・重畳表示部556の各々は、マイクロプロセッサ554に接続されている。
【0089】
本実施の形態に係るウエアラブル端末装置550は、たとえば、工場などにおいて作業員が装着し、作業員に聞こえない異常音を検知する場合等において、特に有効な端末装置である。
【0090】
ここで、上記各実施の形態においては、単位受光部210、あるいは単位参照光生成部230の集積形態については特に言及しなかったが、これらの構成については、個別の各光学部品により集積化してもよいし、各光学部品を光導波路技術により集積化することにより、光導波路型の受光部202、あるいは参照光生成部290として一体に構成してもよい。
【0091】
つまり、たとえば、受光部202a(
図2)を例にとると、個別部品のフォトダイオード212、グレーティングカプラ214、光スイッチ216、および光合波器218を組み合わせて受光部202aを構成してもよいし、フォトダイオード212、グレーティングカプラ214、光スイッチ216、および光合波器218を光導波路技術により作り込んで光導波路型の受光部202aとしてもよい。
【0092】
また、上記各実施の形態に係るレーザレーダ装置の各構成は、当該レーザレーダ装置のみに限定されることなく、適宜に組み合わせることができる。たとえば、
図6に示す受光部202cは、アレイ状に配置された単位受光部210bの行単位で参照光Prefの導通、非導通を切り替える構成を例示しているが、単位受光部210bごとに光スイッチ216を設け、
図2に示す受光部202aのように、単位受光部210bごとに参照光Prefを入射させるか否かを切り替える構成としてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、本実施の形態に係る送信部100及び受光部200の集積化の一例として、参照光走査部102の参照光Pref供給部(光導波路222及びグレーティングカプラ254)と、単位受光部210とを集積化する形態(
図7、
図9参照)を例示して説明したが、これに限られず、他の様々な集積化の形態を適用してよい。例えば、
図1に示す、送信部100に対応する集積回路と、受信部200に対応する集積回路とに分割して集積化する形態としてもよい。すなわち、参照光走査部102の全体を含め送信部100として集積化し、受光部202、プリアンプ206、及び信号処理部208を含め受信部200として集積化する形態としてもよい。この場合の受信光Pinと参照光Prefとを混合する形態としては、例えば、
図12に示す参照光生成部290の光導波路222で分配された参照光Prefを、光移相器234を介さずグレーティングカプラ214から出射させ、対応する単位受光部210に向けて放射させる形態を適用することができる。