(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る電子写真感光体(感光体)は、導電性支持体と、当該導電性支持体上に配置される感光層と、当該感光層上に配置される保護層と、を有する。
【0015】
上記導電性支持体は、上記感光層を支持可能で、かつ導電性を有する部材である。上記導電性支持体の例には、金属製のドラムまたはシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の膜を有するプラスチックフィルム、導電性物質またはそれとバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材やプラスチックフィルム、紙などが含まれる。上記金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が含まれ、上記導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウムおよび酸化スズが含まれる。
【0016】
上記感光層は、後述する露光により所期の画像の静電潜像を上記感光体の表面に形成するための層である。当該感光層は、単層でもよいし、積層された複数の層で構成されていてもよい。上記感光層の例には、電荷輸送化合物と電荷発生化合物とを含有する単層、および、電荷輸送化合物を含有する電荷輸送層と、電荷発生化合物を含有する電荷発生層との積層物、が含まれる。
【0017】
上記保護層は、上記感光層の上に配置されるとともに上記感光体の表面を構成する、上記感光層を保護するための層である。上記保護層は、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、および、ラジカル重合性基を有する金属酸化物微粒子、を含有するラジカル重合性組成物の重合硬化物、で形成されている。すなわち、上記保護層は、上記ラジカル重合性モノマーのラジカル重合による一体的な重合体で構成され、上記保護層中に分散されているパーフルオロポリエーテル化合物および金属酸化物微粒子を含有する。当該パーフルオロポリエーテル化合物および金属酸化物微粒子は、いずれも、上記重合体とラジカル重合による共有結合によって結合している。
【0018】
また、上記感光体は、本実施形態に係る効果が得られる範囲において、上記導電性支持体および上記感光層以外の他の構成をさらに含んでいてもよい。当該他の構成の例には、中間層が含まれる。当該中間層は、例えば、上記導電性支持体と上記感光層との間に配置される、バリア機能と接着機能とを有する層である。
【0019】
上記感光体は、その表面を構成する層以外は、公知の有機感光体と同様に構成することが可能であり、例えば、特許文献3に記載の感光体における保護層以外の部分と同じに構成することが可能である。また、保護層も、材料が異なる以外は、特許文献3に記載されているように構成することが可能である。
【0020】
上記保護層は、前述したように、上記ラジカル重合性組成物の重合硬化物であり、当該ラジカル重合性組成物は、上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、および、上記ラジカル重合性基を有する金属酸化物微粒子、を含有する。これらは、いずれも一種でもそれ以上でもよい。
【0021】
[ラジカル重合性モノマー]
上記ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性基を有し、紫外線や可視光線、電子線などの活性線の照射により、あるいは加熱などのエネルギーの付加により、ラジカル重合(硬化)して、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となる化合物である。ラジカル重合性モノマーの例には、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマーおよびN−ビニルピロリドン系モノマーが含まれ、上記バインダー樹脂の例には、ポリスチレンおよびポリアクリレートが含まれる。
【0022】
上記ラジカル重合性基は、炭素−炭素2重結合を有しラジカル重合可能な基である。上記ラジカル重合性基は、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH
2=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH
2=C(CH
3)CO−)であることが特に好ましい。
【0023】
上記ラジカル重合性モノマーの例には、具体的には、以下の化合物M1〜M15が含まれる。下記式中、Rはアクリロイル基を表し、R’はメタクリロイル基を表す。
【0026】
上記ラジカル重合性モノマー化合物は、公知であり、また市販品としても入手することができる。上記ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性基が3個以上有する化合物であることが、架橋密度の高い高硬度の保護層を形成する観点から好ましい。
【0027】
[ラジカル重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物]
上記ラジカル重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(以下、「ラジカル重合性PFPE」とも言う)におけるパーフルオロポリエーテル化合物(以下、「PFPE」とも言う)は、パーフルオロアルキレンエーテルを繰り返し単位として有するオリゴマーまたはポリマーである。パーフルオロアルキレンエーテルの繰り返し単位の構造の例には、パーフルオロメチレンエーテル、パーフルオロエチレンエーテル、および、パーフルオロプロピレンエーテルの繰り返し単位の構造が含まれる。その中でも、パーフルオロポリエーテルが下記式(a)で示される繰り返し構造単位1、または、下記式(b)で示される繰り返し構造単位2を有していることが好ましい。
【0029】
上記PFPEが当該繰り返し構造単位1または当該繰り返し構造単位2を有する場合、当該繰り返し構造単位1の繰り返し数mおよび当該繰り返し構造単位2の繰り返し数nは、それぞれ0以上の整数であり、かつ、m+n≧1である。
【0030】
また、該繰り返し構造単位1及び該繰り返し構造単位2の両方を有する場合、該繰り返し構造単位1と該繰り返し構造単位2とは、ブロック共重合体構造を形成していてもランダム共重合体構造を形成していてもよい。
【0031】
上記PFPEの重量平均分子量Mwは、100以上8,000以下であることが好ましく、より好ましくは、500以上5,000以下である。
【0032】
上記ラジカル重合性PFPEが有するラジカル重合性基の数は、1以上であり、2以上であることが好ましい。ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性基を2個以上有する場合には、ラジカル重合性基のPFPEにおける位置は、片末端でも両末端でもよく、2つ以上のラジカル重合性基が片末端に結合していてもよいし、両末端に結合していてもよい。
【0033】
中でも、ラジカル重合性基を4つ以上有するラジカル重合性PFPEは、上記ラジカル重合性モノマーおよび後述のラジカル重合性金属酸化微粒子との反応点をより多く持つ。よって上記感光体の耐摩耗性およびクリーニング性を高める観点から特に好ましい。
【0034】
上記ラジカル重合性基は、ラジカル重合性モノマーのそれと同じく、炭素−炭素2重結合を有しラジカル重合可能な基である。ラジカル重合性PFPEのラジカル重合性基は、ラジカル重合性モノマーのそれと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、ラジカル重合性PFPEが有する複数のラジカル重合性基もまた、同じでもよいし、異なっていてもよい。ラジカル重合性官能基は、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることが特に好ましい。
【0035】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFluorolink AD1700、MD500、MD700、5101X、5113X、Fomblin MT70(「FLUOROLINK」および「FOMBLIN」は、いずれも同社の登録商標)、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC、および、信越化学工業株式会社製のKY−1203、が含まれる。
【0036】
また、ラジカル重合性PFPEは、末端に水酸基やカルボキシル基を有するPFPEを原料として、これらの置換基の置換またはこれらの置換基からの誘導によって適宜に合成することも可能であり、そのような合成品を使用してもよい。
【0037】
末端に水酸基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinD2、Fluorolink D4000、FluorolinkE10H、5158X、5147X、Fomblin Ztetraol、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SA、が含まれる。末端にカルボキシル基を有するPFPEの例には、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のFomblinZDIZAC4000、および、ダイキン工業株式会社製のDemnum−SH、が含まれる。
【0038】
アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するPFPEの例には、具体的には、以下の化合物P−1〜P−9が含まれる。下記式中、Xはアクリロイル基(A)またはメタクリロイル基(M)を表す。また、化合物P−2中の「p」は、独立して1〜10を表す。
【0039】
なお、Xがアクリロイル基である場合はAを、Xがメタクリロイル基である場合はMを、化合物の記号に添えることによって、下記化合物がより具体的に示される。たとえば、Xがアクリロイル基である下記P−1の化合物は「P−1A」、メタクリロイル基である下記P−1の化合物は「P−1M」と表される。
【0041】
以下に、ラジカル重合性PFPEの合成法の具体例を示す。
【0042】
[合成例1 P−2Mの合成]
下記式P−S1で表される、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fluorolink E10H (ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:平均分子量1700)17質量部、トリエチルアミン3質量部、ジイソプロピルエーテル10質量部、および、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.006質量部、を混合し、空気気流下にて攪拌を開始する。混合液の温度を10℃に保ちながらメタクリル酸クロライド3.1質量部を2時間かけて滴下する。滴下終了後、得られた混合液を10℃に維持ながら1時間攪拌し、次いで当該反応液を30℃まで昇温し、30℃で1時間攪拌し、さらに50℃まで昇温し、50℃で10時間攪拌することにより反応を行う。次いで、得られた反応液にジイソプロピルエーテル72質量部を追加し、ジイソプロピルエーテル相の水洗を3回行う。次いで、ジイソプロピルエーテル相を硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEであるP−2Mが得られる(収量17.1質量部)。
【0044】
[合成例2 P−3Mの合成]
(1)中間体(I)の合成
下記式P−S2で表される、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fomblin ZDIAC4000(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製:平均分子量3700)18.5質量部、塩化チオニル20質量部、および、N,N−ジメチルホルムアミド2滴、を混合し、4時間加熱還流する。得られた反応液から過剰の塩化チオニルを留去し、中間体(I)18.6質量部を得る。
【0045】
(2)P−3Mの合成
グリセリンジメタクリレート2.3質量部、ピリジン0.8質量部、および、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.006質量部、をジクロロエタン50質量部に溶解し、得られた溶液に中間体(I)18.6質量部を添加する。得られた混合液をそのまま室温で一晩撹拌し、次いで水を添加してジクロロエタン相を分離する。そしてジクロロエタン相を水洗し、溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEであるP−3Mを得る(収量 20.2質量部)。
【0047】
[合成例3 P−6Aの合成]
下記式P−S3で表される、両末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物Fomblin Z−tet−raol (ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)20質量部、重合禁止剤p−メトキシフェノール0.01質量部、ウレタン化触媒ジブチルスズジラウレート0.01質量部、および、メチルエチルケトン20質量部、を混合し、空気気流下で攪拌し、混合液を80℃に加熱する。次いで、2−(アクリロイルオキシ)エチルイソシアナート5.7質量部を、発熱に注意しながら分割して上記混合液に添加する。次いで、当該混合液を80℃で10時間攪拌することにより反応を行う。IRスペクトル測定でイソシアネート基由来の2360cm
−1付近の吸収ピークの消失を確認した後に上記混合液から溶媒を留去する。こうして、ラジカル重合性PFPEであるP−6Aを得る(収量 25.6質量部)。
【0049】
上記P−1〜P−9のうちのその他の例示化合物についても、下記のいずれかの方法により同様に合成することができる。
1)末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルに対して、(メタ)アクリル酸クロライドを脱塩酸によりエステル化反応させる方法。
2)末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルに対して、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法。
3)末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を常法により酸ハロゲン化物とし、この酸ハロゲン化物に対して、(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する化合物をエステル化反応させる方法。
【0050】
上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、少なすぎると感光体のクリーニング性が不十分となり、多すぎると感光体の耐摩耗性および耐傷性が不十分となることがある。上記のクリーニング性を十分に発現させる観点から、上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性PFPEの含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。また、上記耐摩耗性および耐傷性を十分に発現させる観点から、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
[ラジカル重合性基を有する金属酸化物微粒子]
上記ラジカル重合性基を有する金属酸化物微粒子(以下、「ラジカル重合性金属酸化物微粒子」とも言う)は、ラジカル重合性基を含む成分を表面に担持した金属酸化物微粒子である。金属酸化物微粒子の表面へのラジカル重合性基を含む成分の担持は、物理的な担持であってもよいし、化学的な結合によってもよい。当該ラジカル重合性基は、一種でもそれ以上でもよく、同じであっても異なっていてもよい。ラジカル重合性金属酸化物微粒子は、例えば、金属酸化物微粒子と、その表面に化学結合している表面処理剤残基と、当該表面処理剤残基に含まれる上記ラジカル重合性基とを有し、上記保護層中では、金属酸化物微粒子が、その表面に有する上記表面処理剤残基を介して、保護層を構成している一体的な重合体と化学結合した状態で存在する。なお、表面処理剤残基とは、例えば、金属酸化物微粒子の表面に化学結合している分子構造であって上記表面処理剤由来の部分である。
【0052】
上記金属酸化物微粒子における金属は、遷移金属も含む。金属酸化物微粒子も、一種でもそれ以上でもよく、同じであっても異なっていてもよい。上記金属酸化物微粒子における金属酸化物の例には、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化スズ、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムおよび銅アルミ酸化物が含まれる。中でも、アルミナ(Al
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、二酸化チタン(TiO
2)、銅アルミ複合酸化物(CuAlO
2)のであることが好ましい。
【0053】
上記金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmの範囲が好ましい。特に好ましくは3〜100nmである。金属酸化物微粒子の個数平均一次粒径は、カタログ値でもよく、あるいは以下のようにして求めることができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込み、得られた写真画像から、凝集粒子を除く300個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム「ルーゼックス AP」(株式会社ニレコ製、「LUZEX」は同社の登録商標、ソフトウエアVer.1.32)を使用して2値化処理して当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出し、その平均値を算出して個数平均一次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
【0054】
上記ラジカル重合性基を含む成分の金属酸化物微粒子の表面への担持は、金属酸化物微粒子の公知の表面処理技術によって行うことが可能である。たとえば、当該担持は、特許文献3に記載されているような金属酸化物微粒子の表面処理剤による公知の表面処理方法によって行うことができる。
【0055】
上記表面処理剤は、ラジカル重合性基および表面処理基を有する。上記表面処理剤は、一種でもそれ以上でもよい。当該表面処理基は、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基などの極性基への反応性を有する官能基である。上記ラジカル重合性基は、ラジカル重合性モノマーまたはラジカル重合性PFPEのそれと同じく、炭素−炭素2重結合を有しラジカル重合可能な基であり、その例には、ビニル基、アクリル基およびメタクリル基が含まれる。
【0056】
上記表面処理剤は、上記ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤が好ましく、その例には、以下の化合物S−1〜S−36が含まれる。
【0057】
S−1:CH
2=CHSi(CH
3)(OCH
3)
2
S−2:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
S−3:CH
2=CHSiCl
3
S−4:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−5:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(OCH
3)
3
S−6:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(OC
2H
5)(OCH
3)
2
S−7:CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3
S−8:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)Cl
2
S−9:CH
2=CHCOO(CH
2)
2SiCl
3
S−10:CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(CH
3)Cl
2
S−11:CH
2=CHCOO(CH
2)
3SiCl
3
S−12:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−13:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(OCH
3)
3
S−14:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−15:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3
S−16:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(CH
3)Cl
2
S−17:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2SiCl
3
S−18:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)Cl
2
S−19:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiCl
3
S−20:CH
2=CHSi(C
2H
5)(OCH
3)
2
S−21:CH
2=C(CH
3)Si(OCH
3)
3
S−22:CH
2=C(CH
3)Si(OC
2H
5)
3
S−23:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
S−24:CH
2=C(CH
3)Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−25:CH
2=CHSi(CH
3)Cl
2
S−26:CH
2=CHCOOSi(OCH
3)
3
S−27:CH
2=CHCOOSi(OC
2H
5)
3
S−28:CH
2=C(CH
3)COOSi(OCH
3)
3
S−29:CH
2=C(CH
3)COOSi(OC
2H
5)
3
S−30:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3
S−31:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)
2(OCH
3)
S−32:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCOCH
3)
2
S−33:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(ONHCH
3)
2
S−34:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OC
6H
5)
2
S−35:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(C
10H
21)(OCH
3)
2
S−36:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
2C
6H
5)(OCH
3)
2
【0058】
上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の含有量は、少なすぎると感光体の耐摩耗性および耐傷性が不十分となることがある。また、上記含有量が多すぎると、保護層中のPFPEの含有量が相対的に低くなり、その結果、感光体のクリーニング性が不十分となることがある。保護層の機械的強度を十分に発現させ、また適切な電気抵抗を実現する観点から、上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の含有量は、上記ラジカル重合性モノマーと上記ラジカル重合性PFPEとの合計100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましい。また、クリーニング性を十分に発現させる観点から、上記ラジカル重合性組成物における上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の上記含有量は、100質量部以下であることが好ましい。
【0059】
上記感光体は、保護層用の塗料に上記のラジカル重合性組成物を用いる以外は、公知の感光体の製造方法によって製造することができる。たとえば、上記感光体は、導電性支持体上に形成された感光層の表面に、上記ラジカル重合性組成物を含有する保護層用塗料を塗布する工程と、塗布された保護層用塗料に活性線を照射して、あるいは塗布された保護層用塗料を加熱して、保護層用塗料中のラジカル重合性基のラジカル重合させる工程と、を含む方法によって製造することが可能である。
【0060】
上記保護層用塗料は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記ラジカル重合性組成物以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、溶剤および重合開始剤が含まれる。
【0061】
上記溶剤は、一種でもそれ以上でもよい。当該溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。
【0062】
上記重合開始剤は、一種でもそれ以上でもよい。重合開始剤は、保護層の製造工程に応じて公知の重合開始剤から適宜に決めることができる。重合開始剤の例には、光重合開始剤、熱重合開始剤、および、光、熱の両方で重合開始可能な重合開始剤、が含まれる。
【0063】
上記重合開始剤の例には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、および、過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物、が含まれる。
【0064】
また、上記重合開始剤の例には、アセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤が含まれ、その例には、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(12)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(イルガキュア369:BASFジャパン社製、「イルガキュア」はBASF社の登録商標)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムが含まれる。
【0065】
また、上記重合開始剤の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤、および、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、が含まれる。
【0066】
また、上記重合開始剤の例には、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤が含まれる。
【0067】
また、上記重合開始剤の例には、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、および、イミダゾール系化合物、が含まれる。
【0068】
また、光重合開始剤には、光重合促進効果を有する光重合促進剤を併用してもよい。当該光重合促進剤の例には、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチルおよび4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンが含まれる。
【0069】
上記重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましく、例えば、アルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、さらに好ましくはα−ヒドロキシアセトフェノン構造を有する重合開始剤、あるいはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する重合開始剤、である。
【0070】
上記ラジカル重合性組成物中における上記重合開始剤の含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して0.1〜40質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20質量部である。
【0071】
上記保護層中、上記ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性PFPE、ラジカル重合性金属酸化物微粒子は、保護層を形作る一体的な重合物(重合硬化物)を構成している。当該重合硬化物がラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性PFPE、ラジカル重合性金属酸化物微粒子の重合体であることは、熱分解GC-MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、元素分析などの公知の機器分析技術による上記重合硬化物の分析によって確認することが可能である。
【0072】
上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性PFPEおよび上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子は、いずれもラジカル重合性基を有する。よって、上記ラジカル重合性組成物において、これらの成分は、互いに高い相溶性を有する。よって、上記ラジカル重合性PFPEおよび上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子は、いずれも、上記ラジカル重合性組成物において均一に分散する。その結果、PFPEおよび金属酸化物微粒子は、保護層中においてもその面方向および厚さ方向のいずれにおいても均一に分散して存在する。
【0073】
上記保護層では、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性PFPEおよびラジカル重合性金属酸化物微粒子のラジカル重合性基がそれぞれ互いに反応し、架橋構造を形成する。よって、PFPEの含有量がある程度多くても、十分な耐摩耗性を有する高強度な保護層が得られる。
【0074】
さらに、上記保護層は、高いクリーニング性が長期に亘って維持される。これは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、上記保護層では、PFPEが金属酸化物微粒子とも結合した状態で存在する。このため、保護層の全体に亘ってPFPEが分散して存在しやすい。このように、保護層では、PFPEおよび金属酸化物微粒子が保護層の面方向および厚さ方向の両方向において分散して存在するので、保護層の表面には、保護層が減耗しても、高いクリーニング性を維持するのに十分な量のPFPEが存在する。
【0075】
さらに、ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性基を4つ以上有すると、ラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合性金属酸化物微粒子とPFPEとの結合箇所が増える。よって、さらに高い耐摩耗性およびより高いクリーニング性が持続する上記保護層が得られる。
【0076】
上記感光体は、電子写真方式の画像形成装置における有機感光体として使用される。たとえば、上記画像形成装置は、上記感光体と、上記感光体の表面を帯電させるための帯電装置と、帯電した上記感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成するための露光装置と、静電潜像が形成された上記感光体にトナーを供給してトナー像を形成するための現像装置と、上記感光体の表面の上記トナー像を記録媒体に転写するための転写装置と、上記トナー像が上記記録媒体に転写した後の上記感光体の表面に残留するトナーを除去するためのクリーニング装置と、を有する。
【0077】
また、上記感光体は、静電潜像が形成された上記感光体の表面にトナーを供給して上記静電潜像に応じたトナー像を上記感光体の表面に形成し、上記トナー像を上記感光体の表面から記録媒体に転写し、上記感光体の表面に残留する上記トナーをクリーニング装置で除去する画像形成方法に適用される。当該画像形成方法は、例えば、上記の画像形成装置によって行われる。
【0078】
図1は、上記感光体を有する画像形成装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示す画像形成装置100は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50および定着装置60を有する。
【0079】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41Cおよび41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42および二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0080】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、前述の感光体413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。
【0081】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、当該現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。上記現像容器には、例えば、後述の二成分現像剤が収容されている。
【0082】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、中間転写ベルト421を感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、およびベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0083】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、および二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431Aおよび支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0084】
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト10と、用紙Sを定着ローラー62および発熱ベルト10に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
【0085】
画像形成装置100は、さらに、画像読取部110、画像処理部30および用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111およびスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0086】
画像形成装置100による画像の形成を説明する。
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0087】
感光体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、感光体413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って感光体413の外周面に照射される。こうして感光体413の表面には、静電潜像が形成される。
【0088】
現像装置412では、上記現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は上記現像ローラーに搬送され、当該現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、上記磁性ブラシから感光体413における静電潜像の部分に静電的に付着する。こうして、感光体413の表面の静電潜像が可視化され、感光体413の表面に、静電潜像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0089】
感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に感光体413の表面に残存する転写残トナーは、感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0090】
感光体413の保護層は、前述したように、ラジカル重合性モノマーのラジカル重合による重合物で一体的に構成された保護層全体に、PFPEおよび金属酸化物微粒子が十分量で均一に分散している。よって、上記重合物および金属酸化物微粒子による耐摩耗性および耐傷性と、PFPEによる高いクリーニング性とが十分に発現される。よって、感光体413は、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、かつこれらの特性を長期に亘って発現する。
【0091】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が感光体413に圧接することにより、感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
【0092】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421および二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正および搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0093】
上記二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
【0094】
定着装置60は、発熱ベルト10と加圧ローラー63とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを当該定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0095】
なお、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。
【0096】
感光体413は、前述したように、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、かつこれらの特性を長期に亘って発現する。よって、画像形成装置100は、所期の画質の画像を長期に亘って安定して形成することができる。
【0097】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に係る感光体は、導電性支持体と、上記導電性支持体上に配置される感光層と、上記感光層上に配置される保護層とを有する。そして、上記保護層は、上記ラジカル重合性モノマー、上記ラジカル重合性PFPE、および上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子、を含有するラジカル重合性組成物の重合硬化物で形成されている。よって、上記感光体は、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性に優れ、これらの特性を長期に亘って発現することができる。その結果、上記感光体は、耐摩耗性、耐傷性が高く、かつトナー離型性に優れ、クリーニング不良による異常画像などの発生を長期に渡って抑制することができる。
【0098】
また、上記ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性基を4つ以上有するPFPEであることは、耐摩耗性および耐傷性とクリーニング性とを両立させる観点からより一層効果的である。
【0099】
また、上記重合硬化物におけるパーフルオロポリエーテル化合物の含有量が、上記ラジカル重合性組成物中のラジカル重合性モノマー100質量部に対する上記ラジカル重合性PFPEの含有量に換算して10〜100質量部であることは、耐摩耗性および耐傷性とクリーニング性を十分に発現させる観点からより効果的である。
【0100】
また、上記重合硬化物における金属酸化物微粒子の含有量が、上記ラジカル重合性組成物中の、上記ラジカル重合性モノマーと上記ラジカル重合性PFPEとの合計100質量部に対する、上記ジカル重合性金属酸化物微粒子の含有量に換算して30〜100質量部であることは、耐摩耗性および耐傷性とクリーニング性を十分に発現させる観点からより効果的である。
【実施例】
【0101】
[金属酸化物微粒子1の作製]
金属酸化物微粒子として数平均一次粒径20nmの「酸化スズ」100質量部、表面処理剤として「例示化合物S−15」10質量部、および、メチルエチルケトン1000質量部、を湿式サンドミル(メディア:径0.5mmのアルミナビーズ)に入れ、30℃にて6時間混合した。その後、メチルエチルケトンとアルミナビーズをろ過により金属酸化物微粒子から分離し、当該金属酸化物微粒子を60℃にて乾燥した。こうして、上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子である金属酸化物微粒子1を作製した。
【0102】
[金属酸化物微粒子2の作製]
金属酸化物微粒子を数平均一次粒径50nmの「銅アルミ酸化物」に、そして表面処理材の使用量を5質量部に変更する以外は金属酸化物微粒子1の作製と同様にして、上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子である金属酸化物微粒子2を作製した。
【0103】
[金属酸化物微粒子3の作製]
表面処理剤として「例示化合物S−7」を用いた以外は金属酸化物微粒子2の作製と同様にして、上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子である金属酸化物微粒子3を作製した。
【0104】
[金属酸化物微粒子4の作製]
表面処理剤としてトリメトキシプロピルシランを用いた以外は金属酸化物微粒子1の作製と同様にして、金属酸化物微粒子4を作製した。
【0105】
[
参考例1 感光体1の作製]
(1)導電性支持体の準備
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
【0106】
(2)中間層の形成
ポリアミド樹脂(X1010、ダイセルデグサ株式会社製) 10質量部
酸化チタン粒子(SMT500SAS、テイカ株式会社製) 11質量部
エタノール 200質量部
上記中間層用材料を混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
【0107】
(3)電荷発生層の形成
電荷発生物質(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニンおよび(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混晶) 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBL−1、積水化学工業株式会社製、「エスレック」は同社の登録商標)」 12質量部
混合液(3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
上記電荷発生層用材料を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製)」を19.5kHz、600Wにて循環流量40L/Hで0.5時間に亘って分散することにより、電荷発生層用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記中間層の表面に塗布し、乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
【0108】
(4)電荷輸送層の形成
下記構造式(2)で表される電荷輸送物質 60質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300、三菱ガス化学株式会社製) 100質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010、BASF社製、「IRGANOX」は同社の登録商標)」 4質量部
上記電荷輸送層用材料を混合、溶解させることにより電荷輸送層用の塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって上記電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、膜厚24μmの電荷輸送層を電荷輸送層上に形成した。
【0109】
【化8】
【0110】
(5)保護層の形成
ラジカル重合性モノマー(M1) 120質量部
ラジカル重合性PFPE(P−2M) 30質量部
金属酸化物微粒子1 100質量部
重合開始剤(イルガキュア819:BASFジャパン社製) 10質量部
2−ブタノール 400質量部
上記保護層用材料を溶解、分散し、保護層用の塗布液を調製した。当該塗布液を電荷輸送層の表面に、円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、塗布された上記塗布液の膜に、メタルハライドランプから紫外線を1分間照射して当該膜を硬化させることにより、膜厚3.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。こうして、感光体1を作製した。
【0111】
[
参考例2、実施例3 感光体2、3の作製]
ラジカル重合性モノマーをM2に、ラジカル重合性PFPEをP−2Aに変更した以外は感光体1の作製と同様にして、感光体2を作製した。また、ラジカル重合性PFPEをP−3Mに変更した以外は感光体2の作製と同様にして、感光体3を作製した。
【0112】
[実施例4 感光体4の作製]
ラジカル重合性モノマーをM11に、その添加量を100質量部に、またラジカル重合性PFPEをP−4Aに、そしてその添加量を50質量部に、それぞれ変更した以外は感光体1の作製と同様にして、感光体4を作製した。
【0113】
[実施例5、6 感光体5、6の作製]
ラジカル重合性PFPEをP−5Aに変更した以外は感光体1の作製と同様にして、感光体5を作製した。また、ラジカル重合性PFPEをP−6Aに変更した以外は感光体1の作製と同様にして、感光体6を作製した。
【0114】
[
参考例3、4、実施例9〜12、参考例5、実施例14、15 感光体7〜13の作製]
ラジカル重合性モノマーの添加量を125質量部に、ラジカル重合性PFPEをP−6Mに、そしてその添加量を25質量部に、それぞれ変更した以外は感光体1の作製と同様にして、感光体9を作製した。
【0115】
また、ラジカル重合性モノマーの添加量を140質量部に、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を10質量部にそれぞれ変更した以外は感光体9の作製と同様にして、感光体7を作製した。さらに、ラジカル重合性モノマーの添加量を136質量部に、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を14質量部にそれぞれ変更した以外は感光体9の作製と同様にして、感光体8を作製した。
【0116】
また、ラジカル重合性モノマーの添加量を100質量部に、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を50質量部にそれぞれ変更した以外は感光体9の作製と同様にして、感光体10を作製した。さらに、ラジカル重合性モノマーの添加量を90質量部に、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を60質量部にそれぞれ変更した以外は感光体9の作製と同様にして、感光体11を作製した。
【0117】
また、ラジカル重合性モノマーの添加量を75質量部に、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を75質量部にそれぞれ変更した以外は感光体9の作製と同様にして、感光体12を作製した。さらに、ラジカル重合性モノマーの添加量を70質量部に、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を80質量部にそれぞれ変更した以外は感光体9の作製と同様にして、感光体13を作製した。
【0118】
[実施例14、15 感光体14、15の作製]
金属酸化物微粒子1の添加量を45質量部に変更した以外は感光体10の作製と同様にして、感光体14を作製した。また、金属酸化物微粒子の添加量を150質量部に変更した以外は感光体10の作製と同様にして、感光体15を作製した。
【0119】
[実施例16、17 感光体16、17の作製]
ラジカル重合性モノマーをM5に、ラジカル重合性PFPEをP−7Aに変更した以外は感光体10の作製と同様にして、感光体17を作製した。また、金属酸化物微粒子の添加量を170質量部に変更した以外は感光体17の作製と同様にして、感光体16を作製した。
【0120】
[
参考例6 感光体18の作製]
ラジカル重合性PFPEをP−8Aに変更した以外は感光体17の作製と同様にして、感光体18を作製した。
【0121】
[
参考例7 感光体19の作製]
ラジカル重合性モノマーの添加量を130質量部に、ラジカル重合性PFPEをP−9Mに、そしてラジカル重合性PFPEの添加量を20質量部にそれぞれ変更した以外は感光体17の作製と同様にして、感光体19を作製した。
【0122】
[
参考例8 感光体20の作製]
ラジカル重合性PFPEをFluorolink MD700(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、「MD700」とも言う)に、そして金属酸化物微粒子の添加量を60質量部に変更した以外は感光体7の作製と同様にして、感光体20を作製した。
【0123】
[実施例21 感光体21の作製]
ラジカル重合性PFPEをFomblin MT70(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、「MT70」とも言う)に変更した以外は感光体10の作製と同様にして、感光体21を作製した。
【0124】
[実施例22 感光体22の作製]
ラジカル重合性モノマーをM5に、ラジカル重合性PFPEをFluorolink AD1700(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、「AD1700」とも言う)に、そして金属酸化物微粒子の添加量を50質量部にそれぞれ変更した以外は感光体12の作製と同様にして、感光体22を作製した。
【0125】
[実施例23 感光体23の作製]
ラジカル重合性モノマーをM2に、ラジカル重合性モノマーの添加量を90質量部に、またラジカル重合性PFPEの添加量を60質量部に、そして金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子2にそれぞれ変更した以外は感光体1の作製と同様にして、感光体23を作製した。
【0126】
[実施例24、25 感光体24、25の作製]
金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子2に、そして金属酸化物微粒子の添加量を80質量部にそれぞれ変更した以外は感光体6の作製と同様にして、感光体24を作製した。また、金属酸化物微粒子の添加量を120質量部に変更した以外は感光体24の作製と同様にして、感光体25を作製した。
【0127】
[
参考例9 感光体26の作製]
ラジカル重合性PFPEをP−9Mに、そして金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子2にそれぞれ変更した以外は感光体17の作製と同様にして、感光体26を作製した。
【0128】
[実施例27、28 感光体27、28の作製]
ラジカル重合性PFPEをMT70に、そして金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子2にそれぞれ変更した以外は感光体10の作製と同様にして、感光体27を作製した。また、金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子3に変更した以外は感光体27の作製と同様にして、感光体28を作製した。
【0129】
[比較例1 感光体C1の作製]
ラジカル重合性モノマーをM1に、そしてラジカル重合性PFPE(P−9M)をFomblin D2(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、「D2」とも言う)にそれぞれ変更した以外は感光体19の作製と同様にして、感光体C1を作製した。
【0130】
[比較例2 感光体C2の作製]
金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子4に変更した以外は感光体18の作製と同様にして、感光体C2を作製した。
【0131】
[比較例3 感光体C3の作製]
金属酸化物微粒子を金属酸化物微粒子4に変更した以外は感光体22の作製と同様にして、感光体C3を作製した。
【0132】
[評価]
感光体1〜28およびC1〜C3のそれぞれを、フルカラー複写機(商品名:「bizhub PRO C6501」、コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)に搭載し、30℃、85%RHの高温高湿環境(HH環境)で、画像比率6%の文字画像をA4横送りの向きで50万枚連続してプリントする耐久試験を実施した。
【0133】
(1)耐摩耗性
上記耐久試験前後における感光体の均一膜厚部分(感光体の両端は膜厚が不均一になりやすいので、少なくとも両端3cmを除く)を、渦電流方式の膜厚測定器(商品名:「EDDY560C」、HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いてランダムに10か所測定し、その平均値を求め、感光体の膜厚とした。そして、上記耐久試験前後の感光体の上記膜厚の差を減耗量とした。減耗量が小さいほど耐摩耗性が高く、減耗量が2.0μm以下であれば実用上問題ない。
【0134】
(2)耐傷性
上記耐久試験後、A3紙全面にハーフトーン画像の画出しを行い、下記の基準により感光体の耐傷性を評価した。
A:感光体表面に目視でみられる目立った傷の発生はなく、ハーフトーン画像にも感光体傷に対応する画像不良の発生は見当たらない(良好)。
B:感光体表面に目視で軽微な傷の発生があるが、ハーフトーン画像には感光体傷に対応する画像不良の発生は見当たらない(実用上問題なし)。
C:感光体表面に目視で明確に傷の発生があり、ハーフトーン画像にも該傷に対応する画像不良の発生が認められる(実用上問題あり)。
【0135】
(3)クリーニング性
上記耐久試験中および耐久試験後に、感光体の表面を目視で観察し、下記の基準により感光体のクリーニング性を評価した。
A:50万枚までトナーのすり抜けがなく、全く問題ないレベル。
B:50万枚までの時点で感光体上にトナーのすり抜けが一部見られるが、出力画像は良好であり、実用上問題ないレベル。
C:50万枚以前にトナーのすり抜けにより、出力画像上にスジ状の軽微な画像不良が発生したが、実用上問題ないレベル。
D:50万枚以前にトナーのすり抜けにより、出力画像上にスジ状の明らかな画像不良の発生が認められる(実用上問題あり)。
【0136】
各感光体における保護層の材料組成を表1、表2に示す。また、各感光体における評価結果を表3に示す。下記表中、「モノマー」は、ラジカル重合性モノマーを、「PFPE」は、ラジカル重合性PFPEを含むPFPEを、「MOP」は、金属酸化物微粒子を、それぞれ表す。また、下記表中、「PFPE比」は、下記式(1)で求められ、「MOP比」は、下記式(2)で求められる。
式(1):PFPE比=(PFPEの添加量)/(モノマーの添加量)×100
式(2):MOP比=(MOPの添加量)/{(PFPEの添加量)+(モノマーの添加量)}×100
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
表1〜3に示されるように、感光体1〜28は、減耗量が十分に少なく、かつ十分な耐傷性およびクリーニング性を有する。よって、導電性支持体上に感光層および保護層がこの順で重ねられてなる電子写真感光体であって、上記保護層が、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性PFPEおよびラジカル重合性金属酸化物微粒子、を含有するラジカル重合性組成物の重合硬化物、で形成されている電子写真感光体は、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性のいずれにも優れることがわかる。
【0141】
また、感光体2〜4に示されるように、上記ラジカル重合性PFPEがラジカル重合性基を4つ以上有するPFPEであることは、クリーニング性を高める観点から好ましいことがわかる。
【0142】
また、感光体7〜13に示されるように、上記重合硬化物におけるPFPEの含有量が、上記ラジカル重合性組成物中のラジカル重合性モノマー100質量部に対する上記ラジカル重合性PFPEの含有量に換算して10〜100質量部であることは、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性を高める観点から好ましいことがわかる。
【0143】
また、感光体12、14および15に示されるように、上記重合硬化物における金属酸化物微粒子の含有量が、上記ラジカル重合性組成物中の、上記ラジカル重合性モノマーと上記ラジカル重合性PFPEとの合計100質量部に対する、上記ラジカル重合性金属酸化物微粒子の含有量に換算して30〜100質量部であることは、耐傷性およびクリーニング性を高める観点から好ましいことがわかる。
【0144】
これに対して、感光体C1は、耐摩耗性、耐傷性およびクリーニング性のいずれも不十分である。これは、PFPEがラジカル重合性基を有していないことから、PFPEが保護層の表面に偏在し、PFPEによる効果が耐久試験中に損なわれるため、と考えられる。
【0145】
感光体C2は、減耗量およびクリーニング性が不十分であり、感光体C3は、減耗量および耐傷性が不十分である。これは、表面処理金属酸化物微粒子がラジカル重合性基を有していないためであり、感光体C2では、PFPEの保護層内部への分散および固定化の効果が不十分となるため、と考えられ、感光体C3では、保護層の機械的強度が不十分となるため、と考えられる。